この身全てを捧げる


<オープニング>


●一つの嘘もなく
 トオルは高校の帰りに一人でブランコに腰掛けていた。
 一週間前までは、隣にもう一人腰掛けていた。隣にいたのは、大切な親友で、嘘をつきたくない相手だった。
 その日トオルは、嘘をつきたくないがゆえに、想いを告げた。
 親友は、苦笑いを浮かべて去っていった。俺、普通に女が好きだから、と。
 だからこの孤独は避けられかった運命で、けれど辛くないわけもなかった。
 この身全てを捧げても良いと思えるほど、好きだったのに。

「トオル……」
 気付くと、暗い公園のブランコの前に、少年が立っていた。トオルが想いを寄せた、一人の少年が。
「ケンタロウ、なんだよ、ひさし……」
 せめて明るく振舞おうと出した声は、ケンタロウの尋常でない面持ちに遮られる。
 ケンタロウは、泣いていた。
「トオル……、俺、お前を拒絶したのに、こんなこと、頼めた義理じゃないんだけどさ」
 消え入りそうな声でケンタロウが言う。
「お前の血、少しでいいんだ、俺に……くれないか」
 トオルは驚きをもってその言葉を聞いた。けれど、返事はすぐに出た。
「血だけで良いの? 何でもあげるよ。ケンタロウ」
 一つの嘘もなく、素直な言葉が。

●教室
「お集まりいただきありがとうございます」
 依頼を受けに集まった能力者に奥・弓木(運命予報士・bn0073)が一礼する。
「男子高校生のリビングデッドが現れました。今のところ被害はありませんが、同級生が血を与えています。このままではこの同級生は程なく殺されるでしょう」
 リビングデッドの名はケンタロウ。人としての理性はいまだ保っているが、今後もずっと保っていられるはずもない。
 普段夕方、彼らは公園のブランコに座りとりとめもないことを喋っている。同級生のトオルとはずっと一緒にいるが、他の一般人はいない。行動を起こすならばこの場所が最善の選択だろう。
「リビングデッドの退治、これが依頼の内容です」

「ゴーストの能力ですが、およそ問題はないでしょう」
 ケンタロウの能力は、拳による吹き飛ばしと自己強化だ。また、戦闘が始まれば付近から犬や猫のリビングデッドが加勢に現れるが、こちらも爪に麻痺効果がある以外、特別なことは何もない。
「リビングデッドとしては強力な部類でしょうが、今の皆さんでしたら普通に相対しても充分に勝てます」
 良い知らせ、なのだろうが弓木の表情に嬉しさはない。
「問題があるとすれば同級生の存在でしょうね」
 トオルは、リビングデッドとなったケンタロウの本当にすぐそばにいる。
「位置もさることながら……、同級生はリビングデッドに「全てを捧げても良い」と言っていますから、相手のために出来ることがあれば何でもするでしょうね」
 それがたとえ命を投げ出す選択であっても……。
「リビングデッドになった彼も、理性を保ってはいても同級生を殺す欲求が同居している状態でしょう」

「正直なところ、私には同級生のトオルさんが生き残る方が良いのか、ケンタロウさんに殺される方が良いのか、判断がつきません」
 弓木はため息をついてから微笑んだ。
「ですから、私からはこう言わせていただきます。「リビングデッドを退治してください」と。どうかお願いします」

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参加者
佐伯・朱鷺(ゆきの嫁・b18757)
真神・智尋(此花咲耶姫・b41226)
江田島・龍次(探索者・b43569)
山科・月子(ディープブラッド・b61466)
イクス・イシュバーン(高校生魔剣士・b70510)
桃宮・紫戟(五線譜の綺術師・b76106)
貴見・一成(闇夢断つ紫瞳の守護者・b77323)
リーシュ・ファンダメリア(知識を求める魔法猫・b82034)



