我が槍術を受けてみよ


<オープニング>


 とある町の片隅に、現在は使われていない小さな道場があった。
 近々そこを取り壊す事が決まり、中を片付けるため業者の者が数名中へと足を踏み入れたのだが……その瞬間彼等は不思議な感覚に包まれてしまう。
 そして気付いた時、長槍を握り締めたガタイのいい男が1人、彼等の前に仁王立ちしていた。
「我ガ槍術ヲ……受ケテミヨ!!」
 男は目にも止まらない速さで連続突きを放ち……その場にいた全員を次々と串刺しにしてしまった。

「集まってくれてありがとうね、みんな」
 教室に集まった能力者達に軽く挨拶を交わした後、神崎・優希(中学生運命予報士・bn0207)は事件についての説明を始めた。
「今回の現場は道場、長槍の抗体兵器を持ったおじさんの地縛霊が相手となるよっ」
 優希の説明によると、とある小さな道場に足を踏み入れると抗体空間へと引きずり込まれ、そこに待ち受ける男性の地縛霊に襲われるのだという。
 特に出現時間は決まっていないらしく、昼夜問わず道場の中に足を踏み入れた者全てを抗体空間へと引きずり込むようである。
 一応立ち入り禁止の看板がたててあるものの、入口の鍵は壊れてしまっているらしく、侵入は容易にできるようである。
 無論それは能力者達以外の者にも言える事であるため、注意が必要だろう。
「今回の抗体空間は特に特殊な効果はないみたいなんだけど……ある程度の時間が過ぎると、空間内に溜まった物凄いエネルギーがみんなにダメージを与えるみたい」
 よって、時間以内に地縛霊を倒さねば全滅してしまう可能性があり、それに耐え抜いたとしても戦闘続行はほぼ不可能となり、撤退を余儀なくされてしまうだろう。
 地縛霊は40代くらいのガタイのいい男性の姿をしており、長槍の抗体兵器で突いたり叩きつけたりする攻撃を行うという。
「そこは昔槍術を教えていたらしいんだけど……あまり人が来なくてすぐ潰れちゃったみたい。小さな道場みたいだし、教えていた人も1人しかいなかったみたいだよ」
 道場が潰れた後、その人物かどうなったかはわからないとの事だが、もしかしたら今回の地縛霊が……と優希は考えているようであった。
 ちなみに道場は近々取り壊され、コンビニか何かが出来る予定であるという。
「結構向こうも自信ありげだけど……みんななら負けないって信じてるからねっ」

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参加者
伊藤・洋角(百貨全用・b31191)
出雲崎・夏野(ステキ魔弾術士・b32906)
方・瑞麗(魅惑の脚線美・b35580)
伊東・尚人(理の探求者・b52741)
烏頭森・万葉(億千万の棘茨荊・b60331)
天宮・沙希(スケバン・b67479)
嵐月・凪(絆の螺旋・b71242)
御雷・雷華(黒き雷・b72662)
ルエニ・コトハ(小学生シルフィード・b79730)
パール・ネロバレーナ(小学生ルナエンプレス・b82670)



<リプレイ>


 予報士からの報せを受けた銀誓館学園の能力者達は、人通りが少ない時間帯である早朝を選び、地縛霊が現れるという道場へとやってきた。
 彼等の目論見通り辺りに人影はなく、シーンと静まり返っていた。
「道場が栄えずそのまま終わったのが心残りだったんだろうなぁ……」
 嵐月・凪(絆の螺旋・b71242)は、地縛霊となってしまった男性の心中を察しながらも、槍術は剣道等と違ってマイナーであるため、潰れてしまうのも仕方なかったのかもしれないというのが正直な意見であるようだった。 
「道場がなくなってしまうのは、止められない事なのです。心残りとならないようにせめて、最後の戦いは全力でお相手するのです」
 それが自分達が地縛霊にできる唯一の、そして最大限の思いやりであるとルエニ・コトハ(小学生シルフィード・b79730)は考えているようであり、
「そうですね、手加減無用、全力でぶつかりましょう」
 そんな彼の意見に、烏頭森・万葉(億千万の棘茨荊・b60331)が相槌を打ちながら同意した。
「敵は槍術の使い手ね、相手に取って不足はないわ」
 この国に伝わる槍術と自国に伝わる武術、どちらが上なのかハッキリさせようと、熱い闘志を燃やす方・瑞麗(魅惑の脚線美・b35580)。
 強者との戦いを望む彼女にとって、今回の地縛霊はうってつけの相手と言えるだろう。
「(時限爆弾付き道場〜……なんだかすごく物騒だね〜。早めに天へ還そう〜)」
「ええ、僅かな時間ですがそれまでに倒して見せましょう」
 パール・ネロバレーナ(小学生ルナエンプレス・b82670)の言葉(?)に頷く伊藤・洋角(百貨全用・b31191)。
 もしもタイムリミットが過ぎてしまえば、いくら能力者達といえども無事ではすまない……なんとしても制限時間以内に地縛霊を倒さねばならないのである。

