疫病の代行者


<オープニング>


「集まって貰ってすまない」
 能力者達が揃ったのを見計らい、教卓の前に立つランドルフは一礼と共に口を開いた。
「近年の巡礼士の調査により、メガリス『聖杯』は、実は2つあったという事が判明した」
 説明を続けるランドルフの口から語られたのは、世界結界創造の儀式には2つの『聖杯』が使用されていたと思われること、失われたもう一つの聖杯は世界結界創造時に粉々に砕けていたこと。
「砕けたカケラは、どうやら『世界結界創造の妨げになる強大な地縛霊』を封じる『聖杯結界』に姿を変えていたようだ」
 調査の末、聖杯結界を発見した巡礼士は結界内部に入ったものの、聖杯結界内部の地縛霊に敗北し、結界外に弾き出されてしまったということらしい。
「聖杯結界の内部には8名しか同時に入る事ができない為、充分に実力のある能力者でなければ攻略は不可能。ということで、銀誓館学園の精鋭の能力者に、この聖杯結界の地縛霊の撃破という仕事を頼みたい」
 聖杯結界内部の地縛霊を撃破する事ができれば、聖杯のカケラを手に入れる事が出来、全てのカケラを手に入れれば、失われた聖杯を再び入手出来るとのこと。聖杯の効果を完全なモノにする為には避けて通れない道、ということか。
「ありがとう」
 頷いた能力者達に礼の言葉をかけると、ランドルフは次の説明へと移る。
「今回入って貰う聖杯結界に封じられたゴーストは、『尋常でない人間の妄執が集まり霊的崩壊を起こしたもの』とその取り巻きである縮小版の地縛霊三体だ」
 見た目はゴーストタウンに出現するクラウドガイストそっくりとのことだが、攻撃が若干異なるらしい。
「しかもこのゴーストは、『ダメージつきの20m視界内に効果を及ぼす状態異常を付与した範囲攻撃』と『近接単体を対象とした状態異常攻撃』を得意とし、付与するのも毒だけではないときている」
 付与されるのは、猛毒、侵食、マヒにアンチヒール。複数の効果を付与できるという訳ではないものの取り巻きの地縛霊達も同じ攻撃が出来るという辺り非情に厄介だといえるだろう。
「そして、この聖杯結界内では徐々に体力を奪う系統の状態異常が敵味方関係なく三倍に強化されるらしくてな」
 毒のダメージも三倍なら、侵食のダメージも三倍。ついでに侵食による回復量も三倍。
 まさに状態異常攻撃使いにとっては腕の見せ所とでも言うべき戦場だが、ゴースト達も状態異常攻撃を得意とする以上、厳しい戦いになることは想像に難くない。
「事実、この情報は敗北した巡礼士からの情報だからな」
 強敵であることを補強するようにランドルフは言い添え。
「尚、結界内は古い時代の廃村を模した風景になっていて、結界内に三つある朽ちかけた廃屋は遮蔽物としても活用できると報告を受けている」
 と戦場の説明を挟む。敵の情報と戦場の効果を聞く限り、遮蔽物の扱いは戦いの鍵となるかも知れない。
「以上。一部不完全な所があるので、その点はご容赦頂きたい」
 釘を刺すように補足しつつ頭を下げたランドルフに能力者達は頷き返すと。
「強力な地縛霊だが、銀誓館学園の精鋭であれば――」
 五分以上の確率で勝利を収める事ができると信じている、と激励するランドルフの声を背に教室を後にした。
 

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参加者
天見・日花(空犬・b00210)
縁・琉姫(雪灯りのルシオラ・b01645)
玖堂・統夜(黒の確約者・b05760)
朱残・誄火(紅蓮雪狐・b18864)
文月・風華(暁天の巫女・b50869)
金澤・陽介(奮闘中の使役使い・b50948)
九頭龍・権座衛門(眠り髭熊・b73087)
幣旗・葵(天つ瑞風・b78491)



