アナタとワタシの鯉物語


<オープニング>


「ハァ〜ィ、みんな集まってくれてアリガト♪ 今日はねぇ、みんなにこの公園へ行ってきて欲しいのぉ〜」
 そう言って、久慈・久司(高校生運命予報士・bn0090)は一枚の写真を能力者達に見せた。
「え〜っとねぇ、この写真の公園なんだけどぉ、見て分かるとおり、中央に大きな噴水があるのよぉ。でね、そこに錦鯉が20匹くらい飼われてるんだけどぉ、そのうち4匹が、なんかリビングデッドになっちゃってるみたいなのよねぇ〜。春になって公園を訪れる人が増えてきてるっていうのに、困ったわねぇ……」
 む〜っと唇を尖らせる久司。
 その様子に、すぐ隣で椅子をギコギコと鳴らしていた武田・愛一朗(アクセル全開エアライダー・bn0070)が、はぁ〜っと態とらしいまでに大きな溜息をついた。
「……で、アレか。俺らに、その錦鯉を退治してこいと」
「アラ、愛ちゃんてば話が早いわねぇ♪」
 白い指を口元へ当ててウフフッと笑い、久司はリビングデッドについての説明を始めた。
「え〜っとねぇ、割と普通の錦鯉なのよねぇ。大きさは30〜50センチくらいかしら。攻撃方法は、バシャバシャ暴れたり噛みついたりね、一応。模様まではちょっと分からないわねぇ……ゴメンナサイ」
 つまり、池を泳ぐ20匹の中から、リビングデッドとなった4匹を特定することから始めなくてはいけないらしい。
「公園はね、昼の間は、結構人が集まってるのぉ。でも夜は、まだこの時期は噴水のライトアップも始まってないから、殆ど人はいないわぁ。あ、でもね、いま22時から23時頃まで試験点灯やってるはずなのぉ。とぉっても綺麗だと思うわよぉ〜?」
 写真を握りしめ、その夜景を想像してうっとりと目を細める久司。
 彼女の話では、公園は噴水を中心に周囲を花壇と樹木で囲まれており、さほど広くないが芝生地帯もあるらしい。
 また日中は、ハンバーガーとクレープ、アイスクリームのワゴンも出ているようだ。
「アイスっ!?」
 先程まで今ひとつノリ気でなかった愛一朗の目が、突然輝きを増す。
 なら愛ちゃんも参加決定ねと、久司はポンと手を打った。
「元がお魚さんだから、ちょっと動きは素早いかもしれないけど、多分あなた達の力ならアッと言う間に倒せちゃうと思うわぁ。でも、普通の人達には十分驚異なの。それに、放って置いたら他の鯉までリビングデッドになっちゃうかもしれないでしょ? だからみんな、お願いねッ♪」
 久司はそう言って微笑むと、片目を瞑ってチュッと投げキッスを飛ばした。

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参加者
風見・玲樹(スーパー痛快ぼっちゃま・b00256)
屍枕・胡蝶(蟲愛ずる姫君・b00530)
伊達・正和(スターダストクルセイダー・b00969)
レディ・シルヴァー(恋する風紀の天使さん・b02188)
虎乃門・真白(光の守護聖獣・b03925)
泉野・終夜(死人だけがお友達・b12019)
歌彩・真矢(注意力散漫・b14665)
皇・光(デビルズペイン・b16218)
霧島・双一(黒狼の鎮魂曲・b17639)
斉藤・亮(夜光雲・b18034)
NPC:武田・愛一朗(アクセル全開エアライダー・bn0070)




