抗体漢女とうつくしきせかい


<オープニング>


「ダーリン、待っておったぞ!」
 豪華な調度品の置かれた部屋の入り口で、気がつけば少年は『それ』の前に立っていた。服装は、女物のドレスだろう。手にしているのは、高貴な女性が使えば絵になりそうな五色の扇。
「どうしたんかのぅ? ワシのあまりの美しさに声も出ないのかもしれんが、立ち話も何じゃろうし……」
 腕は丸太のように太く。服をはち切れんがばかりに圧迫している中身は、少年の態度を訝しみつつ足下の鎖を鳴らす。
「まあ良いわ。照れ屋なダーリンをエスコートするのも一興じゃしのう」
 のしのしと近寄ってきた筋肉質の漢女は少年腕をつかむとゆっくりと歩き出す。
「はっ! ちょ、離し……」
 我に返った少年が腕をふりほどこうとしても漢女の手は指一本すら外すこともできず。
「……はぁ」
 少年は抵抗を諦めたかのように大人しくなる。
「何て美しい……」
 否、大人しくなったのではなくおかしくなっていた。
「もう、照れるではないか。ダーリンは口が上手いのぅ」
 煌めきを帯びた漢女は頬を染めて身をよじるとにやりと笑う。何というか肉食獣の笑みであった。少年がこの後どうなったかは、言うまでもない。

 
「と、まぁそんな光景が見えまして」
 現れた能力者達にそこまで言い終えると、運命予報士の少年は大きく息を吐き出した。
「抗体兵器を持った地縛霊が現れたので倒してきて欲しい」
 と、まあそんな訳らしい。
「場所はとある町の町はずれ。今は更地なんだけど、ここを若い男性が通ると地縛霊の特殊空間に取り込まれてしまうみたいなんだ」
 周囲に人がいればその人もご案内というタイプで、普通に考えれば条件の緩さからいつ犠牲が出てもおかしくないように思える。
「そして、犠牲は出るんだ。幸いにも僕が感知したのが早かったから、君達がその地縛霊を退治してくれれば、僕の見た少年も命を落とさずに済む」
 予報士の言わんとするところは明らかだった。
「了解、まゴースト退治が能力者の役目だからね」
 肩をすくめた梅咲・一花(ダンディーの追求者・bn0027)に予報士は目礼する。
「それで君達に退治して貰う地縛霊は『筋肉質の大男を無理矢理女装させたような見た目の実際には女性な地縛霊』が一体のみになる」
 この説明に場を一瞬沈黙が支配したとしても何もおかしいところはない。
「威力が固定されているのか一発では一般人でもかろうじて死なない程度の近接単体を対象とした接吻攻撃を得意にしていて……」
「接吻?」
「そう、キス。当たり所が悪いと唇に……」
 何とも恐ろしい攻撃である。ちなみに今ならもれなく超魅了の付与効果付きだとか。
「他に美女や美少女の集団を呼び出して20m全周囲の男性にキスの嵐を浴びせる範囲攻撃とかもできるかな」
 ちなみにこちら技にはダメージがなく運が良ければ回避できる魅了付与の範囲状態異常攻撃だ。まさに天国と地獄。
「それから、20m以内の相手一人に煌めきを帯びつつ視線を送り相手を魅了する技。これは少年を魅了したものだね」
 一応これにもダメージはない。
「と、ここまで聞く限り君達ならあまり生命の危機はなさそうに聞こえるかも知れないけれど」
 曲がりなりにも抗体兵器を持つ地縛霊である。
「君達が招待される地縛霊の抗体空間は、戦闘開始から一分後に大爆発を起こす」
 爆発の威力は凶悪で、爆発に巻き込まれてからの巻き返しはほぼ不可能だろうねと予報士は言う。
「いかにして時間内に地縛霊を倒すかが重要かな。地縛霊はタフだし、本来の攻撃力もかなり高いんだ」
 ダメージ固定攻撃を使ってこなければ更に厄介な相手だったのかも知れない。
 

「とはいうものの、単体だからね。きっと君達なら勝てるよ」
 勝てる勝てない以前の問題があったような気もしたが、予報士の少年はあえてそこに触れないようにしながら能力者達を送り出す。
「じゃあ、頑張って」
 凄くいい笑顔で。
 

