≪魔法使いのたぬ喫茶≫猫とおかまと能力者


<オープニング>


 北海道は札幌市にあるすすきの。
 歓楽街として賑わうその街の一角に、洒落た雰囲気の喫茶店があった。
「今日も平和、か……」
 古いビルに居を構えるその喫茶店は一見するとごく普通……と言えるだろう店構えだが、その正体はマヨイガ結社『魔法使いのたぬ喫茶』の拠点である。
「おかげでさっき見かけたもふもふなノラネコをもふもふするイメージを膨らませる作業が捗って仕方がない」
「平和なことはいいことだよー」
 などと言いながら店内にあるピアノの手入れをしている式銀・冬華(真妖狐・b43308)に笑いかける加納・朱美(力いっぱいもふりたいっ・b81327)。
「時間も時間ですからお客さんもいませんし、少し一息つきましょうか」
 銀・紫桜里(桜華風塵・b30535)が時計を見ると、夜もいい時間だ。
 場所がすすきのだけに夜中は酒が飲める店に客が流れるのは仕方のない事かもしれない。
「では今お茶を淹れてきますね……」
 ペコリと頭を下げた聖・りのあ(聖なる月の護り手・b41874)がカップを人数分用意しようと手を伸ばしたその時、店の扉が開いた。
「あ、いらっしゃいま……」
 瞬時に笑顔を入り口に向けた蒲生・灯雪(雪雅幻詠・b55309)は、
「アメティスタさんでしたか」
 それが見知った顔、アヴェリア・アメティスタ(砕牙継ぎし咎断鳥・b80681)だった事に安堵の表情を浮かべる。
「少し、少し間際らしかったか、すまんのぅ。しかし妾ではないが、『客』は来たようじゃな」
 そう言ってアヴェリアは自分が入ってきた扉をさらに大きく開いた。
 人が入ってくる気配はない。一同が不思議に思っていると、足元からなにやらもこっとしたものが顔を出してきた。
「な、それは――!」
 なー。みゃー。
 白と黒のそれらは。
「ネコ……だと……!」
 とってもつぶらでくりっとした瞳を持つ猫、
「しかしこの猫は……」
 瀬河・苺子(中学生ゾンビハンター・b77693)はアヴェリアの足に頬をすりすりさせている二匹の猫が普通の猫でない事を知る。
 誰の目にも明らかな相違点。それは白い猫はしっぽが自分の体の倍以上はあるかというほどに長く、黒い猫はしっぽの長さこそ一般的なそれだが根元から二本に分かたれていた。
「もしかしてこの子たち、マヨイガに招かれた……?」
 御鑰・沙耶香(インノチェンツァ・b35985)の言葉に紫桜里は「間違いない」と頷いた。
「こんないたいけな子猫がゴーストとは……。今すぐに丁重にもてなす準備を!」
 冬華が興奮を抑え……ようとしているのかいないのかは定かではないが、そう宣言する。
 が。
「ちょっと待って。何かへんな音聞こえない?」
 朱美が耳を澄ませていると、音はやがて地響きのようなものとなり……。
 嫌な予感がした一同は店の外へと飛び出した。
 夜の闇から邪悪な気配を発しながら迫り来るそれは――。
「「「可愛らしい動物はコッチかしらぁぁぁあ!?」」」
 フリフリの可愛い服とミミとシッポを身につけた、すげー野太い声の集団だった。
 俗に言うおかま、というもの、かな。
「…………」
「…………」
 真顔でお互い視線を交差させ、無言でイグニッションカードを取り出す一行。
 このままでは子猫たちはおろかマヨイガがアブない! 戦え、『魔法使いのたぬ喫茶』!

