好きです、百秒で答えを下さい。


<オープニング>


 普段は友人と来る昼休みの屋上に、一人で来たのがきっかけだった。
「好きです」
「えっ……?」
 学校祭が終わって、夏休み寸前の今は確かに告白シーズン。
 だけど。
「付き合って下さい」
「え、ちょっと、そんなこと言ったって……」
 突然の告白に、少年は戸惑った。
「いや、確かに僕は今、付き合ってる人も好きな人もいないけど……」
 少女は待った。
 大人しく少年の返事を待った。
「ちょっと、今年は受験生だし、どうしようかな……デートとかあんましできないと思うし……」
 少女はじっと少年をみつめる。
「確かに君は魅力的だし、可愛いと思う。でも僕は君とは初対面だし、その……」
 ぽりぽりと口元を掻いて、少年は潔く頭を下げる。
「あの、すみません、せめて始めるとしたらお友達」
「遅ぇよ」
 百秒待って、少女は。
 巨大ラブレターで少年の頭をかち割った。

「北海道は、まだ夏休みが始まってないらしいな」
 夏休みの家庭科室に登校してくれた能力者達に、穂村・勇史(高校生運命予報士・bn0292)はキウイジュースに生クリーム、ゲンチアナエキスをシェイクして、グレナデンシロップで『Love』のサインを入れた『ラブ・レター』を差し出した。
「そんな北海道の高校に、抗体地縛霊が現れる」
 今のうちに倒さなければ、一人の少年が犠牲になるという。
 おそらくは、これからも続けて。
「だからその前に、退治をお願いしたい」
 被害者を能力者達がその手でなくせる事件だと、勇史は告げた。
「地縛霊の出現条件は、一人で屋上に入ること。残りの者は少し遅れるだろうが、特殊空間が開いた直後に屋上に行けば入ることができる」
 その後は地縛霊を倒すまで特殊空間の入り口は消えるから、一般人に出会う心配はない。
 だがそれより特殊なのは、地縛霊の習性だ。
「地縛霊は最初に、必ず屋上に入ってきた者に告白をする。断れば『じゃあ死んで』と攻撃、受ければ『嬉しい、私と一緒になって』と攻撃、黙っていれば『何か言えよ』と攻撃だ」
 基本的には最初に入ってきた者に、巨大なラブレター型の抗体兵器で攻撃をする。当たりどころが悪ければ気絶の可能性もある。
 さらには思い込みの激しいラブレターを読み上げて、20m以内の全員から――特殊空間の大きさ上、最初の出現地点である中央からならば全員が入るだろう――追撃が回った分だけ体力を吸い上げることもできる。
「ただ一つだけ方法があってだな……告白に対してだらだらと明確な返答を先延ばしにすれば、地縛霊はそれに聞き入り、手を止める」
 他の者に矛先が向く可能性もあるから、全員が言い訳を考えておくのがいいだろう。
「ただし、地縛霊が言い訳を聞くのはきっかり百秒間。……まぁ、言い訳しなかろうと百秒経ったら空間全体に大ダメージが入る」
 体力の高い者ですら戦闘不能になりかねない、受けたら確実に撤退だろう一撃だ。
「あと周りに地縛霊が三体現れる。奴らは言い訳してても構わず攻撃してくるからな」
 彼らは武器を持たず、爪で引っ掻くだけだが毒を持つ。彼らにも対処する必要があると、勇史は言った。


「厄介な敵だが、上手くやれば上手く勝てるだろう。……お前らの演技力に期待してるぜ!」
 そう言って、勇史は能力者達を送り出した。

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参加者
的場・遼(もっこりスイーパー・b24389)
ジェニファー・スウィート(暗黒なる氷雪の女皇・b30598)
水上・晶(宙廻る鷹龍・b42759)
真神・瑞貴(氷の貴公子・b45562)
北條・風葉(真クルースニク・b51053)
秋矢・基(真福座跡・b59852)
マモル・トレイア(白い蝶・b62303)
天宮・沙希(スケバン・b67479)
イクス・イシュバーン(高校生魔剣士・b70510)
大沢・颯壱(ピンキッシュデジタリズム・b78739)



