雪溶ける時


<オープニング>


「探したぜぇ」
 少女は銀色の瞳を、ゆるりと男に向けた。
 肌は白。髪は白。男と少女の共通点。
 しかし残忍な瞳をした男の、薙刀が真白であるのに、少女の薙刀は深き黒。
 巻かれた布は、黒に変じかけた赤。その上にまた赤を塗るように、死んだばかりの兎が突き刺さっていた。
「人に、会うのは」
 少女が薙刀を振る。
 兎の体が力なく落ちる。
「あの子を殺した時以来だ」
 愛しき愛しき愛しきあの子。
 雪の中で凍えていたあの子。
 三日三晩苦しんで、もう助からないと思ったから。
 赤く染まった雪の中で、彼女は初めてヒトと己が違う生き物であると知った。
 ヒトは、己が何より親しんだ雪に埋もれれば、死んでしまう生き物であると。
「それより前、永の眠りから目覚めるより前のことを忘れるほど、愛しいあの子を殺して以来だ」
「そいつはイイ」
 男はニィと笑い、言い放つ。
 白い二人から立ち上る、血の匂い。
「人の命一つ、代わりに生きられるものとも思わぬ。だが」
 血染めの布が揺れ、黒の薙刀が跳ねる。
「この命くれてやったら、あの子の最期を知っている者がいなくなる」
「じゃあ」
 白の薙刀が黒を弾いた。
 鮮やかな赤。
「一緒に忘れられてしまえ」
 残雪に少女の血が染み、男は数字を増やして立ち去った。

「ちと急いで北海道まで向かってほしい」
 穂村・勇史(高校生運命予報士・bn0292)は集まった能力者達に単刀直入に告げ、グラスを差し出した。
 ブルーベリーとパイナップルのジュース、ヨーグルトに卵白を混ぜた『淡雪』。
 その名で呼ばれる少女が、ナンバードに狙われているという。
「ナンバードは抗体兵器と白い肌、白い髪を持つ強力なリビングデッドだ。普段は人間に紛れているそのナンバードは、自分が殺すべき能力者である淡雪の居場所を探し出し、襲撃しようとしている」
 雪女である彼女の居場所。それは、夏ですらも雪の残る北海道の山奥。
「淡雪がナンバードに殺される前に、助け出してもらいたい」
 頼むぜ、と勇史は言って、彼女の住んでいる辺りに丸を付けた地図を差し出した。
 深い山の奥である。それゆえに人の行き来はなさそうだ。
「今から行けば、彼女……淡雪とは、ナンバードが現れる前に接触することができる」
 彼女には、淡い恋の記憶と、愛する人を殺めたという過去がある。
 遭難し、もう助かりそうにない青年の命を、自分の手で終わらせたという過去が。
「ともあれ、彼女と先に接触し、信頼関係を結ぶことが出来れば、ナンバードを有利な状況で迎え撃つことができるだろうな」
 逆にそれは、彼女に警戒されれば、ナンバードに出し抜かれる可能性があるということだ。
「淡雪は、たった一人で生きてきた。そんな彼女が『仲間と一緒に戦う』ことができるかどうか。多分それが鍵になる」
 戦いになれば彼女は黒い薙刀を使う。そして、ナンバードは白い薙刀を。
「ナンバードは近くにいる全員を薙刀で薙ぎ払って猛毒のような強い出血を与えたり、薙刀を振った衝撃で直線状に攻撃して来る。それと、角が刃のようになった鹿の妖獣が四体現れ、近くの敵に毒と同程度の衝撃を与えてくる」
 そこまで一気に説明して、少し考えてから勇史は口を開く。
「もしも、彼女が一緒に戦うことを選んだら……銀誓館に誘ってみることも、できるかもしれないな」
 新しい仲間が増えるのは、嬉しいことだ。
「それはお前達に任せたぜ」と勇史は言って、能力者達を送り出した。

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参加者
河崎・統治(フレイムソルジャー・b02414)
メルディ・ファルス(星空にキス・b38551)
雲乗・風斗(ヴォームティンクラウド・b51535)
君山・雪姫(白にして白亜の雪姫・b53767)
氷桜・ひさめ(蒼銀珠・b56811)
シンディ・ワイズマン(真夏の雪女・b60411)
壱塚・真麻(朱炎操る特攻服娘・b76504)
渋川・睦月(中学生処刑人・b80974)
大月・昇太(中学生真妖狐・b81038)
森谷・雪(中学生土蜘蛛の巫女・b81672)



