<リプレイ>
● 町はずれにある林道に現れるという地縛霊を倒すため、学園から現場へとはるばるやってきた錘江田・水歌(鬼火・b23273)達。 彼女達はまず看板やコーン、ロープ等を用い、一般人が現場へと入り込まないよう作業を開始し、協力しあった結果、作業はすぐに完了した。 「こうすれば、無関係な人が巻き込まれることもないですね」 そう言って一安心する波多野・のぞみ(真紅と漆黒の淑女・b16535)。 これでよほどの事がない限り、一般人が現場へと入り込むような事態は起きずにすむだろう。 「何人かはまた共に戦うことになったな」 集まった仲間達の顔ぶれを見ながらそう呟く叢雲・そうや(天微星・b44036)。 一度でも生死を共にした仲間がいるというのはきっと心強い事だろう。 「何があったのかは知らないけど、世界の全てを嫌いになってしまうなんて哀しすぎるよ」 いくら周りに当たり散らしたところで、結局傷つくのは地縛霊自身でしかない。 彼女にも楽しく過ごした日々があったはずであるし、そういった時の気持ちを思いだしてほしいと願う緋勇・龍麻(龍の伝承者・b04047)。 「彼女は一番最初に何を『憎んだ』んだろうな」 親か、教師か、恋人か、友達か、自分を殺した者か……それとも自分自身なのか。 何にしても、憎むだけでやめておけばよかったのにと江田島・龍次(探索者・b43569)は思う。 とはいえ彼女が一線を越えてしまった以上、最早情けは無用である。 「ま、何もかも嫌いだからって鞭振り回して良い理由にはならないよな」 どんな理由があったとしても、それを言い訳にして暴力を振るう事は絶対に許されないと双海・護(宵蜘蛛爪話・b06523)は思っているようであった。 「そろそろ時間ですわ。現場に向かいましょう」 時計を確認しながら、出雲・那美(慎ましき巫女・b24518)が仲間達にそう促す。 そうして能力者達は林道の中央目がけて歩き出し……やがて彼等は不思議な感覚に包まれ……気づくと、周りの枝がうねうねと気味悪く動き出していた。 「締付の抗体空間、私の茨の世界と似てますね」 その光景を見て、ぽつりとそう感想を呟く烏頭森・万葉(億千万の棘茨荊・b60331)。 確かに今回の抗体空間はヤドリギが使うアビリティによく似ているかもしれない。 「これが抗体ゴーストが作り出した抗体空間なのね」 方・瑞麗(魅惑の脚線美・b35580)もうねうねと動く枝を見て厄介な空間であると感じているようであったが、 「正直強敵だと思うけど、気合だけなら負けやしないわ!」 どんな不利な状況であろうと、彼女の闘志が消え去ったりはしないようであった。 ……そして、どこからともなく1人の少女が姿を現す。 彼女の手にムチが握りしめられていた事、何より全身から発せられる禍々しい殺気を放っていた事が、能力者達にそれが今回のターゲット……地縛霊である事を確信させた。 「ツインテールのねぇちゃん、ムチなんか持って女王様のつもりかー?」 地縛霊を挑発するようにそう言いながら、マリス・フェイネス(猫娘・b24392)はカードを取り出し、 「生憎とアタシにその趣味はないからアンタに従う気なんてないんだぜぃ!イグニッション!!」 彼女はそれを起動させ、両腕にアームブレードを装着する。 更に他の者達も続々とイグニッションを完了させ……そうして、能力者達と地縛霊の戦いの幕が開いた。
● 戦闘が開始されると同時に辺りの木々の枝が伸び、能力者達を絡め取ろうと襲いかかるが、能力者達はなんとかそれを振り払い、各々配置につきつつ強化を行っていく。 そしていち早く龍麻は地縛霊へと接敵するが、地縛霊はそんな彼目がけて力いっぱいムチを振るい彼の体をたたきつけ、大ダメージを与える。 とはいえさすがに日頃から鍛えているだけあり、彼にはまだ余裕すらうかがえた。 その間に他の前衛も地縛霊を囲みこんで強化を完了させていく。 「援護は任せてください」 前衛に立った仲間達にそう呼び掛けつつ、のぞみは体内に流れる微弱な生体電流を掌へと集束させ……それを撃ち放つ。 彼女が放ったライトニングヴァイパーは地縛霊に向かい直進し、直撃した瞬間、その体は閃光に包まれ、 「来な、ゲーム開始だ」 更に、距離を詰めてきていた龍次が斬馬刀に漆黒のオーラを纏わせながら腰を低く落とし、ぶぅぅんと音をたてながら力いっぱいそれを豪快に振りまわし、黒影剣による大きな横一文字の斬撃を地縛霊の体へと刻み込んだ。 