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参加者
琉孔・セト(彼の蟲溢るる籠灯籠・b03188)
多々羅・瞳(蹈鞴姫・b05660)
的場・遼(もっこりスイーパー・b24389)
黒瀬・和真(黒のレガリス・b24533)
魔諭羅・夜魅(鬼蜘蛛闇姫・b29795)
シルフィール・ネルスラーダ(怪盗ナイトウィンド・b49532)
マヤ・アステカ(ククルカン・b74564)
佐々木・オトメン(は男の娘・b77241)
NPC:梅咲・一花(ダンディーの追求者・bn0027)




<リプレイ>

●遭遇
(「……しかし、なんだろうな」)
 抗体ゴースト、しかも時間制限有りでの打倒。いくら強敵であろうとも依頼を引き受けたならばやるしかない。ここまでは、黒瀬・和真(黒のレガリス・b24533)にもわかっていた。ただ。
(「ものっそい可愛らしい女の子なら兎も角。筋肉質の野郎を女装させたような外見の地縛霊に魅了させられたら嫌すぎるな」)
 せいぜい気をつけますかねぇ、と心の中で続けた言葉はどこかフラグ的な匂いを漂わせる。
「若い男っていうと、佐々木がそうか?」
 和真を現実に引き戻したのは的場・遼(もっこりスイーパー・b24389)の声だった。遼の視線は佐々木・オトメン(は男の娘・b77241)に向いていて、ちょうど誰が囮として妥当なのかとかそんなところなのだろう。――今回倒すべき地縛霊は若い男性を欲する。
「九分の四、ね」
 集まった能力者九人の内、男性は四名。一番若いのはオトメン。
「周囲に一般人はいないようだ。今のうちに進めよう!」
「あ、ああ」
「そうだね」
 側を通る道の先から戻ってきたマヤ・アステカ(ククルカン・b74564)に促され、男性陣が更地に足を踏み入れる。
「男性陣は、素敵な恋をしてね♪」
 抗体空間にご招待願う為、更に女性陣が続く形なのだが、シルフィール・ネルスラーダ(怪盗ナイトウィンド・b49532)の言う恋とは誰との恋を指すものなのか。
「いや、俺は既に恋人居るんだけどね」
 そう返す間もなく、梅咲・一花(ダンディーの追求者・bn0027)の視界は一瞬歪み。
「うふふー、家に篭ってたいのに、オトメンなんで此処にいるんだろー」
 オトメンの口から疑問がこぼれる。現実逃避にも見えるのは、状況が状況だからか。気がつけば能力者達は地縛霊の抗体空間の中にいた。
「まぁ来ちゃったのはしょうがないよねーイグニッショ〜ン……」
 なにやら自己の完結を見てかざすオトメンの手には一枚のイグニッションカード。
「フフ、お待たせ致しましたわラジカル☆ウィーター今回も華麗に参上ですわ!」
 さて、イグニッションによる魔女っ娘化(ただし男の娘)は逃げなのか、対抗する為なのか。
「ダーリン、待っておったぞ……ぬ?」
 少なくとも現れた『それ』を面食らわせる効果はあったらしい。豪華な調度品に囲まれた部屋に立つ一体の漢女地縛霊を。
「……四年ほど前に、似たような敵を相手にしたことがあるわね」
 琉孔・セト(彼の蟲溢るる籠灯籠・b03188)の意識が一瞬だけ時を遡る。記憶に浮かび上がる白い色。
「これで、本当に美女だったら、絵になるのにね……」
 記憶の中も、記憶から舞い戻っても相応にひどい光景なのは、中央に据えられた存在が問題なのだろう。輝く調度品の方に目をそらしつつセトは笑顔を引きつらせていた。
「どうしたんかのぅ? ワシのあまりの美しさに声も出ないのかもしれんが」
「えーと……なるほど。鍛え過ぎるといけない、ということですね。心に刻みます」
「時間が来たら大爆発か。もの凄くスリリングな展開だけど、敵があんなんだと、コントの爆発オチみたいだな」
 能力者達の様子を誤解した地縛霊の一言で多々羅・瞳(蹈鞴姫・b05660)と魔諭羅・夜魅(鬼蜘蛛闇姫・b29795)が口を開いたのは、漢女の戯言を否定する意味もあったのだろう。
「むぅ、照れるのもわかるが時には素直な反応……」
「ということで、今回はいつもの降魔杵はお休みで、アーチェリーで参戦です。鍛え過ぎてはダメですから! あぁ、私もかわいいフリフリのドレスとか着たかったなぁ……というのは置いておいて」
 そして、瞳は地縛霊の戯言を敢えて無視した。
(「以前時間制限のある依頼で強化せずに戦ったら、敵の防御力以上のダメージ与えられなくて、結局任務失敗しちまったからな……」)
 夜魅は過去の苦い記憶を思い出し、決意を固める。
「今回はあの時みたいにはいかないぜ!」
 相手が人に危害を及ぼすゴーストである以上、ここで――。
「無理やり殿方を篭絡するような狼藉者はワタクシが成敗いたしますわよ☆」
「悦に入ってるところ悪いけど、さくっと倒しちゃいましょう」
「だな、あんな悪夢はさっさとバラすに限るぜ!」
 オトメンの宣言に続く形でセトが囁いた言葉へ、遼は全面的に同意した。

