助けてくれ、仕方がなかったのだ。本当は嫌だったのだ、こんなこと。馬鹿なことをしたと思う、お願いだ。どうか見逃してくれ……とでも言うと思ったか、馬鹿め


<オープニング>


「助けてくれ、仕方がなかったのだ。本当は嫌だったのだ、こんなこと」
「はぁ」
 少年は、嘆息していた。
 救いを求める声を聞いてすぐさま駆けたのは、日頃から人を助けることに慣れていたのかも知れないが、助けようとした対象が周囲を囲んでいた異形の獣と共に襲いかかってきたのは少年にも予想外だった、だが。
「馬鹿なことをしたと思う、お願いだ」
 紅蓮の炎を宿した鎖剣が最後の獣を消滅させたとたん、襲撃者は命乞いを始めたのだ。蛇の尾を生やした相棒の祈りで封術もとけ、後はまっ白い肌と髪をしたこの男を倒すだけなのだが。
「どうする、鈴蘭?」
「どうか見逃してくれ……とでも言うと思ったか、馬鹿め」
 相棒に問いかけようとした瞬間だった。態度を豹変させた男が脇に置いていた騎士槍を手に襲いかかってきた。
「ぐあっ」
 獣達とは比べものにならないほど鋭い一撃に少年は膝をつき。
「くくくくく、その顔だ。その顔が見たかったのだ」
 いやらしい笑みを浮かべた男は再度突きを繰り出す。少年を庇うように彼の相棒が身を男と少年の間に割り込ませるが、突きは蛇の尾を生やした少女ごと少年を貫いた。
 
「集まってるね、ご苦労様」
 能力者達の人数を確認した運命予報士の少年は鞄から取り出した数枚の紙を机の上に広げると説明を始めた。
「ナンバードと呼ばれるリビングデッドは知ってるかな?」
 抗体兵器を持ち白い髪と肌をした強力なゴーストを口の端に上らせた予報士の少年によると、そのナンバードが一人の少年を襲おうとしているのだと言う。
「ナンバードは普段は人間と同じような姿をしているが、戦闘になると正体を現して戦いを挑んでくるんだ」
 彼らは自身が殺すべき能力者の居場所を知る能力があり、今回の一件もナンバードが能力を利用して起こそうとしている事件であるらしい。
「もっとも、居場所を知ることが出来るのは標的となった人だけだからね」
 君達の力でナンバードが狙った少年を殺すのを阻止して欲しい、と言葉を続け予報士の少年は頭を下げれば、能力者達は頷いて。
「ありがとう。それで、狙われる少年なんだけれど」
 少年の名は、久屋 匠。サキュバスを伴う土蜘蛛で「救いを求める無垢な願いに応じ、封印の眠りから目覚て」以来、助けを求める声に応じつつ生きてきたのだとか。
「妖獣に襲われる一般人のふりをして接触したナンバードに彼がおびき出されちゃったのもそのせいかもね」
 もっとも、おびき出される前に接触できれば少年が罠に引っかからないよう忠告してやることは出来る。
「サキュバスを伴ってるからか、少年は普段廃墟とかで風雨をしのいでるみたい」
 借りのねぐらになっている廃墟へ向かえば、能力者達が少年へ先に接触するのは難しくないとのこと。
「ナンバードは、少年がねぐらを出た後適当な場所を見つけて妖獣に襲われる一般人を演じて少年をおびき出そうと試みると思う」
 基本的に尾行しつつ、人気のない場所を見つけ妖獣に自分を囲ませて自ら助けを呼ぶという方法で。
「妖獣自体は本当に――モーラットにも負けるぐらい弱いから、注意すべきはナンバードの方だよ」
 抗体騎士槍をもつナンバードは近接する対象とその周囲の対象を一度に攻撃できる、所謂近接爆発範囲の刺突攻撃を得意としており、油断した相手に襲いかかるという手段を好むらしい。
「まぁ、この趣向を逆用して命乞いしてるところを強襲してボコボコにするなんてのもアリといえばアリだけど」
 抗体兵器を持っているだけあってか、攻撃力にはあなどれない面がある。
「襲われる少年もだけど、未熟な能力者なら二度突きを受けたら倒されかねない」
 油断はできないということだろう。
「あんな卑劣なナンバード、放置しておけないからね」
 少年の事もよろしくね、と付け加えつつ予報士は能力者達を送り出した。
 