<リプレイ>

●詳細不明
「追加の情報は手に入らずですか」
「こればっかはしゃあないのう」
 残念そうな表情の幣旗・葵(天つ瑞風・b78491)を視界に収めつつ、九頭龍・権座衛門(眠り髭熊・b73087)が立つ場所の数mほど先には聖杯結界の入り口がある。地縛霊を撃破する為、能力者達はこの中で戦った巡礼士へ更なる情報の提供を求めたのだが、結果は二人の台詞と表情が物語る通り。
「勝てると思って確認していない、まさかあそこまで強いとは……」
「うろ覚えだから話してもかえって混乱させてしまうかも知れない」
「すまない、戦いだけに気をとられていて……」
 と彼らは語り、もし聞き出せたとしても追加になる様な情報を得ることは叶わなかっただろう。そもそも聞き取りで得られる情報があったなら、ランドルフが教室で説明していた筈なのだ。この辺りの情報不足も五分以上の確率で勝利出来るとランドルフが見積もった難易度の内、と言うことなのかも知れない。
「結界の中に突入して実際に見てみるしかないみたいだね」
 と呟いた天見・日花(空犬・b00210)が言う様に後は自分の目で確認するしかないだろう。
「こんなモノに封じなきゃならない程の相手なんて、余り好き好んでやり合いたくはないけれど」
 ポツリともらしつつも、避けて通れない道なら仕方ないと割り切っているのか日花はゆっくりと歩き出す。すべき事は決まっていた。
「まさか、聖杯にそんな意味も隠されてたとはな」
 とランドルフの説明を聞いた時驚きを隠せなかった金澤・陽介(奮闘中の使役使い・b50948)も。
(「やっかいな能力を持った敵ですね……支援も呼べそうにないですし、結界の効果も助長してなかなか厳しい状況です」)
 と胸中で唸った文月・風華(暁天の巫女・b50869)も、迷うことなく足を進める。
「聖杯の欠片、世界結界が構築された今となっては『邪魔な者』を抑えつける結界としての役割は当に終えている」
 それが地縛霊を封じるものへの見方である玖堂・統夜(黒の確約者・b05760)からすれば、今こそ聖杯として本来の役割を担う時なのだろう。
(「これはその一歩」)
 前に踏み出した足を実際に一歩にするかの如く、統夜は入り口へ向かい。
(「足を踏み入れる前から感じる。ゴーストの妄執」)
 仲間に倣う様に歩き始めていた縁・琉姫(雪灯りのルシオラ・b01645)は入り口の手前で僅かに立ち止まり、微かに息を呑む。
(「世界結界の邪魔になってしまっていたゴースト……病の薬を、病にかかり、尚生きたものの……者を、薬とした時代」)
 琉姫の想像に、推測にあるものが正しいのかどうかはわからない。
(「強いられたなら、さぞ、憾みも深いのでしょう……」)
 ただ、それらがこれから対峙するゴーストを構成しているというならば。
「……さあ、行きましょう」
 巡礼士に聞き出した情報を書き込むつもりだったメモをポケットにしまった朱残・誄火(紅蓮雪狐・b18864)に促され、聖杯結界内に踏み込んだ琉姫が目にしたのは――。
「……強敵なのですね」
 鳥肌を立てながら一点を見つめる葵と、強烈な存在感を帯びたガス状の何か。
「でも、一歩もひくわけには参りませんのですよ。解き放ちましょう。聖杯の結界も、あなた方の苦しみも」
 葵の言葉に応えるかの様にゴーストは咆吼する。

