見張り小屋の紳士ギルバート


<オープニング>


「ここでみんなを失う訳にはいかないよ! 必ず全員で帰るんだからぁっ!」
「もきゅっ!」
 見張り小屋の騎士レーヌが詠唱ライフルを十字架型の紋様に向け弾丸を撃ち込むのに合わせて、一声鳴いたモーラットが血まみれで横たわる人狼騎士を引きずって行く。
「くっ、防がれた……」
「ふーはっはっは、残念だったなぁ見張り小屋の騎士とやらよぉ」
 甲高い音を立ててはじかれた弾丸に顔をしかめたレーヌの顔を眺め、勝ち誇ったように笑うのはもはや人の形をなさぬもの――そう、その姿は。
「って言うか、何でコケシ!」
 レーヌがツッコミで指摘するとおり、一見するとやたらばかでかいコケシの着ぐるみを着ているようにしか見えなかったのだ。
「ほほう。あの異国の美しき伝統工芸品を知るとは、ただ者ではないな」
 訳の分からない方向に感心しつつ、ピョコピョコと飛び跳ねて近づいてくる巨大コケシは滑稽にも見えるが、身体に纏う威圧感は対峙する人狼騎士達を戦慄させる。
「ウチの部下はそろいも揃ってマトリョーシカと勘違いして、吾輩とても残念な限り」
「申し訳ありません、ギルバート様」
 激しくどうでも良いやりとりを部下らしい従属種ヴァンパイア達とかわす巨大コケシもといギルバートは、謝罪の言葉に眉をひヒクつかせ嘆息すると一人の人狼騎士の前で立ち止まる。
「いかんですよぉ、吾輩を呼ぶときは『見張り小屋の紳士ギルバート様』と呼ぶようにいつも言っているだろう?」
「申し訳ありません、ギルバート様」
 難儀な敵だった。
「っ?! うぁ」
 ただ、直後にこけしの胴が縦に割れ、おぞましい光景が見えなかったらこの原初の吸血鬼のなりそこないの恐ろしさは知らずじまいに終わったことだろう。
「エスト!」
 避けそこないこけしに飲まれた人狼騎士の絶叫が小屋の中に響き渡る。
「ふぅ、ごちそうさまでした」
 体内からぺいっと捕獲した人狼騎士の身体を放り出すと、変態コケシ男は首を巡らせて次の獲物を探し。
「エスト、しっかり」
「ううっ……」
 ぐったりした人狼騎士の少女を抱き起こすレーヌへと目をとめた。
「えっ」
 というか人狼騎士達は旗色悪しと見て撤退に移っており、残っていたのはレーヌを含めてもはや二人だけだったのだが。
「ではもう一口」
「もきゅーっ!」
 あくまで人狼騎士はの話。レーヌが連れていたモーラットは主を突き飛ばすように前に出て。
「レーヌ! あの子の覚悟を無駄にしちゃ駄目だ」
 声にならない悲鳴をレーヌがあげる中、ぐったりしたままの仲間を肩に担いだ人狼騎士がレーヌの手を引っ張り小屋を飛び出す。
「ふーむ、敵ながらあの忠誠心実に見事。お前達も見習うがいい」
「はい、ギルバート様」
 残された変態コケシ男は部下達を一瞥すると元の場所に戻るためピョコピョコ跳ね進み始めた。
 
「皆さん、集まって頂きありがとうござます」
 能力者達の姿を認め頭を下げたアリスは「欧州の作戦が順調に進んでいること」「ただしいくつかの障害が残っていること」を明かすと、その障害の一つを取り除いて欲しくてお呼びしたのです、と言葉を続けた。
「とある人狼騎士の部隊が討伐に赴き、力及ばず撤退を余儀なくされたのですが」
 人狼騎士達を退けたのは、原初の吸血鬼になりそこね怪物と化した貴種ヴァンパイアとその取り巻きの従属種ヴァンパイア四名。
「なりそこないの怪物は日本の木製工芸品に似た形状をしており、己が体内に標的を捕獲することによって大ダメージを与え、体力を吸収する近接単体攻撃を使ってくるそうです」
 この攻撃には侵食と追撃が付与されており、運が悪ければ猛者でも一撃で倒される可能性があるという。
「従属種ヴァンパイアについては四人ともチェンソー剣を手にしていて、追いつめられると噛み付き血を吸うことで窮地を脱しようとしたと」
 どちらも撃退された人狼騎士達から得た情報ということで、人狼騎士達が引き出せなかった奥の手が存在する可能性もあるが、全員がこちらの体力を奪い己の体力を回復させる手段と追撃付与の攻撃手段を持っているという時点で十分厄介な相手である。
 ちなみに戦場は森の中にある頑丈な小屋で進入口は一カ所しか無く、広さは10m×15mとのこと。
「まずは、欧州から原初の吸血鬼の勢力を駆逐する事が私達の目標です。その為にも――今回の件、よろしくお願いいたします」
 再び頭を下げるアリスに見送られ、能力者達は教室を後にした。
 

