臨海学校2011:ブハラ・バーガソン〜直訳すると『いい男』


<オープニング>


●ミッドナイト・カラリパヤット・レイヴ
 経営難で閉鎖されたはずのクラブ跡地。この場所で夜な夜な激しいレイヴが行われていると聞きつけ、最先端のダンスミュージックを求めてクラブを訪れた若者達。
 だが、彼らを待ち受けていたのは、鳴り響くインド音楽、そして舞台の上で踊り狂う上半身裸の男達だった。
「な、なんじゃ、こりゃぁ!?」
「ハーイハイハイ、皆サン、良いデスネ! 実に良いですヨ!」
 男達の正面に立つ異形の観音像を持つ男……『教祖』たるブハラ・バーガソンの手拍子に合わせて、男達の踊りはさらに激しさを増した。
 ぎょっとした若者達の表情は、ブハラの手にした像を見た瞬間、魅入られたかのようにうっとりとしたものになる。
「ご新規サマ、ごアンナーイ! さあ! アナタ達も、参加するのデース!!」
 ブハラの踊りに合わせ、踊り出す若者達。
 彼らの様子に満足げな表情を見せ、ブハラは指を突き上げ宣言する。
「ココを拠点に、まずは沖縄支配! ソシテゆくゆくは日本、世界の宗教モ支配シマース!」
 黒光りする上半身を躍動させ、ブハラは信者と共に踊り出した。
「アイアム、ナイスガーイ!! ボクについてクレば、バーガソン教の世界支配の尖兵ニなれマース!! さあ皆さん、この『誰でも入信キット』で、バーガソン教に入信するのデース!」
「イエァー! バーガソン教に栄光あれ!!」
「「「ブ・ハ・ラ! ブ・ハ・ラ! ブ・ハ・ラ!」」」

●沖縄ヤクザ大戦
「集まったようだな。では、今年の臨海学校について説明を始めようか」
 夏休みの教室に集まった能力者達を前に、運命予報士王子・団十郎は、『臨海学校のしおり』を手にして説明を始めた。
 今年の臨海学校は2泊3日の日程で沖縄で行われる。
 例年に比べてもかなり豪華な臨海学校であるが、勿論、それには理由があった。

「実は、源平合戦の戦いで討ち漏らした抗体ゴースト、ダブルフェイスの集団が沖縄に集結している事が判明したんだ」
 団十郎はそう言うと、事件のあらましを集まった能力者達に話して聞かせた。
「沖縄に集結しているダブルフェイスは200名以上。それが7人の凶悪なリーダーによって率いられて沖縄県内に割拠している」
 7人のリーダーは、凶悪な悪のカリスマを持った極道……ヤクザであり、その力で生き残ったダブルフェイス達をまとめて組織化してしまったのだそうだ。
「このダブルフェイス討伐には、大陸妖狐の能力者達も協力してくれる予定だ。初の共同作戦となるが、皆の活躍を期待する」
 そう言うと、団十郎は、7人のリーダーに関する詳細な説明を始めた。

●ブハラ・バーガソン
「七大ヤクザの一人、ブハラ・バーガソンは、インドの武術カラリパヤットの達人で、敵のツボを突く技を得意とする。ツボ治療など、民間療法にも通じているようだ」
 ブハラは自分を用心棒としてスカウトしたヤクザの一味を乗っ取り、自分の信仰する怪しげな宗教『バーガソン教』の根城にしたという悪名高い男だ。
 もっともその怪しさのために極道界のメインストリームには遂に乗れず、他のヤクザによって粛清を受けて教団を潰されたところを、ダブルフェイスとなったらしい。
「ブハラの行動は怪しいが、その戦闘力は本物であり、かつ、自分の配下達に戦いを強要しない事から、根性の無い最近の若者系のダブルフェイス達が、ブハラの宗教に入信して、身の安全を図ろうと集まったようだ」
 だが、宗教の力は恐ろしい。
 信者のフリをしていただけのつもりの彼らは、いつのまにかブハラの教えに看過され、ブハラの宗教を信じ、ブハラの為ならなんでもする狂信者に変えられてしまっている。戦闘になれば、ブハラの手足となって、狂信的に戦闘に参加するだろう。
「沖縄で邪教を流行らせるわけにもいかないからな。確実に倒しておいてくれ」