●惨劇注意
「参りましょうか」
「ぬっ!」
 瞳の声にあわせるように風が踊り、オトメンは床を蹴って風と共に地縛霊の元へと向かう。オトメンが狙うは、石兵点穴による漢女の石化。
「なるほどね」
 相手の凶悪な攻撃手段を考えれば、動きを止めて攻撃を封じる石化は実に効果的と言えるだろう。上手く石化してくれれば矢面に立たされる筈だった他の男性陣は頭が上がらないに違いない。ちなみに、抗体ゴーストが意志の力で肉体を凌駕するというのはデマであるが、それはそれとして。
「っ!これは……まさか」
 問題は、石兵点穴と同時に地縛霊を襲ったものだった。地縛霊の足下に集まった風が上昇気流に転じる、上昇気流は強力な浮力となって『それ』を空中へ持ち上げるのだが。
「ぬわぁぁぁっ、上昇気流さんの意地悪ーッ!」
 ドレスが風邪でめくり上がり、危険な何かが視覚的ダメージとなって能力者を襲う。
「ぐあああっ、目が……目がっ」
 類い希なる犯罪的な光景に誰かが目を押さえて呻いた。ジェットウィンド恐るべし、であった。
「おのれっ、何という破廉恥攻撃を……」
 頬を染めてモジモジする漢女という危険な光景にコンボで繋げた一撃は、ダメージこそ与えたものの、見た者にもまたある種のダメージを与えていたように思える。
「くそっ、まったく目が潰れそうだぜ! ……ん?」
 肉体的なダメージはない筈なのに僅かによろめいた遼は視界を覆っていた手を外して気づく。風が、再び漢女に集い始めていた。
「ぬっ、ぬお……」
「ちょ、ちょっと待」
「悠久を吹き行き過ぎゆく風よ。我が敵を捕らえよ!」
 シルフィールの命じるままに巻き起こった上昇気流は二度目の惨事を巻き起こす――かと思われた。
「な、なんじゃ……ワシのスカートが」
 惨事を防いだのは、先ほどオトメンの放った石兵点穴。なんと石化したスカートが形をとどめ、スカートめくりをガードしたのだ。石兵点穴、意外な方向に大活躍である。
「助かったぜ」
 漏れ出た声は、この地縛霊を直視したくない能力者にとって共通のものだったに違いない。
「ぬうっ、一度ならず二度までも……ワシのセクシーシーンを演出しおって」
 誰がそんなことを望んだというのか。
「希望した覚えはないけどな」
「おのれ、この期に及んで言い逃れを……」
 漢女は正直な感想にも聞く耳は持たず、己が力で気の流れを断絶した力を消し飛ばす。
「まずは妙な真似をしたおぬしからゲッチューさせて貰うぞぉぉぉッ!」
 そして、なんだかんだあってこの時点で漢女に一番近いのは、石兵点穴を仕掛けたオトメンである。
「っ、そんな趣味はございませんが……」
「覚悟ぉぉぉッ!」
 身構えるオトメンへと顔面を寄せて行く地縛霊の咆吼は、どう考えても誰かの唇を狙う時のかけ声ではなかった。
「ちゅっ」
 二つの影が交差し、一つの影が唇を手の甲でぬぐいながら飛びずさる。
「まずは一人、ワシの魅力でめろりんきゅー、じゃぁっ!」
「佐々木ーッ!」
 唇がどこに落とされたかは、想像にお任せしたい。
「これは、……自粛するべきだったなあ」
 目の前の惨劇を見て和真に戦慄が走る、いろいろな意味での死地に飛び込んだ後悔をしても誰も責めはしないだろう。
「ま、ゴースト退治が能力者の役目だからね」
 帽子を目深にかぶり直しつつ呟いた一花もまた、そう。恋人の居る身としては喰らうわけにはいかない種の攻撃が目の前で行われていたのだから。
「ううっ、寒気がするぜ! あんなのくらったら一生のトラウマになっちまうわ!」
 もちろん、恋人が居なくても嫌なものは嫌、道理である。
「俺が仕掛ける。援護を頼むぜ!」
「ああ、いくぜ」
 一刻も早く、『あれ』を倒す。ただ、一つの思いで和真は頷き、鉄の処女を召還する。
「ブチ込めっ!」
「内側から爆ぜやがれ!」
「ぐうっ……ぬっ?!」
 聖葬メイデン。開かれた拷問器具の中に遼の視線が殺傷力を伴って漢女地縛霊を押し込んだ。
「うぐあああああああああッ!」
 閉じられた鉄の処女の中から絶叫が迸り、二人の能力者が真剣そのものの表情で、消えゆく拷問器具を凝視する。
「……やったかな?」
「流石にそう簡単には終わらないと思うぜ」
 他の能力者達も見守る中、鉄の処女は完全に消え去って。
「やってくれたのう……」
「くっ」
「羽毛もつ蛇よ、汝が使徒に祝福を与えたまえ!」
 現れた漢女に夜魅と一花が身構える中、マヤも前面に魔法陣を展開する。
「あれで終わったら都合が良すぎだぞ」
 やはりというか、何というか、戦いは終わらなかったのだ。

