アイスレディ the ホワイトアウト!


<オープニング>


 氷結冷血、極寒フィールド!
 雪のしもべを引き連れて、かの者は現れる。
 凍てつけ!
 凍えろ!
 凍りつけ!
 その名は気高き――アイスレディ・ザ・ホワイトアウト!
 
「おい皆、好き放題暴れるチャンスだぜ」
 白い着流しに身を包み、女性運命予報士は言った。
「廃墟のスケート場に地縛霊が見つかった。巷で噂の抗体地縛霊だ」
 にわかにざわつく教室内。女性予報士は黒板をぶっ叩いた。
「おいおい、何細かいこと考えようとしてんだよ。やる事は決まってる。答えも決まってる。だったら後はやりたい放題じゃねえか」
 つまりな。
「好き放題暴れるチャンスだろ」
 
 敵戦力はシンプルだった。
 白い和服姿の抗体地縛霊1体。
 加えて同様の格好をした地縛霊10体。
 一面氷で覆われた『抗体空間』が発生し、空気でさえも凍りつかせて見せると言う。
 が、逆に言えばそれだけだ。
「極寒地獄で我慢比べとか……燃えるじゃねえか。だろ?」
 ニヤリと笑って、女は言った。
 それ以上の言葉は要らない。

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参加者
那智・れいあ(空翔ける銀獅子・b04219)
神農・撫子(おにしるべ・b13379)
渕埼・寅靖(人虎・b20320)
ユラ・セレスト(パラヤーナ・b58838)
雉橋・希平(真意はゴーグルの奥に・b68659)
清脈・総子(おらの彼氏はオタクです・b73970)
天城・凛斗(黒蝶護りし紅き薔薇・b76202)
久瀬・久(僕の彼女は田舎の娘さんです・b76335)



<リプレイ>


 この物語に前置きを書かない。
 必要ないからだ。

「ふうん……」
 抗体空間『ホワイトアウト』発動! 地は氷結し天は塞がれ大気中の塵芥さえ白く結晶化する中、神農・撫子(おにしるべ・b13379)は己が唇を薬指で撫でた。
「雪女の真似事とは良い度胸ですね。どちらが本物か、分からせて差し上げましょう?」
 首を傾げ手を翳し、皮膚に張り付く氷雨ををのままに、撫子は掌を広げた。
「この程度の冷気、むしろ心地よいくらいですのよ」
 空間召喚、氷雪地獄。
 大気が渦巻き、抗体空間と氷雪地獄が正面から激突する。
 空間が裂け、破砕と凝固を繰り返す。
 最中、清脈・総子(おらの彼氏はオタクです・b73970)が唐突に笑い出した。
「あはは、いい感じの寒さだで……テンション上がってきたべ!? あははははは!」
 両目が大きく見開かれ、普段の彼女が決して映さぬであろう景色を眼球の奥に広げた。
 瞳孔拡大。結晶輪高速回転。
「はは、あははははははははー!」
 腕を大きく広げると、総子は天変を呼び寄せた。
 重複氷雪地獄。複雑に渦巻いた空間を更に渦巻かせ、三重の螺旋を発生させる。
 通常の人間であれば数秒も立たずに死滅するであろう抗体空間『ホワイトアウト』を、あたかも自分の住処であるかの如く支配、制圧、破壊、超越して見せた。
 思わず地縛霊達が目を覆う。
 それでも前へ出ようとした数名だけが、彼女達と戦う権利を得たと言える。
 腕を氷の剣に変えて総子へ切りかかる地縛霊。
 氷雪を支配していた総子の胸から鮮血が吹き上がる。
 それを見た久瀬・久(僕の彼女は田舎の娘さんです・b76335)が声を張り上げた。
「キミィ、それなりの覚悟はできてるんだろうねっ!?」
 腕に紫電を走らせ目を血走らせた彼に、総子は若干喜びの視線を向ける。
「僕の大事な総子に攻撃し、ホワイトアウトさんの胸(男なら堂々とおっぱいと読め)を揉む僕の野望を邪魔するなんて……!」
「……」
 総子の後ろで撫子が哀れみの視線を送った。
「いつも通りだべな。でも、おらテンション上げてる所見られるの……恥ずかしいべ」
「……」
 まさかの許容範囲内。
 頬を染める総子に、撫子は理解できない生き物への視線を送った。
「食らえ、愛と怒りと萌えの制裁! ライトニングヴァイパァァァァァ!!」
 久渾身のライトニングヴァイパーが地縛霊の集団を派手に散らす。
 吹雪荒れ風渦巻く。
 ユラ・セレスト(パラヤーナ・b58838)は口元までマフラーを巻き、尻尾を風に暴れさせていた。
 吹雪の中にあって尚ピンとはった背筋。
「ホワイトアウト……のう」
「原稿にインク零した時に使うあれ……」
 那智・れいあ(空翔ける銀獅子・b04219)が無駄にシリアス顔で呟いた。
「え?」
「え?」
 同時に顔を見合わせる二人。
 などとやっていると、態勢を立て直した地縛霊が集団で駆け込んできた。
 ユラとれいあはナイフを指先で転がすと、手にしっかりと握りこんだ。
「んむ、まあともかく戦闘開始じゃ」
「寒さ対策にちょっと運動してこよっか!」
 バシンと手を合わせるれいあ。
 その時既にユラのマフラーは宙を舞っており、彼女自身は10m先を走っていた。
 地縛霊の手刀を逆手持ちナイフで受けるユラ。
 口には空のギンギンカイザーX。ガキンとビンにひびが走った。
 そんなユラを更に追い越して、れいあが別の地縛霊に飛び蹴りを叩き込む。
 両腕を交差させ受け止める地縛霊。
 着地直後のれいあに地縛霊が手刀を繰り出す。
 れいあは即座にバク転。背後のユラを飛び越え、更に彼女の相手していた地縛霊をも越え、両足をそろえて音も無く着地した。
 咄嗟に振り向こうとする地縛霊。
 だがその時既に、地縛霊の後頭部にはれいあのナイフが突き付けられていた。
 もっと早く振り向いていれば? 否、振り向くことすら間違いだった。
 なぜならば、ユラが眼前で高速スケッチを終えていたからである。
「氷のおねーさん達だって、ボク達の絆は壊せない……なんてね!」
 空中に描き出した線が歪み、生き物であるかの如く飛びかかる。
 同時に、れいあが蒼の魔弾を発射。
 前後から零距離射撃を受けた地縛霊は一瞬で消滅した。