「ブハラ・バーガソンの本拠地は4つの舞台を持つ、クラブの廃墟だ」
 ここでは夜な夜な、ブハラと配下のダブルフェイスと信者になった一般人が怪しげな踊りを踊っているらしい。
「この場所には、信者を装えば誰でも入り込む事はできるが、ダブルフェイスと一般人とが混在している為、すぐに戦闘を行うのは避る必要があるだろう」
 王者の風などを利用しても、出口が狭い為、一般人が部屋に取り残され、戦闘中に巻き込まれて死亡してしまう危険性が高い。
「この怪しげな踊りの儀式は、ついていけなくなると一人づつ脱落していくもので、踊りに参加して時期を待っていれば、体力の無い一般人が全て脱落して部屋を退出するだろう」
 この後に戦えば、邪魔者無く戦う事が出来ると団十郎は語った。

「儀式の舞台は全部で4つあり、別々のフロアで行われている。各チーム内で、どの儀式に参加するかを選んでもらいたい」
 ブハラに挑むのは、銀誓館学園から3チーム、妖狐から1チームの合計4チームだ。
「妖狐は、銀誓館学園が選ばなかった儀式に挑んでくれるそうなので、どうしてもというものを彼らに押し付……いや、なんでもない」
 咳払いして、団十郎は儀式の説明を始める。

 ・1つめの舞台
 全員が凄いアフロを頭に付けており、そのアフロヘアを誇示して周囲を威嚇するようなダンスを踊ります(カツラも可)。
 アフロの凄さを相手に見せ付けて戦意を奪うという、動物の恋人争奪戦の様な儀式です。

 ・2つめの舞台
 動物のコスプレをして、その動物らしい動きを体現する踊りを踊ります。
 ブハラが使うカラリパヤットという武術には、動物を模した動きがあるので、その関係かもしれません。

 ・3つめの舞台
 体中にオイルを塗りたくり、踊り手同士が互いに体のオイルをなすりつけあう、謎の踊りを踊ります。上半身に油を塗るのはカラリパヤットの伝統でもあり、バーガソン教の経典に記された友愛活動の一種(ブハラ談)でもあるらしいです。
 正直、わりと気持ち悪いです。なお、水着着用も可。

 ・4つめの舞台
 体に金粉を塗りたくり、千手観音の動きに見立てたインド風の踊りを披露します。
 かなり怪しいですが、4つの舞台の中では、最も、舞踊的な要素があるようです。

 恐るべき儀式の説明を終え、団十郎はどこか疲れた表情で言った。
「一般人が脱落した頃合いを見計らって戦闘を開始する事になる。舞台にいるダブルフェイスは、それぞれ8名ほどで油断しきっているので、うまく奇襲できれば勝算は高いだろう」
 なお、ブハラは、最も盛り上がった舞台に降臨するという。
「ブハラの降臨した戦場は、戦力が格段に高くなる。厳しい戦いになるだろう。心してかかって貰いたい」


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参加者
御影・ありあ(白銀鏡の娘・b00509)
如月・芙月(高校生真符術士・b01111)
鈴鷹・彩翔(リィンホーク・b22676)
到真・悠人(伏魔絵師・b40287)
降魔・散人(反武術・b52388)
小鳥遊・桐音(御伽草子・b53243)
敷島九十九式・秀都(エクストラエンフォースメント・b57363)
白栖・伊良子(白黒分明・b70444)



<リプレイ>


 場内は、のっけから異様な雰囲気に包まれていた。
 『ブハラ教』の教祖であるブハラ・バーガソンが本拠地とするこのクラブ廃墟には、4つの舞台が存在する。
 そこでは夜な夜な、世にも奇妙な怪しい踊りが繰り広げられている、と言うのだが……。
 皆が訪れたその場所は、聞きしに勝る異様な盛り上がりを見せていた。
 アフロ、アフロ、アフロ、アフロ……。会場を埋め尽くさんばかりのアフロヘアーの集団が、跋扈しているのだ。
「まさか臨海学校に来て、こんな変なヤツらと戦う事になるとはなぁ……せっかくの沖縄なのによ」
 居並ぶツワモノどもを眺めながら、敷島九十九式・秀都(エクストラエンフォースメント・b57363)が思わず呟く。
 沖縄と言えば、どこまでも広がる青い海、南国情緒豊かな自然などが思い浮かぶのだが、ここはそのどれにも当て嵌まらない、異界とも言える場所。
「初めに言わせてくれ……これ臨海学校、絶対関係ないよね?」
 鈴鷹・彩翔(リィンホーク・b22676)も戸惑いを隠そうとはしない。むしろ信じられない、と言うような呆れた表情で踊るアフロたちを眺めている。
「アフロを被ってのダンスですか……ダンスの類は少々苦手なのですが、さて、どうしたものでしょうか」
「同じく、私も苦手なのですが、今はそんな事を言ってる暇はないようですね」
 渋い表情の到真・悠人(伏魔絵師・b40287)や白栖・伊良子(白黒分明・b70444)も、半ば諦めの境地に達しているようだ。
 そう、ここでは一般人が全員脱落するまで、アフロダンスを踊り続ける必要があるのだ。残るのはダブルフェイスであるゴーストばかり。
 そして状況次第では、ブハラ本人の降臨の可能性もあるのだから、決して気を抜く事は許されないのだ。