<リプレイ>

 山には僅かだが未だ雪が宿り、能力者達の身も冷えた。
 寒さに親しむ、雪女達を除いては。
(「愛しい人を殺めた淡雪さんに会って話をしてみたい、私も大切な人を殺したこと……あるから」)
 無表情を貼り付け、イヤホンで人の声を断っているけれど。森谷・雪(中学生土蜘蛛の巫女・b81672)は淡雪の話を聞きたいと思った。
「ふむ、事情持ちの雪女ねぇ……」
 河崎・統治(フレイムソルジャー・b02414)が考え込むように口を開く。
「愛するが故に、か……優しすぎたのかね、淡雪さんは」
 渋川・睦月(中学生処刑人・b80974)がぽつりと呟く。傍らにサキュバス・キュアの静がそっと寄り添った。
「たったひとり、で……なんだか、昔の自分を、思い出す」
 メルディ・ファルス(星空にキス・b38551)が、ふと呟いた。愛しい人を殺めたことがないから、どんな言葉をかけて良いのか――。
「正直、分からないです。どんなに辛い事かは容易に想像できるけれ、ど」
 十七。彼女も淡雪と、同い年だ。
「たった一人。否、ひとりではなく愛したひとの記憶と共に、三年」
 その月日を、氷桜・ひさめ(蒼銀珠・b56811)は思う。羨ましいとも思った。
「独りであって、独りではない日々……」
 わたくしは記憶もなく、ほんとうに独りでした、とひさめは静かに呟いた。
「生きる意志があるなら、俺はそれを守り抜きたい」
 雲乗・風斗(ヴォームティンクラウド・b51535)の手に力がこもった。友を失った自分の思い。愛する人を失った淡雪への思い。
「絶対に助ける」
 その思いが合わさって、改めて風斗の胸に迫る。
「ええ、絶対に助ける!」
 続いて高らかに、君山・雪姫(白にして白亜の雪姫・b53767)は宣言する。
「同じ北海道出身の雪女としても、仲間としても!」
 その言葉に強く頷くは大月・昇太(中学生真妖狐・b81038)。
「淡雪姉ちゃんにとっては俺達はおせっかいかもしれないけど」
 己もまた、銀誓館学園の能力者達に助けられた身。
「理由はうまくいえないけど放っておけないよ!」
 濡れた草に、力のこもったエアシューズが深く沈んだ。

 ふと、視界に白と黒が入った。
 白の髪。黒の薙刀。守るべき彼女だと、能力者達は頷き合う。
「行ってくるわね」
 シンディ・ワイズマン(真夏の雪女・b60411)がそう告げ、雪女達は歩き出す。
「俺にも行かせてくれないか」
 人付き合いを得意とするという壱塚・真麻(朱炎操る特攻服娘・b76504)が申し出、後に続いた。
 後ろを向いていた少女が、物音にくるりと振り返る。
「ここは、よい気候にございますね」
 五人の先頭に立った、ひさめがふわと微笑んだ。

「一体何故、このような山奥においでか」
 低いが強い声で少女は言った。薙刀が動き、正眼に向かう。
「おっと、白いけど敵じゃないわよ」
 シンディが手を広げ、敵意がない事を表す。
「あなたを死なせたくないお仲間の方」
「私を、死なせたくない……?」
 僅かに目が、見開かれる。
「同胞か。――彼女は、違うようだが」
「そう。よくわかったな」
 真麻が笑みを浮かべる。「けれど俺達も同じ、能力者と呼ばれる力を持つ者だ」と続けて。
「いい? よく聞いて?」
「このままで良いなら」
 薙刀の刃を向けたまま、雪姫の言葉に淡雪が頷く。
「今、貴女を狙って強力な敵が迫ってる。あなた一人じゃ決して勝てない強さのが」
 あなたを助けるために来たと雪姫が伝えれば、淡雪の目が険しくなる。
「どういうことだ? あなた方は、未来を知っているのか?」
「そうよ。後で話すから信頼してほしいわ」
 シンディの言葉に、淡雪の寄せた眉は揺らがない。
「お前達は一体」
 けれど僅かに、切っ先が揺れた。
「能力者の集まる学園から来た」
「よくはわからないが」
 真麻の言葉に首を傾げ、淡雪は手に力を込める。
「私にとっては、あの子を手にかけた私を裁きに来た、と言われた方が信じられる話だ」