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参加者
銀・紫桜里(桜華風塵・b30535)
御鑰・沙耶香(インノチェンツァ・b35985)
聖・りのあ(聖なる月の護り手・b41874)
式銀・冬華(真妖狐・b43308)
蒲生・灯雪(雪雅幻詠・b55309)
瀬河・苺子(中学生ゾンビハンター・b77693)
アヴェリア・アメティスタ(砕牙継ぎし咎断鳥・b80681)
加納・朱美(力いっぱいもふりたいっ・b81327)



<リプレイ>

●直視し難き現実
「…………」
「大丈夫か? 魂が頭から出かかっているぞ?」
「はっ!」
 蒲生・灯雪(雪雅幻詠・b55309)に肩をぽむぽむ叩かれ、瀬河・苺子(中学生ゾンビハンター・b77693)は意識を取り戻した。
「すいません、ちょっと気絶して悪い夢見ていたようです」
「その悪い夢とは、あのような光景では……?」
 冷静さを保っているように見える聖・りのあ(聖なる月の護り手・b41874)は、なめらかな動作で苺子の視界から姿を消す。
 その先には、
「……現実だったんですね」
 悪夢が再現されたようなおかまの集団が、いや、苺子の脳がこれを悪夢として処理しようとしていただけだった。
「……まぁ良い、まぁ良いわな。間際に来た紛らわしい客人は、疾く黄泉路を辿るが良かろうて」
 アヴェリア・アメティスタ(砕牙継ぎし咎断鳥・b80681)は、瞬きを数回。ようやく目の前の事象について言葉を紡ぐ事ができた。
「ネコちゃんの……それにこの場にいる全員の精神衛生上良くないので、さっさと消してしまいましょう」
 銀・紫桜里(桜華風塵・b30535)は醜く蠢く8体のおかま地縛霊を一瞥するや、イグニッションカードを取り出す。
「可愛い猫さん達がマヨイガに招かれたと思って喜んでいたら……。まあ苦あれば楽ありと言いますからね、人生色んな事がありますね!」
 この状況を前向きにとらえる御鑰・沙耶香(インノチェンツァ・b35985)。
「それに思いっきり戦えるチャンスですからね!」
 詠唱兵器を纏った沙耶香は、両手に装着された獣爪を研ぎ澄ませ、わずかに注ぐ月光に鋭く反射させた。
(「どちらかというとそっちが主な理由か」)
 と一行は思ったとかどうとか。
「さて、もふもふ帝国建設に向けての第一歩。こちらも正装で望まなければなるまい」
 瞳を閉じ、すこしばかり嬉しそうに口元にうっすらと笑顔を浮かべる式銀・冬華(真妖狐・b43308)は、「正装?」「まさか!」という仲間たちの声を背にいつの間にやら身を包んでいた黒い外套を脱ぎ捨てた。
 そこには!
「今回オレはたぬ王として挑む!」
 白衣を着た狸の着ぐるみ姿の冬華がいた!
 イグニッションと共に現れたモーラットヒーローのモフ神様も堂々たるポーズを決めておいでだ。
「ふん、貴様等に真の獣っ娘というのを見せてやろう!」
 そうして腕を広げる背後には、それぞれ獣耳と獣尻尾をつけた少女たちが!
 紫桜里はネコ、沙耶香は紺色の狼。りのあは冬華と同様に着ぐるみの羊、灯雪は着物に狐という純和風で、それから苺子は、
「って、あれ。え!? なんでこんなのが!?」
 どこか自分の衣服に違和感を感じた彼女は自らの体を見下ろす。
「これ、未整理だった犬耳メイド服!?」
 そっとしまっておくつもりだったのだろうか。ひどく狼狽している。
「いいや、それでいい。それがいい」
「とても似合っていますよ」
 冬華やりのあのお墨付きは貰っても、恥ずかしいのは変わりない。
