刃物とキケンな仲間達


<オープニング>


●都内某所
 いわくつきの刃物ばかりを展示していた博物館があった。
 この博物館では『最近、何かと話題の歴史的人物を暗殺した刀』や、『あの歴史的な有名人の首を刎ねた斧』、『とある殺人鬼が愛用していたナタ』等が展示されており、刃の部分には生々しく血の痕まで残っていたようだ。
 しかし、この刃物を使って『こ、これは俺の意思じゃない。は、刃物がそうさせているだけなんだ!』と叫んで博物館内で暴れまわった青年がいたため、『いや、これって全部紛いものなんだが……。つーか、そんな物騒な物を手に入れられるわけがないだろ。この血だって鶏や豚を斬ったものだし……』と言う事が暴露され、一気に人気がガタ落ちして閉館してしまったようだ。
 それから、しばらくして……。
 この場所で関係者と思しきゴーストが確認された。

「みんな、集まった? それじゃ、話を始めるね」
 運命予報士、長谷川・千春(運命予報士・bn0018)。
 今回の依頼は彼女の口から語られる。

 ゴーストが確認されたのは、閉館した博物館。
 ここではいわくつきの刃物が展示されていたけど、どれもそれっぽい設定をつけて展示していただけで、全部偽物だったようなの。
 実際に刃物が原因で暴れていた青年も、受験に対するプレッシャーで蓄積されていたストレスをどこかで発散したかっただけのようだし、刃物自体にまったく力はないようね。
 リビングデッドと化したのは、ここで被害を受けた人達で、刃物に対して異常なほどの恐怖を感じているわ。
 そのため、刃物を見るだけで大量の血が吹き出し、勝手に暴走しちゃうほど。
 あまりにも血が出るせいで、床が滑りやすくなっているから要注意。
 それと、室内の一部が特殊空間と化していて、何本も刃物を装備したオッサンが地縛霊と化して留まっているわ。
 このオッサンが事件を起こしたわけじゃないけど、『あの子は悪くない』、『全部、刃物が原因なんだ』と叫んで襲い掛かってくるから、くれぐれも気を付けてね。

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参加者
刈谷・紫郎(魔剣士・b05699)
天果埜・暁(想色の雲心占術師・b07058)
レン・ホーリー(白き勇者・b23785)
篠原・薫子(高校生桃の缶詰・b25283)
七瀬・瞳亜(パパラチアの魔女・b25292)
伊藤・洋角(百貨全用・b31191)
国見・繭(薫風の乙女・b32693)
秋矢・基(真福座跡・b59852)
藍染院・子夢(時の流れに潜みし猟犬・b69141)
水姫・優希那(おちこぼれ妖狐・b73873)
神楽・美沙(妖雪の黒瑪瑙・b76178)
アルファリア・ラングリス(ハイリゲンランツェ・b77160)