<リプレイ>

●朝〜鯉よ来い来い〜
 まだ夜も明けやらぬ午前3時、とある公園の噴水池の前に、13人の少年少女達の姿があった。
「今回は鯉か……なんだか最近水棲生物の相手をすることが多いな」
 そんなことを呟きながら、歌彩・真矢(注意力散漫・b14665)は、婚約者であるヴェスティアに視線を向けた。
 彼女とは、これが二度目のデートになる。戦いを終えた後に訪れるであろう楽しい時間を思い浮かべ、真矢は柔らかな笑みを浮かべた。
「公園に来いと言っていましたが……用ってこれのことですか?」
 妹である紫苑の問いに、皇・光(デビルズペイン・b16218)は優しく頷き、答えた。
「まだ人を襲っていないものを切るのは気が引けるが、ゴーストである以上仕方の無い事だ。せめて今度こそ迷う事の無いように眠らせてやろう」
 しかし、本当はそれだけではない。
 最近ちょっと不機嫌な妹への心遣い……公園で皆とクレープやアイスを食べれば、きっと気分も晴れやかになるだろうという、優しい兄心も隠されているようだ。
「ふぁ……イグニッション……」
 小さな欠伸を吐きだしながら、斉藤・亮(夜光雲・b18034)は徐にイグニッションカードを取り出した。
 どこか眠たげだった表情が、ぱっと戦闘用のものへと変化する。
 その隣では、早朝とは思えないほどにハイテンションな伊達・正和(スターダストクルセイダー・b00969)が、リフレクトコアで早速力を蓄えていた。
「さてっ、それじゃあ始めるとすっかね」
 リビングデッドとなった鯉を退治するためには、まず、池にいる20匹のうちどの鯉がそうなのかを判別しなくてはならない。そこで、彼らは二手に分かれ、一方ではパン屑やお麩を投げ入れ、一方では血を一滴おとすという方法を取ることにした。
「わぁ〜♪ 虎様、おっきな綺麗なお魚さんデスの!」
 ポシェットから砕いたクッキーを取り出しながら、レディ・シルヴァー(恋する風紀の天使さん・b02188)は感嘆の声をあげ、虎乃門・真白(光の守護聖獣・b03925)に満面の笑みを向けた。
「そうやなー。でも、こん中にリビングデッドが4匹もおるんや。頑張って公園の平和を取り戻すで!」
「そういえば、普通の鯉はバケツに避難させた方がいいですか?」
「噴水挟んで対岸やし、大丈夫やろ」
「そうですか? なら、始めましょう」
 そう言ってたも網を置くと、泉野・終夜(死人だけがお友達・b12019)は万全を期するためにスカルフェンサーの徳四郎の力をその身に取り込んだ。
 鯉の誘導係は、レディー、真白、終夜、そして武田・愛一朗(アクセル全開エアライダー・bn0070)の4人。
 彼らの手から、ぽいぽいと鯉の餌が投げ込まれると、付近には忽ち鯉が群がってきた。
「うっわ、すげぇ勢いだな!」
 ドサクサ紛れにビスケットを食べながら、愛一朗は何気なく池の中に指を突っ込んでみた。
「愛様! しゃぁ〜って来ちゃいますデスわよ!」
「ちょっ……! それは勘弁!」
 幾らイグニッションしているとはいえ、指を噛まれたら痛いことに変わりはない。愛一朗は慌てて指を引き上げると、また大人しく餌を撒きだした。

 その頃対岸では、きゃいきゃいと騒がしく鯉を集める4人を見つめながら、霧島・双一(黒狼の鎮魂曲・b17639)がリビングデッドを呼び寄せるべく、自らの指先にナイフを突き立てていた。
 じわりと滲み出る、真っ赤な血。
「さてはて、それじゃやりますかね!」
 双一は、それをポタリと池の中へ滴らせた。
 ーーーーシャーーーーーッ!!!!
 その途端、今までさほど餌に反応せずにたゆたっていた4匹の鯉が、まるで鮫かピラニアかという程の凄まじい勢いで近付き……いや、襲いかかってきた。
「こんなに可愛いのに……せめて、来世でお友達になりましょう」
 そう言いながら、屍枕・胡蝶(蟲愛ずる姫君・b00530)は襲いかかってきた鯉に向けてザクリと妖刀「犬蟲」を突き立てた。
 水飛沫が上がり、文字通り死んだ魚の目をした鯉が一匹、大きく跳ね上がって池の外へと落下する。
 そこにすかさず、風見・玲樹(スーパー痛快ぼっちゃま・b00256)がフレイムキャノンを撃ち込んだ。
「僕達にとってはザコでも、一般の人が怪我してからでは遅いからね?」
 まずは難なく一匹目。
「レン、いきますよ?」
 優雅な笑みをたたえたまま突き下ろされる、亮のグングニル。それに合わせ、彼の使役ゴーストであるスカルサムライのレンもまた、同じ鯉目掛けて日本刀を突き刺した。
 阿吽の呼吸のもとに仕留められる、二匹目。
「くらえっ、これが光の槍だっ!!」
 胸の前で合掌し、戦隊ヒーローよろしく派手なアクションで繰り出される、正和の光の槍。
 ……だが、彼はこの攻撃をあまり得意としていなかった。鯉はスィーっと攻撃を避けると、バシャリと跳ね上がって正和の顔面目掛け尾鰭を振り下ろした。
「うわっ! 冷たっ!」
 ダメージこそ受けなかったものの、腐った魚の尾鰭で叩かれるというのはあまり気分の良いものではない。
 ゴシゴシと顔を拭う正和の横で、真矢はそれだけは勘弁とでも言いたげな表情を浮かべながら、地に落ちてビタビタと暴れている鯉に向けて炎の魔弾を撃ち込んだ。
 びったーんと大きく跳ね上がり、そして燃え尽きる三匹目。
 そして、最後の一匹を、光の闇の手が捕らえた。
 毒に冒された鯉は、こちらに反撃することすら叶わぬまま、ぷかりと腹を向けて浮かび上がった。
「お疲れなのさね!」
 全ての鯉が退治されたのを見てとって、双一はニッと笑みを浮かべ、ビシッとサムズアップしてみせた。
 それを見た対岸の4人も、笑顔でビシッとサムズアップを返した。