 同刻同所、天城・凛斗(黒蝶護りし紅き薔薇・b76202)は腕を突き出す格好で立っていた。
 手首の先、柄の先、薔薇のレリーフに積もる雪、その先に喉を貫かれた地縛霊がいた。
「武器を持てば勝てると思ったか、愚かだな――さぁ、舞おうか」
 剣を引き抜き旋剣の構え。地縛霊が崩れ落ちるより早く駆け出す。
 別の地縛霊が彼へと突撃する。
 振り込んだ剣を氷結した空気で跳ね除け、地縛霊は凛斗の左手首を掴んだ。
 たちまち氷に包まれる左腕。
 凛斗はそれを一瞥してすぐに、地縛霊へと視線を戻した。
 皮膚に雨粒が落ちた時とまるで変わらない様子に、地縛霊が僅かにたじろいだ。
「この程度の粉雪か。気にするまでも無いな」
 凛斗は腕を凍らせたまま地縛霊を引き寄せると、『腕についたもの』を引きちぎるために腹を蹴っ飛ばした。
 くの字に折れ曲がる地縛霊。その上を飛び越えるようにして、三体の地縛霊が凛斗へと襲い掛かる。
 空間氷結。氷刃生成。凛斗の頭を三人分の影が覆う――が、しかし。
「目標補足」
 凛斗の背後から飛び出す雉橋・希平(真意はゴーグルの奥に・b68659)。
 レインコートにゴーグル。マシンガンとガンナイフ。蟷螂が餌に飛びつくかのような動きに地縛霊達は反応が遅れた。
 いや、彼の動物『らしくなさ』に認識力が取り残されたと言うべきなのかもしれない。
 一瞬で地縛霊三体の中心へと潜り込み、交差していた腕を解放。
 機械のように口を開き、虫のように鳴いた。
「――旋回実行」
 暴れ独楽高速回転。
 地縛霊が一斉に三方向へ跳ね飛ばされる。
 なんとか着地した地縛霊の一体が手を巨大な氷の爪へと変えた。
 反撃すべく一歩踏み出そうとし、突然頭を掴まれた。
 正確には、顔に突き付けられた獣爪が頭全体を覆ったのだ。
「この一戦が俺の、反撃の狼煙だ。派手に行かせて貰う」
 炎をあげた腕が盛り上がり、地縛霊の頭を文字通り握り潰す。
 仰向けに倒れる地縛霊の向こうで、渕埼・寅靖(人虎・b20320)は頭部にくくりつけた鬼面に手を添えた。
 ゆっくりと下ろして顔を覆い、彼は呟いた。
「成すべきは、一つだ」