<リプレイ>

●愛とは呼ばない
 夜の公園。ブランコに二人の少年が座っていた。交わされる言葉はぎこちなく、けれど最初から二人そこにいたように隣同士が馴染んでいた。
「すみません、ケンタロウくん……ですか?」
 イクス・イシュバーン(高校生魔剣士・b70510)が公園の入口側から声を掛けるのと同時に、少年の一人、ケンタロウが目を上げた。
「キミに話があって来ました」
 イクスの言葉にケンタロウは怯えた猫のような目を向け、けれど渇いた声で答えた。
「誰ですか?」

 ケンタロウは死んでいる。
 リビングデッドは愛してくれる存在の血を求め、やがて肉を求め、そして命を求める。
 イクスの分かりやすく、しかし信じがたい説明に、ケンタロウは戸惑いしか示せなかった。
「ま、待って。だってケンタロウは生きているじゃないか」
 ケンタロウを庇うように、トオルが言葉を代わる。
「トオルとやら。お前は彼の死を『知らない』のか『認めたくない』のか、どっちだ?」
 口を開いたのはイクスの隣にいた江田島・龍次(探索者・b43569)だった。
「……!?」
 トオルは一瞬口ごもった。悪戯を暴かれた子供のような顔で。
「だって、事故は……別に大事なかったって、かすり傷だったって……」
 龍次は、トオルの言葉でおおよその事情を汲んで短くため息をついた。
 死者のリビングデッド化は時に奇跡の生還に見える。そう思いたがるほどにそう見える。
 なおもケンタロウに近寄る龍次の前にトオルが立ち塞がる。龍次はそのトオルの喉元に刀を抜いて突き付けた。
「遅かれ早かれそいつはお前を殺す。そうなったら後は無差別だ。お前の望みは、そいつを人喰らいの『怪物』にすることか?」
「わかんないよ……。でも、ケンタロウが殺されるくらいなら、怪物でも生きてて欲しい」
 刀を突き付けられて足と声を震わせながら、それでもトオルはそう言った。
「逃げるなよ」
 佐伯・朱鷺(ゆきの嫁・b18757)が言った。
「これが……、お前があいつに隣にいてほしかった関係か、形か? 覚悟して告ったんなら、自分の気持ちから目逸らすな」
 トオルは、朱鷺に敵意の目を向ける。
「甘やかし尽くすのは相手を思う、慕う愛じゃない……」
「そんなことっ! ……っ!」
 トオルが動いた。ケンタロウを守ろうと、寄り添うように。
 だが、いつの間にかトオルの足元にいた薄桃色と三毛、二匹の猫が、それを許さなかった。
「させないわ」
 猫になっていたリーシュ・ファンダメリア(知識を求める魔法猫・b82034)が。
「申し訳ありません」
 真神・智尋(此花咲耶姫・b41226)が、二人の間に割って入る。
「ど、どいてよっ!」
 二人を押しのけようとするトオルの表情には余裕がない。
「キミの望みと私達の望みは別物なの。諦めなさい」
 トオルを後ろから山科・月子(ディープブラッド・b61466)が引き剥がした。
「……本当に、悪夢になるけど」
 貴見・一成(闇夢断つ紫瞳の守護者・b77323)の放った悪夢爆弾が破裂し、トオルは月子の腕の中で目蓋を落とした。
「ケンタ……ロ、ウ」
「すべてを捧げるのが愛……それは間違いだよ」
 ぽつりとつぶやかれた一成の言葉は、トオルの耳には入らなかった。

