復活、怒れる猪


<オープニング>


 とある北国にある山の中、1人の少女がスコップで一生懸命地面を掘り起こしていた。
「るーる……るー」
 しばらくするとそこからもわもわと残留思念のようなものがわき上がり、それは一瞬、真っ赤な毛に身を包んだイノシシの姿となり……やがてハンマーを握り締めたイノシシの獣人の姿となった。
 そして獣人は自らを蘇らせた少女、ルールーとともに、残留思念を求めて歩き出すのであった。

「こんにちはみんな、集まってくれてありがとう」
 教室に集まった能力者達に挨拶を交わした後、神崎・優希(中学生運命予報士・bn0207)は今回の事件について語り始めた。
「今回の現場となる山は、前にみんながイノシシの妖獣を倒して平和を取り戻したはずだったんだけど……」
 優希の説明によれば、その妖獣が復活を果たし、更に獣人へと進化して再び暴れまわるようになったのだという。
 妖獣を蘇らせたのは、ルールーという抗体ゴーストであるという。
 獣人はある程度人間が近づくと気配を察知して向こうからやってくるようなので、山中を歩き回っていれば自然と遭遇できるだろう。
 その山は滅多に人の入らない山であるらしいので、特に人払いの必要はなさそうである。
 以前の依頼では雪が積もっていたが、さすがに今の季節は雪の心配をする必要はないようだ。
 獣人はハンマーの抗体兵器で殴りつける攻撃、ドリルのように回転し、伸縮自在な牙で相手を突き刺す攻撃を行うという。
 ルールーは獣人と行動を共にしているとの事。
 スコップで叩く攻撃を行うらしいが、あまり強くはないらしい。
「雪が降ってない分前より楽かもしれないけど……でも妖獣も獣人になってパワーアップしてるし、怪我しないよう気をつけてねっ」

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参加者
勅使河原・氷魚(白銀の巫覡・b01098)
伊藤・洋角(百貨全用・b31191)
方・瑞麗(魅惑の脚線美・b35580)
澄空・翔(澄み空を翔る蒼黒の風・b59134)
醍醐・夕華(タイガーユウカ・b59337)
功刀・伊知郎(深紅の錬士・b65782)
キリエ・ジョヴァンナ(ラスターカリグラフィー・b68137)
鹿金・舞(咥えアイスの用心棒・b81032)
斉藤・縁(多分浪花の風水少女・b81259)
紫上・結衣(皆鶴・b81724)



<リプレイ>


 予報士からの報せを受けた銀誓館学園の能力者達は、抗体ゴースト達が現れるという山へと無事に辿り着いた。
 以前他の能力者達が訪れた際は真っ白に染めっていたこの山も、今回はさすがに緑の景色が広がっていた。
 今回は特に人払いを行う必要もなかったため、能力者達はすぐさま抗体ゴースト達の行方を追って捜索を開始した。
「みなさん、不意打ちに注意してください」
 仲間達にそう声をかけながら、自身もまた周囲を注意深く見回す紫上・結衣(皆鶴・b81724)。
 敵はいつどこからやってくるのかわからない、油断は禁物である。
「できる事なら戦いやすい場所に誘き寄せたいところですが」
 伊藤・洋角(百貨全用・b31191)は、獣人の鳴き声が聞こえてこないかどうかと耳を澄ましつつ、キョロキョロと辺りを見回してそういった場所がないかどうかの確認も怠らなかった。

