香るメイドと萌え男


<オープニング>


 神奈川県某所。
 そこにはかつて、オタク向けの小さな店があった。
 主な商品は中古同人誌だったが、CD・ゲームソフト・トレカ等々、節操なく様々なグッズが販売されていた様だ。
「はぅ〜、ようやくたどり着けましたぁ〜」
 今は廃墟と化したその店に踏み入ったのは、エプロンドレス姿の少女。
 ――がたんっ。
 少女の気配に呼応してか、無人のはずの店内に小太りの中年男が姿を現わす。
「……萌えねぇんだよ……三次元なんかじゃ……萌えねぇんだよぉぉ!」
 男は、メイドコスの少女をじっくり観察していたかと思うと、手にしていた抱き枕(魔法少女らしきキャラが両面にプリントされている)を振り上げ襲いかかる。
 ――ぶおぉん!
 ……だが、メイド少女は抱き枕の強振をひらりとかわし、甘い香りと共に男の背後に回り込む。
「あはっ。リサはぁ、少しぽっちゃりした男の人好きなんですよぉ〜?」
「……リサたん……萌え……」
 男はあっさりと、籠絡されてしまった様子。
「ふふっ、あとは獲物を待つだけ……」
 少女は口の端を歪め、小さく呟いた。

「スイカブックスと言う店の跡地に、リリスと地縛霊が棲み着いているの。場所は県内よ」
 柳瀬・莉緒(高校生運命予報士・bn0025)が言うには、リリスは抗体兵器を持つ強化されたリリスなのだとか。
 そのリリスは、パフュームと呼ばれる魅了の力を持っており、既に地縛霊を下僕と化している。
「このパフュームの力は一般人にも有効で、数週間に一度、近所を通った一般人がこの店の跡地に入ったきり行方不明になる事件が起きてるみたい」
 この力は戦闘中、能力者達にとっても脅威となるだろう。
 リリスが行動する度に放たれるパフュームは、戦場に居る能力者全員を、魅了状態に誘おうとする。
 もし懸かってしまえば、強制的にリリスを回復させる為の行動を取らされてしまうのだ。

「地縛霊は、なんだか……オタクっぽい中年男性みたいね。抱き枕を武器に、リリスを守ろうとするみたい」
「抱き枕で殴られるって、全然痛くなさそうなんですけどぉ。あっ、でもその男がスリスリしたり、色々してる抱き枕だと思うと……」
 自分で言っておきながら、悪寒に震える志筑・涼子(残念な子とは呼ばせない・bn0055)。
 抱き枕と侮るなかれ、男の萌えに対する執念が凝縮されており、かなりの殺傷力があるようだ。抱きしめる事で、傷を癒す技もあるらしい。
 また、援護ゴーストとしてやはりオタクっぽい地縛霊が3体程出現する様だ。こちらは特殊な能力を持たないが、丸めたポスター等で攻撃を仕掛けてくる。
「商品や棚はもう撤去されてるから、店内は割と広々としてるはずよ。戦うのに不都合は無いと思うわ」
 店には表口と裏口の二カ所からしか出入りする事は出来ないが、リリスは形勢が不利になれば逃走を試みる可能性もあると言う。

「そうそう、例によってリリスは能力者達の来襲を感知出来るわ。敵の待ち構える店内に踏み込む形になるから、不意打ちに注意してね」
 地の利は相手にあるが、戦力ではこちらが上のはずだ。油断無く戦って欲しいと莉緒は言う。

「それじゃ、早い帰りを待ってるわ。いってらっしゃいっ!」
 莉緒は現地までの地図や交通機関のチケットを手渡すと、そう言って一行を送り出すのだった。

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参加者
立湧・治秋(寡黙な剣士・b14010)
霧島・芽衣(銀誓のバンド娘・b28397)
藤井・アンナ(中学生真魔弾術士・b40518)
松虫・九郎(黒キ蟲ハ光らない・b50055)
醍醐・夕華(タイガーユウカ・b59337)
マヤ・アステカ(ククルカン・b74564)
春風・旋風(小さなつむじ風・b79424)
金森・芹(無韻の鶯・b80258)
NPC:志筑・涼子(残念な子とは呼ばせない・bn0055)