「はやく……たおさなければ……」
 それだけを呟くと、苺子はゆらりとスパナを構えるのだった。
 ふと、アヴェリアはもう一人の仲間の姿が見えない事に気がついた。
「アケミ、アケミはどこに行ったかの」
 隙なく周囲を見渡すアヴェリアは、程なくしてその少女を見つける。
「にゃんこ〜にゃんこ〜にゃんにゃんこ〜♪」
 加納・朱美(力いっぱいもふりたいっ・b81327)はマヨイガに招かれた二匹の猫妖獣とにゃんにゃか遊んでいた。
「戯れは、戯れは後じゃアケミ。もう戦いが始まる故にな」
「戦い? ――うう、何この……は!」
 本能的に都合の悪い現実から目を逸らしていたのだろうか。目が覚めた朱美は明らかな嫌悪感を胸に、猫耳を頭に、
「潰すからね、絶対に潰すからね!」
 地縛霊討滅に立ち向かうのであった。
「あぁ、あぁそれと、少し下がりおれ仔猫らよ」
 猫妖獣たちは不安なのか遊び足りないのかアヴェリアに擦り寄ろうとするが、
「妾の、妾の足元に居ると危険故に、の」
 レッグギロチンを装備した脚を隠すようにしながら物陰まで逃げるように促すアヴェリアに従ってくれるのか、「なー」と一鳴き結社の喫茶店入り口の方まで駆けていった。
 それを見届けたアヴェリアは、朱美の背中を追った。

●直視した結果が
「ンマ、なんて可愛らしい子たちなのぉ!?」
 猫耳を頭上で揺らすおかまが野太い声を響かせる。くねくね動く。熱っぽい視線を投げかけてくる。
「その格好は、けもみみに対する冒涜だよぅ!」
 朱美が怒りを露わにする一方、
「汚物っ娘は裏ステージにでも行ってろ!」
「へごっ!!」
 たぬ王による見事な封神十絶陣が炸裂した。
「一瞬でも見苦しいものを隠せる効果は大きい」
「確かに。見ているだけで体力が奪われ疲弊していく気がしますな……」
 灯雪は同意すると、醜悪さを払拭するようにくるりと一回転。艶やかな着物と尻尾をふわりとなびかせ、結晶輪を両手に携えた。
「これが美しさというものじゃ、覚えておけ」
 その時の灯雪の笑顔は男であれば誰もが目を奪われてしまう魅力に満ちていた。
 まぁ、おかま……もといゴーストは何も感じないだろうし、灯雪は灯雪で笑顔のまま遠い目をするという高度な技法を用いているし。
「汝ら、そのまま吹雪の中で凍っていろ」
 氷雪地獄は氷の檻に閉じ込める事ができれば戦況が大きく有利になる。
 が、
「動かなくなったのはいいけど……」
「……おい、そのポーズはやめるんじゃ、やめるんじゃ〜」
 妙なタイミングで凍らせてしまったために見苦しいポーズのまま硬直してしまった。
 両腕を持ち上げて背筋をアピールしたり、投げキッスのようなポーズをしていたり。
 本当の地獄があった。
「耳と尻尾ならこっちだって負けてませんよ!」
「……あらぁ、あなた、かわいいわねぇ」
 未だ健在なウシと対峙する沙耶香。ウシは緩慢な動きながらも向かってくる沙耶香に対しどんと構えている。
「狼パーンチ!」
 罪を断ち切る沙耶香の拳が唸り光る!
「喰らえッ!!」
 重い衝撃がウシを貫く。が、手応えは浅い。
「あらぁ」
 メタルバンドでもやっているのかと問いたくなる程過剰に濃い化粧の顔を沙耶香に近づけながら拳を振り下ろすウシ。
「おっと、この耳と尻尾は伊達じゃありませんよ!」
 沙耶香が素早く地面を転がったその数瞬後、彼女が立っていた足元のアスファルトが大きく抉れ飛んだ。
「隙あり! 可愛い猫さんを怖がらせるなんて、その罪とくと味わいなさいッ!」
 沙耶香は正面から再度のナックルを放つ。もうひとつ。さらにひとつ!