「それにしても……毎回毎回ルールーも忙しいねぇ」
 感心したような呆れたような表情でそう呟きつつ、これ以上お茶目な悪さができないようにここいらで懲らしめてしまおうと静かな闘志を燃やすキリエ・ジョヴァンナ(ラスターカリグラフィー・b68137)。
「ルールー……倒したはずのゴーストを復活させる、厄介な存在」
 迷惑な存在である……というのが澄空・翔(澄み空を翔る蒼黒の風・b59134)が抱くルールーに対する印象であった。
 だが彼はそんなルールーに対し興味が湧いたらしく、どんな相手なのか一度会ってみたいという願望が芽生えていた。
「報告書を見るとかなり昔のゴースト達のようですね」
 前回この山に妖獣が現れたのは三年前、シルフィードやブロッケンが銀誓館学園へと加入した頃の事。
 当時はまだ在校生であった醍醐・夕華(タイガーユウカ・b59337)は、時間の流れを感ぜずにはいられないようである。
「ま、蘇ったモンは蹴散らすだけや。ウチも、都合三ヶ月間の修行の成果見せたる」
 今年の6月頃銀誓館学園へと編入してから、斉藤・縁(多分浪花の風水少女・b81259)は実に50近くの依頼を解決してきた。
 それによって彼女は確かな実力と、揺るぎない自信を身に付けたようである。
「そうね、私達の力を見せつけてあげましょう」
 緑の言葉に同意するのは、彼女同様、日々戦いの中に身を置く事で自らを鍛え続ける少女、方・瑞麗(魅惑の脚線美・b35580)。
 彼女は相手が強ければ強い程燃えるタイプのようであり、何度ゴーストが強化されて復活されたとしても、その度にそれを乗り越えてみせようという強い想いがあるようだった。
「しかし復活した獣人も災難なものだ。二度も倒されなければならないのだからな」
 そう言って獣人に対して同情を示す功刀・伊知郎(深紅の錬士・b65782)。
 無論それは、自分達が絶対に負けるはずがないという強い自信があるからこそ出てくる言葉なのであろう。

 そうして能力者達が会話を交わしながら歩いていると……彼等の前方から、真っ赤な何かが物凄い勢いで近づいてきた。
 それはイノシシのようであり、人間のようでもあり……けれどもそのどちらでもない存在……そう、今回のターゲットのうちの一体、ハンマーの抗体兵器をもつイノシシの獣人であった。
「こんな獣が野に放たれるのを見過ごすわけにはいかないな……」
 実際に獣人と相対し、その危険性を感じ取った鹿金・舞(咥えアイスの用心棒・b81032)は、なんとしてもこの場で彼を打ち倒さなければならないと決意を新たにする。
 そして獣人にやや遅れ、小さな少女がスコップを抱えながらトコトコと駆けてきた……そう、妖獣を蘇らせ獣人へと進化させた張本人、ルールーである。
「ルールーは戦闘力が低いとのことですが、抗体ゴーストとなった獣人がいる以上油断は禁物です。心してかかりましょう」
 注意を呼び掛けつつ、勅使河原・氷魚(白銀の巫覡・b01098)は自らの姿が描かれたカードを取り出し……仲間達とともに一斉にそれを起動させた。
『イグニッション!!』
 直後カードに宿る力が解き放たれ……能力者達は現れたそれぞれの武器を手にし、身構える。
 それに応じるようにして抗体ゴースト達も各々の武器を構え……戦いの火ぶたが切って落とされた。


「悪いが、止めてもらう!」
 戦闘開始早々、翔は獣人の足元に強烈な上昇気流を発生させて彼を空高く巻き上げ……風がおさまった瞬間獣人は地上へと落下し、激突した。
「ギィィ!」
 が……獣人は何事もなかったかのようにすぐに起き上がり、絶えずドリルのように高速回転を行っている角を如意棒のように伸ばし、翔の体を串刺しにしてしまう。
「っ……!」
 ただ貫かれただけならまだしも、回転によって同時に体が抉られるのである……その痛みは尋常ではない。
 翔は強く歯を食いしばってどうにか耐え抜くが……このままではあと何秒持つかわからない。
「木行の力、解放するでー」
 仲間の危機を救うべく、緑は天まで届かんばかりの巨大な植物群を作り出し、戦場一帯を覆い尽くす。
 獣人は慌てて翔の体から角を引き抜き、上下左右から迫りくる植物の群れから必死に逃げ回り……やがてそれらは全て消え去り、獣人はどうにか難を逃れる事ができた。
 だがその瞬間一瞬ではあったが獣人に油断が生じ、
「まだまだいくぞ!」
 すかさず翔がジェットウインドによって獣人の体を再び空高く巻き上げ……その隙に洋角が黒燐奏甲を自らの武器に施しながら距離を詰める。
 そして獣人が地面へと墜落し、フラフラと起き上がった瞬間を狙い、洋角は禍々しい怨念を込めた瞳でジッと獣人を睨みつけ、その体を内側から引き裂いた。
「ギッ……」
 が、獣人は若干体をぐらつかせたもののすぐに体勢を立て直し……ハンマーを強く握りしめ、洋角目がけ勢いよくそれを振りおろした。
「くっ……」
 洋角は咄嗟に両手の長剣を頭上でクロスさせてその攻撃ガードし、直撃を防いだ……ものの、足腰に凄まじい負担がかかってしまい、その場にガクッと片膝をついてしまう。
「これでがんばってやー」
 すぐさま緑は魔法のヤドリギによって空中へとハートマークを描き出し、洋角に愛の祝福を与え、
「癒しをもたらす神の息吹をここに……天の祝詞!」
 更に結衣が戦文字「天」を直接洋角の体へと描き、文字に宿る霊力が彼の体に癒しを与え……仲間達のサポートを受け、どうにか彼は体力を持ち直した。
 とはいえ獣人が健在である以上安心する事はできない。
「気をつけろ、すぐ次のが来るぞ」
 黒くぼんやりとした光に包み込んだ長剣を頭上で高速回転させながら、舞は仲間達に注意を呼び掛け……彼女の言葉どおり、獣人はハンマーを頭上へと掲げながら雄たけびをあげ、能力者達に三度襲いかかるのであった。