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参加者
草薙・藤次郎(真水練忍者・b01852)
雪乃城・あやめ(白金・b56494)
斯波・留香(断罪真紅・b63564)
七村・晶(剣牙・b69126)
貴見・一成(闇夢断つ紫瞳の守護者・b77323)
夜斗神・凍牙(漆黒の夜を駆ける銀の双月・b79887)
渋川・睦月(処刑人・b80974)
春風・薫(ハニーオレンジ・b81158)



<リプレイ>

●廃墟の訪問者
「情けは人のためならず、大事なことですね」
 他人に施した情けは回り回って自分の為になる――そんな意味合いのことわざを口にしながら草薙・藤次郎(真水練忍者・b01852)は足を止めた。
「ウォン」
 視線の先には他の能力者達と同じく窓ガラスの割れた廃墟のシルエットが浮かんでいて、七村・晶(剣牙・b69126)が狼に変じていた夜斗神・凍牙(漆黒の夜を駆ける銀の双月・b79887)の鳴き声に小さく頷いた。件の少年はおそらくまだこの中だろう。
(「久屋みたいなお人よしは好感が持てる。今回久屋を狙っているナンバードのような奴とは相性は悪いだろうが」)
 その優しさを大切にして欲しい、と物陰に潜んだ斯波・留香(断罪真紅・b63564)は思う。
「では俺達だけで先に入りますから……」
 貴見・一成(闇夢断つ紫瞳の守護者・b77323)が口を開いて言う様に、ここからは少年と接触を行う能力者のみが廃墟へ足を踏み入れる手はずとなっていた。
「仕方ないとは言え、学園の存在を知らないと、俺もこういった生活になるんでしょうかねえ」
 待機組の藤次郎は廃墟を眺めて呟き。
「今回は共通点の多い方ですね……椿さんの復帰戦でもありますから頑張らないとですね」
 呟いた雪乃城・あやめ(白金・b56494)は、接触組。
「『近接攻撃主体で使役G使い』というのは自分と似ているので興味あります」
 しっかりと守って、是非ウチの学園に来てもらいたいものですと続けた渋川・睦月(処刑人・b80974)もまた。
「行ってきます。周辺の警戒はよろしくお願いしますね」
「しかし小者感たっぷりだな、今回のナンバード」
 待機する面々にあやめが声をかけて歩き始める中、睦月が思い出したのは予報士に説明されたナンバードのやり口だった。
(「性悪なナンバードもおんねやな」)
 そんなん止めたる、と意気込む春風・薫(ハニーオレンジ・b81158)も接触組の一人。実際に止められるかどうかはここからの能力者達にかかって居るわけだが。
「さて、ちょっと失礼しますね?」
「誰?」
 短い誰何の声は、あやめが開けた扉の奥から聞こえてきた。サキュバスを背に庇う様に双瞳を侵入者達に向ける少年、彼が久屋・匠なのだろう。
「あ、いたいた。お仲間が」
「仲間?」
「初めまして雪乃城あやめと申します」
 睦月の声に匠の発した単語はそのまま問いかけてきたけれど、あやめは敢えて自分の名を先に名乗る。
「……久屋匠。こっちは鈴蘭」
「君かね? 噂の人助けをしてる子って言うんは」
 応じて少年が名乗った時点で薫が確認するまでもない、だが敢えて問うたのは会話に加わる為。
「ども。貴方に『事実』を教えに来ました」
「事実?」
「あかんよ、ちゃんと説明は順序だててせぇへんと」
 匠からすれば、仲間だ事実だと説明なしに言われても困惑するだけだろう。
「ああ、ごめんごめん! 僕は春風薫言うんやけど、まずな……僕らも君と同じような不思議な力が使えんねん、それで興味持ってな」
 薫はまず仲間の意味を補足し。
「私も椿さん……貴方と同じ子と一緒にいるんですが、今いませんよね?」
 続いてあやめが語りかける。
「でも、私たちの学園ではこのカードで一緒にいれるんです……起動させれば『イグニッション!』」
 カードを手に起動することで、あやめの側にはサキュバス・ドールが現れて。
「はい、この子が椿さんです。見た目は少し違いますが同じですよ?」
 まさに実演まで交えた二重のフォロー。
「こんな感じで私たちの学園では貴方と同じような方が沢山通ってます、勉学だけでなく……今回のような人を助けたり戦ったりもしてます」
「そうそう、匠ちゃんみたいな力使える子いっぱいおんねん」
 頷く椿にあわせて相づちを打つ薫の目に映ったのは、目を丸くする匠の姿。