●昼〜公園食べ歩き〜
 集まったときに比べ、空は随分と白んできていた。
 しかし、まだ人々が目覚める時間には遠かった。
「眠い……」
 イグニッションを解いた亮は、先程までの凛とした美しい表情はどこへやら、また集合したばかりの頃のような寝ぼけ眼へと逆戻りしてしまった。
「戦い〜す〜んで〜朝がくる〜♪」
 漸くほんの僅かに姿を見せた朝日に向かい、正和が歌う。
 何でこんな時間からそんな元気なんだと言いたげな視線が幾つか向けられた気もしたが、当人は気付いているのだろうか。
 やや離れた花壇の隅では、胡蝶が土を掘り、小さなお墓を拵えていた。
「古き肉は土に帰り……願わくば来世で受肉した折は良き隣人になれること願います……」
「胡蝶様、何しておりますの?」
「あ……鯉のお墓を、ちょっと……」
「偽りの生から解放され、きっと鯉たちも安らかに眠ってくれることでしょう」
 後ろから覗き込んできたヴェスティア、終夜らと共に、そっと目を閉じ、手を合わす胡蝶。
 その様子に、数名の能力者達が歩み寄り、倣った。
「もう、迷うことなく眠れよ……」
 そして、兄の横に立つ妹も、静かに瞑目した。

「さって、朝になったし家に帰るか」
「えっ? 帰ってしまいますのデスか?」
「ハンバーガー食ったりライトアップ見たりはせぇへんのか?」
 レディー達が呼び止めるも、正和はあくまでマイペースに、朝日に向かって去っていってしまった。
「まあ、仕事は終わったし……僕も一休み。起きたらおやつ……おやすみ♪」
 そう言って、芝生の隅に持参した寝袋を広げ、さっさと潜り込んで眠りに就く玲樹。
「俺らも、ワゴンが店開きするまでちょいと休もっか……」
「そうですね……」
 能力者達は、ベンチや木陰に寄り合って座り、一時の夢の中へと旅立っていった。

 そして、数時間後ーー
「ふぁ〜っ……おはよう、っと、お先になのさぁー!!」
「あっ! 俺もっ!!」
「何? もう朝なんか!?」
 真っ先に目を覚ました双一が、開店したばかりのアイスのワゴン目掛けて走り出す。
 それを、やや遅れて立ち上がった愛一朗と真白が追う。
「片っ端から食べるのさーっ!」
「えーっと、俺はとりあえず抹茶とチョコミントとラムレーズン!」
「ワイはバニラ! 濃厚バニラめっちゃ好きや♪」
 唖然とする店員を余所に、もしかしてそのままアイスで朝食を済ましてしまうのではないだろうかという勢いの3人。
「えーっと僕は、チョコとストロベリーとバニラのトリプルで!」
「ゥワびっくりしたぁ!」
 いつの間にか後ろに立っていた亮。その笑顔は、先程とはまた違い、まるで子供のように人懐っこいものだった。
 そこに、胡蝶と終夜も顔を出す。
「皆さん、美味しそうですね」
「ところで、クレープもあるようだが……」
 ひとりではちょっと気恥ずかしい終夜は、そう何気なく話を振ってみた。
「「食うッ!」」
 案の定、入れ食い。
 彼らは連れ立って、クレープのワゴンへと走っていった。

 真矢は、ヴェスティアと共に芝生に寝転がってのんびりくつろいでいた。
 騒ぎをよそに、アイスクリームを舐めながらゆっくりとこの後の予定を立ててゆく。
「できれば噴水の試験点灯の時間まで残りたいが……まあ、それまで色々やることもあるだろう」
 婚約者と2人、朝から晩まで公園でゆっくり過ごすというのも、たまにはいいかもしれない……。
 そんなことを考えながら、真矢は芝生の上に仰向けに寝転がり、流れる真っ白な雲を目で追った。その茶色の瞳に映る白い雲を、隣に腰掛けたヴェスティアが優しく見つめていた。

