学園祭2011〜祭りの全ては空へと昇る。風に、炎に、想いに乗せて!


<オープニング>


 七月十七日、十八日の両日に行われた銀誓館学園の学園祭は無事に終了した。
 例年通りの盛況ぶりで、二日間はあっという間に過ぎ去った。
 様々な熱の宿る水着コンテストはもちろん、最後のひとりになるまで戦ったバトルロワイアル。何より結社の仲間と共に催した企画物も、心を震わせてくれただろう。
 一般客は全員家路についている。校舎の明かりも消え、下校を促すアナウンスも流れ始めた。
 けれど、まだまだ学園祭は終わらない。
 後夜祭が待っている!
 さあ、学園祭を楽しい思い出で飾るため、仲間と一緒に出かけよう!

 星満ちる空の下、小波響く冷たい浜辺。常ならば街頭のみに照らされている場所だけど、今は別の明かりも灯っている。
 それは炎。情熱を夜空へ届けるための。
 炎の名はキャンプファイアー。学園祭の終幕を飾る物。
 特別な夜の、特別な時間。
 仲間と踊るのもよいだろう、歌うのもよいだろう。
 騒ぎ、騒いで騒ぎまくり、どうか最後の一時を。
 再び始まる明日へと繋げていくために。
 今日という日を、忘れられない日にするために……。

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参加者
NPC:鳳・武曲(高校生真妖狐・bn0283)




<リプレイ>

●始まりの詩
 祭りの熱冷めやらぬ夏の夜。さざなみが小気味の良い音色を奏でる浜辺。心に新たな熱を宿すため、幾つもの炎が燃え盛る。
 キャンプファイアーが天を焦がし、白い砂を朱の色に染めていく。
 人々は囲む、仲間と共に。今日という日を、学園祭という時間を続けるために。
 ゆらゆら燃ゆる海岸線、熱と涼が同居する月と星々が見守る場所で、新たな物語が紡がれる……。

 焔緋に抱かれ混ざり合う翡翠色。蓮をあしらう浴衣を着込む鈴鹿・小春は、落ち着かない様子で周囲を見ていた鳳・武曲に声をかけた。
「鳳センパイ、こんばんは! 学園祭すっごく盛り上がってましたねー」
「ああ、こんばんは。そうだな、今も……うん、みんな楽しそうだ」
 仲間と談笑する姿、一人物思いに耽る様……過ごし方こそ様々だけど、炎に照らされた横顔には幸の感情が浮かんでいて……。
「あ、そうだ。結社企画で作ってたんですけど後夜祭用にとっておいたんです。よければ食べます?」
 心地よい静寂を彩るように、小春は抱えていたクーラーボックスからアイスを三笠でサンドした三笠サンドを取り出した。
 ひんやりとした空気が溢れ出し、心に更なる涼を与えていく。
「んー、そうだな。では、黒胡麻を頼む」
「はいっ」
 願いにより差し出された黒胡麻サンド。冷気が火照った掌に心地良く、程よい甘さは心の奥まで染み渡る。
 熱は冷めず、けれど熱を感じるための活力が湧いてくる。
「明日からはまた戦いの日々なんだろうけど今晩は楽しみましょうねー」
「ああ、そのつもりだ」
 小気味良い笑顔。他愛のない会話。
 交わしたなら、始まったばかりの夜を楽しむための行動を開始しよう。