●結界の中に
「オオォォォ」
 怒りと苦しみの輪郭さえ失った様な妄執の成れの果てをちょうど中心にした正三角形の頂点にあたる配置で朽ちかけた廃屋が佇み、廃屋と廃屋を結ぶ線のちょうど中程にもガス状の何かをスケールダウンさせた様な地縛霊が侵入者に気づき動き始めていて。
「……そこか。タツキ!」
 能力者達が現れたのは、クラウドガイストを思わせる地縛霊こと疫病の代行者と取り巻き一体との中間点。最寄りの廃屋を横目で見た陽介は取り巻きの横を駆け抜けて廃墟に向かい、名を呼ばれた真サキュバス・ドールのタツキが陽介の後を追って走り出す。
「この状況だと全てのゴーストから身を隠すのは難しいかな」
「そのようで。少し距離がありますね」
 まずは遮蔽物。日花が確保を試みたのも誄火がめざしたのも地縛霊達の射程外になる安全地帯だが、分散しているゴースト達全ての射程外に出るには二十秒かけて廃屋の裏側に回り込む必要があり十秒では不可能に近かった。
「あなた方の好きにはさせませんです、よ」
 ただ、先手をとれたのは大きかったのだろう。自身に奏甲を施しながら廃墟の影に向けて走り出した琉姫の後方で――廃村の一点を覆い尽くす様に出現した魔法の茨は、ゴーストを飲み込んだ。
「オォォ」
 茨に絡みとられ動きを止めたのは取り巻きの地縛霊一体だけだが、動けなくなったゴーストはちょうど十秒の移動では射程外に逃れるのが難しかった最寄りの取り巻き。地縛霊を捕らえた茨の縛めが解けなければ、という条件付きではあったが安全地帯が確保されたと言うことでもある。そう、廃屋の影に辿り着けていれば。
「葵さ、やったのお」
 権座衛門が笑みを浮かべて仲間に続こうとした瞬間、疫病の代行者の噴射した毒々しい煙が、物陰に逃げ切れなかった能力者達を飲み込む。
「ぐっ」
 姿、攻撃共にクラウドガイストに近しいなら広範囲に被害をもたらす攻撃は付加された状態異常こそ厄介ながら直接受けるダメージは低いはずだった。
「厳しい状況になってきたのお」
 だと言うのに権座衛門の身を包む詠唱兵器の耐久力は残り三割を下回っている。
「天見さんの予想通りだったようですが」
 猛毒の煙の中から何事もなかったかの様に風華が姿を現せたのは、身に纏う詠唱兵器がクラウドガイストもどきの攻撃と相性の良いものだったからに他ならない。予想外の要素は、地縛霊の強さ。範囲攻撃でこの威力なら、推定される力量は風華の三倍前後と言ったところだろう。
(「状態異常強化……なるほど、疫病の名も伊達ではないようで」)
 結界内の特殊効果が上乗せされれば、ひとたまりもない。耐久力には自信があるものでさえ下手すれば猛毒の効果だけで倒されかねない凶悪さだ。これでは巡礼士達が多くの情報を持ち帰れなかったのにも納得が行く。
「だでが、負ける訳にわいかんでのう」
「ですね。こちらも能力者の端くれ。ただやられる訳には参りません」
 身体を蝕む猛毒を幸運に助けられて振り払った権座衛門が駆け込んでくるのを迎え入れ、頷いた誄火は僅かに唇の端をつり上げる。
「こちらに来る、か」
 能力者達の殆どに攻撃の届かない二体の通り巻きが移動を始めたことを横目で確認しながら統夜は旋剣の構えをとり権座衛門に続いて。
「むっ……」
 残されたのは、茨に戒められた取り巻き地縛霊に接近戦を挑むべく距離を詰めた風華と茨の領域を展開したことで足を止めていた葵。
(「なんとしてでも聖杯のかけらを頑張って入手するのですよ〜」)
 肌に縞模様を浮かべ、肉薄した風華が青龍の力を込めた拳を叩き付けるよりも早く。
「……さあ、全力で楽しみましょう!」
 左手から回り込もうと射程内に飛び出してきたとりまき地縛霊へ七星の輝きが降った。