そうして本格的に地縛霊へと攻撃を開始する能力者達であったが……再び辺りの木々が枝を伸ばして彼等の体にからみつき……今度は何名かが体を締め付けられてしまった。 それから逃れた水歌は万葉が最初に展開しておいた幻影兵団の効果を利用し、彼岸花と名付けられた両手の榊を振りまわし、離れた位置から地縛霊を攻撃し、 「回復はお任せくださいですの♪」 仲間達の状態異常を解除するべく那美は慈愛の舞を踊り……すると、みるみるうちに仲間達にからみついていた枝がほどけ、彼等の体を解放した。 「君の相手は、俺たちだ!」 そして龍麻は青龍の力を拳に込めて地縛霊の顔面へと龍顎拳叩き込む……が、地縛霊はそれをものともせず、ムチを手足の如く操って近づいてきた全ての能力の体を滅多打ちにして大ダメージを与えていき……、 「ぐっ……ぅ」 龍次はその攻撃に耐えきれず、その場に崩れ落ち、気絶してしまった。 なんとかそれに耐えきった瑞麗とマリスも一度後退し、虎紋覚醒と魔弾の射手をそれぞれ発動させて体力を回復させ、 「ヤドリギヒーリング!」 更に万葉は空中にハートマークを描き出す事により、マリスに愛の祝福を与えて体力を回復させていく。 後退した2人の代わりに護、のぞみ、そうやが前衛となり、護は紅蓮撃で地縛霊を切り裂き、のぞみはノーブルブラッドで自らを強化を行った。
● 「癒せ」 水歌は3人以上の仲間が枝に体を締めつけられた場合のみ慈愛の舞を発動しようとしていたが、那美が常時それを行っているためにその必要がなくなり、代わりに仲間達の体力の回復に努める。 彼女は古の時代に在った土蜘蛛の魂をこの地へといくつも呼び寄せ……それらは傷ついた能力者達の武器へと宿り、彼等に癒しと活力を与え、更にある程度仲間達に体力がある場合は幻影兵団の効力を利用した通常攻撃をしかけ、 「高天原の神々よ。我が舞をご照覧あれ!」 那美はひたすらに慈愛の舞を踊り続け、仲間達の状態異常を解除し続けていく。 その様はとても優雅で美しく……神秘的であった。 彼女がそうしてサポートに徹するからこそ、他の者達は安心して戦う事が出来るのである。 そして龍麻は一度後方へと下がり虎紋覚醒による自己回復、及び回復役からのサポートを受けてどうにか持ち直し、 「待たせたな。今から前衛に戻るよ」 彼は再び前線へと舞い戻り、地縛霊の顔面に再び龍顎拳を叩き込み、更に彼女へと飛びかかって龍尾脚による蹴りを次々と叩き込んでいく。 「相手をしてあげるわ」 瑞麗もまた龍麻同様青龍拳士の力をいかんなく発揮し、地縛霊へと距離を詰め、彼女の腹部目がけて青龍の力を宿した拳をねじ込むようにして叩き込み、更に一歩退いて高速回転し始め、そのスラリと伸びた美しい脚で地縛霊の体に連続で回し蹴りを放ち、 「これが中国拳法の力よ、理解した?」 フッと自信に満ちた笑みを浮かべつつ、彼女はダメ押しと言わんばかりに龍撃砲を一直線上に放射して地縛霊を襲う。 「何もかも嫌いか。ならせめてもの手向けだ、早々に逝けっ」 地縛霊を苦しみから救いだす方法……それは最早彼女を倒す以外にはない。 少しでも、一瞬でも早く彼女を救いだすため、護は紅蓮の炎を灯した両手の鎖剣で彼女の体を切り裂き、その反動でアビリティの使えない状態となるが、仲間の慈愛の舞がそれを解除し……彼は再度紅蓮撃による斬撃を繰り出す……が、 「キエロ……キエロォ!」 怒りに……そしてどこか悲しみに満ちた瞳で護を睨みつけ、力いっぱいムチを振りまわして彼をたたきつける地縛霊。 「俺は鞭で打たれて喜ぶ趣味は持ってないぞ」 そう強気な態度をとりつつも、護は大事をとって一度後方へと下がりノーブルブラッドを使用し、 「アタシとアンタ、どっちが強いか勝負だぜい!」 護を追撃しようとする地縛霊の行く手を遮るようにしてマリスが立ちはだかり、彼女は素早いフットワークで地縛霊を翻弄し……地縛霊の視界からマリスの姿が消え、ふと空を見上げるとそこにマリスの姿があり、彼女は三日月の軌道を描きながら地縛霊目がけて降下し、右肩へとクレセントファングを叩き込み、 「グッ……ニクイ、ニクイ!」 地縛霊はブンブンとムチを振りまわして彼女の体を打ちつけて大ダメージを与え、たまらずマリスも一度退くが、すぐ魔弾の射手で体力を回復させ、更に仲間にも傷を癒してもらい、 「舐めんなよー。アタシは誰にも負けないのだぁ!」 彼女は臆する事無く再び前進し、大地を蹴って再び宙を舞い、今度は地縛霊の左肩へとクレセントファングによる一撃を突き刺した。 