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参加者
大塚・万里(型破りがモットーの真霊媒士・b17247)
御簾森・藍李(雨の濫觴・b25123)
到真・悠人(伏魔絵師・b40287)
岩崎・弥太郎(志せしは覇道の主・b42534)
白姫・みやび(シャイネンプリンツェッスィン・b42885)
御蛹・真紀(遺志を継ぐ者・b44782)
舞岳・貴乃子(白茸姫・b63893)
壱塚・真麻(朱炎操る特攻服娘・b76504)



<リプレイ>

●シリアス殺し
「ヨーロッパにマヨイガが繋がって早速遠征ですか」
 到真・悠人(伏魔絵師・b40287)は呟き、それだけ銀誓館が戦力として期待されているということでしょうか、と首を傾げる。
 森は静まりかえっていた。そもそも大声を出して敵に襲撃を悟られる必要もない。
(「何故こけしですの変態の考えることはわけがわかりませんわ?」)
 青の眉毛をつり上げて、理解に苦しむと言ったポーズをとりながら、白姫・みやび(シャイネンプリンツェッスィン・b42885)の脳裏に過ぎるのは、一つの疑問。
(「以前に儀式を阻止したかたといい今回といい原初になろうなんて考える貴種は変人がおおいのかしら?」)
 見えざる狂気だから仕方ない、の一言で片づけるのを推奨する疑問はさておき、標的の潜む小屋に向けられた複数の瞳には憤りの炎が揺れていた。
(「人の姿を捨て悪鬼へと成り下がったか……」)
 視線を小屋に留めたまま、舞岳・貴乃子(白茸姫・b63893)はゆっくり歩き出す。能力者達がここまで来た理由は一つだった。
「メイドさんのスカートはミニかロングか、それが問題だ!」
 そう、彼らはメイドさんのスカートの長さを――って、違うわーっ!
「変態の癖にメイドさんを侍らすなど言語道断! 万死に値する!」
 と力説する岩崎・弥太郎(志せしは覇道の主・b42534)はさておき。
(「壱塚は代々名家でなぁ、歳の割には目は肥えてる方だぜ?」)
 口の端をつり上げて不敵な笑みを浮かべ、胸中で言葉を続けた壱塚・真麻(朱炎操る特攻服娘・b76504)の「だからアリスには悪いが原初云々はどうでもイイ」心の声もここだけ聞くとツッコんで置いた方が良さそうだが。
「ううん?」
 こけしの着ぐるみもどきな姿をした『なりそこない』はどんな反応を示すだろうか。
「おいこらそこの変態こけし! 日本の方角に向かってまず謝れ!」
「割れる上に中身は別ってこけしに対する冒涜です」
「あと、コケシって卑猥だと思うんだ……!!」
「お前を日本の方角に向かって謝れ!」
 いきなり小屋に突入してきた者達が自分を指してその容姿を非難してきたとしたら。ちなみに発言は上から順に、真麻、大塚・万里(型破りがモットーの真霊媒士・b17247)、弥太郎と続いて再び真麻がツッコんでいる。まぁ、まじめにこけしを作っている人達のことを考えれば是非もない。
「ぬあっ?! い、言われてみれば確かに」
 一方で、非難された側の原初のなりそこない、こと変態コケシ男は驚きに目を見張ると、気圧された様に後退し。
「……我が輩の美しさは既にオリジナルを凌駕している。何というか申し訳ない」
「「やかましいっ!」」
 日本の方向に土下座しつつ勘違い発言をして一部の能力者から更にツッコまれていた。
(「私は大切な友達に誓ったの、彼女が命を掛けて守ろうとしたこの平和な世界を私も命を掛けて守り抜くって」)
「なりそこない……でも、原初に至る為のアレを、したのでしょう?」
 何というか、いつもの様に己が誓いを確認しつつ真剣な顔をした御蛹・真紀(遺志を継ぐ者・b44782)や「赦せない」と真っ当に憤る御簾森・藍李(雨の濫觴・b25123)といったシリアス組が置いてきぼりを食うほどの混沌っぷりだった。
「日本美術界に代わってお仕置きです、覚悟なさい!」
「日本美術界だと?! まさか我が輩を石化させて日本の美術館に収蔵しようと言うことかっ!」
 確かに倒すと消えてしまうゴーストなども石像に出来ればお持ち帰りは出来るはずだが、誰がこんなモノにそんな手間をかけるというのか。