●明日への宴
 静寂など、熱き夜には必要ない。
 喧騒こそ相応しいと暗都・魎夜が奏でるキャンプファイアーソングの音色に合わせ、調子を合わせるCOLの面々。最中にはふらりとよってきた春宮・静音を捕まえて、マイク替わりの棒を差し出した。
「失礼してラジオ企画後夜祭編のインタビュー。静音の将来の夢、聞いていいかな?」
「……なんだかとても唐突ねぇ……普通、学園祭の思い出とか聞く場面じゃない?」
 苦笑しつつも紡がれたのは四文字。ダンサーという職への夢。
 そんな、学園祭の延長線もそこそこに、包・彩琳や瀬河・苺子を中心とした花火大会が開幕。武曲も誘った後、一際大きな打ち上げ花火が空を焦がす。
 赤白黄色、時々青。移りゆく火花は浜へと潜り、色を失いてなお夏らしい香りを残していく。南国みたいで、トロピカルジュースでもあれば飲みながら鑑賞してみたいかも……とは彩琳の言。頷く苺子は線香花火を取り出して一人ひとりに……妹出・織泉羅や遠巻きに眺めていたスペック・ランドルイーヴンにも手渡した。
 火をつければ小さな花を散らしつつ、丸まり焔色の球を創りだしていく線香花火。吹けば落ちてしまいそうな情景に当てられたか、彩琳がそっとため息を。
「……なんだか……うん。こういうのもいいですね」
「ふふっ、ほんとう。二日間もあんなに騒がしくしていたのが嘘みたいですね……」
「瞬く間に過ぎたからな……っと」
 動けば落ちてしまう、儚くも美しい線香花火。次々と輝きが消え行く中、スペックは小さく頷いた。
「ふむ……これは、揺らさなければいいようだな」
「それが難しいのではあるのだがな。まあ……楽しそうで何よりだ」
 学園祭での番組作り。退屈しのぎにはなったとの答えを得ていた織泉羅は火影に表情を隠しつつ、まだ火のつけられていない線香花火を指し示す。
 スペックの灯火が消えるのを待った後、魎夜が声を張り上げる。
「じゃ、一勝負だな。勝った奴には残ったお菓子、贈呈だぜ!」
 線香花火を最後まで保たせた人が勝ち。
 勝負の時間。気合を入れる声は誰のものだっただろう。
 彩琳は変わらぬ様子で楽しんでいたけれど、動きは今まで以上に慎重だ。
 織泉羅も同様に炎の表情を楽しんでいたけれど、端を摘む指先が震えることはない。学園祭の時間と同様に心から楽しんでいるようだ。
「お願い、もうちょっと頑張って!」
 一方、運悪く風に煽られてしまった苺子は真剣な願いを投げかける。
 楽しかった学園祭。来年もまた……と語り思い起こしていた時と同様に、全力で火の玉を保たせる。
 それでも……勝利は、コツをつかんだスペックが獲得するのだろう。
 騒がしい連中に混じり、魎夜らから祝福を受けていくのだろう。
 また、来年……。
 ……明日へと進み始めたCOLの心に、もはや未練などどこにもなく――。

●星空の小夜曲
「武曲様、こちらでしたか」
 賑やかなCOLの面々と別れ座っていた武曲と遭遇し、返事を待って儀水・芽亜は腰掛けた。
 それより先、言葉はない。ただ、同じ色の瞳に茜色に染まる海岸線を写し取り、静かなさざ波の音を聞いている。
「……」
 風が新たな音を添えた時、芽亜がどうぞとフランクフルトを差し出した。
 キャンプファイアーの火で炙ったそれは普段よりも美味しくて、あっという間に平らげた。
 串をしまえば再び静寂。故にか芽亜が口を開く。
「ひとつ、歌を披露しましょうか」
「……歌?」
「ええ。特に才能があるわけではありませんけど……」
 曲は、モンゴルの草原の歌。海も草原も、彼方へと通じているのは同じことだから。 
 あるいは……そう。山奥に、今はもう誰もいない故郷を持つ武曲のために。
 波が草原へと成り代わり、風に吹かれて揺れていく。月光と星を映りだしきらめき世界を彩りゆく。
 いつまでも、いつまでも……この夜が、続く限り……。

