理論的にあり得ない襲撃


<オープニング>


●科学の敗北
 工場区画の行き止まり。塀の向こうは、はるか下に線路。そんな場所に二人の人影があった。
「……あり得ない。尾行の余地はなかったし、ネットのアクセスポイントもずっと変えてたのに」
 丈の合わない白衣を着た少女が、モバイルPCのキーボードを叩きながらあとずさる。
「納得できたか? ガリ勉子ちゃん。お前は狩猟者たる俺から逃げられねえのさ」
 闖入者は、真っ白の髪をした男だった。首に下げたドクロのネックレスと同じ意匠のドクロデザインの槍を携えている。胸元から覗く白い肌には、真っ赤な数字の刺青があった。
「あんたの脳みそは原始人止まりってわけ? 力で勝てなくたって科学者には科学者のやり方があんのよ!」
 少女は笑った。少女には秘策があった。
 下に走る線路の時刻表。現在地の駅からの距離。そして、飛び降りた時の物理式。これらをラボのサーバーに送れば、何秒後に飛び降りると電車の屋根に乗ってこの窮地を逃れ得るか、一瞬で答えが出る。
「見てなさいよ!?」
 少女がエンターキーを叩く。
 ……通信エラー。
「うそよ、理論的にあり得ないわ」
 だってアンテナそこに……、と言いかけた少女の胸を、宙を舞ったドクロの槍が貫いた。
「科学は万能じゃねえよ。策士策に溺れるって知ってっか? ……知らなきゃググるんだな。クハハ!」
 惨劇のはるか下を、家路に着く勤め人を乗せた電車がけたたましい音を立てて走って行った。

●教室
「あまりネットに頼ってはいけませんよ。というお話……ではありません。これから現実に起こることです」
 奥・弓木(運命予報士・bn0073)が説明を始める。
「ナンバードという抗体ゴーストをご存知ですよね? 普段は人の姿をしていますが、獲物を狩るときには真っ白の髪になり、抗体兵器を持ちます」
 彼らは自分が殺すべき能力者の居場所を探知する能力を持ち、その能力者を殺すことで生き永らえている。
「この白衣の子は、このドクロのナンバードと運命の糸が繋がってしまったのですね。ナンバードを退治し、この子を助けてあげてください」

 今から駆けつければ、白衣の少女が襲撃される前に彼女の元にたどり着く。彼女の理解と協力が得られればナンバード撃退も難しくはない。
 逆に、不審に思われて逃げ出されでもしたら、予測できない位置で襲撃されてしまうこともあるだろう。
 今回、彼女はこの工場区画の袋小路へ逃げ込んだ。尾行がつかないように、視線が通りにくい場所へ、最悪の場合の逃げ場も用意して、理論的に。……残念ながら、理論の通る相手ではなかったが。
「白衣の子、真理さんの判断基準は、理論的か、そうでないか、です。説得の時には論理的かどうかを考えてください」

 ナンバードの能力は、槍による一人への刺突。咆哮による全員へのダメージ。そして、自分自身が攻撃力をしばらく失う一人への槍投げだ。槍投げが恐ろしい威力を秘めていること、すべての攻撃で毒が付加されることに注意が必要だ。
 また、それ以外にクレーンの生えたインコとロボットアームの生えたカラスが3匹ずつ合計6匹現れるが、こちらは数が多いだけでさして特別な攻撃をしてこない。もちろん放置すれば地味に防具を啄ばまれることになるが。

「ああ、そうです!」
 弓木が思い出したように手を打った。
「すべて終わったら、真理さんを銀誓館学園に誘ってみるのはどうでしょうか。きっと楽しいですよ」

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参加者
ミラ・エセルドレーダ(冥土へ誘うもの・b41885)
叢雲・そうや(天微星・b44036)
花月・椿(月下に浮かぶは紅椿の花・b59068)
澄空・翔(澄み空を翔る蒼黒の風・b59134)
鳴神・盟華(建御雷神の巫女・b75641)
四季・晴彦(小学生妖狐・b75652)
高梁・弥花(死の草原に咲く橙の花・b78547)
夜斗神・凍牙(漆黒の夜を駆ける銀の双月・b79887)