<リプレイ>


「思った以上に辺鄙な場所にあるようだな……」
 マヤ・アステカ(ククルカン・b74564)の呟きは、一行の心情を代弁するものだった。
 最寄りの駅から歩くこと数十分。目的地である「スイカブックス」跡地にはいまだ到着出来て居ない。
「この辺では、狸なんかも普通に出るらしいねー」
 先ほどから周囲をきょろきょろ見回している松虫・九郎(黒キ蟲ハ光らない・b50055)は、野生動物との出会いを期待しているのだろうか。
 鎌倉も少し奥へ行けば自然も多く残っているが、学園の周辺はすっかり拓けていて、中々狸と出会う機会は無い。
「いやいやぁ、私こないだですねぇ……本牧通りの大きな交差点で、たぬきのつがいが歩いてる所を見たんですよぅ。あれはビックリしましたねぇ。そりゃもう可愛かったですよぅ? ……って言うかぁ、まだ着かないんですかねぇ? いくら萌えの為には労を惜しまないヲタク連中でも、わざわざこんな所まで買いに来るわけがねーですぅ」
 自身のちょっとレアな体験を語っていたかと思うと、思い出したように疲労感から愚痴り出す志筑・涼子(残念な子とは呼ばせない・bn0055)。
「……萌か……。数年前から聞くけどよくわからん。頭ごなしに否定する気はないが理解はできないな」
 こちらは硬派で物静かな剣士、立湧・治秋(寡黙な剣士・b14010)。
 確かに、彼と「萌え」は縁遠い言葉にも感じられる。
「でも一説には、詫び寂び萌えは日本の美意識なんだとかぁ……」
「萌えって、難解ですね」
 可愛いと萌えの違いはどこにあるのだろうか? 金森・芹(無韻の鶯・b80258)はそんな基本的な疑問を胸に抱きつつ呟く。
 近年濫用されている「萌え」は、確かに単純な可愛さを示すものと誤用されている場合が多い。
 本来の「萌え」は実在しない何か、架空の存在に対して抱く歪な恋愛感情を意味する(らしい)。
「二次元のどこが良いのでしょう? 三次元には、二次元にない物があるというのに」
 醍醐・夕華(タイガーユウカ・b59337)が言う通り、触れて温もりを感じられる訳でもなければ、自分の為に何かをしてくれる訳でも無い。
 そんな相手を敢えて愛でる……外国人はおろか、日本人の中にもそれを理解出来ない人間は多い、特殊な美意識であると言って良いだろう。
「ん〜、抱き枕を抱えたオタクっぽい中年って……ツッコミ所が多すぎてどこからツッコめばいいのか判んないよっ! 涼子おねーさんより残念な人が居るなんて世界は広いね」
「全くですぅ、残念さで私に勝る奴がよもや居るなんて……ってこら〜、誰が残念ですかぁ!」
 と、春風・旋風(小さなつむじ風・b79424)もマジョリティの1人らしく、今回の敵である中年オタク地縛霊の気持ちは理解出来そうに無い。
「オタク男さんとか普段だったら興味無いけど、ちょっと戯れてみたくなっちゃいました」
 解らないからこそ、だろうか。藤井・アンナ(中学生真魔弾術士・b40518)は、怖い物見たさや興味本位から、地縛霊との遭遇を楽しみにしている様子さえある。
「なぁ、あれじゃないか?」
 霧島・芽衣(銀誓のバンド娘・b28397)が指さす先、傾いた看板が道ばたに辛うじて立っているのが見える。
 どうやら、ようやく一同は目的地へと辿り着いたようだ。