「……わたしには、彼女にかける相応しい言葉が見つからない」
 メルディが呟いて目を伏せた。
「本人が今も殺戮を繰り返してる訳でも無いし、あえて問い詰める気は無いな」
 それよりも、と統治が辺りを見回す。まだ敵の気配は感じられぬが、語り合いが難航する様子を心配そうに能力者達は見つめ、同時に警戒を強めた。

「その人の事を覚えておいてあげたいという貴女の想いを護るために私達はここに来たの」
 雪姫が懸命にそう伝える。
 淡雪はそのまま、斬ろうと思えばいつでも動ける構えだ。
「わたくしも雪女。眠り以前のことも、己の名すら失った雪女にございます」
 ひさめの言葉に、淡雪はただ眉を上げた。
「守られることに、抵抗はおありでしょうか」
「信頼できるかわからぬ者に、そう言われたらどう思う」
 問には、問で返して。
「でも、私達には正直に話すことしかできない」
「真の正直か私にはわからない」
 雪の言葉にも、そう淡雪は返す。
「それに、対話にはそれなりの姿勢があるだろう」
「っ……」
 図星を突かれ、雪は唇を噛み締めた。
 自覚はしていた。親しくなるのが怖くて、イヤホンを外すこともできないという事実。
「……でも、聞かせてほしい」
 精一杯の勇気を振り絞る。雪の揺れる目が、淡雪と合った。
「大切な人を失った後、どうしたの? どうすればいいの? 私も大切な人を……殺した」
 雪の必死さとその言葉に、淡雪が目を見開いた瞬間。
「……! 皆さん、お客様が来ましたですよ」
 離れていたメルディの言葉に、一同の間に緊張が駆け巡る。
「いい獲物と思って来たが、護衛連れか」
 白い髪、白い肌。白い薙刀に、浮かぶ赤の数字。
 ナンバード。
「彼女に手出しはさせない」
 誰より速く飛び出したのは、風斗。
「相手になってもらうぜ」
 ナイフを逆手に握ったまま下から殴る。男が二、三歩よろめいた。
 睨み合う二人の間に、ジャンクの群れが現れる。
 シンディが大鋏をさっと抜く。
「なるほど。だが」
 ジャンクに飲み込まれながら、男が笑む。
「勝つのは俺だ」
「そうは限らんな」
 統治が男の前に出た。水月の名を持つ刃が、頭上に舞う。
「彼女は、あなたには渡しません」
 メルディが言って魔方陣を描く。
「おせっかいだけど助けに来たんだ。一人で戦ったら姉ちゃんは死ぬ!」
 昇太の降ろした七星が輝き、鹿を二匹石へと変える。
「――ありがたい」
 まだ死にたくはないからと淡雪は笑む。
「ならば、共に戦と参りましょう」
 ひさめがそう言って手をかざす。「我らに加護を!」と叫べば幻影兵が、仲間達に寄り添う。
「そいじゃ、背中は預けたぜ!」
 笑って真麻が駆け抜ける。雪が頷き、淡雪を庇う位置に立つ。
「蜘蛛童、よろしくね」
 雪の言葉に顎を鳴らして蜘蛛童・爆が頷き、歩き出す。
「前に、出るなと?」
 淡雪が眉をひそめる。己よりずっと幼い雪を、心配しているようにも見えた。
「そこで戦って! 一人が動きを乱せば全員死ぬ!」
 シンディの言葉に、淡雪は一応足を止める。
「一緒に戦って、未来を切り開こう!」
 雪姫が籠手をかざせば、雪と氷が舞い踊る。
「では『狩らせて』いただきますね! お覚悟を!」
 ギロチンの刃を、睦月が勢いよく振り下ろす。
 男が薙刀を薙ぐ。鹿達が同時に風斗と統治を狙う中、くるりと風斗が背を向けた。
「……!」
 次の瞬間には爪先が男の頬を抉る。
 統治の日本刀が炎の軌跡を描く。メルディの指から雷の蛇が飛ぶ。
「雑魚はまとめて凍りつけ!」
 ひさめが、雪姫が、淡雪が呼び出す吹雪。雪が赦しの舞を舞えば、蜘蛛童が糸を吐く。
 全てを紙一重でかわし、男は薙刀を振った。
「くっ!」
 衝撃波が駆け抜ける中、刃の角が閃いて風斗と統治を苛む。
「交代するぜ!」
 真麻が割り込み、黒く染めた剣を振るう。さらにシンディが踏み込み、首元にかぶりつく。
「淡雪さんみたいな美人をここで一人寂しく死なせるわけにはいかないんですよ!」
 睦月が振り下ろした刃は、僅かに逸れて敵の間を抜けた。
 くるりと回る風斗に、今度は予測して男が薙刀を持ち上げる。けれどその爪先は、薙刀の下から男の顎を叩いた。
 統治がその間に刀を回す。メルディが投げた雷が、鹿の一体の動きを縛る。
 だがその時、前衛と中衛の交代で空いた僅かな隙間を縫い鹿が抜けた。
「姉ちゃんは死なせない!」
 昇太が素早く大地を蹴る。勢いのついた足が、鹿の頭を蹴りつける。
「わたくしたちに背を預け、淡雪さんを守るために征くのです」
 ひさめがそう淡雪に示す。薙刀から溢れた冷気が豪雪と化して猛威を振るう。
 雪が消えた時、敵の数は一体減っていた。
「淡雪か」
 男が低く呟く。振った刃に、衝撃が遅れて続く。
「溶ければ忘れられる雪か」
「何!」
 思わず叫んだ淡雪の前で、小柄な体が倒れた。
 起き上がろうとした雪の前に、淡雪が踏み出す。
「私よりあなたは強いが、私の方があなたより硬い」
 そう言って雪をまとう彼女に、雪が唇を噛む。駆け寄った雪姫が「大丈夫? もう少し頑張ろう!」と白燐蟲を宿し、肩を叩く。
 蜘蛛童が昇太と並び、鹿の一撃を食い止めた。
 それより前に出ようとした淡雪を、長剣で真麻が止める。
「奴らの狙いは淡雪さん、あんたで、奴と戦うのは俺たちの役目だ」
 睦月が頷き、刃を引き下ろす。
「あなたは死なせない! 自分達も死なない! あなたの『想い』を守るためにも!」
 主の言葉に応えるように静が投げキッスを飛ばす。
 シンディの犬歯が、再び男の首を食い破った。