<リプレイ>

●無害の証明
 ぱちっと電撃の音がして、真理の目の前に女の人が立っていた。
「探しましたよ。真理さん」
 電送を使ってその超自然現象を起こした鳴神・盟華(建御雷神の巫女・b75641)は、目の前の少女、真理を刺激しないように、穏やかな声でそう言った。
「……あり得ない。尾行の余地はなかった。それより今、どこから……」
 工場区画の行き止まり。真理は塀を背に一歩遠ざかる。その手は忙しくPCのキーボードを打っている。
「順に説明します。どうか落ち着いて聞いてください」
 盟華は両手を上げて敵意のないことを示した。
「始めまして、真理ちゃん」
 その後ろから、花月・椿(月下に浮かぶは紅椿の花・b59068)が顔を出した。真理は椿より一回り小さい。おそらく年齢も下だろう。小学校高学年くらいかもしれない。
 真理は違和感を顔に出す。
「あ、私の名前……、あり得ない。情報が漏れるはずが……」
「それも説明します」
 盟華が即座に言う。
 真理の逃走経路は危険だ。だがそれを止めるべく後ろに回りこもうとした椿は、咄嗟に踏みとどまった。
「……っと」
 真理の警戒心は椿の行動を許さない。あと一歩踏み込めば真理が逃げただろうことを椿は感覚で捉える。
「槍持った原始人の仲間かしら? 一人でダメなら二人、まあまあ理論的じゃない。でもまだ考えが足りないわね! 数で勝てなくたって科学者には科学者のやり方があんのよ!」
 真理の啖呵は、予報されたナンバードとの受け答えに似ていた。
 どこへ逃げても現れるナンバード、ナンバードに先んじて現れる銀誓館の生徒。最初から、誤解されることは必定だったのだ。
 だが、盟華は慌てなかった。
「追跡者の仲間ではありません。私達が追跡者なら、そもそも会話などせずに集団で一気に掛かりますよ」
 その一言と同時に、隠れていた者たちが現れる。合計八人、銀誓館の勢力が集合した。
「……そうね」
 真理は、白衣の袖をまくって顎に手を当てる。
 これだけの戦力があって、襲い掛かりもせず包囲もしない。
「論理的だわ。話を聞かせて」
 盟華は、安心したように目を閉じて頷いた。