●怪物の中の恋人
「……何してんだよ」
「「!!」」
 突如ケンタロウから放たれた殺気に、全員が反射的に戦闘姿勢で応じた。
 ケンタロウの肩が人にはあり得ない盛り上がり方をして、服を裂く。
「トオルになにしてんだよぉぉ!」
「バリア張ります……気をつけて!」
 ケンタロウの自己強化に合わせて一成がサイコフィールドを広げる。
「……やっぱり」
 桃宮・紫戟(五線譜の綺術師・b76106)は、複雑な思いを抱きながらケンタロウの言葉に頷いた。
 彼は自分が命を狙われていながら、一番最初にトオルの名を叫んで怒った。少なくとも、そのくらいにはトオルのことを大切に思っている。
「トオルさんは、決して傷つけさせない」
 決意と共に、紫戟が斬り込んだ。
「申し訳ありません……貴方をこれ以上トオルさんに近づける訳にはいかないんです」
 智尋が霧影分身して紫戟の脇を固めると、智尋の眼の端に影が掠めた。
「左右から犬猫来ます! 三、いえ四匹です!」
「見えてるわよ。遊んであげるわ」
 智尋の後ろ、月子の呪髪が、黒燐の光を帯びて靡く。
「全ての贄を喰らい尽くしなさい!」
 笑みと共に月子が手をかざすと、花びらのような黒燐が舞い上がり、右手の犬リビングデッド二匹を包み込む。
「最近寒くなってきたもの。炎をプレゼントするわ」
 反対方向、猫たちへはリーシュが魔弾で応戦する。直撃をもらった猫は、身を焼く炎に苦しみの声を上げた。
「どけよ……どけってんだよ!」
 ケンタロウの重い拳は立ちはだかる朱鷺の体幹を射抜く軌道だった。だが、朱鷺はそれを刀で止めた。
「……何か言える立場じゃねんだけどな」
 朱鷺は守ってくれた愛刀を握り締めてケンタロウを見つめ返す。
「テメェの都合で蹴っといてよ、自分に向けられた好意を知っちまってるから、そりゃ切羽詰まったら甘えちまうよな」
「んだよ、お前に何がわかんだよ! いいからどけよ!」
「……わかんだよ」
 苦々しい顔のまま、朱鷺はそうつぶやいた。
「さあ、思いの丈をぶつけてきてください」
 飛び込んだ智尋の霧影爆水掌は拳をぶつけて勢いを殺され、返礼の一撃は智尋を公園の角まで吹き飛ばす。
「……全力で受け止めます」
 空中で身体をひねって体勢を立て直した智尋は、まるでそれが義務であるかのように血も拭わず痛みも顔に出さず、ケンタロウへと続けて飛び掛った。
「うるせぇええ! 放せよ、トオルに何かしやがったらぶっ殺すぞ!」
 猫の一匹に突き立てた黒影剣を引き抜き、イクスがケンタロウへと振り返る。肩に異形の力を宿し、返り血を浴びたケンタロウへと。
「キミはもう、気付いているんじゃないのか?」
 トオルに仇なすのは、一体どちらなのか。

「今の彼は……本当に君の知ってる『彼』か?」
 トオルの側についていた一成が、トオルに言った。
「君はいい……けど、いずれ彼は他の人も襲うようになる……それでもいいのか?」
 眼を覚ましたトオルは、叫びながら人を殴り続けるケンタロウを見ながら、掠れた声でただ、わからない、と言った。
「よく見ろ。あれがお前が『愛した人』なのか? お前はいったいアイツの『何に』惚れたんだ?」
 吹き飛ばされた龍次が血を払って立ち上がる。
「分からない、分からないんだ……。だって、酷いことになってるけど、あれはケンタロウなんだ」
「怪物になっても愛するというのならそれは『愛』なんかじゃない。『狂気』だ」
 トオルの頬を涙が伝う。蒼白になったトオルは、首を振った。
「何が起こってるのかはわからない。けど、こうなってまでケンタロウは自分より先に人の心配をする! あれは僕の知ってるケンタロウなんだよ!」
 龍次が苛立たしげに目を伏せた。あれを見てなおそう言ってしまうのならば、それは紛れもなく狂気なのだろう。
「そんな彼ですら血を求めに来る。リビングデッドというものはそういうものなんだよ」
 一成が感情を抑えた声でそう言った。

