ビースト婆娑羅 The マッスル文鳥

<オープニング>


 文鳥がゆっくりと上半身をグラインドしていた。
 正面から見て上半身で円を描くようなスムーズな動き。
 後方の文鳥はタイミングをややずらして同様の動作をしていた。
 それが実に12体。
 全員揃って、2m級のマッスルボディだった。
 その名も雄々しき――マッスル文鳥!
 
「……と、言うわけだ」
 同様の動きをしながら王子団十郎……いやさダンザイルは言った。
「ああ、チュンチュントレイン的な?」
「トキメキを運ぶ的な?」
 妙な反応をする一同。
 ダンザイルは動きを止めて頷いた。
「そうだ。某所山中に出現したこの妖獣を、皆の手で倒してほしい」
 いいからお前その態勢やめろ。
 
 小鳥型妖獣マッスル文鳥。
 全長2mのグレートマッスルどもであり、マッスルすぎて飛べないと言う。
「うわあ意味がない」
「そして全然小鳥じゃない」
 近接でのマッスルパンチを武器に戦うらしく、ぶっちゃけ屈強な男子達を相手にしてるのとあんまり変わらないぞと屈強な男子代表王子さんが言っていた。
 王子様が言うんだから間違いないよ。
「ちなみに、どうやら近辺にメガリスゴースト『打出の小槌』タイプが出現するらしい……」
 ちなみに、さっきまでと同じ態勢で王子は言った。
「とにかく皆、頼んだぞ!」

マスターからのコメントを見る

参加者
日下部・砌(ゲイルトレーサー・b01206)
日向・るり(蒼空に揺れる向日葵・b06322)
黒鯨・珠子(原初の狂気・b28851)
杜塚・紗耶(朧灯と踊る・b52278)
博麗・早夢(高校生真符術士・b53534)
角田・堅一郎(真ゾンビハンター・b57323)
舞城・笑弥(運命に抗う娘・b59830)
ファルク・エーデンハルト(伏虎魂絆・b61354)
雹牙堂・寧(正義系女子・b81307)




<リプレイ>

●文鳥を知っていますか?
 カエデチョウ科の鳥。全長約15センチ。体は灰色で、頭や尾が黒、ほおが白、くちばしは太く赤い。飼い鳥とされ、全身純白のものもある。
 ……と、されていましたが。
「ピー……」
「ピー……」
「ピー……」
 全長2m近い屈強な鳥形妖獣がそこには居た。
 丸太のような脚。
 12個くらいに割れた腹。
 盛り上がる腕の力こぶ。
 合計12体の鳥形妖獣『マッスル文鳥』は謎の回転運動を繰り返していた。
 ファーンファーンファーンウィザステッ――。
「いや、おかしいだろ」
 日下部・砌(ゲイルトレーサー・b01206)はおもむろに割り込んだ。
「飛べない! 小鳥じゃない! マッチョ!」
 マッスル文鳥の各部位をアップにしていく。
 極めつけに、白い歯を光らせる顔のアップを映して砌は言った。
「ゴーストじゃなけりゃ悪い夢で済ませたいんだけど」
「と言うか、鳥類の面影ないじゃないですか! なんですかあのプレスリーみたいな腕!」
 舞城・笑弥(運命に抗う娘・b59830)は未だ回転を続けるマッスル文鳥を指差して口角泡を飛ばした。
 顔にかかって嫌そうにするヤツフサ(ケルベロス)。
「どうあがいても可愛くないですよあれ! あと小さくない!」
「それはさっき俺が言った」
 二人の後ろに隠れるようにして博麗・早夢(高校生真符術士・b53534)もチュンチュントレインを覗き込む。
「もう、嘴と羽くらいしか鳥要素残ってないだろあれ」
「だよね」
 高二系のフリッカー系。雹牙堂・寧(正義系女子・b81307)が頷いた。
「でもさ、あれがジュウシマツじゃなくてよかったよね」
「…………」
「…………」
 想像、しちゃおうか?
 八頭身のジュウシマツが、顔の左右で掌を見せながら時間差回転。
 バーカ!
 ビガッ!
「うわ、イラッときた系」
「身に覚えのない想像で怒られてマッスル文鳥も不本意でしょうに」
 笑弥とヤツフサはほぼ同時に頷いたのだった。