●不条理の理論
 狼変身をしていた夜斗神・凍牙(漆黒の夜を駆ける銀の双月・b79887)が、元の姿に戻った。
「ご覧の通りです」
 凍牙の落ち着いた声と長身を見上げ、真理はしばらく唖然とした。
「……少し考える時間をくれないかしら」
「もちろんです」
 盟華から説明を受け継いだ高梁・弥花(死の草原に咲く橙の花・b78547)はそう言ってから脇のミラ・エセルドレーダ(冥土へ誘うもの・b41885)をちらりと覗う。
「予報された時刻まであと十分ほどございます。ご主人様」
 時計を見てすぐに答えるミラに、弥花は頷いて真理の方を見た。
「表皮細胞の変化……あり得ない、そんな瞬時には無理よ。なら、何かのトリック……」
 真理は虚空を見つめながら呟いている。
「ならさ、触って確かめてみたらいいよ」
 我関せずで周囲を警戒していた四季・晴彦(小学生妖狐・b75652)があっけらかんと言い放つが早いか、煙を立てて狐へと変化した。
 足に擦り寄る狐、もとい晴彦の背をそっと撫でて、真理の固かった表情は少しだけ柔らかくなった。
 だが、真理ははっとしてすぐに元の表情に戻す。
「良いわ。その銀誓館という能力者の集団を「仮定」しましょう。それで?」
 そこまでやっても仮定と言い張る真理に、椿が露骨に不愉快な顔を見せてため息をつく。
 弥花は頷いて続けた。
「私たちは銀誓館から来ました。真理さんを襲撃者から保護するためです」
「どうして私が襲われたことを知ってるの?」
 予測された当然の質問に、弥花は淀みなく答えた。
「過去のデータから予測されたことです」
「運命予報という能力がある」
 叢雲・そうや(天微星・b44036)が、そう付け加えた。
 あまりにも信じがたいその能力をここで口にすべきではないだろうと考えていた弥花は、心配そうにそうやを見上げた。
「君の策もその運命予報で予見されている。電車の到着時刻を予測し、飛び降りるだった、か」
 そうやの言葉に、真理が目を見開いた。
 自分の心にだけ秘めていた策が知られているとすれば、超常現象以外に何があるというのだ。
「結果から言えば失敗に終わる。ゴーストが電波妨害を発生させるため、だ」
「ゴースト、襲撃者の総称でございます」
 そうやの解説をミラがサポートする。
 真理は一度目を閉じた。
「あり得ない」
 そうやが、盟華が、弥花が、その言葉に険しい反応を見せる。だが、真理の言葉には続きがあった。
「……と、切り捨てるには証拠が揃いすぎているわね。信じられないけれど仮説としては十分だわ」
 真理は長すぎる袖を振って腕組みをした。
 盟華が、ほっと息をつく。
 弥花がミラと頷き合い、分かりやすくアレンジした解説を止め、先へ進む。
「ありがとう。ではゴースト、とりわけキミを襲ったナンバードについて分かっていることを説明する」
 澄空・翔(澄み空を翔る蒼黒の風・b59134)が取り出して見せた手帳には、ナンバードとの交戦記録が大量にファイルされていた。
「キミが考えた逃亡策は理論的には完璧。だが、生憎今回の相手、ナンバードは、理論が通じないんだ」
 さりげなく翔が策を認めたのが功を奏したのか、真理の表情に少し赤みが差した。
「だと思ったわ。見るからに現代人じゃない風貌だったもの」
 軽口を叩きながら笑う真理を見て、彼女を苦手に感じていた翔は少しだけ、おや、と思った。
 理論で判断するというだけで、感情がないわけではない。それなら少しはやりやすいだろうか。
「ナンバードは……」
 翔のツボを押さえた説明は、態度の軟化した真理の飲み込みの早さも相まって想定よりずっと早く済んだ。
「……理論的ね。いくつか不可解だった点に説明が付くわ」
 真理は足にじゃれ付いている晴彦を撫でながら翔の言葉に頷いた。
「となると、私も能力者ということになるのね?」
「そうだ。君もある程度は自覚はしているはずだ。君自身が周囲と異なる能力を持っている事をな」
 そうやの答えに、真理は反発の表情を浮かべた。
「私の力はDNA操作により作られたものよ。科学の延長だと認識しているわ」
 毅然と言い切ってから、真理は自分の足元、スカートの下から見上げる狐、晴彦を見下ろした。
「……待って、こ、これも、能力者、よね?」
 真理が慌ててスカートを押さえる。顔がみるみる赤くなった。
「おまえなぁっ!」
 翔が晴彦をはたこうとするが、晴彦は人に戻ってひらりと避ける。
「うへへ、これはヤラナイとね」

 列車が一本通り過ぎた。
 弥花は晴彦を見て大きなため息をついてから、真理に携帯を開いて見せる。
「もう、お分かりですよね」
「自分でもpingを飛ばして見たら良い」
 そうやもそう勧める。真理は頷いて、PCのキーを叩いた。
「速度がどんどん落ちてるわ」
「……どうやらこれ以上の説明が必要ないようだ、実証を見せよう」
 翔も、自分のパソコンのアンテナ表示を見て言った。
 弥花の携帯に、圏外、と表示が出て通話が切れた。

