ジハード救援作戦:キリングホール


<オープニング>


 『ジハード』のため、東南アジアを東進していた巡礼士と人狼騎士団。
 彼らカンボジアで「ルールー」に率いられた数万体のリビングデッドに襲撃を受けたという連絡は、銀誓館学園に既にもたらされていた。
 この襲撃を受けて巡礼士や人狼騎士達はアンコール・ワット遺跡に撤退、籠城することを余儀なくされている。
 彼らを救い出すべく能力者達による救援作戦が行われようとしているが、その一方で、解決しなくてはならないもう一つの問題があった。

「何故、こうも大量のルールーが一度に出現したのかという原因の究明と、その排除だ」
 説明に現れた王子・団十郎(運命予報士・bn0019)の言葉に、能力者達は頷く。
 異形陣営の中でも、ルールーは謎が多い存在だ。
 何せ、他のゴーストのように、『何故存在するのか』さえ分かっていない。
 今回も『かつて滅びたゴーストを抗体ゴーストとして復活させる』能力の他に、『死体からリビングデッドを創造する』能力を有することが判明したばかりだ。

「これに関しては、運命予報による情報収集も、あまり芳しくないんだが……おそらく、その原因との関係がありそうなものがある」
 言って、団十郎は能力者達の前に一枚の写真を示した。
 学園が今回の事件を受けて現地に関する情報収集を行っていた際、情報網に偶然引っ掛かったものらしい。
 写真に映し出されているのは、カンボジアのジャングル。
 問題は、そのジャングルの中に忽然と現れている巨大な『大穴』だった。
 そこにあるべきジャングルの木々はおろか、大地までもが抉られたかのようになくなり、底の見えない黒々とした真円がぽっかりと口を開けている。
 だが、能力者達の注目を引いたのは、その穴ばかりではなかった。
 その写真には、穴の中に存在する巨大な『何か』の影が映し出されていたのだ。

「この大穴……そして中にいる『何か』が、今回のルールー出現に大きく関わりを持っているであろうことは、ほぼ間違いないだろう」
 だとすれば、この存在を撃破することが出来たなら、異形陣営に大きな打撃を与えることが出来るかも知れない。だが、そのためにはジャングルを抜けて大穴に到った上で、正体も分からない存在に立ち向かわねばならないのだ。
 タイミングとしては、他の能力者達がルールー側に攻撃を仕掛け、敵陣が乱れた隙に、この大穴を目指すこととなる。
 周囲はジャングルで身を隠す場所は多いが、ルールーやリビングデッドが大量に徘徊している。完全に見つからないようにするのは夢物語だろう。
 日本に出現するような強力な抗体ゴーストを相手にするのと比べ、一戦一戦は楽かも知れないが、その数が問題だ。幾ら能力者達が強くとも、《生命賛歌》無しに、この数の敵を相手にしてはいられない。
「はっきり言ってしまうが、至難の業だ。大穴に辿り着いても、この存在がとてつもない強敵だったり、俺では想像もつかないような能力を持っている可能性さえある」
 不可能と言える理由は幾つも思い当たるが、成功を容易にさせるような要因は乏しかった。
 顔を見合わせる能力者達に、団十郎を下げる。
「構わないという者だけ、志願してくれ。一応付け加えておくと、時には退く勇気も必要だ」
 仮に倒せずとも謎の存在の正体を突き止められれば、それだけで重要な情報とはなるだろう。
 いかにして大穴に到り、謎の存在に挑むべきか。能力者達は、検討を開始するのだった。

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参加者
天城・星夜(紅龍に選ばれし誠実なる剣士・b00064)
月代・界(紫紺の闇・b01411)
桐嶋・千怜(禍凪・b01805)
不破・零夜(漆黒の剣聖・b02805)
灯神・漣弥(巧速の探索者・b03209)
水無瀬・葵(黒刃の屍狩者・b03253)
イルミット・ペルヴェール(フレイムサイト・b10863)
美崎・曜子(人形小町・b15178)
姫琴・睦美(推定無罪・b15748)
フィアレス・セルシウス(リスクファクター・b20813)
加奈氏・さりあ(決戦仕様・b26943)
沙更女・粗目(蛇の心臓・b40178)
ラシェリア・グリーンアイズ(眠り狼・b40698)
シュベルト・オセ(アイゼルンゲシェプフ・b47155)
土岐・緋雨(高校生書道使い・b47789)
宝蔵院・凛(天覇ぜっそー・b51107)
央寺・セツナ(元気な子・b51243)
降魔・散人(反武術・b52388)
桂木・美佐緒(ずんずん調査隊・b53235)
風雅・晶(陰陽交叉・b54764)
時任・篠(朧夜の藍氷華・b58875)
間引・法螺乃(黒狐忍・b60680)
忌野・黒雛(黒鉄の茨・b64073)
クロエ・ノーティス(狼の首輪・b65526)
天守・矜星(全てを振り切る灼熱の最高速・b67547)
八握脛・鹿臣(梓英を追う者・b67984)
伏管・煉(時計仕掛け・b71013)
旋堂・紫瑠華(ダンシングタイフーン・b76632)
犬神・リディヤ(ラビリンスドール〜白夜迷宮録・b77255)
テレサ・ヴェルサーチェ(皆既日食の聖女・b77357)



<リプレイ>

●決死行開幕
 カンボジアの国旗にも描かれているアンコール・ワット遺跡。本来ならば多数の観光客でにぎわう遺跡の周辺は、無数の「死」の気配によって取り囲まれていた。
 大量のゴーストの出現によって常識が一時的に失われた遺跡周辺に立ち寄る者もなく、周辺は異様な雰囲気に包まれている。
 遺跡を包囲するのは抗体ゴースト「ルールー」、そして彼女達が呼び出したリビングデッドの大軍勢だ。「ジハード」のため、ユーラシア大陸をここまで踏破して来た巡礼士と人狼騎士団は遺跡内部での籠城戦を強いられていた。
「まぁ、何事もなく終わるとは思いませんでしたが……」
 とは、自身も巡礼士であるテレサ・ヴェルサーチェ(皆既日食の聖女・b77357)の弁である。
 巡礼士達を救援するべく、日本から駆け付けた銀誓館学園の能力者達は戦闘を開始しようとしている。その一方でテレサをはじめとした者達もまた出立せんとしていた。
 その目的は、ジャングルに出現した巨大な穴を調査し、その内部に見えた謎の存在を撃破することにある。