「みなさん持ちこたえてください」 抗体兵器はやはり強力であった。 回復役は大忙しであり、万葉も言葉で仲間達を鼓舞しつつ、魔法のヤドリギによっていくつもハートマークを描き出して仲間達に愛の祝福を与え続け、これ以上重傷者が出ないようサポートに徹する。 「他の仲間たちには手出しさせません、覚悟しなさい!」 地縛霊の注意が自分へと向くよう彼女を挑発しつつ、のぞみは長杖、穢血の樫杖によって地縛霊を攻撃していくが、 「オマエモキライダ……ニクイ……!」 その甲斐があったというべきなのか、地縛霊の怒りの矛先は今度はのぞみへと向き、ビシィッと、痣が残ってしまうのではないかと思うほど強い一撃がのぞみへと炸裂するが、彼女はなんとか持ちこたえた。 「これ以上やらせん」 そうやは禍々しい呪いの力が込められた呪符、呪殺符を次々と地縛霊目がけて投げつけ、それらはぺたぺたと地縛霊の体へと張り付き……そしてその瞬間、地縛霊の体へと負の力が流れ込み、彼女の体にダメージを蓄積させていくのであった。
● 戦いも佳境に入り、さすがに能力者達にも疲労の色が見え始める。 とはいえ地縛霊も最初に比べると動きが鈍くなっており、消耗しているのはお互いさま、といった様子であった。 水歌、那美、万葉は引き続き他者の回復、状態異常解除に務め、かなり損傷してしまった龍麻もまた虎紋覚醒によって傷を癒す。 だがその間地縛霊が黙っているはずもなく、 「オマエタチガ……ニクイ……」 彼女は再びビュンビュンと音をたてながら右へ左へとムチを振りまわしまくり、接近してきていた全ての能力者達の体をたたきつけていき……そして、仲間達のために前衛に立ち続けていたのぞみも回復が間にあわず、遂に力尽き、倒れ込んでしまう。 更に他の者達もほとんどが回復のために一度後ろへ下がり……彼等と入れ替わって唯一護だけが前衛に立って紅蓮撃をしかけるものの、すぐさま地縛霊の反撃にあってしまう。 が、その反撃が地縛霊の最後の抵抗となった。 「さあ、私の後に続いて!」 「ああ、瑞麗、同時に仕掛けるぜ!」 攻撃直後の隙を狙い、瑞麗とマリスが同時に地縛霊へと襲いかかり、瑞麗はグッと握りしめた拳に青龍の力を宿らせ、マリスは大地を強く蹴って大空高く舞い上がり……そして、 「これが私達の力よ!」 腰を落としつつ、瑞麗は地縛霊の腹部へ龍顎拳を叩き込み、 「こいつで……とどめだぁ!」 それとほぼ同時にマリスが脳天へとクレセントファングを炸裂させ……彼女が着地し、瑞麗が拳を引き抜いた瞬間、地縛霊は体をゆっくりと後方へと傾き……やがてバタっと倒れ込み、徐々にその姿は薄れていき……、 「キライ……ダ……」 そう一言言い残し……彼女は完全に消滅した。 最後の最後まで、彼女が何を憎んでいたのかは能力者達にはわからずじまいであった。
● 「お休みなさい、どうかその恨みは置いていって頂戴ね」 恨んで手を出せば、その恨んだ者と同類になるだけなのだからと、水歌は天へと昇っていったであろう少女の魂へと語りかける。 「恨みは忘れて、天国で静かに暮らしなさい……」 瑞麗もまた願うようにしてそう呟きながら空を見上げ、静かに目を瞑る。 そして龍麻は二度と少女の魂が迷わないようにと祈りをこめながら、少女が消え去っていった辺りへとそっと花束を添えた。 「早朝から大人数で居たら散歩のお年寄りの邪魔だろうし、早々に帰ろうぜ。それとも朝飯何処かで喰っていくか」 そうして護は仲間達を朝食に誘いつつ帰還を促し……彼の意見に従い、能力者達は静けさを取り戻したその場をあとにしていく。 「……これで林道の平和は守れましたけど、なんだか対処療法なのです」 去り際、万葉はふと立ち止まって振り返り、もっと根本的に抗体ゴーストを生み出す源流を叩き潰さないといけないと感じる。 多発する抗体ゴースト事件、それが全てなくなるのはいつの日か……全ては銀誓館学園の能力者達の活躍にかかっている。
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参加者:10人
作成日:2011/05/27
得票数:カッコいい10
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冒険結果:成功!
重傷者:波多野・のぞみ(真紅と漆黒の淑女・b16535)
江田島・龍次(探索者・b43569)
死亡者:なし
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