<リプレイ>

●ナントカに刃物
「こんな面白スポットが近くに存在したとは、不覚だな。潰れる前に来たかった」
 本気とも冗談とも言えない事を言いつつ、刈谷・紫郎(魔剣士・b05699)がパンフレットを眺める。
 パンフレットには博物館で展示されていた刃物が紹介されているのだが、どれもいわくつきのモノばかりで胸躍る内容であった。
「世の中には『拷問に使用された器具の博物館』とかも存在するから、刃物も似た様な趣味や興味がある人なら作るんだろうな。だが、ばったモンで金稼ぎだけを目的に運営するのはどうもねぇ。あんま感心しないな」
 ある程度の理解を示した上で、秋矢・基(真福座跡・b59852)が意見を述べる。
「……とは言え、刃物は一種独特な美しさがありますわね、特に日本刀など丹精込めた作品など魅了する感がありますの。展示してあった刃物とは少し違いますけど……」
 資料として渡された写真を眺め、七瀬・瞳亜(パパラチアの魔女・b25292)が答えを返す。
 どの刀も紛い物であるせいか、デザイン重視で作られていたらしく無駄に格好良かった。
「いわくつきの刃物ですか。実際にそういったものはあるのだと思いますが、あまり見世物にするのもどうかと思いますが……。それがやらせとあっては、なおのこと分かりません。集客さえ出来ればそれでよいのでしょうか?」
 納得がいかない様子で、アルファリア・ラングリス(ハイリゲンランツェ・b77160)が疑問を口にする。
 だが、博物館側は集客数の事しか考えていなかったらしく、それが事実であるか、偽りであるかは関係なかったようだ。
「まあ、来るお客さんも、刀剣に付いている血が本物だと思っていたなら、相当のおバカさんだと思いますけど……」
 げんなりとした様子で、国見・繭(薫風の乙女・b32693)が呟いた。
「確かに騙される方も騙される方の様な気がするが……」
 博物館の見取り図を眺め、藍染院・子夢(時の流れに潜みし猟犬・b69141)が頭の中に叩き込む。
「……まあ、冷静に考えれば殺人鬼の鉈だの暗殺に使った刀だの……。そんな物が一介の地方の美術館が集められるわけないですしね。何より血がついたままとか刃が錆びて駄目になりますよ」
 冷静になって考えた後、天果埜・暁(想色の雲心占術師・b07058)が妙に納得をする。
「おかしな物を展示なんてするから、おかしな人が寄ってくるんだよ。博物館なら、もっとみんなが喜ぶような物を展示して欲しいよね」
 不機嫌な表情を浮かべ、レン・ホーリー(白き勇者・b23785)が愚痴をこぼす。
 実際に博物館に来るのは変わった客ばかりで、ときおり小さないざこざを起こしていたようである。
「紛い物を展示してお金を取ってたのはダメだけど、その暴れ回った青年がいなかったら、嘘がばれずに済んだのかもね」
 当時の新聞記事を読みながら、篠原・薫子(高校生桃の缶詰・b25283)が残念そうにした。
 記事には高校生が博物館の中で暴れまわった事が書かれており、予め計画を立てていたらしく、沢山の人々が怪我をしたり、命を失ってしまったようだ。
 しかし、高校生はその責任を刀にすべて押し付けようとしたため、余計に面倒な事になってしまったようである。
「たかが受験のストレスなんかで刃物を振り回して、社会人になった時どうするんでしょうかねぇ? 受験の時とは比べ物にならないくらいストレス溜まるでしょうに……」
 どこか遠くを見つめながら、水姫・優希那(おちこぼれ妖狐・b73873)が溜息をつく。
「何というか、碌でもないものが集まり、碌でもない結果を呼び寄せたというところか。話題作りに、曰く付きとして『やらせ』に走る博物館。受験のプレッシャーを晴らすため、他人を傷つけ、あまつさえ、責任を物になすりつけようとする学生。どちらも情けない限りじゃが、実際に犠牲となった者がおるのじゃから、巻き込まれたその者らが最も不幸じゃ」
 呆れた様子で頭を抱え、神楽・美沙(妖雪の黒瑪瑙・b76178)がやれやれと首を振る。
「馬鹿と鋏は使いようとはよく言いますけど、馬鹿に刃物を持たせたら、全く駄目だって事ですよね? この話はあまり関係ないか。まあ、ゴーストが発生している以上、倒さないといけませんね。さっさと片付けてしまいましょう」
 仲間達に声を掛けながら、伊藤・洋角(百貨全用・b31191)がゆっくりと歩き出す。
 そして、洋角達は警戒した様子で、廃墟と化した博物館に足を踏み入れた。