<リプレイ>

「夏は恋の季節! って言うけど、さすがに百秒で告白の返事は無理なんじゃないかなぁ……」
 真神・瑞貴(氷の貴公子・b45562)が考え込む。
「自分から告白してるぐらい好きなら、殺したりしないよね。このゴーストは愛とか関係なくて、告白をゲーム化してるような気がする」
 そういうのは許せないと、瑞貴は思う。
「おおぅ? 告白してくる女の子ゴーストだとう?」
 的場・遼(もっこりスイーパー・b24389)が身を乗り出した。
 お前は何を聞いていたんだ。
「それは美人なのか? ナイスバディなのか? それなら検討に値する……」
 べし。
 後ろからスリッパで殴られて、遼はバランスを整えてからごほん、と咳払い。
「いや、冗談だ。冗談に決まっているじゃないか! 生きている女の子が一番さ!」
 べし。
 スリッパ掴んだジェニファー・スウィート(暗黒なる氷雪の女皇・b30598)は、もう視線を向けなかった。
「告白……か……」
 いつになく気になってしまう。何ゆえに、地縛霊になってしまったのか。
「告白少女!? 言っておくがアタシに同性を慈しむ趣味はないぜ!」
 天宮・沙希(スケバン・b67479)さん君に慈しめとは言ってない。
「金持ちの子女なんかだとスールとかおかしな趣味を持つ連中もいるみたいだがな。まっ、アタシが軽くあしらってやるさ!」
 どうしよう。沙希の頭の中では地縛霊がゆりんゆりんになってるよ。
「告白かぁ。そういえばはっきり言われた事は無いんだっけ?」
 水上・晶(宙廻る鷹龍・b42759)が呟く。心の拠り所と呼べる人はいるけれど。プレゼントでそれとなく伝えられた思いはあるけれど。
「言うのも言われるのも、そういうのってどんな気持ちなんだろう?」
 経験のない晶にとっては、興味津々だ。
「しっかしまた、短気な女の子だねぇ。そして逞しい」
 秋矢・基(真福座跡・b59852)がくすりと微笑んだ。
「なんで抗体地縛霊になっちゃったのか理由が気になってしまうけど、きっと……思い込んだら一直線、な性格が災いしたんだろっかな?」
 そう、基は思いを馳せる。
「確かに恋は楽しいばかりじゃないな。思い悩む事もある、それが恋かもね」
 まぁそんな時期が僕にもありました、とイクス・イシュバーン(高校生魔剣士・b70510)が大人の余裕で微笑む。
 まだ高校二年生だってのに!
「今は彼女とラブラブだけど……ラブラブ、だよね?」
 思わず頭を抱えて悩むイクス。
「告白できなかったのか、拒否されたのかわからないけどちょっと女の子は可哀想な気もする、が」
 北條・風葉(真クルースニク・b51053)が長剣を二振り纏めて肩に乗っけて遠い目をした。
「十八まで生きてきて告白を受ける相手が地縛霊しかいない俺も十分可哀想だからおあいこってことで」
 開き直ったようなその言葉に、思わず涙しかけながら肩を叩く能力者達。
 まぁ問題は励ましてるのもみんな男なんだな。
「ありがとう……哀しくなんかないんだからな!」
 勢いよく屋上のドアを開ける。
 踏み込めば、そこに少女がいた。

『好きです』

 夕日が眩しくなんかないんだからな、と風葉は目を細める。目が潤むのは涙のせいじゃないやい。
 ともあれ風葉の人生初告白は、すごい勢いで突入した能力者達の剣戟の音で彩られた。