「科学人間の人、これよろしくね」
 桂木・美佐緒(ずんずん調査隊・b53235)が仲間達に配布するのは、大穴のおおよその予測地点を示す地図だった。スーパーGPSを発動させた降魔・散人(反武術・b52388)やクロエ・ノーティス(狼の首輪・b65526)、フィアレス・セルシウス(リスクファクター・b20813)らが自分達の現在位置と、予測地点を照らし合わせる。
「アンコール・ワットの北ですね」
 クロエが口にするのは、地図に記された問題の大穴の位置だ。戦場となるアンコール・ワットからは、離れた位置だ。ジハード救援のために遺跡周辺で戦闘を行う、他の能力者達の直接的な協力は期待出来ない。
「ジャングルで慎重に移動することを考慮しても……私達能力者の身体能力なら数時間程度ですか。ところで、よく位置が分かりましたね?」
「……運命、予報……?」
 散人、フィアレスの問いに、美佐緒は肩をすくめた。
「いや、場所分かってたら王子先輩もはっきり教えてるでしょ。でも、あれ航空写真だったから」
「周囲の地形や植生も、おおよそは分かりましたしね」
 共に調査した美崎・曜子(人形小町・b15178)が頷く。僅かな手がかりではあったが、彼女達はカンボジア到着までの間で、情報の確度を高くすることが出来ていた。
「これで最短ルートを取ることが出来るか」
「ジャングルとはいえ、科学人間の力があれば迷う心配もないでしょうね」
 斥候役を自任した不破・零夜(漆黒の剣聖・b02805)、沙更女・粗目(蛇の心臓・b40178)も安心したように言う。間引・法螺乃(黒狐忍・b60680)は、頷くと地図を畳んだ。
「では、そろそろ刻限だ。出立するとしよう」
 荷物を担ぎ、法螺乃はイグニッションカードを取り出す。
「イグニッション」
 一瞬で忍者装束姿に変じた彼に続き、能力者達は次々と本来の能力を解放していった。使役ゴースト達も姿を現し、自らの主に伴う。
「死地に赴くもまた一興か」
「大穴の中にいるのが何なのか……それだけでも、掴んで帰らないとね!」
 八握脛・鹿臣(梓英を追う者・b67984)と、央寺・セツナ(元気な子・b51243)の呼び出したスカルロードが隊列を組んだ能力者達の前に立つ。
「いこうぜ、オレ達以外に誰がやれる?」
 天守・矜星(全てを振り切る灼熱の最高速・b67547)が不敵に告げる。
 アンコール・ワット遺跡周辺で戦いの響きが起こるのと前後して、能力者達はその決死行の一歩を踏み出した。

●密林を往く
「……どうして、いつも……森で、争いが、起こるのか……」
 昼なお暗いカンボジアのジャングルは、森での暮らしに慣れたラシェリア・グリーンアイズ(眠り狼・b40698)をしても、慣れぬ雰囲気を覚えさせる。
 カンボジアは乾季に入っているが、日の当たらないジャングルの地面に落ちた葉は、能力者達の足元で湿った音を立てる。
 能力者達は矢印状に『鋒矢の陣』を組み、ジャングルを進んでいた。
 先頭の△部分にはラシェリアや姫琴・睦美(推定無罪・b15748)、宝蔵院・凛(天覇ぜっそー・b51107)、それに曜子、鹿臣、セツナ、クロエらが入り、斥候を務める形で、零夜、粗目、法螺乃、伏管・煉(時計仕掛け・b71013)の4人が先行する。
「クロエちゃんや子供達は生きて帰らせないと……」
「そう焦るな」
 仲間を無事に帰還させようという意志を固め、一人先行しようとしていた煉を、零夜が止めた。
「それに俺から見れば、お前も守るべき後輩の一人だしな。先行するのは、任せておけ」
 粗目は猫、法螺乃は狐に、それぞれ姿を変えることが出来る。ジャングル内では本来存在しない獣ではあるが、これらの能力は木々に身を隠す上では非常に適しているといえた。こうして彼ら11人の『補助班』が進む後方に、謎の存在と戦うため、力を温存する本隊が縦列を作って続く。
「あっ……もう消えちゃいましたか」
 進軍開始と同時に加奈氏・さりあ(決戦仕様・b26943)が出したリフレクトコアは、出発して早々、敵が出現する前に消え去っていた。360度、どの方向からの攻撃にでも対応できるように……との意図ではあったが、
「温存しておいた方が良いんじゃない?」
「そうですねぇ……」
 ケルベロスオメガを連れたイルミット・ペルヴェール(フレイムサイト・b10863)が背後から指摘するのに、さりあは肩を落とした。12回使えるとはいえ、この調子で使用していては、せっかく力を温存している意味も無い。

 実際に依頼の説明に当たった団十郎はさておき、この困難な依頼に当たる能力者達を、多くの学園関係者は『決死隊』と捉えていた。一方で依頼を受けた者達の生還の意志は固い。生還が成らなければ、情報を持ち帰ることさえ不可能だという単純な理解は、皆も共有している。
「俺には、帰るべきところがある」
 そう嘯くのは、天城・星夜(紅龍に選ばれし誠実なる剣士・b00064)。帰るべきところがあるのは、仲間達も同じ……。言葉とは裏腹に、彼は皆の生還を、最優先のものと位置付けていた。
「ジハード救援と、今回の原因究明……為す為に――必ず、生きて帰る……です!」
「倒せなくとも少しでも長く交戦し、より多くの次へ繋がる情報を持ち帰らねばなりません」
 フィアレスの言葉に、風雅・晶(陰陽交叉・b54764)が同意を見せる。一方で撃破を最優先に考える土岐・緋雨(高校生書道使い・b47789)などもおり、30人からの意志を完全に統一するとはいかない様子ではあった。
(「決死の志を持ち、正体不明の存在を必ず撃破する……私達は、そのためにこそ集ったのではないのですか?」)
 内心の疑問を顔には出さず、緋雨は歩みを続ける。
「巨大な何か……十三なら喜んで戦いに行くところだな。倒すのは難しくとも、せめて少しでも多くの情報は引き出して見せよう」
 そうでなければ、以前共に抗体ゴーストと戦い、命を落とした妖狐達に顔向けが出来ないと、水無瀬・葵(黒刃の屍狩者・b03253)は剣の柄に手をやった。
「しかし、この森は酷いな……」
 周囲3kmにゴーストが存在するか否かを検知する葵の死人嗅ぎは、彼らがゴーストの只中にいる事を示していた。
「敵地……か」
 葵はその言葉の意味を問い直すように、ひとつ鼻を鳴らした。

「しかし、これでは前後の連絡も取り難い……」
 最後尾からシュベルト・オセ(アイゼルンゲシェプフ・b47155)は整った眉を軽くひそめた。ジャングルの木々が生い茂る中、こちらの姿を見咎めにくいという事でもあるが、反面、敵を遠くから捕捉するのも難しい。
「やはり樹が邪魔だな」
 桐嶋・千怜(禍凪・b01805)が一言で状況を言い現した。木々が生い茂るジャングルの中で隊列の先頭付近を視界に収めようとする余り、隊列は自然と前後を縮めるものとなってしまっている。
「間が狭まっていますね。意識して距離を取らないと、こちらも攻撃を受けます」
「それでは、役目を分けた意味がなくなってしまいますね……分断されても困りますが」
 月代・界(紫紺の闇・b01411)に、忌野・黒雛(黒鉄の茨・b64073)も指摘する。正体不明の存在との戦闘を望む黒雛だが、ルールーとの交戦を何度も繰り返せば、その目的も果たせないだろう。
「とにかく、可能な限り戦闘は回避しましょう」
 隊列横側に意識を向けながら、犬神・リディヤ(ラビリンスドール〜白夜迷宮録・b77255)はシュベルトに告げ、彼が頷く。
 敵発見の報が、斥候役から補助班を通じ、伝言ゲームのようにして本隊へ伝わって来たのはその時だった。
「粗目から連絡があった。前方、敵が来るらしい。迂回すると言ってる」
「戦うなら手を貸すところだけどね」
「まあ、戦わないのでしたら、それはそれで問題は無いでしょう」
 時任・篠(朧夜の藍氷華・b58875)が口にした内容に、旋堂・紫瑠華(ダンシングタイフーン・b76632)、灯神・漣弥(巧速の探索者・b03209)が肩をすくめる。
 イルミットは、ふと篠に尋ねた。
「その辺りの判断は、補助班に任せてるけれど……数は何て?」
「見えただけでおよそ40」
 篠が短く答えた数を聞き、能力者達の顔が強張る。
「……どれだけ敵いるのよ、ここ?」
 紫瑠華がうんざりとした様子でギターマシンガンを担ぎ直した。進路を微妙にずらした能力者達は、ゴースト軍団のいる位置を避けながらジャングルを進んでいく。