「――ぷは」
 ギンギンカイザーXを空にしたれいあは、ビンから口を離した。
 僅かに雫が浮かび、一瞬で凍結する。
「今日のカイザーは生姜入りでぽかぽかに!」
「それはもしや不味いのでは……」
 怪訝な顔をするユラ。実際どんな味なのか。想像は尽きない。
 そこへ、地縛霊が両腕を氷の塊に変えて突っ込んできた。
 恐らく頭蓋骨を粉砕するつもりであろう。パンチがまっすぐれいあの額を狙ってきたが、彼女は身を斜めに落として回避。
 一度だけ回転すると、地縛霊の側面に蒼の魔弾を叩き込んだ。
 衝撃にのけぞる地縛霊。
「赤の炎より熱い蒼の魔弾、受けてみてね」
 身を僅かに屈めた態勢のままリロード。
 慌てて体勢を立て直す地縛霊の頭部めがけて、れいあはナイフを向けた。
「氷だろうが何だろうが、壊して砕いて溶かしてみせる!」
 魔弾発射。頭部全壊。氷細工のように砕けた地縛霊の肩を、ユラが踏んづける。
「そこにいると邪魔なのじゃ」
 踏み台にしてユラはジャンプ。
 空中に指を這わせると、高速でスケッチを完成させる。
 最後の点うった瞬間、スケッチが弾丸の如き速度で発射される。
 と同時に、氷結した塵芥を押しのけて現れたアヤカシの群れが周囲の地縛霊へ向けて飛び掛った。
 頭上からの激しい射撃に苛まれる地縛霊達。
「フィールド魔法使いの称号はおらのものだべさ」
 結晶輪を両手に持って総子は呟く。
「雪が舞い、八重撫子と重なりて、アヤカシなりて敵を屠らん……なんちゃって」
 そして、襲い掛かる地縛霊へ向けて結晶輪を投擲した。

 撫子の周囲は、白い粉が散っていた。
 氷結した塵芥がアイスダストとなってひらひらと落ち、撫子の肩に時折かかる。
 彼女は白い息を細く細く吐きながら、地縛霊へゆっくりと歩いていった。
 その横を、無表情に希平が歩く。
 全身に氷の刃が刺さり、左足は既に凍結していたが、歩みに全く迷いが無い。
 二体の地縛霊が、歯をがちりと鳴らした。
 無論寒さ故ではない。
 ……あなたは分かるだろうか?
 殴っても刺しても凍らせても、全く変わらない足取りで近づいてくる存在の意味が。
「来ないのですか?」
「…………」
 小首をかしげる撫子。
 黙って銃をオート射撃する希平。
 地縛霊達は歯を食いしばって殴りかかった。
 撫子の顔面に氷塊が叩き付けられ、希平の胸を氷の剣が貫いた。
 表情の無い二人が、がくんと止まる。
 地縛霊二体は、生還したホラー映画のヒロインのような顔をした。
 いくらなんでも、上半身を全て氷に覆われた撫子が動き出すことは無いだろう。
 希平に至っては剣が胸を完全に貫通している。息は無いものと思われる。
 地縛霊が剣を引き抜こうとした……その時。
 手首を誰かが掴んだ。
 機械のように口を開け、虫のように鳴く――希平。
「損傷軽微、戦闘続行」
「――!?」
 地縛霊の胸にガンナイフを無理やり突き刺す。
 刃物を食い込ませると言うより物体を無理矢理肉体に押し込むと言うべきだろうか。
 はたしてガンナイフが半分まで沈み込んだ所で……あろうことか、希平はトリガーを連続で引きまくった。
 破裂した風船がそうであるように、地縛霊が跡形もなく消し飛ぶ。
 それを見たもう一体の地縛霊は……おそるおそる撫子の顔を見た。
「…………」
 氷の下の目が、地縛霊を見返した。
 パキリとヒビが入る。
 ヒビが広がり、氷塊の中から撫子は腕を突き出した。
 彼女を覆っていた全ての氷が弾け飛び、アイスガントレットが唸り始める。
「良いウォーミングアップになりました」
 そして撫子の手刀が、地縛霊を貫通した。