●孤立集合の原理
 街灯を背に、白い髪、白い肌の男が立っていた。
「……おぉい、何だコレ」
 ナンバードの男は、能力者たちを一瞥してガラ悪く言った。
「邪魔なのがわらわらいるじゃねぇか。死にたくなきゃ退けお前ら」
 ナンバードの目の前に、ミラが立ちはだかる。
「真理さんを安全な場所へ避難させて!」
「行き止まりです。これが精一杯です」
 盟華が角に真理を庇って返答する。
「何お前、自殺願望でもあんのか?」
「ご主人様を傷つけるおつもりなら、お言葉そっくりお返ししますわ」
 すごむナンバード。それに一歩も動かず、ミラが不敵に笑った。
「吸血鬼の力、お見せしましてよ♪」
 ミラが自身の力を強化する。
 その隣へ、やはりナンバードの道を塞ぐように、椿が歩み出る。
「全力を出せないこういった役回りは好きじゃありませんけど……」
 構えて獣の気を練り上げる。
「相手してもらいますよ、ストーカー殺人鬼さん?」
「あぁ? 俺ぁ狩猟者だ。言葉に気をつけろ」
 ナンバードの目が不愉快そうに細められたのを見て、つまらなそうだった椿の表情に、楽しそうな笑みが浮かんだ。
「ふぅん、ストーカーさんにもプライドってあるんですね〜!」
「……テメェ」
 ナンバードの頭上で、ぶち切れる音が聞こえるようだった。激昂したナンバードが、吠える。
「ウオオォォォォッ!! 狩りの時間だ!」
 魂に毒を刻む不浄の叫び。路地を満たした響きは、真理を庇う晴彦と弥花の腕をすり抜けて真理へと届く。
「……っ! くぅっ……」
 苦しむ真理をちらりと横目で見て、盟華が舞の拍子を踏む。
「毒は受け持ちます!」
「了解!」
 翔が回復を盟華に任せ、真理を守るのに手薄な場所へと移動する。

 路地の入り口側、街灯の明かりに、鳥の群れが浮かぶ。工場の騒音のような声で鳴きながら、カラスとインコは路地の奥、真理のいる方へと向かう。
「雑魚は任せましたよ〜」
 通り過ぎてゆく鳥たちを完全に無視して、椿はナンバードを縫いとめるように連撃を入れる。ナンバードは槍で椿の攻撃を止め、反撃の機会をうかがっていた。
 目の前を通り過ぎようとするオウムの一匹を、凍牙が振るった極低温の槍が貫き、氷塵に変えた。
「っ! かなり逃しました、ご注意を!」
 凍牙が眼鏡を押さえて言うのとほぼ同時、翔の紡いだ一陣の風が逆旋風を巻いて吹き上げ、カラスを錐揉みにして落とした。
「雑魚は僕たちに任せる、前衛はナンバードに集中して!」
「承知しました」
 翔の言葉に、凍牙はナンバードへと槍を向けた。
「槍は投げないのか」
 そうやが落ち着いた声でナンバードに言う。
「はぁ? 挑発のつもりか? 獲物の目の前で槍を手放す馬鹿がどこにいるんだよ」
 ナンバードは、ミラの胸へと槍を突き立てる。冷静に軸をずらし急所を外したミラが、微笑んで見せた。
「吸血鬼は不滅よ!」
 虎紋覚醒で傷を癒すミラにそうやは治癒符でサポートしながら、ナンバードを見た。
「賢明だな」
 槍がなくなれば一気に攻め落とせる。ナンバードもそのことを理解していた。だが、槍が投げられないということは守るべき真理に届く攻撃がないということでもある。四人がかりで動きを止めたのは正解だ。
「今、治すよ」
 晴彦が背に庇った真理に笑いかける。盟華の舞で毒は抜けているが、真理はまだ頭を押さえていた。
 晴彦の周囲から光が溢れ、敵味方へと飛び交う。アヤカシの群れ。
「……楽に、なる」
「だろ?」
 晴彦はアヤカシで鳥たちの羽を削りながら楽しそうに笑った。