 一般人をおびき寄せる為だろう、本来立ち入り禁止になっているはずの廃店舗入り口は封鎖されておらず、自由に内部へ入れるようになっている。
 店の正面入り口に展開したのは6名(+1匹)。残りの3名は裏口から同時に突入する手はずだ。
「……そろそろ行くか、準備は?」
「いいよ、派手にやろうか」
「Coco、行くよ」
 表口、治秋の問い掛けに頷く一同。アンナもケルベロスオメガのCocoへとささやく。
「ここにリリスが潜んでいるのだな。みんな、油断するなよ!」
「うらーっ! カチコミじゃー!」
 ――どかんっ!
 ドアを蹴破って、雪崩れ込む表口班。敢えて派手に突入するのは、裏口班の存在に気付くタイミングをできる限り遅らせたい為だ。
 店内は聞いていた通り、がらんとしていて、店の面影は所々に貼られたポスターが留める程度。
「萌えねぇなぁ……三次元なんかじゃよぉ……」
 唐突に響くのは、くぐもったような低い声。店の奥へと通じているらしい通路から、1人の男が姿を現わす。
 アニメキャラと思しき魔法少女が裏表(表は魔法少女のコスチュームで、裏は下着姿)に印刷された抱き枕を抱えており、いかにもと言った雰囲気のオタク男だ。
「マジカルララちゃん、僕と一緒に戦おうね……悪い三次元の女どもをやっつけよう」
 抱き枕に頬ずりしながら、能力者達を睨み付けてくる。
 いつの間にやら、更に2体のオタク地縛霊も出現しているではないか。
 片方は痩せた眼鏡の男で、もう片方はがたいの良い男だ。
「うわぁ。ちょっと……てゆかかなりきもいかも」
「羽毛もつ蛇よ、汝が使徒に祝福を与えたまえ!」
 反射的にドン引きしながらも、魔方陣を展開するアンナ。同様に、マヤも祈りを捧げながら魔弾の射手を展開。
「出たねっ! 残念ゴーストっ!」
「残念な奴め、覚悟しやがれですぅ!」
 身構える旋風。涼子も体内に眠る「気」を一気に覚醒させて戦闘態勢を取る。
「地の利と天の時が相手にあるなら、人の和で崩すのが定石。……立湧さん」
「……任せろ」
 先陣を切ったのは九郎。
 低い天井ギリギリまで跳躍すると、そのまま高速回転しつつ襲いかかる。これに呼応した治秋も、赤鞘の日本刀を抜き放って地縛霊の懐へ飛び込んで行く。
「萌えを解さぬ貴様等などに……やらせはせん!」
 がたいの良い男は、ポスターを丸めた物(通称ビームサーベル)をリュックから抜きはなって構える。
「……いいのか? それで受けたら、貴様の大事なポスターが傷つくが」
「ハッ!? ぐわあぁぁ!!」
 治秋の軽口が功を奏してか、九郎のローリングバッシュはもろに直撃。続けざまに治秋の黒影剣が男を切り裂く。
「ひ、卑劣な奴らめ! ゆ、許さないぞ……」
 眼鏡の男が黒いコートを開くと、その内側には無数の美少女フィギュアが。