 出入り口の場所を確認し終えた一行は、こっそりとイグニッションを行うとアフロの輪に加わっていく。
「Yo! お前のその手のブツは何だ?」
 と、カラースプレーでド派手なアフロヘアを身につけた如月・芙月(高校生真符術士・b01111)に対し、アフロの男が激しく踊りながら問い掛けてくる。イグニッション後に現れた、詠唱兵器を指しているのだ。しかし。
「これはアフロパワーを高めるアイテムよ。ほら、ここにもアフロが付いているでしょう?」
 そう言い詠唱兵器を指差す芙月。確かに、榊の真上にちょこんと小さなアフロが乗っている。同じように御影・ありあ(白銀鏡の娘・b00509)がツッコまれた武器も、『アフロパワーブースト!』と意味不明ながら勢いのある切り返しに、何とか有耶無耶に出来たようだ。そう、要はノリと勢いなのだ。
 降魔・散人(反武術・b52388)がいつもとは違うハイテンションで踊りながら、こっそりアフロの中に電光剣を隠す中。会場にどっと歓声が湧き上がる。
「……今のわたくしは小鳥遊・桐音ではないわ。そう……究極の美の女神「アフロディーテ・キリネ」!」
 アフロに煌びやかなドレスを纏った小鳥遊・桐音(御伽草子・b53243)が何かもう、吹っ切れたテンションで踊りまくっていたのだ。
 周囲で踊るアフロ達も、彼女の動きに負けじといっそう動きを激しくし、頭を上下左右に振りまくる。もはやこの一角だけ別世界。
「味方ながら……すごい、の一言ね」
 ありあの言葉に、全員が踊りながらも無言で頷く。
 舞台はまだまだこれから。踊りはますます激しさを増していくのだった。


 熱を帯びていく場内に乗り遅れる事無く、能力者達の踊りも激しさを増す。
「イェアー! カブキダンス、グラッツェ!」
 悠人のさながら歌舞伎を模した、アフロもみあげを掴んで頭部をぐるぐると回すダンスに、周囲から喝采が起きたかと思えば。
「アフロ神、降臨してください……ッ」
 アフロヘアに何故か鼻メガネを付けた伊良子が、一心不乱に錫杖(アフロ付)を振り回し、腰を妖しく振る。周囲で一般人と思われる数人が、錫杖を食らいうずくまっているのは素敵な秘密。
「さぁどうだ! このテンポについて来れるか!?」
「うぉぉぉ、負けねーぞ!」
 更に踊りのテンポを上げ、疲労を招こうという散人の挑発に乗ったアフロダンサー達が、またその動きを加速していく。
「フィィィィバァァァァ!! さぁ、盛り上がれ野郎共!!」
「「オォー!!」」
 この人本当は教祖なんじゃないか、と言う位に、周囲の熱狂的な視線を集める桐音。流石は美の女神を名乗ることはある。アフロだけど。
「ブレイクダンスとは……この野郎、なかなかだぜ……!」
 アフロの男達が固唾を飲んで見守る中、秀都が披露したのはブレイクダンス。こちらも拍手喝采を受けているため、まんざらでも無い気分……かも知れない。
 ここまで来ると流石に疲れが見え始めたか、徐々に人数が少なくなってくる。限界に達した一般人が、ドアからどんどん出て行っているのだ。
(「あともう少しですね……」)
 その様子を眺めていた芙月が、踊りを止める事無く室内の様子目を向ける。残りは12、3人と言う所だろうか。
「こいつ、なかなかやるな……隣のペットもアフロで動きが機敏だ」
 アフロを誇示するように踊る彩翔を見て、残ったアフロの一人が思わず感嘆の声を上げる。最初は戸惑っていたものの、ほかの連中のダンスを見てコツを掴んだのか、その動きには迷いが無い。「シュウキョウは来る者を拒まないと言います!」と無理やり説得を通し、中へと連れこんだ真ケルベロスの『サイ』も一緒だ。
 そう、ここでも重要なのは、ノリと勢いである。
 やがてまた一人が退出。残るのは能力者達8名プラス1匹と、アフロダンサーが8名となった時、ありあがこっそりと秀都に近づく。
「(確か、ダブルフェイスは8人ほどだったわね。だとしたら、そろそろかしら?)」
「(ああ、だな……んじゃ、そろそろやるか)」
 皆は目配せをして確認した後、なおも激しく踊りながら、こっそりと陣形を組みなおしていく。そして出入り口完全に固めたその時、秀都が何処からとも無く、マイクを取り出す。
『みんな、ノってるかー!?』
「「「オオーッ!」」」
 秀都の叫びに、雄たけびで返す男達。半ばトランス状態のような、イッチゃってる表情である。だが、次の瞬間。
『ダンスはここまでだ……ここからは俺の音痴な歌を聴けぇえっ!!』
 その言葉を合図とし、一斉にアフロを脱ぎ捨てる能力者達。そしてその手には、各々が隠し持っていた詠唱兵器……!
「な、何ッ! こ、こいつら敵か!」
 慌てふためくアフロダンサー――ダブルフェイス達に、襲い掛かる能力者達。
 先ほどのアフロダンスとは打って変わった、生死を賭けたバトルの始まりである。