●恐るべきは
「上々ですね」
 音を立て石化の始まった標的が接近を止めるのを見て誄火は小さく息を漏らし、迂回しつつあった敵に注意を喚起しようとした日花は、吸った息で別の言葉を口にする。
「権座衛門君」
「わかっただよ」
 言葉を続ける必要もない。攻撃の為遮蔽物の影から飛び出した日花の背を巻き起こる浄化サイクロンが押していた。
「……お願いね。白雪」
 白燐蟲を凝縮して琉姫に作り出された弾丸が、日花を避ける様に湾曲した軌道を描いて追い越す。
「いつものように――」
 やるべき事をやるだけ。具現化した氷の欠片を零しながら振り下ろした長剣の軌道に茨に戒められたとりまき地縛霊はガス状の身体を捩って反応したかの様に見えたが。
「ッ、ウォォォ!」
 白燐侵食弾に貫かれ、動きの鈍ったところでフロストファングが炸裂する。得意な攻撃も苦手な攻撃もクラウドガイストと同じなのだろう、琉姫の攻撃があたらなければ長剣は空を切っていたかも知れない。
「お気をつけて……きます!」
 ただ、攻撃の命中に快哉を叫ぶ時間を与えず――疫病の代行者は黄色い煙を吹き出した。
「これ……は、身体が痺……」
 黄色の煙は身体の自由を奪う。体力を奪う系統の力でなかったことを喜ぶべきか。猛毒であったならそのまま戦線離脱もあり得たのだから。
「皆で、皆で帰るのです!」
 マヒしていては、そう思いを口の端にのせることも能わない。茨の縛めと石化に動きを止められた地縛霊達が追い打ちをかけてくることはなかったが、射程外にいたもう一体のとりまき地縛霊は黄色の煙に動きを止められた能力者達めがけて確実に距離を詰めてきていた。
「くっ」
 まずは一体でも確実に敵を減らすこと。他の仲間の方針に統夜も賛成ではあった。ただ、狙い澄ました一撃を放った相手との相性、そして他の仲間達と比べて連携に重しを置かなかったことは仇となり。
「……舐めるな」
 旋剣の構えを上乗せした分、衝撃はガスを密集させ攻撃を受け止めようとした地縛霊の防御を貫くが、屠るには至らず。
「文月さん……」
「はい!」
 一体目のとりまき地縛霊にトドメを刺したのは、風華の拳だった。ガードを突き抜けた衝撃に部分的密集が解けたゴーストを貫いたのは、陽介の撃ち出した気の塊で。
「ここです!」
 タツキを体内に吸収し合身する事で二度目のイグニッションを果たした陽介の雑霊弾は茨に戒められた地縛霊の身体に大穴を穿っており、タイミングを見計らって繰り出された風華の龍顎拳を避ける余力も既に残されていなかったのだ。
「取り巻きだけならこの調子で各個撃破すればいけるかな」
 フロストファングの反動を運の助けを借りて打ち払い、日花が標的に定めるは、今だ動きを封じられぬ取り巻きのゴースト。
「陽介君……」
 振り下ろそうとした長剣の軌道を曲げ、自身も横にスライドすることで雑霊弾が通る射線を作り出しながら日花は逸れた斬撃の軌道を再調整する。
「我々の最大の強みは連携、ゴースト風情に屈する事はありません……!」
 二人に呼応する様に降らせた星の輝きが地縛霊を捕らえる中で、放たれた気の塊は地縛霊の身体に風穴を開けた。
「大丈夫だでか?」
 仲間の連携攻撃に地縛霊達が押され行く姿を認めながら権座衛門は浄化サイクロンを巻き起こし。
「ごんざぶろう君も気をつけてくださいっ」
 琉姫が白燐蟲の力を借りて味方の傷を癒す。取り巻きの地縛霊達は身体が石に変わりつつあり動けないが、中央に鎮座するクラウドガイストもどきという脅威が今だ健在なのだ。
「あなた方の好きにはさせませんです、よ」
 身体の痺れを跳ね飛ばし葵が再び茨の領域を作り出すも、絡みとれたのはたまたま巻き込めた取り巻きの方。地縛霊達にとっても聖杯結界内の力は平等に働く為、無視は出来ない状況だろうが、取り巻き達が一方的に攻撃され倒されているというのに、戦闘は一方的な流れにはならなかった。
「オオォォォ」
「っ」
 茨の返礼に吹き付けられた猛毒は、結界内の特殊効果と相まって一度に大量の戦線離脱者を出しうる。締め付ける茨と進行する石化に耐えきれず二体目の取り巻き地縛霊が石像と化すも、二度目の猛毒噴射は複数の能力者を窮地に追いやって居たのだから。
「やはり一筋縄ではいかないようですね……」
 猛毒が身体を蝕めば、それだけで場にいる能力者達は誰もが体力を根こそぎ奪われかねない。猛毒の噴射をまともに受けてしまえば、頼りになるのは己が運と意志、そして……。
「ごんざぶろう君」
 名前を呼び間違えている者も居るようだが、権座衛門が巻き起こす浄化のサイクロンのみ。
「くっ」
 故に権座衛門の援護が間に合わず、自力で猛毒を振り払うことも出来ねば廃屋の影に非難することも能わない。
「まだだ」
 統夜は崩れ落ちかけた身体を地についた右手と意志の力だけで支えて起きあがり、地を蹴った。選択肢は二つ、遮蔽物の元に退いて傷を癒すか、捨て身で攻勢に転じ反撃するか。
「やむを得ないか」
 日花なら後者を選んだろうが、統夜は前者を選んだ。賭に出るにはまだ早いと踏んだのだ。
「地縛霊もあと二体、最後まで、知恵で抗ってやりますよ」
 賭に出る好機が訪れたのは、廃屋の影を裏側に回り込んでいた誄火の一撃によって。進行する石化で徐々に弱っていた最後のプチクラウドガイストもどきに、投じた結晶輪が命中したのだ。身体を覆い始めた氷と石化の双方にトドメを刺された取り巻き地縛霊は石像と化し。
「いくよ!」
「大丈夫、私たちわ、絶対に帰る!」
 疫病の代行者への集中攻撃が始まった。
「とっておきです! 早く倒れてください!」
 一瞬で距離を詰めた風華がクラウドガイストもどきに軽く触れて飛びずさり、空間が空いたのを見計らって飛来した気の塊が地縛霊の身体に突き刺さる様にめり込む。
「これなら……」
 好機と見て追い打ちをかけようと長剣を下げた日花が地を蹴れば、吹き出した猛毒の煙に突っ込む形となり、毒々しい煙に視界を遮られた能力者の耳に誰かが倒れる音がして。
「毒を以て毒を制す、とはよく言ったものですよ……!」
 地縛霊の状態異常攻撃は厄介極まりなかったが、地縛霊から見た能力者達の攻撃も脅威なのは変わらない。戦いの趨勢を決めたのも誄火の幻楼七星光――光のもたらした石化だったのだから。
「さあ、終わりにしましょう」
 この時点で誄火を除き結界内に残っていた能力者は五名。内一名は気力と意志のみで立っている状態だった。だが、敵からの攻撃が来ないのであれば。後は一方的な展開だったのだ。