●そが名は狂気
「なんて曲解っぷりだ」
「日本では変態と書いて……しんしと読みますわ」
 流石は紳士と言うことか。
「しかしまた今回は趣味に突っ走った輩を相手にすることになったものです」
 なり損ないを眺めつつ口を開いた悠人は呆れているのか感心しているのか、ともあれ。
「埒があかんな」
 言葉の応酬で解決するものではないのだ。
「シェルティラさん、私に力を……。魔装紋章ッ!」
 悠人が作り出したドリンク剤を自ら呷るのに合わせて真紀が肌に縞模様を浮かべて構えをとり。
「ぬ、実力行使か」
「違います!」
 思わず叫びながら万里は気の塊を撃ち出した。
「きゃあっ」 
「なん、だと……?」
 雑霊弾で狙ったは従属種ヴァンパイア。シャーマンズゴースト・ファラオのおやっさんも万里の攻撃にあわせて火を噴き。
「みなさん、あいつを狙ってください!」
 貴乃子も肌に縞模様を浮かべながら気の塊を撃ち込まれた従属種の少女を指さす。
「なるほど……半々」
 ちなみに、メイド服のスカートはミニとロングが二人ずつの構成だったが、ちょうど己に白燐奏を施すところだった甲弥太郎以外にとっては多分どうでも良いことだろう。
「白姫さん、攻撃が来るわ!」
 無言のままチェンソー剣の刃を始動させた従属種のメイドさん――当人達にとっても。
「行くのだお前達」
 藍李がハートマークを描き己と仲間に祝福を授ける間も危険なメイド達は距離を詰める。
「っ!」
 力任せに振り下ろされたチェンソー剣の一撃から味方の警告と騎士甲冑服に助けられる形でみやびは逃れ。
「灯りが要らねえくらい火あぶりにしてやるわっ!」
 斬撃に鉄球をかざして応じた真麻は、打ち消しきれなかった衝撃に顔をしかめつつも手にした鉄球へ不死鳥のオーラを宿し雑霊弾で手傷を負った従属種メイドへと殴りかかる。
「ちっ、弾かれたか」
「ふふっ」
 先ほどまでの笑劇のような掛け合いをしていたのが嘘であったかの様な激しい攻防の中。
(「ノーブルブラッド、略すとノーブラだそうですわ。どなたが言い出したのかしら? あっそちらのほうはちゃんと着けていますからね」)
 血に混入した魔力を全開にしつつ――みやびが胸中でこぼした言葉は誰へ向けての弁解か。
「させーんっ!」
 少なくともぴょこぴょこ跳ねつつメイド達を庇う様前に躍り出たギルバートへ向けたモノでないことだけは確かだろう。
「ウチの部下を優先的に狙う。メイド服をボロボロにしたけしからん姿を鑑賞するつもりかぁっ!」
 鼻血を流しながらくわっと目を見開き、変態は能力者達を睨みつけながら身をかがめる。
「させんっ!」
 跳躍と同時にこけしの胴が割れ。
「到真殿、右から敵が迫っています!」
「いただきますっ」
 貴乃子の声が響く中、悠人の上半身が割れたコケシの腹部に消えた、ただし。
「おおうっ」
 捕まっていたのはコンマ何秒か。消えたと思った直後、ギルバートが呻いて上半身を引き抜いた悠人は二度床を転がり、身を起こす。
「……ってくれたな」
「到真殿の回復は拙者にお任せを。御蛹殿は攻撃を頼みます」
 すぐに脱出したことで追撃こそ免れたもののダメージは無視できない。悠人は肌に縞模様を浮かべつつ身構え、貴乃子も痛手を負った仲間のフォローに回る。
「敵を喰らい尽くせ、暴走黒燐弾!」
「な」
 傷を癒す味方に呼応して真紀の撃ち出した弾丸は、メイド達の虚をついていた。着弾と同時に群れに戻った黒燐蟲に従属種ヴァンパイアの少女達が悲鳴を上げるも苦痛と言うより驚きから発せられたモノの色合いが強い。暴走黒燐弾の欠点は命中精度の低さにある、ましてや相手が得意とする型の攻撃は――。
「ふーはっはっは、残念だったなぁ」
 部下達の被害が軽微だったからかコケシ男は勝ち誇った様に笑うが鼻血にまみれた顔では色々台無しだった。もとより変態コケシ男の時点で最初から台無しかも知れないが。
「メイドたちよ! そんな歩く猥褻物陳列罪に仕えるなど程度が知れるぞ!」
「うっ」
 弥太郎の投げた挑発でメイド達は目に見えた様に怯み。
「貴女がたもいつまでもそんな変態に仕えていてもしかたないでしょう? 転向するなら歓迎しますわよ?」
「愚かな、そのような言葉にウチの部下は惑わされ……って、お前達、何故そこで顔を見合わせる?!」
 みやびの言葉に少女達の見せた反応は、何というか是非もない様に思われた。