「敵は浮き足立ってるよ、戦力集中して、1体ずつ倒すよっ!」
 戦闘時の司令塔となる芙月の指示で、合図役の秀都に近い敵から掃討を行う事になった能力者達。
 初手で放たれた芙月の眠りの符は回避されてしまったが、見事に奇襲を果たしたため、先手は当然のようにこちら側となる。
「時間はかけてられないよ、速攻勝負!」
 真っ先に彩翔が、隠し持っていた弐振りの念動剣『彩鷹』『翔鷹』に意識を集中させると、虚空に生み出された光の粒子が、瞬く間に一本の槍を形作る。手を振り切るような合図とともに放たれたそれは、一本の光の筋を残し、違う事無くダブルフェイスの胸を貫通する。
 元よりダンスで体力を消耗していた上に、奇襲を食らった事で精神的にも動揺していたのだろう。避ける事も叶わず、彩翔の見事な会心の一撃により、瞬く間に1体が消え失せる。
「てめぇ! よくもジョニーを!」
「ジョニーだかジョニ黒だか知らねーが、それ以上近づくんじゃねーよ」
 慌てて駆け寄ろうとした別のアフロ・ダブルフェイスに対し、秀都がヨーヨーを持ったまま手を翳す。突如ダブルフェイスの足元から巻き上がる、強烈な上昇風。足止め、とは行かなかったものの、ダブルフェイスに対し多大なダメージを与えたようだ。
「よし、次は……って、降魔さん! スタンドプレーは……!」
 芙月が指示を出そうとした時、ふと散人の動きが目に入る。攻撃対象の指示を無視し、手近なダブルフェイスに戦いを挑んでいたのだ。連携を重視する奇襲作戦において、彼の行動は些か連携に欠いたもの、と言わざるを得ない。
「回避許さぬ我が一撃、避けれるものか」
 電光剣『宝貝「雷公鞭」』を手に、ダブルフェイスに対し必殺のクレセントファングを叩き込む散人。だが敵もさる者、致命傷とも言うべきダメージを受けつつも、反撃を試みたのだ。その手に現れた抗体兵器が、散人を狙う――!
「サイ!」
 彩翔が咄嗟に飛ばした指示。直後、その声により今にも武器を振り下ろそうとしたダブルフェイスに対し、襲い掛かるケルベロスの牙。最早一度の反撃が限界であったダブルフェイスに耐える事は出来ず、そのまま霧の様に消失する。
「……助かった。すまんな」
「お礼は後で! 今は眼前の敵を倒しましょう!」
 彩翔の言葉に、無言で頷く散人。未だ混乱から立ち直れないダブルフェイスに対し、なおも襲い掛かる能力者達の攻撃。
 次なる指示に従い、敵のど真ん中に飛び込んだ桐音の目が、妖しく輝く。周囲にいるのは、浮き足立っているダブルフェイス3体。翻した詠唱マント『禁式・宵闇』から飛び出した幾本もの刃が、主の意思に応えるように輝く。
「私の刃は全てを斬り刻む」
 直後、煌きを残し流麗な舞の如く振るわれた刃が、ダブルフェイス達を切り刻む。宛ら今までのは準備運動だった、と言う程の桐音の強烈な一撃により、2体が瞬く間に消失。1体もかろうじて息があるものの、最早その命は風前の灯。
「あら、ちょうどいい所に。そこ、危ないわよ?」
 そこへ襲い掛かるありあの一撃。翳した掌から迸るのは、科学人間の真骨頂である電撃の一撃。桐音の攻撃をかろうじて生き延びたダブルフェイスが瞬く間に消え失せ、巻き込まれた1体が瀕死の重傷を負ったようだ。
「くっ……いつまでもヤられてる訳じゃねぇぞっ!」
 ようやく立ち直った無傷の1体が、手にしたナイフ型抗体兵器でありあへと襲い掛かる。その刃が届かんとした、その時。
「そこまでだ……いい加減消え失せろ。そのアフロごとな」
 その言葉の直後、周囲に乱舞する紙。悠人が自らの妄想世界を集約させた、漫画原稿を撒き散らしたのだ。まるで悠人のイケない暗黒世界を思わせるような、見てはいけないような凶器と化した原稿により、弱っていた1体も昇天。残っていた2体もそれぞれ重傷を負ってしまう。
「残るは2体……速攻片付けないとね」
 宙を動いた芙月の手に、一枚の符が姿を現す。何気なく放たれたその符は、全ての霊的要素を根絶、殺害する禍禍しき穢れた符。これを食らえば弱っていたその体に、最早耐えるだけの力は残ってはいない。静かにアフロがまた1体、その姿を霧散させて果てる。
 やはり勝敗を分けたのは、皆のソウルフルなダンスが呼び込んだ隙だったようだ。
「ブハラさん出ませんでしたね。恥ずかしい思いをした分、きっちりお返ししたかったんですけど……まぁ、あなたでもいいです」
 伊良子が呟きながら、手にした白と黒の十字架型の錫杖『Howling of Rorschach』を構える。その穂先に集まる光の束。それはまるで伊良子の鬱憤を晴らすかのような、強大な光の槍となり。
 残っていたアフロを、瞬く間に塵へと変えたのだった。