 能力者達は、迂回に迂回を繰り返す事となっていた。斥候役の零夜は交戦する敵の数を12体と定義していたが、彼はこの認識が実情とかけ離れたものであった事を痛感させられていた。
 遭遇する敵集団はルールーだけでも最低10はおり、そこにルールー達によって地中から呼び起こされたリビングデッドが加わって来るのだ。
 再度の迂回を受け、睦美は滲んだ汗を拭うと小さく息をついた。
「リビングデッドは、ルールーに従っているだけでしょうが……多過ぎますわ」
「……アンコール・ワットを包囲しているリビングデッドが数万でしたか」
 曜子は改めて、その事実を確認するように呟く。
「私達が遭遇したものなんて、それに比べれば僅かでしかありませんね……とはいえ」
「現状で、まともに相手をするわけにもいきませんからね」
 曜子の言葉を、凛が引き取った。
「私達の目的は、ルールーの相手をすることじゃないですから」

(「……まずいな」)
 前方に新たな敵の一団の姿を認め、隊の先を行く法螺乃は後方の仲間達にそれを伝えるべく戻りつつ思考する。迂回に迂回を繰り返す彼らのルートは、当初の想定から遥かに時間のかかるものとなっていた。
 科学人間の存在ゆえに進路を見失ってこそいない。
 だが、このような行動を取る以上、敵を早期に発見し続けられるとは限らないとは、誰しもが予測することだった。
 そして……。

「いけない……! 横、来ます!」
 側方を警戒していたリディヤが仲間達に警告を発したのは、さらに何度目かの迂回行動を取った直後だった。
「敵から逃れた直後に、また別の敵ですか……」
「大穴方面から南下して来たの?」
 さりあ、美佐緒が詠唱兵器を構えながら、リディヤの視線の先を見る。
 こちらに気付いたらしきルールーとリビングデッドの一団が、矢印状の陣形の側面を目掛け、一斉に押し寄せて来ていた。テレサがその突撃を食い止めるべく、戦旗を撃ち振るう。
「これでは、撃ち漏らしがどうとか言っている場合ではありませんね……!」
「態勢を立て直せ! 補助班、頼むぞ!」
 シュベルトの声が飛び、隊列の前方にいた者達が向きを変えた。
「この様なところで……!」
 凛がリビングデッド達の只中へと飛び込んだ。華麗なフットワークに対応できぬリビングデッド達が、回し蹴りに足を刈られて薙ぎ倒された。打撃された敵に目掛け、睦美が手をかざす。
「まとめていきますわよ……!」
 吹雪の竜巻が吹き荒れ、周囲のジャングルの木々がおそらくは芽生えた時以来初めての寒さに凍りついた。直撃を受けた敵が次々と倒れ込み、同時に粉々に砕け散り、消滅していく。
「さっさと片付けよう!」
 セツナのスカルロードが前列にいた別のルールーを切り倒し、残るは後方にいたルールー達だけとなった。だが、残ったルールーの見せた動きにラシェリアは総毛が逆立つのを覚える。
『るーるー、るるー』
「まずい……下がって!」
 スコップをかざし、ルールー達はそれを地面に突き立てる。
 掘る動作と共に地面を割って現れるのは、全身に土を纏った白骨死体。一斉に首を傾け、リビングデッドの群れは能力者達を睨み付ける。
「まだ増えるんですか!?」
 咄嗟にライトニングヴァイパーを放ち、敵群を撃ち崩しながらクロエが苦い声を上げる。煉の右足が力強く踏み出され、ジャングルの地面に瞬間、波紋が生まれた。走った衝撃が、群がるリビングデッドをまとめて吹き飛ばし団子状態としながら、後方のルールー達を見据える。
「呼び出し尽くしたわけじゃなかったのか……」
「あるいは、この地点ではまだ呼び出されていないというだけかも知れないな」
「何にせよ、回避方針は正解だ。こんな数を連戦していたら、アビリティが保たない!」
 煉の震脚で密集状態になったリビングデッド達の中に切り込むと、鹿臣は虎の子の断罪スピナーを発動させた。肘から生えた刃がリビングデッド達を薙ぎ払う。
「ルールー……狙って、下さい……!」
「分かりました!」
 本隊の射撃可能な者達に頼みながら、フィアレスも両手の詠唱ライフルでルールーを狙い撃つ。応じた散人のブラックボックスから電撃が撃ち出され、茂みの向こうに僅かに見えたルールーの1体を打ち砕いた。
 紫瑠華のギターマシンガン、リディヤの処刑鞭が、残るルールーに打撃を与えていく。
「ルールー自身も強くはない……問題は数ですね」
「……30人いれば、数戦はなんとか」
 粗目のぶちまけた漫画原稿がルールーを巻き込んで切り裂き、ラシェリアの黒燐弾が現れたばかりのリビングデッドを喰らっていく。
 ルールーさえ倒してしまえば、増援を出されることも無い。
 この密林にどれだけの屍が眠っているのかと暗澹たる気分になりつつも、能力者達はリビングデッドを徐々に駆逐していった。
「これで、粗方片付きましたね」
「……っ! いけない!」
 だが、リビングデッドが、白骨のどこから出ているのか出しているのか分からない現地語で何事かを言うのを耳にして、漣弥の目が細められた。
「『他の者に知らせろ』と言っています! そいつを逃がさないで下さい!」
 出発前に学園に対してメガリス『お喋りカラス』の使用を申請していた彼は、リビングデッドが発したカンボジアの現地語を完全に理解していた。咄嗟に走った晶の刀が一閃された。白骨姿のリビングデッドの胸骨から背骨までがまとめて断ち割られ、地面に崩れ落ちた骨が動きを止める。
「危うく面倒なことになるところでしたね」
「……いえ、もう遅いかも知れません」
 晶の言葉に、黒雛は赤手を下ろしながら顔に緊張を漲らせた。彼女が見る先にある光景に、星夜が苦々しげに呟く。
「気付かれてしまったか……」
 木々の向こうに翻るのは、ルールー達の鼠色のスモックだった。
「戦いが長引いたせいか……それとも、どこかで迂回した時からついて来ていたのか」
 アビリティを温存した千怜は、術扇を構えてそちらを見た。だがルールー達はこちらに近付かず、スコップで地面を掘り返す。
「またリビングデッドを出す気か!」
「急ごうぜ。構っちゃいられない」
 続々と増えていく敵の気配を感じながら、矜星が皆に促した。能力者達はそれに同意し、即座にその場を後にする。
「正体不明の大穴……やっぱり中にいるのはルールーの親玉でしょうか?」
 ルールー達が消えた痕に一瞬視線をやり、凛は本隊の仲間達の前に出た。