「これで終わりですッ!」
 腰を深く落とし、体をバネのように伸縮させストレートをお見舞いする。それは獲物を狩り取る狼の如く。
「流石ですね。さて、私も……」
 ウシの再起不能を確認したりのあは獅子が刻まれた剣を手に、イヌを正面に捉える。
「……フフ、アナタもアタシのペットにしてあげようカシラ?」
 羊ぐるみのりのあとイヌ。羊は牧羊犬に追われる立場にあるが。
「せェいッァ!」
 横に跳んだイヌはそのままりのあの周囲を跳び回った末、掌底のように掌を突き出してきた。
「醜い上になかなか面白いことをしてくれます……」
 なかなか読めない動きではあったが、落ち着いてそれをさばいていく。
「この私が真髄ってやつを見せてあげましょう……汚物は消毒……じゃない」
 もふっとした外見に似合わず、鋭く切り込んだりのあはイヌの動きをも凌駕し、跳ぶ。
「!?」
「――滅殺です!!」
 回転からの斬撃に思わず足を止めるイヌ。
「今です!」
「うむ、任せておけ」
 そこへすかさず灯雪が氷雪地獄で止めを刺す。
「汝ら、毎日鏡は見ているのか? それでは猫ちゃんが怯えるのも仕方がない事じゃ」
「可愛い物好きの私としては許せる範囲を遥かに超えていました……」
 二人はまた一体冒涜者が減った事に安堵すると次の戦いに向かった。
「ところで、先程の戦いの中でどこかあらぬ方向にピースサインを出していませんでした?」
「はて、気のせいだと思うがの。そう、気のせいにしていた方が幸せじゃよ」
 りのあの疑問はさて置き、そこでは既にアヴェリアがおかま集団を相手に、回転するコマのようになぎ払い、戦っていた。
「少々、少々突出した方が……纏めて裁断出来る故に、のぅ……!」
 ウサギやヒツジを一方的に刻む一方で、しかし悪滅スピナーは全く隙のない技ではない。
 アヴェリアの気が付かない間にトラが迫っていた。
「しまっ……!」
「……ウフ、みぃ〜つけた♪」
 アヴェリアに掴みかかろうとしたトラであったが、それは果たされなかった。
「ぐがッ!」
「この網、この網はファンガスプリズン……メイコか。助かったぞ」
 トラが痺れて身動きがとれない内にその場から離れ、苺子に振り返るが……返事がない。
「何か、何かあったかメイコ?」
「……たちの」
 ふるふると震える苺子の唇から発せられたのは。
「お前達のせいで……!」
 怒り、そして悲しみに満ちた言葉。
「お前達が来るから、猫ちゃん達も怯えて、わたし達も変なもの見せられたんです! 反省して下さい!」
 涙と共に解き放たれたのはバレットレイン。
 アヴェリアが相手にしていた数体のおかまが弾雨に穿たれ、これまた太い悲鳴をあげる。
 若干混乱している苺子の肩にモフ神様が小さな手を置く。
「モ、モフ神様?」
「『漢は俺しかいない、この身に代えても皆を守らなくては』……とモフ神様は言っている」
「え、本当ですか?」
 キリッと頼もしい視線を苺子に向けると、モフ神様は敵集団の中心へと飛び込んでいった。
「モフ神様ーっ!」
「モフ神様は犠牲になったのだ……」
 冬華は遠くを見つめ、呟いた。
 どう見ても……いや、ともあれアヴェリアや苺子、モフ神様の活躍によってもはやおかま勢の戦線は瓦解寸前。
「うう、近くで見るとよりきもい……」
 残ったキツネを相手にしている朱美だが、しかし視界に入れ続けないといけないのが前衛の辛いところ。
「ずっと見ていなくてもいい灯雪さんがちょっと羨ましい……」
 しかもキツネは「ホラホラ、もっとよく見なさいよ!」と自らをアピールしてくるために苦痛はより大きかった。
「そんなの……気持ち悪いだけだよ……!」
「何を言っても無駄でしょうね……」
 隣で朱美を援護する紫桜里は悟ったような顔をしていた。
「精神的に追い詰められると、人はこうも強くなれるものですか……」
「え、えと……大丈夫?」
 この戦いを通して紫桜里は何度もおかまの醜態を目にしてきた。それはもう脳裏にこびりついてしまっているかもしれない。
 それは朱美も同じようで、いつも通り元気快活に見えるのだが……少しずつ目のハイライトが消えかかってきている。
「こうなったら顔を見ないで体の中心を見ればいいんだ。服だけは可愛いんだし」
 最後の手段、とばかりにそれを実行してみる朱美だったが、なんだか逆効果だったようで。