 店内が騒がしくなったのを確認し、裏口班もこっそりと店舗内へ侵入を開始していた。
「埃っぽいわね……」
「そこ、崩れそうだから気を付けろよ……」
 不良在庫と思しき段ボール箱を避けながら、顔を顰める夕華。芽衣は不安定に積まれた小箱を手で押し戻す。
「気取られて居ないと良いのですけど……えっ」
 芹の目に留まったのは、大きめの段ボールからはみ出したスカートの裾。更に良く見ると、側面に小さな覗き穴がついている。
「「……」」
 暫しの沈黙の後で、段ボールのふたが開く。
「はわわぁ、見つかっちゃいましたぁ〜」
 現われたのは、フリフリのエプロンドレスに身を包んだツーテールの少女。
「出たな二次元オタク女!」
「ふえっ!? リサは二次元オタク女なんかじゃないですぅ……でもオタクさん達とは仲良しですよっ」
 芽衣の言葉に、わざとらしくビクついた演技をしたリリスが、パチンと指を鳴らす。
「リサたんを苛める奴……許さない……」
 現われたのは、巨躯の男。
 まるで力士の様な巨体にぶつかって、段ボールがドサドサと崩れ落ちる。
「こんなリリスの為に新たな二次元信奉者が現れないよう、今ここで倒しましょう!」
「おう、アタシらの燃える熱いセッションを見せてやろうぜ!」
 挟撃の形を取ることは出来なかったが、今更後へは退けないのだ。
「アタシの熱いソウルを、アンタの心に刻んでやるよ!」
「聖獣白虎の一撃、受けてみろ!」
 芽衣は歌仙兼定を渾身の力で振り下ろし、夕華は気を篭めた指先で男の眉間を一突き。
 ――バッ!!
「ぐおっ……三次女どもがぁぁぁ……」
 グラリとよろめきながらも、男は倒れない。
「二次元のどこがいいの? 肌の温かさや柔らかさ、そしてどんなサウンドにも負けないリアルな音声……どれをとっても二次元では表現できないものよ!」
「だ、黙れっ……肌なんてっ……肌なんて……」
 夕華の言葉に、少なからず精神的ダメージを受けた様子の男。二次元一筋とは言いながらも、三次元の女体に惹かれない男など居ようはずも無いのだ。
「肌がどうかしたんですかぁ?」
「はうっ?!」
 そんな男に、甘えるように後ろから抱きつくリリス。
「……我が生涯に一辺の悔い無し!」
 拳を突き上げる男。
「見たか惨事娘ども、俺にはリサたんが居るんだよ!」
「二次元の仮装をしてるだけで、そのリリスも三次元に違いないだろ」
「……えっ……?」
 芽衣のツッコミに凍り付く空気。
「そ、そんなのどうだって良いから、これを嗅いで下さいませぇ!」
 ――ばっ。
 何となく話がまずい方向に行きかけたと察してか、くるりとその場で回転するリリス。
 周囲には鼻を突くような甘い香りが漂う。
「こ、これは!」
「っ……パフュームでしたっけ、こんなに臭いとは思いませんでしたよ」
 口元を抑え、かぶりを振ってパフュームの効果を振り払おうとする3人だったが……
「くくっ……おばかさぁん。3人纏めて可愛がってあ・げ・る」
 先ほどまでのカマトト口調はどこへやら、邪な笑みを浮かべつつ小声で囁くリリス。男のオタクには聞こえていないようだ。


「い、いけっ! 僕の可愛いメイド達!」
 痩せた男は、無数のメイドフィギュアを乱舞させて能力者達の体力を削る。
 正面側から突入した能力者と3体のオタク地縛霊は熾烈な戦いを繰り広げていたが、さすがに戦力差は大きく、次第に能力者達の優勢は明らかなものになっていた。
「Coco!」
 アンナが右手を掲げると同時に、Cocoが猛然と駆け出す。
 ――ゴォッ!!
 燃え盛る隕石が炸裂してゴースト達を飲み込むと同時に、黒き刃は援護地縛霊2体の喉元を切り裂く。
「ぐはぁあっ! おのれぇぇ……やらせはせん……やらせはせんぞぉ!」
 ビームサーベルを振り回し、悪あがきを繰り返す男。
「治秋殿、援護する。轟け雷鳴、閃け雷光、幾百と重なりて雷の槍を降らせ。千の雷!」
「……これで終わりだ」
「ぐあぁぁぁ!」
 マヤが雷を帯びた槍を地面へ突き立て、稲光を散らす。
 痩身のオタクが電光に飲まれ掻き消えるのを確認した治秋は、黒炎を帯びた刀を閃かせ、2本のビームサーベルもろともマッチョオタクを両断した。
「お……のれ……リサたんの為に……負ける訳にはいかないのだよ!」
 抱き枕に頬ずりをしながら、現世にしがみつく地縛霊。リリスを守る為と言う大義もあるのだろう。
「ねぇ、リサたんのぽっちゃり好きって『ただしイケメンに限る』って事だよ」
「……な、なんだと?」
「判ってると思うけど小太りの中年は含まれないよ?」
「ち、ちがう……リサたんは」
「やっぱ三次元のリサたんじゃキミの事はキモいとしか思わないんじゃないかな?」
「やめろ……やめろおぉぉぉ!!」
 旋風の言葉に心を抉られた男は、我を忘れて飛び掛かる。
 ――ヒュッ!
 抱き枕が彼女を捉えるより先に、その鋭い蹴りが男の顔面を直撃した。
「ぐっ……は……三次メイドなんて……」
 男は突っ伏し、やがて燐光を放ちながら消えていった。