「準備はいいか?いくぞ」
 仲間達にそう声をかけながら、御雷・雷華(黒き雷・b72662)は道場の扉を開いて中へと足を踏み入れ……その瞬間、彼女達は不思議な感覚に包まれる。
 そして気付いた時、彼等の前方に長槍を握り締めたガタイのいい男が1人、威風堂々と仁王立ちしていた。
「我ガ槍術ヲ……受ケテミヨ」
 男はどこからともなく取り出した槍を構え、ジッと能力者達を睨みつけながら威圧する。
 一般人ならその迫力に気圧されてしまうのかもしれない……が、彼等に下手な脅しは通用しなかった。
「相当自信を持ってるみたいだな。だが……井の中の蛙って知ってるか?戦いは試合とは違う、決まったルールなんてねぇんだぜ。アタシが本当の戦いってやつ教えてやるよ!」
 そう言ってのけながら、自らの姿が描かれたカードを取り出す天宮・沙希(スケバン・b67479)。
 彼女に続き仲間達も次々と自分のカードを手に取り……彼等はそれを一斉に起動させた。
『イグニッション!』
 その瞬間、カードの中に封じ込められていた彼等本来の力が呼び覚まされ、カードの中から現れたそれぞれの武器を強く握りしめ、能力者達は地縛霊に敢然と立ち向かっていくのであった。


「……さてと、時間もない事だしサッサと倒そっか」
 戦闘が開始された瞬間、表情をキリリと引き締めながら足飛びに地縛霊との距離を詰める凪。
 無論地縛霊も黙って接近を許すはずもなく、彼女に向かい勢いよく槍を突き出して応戦する。
「そんな槍、私には当たらないよ……」
 凪は冷静にその攻撃を見極め、サッと横に跳んでそれを避けた後宙高く舞い上がり、地縛霊の脳天目がけて三日月の軌道を描く超高速の蹴りを叩き込んだ。
「貴方の力量ためさせていただきます」
 間髪いれず伊東・尚人(理の探求者・b52741)が地縛霊の懐へと跳び込み、青龍の力が込められた拳を突き上げるようにして相手の腹部へとねじ込む……が、
「ソンナモノ……キカヌ」
 2人の攻撃を受けてもなお地縛霊は微動だにしなかった。
 彼はすぐさま反撃に転じて勢いよく槍を振りおろし……その瞬間、ゴチン、という鈍い音が響く。
 それは姿勢を低くしていた尚人の脳天を、地縛霊が槍で強打した音であった。
「!……」
 重傷とまではいかなかったものの、尚人は脳が揺さぶられ、意識が吹き飛び気絶してしまう。
「みんなをやらせないぜっ」
 気絶した尚人や強化を行っている仲間達が襲われないようにするため、雷の魔弾の撃ち放ち、地縛霊を牽制する出雲崎・夏野(ステキ魔弾術士・b32906)。
「コノテイドデ……ヤラレヌ」
 雷の魔弾の直撃を受けてもやはり地縛霊は平然としていたが……元々夏野にとってそれは時間を稼ぐための攻撃にすぎない事を彼は知る由もなかった。