●強襲
「今回は貴方への助力する為にこさせてもらいました」
「実はそういう感じの奴が、君の命を狙ってくるのを予知で知って来たんだ。君たちだけじゃ敵う相手じゃないからね」
 百聞は一見にしかずという。そもそもお人好しという性格もあってかあやめや睦月が同系統の使役ゴーストを連れていたこともあってか、匠は四人の説明を信じるに足りると判断したらしい。
「そう……ありがとう」
「ただ、もう少し慎重にした方が良いと思うよ。常識的に、何でも人の言葉を信用するのは危険だよ、悪いことを考えてる人もいるからね」
 礼に言葉を口にした匠に敢えて一成は忠告しながらも携帯電話を操作し始め。
「命を狙っている敵が近くに来ていて、久屋さん一人では敵わないことは説明しましたが外にも私達のお仲間が居るんですよ」
 一成の行動の意味を今度は睦月が補足する。何というか、二段で待ちかまえていたのにナンバードが来る前に話が纏まってしまった訳だが、予報士の説明にあったナンバードの行動は廃墟から出た匠を尾行し、適当なところでおびき寄せると言うもの。
「この廃墟の側まで来てたとしても先客の訪問は想定外ということかな」
 能力者達に警戒して足を止めているにしても待機組の警戒網にひっかかって居ない事実からすれば、もしくは能力者達の接触が早すぎたのか。
「よろしく」
 答を持ってきたのは、合流を果たし匠に挨拶する待機組の一人、晶。晶にとってナンバードが廃墟の側で行動に出ることは狙い通りだった。
「もうすぐ来ます」
 標的である匠が出てこないことに痺れを切らしたのだろう。待機組は、警戒という意味での役割を見事に果たしていた。
「助けてくれーっ」
 男の悲鳴と獲物を追うかの様な獣達の声。
「ナンバードはあの小芝居やるんだろうか?」
 と廃墟までの道すがら睦月は思っていたのだが、先方はどうやら妖獣に襲われる一般人パートからフルでやるつもりらしい。おびき出すのではなく自分が逃げ込んでくると脚本は流石に変更した様だったが。
「椿さん」
 あやめが何やら紙にサキュバス・ドールへの指示を書き出し、小さくてもお姉さんだから鈴蘭の見せ場作ってあげるという流れでしめ。
「やり方がセコ過ぎでしょ。いくらなんでも」
 と睦月が呆れつつ待つこと十秒。
「助けてくれ、化け物が、化けも」
 迫真の演技を続けていた男は、姿を現すなり固まった。ナンバードには他の能力者達の存在まで感知する力はないのだから、臨戦態勢の能力者が勢揃いしてお出迎えという展開は想定の外だったのだろう、ましてや。
「させへんわ!」
 その標的以外の能力者達が一斉に動き出すなど。
「た、助けてくれ……化け物が、化け物が!」
 我に返って演技を再開できたのは、能力者達のとった行動の何割かが自己強化だったことにある。ナンバードからすれば、このまま一般人のふりを続け、どさくさに紛れて標的の命を奪う、という腹づもりでもあったのだろう。
「では『狩らせて』もらいますね」
「は?」
 ただ、能力者全員が自己強化に及んだわけではなかったのだ。召還された小さな「原罪の刃」達が数体の妖獣をごっそりと消滅させれば。
「お人好しは嫌いじゃないです」
 笑みを浮かべたままの藤次郎が投じた水刃手裏剣も妖獣の頭に風穴を穿って飛び去り、崩れ落ちた骸が消滅し始め。
「悪いが、暫し相手をしてもらうぞ」
「助け……へばっ?!」
 こちらに駆け寄ってくる男に留香が連続で回し蹴りを叩き込んだ。
「話ならここでも聞こえる……最後まで見てて」
「とりあえずは見てて下さい。敵を知るためにも」
「匠ちゃんは一成ちゃんらと後ろから援護よろしゅうなー!」
 と能力者達から言われていたので駆け寄らなかった匠だが。
「いくら何でも、あれは酷いんじゃないか?」
 と思わず口にするほど留香の龍尾脚は空気を読まず綺麗に決まっていた。そう、正体を現さず演技を続けていたナンバードに。
「そして、それを笑うほど汚い手を使うやつも嫌いじゃないですよ、だって、容赦なんていらないでしょ」
 何故だろう、藤次郎の続けた言葉が微妙に空々しく聞こえるのは。
「うぐぐ……ば、馬鹿な……なぜばれたのだ」
 とりあえず、白い肌に白髪という正体を現して身を起こした男が半ば呆然としつつ呻いていたが、これは結果オーライで良いのだろうか。