 ジェニファーの周りに雪が集い、彼女の身体を白に染める。
 くるくると沙希が己の右腕に鎖を絡ませ、反対側の端を鋭く投げた。
「てめぇの相手は、アタシだよ!」
 地縛霊の右腕にもチェーンが絡み、しっかりとつながる。
「……あれ?」
 ふと疑問を抱く風葉。
「怒らせたら、地縛霊普通に攻撃してこねぇ?」
「……あ、頭に血が登ってちゃ、まともな攻撃はできないぜふ!?」
 沙希は思いっきり怒りに燃える地縛霊にぶん殴られていた。
「待て! 今返事を考えているから!」
 効くかどうかはともかくとして、風葉が地縛霊に向かってそう叫ぶ。
 けれど取り巻き地縛霊は、そんなことは気にしない。
 一体、二体。その攻撃で何とか倒れず済んだ沙希が、向かって来る三体目に備えようと剣を構えたその時。
「可愛娘ちゃんは、俺様が守るぜ!」
 横から飛び込んだ遼が一撃をその身に受け止める。
「えっ……ボクが好きなの?」
 そう首を傾げた瑞貴が、急に表情を変え「夏の暑い日に、吹雪はどうだ!」と口元を笑みの形に歪ませる。飛び散るは雪と氷の花。
「ところで俺、爆破スイッチで戦うの初めてなんだけど」
「「「ええええええ!?」」」
 なんとマモル・トレイア(白い蝶・b62303)が衝撃の告白!
「……ミスったらすまねぇ」
 ヴァイパー撃ちながら言うなよ! 怖いよ!
「と、とにかくいきなり百秒はないでしょー!」
 晶が言い訳を始めながら、飛び込みざまの回転蹴りをぶちかます。
「闇の力よ、俺様の剣に宿れ!」
 そう叫べば、遼の剣に黒燐蟲が輝いた。
「百秒……一分半強か。そりゃいらっときても仕方ないかも」
 同情なのか、大沢・颯壱(ピンキッシュデジタリズム・b78739)が呟く。
「それより、恋の告白の場に取り巻きがなんでいるの?」
 最もなツッコミだった。
「まぁ、あの……『えっ、俺のことを? でもなぁ……』」
 微妙に棒読みで、颯壱はリベリオンビートをかき鳴らす。
「氷雪地獄を撃ちながらだと……動けないわね」
 ジェニファーが眉をひそめ、吹雪を呼び出す。
「いや、ちょっと待って……告白、なぁ……」
 悩むポーズが自分でもうざったらしいなと苦笑しながら、基はそのまま龍撃砲を放つ。
「あれ、だってキミは先輩が好きなんじゃなかったの?」
 さらりと言ってイクスが微笑みを浮かべる。こう、鉄壁って額に書いてある感じの。
「やってくれたじゃねえか……だが、この借りは高くつくぜ!」
 沙希が構えを取って傷をふさぐ。瑞貴が雪だるまアーマーを装着する。
「でもボク……中二だよ? 年下でもいいの?」
 言い訳も忘れない。年下らしく上目遣い――は流石にできなかったが。
 186cmあるもんね!
 そこに駆けてきたのが怒りに燃えたままの地縛霊。巨大ラブレターで沙希を殴る殴る。
 取り巻きの攻撃が集中したのも不幸だった。たまらず膝をつく沙希。
(「なんか皆が戦っている中だらだら男らしくなく言い訳してるのって気が引けるけど……いや、これは作戦! 作戦なんだ!」)
 そう、彼が倒れたら作戦は崩壊。
 つまり彼の言い訳は必須!
「えーと、はじめまして?」
 とりあえず挨拶で誤魔化す風葉だった。
「まず君とは初対面で何も知らないし……」
 颯壱が呟いて、反逆の嵐を起こしながら言い訳を続ける。
 その横でマモルが地縛霊の告白に胸を動揺させる。思い浮かんだのは、あの人の顔。
(「……そうか、そうだ!」)
 思いの正体に至った所で、雷の蛇は空を切っていた。
「自分の好みもあるけど」
 晶が取り巻きに向かって拳を突き上げる。
 この言い訳、繋げて読んだら面白いので暇な人はやってみるべし。
「生活力のない今の俺では君に相応しいとは……内側から爆ぜろっ!」
 遼が目に力を込めて魔の視線を飛ばす。言い訳に決め台詞に口が忙しい。
「なんというか恋とか愛とか、そーいうのはいまいちピンとこなくてだなぁ……」
 言い訳しながらも基の目は鋭く、次の攻撃に向けて最適の位置を探す。イクスがそれを挟む位置に聖葬メイデンを呼び、取り巻きに後ろから飛びつかせる。