●人として
「キミがどう思っていようと、親友だったトオルくんの気持ちは判ったはずだ」
 イクスがケンタロウに告げる。
「お前が彼をどう思っているのかは知らん。ただお前は彼の『愛』を自分が生き延びるために利用した。俺はそれが気にくわん」
 龍次の直截な物言いに、ケンタロウは一度息を吸って、だが言葉を捜して目を泳がせた。
「俺……、あいつがそこまで真剣だって、こうなるまで知らなかったんだ」
 ケンタロウも、涙を流していた。
「だから、……俺も、真剣に考えなきゃって」
「楽な方への逃げ道として利用してっだけで……その程度しか想ってやれてねぇんだよ」
 まるで刃のような朱鷺の言葉に、誰よりも朱鷺が血を流しているように見えた。
「朱鷺さん。そのあたりで……」
 誰よりもケンタロウの気持ちを思い遣っていた紫戟が優しく諌める。
「思ったよ。あいつを傷つけるぐらいならいっそ離れよう、って」
 ケンタロウは静かに涙を流しながら朱鷺を睨みつける。
「けど、どうしてもダメだった。苦しいんだよ。渇いて仕方ねぇんだよ! んで、あいつは毎日ここで俺を待ってるんだよっ!?」
 ケンタロウの一撃が朱鷺を飛ばす。体勢を崩した朱鷺は、それでも視線をケンタロウから逸らさない。
「それでも、我慢すんだよ! 想ってんなら!」
 朱鷺の言葉に、ケンタロウは何も言えなかった。
 右脇で、月子の黒燐が爆ぜる。リビングデッド犬二体、猫二体を葬り去った月子がその視線をケンタロウへと向ける。
「待たせたわね。一気に畳み掛けるわよ!」
「もう片付きましたか……残るは彼だけ、ですね」
 ケンタロウの進攻を抑え込んでいたイクスが頷いて、一度だけ後方のトオルを見遣った。
「キミの『死』を彼に見せる……」
 イクスがケンタロウに告げる。
 その言葉は、まるで自分の覚悟を決めるために吐かれたような響きだった。
 イクスの黒影剣は、踏み込みが甘い。
 反撃できると踏んだケンタロウが一歩前に出て拳を合わせる。
「あ……」
「月子さん」
 ケンタロウが踏み込んだそこは、イクスの合図を待っていた月子のキルゾーン。
「ここで終わりよ」
 側頭へと飛んできた月子のローリングバッシュを防御することもままならず、直撃を受けたケンタロウは意識を刈り取られ、ひざをつく。
「どうか、安らかに」
 紫戟は短く祈りを告げ、静かに一閃する。
「……かはっ!」
 目を見開いて意識を取り戻したケンタロウだったが、いかに人外といえその傷が致命傷であることは、誰にも見て取れた。
「……ごめんなさい。せめて、やすらかな眠りを。おやすみなさいませ」
 智尋が目を閉じてそう言った。
「ト、オ、ル……」
 ケンタロウは、音にならない声で最期にそう言って、果てた。
 彼がゴーストでさえなければ、どんなあり方も肯定出来たのだ。
「自分の成すべきことをする……でも気分は良くないわね」
 リーシュが寂しそうに言った。もう何も言わなくなったケンタロウを見つめて。
「……人として、終われたんですかね」
 イクスが応える。
 終わらせることしか出来ないなら怪物ではなくせめて人として。それが、今の彼らに出来る全てのことだった。