 一陣の風が戦場を吹き抜けていく……ルエニが生み出した浄化の風である。
 風は能力者達の体を優しく包みこみ、癒しを与え……気絶していた尚人もハッと目を覚ます。
 ルエニはそのまま浄化の風を吹かせ続けてサポートに徹し、
「頼むよ、クヤ」
 彼に変わり、使役ゴーストのケットシー・ワンダラーが杖からエネルギー弾を発射して地縛霊を攻撃していく。
「時間も無い事ですし、早く、そして確実に狙っていきませんとね」
 仲間達に、そして自分自身に言い聞かせるように呟きながら、洋角は禍々しい怨念の力が込められた瞳で地縛霊をジッと睨みつける。
 その瞬間地縛霊は体を内側からズタズタに引き裂かれ、胸をグッと抑えながらガクガクと体を震わせた。
 どれだけ強靭な肉体を持っていようと、内側からの攻撃はさすがにこたえるようである。
「(幻影兵団〜。今日も張り切って頑張ろう〜……あれ、なんかおかしい?)」
 きょとんと首を傾げつつ、パールは戦場に幻影兵達を次々と出現させ、
「金糸の魔力よ、我らに神秘の祝福を……」
 更に万葉が空中にハートマークを描き出し、自分とパールとに愛の祝福を与えて強化を施した。
 そうして力が高まったパールは赤い月光を浴びさせて地縛霊の体を溶かし、
「出でよ、致命の凶刃!!汝の名はダーインスレイヴ!!」
 更に万葉が幻影兵団の効力を利用して離れた位置から神霊剣を繰り出し、地縛霊の体を内側から破壊していった。

「このチャンスを逃す私じゃないわ!」
 集中砲火にさらされ、地縛霊の注意力が散漫になっている今が攻め時と判断し、瑞麗は皮膚に虎の紋様を浮かび上がらせ、拳に青龍の力を宿しながら地縛霊へと跳びかかる。
 不意をつかれた地縛霊は迎撃する事も回避する事もできず……瑞麗の渾身の力を込めた龍顎拳が彼の顔面へと炸裂した。
「ヤル、ナ……」
 その威力は地縛霊も思わず一歩後ずさってしまうものであったが……それでも致命傷にはまだ遠い。
 地縛霊はすぐに反撃に転じ、目にも止まらない速さで槍を突き出して瑞麗の体を串刺しにしてしまう。
「っ……生半可な鍛え方はしていないわ」
 一瞬意識が飛んでしまいそうになる瑞麗であったが、持ち前の負けん気と、ルエニの浄化の風の効果によってどうにか耐え抜く事ができた。
 とはいえだいぶ体力が低下してしまったため、彼女は虎紋覚醒を発動させて自己回復に努めるが……そんな彼女に追撃を繰り出そうと、地縛霊は再び槍を構える。
 だがその瞬間尚人が両者の間に割って入り、
「この間合、とったぞ!」
 彼も瑞麗同様に拳へ青龍の力を宿らせ、地縛霊の頬へとねじ込むようにしてそれを叩き込み、注意を自分へと向ける。
 そして彼は片足を軸としながらその場で高速回転し始め、連続でローキックを放ち、地縛霊の下半身を重点的に攻めていく。
「ヌゥ………ダガ……!」
 若干体勢を崩しつつ、地縛霊も負けじと槍を突き出して応戦する。
 咄嗟に横に跳ぶ尚人であったが攻撃中であった事も重なり間にあわず……腹部を刺し貫かれてしまう。
 そして地縛霊が槍を引き抜いた瞬間、彼は大量の血を吐き出しながらその場にドサッと崩れ落ち……意識を失ってしまった。
 どうやら完全に体力が尽きてしまったらしく、さすがにルエニの浄化の風も今度ばかりは効果はなかった。
「よくもアタシのダチを……この借りは高くつくぜ!」
 目の前で仲間を倒され、黙っていられるような沙希ではない。
「てめえは、ぶっ潰す!」
 怒りに燃える彼女は両手の長剣を頭上で高速回転させながら地縛霊へと接近し、切り裂くというよりは叩きつけるようにしてそれらを勢いよく振り下ろして強打した。
 更に彼女は何度も何度も左右の剣を交互に振り下ろし、それらが肩へと食い込むたびに地縛霊の体を衝撃が駆け巡り、じわじわと体力を奪い取っていく。
 このまま一気に……といきたいところであるが、やはりそれほど甘い相手ではなかった。
「コレ……イジョウ……ヤラセハセン」
 地縛霊は何度目かの攻撃を槍で受け止めて弾き返し、沙希がバランスを崩した隙をつき、お返しだと言わんばかりに力いっぱい槍を振りおろし、彼女の肩を強く打ちつける。
「ぐぅっ……やってくれるじゃねえか……」
 骨が砕ける……とまではいかなかったものの、その一撃は沙希の体にかなりのダメージを与えたようであった。