●狂騒遊戯
 武曲のもきちんと持ってきた。
 全員で隠せばハプニングが起きても安心だ。
 渚砂・実流と足利・灯萌に促され、魔法使いの修行場の一員として魔法少女服姿に着替えることになった武曲。幸いなるは、他の面々も同様の格好だということだろうか。
 心配半分呆れ半分な斉藤・縁が見守る中、彼女たちの隙間から新たな魔法少女が誕生する。衣装自体が恥ずかしいわけではないとは言っているけれど、ならばなぜ……と尋ねれば、実流だけがにやにやとした笑みを浮かべていた。
 何はともあれ、ここに六人の魔法少女が集結した。ならば……とカメラが取り出され、記念撮影を行う運びとなる。
「……世の習い」
 逃げ出そうとした武曲は灯萌が捕まえた。
「ほえ? 記念写真撮るの? だったらボクも混ぜてよ」
「みやびちゃんもはよう……」
 気配を察した樹・咲桜が小走りで駆け寄って、縁が白姫・みやびを呼び寄せる。
 カメラは静音にお願いし、各々水平線をバックに集合した。
 慣れた調子でポーズを取り、凛々しい笑顔を浮かべる全力全開魔砲少女実流に、無表情ながらも頬を緩めているようにも感じられるダウナー系魔法少女灯萌。口を真一文字に結びながらも縮こまってはいない褐色系魔法少女武曲に、気楽な様子で佇む関西系魔法少女縁。上品に微笑むお嬢様系魔法少女みやびの傍らでは、ボクっ娘系魔法少女咲桜が元気な笑顔を浮かべている。
「それじゃ行くわよ。ハイチーズ!」
 そうしてみんなの呼吸が重なる時、シャターの音色が鳴り響く。
 記念撮影を完了し、各々キャンプファイアーの側へと移動した。
「さて……それでは……出張サービス。静音さん……なにかいる?」
「んー……それなら飲み物をいただこうかしら? 紅茶とか、ある?」
「へい……まいど……」
 応対をする灯萌の傍らには、さりげなく武曲の袖を掴んでいる実流。武曲は逃げ出そうにも逃げ出せず、困った様子で静音を睨みつけていた。
 遠目に眺める縁はやはりため息を。もっとも、何かできるわけでもないためキャンプファイアーへと向き直り、薪が弾けるさまを見つめていく。
「……」
 横顔に浮かぶのは喜びと、嬉しさが作り出す静かな笑み。
 初めてのキャンプファイアーと言っていた彼女に添えるのは、咲桜のギターで奏でるポップソング。
 さざ波とも、キャンプファイアーとも違う音色は笑顔で騒ぐ彼女たちにふさわしく、可愛らしき魔法少女達をより華やかに見せていく。もし、何も知らぬものがこの光景と遭遇してしまったとしても炎で儀式を行う魔女と見間違えることはないだろう。
 その中心を担うのは、絶え間なく話題を振り続けるみやびだろう。
 彼女は飲めや歌えやとドンチャン騒ぎに乗り込みながら、さりげなく訪れた者たちをそそのかす。
 静音への注文では失敗したお楽しみ。武曲に魔法の呪文を唱えさせるため、自らも唱えるために言葉を投げかける。
 浜辺にはノリの良いものなど決して少なくはないのだから、いずれその願いは果たされるのだろう。逃さないための包囲網も完成しているのだから、武曲も唱えてくれるだろう。
 夜は更けていく。楽しく、明るく騒がしく。
 いずれ炎の熱にあてられて、実流の声が先陣を切り、可愛らしい声が唱和する……!

