≪マヨイガ防衛部≫来客の多い夜


<オープニング>


 マヨイガの入り口である事務所跡にある、結社・マヨイガ防衛部。夜も更けていつもならメンバー各々寛いでいる時刻、その日は珍しい来客の姿があった。
「本当に珍しい客だが、こんなところにいて良いのか」
「ま、今はフリーだからね」
 毛利・周(真火を得た日輪の将・b04242)の言葉に肩をすくめた梅咲・一花(ダンディーの追求者・bn0027)は、確かに今結社には所属していない。
「たまにはこういう空気も良いかな」
 だからこそ、久々に結社の空気を味わおうと、幾度か依頼に同行した知り合い――周の居るこのマヨイガ防衛部に足を運んだのだろうか。
「む、そういえば今居る団員とは初顔合わせが多いか」
 それはちょうど周が今居るメンバーの紹介をすべきかと考えた時だった。
「おぉ、来客かな?」
「うむ」
 ドアをノックする音が外から聞こえ。
「にゃわん」
 短い鳴き声がノックに続いた。
「「にゃわん?」」
 場に居合わせた面々が顔を見合わせる中、おもむろに立ち上がった周は戸口まで歩いて行くとドアを開ける。
「にゃわん」
 内から漏れる明かりに照らされて、首をかしげたのは一体の妖獣だった。もふもふの毛皮に包まれた妖獣の体長は150cm程。本来首のある位置には一つでなく猫と犬の首が一つずつついた双頭の妖獣で。
「にゃ……わん」
 どうやら双頭が交互に鳴くとあの鳴き声になるらしい。
「招かれた客か」
 マヨイガ結社の結社員達は、戸口の妖獣がマヨイガに招かれたものであると一瞬で悟った。
「そして」
 戸口に立ったままイグニッションカードを取り出した周は、人通りのない道をこちらへ駆けてくる存在も認めていた。
「招かれざる客だな」
 招かれた妖獣を迎え入れようとする面々だったが、戸口へ向かって招かれざる骨の犬や骨の猫も集まりつつあったのだ。
「……さて、マヨイガ防衛部の初仕事といこうか」
 戸口から外に飛び出した周に倣い他の面々も戸口へと移動を始め――戦いは始まる。

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参加者
毛利・周(真火を得た日輪の将・b04242)
口羽・泰昭(真紅揚羽・b07765)
神農・撫子(おにしるべ・b13379)
ヴィントミューレ・シュトゥルム(ジーザスシュラウド・b22548)
吉川・円(男だが巫女ってどーよ・b23782)
冬木・誓護(曼珠沙華携えし渡し守・b47866)
灰岸・行人(進む一歩・b71812)
天道・郁代(抽選士・b78402)
NPC:梅咲・一花(ダンディーの追求者・bn0027)