●咎人
「その扉、二度と開かないようにして差し上げます」
 青白い月光がギルバートに降り注ぐ。
「凍てつきなさい」
 刺し貫く様な視線を『原初の吸血鬼のなり損ない』へ向けて、藍李は戦っていた。なり損なったとはいえ、それに至る為の行いが、赦せなかった。
「これを受けていつまで立っていられるかしら?」
「きゃあっ」
 華やかな輪舞曲を思わせる動きから繰り出されたみやびの一撃に一人のメイドが悲鳴を上げて膝を折り。藍李がギルバートの気を惹き抑えようとする間も、他の能力者達は従属種の少女達と戦っていた。
「お強いですね」
 戦いながら少女達が口を開き始めたのは先ほどの言葉が効いたのか。
「ですが、あなた達はギルバート様のことを知らないご様子」
「そう、上辺だけしか」
「ギルバート様は、ギルバート様は」
 口々に語る少女達が声を揃えたのは、次の瞬間。
「「おちょくるととても面白いのですよ?」」
「だー! おまえらは黙ってろ!」
「きゃぁぁっ」
 真麻がコケシ男に叩き付けるつもりだった台詞を思わずメイドにぶつけてしまったことを誰が責められようか。
「ま、まあ何にせよ一人目だ」
 ツッコミをかねた一撃で少女の一人が倒れ伏し。
「我輩、とてもショック」
 手があれば膝を抱えていそうな体勢でコケシ男がぐんにょり凹んでいるが、ある意味自業自得だろう。倒すべき相手は変態の他にもまだ残っているのだから。
「おやっさん!」
 万里はメイドに火を吹き付けるおやっさんを癒し、悠人は震脚を放った足で床を蹴りメイド少女の一人に肉薄する。
「ぁ……ぐっ」
 ただ軽く触れただけに見えた一撃に身を捩り、少女が崩れ落ちたのはそれが白虎絶命拳であったから。
「冗談、は……さておき、行き倒れていた私を助け、ギルバート様は居場所を与えて下さいました」
 倒した、と思った少女が意志の力で起きあがりながら微笑する。多分、いや、おそらく四人の少女達は全員があのコケシ男を慕っているのだろう。
「有象無象の区別なく、我が盟友は容赦しない!」
「ギルバートさ」
 意志の力だけで立っていた少女が、弥太郎撃ち出したキノコ型の弾丸を受け、身体をくの字に折って倒れ込む。敵の戦力は半減していた。
「みんな、連携して一気に叩くわよ!」
「承知しました、同時に仕掛けましょう!」
「うっ」
 複数の能力者が一斉に動いたことでメイドはたじろぎ、数人がかりの攻撃に三人目の少女は倒される。
「まっ、まだ……」
「白き友よ。弾丸となりて我が敵を撃ち抜け!」
「きゃぁぁぁっ」
 気力を振り絞り、起きあがろうとしたメイドの少女をキノコ型の弾丸が沈黙させ。
「お怪我、大丈夫ですか」
 手傷を負った能力者もいた。能力者達に抗おうと、少しでも長く戦場に立とうとした少女達の噛み傷に目をやって、藍李はハートマークを描き出す。
「ギルバート様は、私達がっ!」
 抵抗は続いた、だが能力者達も退かなかった。
「いかんですよぉ、下がり」
「聞けませんっ!」
 従属種の少女も。だが、戦力差は覆せない。
「あとは貴様だけだ」
「うむぅ」
 最後のメイドも倒され、貴乃子が突きつけた言葉にコケシ男は唸る。
「私の目の届くところで、変態が息を吸い、変態が闊歩し、変態が人々に、仲間に危害を与える……それを私が、この岩崎弥太郎が、許しておけるものか!」
 吼える様に弥太郎は言い放ち。
「面白い、出来るというならやっ」
「……煩い口は、二度と、開けないで」
 言葉を遮る様に青白い月光はギルバートを凍てつかせる。悠人にしてみれば目の前の変態がなぜコケシ形態になったのか聞きたかったであろうし、万里もはったりでカマをかけるつもりだったので、口を噤まれると少々こまったりもするのだけれど、見解の相違だろうか。
「……みんな、これがやりたかったんだろう?」
 真麻がにやりと笑んだ。何にしても、変態こけしフルボッコタイムの始まりだったから。
「割れちまえこの変態こけし!」
「内部から、爆ぜなさい!」
 鉄球が、殺傷力を持った視線が、能力者達の攻撃がギルバートに襲いかかり。
「なんのぉ!」
 驚異的な動きでコケシ男は向けられた攻撃の半分を回避する。
「突貫工事でも儀式を受けただけの事は有りますね」
 藍李の攻撃だけ結構な頻度であたっていること、みやびのスラッシュロンドが一度もあたらなかったことを考えると相性によるものかもしれないが。
「状況の打破が出来ねば気休めにもならんですよ」
 万里の言葉に応じつつ、胴を開いたコケシ男はコウモリの翼を持った小さなコケシの群れを解き放つ。奥の手はあったらしい。
「……って、威力も効果もバットストームと変わんねーじゃねーか!」
 といったモノであったけれど。
「ふっ、この素晴らしさがわか」
「だー! おまえは黙ってろ!」
 最後の最後に待っていたのは、グデグデな展開だった様である。ギルバートはその後も戦況を覆すことなく追いつめられ、最期を迎える。
「貴様は化け物としてですらなく、塵芥の様に死ぬのだ!」
 弥太郎の声を合図とする様に攻撃が降り注ぎ。
「がっ、見事……お前達は今後『コケシ・スレイヤー』を名乗」
 寝言を中断される形でトドメを刺されたギルバートは積み木細工が崩れるかの様に崩壊すると端からサラサラと消滅し始めた。