「るーるー、るー」
 能力者達の後方で湧き出た白骨の群れは、ルールーの指示を受け止め能力者達を追って走り始める。森に満ちる死の気配が、能力者達を押し潰そうとしていた。

 敵勢力の圧力から逃れるべく、能力者達は速度を上げ、森の奥へとひた走る。
 全力疾走を余儀なくされた能力者達は、これまでのように警戒態勢を取ってはいられなかった。
 速度を上げると共に、緑の木々が、一気に後ろへと流れていく。
「振り切れますか……!?」
「無理でも走るしかないよ! 時間は待ってくれないからね!」
 クロエと煉が交わす言葉も、自然と声を張るものとなる。
 追跡して来るルールーとリビングデッド達を振り切れぬまま、能力者達は森を駆け抜けていった。リビングデッド達は追跡の手を緩めず、遠距離攻撃が可能な者が、時折木々の向こうからすれ違いざまに攻撃を仕掛けてくる。
 本隊の後衛についている界とシュベルトは、時折リビングデッドが放って来る攻撃をかわしていた。
「射撃可能な奴か……!!」
 リビングデッドが錆び付き切った銃を向けた瞬間、界は樹の陰へと飛び込んだ。盾となった樹に穴が穿たれ、たちまちへし折れる。本来の銃の威力を遥かに超える威力は、持ち主のリビングデッド化による影響を示していた。
 木の葉が散る中を駆け抜けた能力者達は、射撃攻撃を放ったために足が止まったリビングデッドを一気に引き離すが、
「前方! 敵ですわ!」
 ほとんど怒鳴りつけるように、睦美が仲間達に警告を発する。
「この速度では、警戒どころでは……!」
 白骨状のリビングデッド達を押し立てたルールーが、前方から突進して来る。進路の確度をずらし、真っ向からの衝突せんとする能力者達に攻撃が次々と繰り出された。ある程度の力量差があるため、その攻撃のほとんどを回避することが出来ているが、着実にダメージは積み重なっていく。
「これじゃ、回復もできません……」
 破れたジャケットを抑え、さりあが苦い声を上げる。
 豊富に回復用のヒーリングヴォイスを活性化したさりあだが、足を止める必要のあるアビリティを使えば、速度が鈍るのは能力者達も同じこと。
 今、一度でもそんな真似をすれば、たちまち敵の群れに呑み込まれてしまうのは明白だった。移動しながらの回復を行える白燐蟲使い、黒燐蟲使いの奏甲の使用回数が、時間をかけるにつれて減っていく。
「ルールー……全く厄介な連中です」
 テレサは手にした戦旗を振るい、リビングデッドが投げ付けた骨を弾き返しながら一人ごちる。
 進行につれて受ける攻撃に、能力者達にダメージと焦りが蓄積していく。
「まだか!?」
「もうすぐです! まっすぐ走って下さい!」
 篠の叫びに、散人が地図を見下ろして応じた。スーパーGPSによって生じたマーカーは、次第に目的地に向けて近付いていく。
 だが、その前方を塞ぐように
「道を切り拓くよ!」
「邪魔をするなっ!!」
 横合いから飛び込み、進路を断とうとしたリビングデッドへ向け、速度を殺さぬままに鹿臣とセツナが跳んだ。鹿臣のレッグギロチンがリビングデッドの頸骨を薙ぎ、影を帯びた刃が交差させるようにいびつに歪んだ頭蓋を叩き割る。
 別のリビングデッドへと向かったセツナの鞭が敵の大腿骨に絡み付いてへし折るや否や、彼女のスカルロードがその白骨型リビングデッドを左右に分断する。
「出来合いのじゃ相手にならないよ!」
「言ってる場合か」
 苦笑しつつも、シュベルトがセツナを前方へ促す。
 そして駆け抜ける先で、能力者達の視界は開けた。

●闇の空洞
 大穴を見下ろした千怜は、思わず息を呑んだ。
 写真で見た通りの光景が、そこにはあった。
 穴は能力者達が想定していたものよりも遥かに広く、そして深かった。
 その広い穴に差す陽光を、ジャングルに生える木々が遮ることも無い。
 だが、その穴を満たす『闇』の存在に、黒雛達は困惑の色を隠せずにいた。光を遮る黒々とした闇が、穴の半ばからわだかまっているのだ。美佐緒が事前に団十郎に見せられた大穴の写真を思い出しながらぽつりと呟く。
「……あれ、撮影の都合とかじゃなかったんだ」
「穴は直径500m……というところですね。深さは……あの『闇』の部分だけでも直径よりはありそうです」
 曜子が目測で、穴の大きさを告げる。
「新宿駅が建物丸ごと入りますね。……あの存在は、『あの中』にいるというんですか?」
 黒雛の問いに、答える言葉を能力者達は持ち合わせていない。だが状況は、それが正しいと示していた。なおも後方から追撃して来る敵を引き離すために穴の外縁に沿って走りながら、葵は穴の内側を見下ろす。
「くそっ、下に敵がいるのか判じようにも、これではな……」
 死人嗅ぎの感覚は敵の多さ故にぼやけてしまっているが、この闇に近付いてから、そのぼやけは一層強まっているように彼には感じられていた。
「……岩でも投げ入れてやろうか」
「持ち上げてる間に磨り潰されるわよ」
 穴の底からの荒涼とした冷気を浴びながらぼやいた葵に、並走する紫瑠華が呆れたように言う。
 あの写真のような巨大な影も今は見る事は出来ず、闇の中に何があるのか、外にいるだけではうかがい知る事も出来なかった。
 緋雨や美佐緒らが走りつつ詠唱銀を投げ入れてみるが、反応も皆無だ。
 紫瑠華が本隊の能力者達に顔を向ける。
「自分から出て来る様子もなし……これは降りないと駄目そうね」
「縄梯子やロープを設置して降下するつもりでいたが……」
「……そんな暇……無さそう、です」
 星夜とフィアレスが、ここまで背負って来た荷物、そして背後のジャングルから走って来るリビングデッドやルールーの気配に意識をやりつつ言う。
「闇に包まれている箇所に入るだけでも、かなり降りないといけませんね」
「あったとしても、連結している間に死ねますね」
「……加えて言えば、連中は遠距離攻撃して来ていますからロープ切られるぞ」
 睦美の言葉に、晶と界が応じる。
「皆、あれを!」
 その時、法螺乃が壁面を指差した。穴の大きさに比べて細いために分かりにくいが、壁面に沿って、岩の坂道が走っていた。
 その通路は急な勾配を保ちながら螺旋を描き、ひたすらに下へ、闇の底と繋がっている。
「……ルールーは、あそこを登って出て来たのか……」
「その推測、間違いなさそうや。見てみ」
 矜星が指し示す先に千怜が視線を向けると、およそ数十メートルは下の壁沿いの坂道を、スコップを担いで上へと駆け登って来る影があった。下半身が骨と化した鼠色のスモック姿。それは、ルールーのものに違いなかった。テレサとラシェリアが首を傾げる。
「リビングデッドは連れていないみたいですね」
「……この穴の中には、死体が無い、ということなのか……?」
「『異空間の入り口』のようにも思えますね。セツナさん、イルミットさん。すみませんが……」
「分かってるって!」
「そういうのは、この子達の仕事よね」
 漣弥にセツナとイルミットが頷き、各々の使役ゴーストに穴の奥に向かうよう促す。
 仮にあの闇がダメージを負うようなものだったとしても、使役ゴーストで様子を伺うことは出来るはずだ。
「先行して攻撃をもらうなら、あなたが一番によ。損な立ち回りでも我慢してね」
 主の命令を受け、セツナの真スカルロードが本隊の前に出る。
「そうと決まれば……」
「急ぎましょう!」
 シュベルトと界の言葉に促され、能力者達は坂の入り口を目指して走り出した。
「多くの死者あふれる地に、坂……。まるで黄泉平坂から亡者があふれ出てきたようだとでも、言えばいいんですか?」
 出来過ぎだとかぶりを振って、散人もそれに続く。