<リプレイ>

●歓迎
「後発のメンバーとして、皆と続いてくれ」
「了解」
 後ろも見ずに口を開けば、声は届いたのだろう。毛利・周(真火を得た日輪の将・b04242)の指示に短く答えた梅咲・一花(ダンディーの追求者・bn0027)は足を止め。
「さ、中に入っておくんだ。外に出てきてはいけないよ」
「にゃ、わん」
 妖獣とすれ違った冬木・誓護(曼珠沙華携えし渡し守・b47866)がそんな一花の前を通って戸口の外へと飛び出す。
(「やれやれ騒がしい夜だね……僕は静かなほうが好きなのだけど……」)
 千客万来のこの日は静けさを与えてはくれないらしい。
「さぁ……懺悔の時間、というこうか」
 旋剣の構えをとりながらアスファルトを蹴って進めば、嫌が応にも視界に飛び込んでくる白骨化した生ける屍達。
「ここでおとなしくしてて下さいませね」
「とりあえず、神農さんは無茶しないで。……その妖獣をよろしく」
 後方から聞こえるのは、神農・撫子(おにしるべ・b13379)と吉川・円(男だが巫女ってどーよ・b23782)の声か。
「にゃ、わん」
 妖獣も一声鳴いたのは、円が撫でるか声をかけでもしたのだろう。
「さて、招かれざる者達よ、ご退場願おうか」
「もきゅっ!」
 躍り出た真モーラットヒーローのマロウは、指突を繰り出す周に合わせるように閃光を弾けさせ、モラスパークに焼かれた白骨猫達が悲鳴を上げる中。
(「折角のお客さんだ、敵も味方も『歓迎』しなくちゃな」)
 他の仲間同様に戸口の外へ飛び出した灰岸・行人(進む一歩・b71812)は口の端に笑みを載せたまま視線をリビングデッド達へと向けた。
「群れる敵は雑魚って相場が決まってるよな。……味方勢が群れるのはどーなんだって聞きたくなるが」
「ケースバイケースじゃないかな、戦争なら集団対集団もデフォだろ?」
「なるほどな」
 まぁ、細かいことは気にしないというのも処世術だろうか。頭上で日本刀を旋回させながら仰け反った行人の胸元を白骨化した猫の前足がかすめて行く。生ける屍達も一方的にやられる展開を享受する気はさらさらないようで。
「梅咲、フレイムキャノンで弱ってる奴から攻撃を頼む」
 戸口から出てきた一花に指示を出した周は、両腕の獣爪を交差させあぎとを押しとどめていた骨犬を振り払うと、更に一言付け加える。
「それと、良ければ猫犬妖獣の名前でも考えてやってくれ」
「了解っと、ネーミングセンスの方はちょっと自信ないけどね」
 会話のさなかも骨が飛び、手傷を負った骨猫が威嚇の姿勢をとりつつ傷を癒す。
「周さん達ってば、飛び出すの速いって……!」
 先行した仲間に続く形で外に出た円が目にした光景は。
「いらっしゃいませ〜。おいでませマヨイガへっ……ともうドンパチはじまってるやん〜」
 まさに天道・郁代(抽選士・b78402)が口にしたとおりのもの。
(「さて、さっそくもふもふした……いや、歓迎の挨拶といきたいところだが」)
 この状況下では、口羽・泰昭(真紅揚羽・b07765)の希望も後回しにせざるを得ない。
「ともかく、ここでの初任務。しっかりやりましょうか」
「そうだな」
 ヴィントミューレ・シュトゥルム(ジーザスシュラウド・b22548)の声に頷くと、泰昭は生ける屍達に向き直る。
「悪いな、うちのお客さんには手出しさせねぇ」
「妖獣さんが外に出ないように……撫子さん、よろしく」
 まだ建物の中にいる撫子へとヴィントミューレは声をかけ。
(「招かれてない人にはお帰りを願おうか」)
 闇のオーラを詠唱兵器に伴い斬りかかる誓護の目に映るは、傷ついたリビングデッドの姿。
「猫犬さんはそのまま、中にいて下さいませね」
「ちょい待ち」
 雪だるまの鎧を纏いつつ己の身体で戸口に蓋をしようとした撫子の脇を郁代がすり抜け、役者は舞台に集った。
「とっとと追手をたおして保護しちゃいますわ〜。皆、行くわよ」
 全員が外に出たことで、戸口の奥にいるのは招かれた妖獣のみ。ここからは招かれざる客を総出で歓迎する時間だった。

●絆の可能性
「……さて、反撃といこうか」
 漆黒のオーラを身に纏い、身構える周の脇を火球が通過する。
「移動しながら撃っても当たらないんでね」
「もきゅっ」
 援護射撃の遅れた弁解をしつつ。肩をすくめた一花のフレイムキャノンは、周が対峙していた骨犬を炎に包み、追いうちをかけるように、マロウのモラスパークが生ける屍達を纏めて焼き焦がす。前面の敵もこれで少しは押し返せただろう。
「させんっ!」
 行人が側面に回り込もうとする骨犬に赤い影の腕を伸ばし。
「えーと……そこの骨、動くなよ、っと」
 円が放った炎の蔦によって骨犬は絡み捕られる――たとえ、これが一時しのぎに過ぎなくても。
「充分だっ!」
 カラミティハンドを放ったばかりの行人は仲間に背を押される形で再度骨犬を引き裂いた。
「数は多いけど、連携してなければ所詮は烏合の衆」
 バラバラに動く生ける屍達に対しヴィントミューレ達は息を合わせ、連携して敵に当たっている。
「招かれざるお客さんはお引き取り願おうか!」
「はい」
 泰昭も威嚇の体勢をとった骨猫へ向け呪詛呪言を放ち、撫子が戦場を氷雪吹き荒れる地獄に変え。
(「……防衛部としての初仕事に、万全の体調で臨めないのは非常に悔しいのですけれど、それでも……」)
 不調の身体を自覚する撫子の瞳の中で。
「針金の彼らはなかなかに凶暴だよ……キミたちは、どこまで耐えられるかな?」
 誓護のけしかけた針金の猟犬達は氷雪の地獄に踊る。
「いい、連携だね」
 まぁ、仲間との感情をまるっきり気にしていない周と円、元々部外者だった一花は別なのだが、連携が功を奏したのか生ける屍達は早くも力尽き骸に戻るものが出始めていた。
「フシャアアッ」
 ほぼ骨だけの身体を焼かれ、威嚇の姿勢をとりつつ傷を癒す骨猫に眼球は既に無い。もしあったなら、映っていたことだろう。
「牙道の手裏剣、受けてみよ!」
 巨大な手裏剣を投じようとする周の姿が。
「まずは、援護〜」
 牙道大手裏の爆発音にリビングデッドの悲鳴が混じり、郁代は幻影兵を出現させて味方の傷を癒しつつ鉄球を握りしめる。移動と範囲回復も両立しないのだ、当然と言えば当然なのだが。
「もきゅっ!」
 牙道大手裏の爆発に怯んだ生ける屍達にマロウがモラスパークを見舞い、後方から飛来した火球がスパークに耐えた骨犬の反撃を阻害する。
「ひらりひらり、と……」
 仲間の身体から技の反動を消すべく円はクルリクルリと舞い踊り。
「大人しくしててくれよな」
 氷雪が吹き荒れ針金の猟犬が獲物へ襲いかかるリビングデッド達にとっての地獄で、泰昭は先ほど傷を癒した個体を睨み呪いの言葉を呟いた。
「さてと」
 マヒして動けぬ敵がいて、力尽きた敵もいる。戦いは能力者側のペースで動きつつあった。