 滞りなくダブルフェイス達を撃破した一行は、ブハラの姿を探し各フロアへと急いでいた。
「どの辺に出るんでしょう、ご本尊様は」
「一番盛り上がった場所、とか聞いた気がするな。まぁ探してれば見つかるだろ」
「急ぎましょう」
 伊良子と秀都、そして彩翔がそんな会話を交わしながら、道を急ぐ。今から間に合うかどうかは不明だが、何はともあれ駆け付けねばなるまい。他のチームのメンバーも、気になる所である。
 そして皆が駆けつけた部屋では、正しく金粉塗れのブハラ本人が、右手を腰に添え、左手の指を高らかと突き上げていた所であった。
『アイアム、ナイスガーイ!』
 キラリと歯を輝かせ、サムズアップを決めながらアフロを燃やし消えていくブハラ。その姿と叫びはナイスガイ、直訳すると『いい男』――。
「いや、直訳すんな」
 誰ともなしにありあが呟く。ですよねー。
 ブハラが現れたのは、金箔・千手観音の部屋。そこにはこの部屋を担当した者達が、やり遂げた顔をして立っていたのだ。そして皆とほぼ同時に動物のコスプレを担当していた者達も駆け付けて来たようだ。様子を見る限り、こちらの方も無事に終了したようである。
「やれやれ、何とか無事に終わったようですね」
 悠人がようやくほっとしたように息を吐き、目を閉じる。
「思えばアフロだとか動物コスプレだとか金箔だとかオイルだとか、色々大変だった……わね……?」
 桐音が呟いていた時、ふと何かを思い出すと、首を傾げる。
「そういえば……オイルまみれをさせられた大陸妖弧達は……?」
「「「あ」」」

 その後。
 戦闘は恙無く終了したが、オイルまみれで精神的ダメージが大き過ぎた大陸妖弧達が倒れているのを、駆け付けた3班の皆で介抱したのは、また別の話である。


マスター:嵩科 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/08/18
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冒険結果:成功!
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