蕪菜鈴菜・大剣戟 〜『思い出の場所』攻防戦〜


<オープニング>


 花園の真ん中に、着流しの少女が立っていた。
 吹けば飛びそうな細腕。一里も歩けば挫けそうな脚。透き通るような白い肌。
 いつも誰かの後ろに隠れていそうな、気の小さそうな少女であった。
 けれど今は、誰の背中にも隠れていない。
 花園の真ん中で。
 『敵』と正面から対峙していた。
「か、帰ってください……この花園は、大事……大事な、場所なんです」
「ふうん……?」
 退治した男は、几帳面そうに眼鏡を直して顎を上げた。
 全身の肌が、そして髪が、みるみる白く染まって行く。
「嫌だといったら、どうするおつもりですか?」
 膨大な殺気が少女を照り付ける。肌が、服が、焼き焦がされるかのようだった。
 震える手を強く握り、己の恐怖を掴み取る。
 深く息を吸って、深く吐く。
 そして、一瞬だけ閉じた両目を大きく開いた。
「――戦います!」
 次の瞬間、男は風と化していた。瞬く間に少女に接近。貫手を繰り出す。
 しかしその時既に少女は、全身の力をくたりと抜いていた。両腕を下し、寛ぐような姿勢で迎える。が、男の貫手が少女の胸に迫ったその刹那。
「鋭(エイ)」
 風に揺れる柳葉の如く身をかわし、男の腕に親指を軽く押し込んだ。
 それだけだった。ただそれだけで、男の腕が急激に膨れ上がり、ぱしんと破裂したのだ。
「ぐ、ぐお……!」
「破(ハ)」
 流れるような型移行で掌底。男の身体を激しく後退させた。
 が、それが限界だった。
「…………はぁ……はぁ……」
 肩を上下させ、胸元の襟を掴んで荒い呼吸を整える。
 少女の表情には、激しい憔悴の色が浮かんでいた。
「いい攻撃でしたが……キャパシティ不足、といった所ですか」
 男はそういうと、手を鋭く変化させる。
 一瞬後、少女の胸を男の腕が貫いた。
 
「助けてほしい人がいます」
 予報士の一言に、その場の一同はおおよその事態を察した。その上で、頷きつつ予報士は続ける。
「ナンバードに狙われている女の子……いえ、能力者がいるんです。彼女ひとりでは到底かないません。どうか……」
 彼女の力になってあげてください。
 予報士は強く、そう言った。
 
 蕪菜・鈴菜(かぶらな・すずな)。
 いじめられっ子としてつらい日々を過ごしていた彼女は、ある日を境に白虎拳士としての力に目覚めた。しかし精神的なキャパシティ不足ゆえに力を扱いきれず、結局は人の後ろに隠れるように生きてきたのだそうだ。
 けれど、運命の日。
 かつて自分が幼少時代を過ごした思い出深い花園を護るため、立ち上がるのだと言う。
 それが、この日なのだ。

 狙うナンバードは、抗体手袋を装備した拳法使い。非常に優れた体術で、高い攻撃力を持っているという。
 更に、猿が巨大化したような1m級の妖獣を5体ほど従えている。到底少女がかなう相手ではない。
 ナンバードが訪れるより前に花園を訪ね、少女に協力を申し出よう。警戒心が強い子なので、皆なりの接し方を考えて欲しい。
 すぐに戦闘が始まるが、少女の勇気では途中で心が折れてしまうかもしれない。
 その時こそ……。
「みなさんの力が、必要なんです」
 だからお願いします。
 予報士はそう、頭を下げた。

マスター:空白革命 紹介ページ
『花言葉は奉仕』アヤナシ アラタメです。
少女を助けてあげてください。
花園を護りたいという、ただそれだけの願いを叶えてやってください。
これは、そんなちっぽけな依頼なのです。

●蕪菜・鈴菜(カブラナ・スズナ)
色白で気弱そうな少女ですが、白虎拳士の力を備えています。
白虎絶命拳一発分が、文字通り彼女唯一の切り札です。
かなり打たれ弱くキャパシティも低いので、優秀な支援屋が必要になるかもしれません。