●どうしてこうなった
「……ナンバード。能力者の命を糧とすることでしか存在できない、私たちの敵です」
 晶の瞳に映る白い肌の男は匠にも見えていた。
「久屋さん。あなたのその優しい心に付け込んでくる敵もいるということ、知っておいた方がいいですよ」
「匠ちゃん、こういう奴もおる事覚えとくとええよ」
「ああ」
 睦月と薫の言葉にも頷きはしたが、何かが腑に落ちない。
「これが俺の力。紅蓮撃、奴に届くか試してみるといい」
 と幻影兵を出現させた一成にも言われはしたのだが、微妙に気が進まないというか何というか。現場にいる匠以外の殆どの能力者にとって相手にしているナンバードの卑怯さを見せられなかったことは不本意であったことだろう。
「何故だ……何故こんな事になったのだ」
 ただ、ナンバードにとってもこの状況は不本意であったのだ。
「雑魚は眠っててもらおうか!」
 一成の悪夢爆弾に殆ど飾り物でしかない脆弱な妖獣達は生き残りの大半を眠らされ。。
「ナイトメア、そいつを蹴散らせ!」
 とナイトメアに蹴散らされる前にあっさり全滅していたし、命乞いをするにしても一般人の姿であるにもかかわらず攻撃してきた留香の存在がある。
「助けてくれ、仕方がなかったのだ。本当は嫌だったのだ、こんなこと」
 悩み、考えあぐねた末のテイク2。結局命乞いすることにした理由など能力者達には知りようもない。
「助けよう」
 という流れになったのは本来の予定通りでもあったからだろうが、このまま終わってしまっては能力者達の言葉が説得力に欠けてしまうからでもあるのだろう。
「久屋が言うなら……仕方ない」
 留香も渋々という形を作りつつではあったが攻撃を止め。
「馬鹿なことをしたと思う、お願いだ」
 結果の分かり切った芝居を能力者達は見守る、ただし匠は狙わせない。ナンバードの狙いがあくまで匠にあると知っていたから。
「ま、楽に終わるならそれにこしたことはないですけどね」
 藤次郎の油断したそぶりも誘い水にはなったのか。
「どうか見逃し……くっ、邪魔だぁっ!」
 結果、痺れを切らしたナンバードは自身と標的を遮る能力者達に向かって突きを繰り出した。
「っ」
 展開は読めていて、警戒もしていた。それでも想定以上の被害を能力者達に及ぼしたのは、攻撃力にはあなどれない面があると言われたこのナンバード自身の実力だろう。
「く、くくくくくっ馬鹿め油だ」
「油断しているのはそっちですよ」
「ぬおっ?!」
 勝ち誇った様なナンバードの笑いを中断させたのは、藤次郎の指摘と突撃槍に氷を具現化させて放たれた凍牙のフロストファング。かろうじて受け止めはしたもののナンバードは大きくバランスを崩し。
「相手が悪かったな」
「その根性叩き直したるわッ!」
 薫が拳を繰り出し、留香が連続で回し蹴りを繰り出す後方からのナイトメアが疾駆する。
「燃えろやッ!」
 ここからが反撃の始まり、そしてまだ終わらない。
「生きる為に必要なのは仕方なくても、こんな下種な手を使うのは頂けませんね……さぁ、凍え散りなさい」
 あやめの指先の動きを幻影兵が写し取り、背を押されたかの様に晶と椿が動き出す。
「さぁ、冷たく終わらせる指と咲き誇る椿……私たちを止めれるなら止めてみなさい」
 二人の連携に無言のまま加わる晶の口が椿に絡み付かれたナンバードの肌に触れ。
「ぐがぁぁぁぁっ」
 ナンバードの口から絶叫が迸る。
「火狩、畳みかけましょう」
 だが、痛みに悶える暇すら藤次郎は与えなかった。投じた水流の刃にタイミングを合わせるかの様に真ケルベロスオメガである火狩が黒い炎を飛ばし。
「報いを受けて頂きます」
 炎と水、相反する二つに身体を貫かれたナンバードを襲うは、原罪の刃が嵐と――。
「行こう、鈴蘭」
 鎖剣を手にした幻影兵をけしかける匠に頷いたサキュバスが口づけを飛ばして。
「おのれっ、おのれぇぇ!」
 集中攻撃を受けてもナンバードはまだ生きていた。だが、この集中攻撃が二巡三巡と繰り返されればどうか。
「わかった、ワシが悪――」
 よほど追いつめられたのか、見え透いた命乞いが通用するはずもない。
「数字関係なかったですね、ではさようなら」
 再び荒れ狂った原罪ストームの後。
「……終わりです」
 懐に飛び込んだ晶にのど笛を咬み千切られたナンバードは抗体騎士槍を手放すと前のめりに倒れんだ。

