≪jupiter≫気高きモノケロス


<オープニング>


 扉を開け放つと、秋の風がざあっと吹き込んで髪を揺らした。つい先日までは残暑が続いていたのに、もう秋の様相だと高千穂・有栖(花嵐・b75794)は風の匂いに目を細める。
 こうして風を浴びているだけでも、季節の移り変わりを感じる事が出来た。
「もう十月……ハロウィンが楽しみですね」
 有栖は笑みを浮かべて、扉に手をかけた。
 店内では、そろりそろりと北原・智恵理(黒く紅い血のイノセンス・b09487)か食器を運んでいる。よく何もない所で転ぶ智恵理であるが、さすがに店の食器を片付けている時は転ばないよう気をつけている。
 夏の食器をそろそろ片付けて、それから店内の在庫のチェックを……。
「そういえば、清滝さんはまだ戻りませんか?」
「お買い物に出かけたままでございますね」
 有栖は、日が暮れかけた丘を見つめながら答えた。途中で誰かと出会う事が出来ていればいいが、このまま日が暮れれば……。
 不安を感じながら、有栖が足を踏み出す。
 その手をつかんだのは、智恵理であった。
「大丈夫、私がちょっと探してきます。高千穂さんは食器の片付けをお願いしますね」
 私だと転んでしまうかもしれませんし、と微笑して智恵理がかけだした。智恵理は智恵理なりに、有栖の事を思ってくれたのだろう。
 入れ違いに、リオート・アポースタル(冷蒼の柩・b06682)が駆け去る智恵理をちらりと振り返りかえる。
 何か気になる事があったのか、じっと見ていた。
「ほら、冷えちまうよ。早く暖まろう」
 後ろからフェイス・フィオーカ(青きストラニク・b46124)が背を押すと、中に入ってカウンターの方へと歩き出した。
 カウンターでお茶を入れていた稲垣・幻(ホワイトティーリーブス・b36617)が、お帰りなさいと声をかけながらカップを取り出す。
 いつもの場所と、いつもの仲間の姿にほっと息を洩らす。
「……怪我、してます」
 細い指をのばして、ロサ・サントス(砂荊・b31403)が隣に座ったリオートの腕にそっと触れた。ひょいと顔をのぞかせて、フェイスが声をあげる。
 触った腕には、ざっくりと切り傷がついていた。
「ああ、やっぱり怪我してたのか」
「大丈夫、たいした事じゃないよ」
 リオートは答えたが、ロサはいすから立ち上がり救急箱を取りにいった。しかし、普通に転んだとも思えない切り傷。
「治癒術、する?」
 ロサが聞くと、リオートは首を振った。
「もう治りかけだから、大丈夫。ありがとう」
 それよりも暖かい紅茶を一杯。
 リオートが言うと、幻がこくりとうなずいた。
「それで、どこでお怪我をされたのですか?」
「それがさ、ユニコーンを見たって言うんだよ」
 フェイスが笑いながら言った。
 ユニコーン?
 皆の声が、揃って返った。
「……本当にユニコーンですか?」
 幻が首をかしげた。
 ユニコーンとは、伝説上の一角を持つ生き物である。むろんいろんな妖獣や地縛霊がいるのだから、ユニコーンのゴーストがいてもおかしくない。
「暗がりにたっていたんだよ。だいぶん怪我をしていたから、つい手が伸びてね。どうやら子供を連れていたようだ」
「ユニコーンは、清らかな少女しか触る事を許さないと言いますからね。それで、そのユニコーンはどうしたのですか?」
「逃げてしまったよ……ついその向こうだったかな。ここに何人か手勢がいれば、探しておこうかと思ったんだけどね」
 片付けるか放っておくか。
 とりあえず、皆に相談してからにしようと戻って来た次第であった。しかしその話を聞いた幻が、思案の表情を浮かべた。
「清滝さんとボエルジさんが、買い出しに出かけているんです。その様子だと危険のないゴーストのようですが、もしかするとマヨイガに導かれたのかもしれません。探しに行った方がいいのではないでしょうか」
 幻が皆の顔を見回すと、フェイスはカウンターに置いてあった鍵を取ってにっこりと笑った。
 そうと決まれば、皆でユニコーンを連れに行こうじゃないか。