●戦闘後
「変態を滅し、メイドさんとも戦えた! 素晴らしい戦果だな!」
「皆様揃っての勝利、本当に何より……です」
「なりそこない……儀式を失敗した結果があのような異形ですか」
 満足げに呵呵と笑う弥太郎と頷く藍李の前で、死者の冥福を祈り顔を上げた悠人はポツリと呟く。
「吸血鬼達の歴史の中にあのような存在が何人もいたという事なのでしょうね」
 あんな変態何人も居てたまるか、とツッコミたいところだが実際はどうだったのやら。
「死を選ぶことは義務の放棄よ、あなた達にはギルバートの分まで生きる責任があると思うわ」
「わかりました、ギルバート様の分までけしからん姿を鑑賞され――」
 彷徨わせた視線は、真紀に諭されつつも勘違いしたままであるらしい従属種の少女にとまって。
「はぁ」
 耳は誰かの嘆息をきいた。
「なかなか楽はさせてもらえませんね」
 とりあえず誤解も解いておいた方が良さそうだろう。
「しかしあいつ……本当はかなりヤバイんだろ? いや外見の話でなく」
「そうですね。最近、大人しかった吸血鬼に動きがある、何か嫌な予感がします」
「ああ、また大きなことが起こらなきゃいいが」
 表情に微かな不安の色を混じらせた真麻と貴乃子は言葉を交わすと、メイド少女達の方を振り返った。
「捕虜にした者たちから情報を得られると良いのですが……」


マスター:聖山葵 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/10/20
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