 だが……地縛霊の攻勢もそこまでだった。
「貴様の相手は、俺だ!高速演算プログラム、起動ッ!」
 プロトフォーミュラを起動させながら地縛霊との距離を詰める雷華。
 更にその後に凪が続き、両者は戦場を縦横無尽に駆け回り、地縛霊を翻弄する。
「……ソコダ!」
 それでも地縛霊は慌てず騒がず冷静に狙いを定め、雷華目がけて槍を突き出す……が、ダメージが蓄積している事もあってか動きが鈍く、雷華は華麗に宙を舞う事によって難なくそれをかわし、
「貴様の動きには、無駄が多すぎる!」
 そう指摘しつつ、彼女は地縛霊の脳天目がけて渾身の力を込めたクレセントファングを叩き込んだ。
「グッ……」
 思わず膝をつきかける地縛霊であったがなんとか堪え切る……が、
「その隙……もらった!」
 いつの間にか跳び上がっていた凪が続け様にクレセントファングを地縛霊の頭頂部へと炸裂させた。
 さすがの地縛霊も今度は耐えきれず、その場にガクッと両膝をついてしまう。
「ヌ……グ……」
 それでも地縛霊は槍を杖代わりにしてフラフラと立ち上がるものの……最早彼は立っているのがやっとの状態となっていた。
 そんな地縛霊をジッと見据えながら、夏野は前方の空間に魔法陣を浮かび上がらせて自らの魔力を高め、
「これで……終わりだ」
 突き出した掌の先に眩い閃光を放つ雷の魔弾をチャージし……それを押し出すようにして撃ち放った。
 正面から迫りくる魔弾からなんとか逃れようとする地縛霊であったが両足が言う事をきかず、もろに直撃を食らってしまう。
 それは先程彼が放ったものとは比べ物にならないほどの威力を持っており、僅かばかり残されていた地縛霊の体力もその一撃で全て尽き果てた。
 黒焦げとなった彼は力なく崩れ落ち、
「ミゴト……ダ……」
 最後にそう一言能力者達を称賛した後、彼はゆっくりと消滅していった。
「(むぅ、次はもっと穏やかな人になるんだよ〜)」
 消えゆく地縛霊にそう語りかけ(?)ながら、パールは仲間達とともにイグニッションを解除した。


「紙一重、ぎりぎりセーフでしたね」
 なんとか時間以内に地縛霊を倒す事ができ、ほっと胸を撫でおろす万葉。
 重傷中の彼女にとっては随分とキツイ戦いであったようだ。
「無念な気持ちは分かるけどぉ、死んだ人間が人様に迷惑をかけるのはぁダメだよね〜、死んだって事は、もうそこで終わっちゃったんだからさぁ……」
 どんな理由があろうと、それは許される事ではないというのが凪の考えであるようだった。
「被害者には安らかにという他ありませんね。ともあれ、これでここでのゴースト被害はなくなりますね。お疲れ様でした」
 仲間達に労いの言葉をかけつつ、洋角も無事に事件が解決した事に喜びを感じているようであった。

「どうだ……最後に本当の戦いを楽しめたか?」
 天へと昇っていったであろう男性の魂にそう問いかける沙希。
 彼女達の想いが通じたのかどうか……それは彼のみぞ知る、といったところだろうか。
「古来より伝えられし武術も捨てたものではないようだな」
 古き時代の技術と新しき時代の技術を融合していければ、より良い未来を作っていけるのかもしれない……と、雷華は思う。
「手合わせが出来て良かったわ。隠れた武術の使い手として、彼の事は私の記憶にとどめておくわ」
 今回の戦いは瑞麗にとって非常に満足のいくものだったようであった。
「そうですね、道場を残すことはできないですけれど、地縛霊さんのことは僕達が覚えておきましょう」
 瑞麗の言葉に頷きながら、地縛霊が安らかに眠れるようにと祈りを捧げるルエニ。
 たとえ人々の記憶から忘れされる事になったとしても、瑞麗やルエニは忘れる事はないだろう……名もなき槍の使い手の事を、そして彼が地縛霊となってまで守ろうとした大切な場所があった事を。


マスター:光輝心 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/10/24
得票数:カッコいい10 
冒険結果:成功!
重傷者:伊東・尚人(理の探求者・b52741) 
死亡者:なし
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