●ナンバード
眼鏡に抗体手袋の男。
攻撃力が高く非常に俊敏です。
猿型の妖獣を5体引き連れており、花園を荒らすことで鈴菜をスムーズにおびき出しました。

●PC化
この依頼で鈴菜が救出されると、学園に赴くことになると思われます。その場合希望者に『PCとして登録する権利』がメール送付されます。
希望者はプレイングに『救出した能力者を友人に薦める』とカッコのままお書き下さい。

以上。よろしくお願いします。

参加者
天見・日花(アルナスル・b00210)
芦夜・恋月(縛鎖の中で足掻く狗・b10866)
三笠・輪音(夕映比翼・b10867)
神農・蘇芳(ヒルサグリ・b15579)
風波・椋(悠久の黒・b43193)
無堂・理央(龍虎舞闘・b59341)
雉橋・希平(ゴーグルインセクト・b68659)
神谷・恭一(灰色の幻視・b73549)



<リプレイ>

●『三尺聖域』蕪菜鈴菜
「銀誓館に初めて出会った時に思ったんだ。『胡散臭いな』って」
 そう言って天見・日花(アルナスル・b00210)は苦笑した。
「でも、お節介も焼きたくなるよね」
 ――命がけだもん、と。
 風波・椋(悠久の黒・b43193)は目を逸らした。
「そういうのは愚かだけどさ……弱いんだよなあ、僕」
 痺れたよ。
 椋はそう言った。
「勇気が折れないように、全力で支えよう」
「せっかく踏み出した一歩が、最後の一歩じゃたまらないものな」
 雉橋・希平(ゴーグルインセクト・b68659)はぼそりと呟く。
 無堂・理央(龍虎舞闘・b59341)が顔を上げた。
「彼女が振り絞った勇気、無駄にはさせないよ」

 思い出の花園を護り死ぬ定めの少女がいる。
「思い出の場所と言えば私達にとっては銀誓館かしら」
「だとしたら、気持ちは分かるよ」
 三笠・輪音(夕映比翼・b10867)の言葉に、芦夜・恋月(縛鎖の中で足掻く狗・b10866)は強く拳を握った。
「だから私は、彼女の為に拳を振る」
「そうだなあ……」
 神農・蘇芳(ヒルサグリ・b15579)は首をこきりと鳴らした。
「僕はその花園に思い入れは無いけど、でも、荒らしたくはないな」
 彼女が守ろうとした花園だから。
 彼女が守ろうとした思い出だから。
 ――だから。
「救える命は救って見せるさ。この花園も、あの娘も、護り切って見せようじゃないか」
 神谷・恭一(灰色の幻視・b73549)は足を止める。
 視線の先には、一人の少女が立っていた。
 花園の真ん中。
 着流し。
 吹けば飛びそうな細腕。
 一里も歩けば折れそうな脚。
 透き通るような白肌。
 いつも誰かの後ろに隠れていそうな、気の小さい少女であった。
 けれど今は誰の背にも隠れていない。
 花園の真ん中で、ただ『敵』を待ち受けていた。
 蕪菜鈴菜。
 今日死ぬ定めの少女である。
「少し、話を聞いてもらえませんか?」
 蘇芳は極めて優しく問いかけた。

●自己防衛の神
 鈴菜の反応を一言で述べれば、酷く怯えていた。
 見知らぬ八人の少年少女が突然話しかけてくれば、普通の人でも警戒くらいはするものだろうに、気の弱い鈴菜に至っては今にも逃げ出さんばかりの退け腰だった。
 それでも逃げ出さなかったのは、この地が守りたい場所だったからかもしれない。
 大体の説明を終えて理央は言う。
「自分の能力も、これから戦う相手のことも知ってるみたいだね。ボクらは蕪菜ちゃんを護りに来たんだけど……もう覚悟を決めてるみたいだから、共闘することにしたよ」
「きょう、とう……」
 俯き気味に反復する鈴菜。
 揃った前髪が玉簾のように降りて、両目を完全にかくしていた。
 あれで本当に見えているのだろうか、と何故か希平が呟いた。すぐに周辺警戒に移る
 鈴菜は体の前で指を絡めて言った。
「でも、理由がありません。その……あの……」
「花、好きなんだ」
 日花が、上手くいえずにまごまごする鈴菜の言葉に被せた。
「篭ってる思いも、それを籠めた人たちも」
「…………」
 失語する鈴菜。
「僕は蘇芳。この子はカザニエ」
 手から白燐光を放ち、蘇芳は微笑んで見せた。
「お花を食べちゃったりしないので、安心してくださいね」
 蘇王は笑って、鈴菜は笑った。