 マッスル文鳥のフォルムに絶望する彼らとは別に、日向・るり(蒼空に揺れる向日葵・b06322)もまた望みを絶たれていた。
「焼き鳥どこですか!?」
 ああっ、いつもの癖がっ!
 鳥はあそこですよ。あの回転してるやつ。
「あれはナマモノって言うんですよ」
 笑顔で言うるりである。
「たくましくなりすぎて美味しそうに見えないんですよ。食べられませんよ……」
 だから何故妖獣を見るとまず食べる想像をするのか。
 長年欠食女子をやっていればこのくらいデフォなのだろうか。
 などと、るりがうにうに悩んでいると。
「むぃ♪ 食べ放題なのか。当分空腹にはならなそうだな」
 黒鯨・珠子(原初の狂気・b28851)が実に嬉しそうにのたまった。
「……食べれるです?」
「たべる」
「……おいしいです?」
「たぶん」
「…………」
「…………」
 欠食女子と雑食女子がシンパシーを交わした。
 それは、余人には到底分かりえないものであったという。

 まあ世の中変な奴はいるものだ。
 ここからは是非普通の人を描きたいものである。でないとこのパート変態だらけになっちゃいますので。
「このゴースト、どういう思念で生まれたんだろ……」
 杜塚・紗耶(朧灯と踊る・b52278)が後ろの二人とチューチュー回転しながら呟いた。
 何故かマッスル文鳥達と向かい合っている。
 ダメだこれ変態ばっかりだ!
 っていうかお前らいつまで回ってるつもりだ!
「所でだ……マッスル文鳥を略してマッ鳥(マッチョ)と呼ぶのはどうだ」
 あ、それイイですね。角田・堅一郎(真ゾンビハンター・b57323)さんが言ってくれました。
 裸エプロン(上半身)で。
 …………。
「重要な戦いの場での恰好だそうだが、似合うか?」
「おいおい、それは良い人に見せる格好だぞ。俺は一向に構わないが」
 後ろでズレた回転をしつつファルク・エーデンハルト(伏虎魂絆・b61354)が答えた。
 熊の着ぐるみ姿で。
 …………。
「これはファルックマ! マッ鳥など三分で料理してやろう!」
「フ、熊は珍味だそうだな」
 あれ、なんだろうこの空間。特殊空間か何かかな。
 筋肉の絆で結ばれた二人がいかれた格好で見つめ合ってるように見えるんだけど、どう思います紗耶さん。
「よーし、それじゃあ張り切って三分クッキングだよー!」
 うわだめだ気にしてない!

●ムキムキ系のチュンチュン系
 と、言うわけで。
「アーユーレディ!?」
「「いえー!」」
「「ピー!」」
 ヘッドホンを片手で押さえ、寧は指を高く上げた。
 拳を突き上げる一同。
 寧はノリノリで再生ボタンを押しこんだ。
「ミュージック、スターット!」
 流れ出すおなじみの音楽。三分間でビーフシチューだろうが七面鳥焼きだろうか作って見せそうなあの音楽である。事情につきタイトルは明かせない。
 テケレッテテテテ、テケレッテテテテ――。
 とりあえずプレイヤーの上で回転するレコードでも想像して頂きたい。絵柄はペンギン立ちするマッ鳥で。
「うー、長時間見てたらよっちまいそうだぜ……」
 砌は一度頭をぐらんとやってから、ナイフをしっかり持ち直した。
 ――行くぜ!
「銀誓館学園提供、マッ鳥三分クッキング」
「本日のメニューは焼きマッ鳥。まずは鳥らしくお空に飛ばしてあげましょう」
 早夢と砌が同時にジェットウィンドを発動。
 突然の上昇気流に、回転中のマッ鳥二匹がものの見事に吹き上げられた。
「飛ばぬなら、料理しちまえマッスル文鳥!」
「――字余り」
「「ピピー!」」
 いい当たりだったのだろう。空中でじたばたしたまま降りてこれないマッ鳥。おまえ鳥じゃなかったの?
 そこへ、ピンクのツインテールを靡かせた着ぐるみファルックマが飛び掛った。何言ってんのか訳が分からないかもしれないが、本当にそうなんだから仕方がない。
「諸君、クッキング開始だ!」
「おう!」
「本日のメニューは焼きマッ鳥でございます!」
「それはさっき言った!」
 剣を抜いたファルックマ。ハンマーを掲げたエプロン堅一郎。間に挟まれても何故か楽しげな笑弥という三人組が、浮いたマッ鳥目がけて突撃したのである。
「まずは肉を叩いて柔らかくしておこう」
 言葉の通じない人代表みたいなハンマーを振り下ろし、堅一郎はマッ鳥を叩き落とす。
 翻るエプロン。
 地面にサンドされたマッ鳥。その足を掴みあげ、思いっきり持ち上げてから地面に叩きつけた。
 膨張する筋肉。
 飛び散る汗。
 あとエプロン。
「歯ごたえも良くしなくてはな」
「下ごしらえですね。ヤツフサッ」
 ビッと指を向ける笑弥。ヤツフサはこいつ何言ってんだろうという目をしつつ、マッ鳥達にアイアンチャージを仕掛けた。
「今日はつまみ食いしてもいいからね!」
 俄然やる気の笑弥だった。食えるかよという目をしてブレーキをかけるヤツフサ。
 マッ鳥は二匹揃って地面に転がった。こう見えて素早さはないようである。
 剣片手ににじり寄るインテールのファルックマ。
 まずはスラッシュ一閃。
「肉に切り込みを入れることで味がしみやすく!」
 更に一閃。
「鶏肉は焼いてもジューシー揚げてもジューシー蒸してもファンタスティックな万能食材だとおもうのだがどうか!」
「スモークとかもどうですか!」
「Goodだ!」
 ムリクリ三分クッキングはまだまだ続く。