●消えぬ恐怖
「曰く付き、のぅ……。とある〜じゃの、あの〜じゃの、何とも曖昧な表現ばかりで怪しさ爆発ではないか。いや、それっぽく書かれると、見る方が勝手に想像するのか」
 館内に展示されている刃物を眺めつつ、美沙がゴーストを探して歩く。
 展示されている刃物は漫画や小説に出てきそうなデザインをしており、時代に合わせて作られた物はひとつも存在していなかった。
 その視界の隅で蠢く、いくつかの影……。
「えっと……、犠牲者の皆さんですか? 青年のストレスの為に命を失う事になるなんて、本当に同情します。でも……、このままあなた方を残しておく事は出来ないんです。どうか成仏してくださいな」
 フランケンシュタインFWの大神に守られつつ、繭が飛斬帽を投げて物陰に隠れていたリビングデッド達を攻撃する。
 その途端、リビングデッド達が間の抜けた声をあげ、『こ、殺さないでくれ』と命乞いをし始めた。
「大丈夫ですよ。刃物なんて持ってませんよ」
 リビングデッド達を怖がらせないように榊を見せつつ、優希那がゆっくりと距離を縮めて幻楼七星光を発動させる。
 そのため、リビングデッド達がパニックに陥り、『こいつら、ヤバイ! 絶対に刃物を隠している……って、あれ、何!?』と叫んで、子夢の足元を指さした。
「うまく錯乱できればいいと思ったんだが……」
 気まずい様子で汗を流し、子夢が魔弾の射手を使う。
 予めリビングデッド達の反応を見るため、足元にカッターやナイフを放り投げていたのだが、それに過剰反応しているらしく、全身から血が噴き出していた。
「あばばば、ハンカチどうぞですよ〜」
 慌てた様子でリビングデッド達に駆け寄り、優希那がさっとハンカチを渡す。
 リビングデッドはそれを受け取ると、カッターやナイフから視線を逸らし、ハンカチで身体の血を吹き始めた。
 しかし、リビングデッド達の身体から吹き出した血は止まらず、そばにいた優希那の服にまで血が飛んだ。
「……ただの水ならサービスカットにでもなるんでしょうけどね。さすがに女性を血塗れにする訳には行きませんし……」
 優希那を守るようにして陣取り、暁がパラノイアペーパーを放つ。
 そこに描かれていたのは、タロットの大アルカナ『星』。
 それと同時に繭が飛斬帽で攻撃を仕掛け、大神がリビングデッドにパワーナックルを叩き込む。
「流血があろうと、さほど問題は無いですね」
 苦笑いを浮かべながら、洋角が暴走黒燐弾を撃ち出した。
 次の瞬間、黒燐蟲が辺りに飛び散り、リビングデッド達に食らいついていく。
「刃物で攻撃されるよりも、酷い目に遭っているような気もしますが……、考えたらダメですね」
 リビングデッド達の死角に回り込み、暁が呪殺符を投げていく。
 そのため、リビングデッド達が逃げ道を探し、キョロキョロと辺りを見回した。
「……さて、無差別に斬られた事は憐れむが……、ゴーストと成った以上は、倒すしかないのでな。……眠りたまえ」
 リビングデッド達に語りかけ、子夢が雷の魔弾を撃ち込んだ。
 その一撃を食らって先頭に立っていたリビングデッドがマヒ状態に陥り、『あ……あ……あう……』と声を洩らす。
「一見すると少々アレな感じにも見えるが、刃物で切りつけられた恐怖がそうさせるのじゃろうな。恐怖心というものは、想像以上に根が深い。今、妾がその苦しみから解き放つ……!」
 覚悟を決めた様子で、美沙が氷雪地獄を使う。
 それと同時にリビングデッド達が氷雪の猛吹雪に襲われ、断末魔を響かせて崩れ落ちていく。
「安らかにお眠り下さい。もう刃物に怯えなくても大丈夫ですよ」
 リビングデッド達を全滅させ、優希那がその場に花束を供える。
「成仏する間際に、また怖い思いをさせてしまって、ごめんなさいね」
 申し訳なさそうにしながら、繭が謝るようにして呟いた。
「しかし、心とはほんに難しいものじゃな。傷つけた方は、プレッシャーのあまり心が歪み、傷つけられた方も、恐怖のあまり狂ってしまった。よくも悪くも、心とは大きな力を持つものじゃ……」
 複雑な気持ちになりつつ、美沙が当時の状況を想像する。
 おそらく、悪い事が幾つも重なり、このような事件が起こってしまったのだろう。
「二度も切られる羽目になった訳ですしねぇ。こればかりは仕方の無い事です」
 リビングデッド達の立場に立って考え、洋角が寂しそうにしながら黙祷を捧げる。
 相手がゴーストと化してしまった以上、仕方のない事だ。
 それが分かっていても、こうする事しか……出来なかった。
「ふむ、折角だ。少し館内を見て回るか。討ちもらしがあってもいかんしな……。しかし……、曰くつきのものなんぞ、関わっても厄しか回ってこんだろうに……」
 館内の見取り図を眺めた後、子夢が険しい表情を浮かべて歩き出す。
 よほどの事がない限り、討ち漏らすような事はないはずだが……、念のためである。