●未来への道しるべ
 全力を尽くして、部の皆に支えられて、なんとか自分が主体となったイベントを完遂させることができた二日間。木に背を預ける稲垣・晴香は心に思い浮かべつつ、揺らめく水面を眺めていた。
 心には、チャンピオンへと上り詰めた実感が。
 まだまだ強く、大きくなるとの誓いを秘めて、大きく大きく伸びをする。
 薄緑のパーカーの下にはセパレートの赤いリングコスチューム。腰にはベルトを巻いて、ゆっくりとした動作で立ち上がる。
 偶然、静音が歩いてくる気配がしたから。
 キャンプファイアーの回りではダンスが行われていたから。
 チャンピオンになったご褒美に、とりあえず彼女を誘ってみよう。
 晴香は再び一歩を踏み出して、佇む静音に声をかける。先へ、先へと進んでいくために……。

●焔浜のラプソディ
 次々とダンスパートナーが交代されていく中で、静音と出会った草凪・緋央。晴れやかな笑顔を花咲かせ、まっすぐに手を伸ばしていく。
「ねぇ! 一緒に踊ろうっ」
「……ええ、喜んで」
 最初はキャンプファイアーらしく炎に合わせて。
 徐々に激しく、二人重ねて。
 誰かが奏でた音色に合わせて、砂浜に数多の足跡を刻んでいく。汗の玉を輝かせ、元気に笑顔を交わし合う。
 一段落ついたなら、一時離れて休憩しよう。
 けれど息が整わず、緋央は静音に抱きついた。
「っ……緋央、大丈夫?」
「……あはは、ちょっと疲れちゃって……」
 顔が真っ赤に染まっていた。足ががくがく震えていた。
 けれど浮かべる笑顔によどみはなく、紡ぐ声音にも影はなく……。
「でも、すっごく気持よかった! ほら、まだ胸がどきどきしてるよー」
 静音はどう? 鼓動を伝えられながら尋ねられ、静音は微笑み頷き返す。
 彼女を支え、浜辺へと導いて……休憩しながら、その楽しさを語り合おうか。

●終わらない詩
 喧騒からは少し離れた場所で、派手に花火を打ち上げる。
 砂浜に腰掛ける、空の名のもとに集った明空・萩吾と倉澤・青葉、天梢・紗理亜の三人は、色とりどりな火花が散る光景を飲み物片手に見守った。
 紡ぎだされていく言葉は、学園祭で生まれた思いで。結社企画ができなかったことに対する事や、来年を夢見る切なる言葉。
 概ね、楽しかったとの想いは共通してる。
 何よりも笑顔に溢れてる!
 大掛かりな花火が一段落ついたなら……と、萩吾が線香花火を取り出した。
「花火っつったらアレだ、線香花火対決!」
「……ま」
「またか、とかは言わないオヤクソクな」
 青葉の言葉を遮る形で、口の前に人差し指を立てる萩吾。一拍呼吸をする間をおいて、紗理亜が小さく微笑んだ。
「線香花火対決、いいわね」
 気を取り直して配られる、儚くも美しい線香花火。三人の手に行き渡ったなら、一斉に火をつけ勝負の時間。
 風はなく、我慢強さが、何よりもいい線香花火を引くための運が試される、小さな火花が舞う光景。
 負けたヤツはジュースをおごり。そんな提案をして萩吾の火玉が始めに落ちた。続いて紗理亜の玉が落下して、青葉の勝利が確定する。
「やっぱり日頃の行いがいいからね!」
「くぅ……仕方ねえ、後で、な」
「ええ。それより……噴水花火もやりましょう!」
 落ち込む彼の肩を叩きつつ、紗理亜が荷物から噴水花火を取り出した。
 火をつけて遠ざかり、眺めれば、七色にも近い色彩を持つ火花が溢れ出す。
「綺麗……」
「うん……」
 さながらそれは、楽しい思い出に彩りが加えられたようで。
 心に、さらなる熱を与えていくようで……。

 ……思い出は紡がれる。
 今、この時も。
 終幕に向かい、さらなる熱を心に宿して。
 いつか終わりを告げるなら、それまで騒ぐが祭りの花。
 夜がふけるその時まで、キャンプファイアーが消えるその時まで……精一杯、かけがえのない時間を過ごしていこう。
 月と星、夜空と海が見守る場所で……。


マスター:飛翔優 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:17人
作成日:2011/08/02
得票数:楽しい5  ハートフル7 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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