「うりゃー! 残りの食材は保存待機ー!」
 紗耶がマッ鳥に向けて幻楼七星光を連射していた。
 必死でかわすマッ鳥達。
 無理矢理翻訳してみるとこんな感じである。
「ピー!(ぐあー! 俺の筋肉がー! 大胸筋から僧帽筋までが石に侵されていくー!)」
「ピー!(俺の腓腹筋から大臀筋にかけてもだー!)」
「ピー!(ブラザー!)」
 対する紗耶は涼しいものである。
「一匹ずつの集中調理ですよ奥さん」
「うわーん可愛くない! 可愛くないですよー!」
 一方るりはマッ鳥に悲鳴を上げながら呪いの魔眼を連射していた。
 泣いてんだか撃ってんだかわからない。
「文鳥にあるまじきごつい姿……せめて可愛ければよかったのに!」
「ピー!」
 魔眼から逃げ回るマッ鳥達。
 そんな彼らを追いかける奴がいた。珠子だった。
「むぃ♪」
「ピー!?」
「むむぃ♪」
「ピピー!?」
 本能からくる全力逃避である。
 なんか、捕まったら頭から食われる気がするのだ。死んだら消滅する身なれど。
「速い……そうか、これは、狩りか……」
 追いかけながら何かぶつぶつ呟いてるし。
「懐かしい……ああ、狩り……狩りなのか……」
 なんか心なしか恍惚とした顔をしていらっしゃるし。
「ピピー!」
「ピー!」
 一人が馬乗りにされてスラッシュロンド地獄に陥る。その隙に別のマッ鳥達は逃げ惑った。
 その様子を見てるり達は……。
「鶏シメる時の光景だ、これ」
「もしくは七面鳥だ」
 何かほんわかしたものを感じていたそうな。