「邪魔ッ!」
 狭い坂道を遮るようにしてスコップを振りかざしたルールーを、全力で踏み込んだ凛の十文字槍が刺し貫いた。槍を引き抜くべく横に振ると、力尽きたルールーの体は遠心力に任せて飛んで行った。闇へと落ち切るかと思えたルールーの体は、その前に完全に力尽きて消滅する。
 坂道を地上から高さにして20mほど下ったところで、煉はこちらに向けて殺到して来るリビングデッド達に向き直る。
「ここらが、刻限か。想定とは違うが……」
「……帰り道は、護る」
 振り返りざま、先頭のリビングデッド達に向け、煉とラシェリアが振り向きざまに繰り出した電光剣と爪が突き刺さった。だが敵リビングデッドの中には射撃攻撃が可能なものも混じっているらしく、足を止めた彼らに向けて、錆び付いたマシンガンの弾丸や火の玉が次々に飛来する。
 リビングデッドが飛ばした尖った骨を、粗目のナイフが弾いた。削れた骨の欠片が、彼の顔にかすかな傷を残す。
「本隊の皆は、先へ」
「こちらはお任せ下さい」
 クロエが静かに言って、電光剣を構えた。光の刃が現れ、迫る敵群へと向けられる。
「分かった……任せたぞ!」
 千怜が言い、本隊の能力者達は次々と坂道の急斜面を駆け下りていく。
 連絡役として補助班の零夜、睦美、鹿臣が本隊と共に途中まで進むことを決め、空いた隙間に本隊所属の漣弥が入った。
「途中までは、僕もお手伝いしましょう」
「行かなくていいの?」
「ちょうど真下にも坂道は走ってますから、追いつくのは簡単ですよ」
 壁面に沿った坂道の構造を指先で描きながら、漣弥はセツナに応じ、苦笑を浮かべた。
「……まあ、この穴にエアライドはあんまりやりたくなかったんですけどね……」
「ルナエンプレスでもいれば、降下は楽でしたかね?」
 前列に出たリビングデッドを蹴倒しながら、凛は一瞬空を見上げた。煉が電光剣でリビングデッドを切り捨てながら言い放つ。
「無いものねだりをしてもしょうがないだろう」
「追加来ます!」
 声楽杖のマイク部分を顔に寄せ、さりあが警告を発した。ここまで散々逃げ回るのに専念していたせいで、幸か不幸か多くの能力者達のアビリティの残量は充実している。
「さぁ、歌いますよー!」
「……参る」
 押し寄せるリビングデッドの群れに向け、能力者達の攻撃が一斉に繰り出されていく。

 数分後、エアライドで飛び降りて来た漣弥と合流した本隊は、闇の中へと飛び込んで行った。
 闇に入って以降、灯りはあれど数十メートル先までしか見ることは出来ず、能力者達はただただ闇の奥底を目指してひた走る。
「『異空間』……という推測、正しいみたいですよ」
「見て下さい」
 散人と曜子が地図を見せる。能力が正しく発動していれば大穴の位置に表示されるはずの自分達の位置を示すマーカーは、何故か消えていた。
「これは……いつから?」
「この穴の内側に入った時からですね。闇だけでなく、穴自体が何らかの常識外の現象によって生じたものなのかも知れません」
 散人が漣弥にそう答える。隊列の前方では、時折昇って来るルールーとの戦闘が発生していた。
「なんか地上に比べると手応えが無い感じやな?」
 昇って来たルールーをセツナの真スカルロードと共に撃破しながら、矜星が言った。篠が長槍を肩に乗せ、再び走り出しながら応える。
「闇の向こうから突然出て来るのは心臓に悪いが、一度に押し寄せても来ないし、何よりリビングデッドを連れていないからな」
 数が少なく、ルールーの能力も高くはない。そのため能力者達は先制の射撃攻撃で、ルールーに対処することが出来ていた。地上のジャングルでの逃避行に比べれば、遙かに楽な戦いだ。白燐蟲使いが光を点しているため敵からもこちらの姿は丸見えだろうが、もうここまで来た以上、気にする必要も無いだろう。
「ルールーが出来たそばから、上に放っている……というところでしょうか」
 緋雨の発言は予測に過ぎないが、状況を的確に言い表しているように思えた。だが、現状が楽とはいえ、穴の出口で奮戦しているであろう仲間達の状況を考えれば、能力者達に休む暇などあろうはずも無かった。

●巨大なる影
 闇の途中に補助班の連絡要員3人を残し、全力で走り続けた能力者達は、やがて闇の果て、紫の灯に照らされた場所へと降り立った。
「ここが……終点ですか……?」
 異様な圧力に、テレサはどこか息苦しさを感じて汗を拭った。
 わだかまる闇は、粘りつかんばかりの圧力を持って能力者達を迎えていた。

『るー、るーるー……るー……』

 不意にルールー達の、あの声が、能力者達の耳に届いた。
 それと同時に、不意に、その闇が蠢動するのを能力者は目にする。

『るー、るーるー……るー……』

 無数のルールー達の声と共に、闇に波のような震えが走った。
 震えの中心にあるのは、巨大なる存在。ルールー達の声が響く中で震動は続き、炎のごとく爛々と輝く双眸が、闇の中で見開かれる。
 それは王者の如き威風を伴い、能力者達の前に現われていた。
「あれが……」
 その存在との戦いを待ちわびていた黒雛の全身に、武者震いが走った。
 これまで、巨大な存在を数多く倒して来た銀誓館学園の能力者達にとっても、目にした事の無い姿かたちをしていた。
「……異形、なのですか……?」
 後列から、フィアレスはその巨体を見上げる。

 その巨影は、確かに人に似たかたちをしていた。
 だが、その存在が人間などでない事は明らかだった。
 その背丈は能力者達の数十倍に及ぶ。
 醜悪な顔は男性の髭を模したかの如きおぞましき触手に覆われ、その根元には鮫の如き鋭い牙を生やした口が存在していた。
 爛々と輝く瞳が触手の群れの奥から眼下の能力者達を睥睨する。
 紅く染め上げられた衣装は、和風とも、中国風とも取り難いものだ。
 その衣服の内側では、時折吐き気をもよおすような、醜悪な脈動が沸き起こる。
 衣装の両袖、人間であれば手を出すであろう部分から伸びる黄金色の爪が放つ蠱惑的なまでの輝きが、能力者達の目を射た。
 いや、あれは本当に爪なのか。その材質は、触手と同じものではないのか……?