「うん、もう、いいよ、はやく……」
 もう色々と虚ろで限界っぽくなっていった。
「やはり精神を害してしまいましたか。くっ」
 紫桜里と朱美は力を振り絞り、
「ネコちゃんと遊ぶ為にも負けられないのよッ!」
「うう、にゃんこ〜」
 最後の希望の砦、可愛らしい猫妖獣たちの姿を頭の中に思い浮かべながら太刀を振るい、棍棒で目一杯ホームランスイングした。
 そして。
「――そっちは、倒したようじゃな」
「……」
「あ、あはは……いつのまにか、ね〜」
 二人はやり遂げていた。最後まで彼女たちの命を、精神を繋いだのは猫であった。
 猫、偉大なり。
 パシャリという音に気がついたのはその時がはじめてだった。
「って、冬華さんー!? 何写真撮ってるのー!?」
「いつからです?」
「なに、思い出に一枚という奴だ」
 顔を綻ばせる冬華はそれ以上取り合おうとしなかった。
 さて、そうして最後に残ったのはネズミ。
「……ウッフフ。ワタシの帝国に入れてあげても、よくってよ?」
「ふん、お断りだ。何故貴様を最後まで残したか解るか?」
 どうやら意図的に冬華はネズミを残しておいたらしい。その真意とは。
「身の程を知らせる為だ……。貴様が帝国を作ろうなぞ十年早いという事を胸に刻み、そして――」
 冬華は一度言葉を切ると、念動剣の切先をネズミに向けた。
「絶望したまま死ぬ行くが良い汚物っ娘」
 それからは彼女の独壇場というか、もう色々とアレでアレだったようで。
 ちなみにモフ神様は無事でした。

●直視すべき現実
「さぁ、ネコちゃんと戯れましょう! ネコネコ、にゃんこ〜♪」
 こんな事もあろうかと用意していた対猫用戯れグッズを展開する紫桜里。
「二匹の猫のおもてなしですね……。かしこまりました……。私にできる最高の猫まんまをご用意しましょう……」
「あ、それと」
 恭しく頭を下げるりのあに冬華は声をかけるが、その内容はりのあもわかっていたのだろう。
「それともちろん、皆さん用のお茶とお食事もご用意させていただきます……」
「さすがりのあ、言わずもがなか」
 優秀な執事っぷりに舌を巻く冬華だった。
「さ、今のうちに厳選作業を……」
 ガシュン! と冬華の目の前に何かが突き刺さる音がした。
 恐る恐る顔を上げると眼前に、大鎌。
「すまぬ、すまぬなトウカ。手が滑った。カメラは無事かぇ?」
 アヴェリアは謝罪の言葉こそ口にしていたが、その瞳には「その写真をバラ撒いたりしたら……わかっているな?」との脅しが垣間見えていた。
「あ、あああ、手が滑ったのなら仕方がないなーハハハ」
 そう、実は戦闘中ずーっとこっそり仲間たちの獣耳尻尾姿をカメラに収めまくっていたのだ。
「ああ、にゃんこ〜……」
 特に大きな傷は負っていないが精神負荷が大きかったらしい朱美は、猫と遊びたいにも関わらずその場にへにゃりと倒れこんでしまった。
 何を思ったのか、黒い方の猫が朱美に近寄ると、その顔をぷにゃぷにゃ登りだした。
「あ、あぅ」
「何と羨ましい!」
 当の朱美もすごく癒された顔をしていたとか。
「ほら、猫ちゃん。これで遊ぼうな」
「こっちのねこじゃらしも楽しいですよ〜」
 一方の白猫を争い、灯雪と沙耶香が壮絶なねこじゃらし合戦を繰り広げていた。
 右へ左へ、上へ下へのじゃらしっぷりに白猫も大張り切り。
「もふもふ……」
 隙を見ては灯雪がなでまくるという。
 そんな時間もあっという間に過ぎ、別れの時が来た。
「ここにいれば、戦わずに済むからね」
 ふたつのモフモフをきゅっと抱きしめ、苺子は囁く。
 なー。みゃー。
 尻尾がぽむっと地面を払い、子猫たちは鳴いた。
「ここから先はオレだけで行こう。別れの瞬間は、辛く寂しいものだから――」
 モフ神様とももうそろそろ……と冬華は小さく言った。
 これまでにない神妙な空気に、
「とか言って自分一人だけでモフろうという魂胆では?」
「いやーそんなことはないぞ」
 騙される事なく、賑やかに子猫たちは無事にマヨイガへと送り届けられるのであった。


マスター:黒柴好人 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/10/08
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