 5人が獣人と一進一退の攻防を繰り広げる中、残りの者達もまたルールーとの戦闘を開始していた。
「悪いけど、動きを封じさせてもらうよ」
 先手をとったキリエは戦文字「縛」をルールーの体へと描き出し、文字に宿る霊力によって彼女は体の自由を奪われてしまう。
「一気に倒してしまいましょう」
「ああ、慈悲をかける理由もない……」
 そして、氷魚と伊知郎が両手の剣に漆黒のオーラを纏わせながらルールーへと迫り、2人はそれぞれ黒影剣による斬撃を繰り出し、彼女の体を切り刻んでいく。
 更に間髪いれず瑞麗がルールーの懐へと跳び込み、
「これが中国拳法の力よ!」
 彼女はグッと握りしめた拳に青龍の力を宿らせ、それをルールーの腹部目がけて抉り込むようにしてて叩き込み、体をくの字に折り曲げた。
「るー……」
 瑞麗が拳を引き抜いた瞬間、ルールーはそのまま前のめりに倒れそうになるものの、スコップを地面へと突き刺し杖代わりにする事でどうにか踏みとどまるものの、
「白虎の一撃。受けてみろ!」
 夕華が大地を踏みしめ、そこから強烈な衝撃波を生み出しルールーを襲った瞬間、彼女は為す術なく吹き飛ばされ、顔面から地面へと激しく激突。
 しばらくピクピクと体を震わせていたがやがてそれもおさまり……消え去っていった。