●誘惑の世界
「しっかりして下さい!」
 瞳の起こした清らかな風が、調度品のテーブルクロスをそよがせる。
「あら?」
 浄化の風は仲間を我に返らせ、浄化のサイクロンは不要と判断したシルフィールが地縛霊を指さし指示を出す。
「次は、あの敵を狙ってください!」
「いや、あの敵も何も今回の相手は単体なんだけど……」
 一見平静そうに見えて、シルフィールも内心では動揺しているのかも知れない。
「今度こそしばらくじっとしていて貰いますわよ」
「悠久を吹き行き……」
 再度の石化を狙い果敢に攻める仲間の背を見て、シルフィールも漢女の足下に風を集め始める。移動封じを狙っているのだろう、少なくとも足を止められれば、被害に遭うのは接近戦を挑む者に限られるのだから。
「って、理由はわかるがそれはつまり……」
「上昇気流さんの意地悪ーッ!」
 残酷映像再臨であった。
「おのれ、いくらワシがかわいいからってスカートめくりを繰り返すにも程があるぞ……」
 多分、ツッコミを入れても漢女は聞くまい。
「仕方ない、取り巻きシスターズを呼んでワシへ向けられた欲望の矛先をそらしてくれるわぁッ!」
「なっ」
 むしろこの勘違いは歓迎すべきなのか。
「あなた達、狙われているわ!」
「「いらっしゃいませー!」」
 シルフィールの警告が飛び、抗体空間に突如出現した少女達の声がハモる。
「わー、このお兄さんかっこいい」
「私、こっちの人ーかわいいし好みかもー」
「じゃ、アタシはそこの彼で」
「我が前で、友をやらせはせん!」
 一斉に男性に群がり始めた少女達からマヤが身を挺して男性を庇おうとするも、多勢に無勢というか広範囲状態異常攻撃である、流石に庇うのには無理があった。ちなみにこの美少女集団はゴーストではなく攻撃時にのみ出現する被召還者、アヤカシの群れを行使した時に出現する小妖怪と扱いは同じもの。
「アークヘリオンで一掃できればいいのに」
 とセトが思ったとしても、撃退することは叶わないのだ。
「目を覚ませ!」
 出来る事があるとすれば、叫ぶ事ぐらいで。
「……って、いかん俺様……ゴーストの誘惑に乗ってどうする!」
 運と女性陣の気遣いに助けられ、男達は美少女集団の誘惑に打ち勝った。
「ぬうっ、シスターズの年齢層が低すぎたか……」
「時間がねぇんだ。最大火力でガンガン行くぜっ!」
 地縛霊の的はずれな考察をスルーしつつ、夜魅が二振りの長剣に炎を宿して跳躍する。
「ぬああっ」
 紅蓮の一撃が抗体空間内に炎の花を咲かせ、花は漢女を飲み込むように広がり始めた。
「九つの鍵を開きて、煉獄の地より出でよ。燃え盛る炎の神剣!」
 マヤの撃ち出した魔弾が、漢女を貫き攻撃は更に続く。能力者達を駆り立てるものは時間切れ後の爆発へ抱く恐怖だけではないだろう。
「倒すぜ、なんとしても」
 倒さなければ接吻が来る。
「それは同感だけどね、近接戦の危険度が洒落にならないレベルのような」
「梅咲……すまん!」
 獣撃拳を繰り出しつつポツリとこぼした一花に遼は謝った。
「彼女持ちで妬ましいのでそのまま犠牲になってくれ」
 などと言えるはずもない。
「話しをしている時間はないわ。一気にいくわよ!」
「任せときな!」
「了解」
 ただ、シルフィールの正論による介入をもって二人は目の前の戦いに気持ちを切り替えた。制限時間は六十秒、うち半分は焦燥感と背中合わせの戦いの中過ぎ去っていたのだ。
「そのドレス、穴だらけにしたいわ」
 それもそれで目に毒かしらね、と続けながらセトは投擲したエネルギーの槍で漢女を貫き。
「流石に、抗体空間の時間切れ、とか笑えないからな……」
 呟きながら和真は聖葬メイデンを喚び出して。
「ぐふうっ……なんの、取り巻きシスターズ第二弾じゃぁぁッ!」
「っ!」
 鉄の処女から三度目の生還を果たしつつ、漢女がけしかけた美女に能力者達は呑まれる。
「って、やっぱりスルーなんだ」
 男性能力者だけが。
「うむ、ガールズよくやった。そこのおぬし、ワシの傷を癒すんじゃ」
「任せときな!」
 そして、うっかり魅了されて黒燐奏甲を施そうと自分から漢女に近づいていった男がこの後どうなったかは敢えて伏せておこう。時に、アビリティの選択は生死を分かつ。
「空と大地を吹きゆく風よ。全ての穢れを吹き払って!」
「犠牲になった遼の為にも負けられないぜ!」
 浄化のサイクロンに封術を解かれた夜魅は再度漢女に紅蓮撃を放つ。
「ぬおおっ」
 地縛霊の身体が燃えながら傾ぎ、やがて漢女は崩れ落ちる。能力者達の攻撃の前に。