 真理は、自分の手を見る。そこには、PCと、スマートフォン……の代わりにブラックボックスが握られている。
「『ネットワーク』の意味をご存知ですか? 人や物同士の繋がりのことです」
 インコが振り下ろすクレーンの一撃を刀で払い、弥花が言った。
 真理がPCを見る。インターネットは、未だ復旧しない。演算も検索も、何も出来ない。どこにも繋がっていない。
「もちろん知ってるわよ」
「……今私たちは繋がってるんです」
 真理ははっとして弥花を見上げる。弥花は戦いながら、言葉を続けた。
「私も以前は普通の小学生でした。……信じられませんでした。でも」
 飛んできたカラスに、盟華が身を割り込ませて真理を守る。
「……っ!」
 前衛では、椿が身体のいたるところから血を流しながら、それでも宝剣に獣の力を呼び、何度もナンバードへ向けて突き込んでいる。
「守ってばかりで楽しいですか? もっと乗り出してくださいよストーカーさん!」
 それらは確かに、真理には信じられない光景だ。
 だがどれほど信じられなくても、目の前で起こっている真理(しんり)だった。
「視えるなら受け入れようと思ったんです」
 弥花はなおも耐えながら言った。その弥花の背に、もう一匹、カラスが飛び掛っていた。弥花は気付かない。
「……繋がってる、か」
 真理は、一度ぎゅっと拳を握ってから、その手を広げ、弥花に飛び掛かるカラスに向けた。
「……っ!」
 目を閉じると、真理の手から光が奔った。カラスが耳障りな声を上げて消し飛ぶ。
「あ……」
 背中で起こったことに気付き、弥花が真理を見る。
「…………」
 真理は、複雑な顔で目を逸らした。

「ゴミを処分するのも、メイドの務めですわ」
 ミラが言うと、工場区画のあらゆる瓦礫がナンバードへと降り注ぐ。ミラはすぐに、椿へと向き直り、一礼した。
「ご主人様、わたくしめが援護いたします」
「ぐ、あああああッ!」
 ナンバードはミラのジャンクプレスをまともに受け、身を捩って体勢を立て直そうとする。ドクロのネックレスが弾けて飛んだ。
「どうぞ、仕掛けてくださいませ」
「あら、気が利いてますね。いただいて良いんですか?」
 椿が宝剣を振り被り、ありったけの力を刀身に注ぎ込む。
「テメェら……、何が良くて、群れて、やがる」
 椿は一瞬だけ首をかしげ、それからくすっと笑った。
「少なくとも、そんな捨て台詞は吐かなくて済むんじゃないですか?」
「ウアアアアアアアアァァァ!」
 椿の剣を受け、ナンバードは叫び、そして果てた。

●新たな公式
「真理ちゃん、僕たち銀誓館には、キミのような能力者がいっぱいいるし、環境もバッチリだ」
 翔が真理に握手の手を差し出す。
「キミの力をもっと引き出せると思う」
「そのとおりです」
 ミラが控えめな笑みで同意する。
「様々な能力者がいる学園で、もっと研究してみませんか?」
 そうやはその並びの後ろに立つ。
「如何に多くの未知が存在するかは、科学に身を置いた者なら自覚しているはずだ」
 真理は、じっと皆の顔を見ていた。その真理の手の中に、晴彦が紙を放り入れる。
「これ、は?」
「学校案内。銀誓館の」
 晴彦は、そうとだけ答えてふいと背を向ける。
「真理さんのお力はすごいと思います」
 弥花が真面目な顔で言った。
「でも今回のようにひとりではできないことがあります。……力を、貸してくれますか?」
 真理は、しばらく弥花の顔を見て、それからかすかに笑った。
「……理論的ね」
「え?」
 聞こえない声で呟いた真理は、首を振り、それから深く腰を折った。
「招待に応じるわ。……よろしくおねがいします」
「こちらこそ!」
 翔が笑って真理の手を取った。
「それと……その」
 真理は視線を逸らし、声をさ迷わせた。
「……助けてくれて、どうもありがとう」
 能力者を助けるのは銀誓館の仕事だと、説明はしてあった。礼を言う必要なんて、どこにもない。
 今日いちばん論理的でない真理の発言に、皆が優しく笑った。


マスター:寺田海月 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/08/01
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