●圧倒
「悪いがゴーストの団体さんはお断りだっ!」
 かろうじてまだ団体の態を保っているリビングデッド達の一体が、獣のオーラを宿した一撃にアスファルトを弾み、一転して身を起こす。
「流石に一撃必殺とは行かないな」
 行人の瞳に映るリビングデッド達は、一体一体の力量なら誓護や泰昭より僅かに上といった辺りだろうか。
「それでも所詮は烏合の衆。要領よくいけば、このままいけるはずよ」
 雷の魔弾で弱った骨猫を狙うヴィントミューレの言は正しい。
「吹っ飛ばせ!」
 ちょうど郁代の幻影兵が魔弾で怯んだ骨猫に体当たりでトドメを刺したように、一部の能力者達は連携で補うことで力量の不足を覆して今に至っていたのだから。
「けど……みんな、油断しないようにね」
 一応釘だけは刺し、視線を巡らせたヴィントミューレの目には次の標的が映り。
「っ!」
 飛来した骨をかざした丸盾でかろうじて受け止める。衝撃が抜けたのは、ヴィントミューレよりも敵が格上である証。
「もきゅっ」
 随分散発的になってきたとはいえ、骨犬や骨猫達の反撃は侮れず、マロウもやむを得ず己の傷を舐める。こちらは力量ではなく相性故の負傷だった。
「ま、こういう時後衛は少し申し訳ないけどね」
 軽口を叩きつつも一花は火球を放つ手を止めず。
「もう一度舞っとくべきかな……これは」
 円も味方の状況を鑑み、慈愛の舞を踊る。
「焔よ、縛れ……」
 数の減ったリビングデッドの動きをバインディングフィンガーで周は止め。
「畳みかけるぜ、皆!」
 己が呪いの言葉に崩れ落ちる骨猫の姿から視線を切って、泰昭が発した呼びかけに複数の能力者が動いた。
「やれやれ」
 長剣を振りかぶった誓護の姿に反応した骨犬は、斜め前方からの振り下ろし気味に繰り出された行人の獣撃拳に前足を縫いつけられ。
「……こっちはフェイントだよ」
「ギャンッ」
 闇のオーラを纏い跳ね上がった長剣に頭蓋骨を両断され、糸が切れた操り人形のようにその場に崩れ落ちる。
「ヴィントミューレさん」
 撫子が周囲を氷雪吹き荒れる地獄へと変える中、郁代の幻影兵が光のオーラを纏って突っ込むのは、ヴィントミューレに先ほど骨を投じたリビングデッド。
「ニ゛ャ?!」
 ぶちかましに反応しようとした骨猫の下肢を投じられた光の槍がアスファルトに縫いつけ。
「ニギャァァァッ」
 手負いだったのだろう。吹き飛んだ先で電柱にぶつかった骨猫は衝撃でバラバラになると、起きあがることは二度と無く。
「随分減ったな」
 気が付けば残るリビングデッドの数は片手の指でおつりが来るほど。
「大体……このくらいかな、っと!」
 攻撃に転じた円は和弓を引き絞り、呪詛呪言に動きを止められたままのリビングデッドを狙う。
「ギニャァァ」
 上がった悲鳴に火球の炸裂する音がかぶり、そこに光の槍が飛来して。
「終わりですね」
「ああ、任務、完了だな」
 残されたリビングデッドの半数はマヒによって反撃もままならない個体ばかり。全てを掃討するのに、マヨイガ防衛部の面々は二十秒を要さなかった。
「にゃ、わん」
「……ところで後ろで癒し空間が醸しだされてそうな気がするんだが気のせいか?」
 後方を気にする行人はさておき、能力者達は無事招かざる客の撃破に成功したのだった。