 薄闇の中、白い肢体が踊っていた。
 体に無数の傷を負い、それでも小さなユニコーンを庇うようにして角を振りかざす。後ろから迫るのは、黒い体をした二角獣……バイコーンであった。
「清滝、下がれ」
 ジャック・ボエルジ(ロックパンプキン・b51745)が、とっさに心結璃を背にイグニッションカードを取り出す。
 そっとジャックの背を掴みながら、心結璃は眉を寄せる。
「……怒っています」
 仲間を傷つけられた怒りであろうか。
 ジャックはちらりと心結璃を振り返る。
「ユニコーンは気位の高い、力の象徴。その怒りを静める事は、無垢な少女にしか出来ないという」
「でも、マヨイガのお客さんです」
 そしてその客人が襲われているというなら、助けるのが自分達の使命だ。

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参加者
リオート・アポースタル(冷蒼の柩・b06682)
北原・智恵理(黒く紅い血のイノセンス・b09487)
ロサ・サントス(砂荊・b31403)
稲垣・幻(ホワイトティーリーブス・b36617)
フェイス・フィオーカ(青きストラニク・b46124)
ジャック・ボエルジ(ロックパンプキン・b51745)
清滝・心結璃(魂鎮ノ舞ヲ奏上ス・b60741)
高千穂・有栖(花嵐・b75794)



<リプレイ>

 この暮れていく日が、少しでも長く空にとどまってくれると良いんだけど。
 空を見ながら、フェイス・フィオーカ(青きストラニク・b46124)はそう願った。暗闇は戦闘の際に余計な神経を必要とし、また敵を見失いやすくする。
 ……敵?
 フェイスの思考の端に、ちりっと何か引っかかるものがあった。
「何事もなければいいけど……」
「ユニコーンがマヨイガの客人だとすれば、他にもマヨイガに誘われていないゴーストが側に居る可能性もある」
 リオート・アポースタル(冷蒼の柩・b06682)に言われ、フェイスはようやく不安の主に辿り着いた。
 マヨイガに誘われたゴーストが襲われていたという話は、フェイスもリオートも他の結社の仲間からも聞いた事がある。
 だが、ジャック・ボエルジ(ロックパンプキン・b51745)や清滝・心結璃(魂鎮ノ舞ヲ奏上ス・b60741)達が簡単にゴーストに倒されてしまうとはフェイスも思ってはいない。今は出来るだけ早く、彼らの加勢に向かわなければ。
 ふ、とリオートは自分の腕の傷に触れ、それから最後尾に居る稲垣・幻(ホワイトティーリーブス・b36617)を振り返った。自分の傷よりも、幻の方がもっと深い。その傷は、幻が直前のゴースト依頼において負った傷であった。
 大丈夫、と幻は笑ってみせるが……幻にとって一番の不安は仲間の足を引っ張ってしまう事である。
 彼の不安を拭うように、モーラットヒーローのミージュが元気に跳ね回った。
「……そうですね、ユニコーンやジャックさんの危機なんですから」
 前を駆けるフェイス達の背を見ながら、幻は傷の痛みを抑えた。