 地縛霊の目が、ふと平静に戻った。だが沙希を狙う瞳は変わらない。
「ばっ、馬鹿野郎……」
 さっと長剣を目の前に立てて、沙希は目を逸らした。
「こんな人の見ている前で言うことか……第一、アタシは女で……」
 満足したのか、地縛霊が向きを変える。
 歩き出す先は――言い訳をしていない、ジェニファー。
「えっと……きゃぁっ」
 ジェニファーが地縛霊の攻撃の勢いに怯みながら、何をすべきか迷う。
 結局、ジェニファーは急いで距離を取ることを選んだ。
「気持ちは嬉しいけど……」
 しっかりとジェニファーをかばうように風葉が立つ。
「邪魔。さっさと凍りつきな」
 取り巻きを凍らせてから、瑞貴ははっと「えと、ボクをういうの慣れてないし」と呟く。
 これもギャップ萌えと言うのか。ねぇマモルさん。
「俺は、あいつが……あいつじゃないと駄目なんだ!」
 あ、全然聞いてなかった。
 考え事して攻撃が逸れる。
「相手の好みもあるだろうし……」
 その様子を眺めながら、晶が姿勢を低くして龍撃砲を解き放つ。
「背も低いし、男らしくないし……」
 人差し指同士をつんつんしながら、リベリオンビートで仲間達を回復する颯壱。
「くっ……」
 ジェニファーが周りを見渡す。地縛霊との距離を測りながら、慎重に移動する。
「うーん、どうしようかなぁ…」
 基が首を傾げながら龍撃砲を放つ。イクスが飛ばした鉄の乙女が、上から取り巻きの頭に食らいつく。
「いや、だからってお前が嫌いなわけじゃなくて……くたばりやがれくそ野郎ッ!」
 沙希さんそれツンデレか何かになってます。
「まだあったばかりで〜」
 語尾を伸ばしてこっそり誤魔化す風葉。
「べ、別にうれしいとか思ってねぇけど……けど俺にはあいつが!」
『あ、そう』
 地縛霊が、さっとマモルに向きを変えた。
『じゃ、死んで』
 でかいラブレターの一撃が、マモルの身体を両断しかけた。
「っ、痛い……」
 慌てて瞳に計算式を流し、己の傷を癒すマモル。
「上手く、お付き合いできないかもよ? それにボクと付き合うにはえっと……」
 瑞貴がそっと取り巻きの背筋をさする。『ぎゃっ!』と一声叫んだ取り巻きが、背筋を凍らせたまま消える。
「次は、アイツを狙うぜ!」
 遼が声を張り上げる。「いやいや愛する心が重要だ。でも現実の生活力も……」と打って変わって小さな声で言い訳しながら、呪いを飛ばす。
「それに何処が好きとかも言って欲しいし」
 晶が再び体をひねり、龍尾脚へのループ。
「流行とか疎いから、話もつまらないだろうし……」
 颯壱の手でエネルギーの弦が寂しげになる。
 一応、反逆のビートである。
 ジェニファーが雪と氷の嵐を呼ぶ。イクスが対照的な赤黒いメイデンを、正面から突撃させる。
「援護しな、アタシが仕掛けるぜ!」
「俺が仕掛ける、援護を頼むぜ!」
 沙希と遼が同時に言って二人で剣を振りかぶり――あれ?
「「あれ?」」
 一応ちゃんと呪いの魔眼と黒影剣が突き刺さっていた。
 まぁまぁ大切なのは結果だ!
 その間に基が取り巻きの一人を蹴り飛ばし、消し去る。
「あと、人柄を知ってもらう必要もあると思うよ?」
 晶がさっと目標を変え、最後の取り巻きに拳をぶつける。
「二人のねえさんを説得しないと」
「……それに、ちょっと変わり者の姉貴がいてね」
「「あ」」
 瑞貴と颯壱の目が会う。
 お互い姉持ちというところに、親近感が流れる。
「えーっと、デートとか、夏なら海がいいよな〜」
 風葉が地縛霊の注意を惹くように呟いた。
 マモルが、真っ直ぐな目で地縛霊を見た!
「ごめん無理」
 爆破スイッチのボタンを押す。地縛霊が爆発を遂げる。
 けれど、彼女はマモルの前でにっこり笑っていた。
『だったら死んで』
 再びのラブレター攻撃に、マモルが思わず一歩引く。
 だが。
 衝撃は、来なかった。
「くぅっ……」
「ジェニファー!?」
 前に人影が回り込んでいた。
 斬り裂かれたジェニファーを、マモルが目を丸くして見つめる。
「大丈夫……」
 それでも彼女は、言い訳をしなかった。