「あの子はここを護りたいと闘った。願いってのは、かなえる為にあるもんだ……」
 花園の前に立って、恋月は腕組みをした。
 輪音が言う。
「話し合いも済んだようですし、合流しましょうか」
「うん、自己紹介くらいはすべきかな」
 椋がナイフを手元で回す。
 そうして踵を返そうとする彼らを、恭一が止めた。
「いや、それは後回しになりそうですよ」
 遠方より歩み来る影。
 白髪白肌。
「おや、人払いは済ませた筈だったんですがねえ」
 インテリな眼鏡を中指で押して、ナンバードは薄笑いを浮かべた。
「お友達の居ないタイプじゃなかったんですか。蕪菜鈴菜さん?」
「…………」
 ぎゅっと両手を握る鈴菜。
 希平が黙って指笛を鳴らした。
 それが、戦闘の合図だった。

●Bahasa
 猿型妖獣の荒唐無稽な格闘スタイルに、日花達はまず面食らった。
 無理矢理な空中蹴りと時間差をかけての爪撃。そして容赦のない噛み付き。
 頭上より回転しながら襲い掛かる猿を、日花はプロトストランダムで跳ね飛ばした。
「大口叩いて、無様さらすワケにはいかないでしょ。気合入れろよ私!」
 口元の血を拭う。
 彼女と横並びになって、恭一と理央が突撃した。
 理央の震脚が猿を弾き飛ばし、陣形が乱れた所に恭一がデモンストランダムを叩き込む。
「悪いがここで消えてもらうよ。こちらにも引けない理由があるからね」
「ギッ!」
 猿妖獣が牙をむき出しに飛び掛る。
 そこへ、希平が音もなく割り込んだ。
「目標補足、追撃」
 開かれた口に宝剣を突っ込む。根元まで突き入れ、更に手首まで埋め込んで。
「――実行」
 インパクト発動。猿が水風船のようにはじけ飛ぶ。
「強いですねえ、みなさん」
 ナンバードが低姿勢で滑り込む。
「――!」
 眼鏡を抑えながらの手刀。理央が代わりに受け止め、虎紋覚醒でダメージをチャラにした。
 恋月がナンバードの眼前へ迫る。
「君の願いが私をここに導いた」
 言葉はナンバードにではなく、後ろの鈴菜に向けられている。
「だから私達は貴方の願いを叶えるっ。ともにあなたの居場所を護るっ!」
 腕を引き、ナンバードに掌を向ける。
 咄嗟に飛び退くナンバード。
「貴方は一人じゃない。戦う仲間がいる。ここにいるっ!」
 退魔呪言突き。
 ナンバードの後ろにいた猿を貫き、たちまち消滅させる。
 そして恋月は振り向いた。
「だから一緒に、戦おう」

 実際のことを言えば、鈴菜は最初から一人で戦うつもりだった。
 急に仲間が増えたからと言って、彼らを盾にして耐え凌ごうなどと思ってはいなかったし、もしそうであるならきっと彼らも鈴菜を助けてはくれなかっただろう。
 だからこそと踏み出そうとした鈴菜を、蘇芳はそっと片腕で止めた。
「敵の数を減らすまで、後ろにいてほしいのですが」
「でも、そんなの……」
 伏し目がちに鈴菜は言う。
 その間にも、蘇芳はアークヘリオンを猿妖獣達の直中に打ち込んでいた。
 スピードスケッチを書き上げ、猿妖獣を引き裂く椋。
「露払いが済むまでちょっと待ってて欲しいなって意味だよ」
「つゆ、ばらい……」
 余り自分とは無縁の言葉だったからだろうか。鈴菜はぱっと意味が思い浮かばずに反復した。
「切り札を、研ぎ澄ましておいて」
 ぐっと踏み出す椋と蘇芳。
 その背中を見ていた鈴菜に、輪音は白燐奏甲を施してやった。
「鈴菜ちゃん。自分のこと、弱いって思う?」
「…………」
 無言で、しかし小さく頷く鈴菜。
「なら大丈夫。あなたは弱くは無いわ。弱さを知るのはとても苦しいけど、でもそれを知っている人は、弱くは無いのよ」
 黙り込む鈴菜に、輪音は重ねて言った。
「あなたには、護るために戦う勇気があるもの。大丈夫」
 それに、私たちもいるしね。
 輪音の言葉に、鈴菜はただ黙っていた。