 仲間が駆けつける気配を、どこかで察知したのだろうか。
 ジャックがjupiterのある方を振り返り、じっと目を凝らした。ここは、心結璃を連れて撤退する方がいいか、それとも……。
 Eddaを構えたジャックの背後に居た心結璃が、その時声をあげた。
「ボエルジ様、あれを……!」
「持ちこたえるぞ、智恵理」
 駆けつけた北原・智恵理(黒く紅い血のイノセンス・b09487)に声を掛けると、ジャックと智恵理とともにユニコーンたちの前に立った。怪我をしたユニコーンを一瞥し、ジャックが背中の心結璃に視線を向ける。
 警戒心の強いユニコーン相手に、ジャックが声を掛けてどうにかなるとは思えなかった。
「お前は支援を頼む。……後ろの奴らもな」
 敵意むき出しの目を、バイコーン達だけでなくジャックにも向けているユニコーン。心結璃は着物の合わせに差していた観月花を取り出し、ふわりと舞いをはじめた。
 まずは、一差し。
 心結璃の舞を見たユニコーンから、少し警戒心が薄れた気がした。
「さあ、気を落ち着けてくださいまし。わたくし達は敵ではございません、しかと見定めてくださいますよう」
 ああ、この真白で高貴なる魂が失われる前に招く事が出来たマヨイガに感謝を。心結璃は笑みを浮かべると、彼らの視線の先を振り返った。
 バイコーン達への敵意と破壊を乗せたビートを奏でるジャックと、彼らの進行を阻止する為に前に立ちはだかる、智恵理。
「さあ、お相手は私が致します! 怪我をしているユニコーンよりは、手応えがありますよ?」
 白いチェン剣の深紅の刃を唸らせ、智恵理が威勢良くバイコーンに声をあげる。四頭の攻撃を一身に受けるべく、智恵理はキッと睨み付けた。
 角を振りかざして突撃するバイコーンの攻撃をひとつ受け流すと、また別の一頭が智恵理をはね飛ばす。残り二頭は動く様子がなかったが、うち一頭は大きく嘶いたのが聞こえた。
 バイコーンのいななきは黒い霧と化し、智恵理に絡みついた。
 ぐらりと体が眠りに引きずらり、体勢を崩す智恵理。その意識を現実に引き戻したのは、心結璃の声であった。
「北原様、意識をしっかりと持ってくださいまし!」
 心結璃は声とともに符を放つと、智恵理の傷と意識を癒す。
 帰りの遅い自分達を心配して、智恵理は来てくれたのだ。jupiterで待っている皆も、必ず来てくれる。
 振り返った心結璃の視線の先にあるのは、暗い暗い闇と……。
 咆哮のように鳴り響くジャックの音色に混じり、声が届いた。
「3人とも、加勢に来たよ!」
 フェイスの声が、闇の中から届いた。飛び出したフェイス、そしてロサ・サントス(砂荊・b31403)とエスパーダが後に続いて駆け込む。
 ロサの手にした明かりが、仲間を映し出した。
 リオートに、まだ怪我をしているはずの幻。そしてこんな暗い中駆けつけてくれた高千穂・有栖(花嵐・b75794)。リオートはそのまま勢いをつけて、剣をバイコーンに叩き込んだ。
 飛び込みざまの一撃を受け、智恵理を角で付いたバイコーンは今度は自分が転がる羽目になった。一息つき、リオートがふと笑って視線をユニコーンに向ける。
「見つかって良かった。……怪我をしたままどこに行ったのかと、心配してたんだ」
「絵本で見たのと、同じ、ユニコーン」
 ユニコーンの親子が無事であるのを、目を細めてロサが見つめた。彼らを護る為、エスパーダをバイコーン達へと差し向ける。
 攻撃を集中して受けていた智恵理をまず庇い、フェイスやエスパーダが前進した。
 肩で息をする智恵理には有栖が祝福を、幻がファンガスの力を送る。有栖はおうじを守りのために送り出し、傷の様子をうかがった。
「おうじ、私の代わりに北原様を御守りして」
 おうじとミージュがしっかりと守り、ひとまず有栖は安堵した。白いモーラットが二匹、まるでナイトのように前に立つ。
 動き回るバイコーンの位置を察するのは難しいが、出来れば彼らの攻撃に幻やユニコーンを巻き込みたくない。
 智恵理の肩に手を掛けて、有栖が立ち上がらせた。
「ユニコーンは稲垣様にお任せして……」
 言いかけた時、バイコーンの角がこちらにむいているのに気付いた。智恵理がとっさに避け、有栖は後ろを振り返るとその場に立ち尽くしたままクロスボウを構える。
 一声嘶いた後、バイコーンが突進した。
 エスパーダの脇をかすめ、有栖のクロスボウを弾く。その突進は全力で身構えた有栖をもはね飛ばして、後ろに駆け抜けた。