●危険な刃物使い
「ここに置いてあった刃物のいわく全てが嘘だなんて……、少しぐらい用意出来なかったのかしら? それなのに何故この様な博物館を建てたのかしら?」
 地縛霊が確認された場所を向かいながら、瞳亜が様々な疑問が浮かんで首を傾げる。
 次の瞬間、瞳亜達が特殊空間に引きずり込まれ、バランスを崩して膝をつく。
「結構、ディテールは年代や史実に忠実でリアルに作ってんだなぁ」
 特殊空間に留まる地縛霊を見つけ、紫郎が旋剣の構えを発動させる。
 彼が持っている刃物は、博物館のモノと比べ、しっかりとした出来で、本物と見紛うほどであった。
「あの男性はどういった関係の方なのかしら? まさか単なる猟奇的な刃物マニア……、なんて事ありませんわよね? そんな姿になってまで……」
 ジッと地縛霊を眺めつつ、瞳亜が如何わしい表情を浮かべる。
 地縛霊は何本も刃物を持っており、瞳亜達の存在に気づいて、警戒心をあらわにした。
「何だか人が良さそうにも見えるけど……、刃物を持っているせいか、怖いなあ……」
 雪だるまアーマーを発動させ、薫子が地縛霊に視線を送る。
「ひょっとして……、事件を起こした受験生の父親ですか。今なお、自分の子供が仕出かした事件を信じられずにいるのですね」
 妙に納得した様子で、アルファリアが黒燐奏甲を発動させた。
 その言葉を聞いて地縛霊が『……あの子は悪くない。悪いのは、あの刃物だ』と唇を噛む。
「何でもかんでも刃物の所為にすんじゃねっての」
 地縛霊に対して文句を言いつつ、基がクロストリガーを撃ち込んだ。
 それを弾くようにして地縛霊が刃物を抜き、『みんな同じだ。何もわかっちゃいない』と吐き捨てた。
「あなたも罪を犯した青年の同属だね。変な電波でも受信しちゃってるっぽいけど、白の勇者の名に掛けて、このボクが成敗してみせるよ!」
 嫌悪感をあらわにしながら、レンが旋剣の構えを発動させる。
 だが、地縛霊は刃物をギュッと握り締め、『今からそれを消滅する』と呟いた。
「紫郎くん、同時に仕掛けよう!」
 仲間達と連携を取るようにして、レンが地縛霊に攻撃を仕掛けていく。
「刃が欠けるのを心配せずに剣が振れるって楽しいよな!」
 地縛霊の刃物を弾くようにして、紫郎が躊躇う事なく黒影剣を叩き込む。
 それでも、地縛霊は怯む事なく、『俺は負けられない!』と叫び声を響かせた。
「だからと言って、刃物を持って暴れられちゃかなわないねー」
 地縛霊が振り回す刃物を避け、薫子が天妖九尾穿を炸裂させる。
「残念ですが、刃物は紛い物、お子さんは受験を理由に凶刃を振るった殺人鬼、これは事実です。我が子に限って、とお思いでしょうが、その甘い認識が事件を生んだと心してください」
 攻撃を避けるようにして間合いを取り、アルファリアが呪いの魔眼を放つ。
 だが、地縛霊は怯まない。
 自らの考えを貫き通すために……。
「さて、あなたの寸劇にも飽きてきましたし、そろそろ終わりにしたいと思いますわ。どうしてここに現れたのかももう知らなくて良いですの。そしてそこまで変な方には来世でと祈りたくもありませんし、すぐに消えて下さいね」
 小さく溜息を吐きながら、瞳亜が隕石の魔弾を撃ち込んだ。
 次の瞬間、地縛霊が刃物を力いっぱい握り締め、断末魔を響かせて特殊空間もろとも消滅した。
「しかしまあ、『〜を殺した』だの物騒なモンばかりを謳い文句にするのもどうかと……。刀へのイメージがどんどん悪くなっていく気がするな。出来ればね、もちっとプラス思考の『あの名匠が鍛えた刀』とかを、展示する博物館があればいいなぁ。そしたら案外と通い詰めちゃうんだけどね」
 特殊空間が消滅した事を確認し、基が苦笑いを浮かべる。
 おそらく、この博物館も別の売り方をしていれば、ここまで酷い結果にはならなかった事だろう。


マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:12人
作成日:2011/07/26
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冒険結果:成功!
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