 猿妖獣を後一匹に残した所で、漸くナンバードが本格的な動きを見せ始めた。
 と言っても。
「ええと、よく覚えていないのですが……確か鈴菜さんはこの辺りの土地を護りたいのでしたっけ?」
 花園に踏み込むナンバード。
 椋が舌打ちしてナイフで切りかかった。
 ナンバードは腕を絡めるようにして彼の威力を殺すと、強烈な膝蹴りを叩き込む。
 花を潰さないように手をついて、椋はすぐさまギンギンカイザーXを咥える。
「椋っ」
「大丈夫、まだ倒れないよ!」
 再びナイフを閃かせる椋。
 今度は希平もそこに加わり、反対側から宝剣を突き込んだ。
 両腕をぴんと伸ばすナンバード。彼の両手……それも掌を、椋のナイフと希平の宝剣が貫いた。
 が、それだけだった。
「無力ですねえ。貴方達はいつも……」
 衝撃波が両側に走り、希平と椋が弾き飛ばされる。
 ナンバードは何事もなかったように足を踏み出した。
 チューリップの花が根元から折れた。
 小さな悲鳴が聞える。
 足を躙り、ナンバードは笑う。
「命と雑草と、どちらが大事だと?」
 もう一歩踏み出す。
 ……が、その足首が希平によって掴まれた。
「通行止めだ。万回来ようが、通しはしない」
 前髪の間から覗く目が、焼き付けるかのような光を見せていた。
「そうですか」
 無感情に言って、足元に衝撃波を連発する。
 希平は幾度か痙攣した後、ぱたりと動かなくなった。
「まあ良いでしょう。先に貴女を踏み折っておくことにしましょうね」
 眼鏡をぎらりと光らせて、ナンバードは鈴菜を見た。
 獲物を見る獣とも、目標を捉えた機械とも違う、性的対象を見舐めるような視線に、鈴菜は肩を震わせた。
「指一本触れさせるかこの眼鏡野郎!」
 蘇芳が間に割り込み、光の槍を放つ。
 ナンバードは槍を片手で受け止めて、衝撃波で手折った。
 次弾を備える蘇芳。しかし彼が槍を放つより遙に早く、ナンバードの手が頸動脈を押さえていた。
「邪魔ですよ」
 衝撃波連発。吹き上がる鮮血。
 蘇芳の両腕がだらりと下がった。
 そして、ナンバードの手が彼の心臓部に添えられる。
「や――やめてください!」
 鈴菜が叫んだ。
「あなたの目的は、わた……わたしの筈です! 関係な、ない人を……巻き込まないで!」
 鈴菜は震える足を前に出す。
 椋が、希平が、蘇芳が、彼女を見やった。声は出ない。
 ナンバードはわざとらしく肩を竦めた。
「ああ……構いませんよ。貴女が殺されてくれるなら、この連中と花園には手を付けません。約束しましょう」
「やく、そく……」
「どうです?」
 俯く鈴菜。
 その肩に、輪音がそっと手を置いた。
「あなたは私達が護るわ」
「でも……」
「あなたは、あなたの大切なものを護るために目の前の敵を」
「てもっ……!」
「倒すの!」
 輪音が鈴菜を突き飛ばした。
 身体が前に傾く。
 その瞬間、伏せていた猿妖獣が彼女へ飛び掛った。
 恭一と恋月が同時に動き出す。
 デモンストランダムと退魔呪言突きが炸裂し、眼前まで迫っていた猿を撃破した。
「後は任せるよ。自分で切り開くんだ。自分の一手を」
「行きなさい蕪菜さん。あなたの場所を、あなたが守りなさい!」
「――はい!」
 前に傾いた身体を、鈴菜は立て直しはしなかった。
 代わりに足を踏み出して、両腕をだらりと下げる。
 足は、花と花の間に優しく踏み入れられていた。
 数歩の距離を、まるで散歩でもするような足取りで、しかし恐ろしい程の高速で詰める。
 まるで彼女の時間だけが早まったかのような動きに、ナンバードは身構える。
 放てるのは一撃だけ。
 ナンバードとて、その一撃だけなら受け流せる。
 ――必殺技を放った時がお前の最後だ。
「蕪菜ちゃん!」
 死角から理央が飛び込む。
 無理な態勢から白虎絶命拳を叩き込んだ。
 咄嗟にガードするナンバード。
「今だよ!」
「――!」
 鈴菜の細腕が、ナンバードの胸にそっと触れた。
 いや、それだけではない。
 半身に構えて滑り込んだ日花が、デモンストランダムを同時に打ち込んでいたのだ。
 全身を電撃が奔り、ナンバードの手袋から威力を根こそぎ奪っていく。
「闘う気にさせた。敗因としてはこれ以上ないでしょう」
「貴様ァ――!」
 ナンバードが抵抗しようと身をよじった、その刹那。
「鋭」
 衝撃。
 ナンバードの胸に、巨大な穴が開いた。
 仰向けに倒れるナンバード。
 鈴菜は大きく息を吐いて、肩を落とした。
「ほら、弱くなかったでしょ?」
 輪音の声が、聞こえてきた。