●そして2時間殴り続けたお肉がこちらです!
「ピー」
 おはよーございます(小声で)。
 現在、一匹のマッ鳥さんが眠っております。
 どうやら早夢の竜巻導眠符のようですね。
 おっと、ファルクが近づいていきました。顔を覗き込んでいるぞ……。
「フフフ、いくらマッスルでも鳥は鳥。折角だから撫でまわしておくか」
 などと。
 ファルクはマッ鳥の頭やら肩やら腹筋やら大腿筋やらを撫でまわした。
 言い換えると、ツインテールのファルックマが眠りこけたマッスル文鳥を撫でまわしているのである。別に独自進化し過ぎたネオガラパゴスの光景とかそういうのではない。
「ファルクさん、そろそろ」
 ピンポイントに焼き色を付けておきましょう、とか言いながらマッ鳥にじりじり神秘攻撃しかけていた笑弥が顔を上げた。
 網目状に焼き目がついたマッ鳥が顔を覆って泣いている。苛め現場じゃないのかこれは。
 だがマッ鳥も妖獣。俺たちだって黙っちゃいないぜとばかりにパンプアップして襲い掛かってくる。
「む、避けろ寧!」
「この期に及んで!? うわー!」
 マッ鳥ドロップキックを食らってごろんごろん転がる寧。
「もー! 文鳥のキュートさが欠片も無いみたいな!」
「ピー!」
 トドメだ小娘ぇ、みたいな声をあげて飛び掛るマッ鳥。
 荒ぶる文鳥のポーズ。
「ピンチの時こそ燃える、みたいなっ!」
 寧はシャープに構えるとヘブンズパッションを発動。傷を修復しつつマッ鳥のパンチを受け止めた。
 寧的に言い換えると――。
 寧系がシャープ系に構える系でそしたらヘブンズパッション系みたいな。傷も修復しちゃった系でマッ鳥系のパンチ系もマジ受け止めちゃった系みたいな。
「……そこまでは言わない系」
 目を逸らすお寧系。
「おねえ系言うな!」
「調理手順はカンターン!」
 寧が振り返ったその瞬間、パンチを繰り出していたマッ鳥に紗耶の天妖九尾穿がぶっ刺さった。
「串をしっかりさしましてー」
 バールのようなものを取り出す紗耶。
「ここで道具を準備しましてー」
 マッ鳥の上で振り上げ思いっきりぶっ叩いた。
 それはもう叩きまくった。
 これが太鼓ゲーだったら『20コンボー!』とか言ってたかもしれない。
 最後に大太鼓を叩いて、真っ赤に染まったマッ鳥を蹴り転がす紗耶。
「ねっ、簡単でしょ?」
「そんな清涼飲料水のCMみたいな顔で言われても」
「ようしよく叩いた後は焼き鳥だ!」
 ファルクが謎のポーズで自己主張を開始する。
 堅一郎もハンマーを肩に担いで放火のポーズ。
「焼き鳥ですか? 手伝うよー!」
 シャラアアアアアという擬音を纏って早夢が飛び掛る。
 ゴッドウィンドファントムを仕掛けた。
 当たった。
「あれ、印象小さいな?」
「ピー!?」
 マッ鳥はきりもみ回転して吹っ飛んだ。
「む、今だ!」
 堅一郎渾身のバレットインフェルノ炸裂。一緒にファルクの暴走黒燐弾も炸裂。
 激しい炎が巻き起こり、マッ鳥達を火の海に沈めていく。
「火力は正義だ!」
「踊れ踊れぇ!」
「「ピピピー!?」」
 これではどちらが悪役か分かったものではない。
 が、本当にこういう人たちだから仕方がない。
「まあ焼いても食べられないですけどね」
「こんがり焼けてるのに美味しそうに見えない……」
 早夢とるりが妙にがっかりした顔をした。
 るりは気を取りなおして黒燐奏甲。
「はいっ、ブースト準備おっけーです☆」
 びしっと敬礼ポーズをして、るりは残りのマッ鳥(燃えてる)に飛び掛った。
 悪滅スピナー大回転。
「突撃隣のスピナーです!」
「ピー!」
 もとより焦げ焦げで死にかけていたマッ鳥達はみるみる消滅していく。
「うおお焼き肉なのかー!」
 珠子も一緒にスラッシュロンド。
 逃げ遅れたマッ鳥が次々に餌食となった。
 妖獣なのに逃げ遅れっておかしいですけどね。
 そんな光景を砌はジェットウィンドがてらに眺めていた。
「いや、まあ、今更こういうのもどうかと思うんだが……」
「上からくるぞ〜」
「妖獣を料理しようってのは……あん?」
 上を見上げる砌。
 両腕両足を振り上げたマッ鳥が上空からのドロップを仕掛けていた。
「ピー!」
「うおあー!?」
 めぎょっと潰される砌。
 押しつぶした当のマッ鳥は、むぃーと鳴きながら転がってきた珠子に弾き飛ばされた。
「ええい、大人しく料理されやがれっての!」
 起き上がって構える砌。
 同じく起き上がって身構えるマッ鳥。
「焼きマッ鳥レシピ最後の一行……」
「ピ……」
 互い同時に地面を蹴った。
 距離がみるみる縮まる。腕を振り上げるマッ鳥。
 ナイフを握る砌。
「一口サイズに切り分けて、完成!」
「ピー!」
 すれ違いざま、砌のスラッシュが決まった。がくりと倒れるマッ鳥。
 こうして、銀誓館三分クッキングは終了したのだった。

 いかがだったでしょうか。奥さんもご家庭で試してみた下さいね!
 後半のメニューは……おおっと、これはヒ・ミ・ツ!
 次回もお楽しみに!


マスター:空白革命 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:9人
作成日:2011/06/29
得票数:笑える15 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。