 一頭を吹き飛ばした後、リオートはそれをエスパーダに任せて残った三頭の方へと集中していた。フェイスの指先が凍らせたバイコーンにおうじがスパークを浴びせると、タイミングを見計らってリオートが白い刀身をバイコーンの体に穿つ。
 刀身を覆った氷が、内部からバイコーンの体をみるみる冷気で覆っていく。
「一頭が後ろに向かった、うしろは頼むよ」
 リオートがフェイスに言うと、フェイスは後衛の幻を振り返った。突進したバイコーンが、幻を庇って立つジャックとにらみ合っている。
 リオートの体は冷気で冷えていたが、エスパーダやミージュ、おうじも居る。
「……すぐに戻る!」
 角でジャックを突いたバイコーンに、フェイスは後ろから詰め寄った。ロサはリオートを支援していたが、このままだと後衛が混乱してしまう。
 幸いにも一頭はジャックのビートで足止めされていた為、ロサは即座にターゲットをジャックの側の一頭へと切り替えた。
 風のようにバイコーンへと駆け寄るフェイスに従い、ロサがチェン剣を頭上に構える。
 剣から放つオーラから巨大なギロチンの刃が生まれ、フェイスが斬りつけた結晶輪の傷を更に抉るように叩き込んだ。
「ユニコーンも…皆も、護る」
「お前の苦痛は俺が断ってやる。来い!」
 幻を後ろに押しやり、ロサに続いてジャックが叫んだ。バイコーンを喰らう鉄の処女を召還しながら、ジャックは一歩も引かず。
 その攻撃をフェイスが受け止め、かわりに指先から冷気を放った。
「マヨイガに招かれて来たんだろう? 私達は、彼の地り守り人だ……話を聞いてくれ」
 フェイスが語りかけると、幻もユニコーンの前に立って静かな口調で話し出した。このままだと治癒をも受け入れてもらえず、バイコーンの攻撃で倒れる危険性もある。
 触らぬように近づき、幻はふわりと笑みを浮かべた。
「後ろの子はあなたの子なんですね」
 この子を護って、大きな方のユニコーンは怪我をしたのだろうか。
 幻は、小さな方のユニコーンの怪我が浅いのを見てとった。
「マヨイガの客は、私達の友達です。だからその子と一緒に私達の後ろでじっとしていてくれませんか?」
 幻は、元来た道の方を指し示した。
 マヨイガのある、店の方を……。
 そこが自分達の辿り着くべき場所だと、ユニコーンたちも悟ったのかもしれない。幻の言う言葉に従い、後ろへと引き下がっていく。
 そしてジャックやフェイス、ロサに突撃を切り返していたバイコーンは、ついにロサのギロチンを受けて両断されたのだった。
 エスパーダを前衛に出している手前ロサは手薄になっていたが、かろうじて立ち上がるだけの体力は残っていた。
「ユニコーン…あともう少し」
 あともう少しで、帰れるから。
 ふらつきながらもロサはそう言うと、エスパーダの方を不安そうに見る。バイコーンを炎で焼くエスパーダとリオートの隙を突き、一頭がこちらに頭を向けた。
「エスパーダ!」
 ロサがエスパーダに声を掛けるのと、ジャックが弦をかき鳴らすのはほぼ同時であった。バイコーンが動き出す直前、ジャックがその動きを阻止した。
 ビートに衝撃で震えるバイコーンに、エスパーダが牙を立てる。
 ほっとしてふらりと体勢を崩したロサを、幻が後ろから支えた。残りのバイコーンは、エスパーダやミージュに任せていればいい。
「傷を治しましょう、じっとしていてください」
 幻のファンガスの力が、ロサの傷を塞いでいった。

 眠りに誘われては突撃され、突撃されては眠りに誘われ。
 有栖は怪我をしつつもうつらうつらと眠りはじめるおうじに、その度声を掛けた。どうしてもバイコーンに集中しがちになる為、おうじやリオートなどはその度バイコーンの眠りに釣られてしまうのである。
 後ろの事は幻やロサ達に。
 有栖はリオート達を支えるのが、役目である。
 しかしバイコーンの眠りの声は、有栖や心結璃にも襲いかかる。咆哮とともに黒い霧が有栖達を包み込み、眠りへと急速に引き込んでいった。
 有栖は地の底に引きずり込もうとする霧に耐えながら、心結璃の体に触れた。しっかりと腕を掴み、有栖は彼女の体を側に寄せる。
 心結璃はぐったりとして眠りについていたが、まだ眠りは浅いように見えた。眠りに引き込む黒い闇は、有栖を震えさせる。
 だけど側に仲間がいると思うと、どこかから力が溢れる気がする。
「しっかりなさってください、悪夢に囚われてはいけません……どうか目を覚まして!」
 有栖の必死の問いかけに、ぴくりと心結璃の瞼が動いた。うっすらと目を開け、そして手を翳す。手の先は、あのバイコーンへと向けられている。
「……舞も治癒もなくとも、声があれば仲間を奮い立たせる事が出来る。……そうでございましょう?」
 ゆっくりと体を起こすと、心結璃は手から符を放った。
 符が強烈な力となり、バイコーンを弾き飛ばす。衝撃で体を砕かれたバイコーンに、リオートが剣を振り上げた。
「招かれざるモノは、この先一歩たりとも踏み込ませはしないよ」
 氷の刃が、バイコーンを切り裂いた。