●そして、歓迎
「そうね、まずはメディカルチェックかしら」
 周が牛乳を手に戻ってくると、ちょこんと座った妖獣の前でヴィントミューレが首を傾げていた。素直に指示に従い、事務所に引っ込んでいた妖獣は戦闘には巻き込まれていない筈なのだが、念には念を入れてということだろうか。
「……どうも、怪我はなさそうだね」
 誓護もこれには立ち会い。
「昔は妖獣のことを撫でるなんてことは考えもしなかったけど、これはこれで可愛いかもしれないね」
「にゃ、わん」
 撫でられて嬉しそうに尻尾を振りつつも、誓護の言葉は理解できないのか妖獣は首をひねる。
「猫も犬も好きな俺にとってはなんとも素晴らしいお客さんだ」
 うんうん、と頷く泰昭は誓護に倣うかと思いきや。
「とはいえあまり欲望を前面に押し出して近づいて怖がらせてもいけねぇからな……」
 背景にモフモフさせろという文字が浮かび上がっていそうな空気を背負いつつもぐぐっとこらえ。
「……うん、色々考えたけど欲望を抑えて近づける自信なんて無いし、遠くから眺めるだけで俺は満足さ……」
 行人の横で哀愁を漂わせつつも傍観者となる。
「遠路遥々良く来たものだ……口に合うか分からんが、飲むか?」
「にゃ、わん」
 周が皿に牛乳を注げば、双頭の妖獣は二枚の皿に顔を近づけ。
「やはり犬のほうは肉で猫のほうは魚ですかね? 防衛部の備品とかあるか探してみます!」
 何かに気づいたように顔を上げた郁代は、周と入れ違いになる形で冷蔵庫の方へと去って行く。
「お、やってるな」
 リビングデッドの骨を片づけに行っていた円が戻ってきたのは、ちょうどこの時。
「よーし、いい子だなお前は……おお、モフい……」
「にゃ、わん」
 早速妖獣と戯れる面々に加わった円に続いて、撫子も双頭の妖獣に一歩近づき、試したかったことをやってみた。
「お手っ」
「にゃ、わん」
 少し戸惑ったものの、妖獣はしゃがみ込んだ撫子の頭にぽふりと前足を置いた。微妙に間違っている気もするが、まぁ妖獣なのだ。
「……じゃ、怪我してる面々、治してやってくれるかい?」
 その後、撫子の傷が完治していないことに気づいた妖獣が撫子を舐め始めたのを見て、円が頼めば。
「にゃ、わん」
 双頭の妖獣は頷く様に首を縦に振り。
「さて、この妖獣の名前だが」
 持ち上がったのは、妖獣の名前という議題。
「名前……ニャワンでいいかな?」
「良いんじゃないかな、俺もあんまり良さそうなのは思いつかなかったんでね」
 他に名を考案した者が居なかった為、郁代の案がそのまま通る形となり。
「……安心してマヨイガで暮らすといい」
「マヨイガでも良い子にしてて下さいませ、ね」
「マヨイガへ行っても、またそのうちに会おう」
 マヨイガ防衛部の面々に見送られ。
「にゃ、わん」
 ニャワンは旅立っていった――新たな安住の地へと。
「……さて、梅咲には改めて紹介するとしよう、我が防衛部を」
 そして、人ならざる客二組への対応を終わらせた面々を待つのは、人の来客への対応。
「おぉ、よろしく」
 口の端をつり上げた周に釣られるように一花も微笑し、中断していた紹介は再開された。
 


マスター:聖山葵 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/08/03
得票数:楽しい12  カッコいい1 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
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