●生きる者の意味
 一成が、抱き止めていたトオルの手を放す。
「ケンタロウ! ケンタロウっ! うわあああああああああ!!」
 すでに半狂乱だったトオルは、ケンタロウの亡骸を抱いて叫び泣いた。
「ケンタロウに殺されたほうが良かった?」
 リーシュがぽつりと尋ねる。
「僕は……、僕はそれでも良かったんだ。それを、なんで……」
「そんなことを言わないでください」
 応じたのは智尋だった。
「恨むならいくらでも恨んで構いません。でも、トオルさんの人生はこれからなんですよ」
 ゴーストがいる限り、殺される人がいる。死ぬべきでない人を、助けなければならない。それは、崩れてはならない能力者の誓いであり、義務である。
 ゴーストに殺された方が良かった。その言葉は、あまりにも前提を揺さぶりすぎる。
「トオルさん……。あなたは生きて……、これからも幸せに生きていくべきです」
 紫戟がたどたどしく言葉を紡ぐ。
「あなたには、まだ残された時間があるのだから……。そして、あなたの心友さん――ケンタロウさんと同じように、綺麗な心を持っていらっしゃるから……」
 ケンタロウの名を聞いたトオルは、つぶさに顔を上げて紫戟を見る。
「ケンタロウ、……綺麗だったんだ。いっつも自分のことは後回しで人の世話ばっか焼いてさ……」
 紫戟を見るトオルの目から、透明な涙が溢れ続ける。
「だから、嬉しかった。血をくれって言われた時、やっとケンタロウが自分のわがままを言ってくれた。って……」
 トオルの目が一成に向く。
「あの時、もうケンタロウはケンタロウじゃなかったんだね?」
「うん。そっくりの人格だけど、別物だよ」
 一成が、一度言って受け入れてもらえなかった説明をもう一度する。
 トオルは落ち着いているというより、何か自分が納得できる理由を探そうとしているように見えた。
「生きて下さい」
 紫戟がもう一度、トオルに言った。
 トオルは、何かを探すように公園のブランコへと視線をさ迷わせ、答えなかった。
「しばらく悪夢を見ることになるけど……ごめんね」
 一成が謝って、トオルを眠らせる。
「夢の時間は終わりだ。後はお前次第だ」
 龍次の言葉を聞きながら、トオルは目を閉じ、公園に横たわった。

「全てを捧げても良い……か」
 公園を出たところで、イクスがつぶやく。
「そんな人がいた事はきっと幸せだと思うわ」
 月子が言うと、イクスが頷いた。
「そうですね」
「私にもそんな人が出来るかしら?」
 月子が夜空を眺めながら言うと、イクスが小さく笑った。
「きっと出来ますよ」
 答えながらイクスは思う。
 嘘をつきたくないから想いを告げる。それがどんなに強くて真っ直ぐか。
「僕には、真似出来ないかな」
「参加し始めた時は、何かできると思ったのですが……、いざこうして現地に赴くと言葉が浮かびませんね……」
 紫戟は花束を公園の側に置き、目を閉じて祈る。
「同性愛、ね……。愛の形も考えも人それぞれ、私は、ありだと思っているわ」
「私もそう思います」
 リーシュの言葉に紫戟は心から頷く。
「ゴーストでさえなければ、ね」
「分かってくれると良いんですけどね」
 リーシュの言葉に一成が頷いた。ゴーストは人ではない。怪物と分かってもなお向けられる気持ちは愛とは呼ばない。
 紫戟は自問する。私は、二人に対して何が出来ただろう。
「銀誓館での任務では、こういう事も在るんだな……。重い重い――教訓だ」
 紫戟が目を閉じて言った。
 眠ってしまったトオルに向けて、智尋は祈っていた。
「この出来事を糧にして、強く生きてください。貴方の道行きが確かなものとなりますように」
 残されたトオル。朱鷺はそれを見遣ってため息をつく。
「……っわかんねぇんだよな、自分のしてる酷さをよ、本人はさ」
 言葉は、亡きケンタロウへ向けて。そして、自分へ向けて。
「どうしたんですか?」
「いや、まあ、いろいろだ」
 智尋の問いを適当にごまかして、朱鷺は苦笑する。
 生きていた方が良いか、死んだ方が良いか、そんなことは誰にも分からない。が、智尋の言っていたことは一つの真実だ。
 出来事を糧に出来るのは、不幸を意味あるものに出来るのは、生きている人間だけなのだ。
「生きてりゃ、振り返れるもんな」
「……そうですね」
 朱鷺と智尋が力なく笑い合う。
「奴もいつかは世界結界によって親友の死を受け入れることが出来るさ。俺達と違って、な」
 龍次が皮肉げに言った。
 今日の体験はいずれ薄れ、何かに置き換わる。
 二人の生き様を覚えておけるのは、能力者である彼らだけだ。


マスター:寺田海月 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/11/23
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