 太陽が沈み、暗闇が包み込んでいる。
 暗い夜道に、ぽつりと明かりが灯る。ロサが懐中電灯を灯すと、怪我をして横たわっていたユニコーンに明かりの先を向けた。
 明かりを持ったまま、ロサは少し離れてじっとユニコーンの目を見つめている。
「怪我、ダイジョブなの?」
 ロサが幻を見上げて聞くが彼もあまり近づけず、途方にくれて見回した。視線が合ったジャックは、無言で息をつく。
「さて、な」
「ともかく、僕やジャックじゃあ触らせてもらえそうにないね」
 リオートはユニコーンから離れて、ロサと同じように懐中電灯で照らした。来た時のように角で一突きにされるのは、もう御免蒙りたい。
 話によると清らかな乙女でなければならないと言うが、モーラットや使役などは人ではないから大丈夫かもしれない。
 リオートが幻とそう話していると、そっと心結璃がユニコーンに近づいていった。間近に見ると、なお美しいその体……心結璃は目を細めて手を伸ばす。
「伝承の通りであるならば、わたくしめは背に乗せてくれましょうや?」
 伸ばした心結璃の細い手が、ユニコーンの体を撫でる。痛々しい傷に指が触れると、ぴくりとユニコーンが体を捩った。
「ああ、すぐに傷を手当てしましょう」
 心結璃が符を翳すと、有栖がおうじに声をかけた。心結璃の符、そしておうじと幻のミージュが傷を舐めて塞いでいく。
 ユニコーンがモーラットを拒否しなかった事に、幻はひとまず安心していた。自分は触る事が出来そうにないが、せめて友達にはなってみたいものである。
 触りたそうにしている幻やロサ達を見て、ジャックがそっと側を離れた。戦闘になった時に放り出したままになっていた袋には、中に何か入っている。
「先ほど買ってきたものだが、使ってみるか?」
「……いいのカ?」
 ロサが袋を手に取り、中にあったものを取り出した。中から出てきたのは、動物用のブラシが幾つか……。
 店にはこれを使うような動物がいただろうか? ロサが考え込みながら、視線をエスパーダに向けた。
 うん、なるほど。
「さっそく、使う」
 ロサがエスパーダにブラシを渡すと、エスパーダがユニコーンをブラッシングするという奇妙な構図になった。
 なんだかそれがおかしくて、有栖もおうじにブラシを手渡す。小さな方のユニコーンは警戒心が薄いのか、ブラッシングされてうっとりと目を細めていた。
 フェイスもブラシを手に取って、小さな方のユニコーンに近づいてみる。どうやらすっかり警戒は解けているようだった。
「清滝はグッドタイミングだったね、ブラシを買ってくるなんて」
「いえ、これはボエルジ様がお買い上げになったもので御座います」
 急に立ち上がったユニコーンの背に乗ったまま、心結璃がバランスを取る。フェイスに答えた心結璃がジャックを見ると、ジャックと周囲の視線を浴びて視線を逸らした。
 何だ、ジャックはエスパーダ達をブラッシングしたかったんだと言いつつリオートがちらりと見ると、ロサは黙ってブラシをジャックに差し出した。
 撫でたいなら、存分に撫でるといい。
「北原、お前も乗せてもらったらどうだ」
「私は十分撫でさせてもらっていますから、清滝さんをエスコートしていきますね。それじゃあ、お先に」
 ユニコーンに乗せて貰ったまま心結璃と智恵理が歩き出すと、有栖はおうじに声を掛けた。すっかり仲良くなったおうじと小さなユニコーンの様子に、幻と二人目を合わせて笑みを浮かべる。
「また、会いに行きましょう。おうじも一緒にね」
 マヨイガに行っても、また皆で会いにゆこう。


マスター:立川司郎 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/10/05
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