●得たもの
 地縛霊についての足りない情報を外見からの推測で埋めた知恵、仲間との連携を心がけた協調性、諦めない強い意志と運。一つでも欠ければ勝利を得ることは出来なかったかもしれない。
「ふぅ……なんとか入手出来ましたね……」
 もっとも、欠けなかったからこそ能力者達は勝利したのだろう。風華の掌の上では聖杯のかけらが陽光に輝き、葵は欠片を眺めつつ思う。
(「他に封じられているのも、こんなに手強いものたちなのでしょうか」)
 取り巻きの地縛霊はともかく、一回り大きなクラウドガイストもどきは本当に強かった。再度戦って勝てるかわからない程。
(「でも」)
 ただ、葵は信じていた。皆さまとならきっと大丈夫、と。
「この調子でヨーロッパの新しい仲間の助けになれば良いんだがな」
 空を見上げた陽介の呟きはどこからか流れてきた風にさらわれて。
「不完全な世界結界……この聖杯の欠片があれば迫害されていた、今もそうかもしれない能力者の人も、ゴーストも、多くの普通の人を……護れる結界が、創れるのかな……」
 聖杯のかけらに目を落とした琉姫も空を仰いだ。
「それでも私わ、護りたい……」
 髪を揺らし吹き抜けて行く――さわやかな風の中で。


マスター:聖山葵 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/10/15
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