『るー……るー……るー……』

 巨影の足元に群れ集ったルールー達が、主の降臨を言祝ぐが如く、あるいは王を守る兵士の如くスコップを振りかざし、あの奇妙な声を発する。
 敵の威圧感を振り払うように、緋雨は両手のナイフを構えると、仲間達に叫んだ。
「皆さん、今こそ戦う時です!」
 絶対に勝利するのだとの決死の志が、緋雨の声には宿っていた。その意気に頬を叩かれたかのように、能力者達の目に戦意が宿る。
 前衛の者達が次々と自己強化のアビリティを発動させながら敵に迫る中、巨大なる異形へと狙いを定めたのは美佐緒だった。
「こんちゃ、せいめい使いがわざわざ冥府におりてきましたよっと。名前くらいなのれや!」
 重苦しい闇を振り払うような明るい声と共に、美佐緒の手に白燐蟲の群れが集う。
「消えて、なくなれっ!」
 突き進む白燐蟲は、しかし周囲のルールー達にさえ大したダメージを与えられていない様子だった。巨大なる異形に到っては、眼光だけで白燐蟲が消し飛んでいる。
「うっわ……」
「ですが止めたということは、当たれば通じるようですね! ならこれが通れば大きいはず!」
 漣弥が空中に描いた『縛』の文字は、敵の手の平で止められる。だが、能力者達は続けざまに動いている。
 テレサが幻影兵団で能力者達の射程を伸ばし、千怜は白虎絶命拳への連携を決めるべく、震脚を繰り出していく。
「本格的に動き出す前に、叩く……!」
 リディヤの放った小さな刃の群れが荒れ狂ってルールーを蹴散らすやいなや、紫瑠華の撃ち放ったギターマシンガンの銃弾が快音と共に放たれた。異形の触手が、振り回され、銃弾をことごとく阻んで見せる。
「お前は、何なんだ! お前も『二つの三日月』に与する者なのか!」
 悪路王から聞いた言葉を思い出しながら、篠は問う。だが、それに対して返って来るのは唸り声ばかりだ。『おしゃべりカラス』の効果を得ている漣弥に視線をやるが、彼は即座に首を横に振って寄越した。
(「まさか、こいつも、ルールー達と同じように……?」)
 独楽の如き動きでルールー達を薙ぎ払いながら、篠は考える。ルールー達に人間の言葉は通じないが、一方でゴーストとは問題なく意志疎通できることが確認されている。この巨大な異形も、使う言語に関しては配下のルールー達と同様、人間には理解できないものなのかも知れなかった。
「たあああっ!!」
 そうする間にも、篠と入れ替わるように走った黒雛の赤手、星夜の日本刀が、妖気の炎を宿した。跳躍と共にまっすぐに突き出された2人の詠唱兵器が、異形の服を突き破る。巨体が一瞬よろめき、闇の底に激震が走った。
「効いていますね……」
「……続き、ましょう……!」
 高速演算プログラムを瞳に宿らせた散人、詠唱停止プログラムを拳に宿らせたフィアレスが、アビリティを叩き込もうとする。
 だが、その時、能力者達を見据える異形の瞳が、熾火のように揺らめいた。
 瞬間、脳を掴んでシェイクするような、強烈な衝撃がその視線に捉えられた能力者達の精神を続けざまに襲う。
「くッ!?」
「精神攻撃!?」
 物理的な圧力をも伴う視線に、能力者達の纏う防具が一瞬でその許容ダメージを超えた。
 幾人もが血を吐き、セツナが預けたスカルロードが、イルミットのケルベロスオメガが、次々と消え去りイグニッションカードへと戻った。鉄傘を掲げて何とか耐え凌いだイルミットの目鼻から血が溢れ、白い肌を汚す。
 それでも一度に全員が巻き込まれるようなことはなく、故に戦闘は続いていたが……使役ゴースト達よりも力量で劣る者達が直撃を受けた時、その受ける被害は深刻だった。