●生還
「一分しか経ってないはずなのに、外の空気がとてもおいしいわ……」
 気がつけば、能力者達は元の更地に戻っていた。
「怪我をされている方は?」
 瞳が仲間達の怪我の度合いを調べようとするも、傷らしい傷を負っている者は居ない。少なくとも外傷的な意味では。そもそも爆発を除けば、一般人すら死なないレベルの接吻以外に与ダメージ攻撃を持たない相手だったのだ、怪我をする方がおかしいのである。
「オホホ、大勝利でございますわね」
 それでは変身を解きましょう、とオトメンは起動を解き、身体の違和感に顔をしかめた。
「……うふ……ふ、なんだろう。今回はやけに疲れた……というか体中痛いけれど、気のせい?」
 ひょっとしたら魅了されたせいで記憶から抜け落ちているのかも知れない。一瞬の悪夢を。
「これも良い経験だと思って次に活かせばいいのでは?」
 マヤはそんな被害者にせめて慰めてやろうとフォローになってない提案をし。
「そのダメージは私には癒やせません。もっと可愛い娘に……って、佐々木さん!?」
 被害者に自身より華を感じて瞳は全力で項垂れる。
「うぅ、男の子に負けるなんて……女子力、磨きます」
 それは一つの誓い。
「それにしても、何であんなのにキスや視線で魅了されちまうんだ? なるとしたら麻痺か石化だろ」
 本気で不思議がり首を傾げた夜魅は答を求めて周囲を見回し。
「色々な意味で、非常に疲れる相手だったね」
 セトは祈った。今後似通った脅威と遭遇しないことを。 


マスター:聖山葵 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/05/20
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
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