●少女の一歩
 戦いの舞台になった花園はそれはそれは荒れた。
 五体の妖獣が好き放題に飛び回っていたのだから、それも無理からぬことだったのだろう。
 そんなわけで、恋月と鈴菜は向かい合って土を直していた。
「……ぎんせいかん?」
「そう。いいところ、だよ」
 鈴菜は少し俯いて、頬を拭う。土がついた。
 そしてふと、踏み折られたチューリップの花がめについた。
 よく見ればまだ生きている。
 直してあげようと手を伸ばすと、希平の両手とぶつかった。
「……あ」
「……あ」
 互いに手を引いて、目を合わせる二人。
 シールド状になった前髪越しに、二人は沈黙を保った。
「うーん、似てる……」
 顎に手を当てて何やら考え込む理央だった。

「僕らはあまり強い能力者ではありません。でも仲間と一緒だから、頑張れるんです」
 土を綺麗にならしながら蘇芳は言った。
 鈴菜は少し考えるようにして俯く。
「一人より、誰かといれれば強くなれるなんて……ありきたりだけど」
 椋が鈴菜のそばで囁いた。
 顔を上げた鈴菜に、椋はほのかに笑いかける。
「君の選択と僕たちの道が重なるなら、僕達がその『誰か』になれるかもしれないね」

 土をならした花園は、完璧に元通りとは言わないまでも、元の美しさは十分に取り戻していた。 
「昔からここは、子供の遊び場だったんです。男の子たちが駆け回って、よく花を折ってました。友達がそれを怒って、喧嘩して、でも次の日にはまたここで遊んでるんです。一緒になって」
 鈴菜は土だらけの手を払いながら語った。
 恭一が彼女の顔を見る。
「君の力を、僕らは必要としてる」
「……え」
「出来るなら、もっとたくさんの場所……人を守るために、力を貸してほしい」
「でも、私なんかが……その、弱いですし」
 俯く鈴菜に、恭一は少しばかり緊張した顔で言った。
「一人では弱く脆い。だからこそ、僕らは力を合わせて戦うんだ」
 『だからこそ』、と彼は言う。
「護る場所が増えるのはデカい負担だけど。そういうの嫌いじゃなければどーぞ」
 日花は両手を広げて言った。
 鈴菜はきょろきょろとせわしなく視線をめぐらせて、輪音と目が合った。
「あなたはこれからもっと強くなる。この花園だけじゃなくて、もっと沢山の場所を護れるわ」
 一人じゃないと。
 一緒だからと。
 彼女は言ってくれた。
「あなたさえ望めばね」
「わたしさえ……」
 伸ばされた手を、気づけば鈴菜は握っていた。
 理央が、囁くように言う。
「ようこそ、銀誓館へ」

 暖かい風が、鈴菜の前髪を撫でた。


マスター:空白革命 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/07/03
得票数:カッコいい13  ハートフル5 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。