 吹雪の中を駆け抜ける久。
 白くかすむ景色の中、目を凝らしてかの者を見据えた。
 アイスレディ・ザ・ホワイトアウト。
 空間の主。抗体地縛霊。
 久は勇ましく笑った。
「氷雪を纏った和服美人。いいねそそるね、ハァハァ……!」
「……!?」
「ホワイトアウトさんのスリーサイズ目測! および胸(男らしくおっぱいと声に出して読むがいい)を揉みに行く最小動作演算――!」
「……!?」
 両手をわきわきさせて久は加速。
 抗体地縛霊ホワイトアウトは僅かに後ずさりした。
 二体の地縛霊が彼女の両脇から出撃。同時パンチを久に叩き込む。
 氷が纏わりつき久を苛む。こうなっては冗談を言うことなどできない!
「くっ、流石に寒い!」
 そして久は、冗談を捨て……。
「ホワイトアウトさんの胸(おっぱいだって言ってんだろ!)へダイブして温まる妄想開始ッ!」
「……!?!?!?」
 より酷い本音を吐き出した。
 本気で後ずさりするホワイトアウト。
 久は地縛霊二体の胸部へ同時に掌底を繰り出し、手に触れたものを本能のままに掴み取った。
 ギラリと光る眼鏡。
「女の子の胸には、沢山の夢が詰まっている……」
 ライトニングヴァイパーを発動させながら彼は叫んだ。
「そして男は――夢を掴む生き物だァァァァ!」
 ホワイトレディの本気パンチが炸裂した。
 きりもみ回転して吹っ飛ぶ久。
 肩で荒い息をするホワイトアウト。
 そこへ、寅靖が猛烈なスピードで突っ込んだ。
 振り上げた獣爪を炎が包み、あたかも炎が爪と化したかの如く、ぐわりと開く。
「――!!」
 瞬間的に氷の爪を形成。ホワイトアウトは寅靖を迎撃した。
 二つの爪が真っ向から激突。
 激しい水蒸気が吹き上がり、互いを覆う。
 寅靖の右半身を氷が、ホワイトアウトの左半身を炎が覆う。
「俺が凍るのが先か、貴様らを燃やし尽くすのが先か――試してみるか」
 宝剣を振り上げる寅靖。氷の剣を振り上げるホワイトアウト。
 宝剣を炎が包み、氷剣を冷気が包む。
 二人は同時に、相手の肩へ剣を突立てた。
 全身をそれぞれ炎と氷に覆われる二人。
 ホワイトレディは逸早く炎を振り払い、寅靖から一度距離をとる。
 対する寅靖の周囲には音の嵐が発生。氷を瞬く間に取り払う。
 目の色を取り戻す寅靖。
「厄は重なれば厄介、その粉雪掃わせて貰うぞ」
 その横で、凛斗は剣を握った。
「さぁ、貴様はどこまでもつかな」
 一瞬で間合いを詰め、ホワイトアウトの氷剣を黒影剣で破砕。
 二の太刀で氷の爪を粉砕した。
「ヴェルメリオの切れ味、存分に味わえ」
 目にも留まらぬ剣戟がホワイトアウトを襲う。
 空間を凍結させた板でギリギリ防ぎ続けるホワイトアウト。
 途端、腕の抗体ガントレットが唸りを上げた。
「――!」
 胸に向けて剣を突き出す凛斗。が、その切っ先は空中の粉雪を散らすのみ。
 瞳孔を僅かに開かせる凛斗。
 反射的に右を見やると、高速で地面を滑ったホワイトアウトが氷の刃を突き出していた。
 眼前5センチ。
 顔へ突き刺さるかと思われた刃はしかし、横から叩き込まれた寅靖の紅蓮撃で軌道を逸らされた。凛斗の頬に赤い筋が通る。
「先に俺を屍にしてからにしろ――できるものならな」
 寅靖の獣爪から、剣から、鬼面から、激しい炎が吹き上がる。
 爪を握る寅靖。
 咄嗟に氷の爪を発生させるホワイトアウト。
 ホワイトアウトと寅靖の腕が交差し、互いの顔を掴み合った。
 同士討ち――ではない。
 ホワイトアウトが腕を突き出すその刹那、凛斗の黒影剣が彼女の胴を一文字に切り裂いていたのだ。
「――ぁ」
 上半身から炎をあげ、ずるりと落ちるホワイトアウト。
 その瞬間、抗体空間『ホワイトアウト』は空間ごとひび割れ、瞬く間に破壊、消滅した。

 気付けば、少年少女は廃墟の中にいた。
 ある者は立ち尽くし、ある者は座り込み、ある者は倒れたまま天井を見上げた。

 戦いは終わった。
 語るべきことは、もう無い。


マスター:空白革命 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/04/27
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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