 雪を集め、それを鎧のように身にまとう。
 地縛霊が、そっと笑ってラブレターを開いた。
『拝啓、大好きな人へ――』
 平時だったら、可愛らしかったかもしれない手紙。だがそれはマモルとジェニファーが倒し、己の傷を癒す。
 言い訳さえしていれば喰らわなかった一撃だけど。
「ちっ……肉を切らせて骨を断つってな、ともかくこっからはアイツ集中だ!」
 沙希が一声かけて、黒く染めた二振りの剣を十字に斬りつける。イクスが頷いて剣と刀を旋回させ、基が地縛霊の腹に回転させた爪先を蹴り込む。
「取り巻きは、任せて!」
 晶がさっと手を重ねて構える。「同じように自分の性格も知って欲しいよね?」と言いながら、龍撃砲。
「ねえさんたちはボク大好きだし」
 瑞貴が氷の力で、地縛霊の肩をそっとなでる。
「うちも特殊だから、迷惑かけるかも」
 颯壱の手の中から、巨大な電気の槍が爆ぜた。
「うむ、そう、姉さんが。姉さんに紹介してもらうデートもいいな」
 だんだん混乱してきた風葉が、デートプランを延々と話し出す。
「俺は二十歳の男、相手は学生。やはりここは相手の卒業まで待つべきでは?」
 遼がそう呟きながら、呪いの魔眼をぶつける。
 あと、四十秒。
「説得しなきゃだめだよ? それに大ボスの一番上の兄さんもいるし」
 なんという溺愛っぷりでしょう。
「……どうしようかな」
 そう呟きながらも瑞貴は、指先は氷をまとって連打している。
「恋する女の子はとても可愛いと思うけどね」
 イクスが惜しみなく聖葬メイデンを連発する。
「確かに今、彼女もいないし気持ちは嬉しいけど……俺自身に人から好かれる自信がないっていうか、こんな奴だから……頼りないと思うし……」
 颯壱がサンダージャベリンを撃ちまくる。言い訳の内容はちょっと悲しい。
「俺の夢なんだけどな、花火大会で……」
 風葉が地縛霊の前に回り込む。心に決めて力を高めるは、絶対の覚悟。
「だから『友達から』って言うのもありだと思うんだ。でもね……」
 晶が取り巻きの首筋を蹴り上げた。ばきりと何か折れた音がして、彼女は消えていく。
「『ゴースト』はありえない」
 そう言って、晶が虎の紋を身にまとう。最後に、備えて。
 残り、十秒。
「だから断る」
 晶の拳が、地縛霊の頬に綺麗に埋まった。
「自分だけを見てほしい……そういう気持ちは誰にでもあるんじゃないかな」
 イクスが剣を振りかざし、地縛霊を真っ向から斬り裂く。
「あは、だから何を話して良いかわからなくて……」
 颯壱が「ごめんね」と呟いて、電気の槍を手から放つ。
「悩ましいが、もうお別れの時間だ」
 基が走り込むと同時に体をひねり、爪先を地縛霊の顔に叩きつける。
「君をオトシてみせるぜ! 俺の視線に、ドキンとハートを震わせな!」
 遼が華麗なウィンク。呪いの視線が、地縛霊の胸を撃つ。
「てめえは、ぶっ潰す!」
 沙希の黒く染まった剣が、鋭く薙いだ。
「貴様のような奴は不愉快なんだよ! 思い知りな!」
 瑞貴が九尾扇を振る。ぱん、と乾いた音が地縛霊を打つ。
「と、言う訳で」
 風葉がぎゅっと拳を握る。
「ごめんなさい!」
 叫びと同時に断罪の拳が地縛霊の腹に埋まる。
 一撃。二撃。
 地縛霊は、ふっと微笑むと――静かに、消えて行った。

「いろんな意味で、強敵でしたね……」
 酷く濃厚な百秒間だった。
「でも」
 夕日が目に染みる。
「このまま、ここで話していくのもいいかもしれないね」
 能力者達は口を開く。
 言い訳に疲れた心が、満足するまで。


マスター:旅望かなた 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/07/31
得票数:楽しい12  笑える7 
冒険結果:成功!
重傷者:ジェニファー・スウィート(暗黒なる氷雪の女皇・b30598)  マモル・トレイア(白い蝶・b62303) 
死亡者:なし
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