 クレープを手に持った光と紫苑の兄妹は、ベンチに腰掛け、まだライトアップされていない噴水を眺めていた。
 勢いよく噴き出す水の下では、16匹の鯉たちが元気よく泳ぎ回っていた。
「紫苑、お疲れ様。これ食い終わったら、ちょっと散歩でもするか?」
「お兄様、またよからぬ事を考えてるんじゃないでしょうね?」
「馬鹿言うな! 俺はただ……」
「クスッ、冗談ですわよ。そうですね、ちょっと歩きましょう」
「そ、そうか……なら行こうか」
 随分と機嫌が良くなってきた妹と共に、光はベンチから立ち上がった。

 その頃真白は、漸く目を覚ましたレディーと、ひとつのアイスを一緒に食べていた。
「虎様の手、大きいデスの♪」
「そ、そうか……?」
 はにかみながら重ねられる、レディーの小さな手。
 2人はそのまま手を繋ぎ、公園を散歩した。
 そして、軽く小腹を空かせたところで、芝生に戻って仲良くランチ。
「サンドイッチ、作ってきましたデスの♪」
「おおきにシル! 美味しそうやな〜♪」
 本当はハンバーガーも魅力的だったのだが、ここはやはり恋人のお弁当が最優先!
「最高や!」
 ビシッとサムズアップを決め、真白はサンドイッチを次々に頬張った。

「……あれ?」
「やっとお目覚めですか?」
 漸く寝袋から這い出てきた玲樹の鼻先に、終夜がついっとクレープを突き出した。
「あ、アリガト……」
 早速受け取り、モグモグと満面の笑みを浮かべて頬張る玲樹。
「女の子みたいだってよく言われるけど、甘いもの大好き♪」
「男でも女の子の食べるようなデザートを食べたくなるものさ」
 そこに、またもアイスクリームを食べていた双一と愛一朗が、バタバタと駆け寄ってきた。
「美味いものに男も女の関係ないのさー!」
「そーだそーだーぁ! よっしゃ、次はハンバーガー行ってみよーーーっ!」
 言うなり走り出す愛一朗を、食べかけのクレープ片手に玲樹が追う。
「まったく……元気ですね……」
 その様子を、ベンチで胡蝶がクスクスと笑いながら見つめていた。

●夜〜煌めく飛沫〜
 気が付けば、とうに夜は更けていた。
「時が過ぎるのって早いものですね……」
 時計の針は21時55分……間もなく噴水の試験点灯の時間だ。
 光と紫苑、真矢とヴェスティア、そして真白とレディーは、それぞれ少し離れた位置で、2人だけの世界を作っていた。
 3分、2分、1分……そして、噴水に七色の光が灯る。
「……人工の物でもこれだけ美しいんですね……」
 水飛沫を染め上げる光に、亮がほぅっと溜息を漏らす。
「ええ、そうですね……」
 胡蝶と終夜も目を細め、じっと七色の水飛沫を見つめた。
 昼間あれだけ騒がしかった双一と愛一朗も、今は静かに見入っている。
「写真では見たけど、こんな綺麗にライトアップされるんだねえ。今度は彼女と一緒に来たいよ」
 そう言いながら玲樹がメールを送信した先は、きっと、誰もが予想したとおりだろう。

「綺麗ですね、お兄様……」
「ああ。来て良かっただろ?」
 すっかり機嫌を直してくれたらしい妹とともに、光は穏やかに噴水を見つめていた。
 兄の面目、躍如といったところだろうか……。

 真矢はヴェスティアの肩に腕を回し、ヴェスティアもまた真矢の手を握っていた。
「ティア、ロマンティックだな……」
「ええ、真矢様……」
 2人のロマンは、もしかしたらここにもあったかもしれない。

 キラキラ輝く水飛沫に、自分達が護ったものが思い出される。
 幸せを噛みしめる真白の横には、やはり幸せそうな笑顔のレディーが、少し恥ずかしげに身を寄せていた。
「綺麗デスの……」
 呟きと共に、小さな手と大きな手が握られる。

 池の鯉が、パシャリと跳ねた。
 ライトに照らされてキラキラ光る魚体は、まるで夢の世界の生き物のようだった………。


マスター:大神鷹緒 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2007/05/26
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
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