 戦いは、長引いた。優先目標が異なることが、僅かに齟齬を生む。
 けれどそれでも、彼らは淡雪を守った。
 風斗の脚が月を描く。統治の炎に染まった刃が鹿の一体を斬り倒す。
「がんばろう、ね!」
「うん、ありがとう!」
 昇太が雪姫の宿した白燐蟲に笑みを浮かべ、十の絶陣へと仲間達を飛ばす。
「俺も他の白い奴に狙われたけど、学園のみんなのお蔭で生きてる。まだ死ねないのならみんなで戦おう!」
 昇太の言葉に、淡雪は頷き、吐息を幻衛兵に乗せる。
「ふん、忘れちまえてのは自分への言葉? 数字に怯える哀れなザマで残り続けて」
 シンディが嘲笑えば、男は舌打ちして氷柱を受けた。
「ほざけ」
「……備えを!」
 ひさめの警告とほぼ同時、男が白き刃を薙ぐ。その一撃に睦月が倒れかけ――けれど立膝から立ち直る。
「忘れ去られるのは貴方の方ですね」
 死んでください、と叫ぶと同時に、虚空から刃を落とす。静が祈りを捧げ、雪が急いで祖霊の加護を睦月に宿す。
 ひさめの氷雪地獄が荒れ狂う中、真麻が投げた炎に焼かれ最後の鹿が倒れた。
(「愛しい人を、殺めた記憶。それは永遠に、淡雪さんの心に留まるだろうと思うけれど――」)
 メルディが淡雪に目を向け、そう思う。けれど力強く戦う姿に安堵し、向き直って拳をぶつける。
「チッ……!」
 男が舌を鳴らす。そして――風斗と統治の間を、抜けた。
 けれどその体をひさめが突き飛ばす。その拍子に受けた刃を、ひさめは笑い飛ばした。
「この程度で、我らは倒れませぬ」
 風斗が素早く男を追う。
「彼女の命も、背負う過去も、抱く決意も。何一つ奪わせない。忘れさせない!」
 勢いを殺さず素早く足を振り上げる。
「消えるのはあんたの方だ!」
 蹴り飛ばされる男に、追いついた統治が炎の一撃。
「やかましい!」
 怒りを露わに阻まれた男が、刃を振り回す。その勢いに、ついに睦月が膝を折った。
「蜘蛛童!」
 雪の言葉に蜘蛛童が駆けた。睦月を背中に乗せ、素早く後ろに下がる。
「貴方は私が止める!」
 覚悟、と雪姫は氷の力を男に流し込んだ。
 七星の輝きが男を照らし石にする。炎とジャンクが襲いかかる。
「あれは、あなたが倒すべき敵」
 ひさめがそっと指先を男に触れ、その体を淡雪に押しやる。
「……ありがとう」
 吹きかけた吐息に、白の男は消え去った。