「が……あァァァァッ!?」
 生。
 死。
 虚無。
 あらゆるイメージが渾然として、一時に脳髄へと流れ込んで来るのを矜星は感じた。
 どこかの血管が破れたのか視界が真っ赤に染まり、喉の奥に血の味が流れ込んで来る。魂の力で踏みとどまった彼が再び目を開けた時、後ろで倒れる音がした。ほとんど学園の能力者の下限に近い能力しか持たない美佐緒は、目を開けたまま仰向けに倒れている。
「くっ……!!」
 だが、そちらに声を掛けるより早く、再びの精神波動が迸った。立て続けの衝撃に巻き込まれ、美佐緒の体が大きく痙攣する様を目にしてシュベルトは舌打ちする。
「まずい……! そいつを下がらせろ!」
「お任せを!」
 飛び出して来た睦美が、気を失った美紗都を担いで再び後退した。退避する睦美と美佐緒を庇うように立つシュベルトの手に電光が宿る。
「お前の相手は俺だ……!!」
 睦美達から異形の注意を逸らすよう、狩猟本能を剥き出しにした葵が、黒影剣を繰り出し異形へと斬り掛かった。
「纏めて消し炭にしてやろう」
 叫び声と共に放たれたプロトヴァイパーが、ルールー達を貫いて巨大な異形の足を撃った。
 強い反動が手傷を受けた体に響くが、彼が後衛から攻撃する手段はプロトヴァイパー以外では幻影兵団を受けての通常攻撃だけだ。絶命拳を撃ち込んだ千怜は、それでもなお攻撃を繰り返す異形の姿に奥歯を噛む。
「攻撃は通ってるが、タフ過ぎる! 清廉騎士や無血宰相と同じか、それ以上に……!」
 能力者達が知る『異形』達は、まともな人間や来訪者に比べ、極めて高い耐久力を持っていた。それに加えてまともに倒すだけでは再び現れるという特殊能力を持ち合わせてもいたのだが。
「この眼前の異形が、同様かどうかは分かりませんが……」
「いずれにせよ強いのは当然、か」
 立て続けに断罪ナックルを撃ち込みながら、晶は千怜に頷く。
「……これでは、そう長くは保ちませんよ!」
 傷ついた仲間へと病魔根絶符を投げながら、界が叫ぶ。
 能力者達が有効な反撃を繰り出せぬ間にも、異形側の攻勢は強まっていた。ルールー達が前衛に躍り出るや否や異形の顔から生えた触手が伸び、能力者達をまとめて刺し貫いていく。
「な……」
 敵の攻撃を受け、表面をボロボロにしたギターマシンガンにすがり、紫瑠華は血に染まった腹部を押さえながら立ち上がろうとし……回り込んで来たルールーが振り下ろしたスコップに叩き伏せられた。
 ルールーの数は、こうして戦っている間にも増しているかのようだった。闇の奥から次々と現れては、巨大な影と戦う能力者達を攻撃してくる。
「戦闘不能者2人……撤退です!」
「っ……」
 テレサの声に、手傷を負った仲間の回復にあたっていたイルミットが眉を寄せる。
「くそっ……!」
 葵が吐き捨てるが、もはや自分達では勝てないと、彼もまた否応なく理解させられていた。
「撤退します! 今は情報を持ち帰ることが第一です!」
 漣弥が真っ先に戦場に背を向けると下って来た坂道を登り出し、睦美に代わって美佐緒を引き受けた界、担いだ紫瑠華を担いだリディヤがそれに続く。
 つい数十秒前の戦意は、能力者達の頭から消し飛んでいた。
 戦いを貫徹し、勝利をもぎ取ろうとする意志は、彼らにはもはや無い。
 だが生還せんとする彼らをこそ、巨大なる異形は容赦なく狙った。
 鋭く伸びる触手が立て続けに能力者達を貫き、ルールー達もまた、容赦なく能力者達を襲う。撤退しようとする能力者達はそうした攻撃に血を流しながらも、元来た細い坂道へと飛び込んでいく。
「急げ……!」
 最後尾についた星夜と晶、篠の3人に緋雨も無言で加わり、追走せんとするルールー達を切り払う。後退する仲間達が坂道を登り出すのを援護する彼らは、だが、それ故にこそ坂道の入り口に密集せざるを得なかった。
「急ぎましょう!」
 撤退支援を短時間で済ませるつもりだった緋雨が坂道を駆け出し、殿の3人も眼前のルールー達を押し戻し、それに続こうとする。
 だが、その瞬間だった。
「下だ……!」
 足元に走った震動を感じて篠が叫ぶのと、ほぼ同時だった。
 地面を突き破って伸びた触手は、殿を務めようとした能力者達の脚部を深々と貫いていた。物理的な威力ばかりでなく、突き刺さったままの触手から
 闇の向こうから聞こえた苦痛の喘ぎに、緋雨が思わず足を止め、振り返る。
「皆さん……!」
「……行け! すぐに追いかける!」
 ルールー達に取り囲まれながらも、星夜はそう答えた。ギンギンカイザーXが飛んできたのに続いて、緋雨が駆け去っていく足音が響く。
 それを聞きながら、3人は詠唱兵器を振るいつつも、顔を見合わせ苦笑した。
「すぐに追いかける……ね」
「言っておかないといけないでしょう。死ぬつもりは……ありません!」
 傷口に潜り込んだままの触手が、絶え間のない苦痛と頭痛を与えて来る。
 スコップを振り下ろそうとしたルールーを、断罪のオーラを帯びた晶の拳が殴り飛ばす。
「ああ……そうだな」
 篠の水刃手裏剣が、闇の底から坂道の中途にある彼らを見上げる瞳へ向けて投げつけられる。星夜の紅龍の太刀が、その意志を宿して闇に煌めいた。
「俺には、俺たちには、帰るべき場所がある……」

 異形の凶爪は、その決意を断ち切るかの如く、闇の中に金色の弧を描いた。

●帰還
「戻って来た……!」
 闇の中から飛び出し、坂道を駆けあがって来る零夜の姿に、壁に背中を預けて座り込んだまま、傷ついたセツナは目を輝かせた。彼女の真スカルロードがイグニッションカードに戻って来た事実で、本隊が激しい戦闘の中にあったことは既に伝わっていたが、詳細は分からないままだった。
「異形との交戦があった。本隊は撤退中だ」
 零夜が伝え、僅かに遅れて駆け戻って来た漣弥と共に飛び込むようにして大穴出口に密集する敵を切り拓きにかかる。連絡役とはいえ、途中に残った彼自身も闇の奥で起こったことを見通せてはいなかった。
(「これでは、何のために……」)
 歯噛みしながらも、零夜は震脚を発動、道を遮るリビングデッドたちを吹き飛ばす。クロエが一瞬下方を見て、皆に伝えた。
「残りの人も、来ましたね」
「でも……数、足りてない……」
 闇の中から出て来た者達の人数が穴底を目指した者達の当初の数から減じているのに気付いて、坂に残っていた能力者達は顔を曇らせた。戻って来るのは緋雨が最後。
 能力者達の人数は、当初から3人を欠いている。その事実だけでも、作戦が不首尾に終わった事を悟るには充分だった。
「……いずれにせよ、撤退のチャンスは一度だけだ。残る全戦力で、こいつらを突破する」
「もう本隊も、アビリティを温存する必要ないからね」
 だが無論のこと、補助隊も無事とはいかない。
 最初に前衛に出ていた煉や凛、それに耐久力に欠けるセツナは既に戦闘不能に陥り、彼らに代わって当初後衛にいたクロエやさりあも前に出ざるを得なくなっていた。
 法螺乃らのように一定の考えを持ってあえてアビリティを温存した者を除き、ほとんどの能力者達は主要なアビリティを使い果たしている。
 それでも補助隊からまだ死人が出ていないのは、一度に多数のリビングデッドが押し寄せることの出来ない、細道という地形が幸いしたからに過ぎない。
「だが、まだ生きているんだ……絶対に、生還してみせる!」
 鋭く伸びた肋骨を伸ばすリビングデッドを振り払い、ラシェリアは最後の数分を耐え切る覚悟を固める。
 全員で、と言うことが出来ない。それだけが悔やまれた。

「……ぁ……」
「気が付きましたか?」
 背中で美佐緒が動いたのに気付き、界はそう声を掛けた。だが併走する千怜は、美佐緒の体から急速に力が抜けていくのに気付いて顔色を変えた。
「回復を……」
 言われ、美佐緒を一目見て、テレサは首を横に振った。
 アビリティでなんとかなるような領域では無い、その事が分かってしまった。美佐緒は無理やりに笑みを浮かべて唇を震わせる。
「……聞いて……。見えたの……」
「何を、言ってるんです?」
「……まさか!?」
 周囲の能力者達には理解できない言葉。だが、彼女が何を視たのか、そして語ろうとしているのか、同じく異形の精神攻撃を受けた矜星は直感的に理解していた。
 美佐緒は先程の異形の精神攻撃を、全力で受け止め、体で感じ取ろうとしたのだ。
「お、お前何考えてるんだ!?」
 元々耐久力で劣る彼女がそんなことをすればどうなるのか、彼女の現状が物語っていた。
 命の最後の数分で、彼女は仲間達に自分が視た者を語る。