●誘い
「そういえば自己紹介がまだだったな。俺は斯波留香、宜しくな」
「さっきはありがとう……久屋匠。こっちは鈴蘭」
 戦いが終わり、遅ればせながら留香が助けた少年とその相棒に自己紹介を終えた後。
「戦い方、詳しい様だけど……」
「土蜘蛛ですよね、その力。ウチの学園には貴方みたいな方が沢山いるんで知っているんですよ」
「そっか」
 睦月は匠の横に座って言葉を交わしていた。
「俺たちも結構なお人好しだよ。日本中の困ってる人たちを助けに行ってる。慎重になれるのは、仲間がいるからかな」
「仲間……」
 一成が口にした言葉を匠は反芻し、ゆっくりと立ち上がる。
「自分の思いは大事にしないといけません。だから、甘いとか言いません、何が間違っているとか言うのもなし」
「そういえば藤次郎さん、さっきの諺――」
「それよりもまず、一緒に学園に行きましょう」
 間違っているで思い出したのか晶の言をスルーしながら藤次郎は笑顔で手を差し伸べて。
「寮もあるし……その力、学園で活かしてみない?」
「良かったら、一緒に学園いかへん? 一人より大勢でおった方が楽しいで」
「ウチの学園に来ませんか? 面白いですよ」
 一成も薫も睦月も――口々に匠を学園へと誘う。
「二人と同じ境遇の人は学園にも沢山居る。良ければ門を叩いてみたらどうだ?」
 留香も同様だが、もう一つ言葉を付け加え。
「勿論、二人が良ければ……だがな」
 晶だけは黙して仲間達と匠とのやりとりを眺めていたが、おそらくは知っていたのだろう。
「これからどうするか、……あなたの答えはもう決まっているようですね」
「ああ」
 匠の性格を考えれば、答えはもう見えていたのだから。
 


マスター:聖山葵 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/09/16
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