 伊知郎は消滅していくルールーに対し、目を伏せて一瞬だけ黙祷を捧げた後、すぐに獣人へと向き直り、
「再び黄泉返ったとて、死者は死者だ。正しい場所に還れ」
 そう言い放ちながら足元の影を獣人へと向けて伸ばし、影は目標へと近づくにつれて徐々に腕の形へと変化していき……その黒き腕、ダークハンドは獣人の体を抉り取るようにして引き裂いた。
「まだです」
 更に間髪いれず、氷魚が両手の剣に漆黒のオーラを纏わせながら距離を詰め、獣人の体を十文字に切り裂く。
「ギィィ!」
 だが獣人も負けてはおらず、バットのようにハンマーを構えてそれをフルスイングさせて氷魚の脇腹を強打し……彼女のあばら骨にヒビを入れた。
「ぐぅ……っ」
 苦しげな表情を浮かべながら咳込む氷魚に、獣人が容赦なく追撃を繰り出そうとハンマーを振り上げた……その瞬間、
「やらせるか!!」
 翔がその攻撃を遮るようにしてジェットウインドにより獣人の体を空高く巻き上げ、
「結衣先輩、今のうちや!」
「はい!」
 その間に緑がヤドリギの祝福を、結衣が戦文字「葬」をそれぞれ使用し、氷魚の体力を回復させた。
 そしてドサッ、と音をたてながら地面へと落下し、なんとか立ち上がった獣人を禍々しい怨念の力が込められた瞳で睨みつける者達がいた……洋角と舞である。
「ギ……ィィ!」
 直後、獣人は体を内側からズタズタに引き裂かれ、体をガクガク震わせながらもがき苦しみ……それがおさまり、反撃に転じようと武器を構えたのも束の間、
「あんたの動きも封じさせてもらうよ」
 キリエがルールーの時と同様に戦文字「縛」を獣人の体へと描き出し……獣人は文字に宿る霊力によって動きを封じ込められてしまう。
「方さん、同時に仕掛けましょう!」
「ええ、わかったわ!」
 そして、夕華と瑞麗が互いに声をかけあいながら同時に攻撃を仕掛ける。
「食らえ!」
 まずは夕華が地面を踏み締め、練り上げられた呼気によって生み出された衝撃波により獣人を吹き飛ばさんとするものの、獣人は両足に力を込めながら深く腰を落とし、どうにかそれに耐え抜いた。
 だがそれも束の間、すぐさま瑞麗が襲いかかり、
「次は私の番よ!」
 彼女は獣人の顔面目がけて勢いよく龍顎拳を叩き込み、そのあまりの威力に獣人も思わず一歩たじろいでしまう。
「まだまだ!」
 更に夕華が極限まで練り込んだ気を指先へと集中させ、ぴとっと獣人の体に素早く触れる事で、一瞬にしてそれを全て彼の体へと流し込んだ。
 直後、流れ込んだ気は獣人の体内で激しく暴れ狂い、破滅的な大ダメージを与え、
「これが日々鍛練を続けてきた私たちと、力で復活しただけのあなたがたの力の差よ!」
 そして……瑞麗が強く大地を蹴って獣人へと跳びかかる。
 それがわかっていながらも、獣人は何もする事ができなかった……ほんの少しでも体が動けば、一矢報いる事ができたかもしれなかったが、彼にはそれさえ許されはしなかった。
「これで……とどめよ!」
 瑞麗は体を苦速でスピンさせながら無数の蹴りを叩き込み、それが一発、また一発と突き刺さる度、獣人の体が後ろに傾き……彼女が彼にスタッと着地したのとほぼ同時に獣人は仰向けに倒れ込み……やがて消滅していった。
「戦いは力だけじゃ勝てない。妖獣が獣人になっても頭の出来は良くならなかったようね」
 そう呟きながら夕華は呼吸を整え、イグニッションを解除し……ふーっと一息つくのであった。


「ふう、ちょっと手強かった。これがルールーの所業か……」
 今回の依頼を通じて、翔はルールーの能力がどれほど厄介であるかを痛感したと同時に、これから先の戦いが少しの油断も許されないものとなっていくであろう事を予感していた。
「ルールーの依頼はまだ後を尽きぬが、これで少しは数が減らせていればいいのだが」
 願うようにしてそう呟く伊知郎。
「何はともあれ……皆さんお疲れ様でした」
 笑顔を浮かべながら、仲間達に労いの言葉をかける洋角。
 これから先の事はともかくとして、今一つの戦いが終わりを告げた事は確かなのである。
「やはりスコップは残っていませんか……」
 出来る事なら検証用にルールーが使っていたスコップを持ち帰ろうとしていた氷魚であったが、残念ながらそれはかなわなかった。
 もっとも、薄々彼女もそうなる気がしていたようではあったが。
「さて……怪我人もいないみたいやし、帰ろうか」
 抗体ゴースト達を倒した今、もう緑達にこの場に留まる理由はない。
 彼女は仲間達と共に、銀誓館学園へと帰還するため、元来た道を引き返していく。
「鎮められた魂が今度は目覚めさせられることがありませんように……」
 去り際、ふと結衣は振り返り、そっと目を瞑りながら祈りを捧げ……また前を向き、仲間達の後を追って歩き出す。
 こうして能力者達の活躍によって、今度の今度こそ、その山に平和な時が取り戻されたのであった。


マスター:光輝心 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/09/23
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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