「あいつの後ろには、命が全く無い、虚無の世界が広がってた……」

●闇の底、蒼天は見えず
 深い闇の底、殿軍として残った3人の能力者達は、いまだ戦いを続けていた。
 いや、戦わざるを得なかったという方が正しいか。ルールー達は彼らの隙間から後ろに回り込み、その退路を断っていた。
 彼らは幾度も己を奮い立たせ、立ち上がり、ルールー達を薙ぎ払い、しかし闇の底に傲然と立つ異形の射程範囲から逃れられずにいた。
 その中で、闇の底から撃ち出されて来る異形の攻撃を受けるたびに、衝撃と共に何かが心の中に流れ込んで来るのを彼らは感じた。彼らもまた、美紗緒と同じ事実を、戦いの中で認識しようとしていたのだ。
「ルールー……その真の名は『トゥルダク』、か」
「彼女達は、虚無の世界から生み出されている存在なのですね」
 向かって来る敵を切り払い、晶は大きく咳き込んだ。
 べっとりとした血が刀の柄につこうとしたのを防具で拭い、構え直す。
「こちらの世界が『生』の世界ならば、虚無の世界は『死の世界』そのもの……。そして奴は、2つの世界の境を保つ存在」
「『生と死を分かつもの』……!」
 篠がナイフの柄尻でルールーの頭部を強打し、振り回した槍で足骨を砕く。だが篠の水刃手裏剣が尽きた今、彼らは『生と死を分かつもの』に攻撃を届ける手段に乏しい。幻影兵団での攻撃だけでは、あの巨大な異形を倒せるとは、到底思えなかった。
「奴の狙いは、ジハードの阻止、だな」
「今回のジハード作戦によってもらたされる何かによって、『死の世界』に危機が生じる可能性があった。奴の狙いは、阻止しに来た……そういうことか」
 この情報が、仲間達の誰かに伝わっていれば、と思った瞬間、星夜の腹をルールーのスコップが貫いた。
 魂を奮い立たせ、スコップに貫かれたままで、星夜はそのルールーの首を一刀のもとに切り払う。闇の中に漂う血の臭いにひかれるように、ルールー達は一層その数を増していた。
 逃した敵よりも、今確実に奪える命を奪う。
 そう考えているのだろうと、晶は霞がかったようになった頭で思考しながら、両手の二刀を構えてみせる。
「なんとしても、帰還します」
 修羅の如く詠唱兵器を振るい、3人はルールーを打ち砕き続ける。
 もはやゼロに等しい可能性だけが、彼らにとっての希望の糸だった。
 だがそれは、間もなく断ち切られる、か細い糸に過ぎなかった。

●消失
「それが、あいつ……『生と死を分かつ者』の目的……」
 語り終えると共に、美紗緒の瞳から光が喪われていた。その目蓋を、テレサはそっと閉じてやる。合流した能力者達は、鬼気迫る勢いでリビングデッドの群れを薙ぎ払い、生還のための血路を切り拓いていく。
「まだ……きっと、まだ、なんとかなるはずです! アンコール・ワットには銀誓館学園の皆も、巡礼士や人狼騎士団もいる! 救援さえ来れば!」
 穴の底に取り残された3人を、助けられる。
 その希望だけを頼みに、彼らが坂道を抜け、ジャングルへと駆け込んだ直後。
 不意に彼らの後ろで、強烈な力が迸った。
 振り返った能力者達が目にするのは、カンボジアを覆うかの如き巨大な異形の姿。

「何だ……!?」
「あれが、『生と死を分かつもの』……!?」

 その姿を既に目にしていた者達が驚愕と共に声を上げ、その姿を見ていなかった補助班の者達が戦慄と共に叫ぶ。アンコール・ワット遺跡周辺でも、その巨影は見えていた。駆け付けていた銀誓館学園の能力者達が、ジハード勢が、その姿を記憶に焼き付ける。
 やがて、『生と死を分かつもの』の巨影は、生者達を睥睨しながら消える。
 そして、その影が消えた跡に視線をやって、理解できぬといった体で、さりあは、緋雨は、虚脱する自分を感じていた。
「は……?」
「え……?」
 彼女たちの視線の先にあったのは、緑溢れるカンボジアの密林の光景だ。
「そんな……」
「これじゃ、助けに行くことなんて……」
 殿として残った3人が生き残る僅かな可能性さえも断絶させるように、大穴は消失していた。施してあった『ゴーストチェイス』の反応も穴を出ると同時に消えており、矜星は思わず手近な樹を蹴り飛ばす。
 思い出したかのように機能した世界結界に、リビングデッド達の力が一挙に弱まり、黒雛の赤手の前に簡単に砕け散っていく。
「世界結界が……戻ったのですか?」
 黒雛の問いに、苦い表情で漣弥が告げた。
「おそらく……あの穴は、『死の世界』へ通じる時空のひずみというべきものだったようですね」
「大量のルールーを出現させる為の力を送り込むため、ですか」
 散人が眼鏡の奥で瞑目しながら口にした。推測と情報を合わせて次に繋げることが、今の彼らに出来る最善だった。もはや動かない美佐緒に視線をやり、リディヤは紫瑠華を担ぎ直すと口を開く。
「先程の言葉が正しいなら、『死の世界』から穴を開けて力を送り込む事で、世界結界とは関係無く強大な力を振るえる……そういう事ですか」
「だとすれば、あの異形が次にまた大きな力を使い、穴が繋がっている時が……!」
「奴を葬り、ルールーの出現を断つ、唯一の機会となる!」
 右拳を打ち合わせた葵の言葉に、曜子がうなずいた。
「今回は、勝てませんでした。けれど、銀誓館学園の主力を投入すれば、或いは……」
「討ち取れますよ、そうでなければ……!」
 何のために、戦ったのか分からない。口にせずとも、悲痛な意思は、今の彼らに共通していた。
 だが失敗した時、攻め入った者達がどういう運命をたどるのか。
 それは戻らぬ3人、そして二度と動かぬ美佐緒の姿が、何よりも明白に物語っていた。

 そして眠りに就いた悪路王から唯一連絡手段を伝えられた篠が命を落としたことで、銀誓館学園は対異形における強力な同盟者と成りえた悪路王軍との連絡手段を失ったことになる。
 その事実が今後の戦いにいかなる影響を及ぼすのか、今はまだ、誰も知る由も無かった。


マスター:真壁真人 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:30人
作成日:2011/11/25
得票数:笑える34  泣ける6  カッコいい11  怖すぎ38  知的4  ロマンティック1  せつない84  えっち2 
冒険結果:失敗…
重傷者:宝蔵院・凛(天覇ぜっそー・b51107)  央寺・セツナ(元気な子・b51243)  天守・矜星(全てを振り切る灼熱の最高速・b67547)  伏管・煉(時計仕掛け・b71013)  旋堂・紫瑠華(ダンシングタイフーン・b76632) 
死亡者:天城・星夜(紅龍に選ばれし誠実なる剣士・b00064)  桂木・美佐緒(ずんずん調査隊・b53235)  風雅・晶(陰陽交叉・b54764)  時任・篠(朧夜の藍氷華・b58875) 
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