 共に敵に立ち向かった彼らの間に、もう隔てはない。
「よかったら、淡雪さんの愛した人のこと……教えてもらってもいいですか?」
 彼のことを自分も覚え続けると、雪は淡雪の話を促す。
「……私、覚えることは得意ですから」
 軽く笑んだ淡雪が、静かに話し始める。出会い、親しみ、その胸に静かに刃を突き立てたこと。
「亡くなった『彼』は最後、貴方に何を望んだのですか? この場所で永遠に自分の墓を守れと、そう望んだのですか?」
 睦月の言葉にはっと気づいたように、淡雪が首を振る。
「ねえ、愛しい子はどんな顔をしてた? 憎んだ顔なら私に言える事はない」
 そうシンディが言えば、淡雪が、僅かに微笑んだ。
「……いや。あの子は、最期に笑ってくれた」
「ならば彼の側にいて、独りぼっちで逝かせないであげたのはあなた。罪で自分を責め、不幸せになる事こそ彼の安らぎへの罪よ」
 先輩として、あえて厳しく告げて。
「……生きて、記憶を受け継ぐなら、その記憶も幸せで祝福してあげて。道が見えない時は、私達も手伝ってあげるから」
 先輩として受け止める。
「あのね、私達と一緒に来ませんか? 独りで生きるよりも楽しくなると思うよ?」
 雪姫の言葉に一旦は首を横に振ろうとして、けれど淡雪はそれを止めた。
「忘れる必要なんてない、けどひとりで抱え込まなくてもいい」
 真麻が言って、手を差し伸べた。
「話したいことたくさんあるだろ? 聞かせてくれよ」
 一緒に茶でも飲もうぜ、という言葉に、淡雪は少し戸惑って、けれど笑みで応える。
「罪を忘れろとは言いません。でも、もう前に歩き出してもいいんじゃないですか?」
「前に、か……」
 睦月に呟き彷徨った淡雪の目が、ひさめと合った。
「貴女自身の意志で、お決め下さいね」
 貴女の思い出は、どこにいても貴女と共にありましょうからとひさめが笑みを浮かべる。
「彼が、アンタがここに閉じこもってるのを望んでいるとは思わないな。……彼が暮らしていた世界を見に行ってみてはどうだい?」
「彼が、暮らしていた世界?」
思いもしなかった統治の言葉に、淡雪は目を見張る。
(「ずっと、……たったひとりで生きるのは、きっと寂しいです」)
 その想いを伝えるように、メルディはじっと淡雪を見つめる。
「俺も学園に来る前一人だったから余計なおせっかいだけど」と前置きしてから、昇太がじっと淡雪を見上げた。
「想いを分け合った方が姉ちゃんの中の人も一緒に幸せになれると思う」
「……そうか」
 少女は、そっと空を見上げ――目を閉じて、笑みを浮かべた。
「俺達と、助けを求める人達を助けに行かないか」
青年に注いだのは優しさ。それを新たな誰かにも注いでほしいと。
 その風斗の言葉に、淡雪はそっと目を開く。
「分け合って――そして共に行ってくれるかな?」
 その意味を理解した瞬間、能力者達の間に歓声と、歓迎の言葉が巻き起こった。
(「どうか、どうか、願わくば彼女が」)
 笑みを浮かべながら、メルディは願った。
(「心底愛しいと思える仲間に、巡り逢えますように」)
 きっとそれは、もう叶っている。


マスター:旅望かなた 紹介ページ
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参加者:10人
作成日:2011/07/22
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