「あはっ。お姉さん達頑張りますねぇ……リサびっくりしちゃいましたぁ!」
 倉庫では、裏口班の3人がリリスと地縛霊を相手にかなりの苦戦を強いられていた。
 ほぼ間断無く周囲を支配するパフュームによって、まともに戦う事は困難な状態だ。
「後一息だってのに……!」
「霧島さん、無理しないで」
「ちょっとまずいかも知れませんね……」
 攻めきれないことに焦れったさを感じる芽衣。夕華の白燐蟲達がその傷を癒す。
 芹も浄化の嵐を巻き起こして皆の手傷を癒すが、その残り回数も限界が見え始めた。
「でもでもぉ、あんまり長引かせるとお仲間が来ちゃうかもですよねぇ〜……そろそろ終わりにしちゃいましょうかぁ」
 エプロンドレスの奥から、無数の蛇たちが姿を現わした。
 戦いを決めにかかるべくリリスは、巨体のオタクと共に3人へと近づき……
 ――ドカンッ!
 吹き飛ぶ無数の段ボールと、その中身らしいキャラグッズ。
「遅くなってごめんよー」
 不良在庫の残骸を乗り越えて姿を現わしたのは、九郎を初めとする表口班。
「なっ……あの役立たずの萌え豚、時間を稼ぐことも出来ないの!?」
 予想より早い敵の来着に、思わずキャラ作りも忘れるリリス。
「形勢逆転だ、連携して一気にいくぜ。アタシのリズムに合わせな!」
 芽衣のアウトサイドクラッシュが、巨躯の男を完璧に捉える。
「ぐはぁぁぁっ……リ、リサたん……」
 地面に崩れ落ち、リリスに手を伸ばす男。だが、利用価値の無くなった彼に対しリリスの視線が向けられる事は無かった。
「来世では女の本性見抜けるイイ男になれるといいね」
 消えゆく地縛霊に、エールを贈るアンナ。
「覚悟はいい?」
「ち、ちょっと待って……じゃなくて待って下さいませぇ〜。リサはぁ、悪い事なんてしたくなかったんですぅ」
 ジリジリ距離を詰める夕華に、今更白々しい演技のリリス。
「やいこの腹黒メイド! 私はそう言うわざとらしい口調を聞くのが一番虫唾が走るんですぅ! 松虫さん、行きましょー!」
「あ、うん……」
 ――どかっ!
「あぐっ!? ぐあっ!!」
 自分を棚に上げつつ、リリスの背中にクレセントファングを放つ涼子。間髪入れず、九郎のローリングバッシュが炸裂する。
「く、くそ……これでも食らえ!」
 リリスは、再び周囲をパフュームで包む。
「くっ……私には帰りを待っていてくれる結社の仲間と尊敬すべき先輩がいる……みんなを悲しませない為にも、その想いを力に変えて誘惑に耐え抜いて見せる!」
 誘惑をはね除けた夕華は、そのまま段ボールの山を駆け上がる。
「金森さん、同時に仕掛けるわよ!」
「わかりました、逃がしませんよ」
 ――バッ!!
「ちょっ、待……話せば解……」
 芹の放つジェットウィンドがリリスを強かに打ち据え、跳躍した夕華が倉庫の床を踏みしめると、衝撃波がリリスを吹き飛ばす。
「がはっ!! ……バカな……」
 崩れ落ちたリリスもまた、二度と立ち上がる事は無かった。

「燃える方のお宝とかないかな……」
「……多分無いだろうな」
 戦いが終わり、九郎は掘り出し物を物色しているが、めぼしい物はありそうにない。
「それにしても、ヲタクは理解出来ぬ人種だな」
「うーん……。男はイケメンか羽振りの良いお金持ちさんに限る、です」
「それが中学生の発言ですかぁ……恐ろしい子」
「二次元はともかくコスプレって少し面白そうね。私も後で着てみようかな?」
「それより早く帰らないと、真っ暗になっちゃいそうだよ」

 かしましく喋っていた一行が店を後にすると、そこは静寂のみが支配する空間。
 場違いなメイドやオタク達によって一般人が襲われるような事は、二度と起こらないはずだ。


マスター:小茄 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/06/30
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