【猫の村】よるべなき塔

<オープニング>


●ロビンのメモ
 礼拝堂への侵入作戦はとっとと開始された。
 祭が盛りあがり、塔では儀式の準備が行われているだろう今が、侵入のチャンスだとパックが判断し、能力者達も同意したのだ。
 もう、夜が近い。
 夕闇に紛れて、礼拝堂に近づいてパックが猫になる。ラナとフェリシアが同行を申し出、他の皆は仮装を続け辺りを警戒した。
「ああもう。早く脱ぎたいのに……」
 小雪がそわそわもじもじ、お姫様の仮装がとても恥ずかしいらしい。やがていくらもしないうちに、内側から魔方陣が描かれた礼拝堂の壁が動いた。パックによると、猫用扉は「よそ者よけ」だが、人用の入り口は目立たぬだけで内側からのみ開く仕掛けらしい。
「早くにゃ−!」
「大丈夫、中は人用だよ」
 だが、地下牢はもぬけの殻だった。
「連れていかれた? まさかロビンも殺……って、くそっ!」
「殺されるかもしれないね、私達の危惧があたってしまったら」
 茅が冷静に言う。
「……これ、何でしょうか」
 朝霞が隅の敷石に挟まっていた折りたたんだメモをみつけ、空がのぞきこむ。
「パック宛のようだな」
 それはパックに託されたメモだった。
『塔でヘナを見た。祭の生贄は生きた人間、俺も危ない。あいつら狂ってる』
 くしゃくしゃの紙片にはロビンが見聞した塔の見取り図。
 そして大きくひと言添えてある。
『刻限は真夜中。パックがこれをみつけてくれると信じている』
 すでに日は落ちた頃だ。
 寅靖が皆を見回し、最後にパックに視線を留めた。
「やるか? 鍵はなくとも抜け道への扉は壊せるだろう、ただしもう引き返すことはできないが」
 パックはメモを握りしめ、確りと頷いた。

『ロビンのメモ
 ・ヘナは塔の3階にいる。
 ・礼拝堂からの抜け道は塔のすぐ裏手の森に続いている。人がくぐり抜けられる扉がある。
 ・塔の1、2階は拷問道具や武器が集めてある。何か計画中なのか。
 ・2、3階外階段側に扉。
 ・祭当日は長老の取り巻きが塔の扉全部を守るらしい。陽動もアリか?
 ・真夜中に領主と長老達全員がそろって儀式が始まる』


●塔の少女
 捕まったあと、リューシャは一般人のふりを通した。
 黒フードについて外周の階段を上り、途中の外壁についていた扉を押す。
 背中を押され、石の部屋に閉じ込められる。
 リューシャはまず、すみで泣き疲れたらしい少女に声をかけた。
「ヘナ?」
「えっ?」
「大丈夫。助けに……助けが来ると思うわ」
 リューシャは考える。扉を壊してヘナを連れて逃げることは可能かもしれないが、見張りの人数がわからない以上、危険が大きすぎる。
 しばらくするとまた扉があいて少年が押し込まれた。
「ロビン!」
「ヘナ。悪いな、パックに知らせるつもりが僕も捕まってしまったよ。あれ、あなたは?」
「ロビンクンね。私はリューシャよ、話があるわ」
 リューシャはロビンに自分がここにいる経緯を話し、二人は共闘に同意する。
 そしてロビンの知る情報をきき、以前彼が侵入した時間帯も夜で、抜け道の出口を探っていたら捕まったことを知った。
「伏兵注意ね?」
「そう。長老達が全員そろう真夜中前がチャンスなんだけど、何とか逃げられないかな」
「仲間がきっと間に合うわ。待ちましょう」
 リューシャはイグニッションカードをひそかに確かめた。

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参加者
渕埼・寅靖(人虎・b20320)
静島・茅(果敢な紡ぎ手・b45688)
氷川・小雪(冬の残滓・b46013)
常陸・朝霞(土蜘蛛に新しい風を吹き込んで・b50975)
フェリシア・ヴィトレイ(きまぐれな野良猫・b54696)
ラナ・ララサバル(猫の女王候補・b72122)
犬神・リューシャ(真クルイークヴォルク・b73419)
淳・空(月に願いを・b82500)



<リプレイ>

 ぽっかりあいた抜け道の前。
 イグニッションした常陸・朝霞(土蜘蛛に新しい風を吹き込んで・b50975)が、鬼棍棒をねこじゃらしだと言い張った。
「妾のネコじゃらしは少々痛いぞ……くくく♪」
「朝霞、あんたそんな人だったんだな」
「パック、何か問題でもあるのか?」
「……いいえ」
 朝霞とパックが軽口を叩き、淳・空(月に願いを・b82500)はくすりと笑んだ。この状況だ、少しくらい気持ちにゆとりがあった方が良い。
(「姫君は危難の塔の上、なればそれを救出するのが騎士の役割だろう?」)
「パック、私の話もきいてくれるか?」
「物騒なまたたびでも持ってるのか?」
「いや。私の力を話しておこうと思ってな」
 空はルナエンプレス。その本業能力の効果と使用条件を話して、目を丸くするパックに彼女は言った。
「なんともロマンティックに過ぎると思うかもしれないが、真実だ。ただ、連れてゆけるのは仲間だけ、それも片想いではだめなんだよ」

 彼等がこれから行うのは陽動と同時の救出作戦。
 猫村の冒険は佳境だった。

●救出
「にゃにゃにゃにゃにゃ〜♪ 正義の味方、参上!なのにゃ〜♪」
 ラナ・ララサバル(猫の女王候補・b72122)はめったやたらと元気だった。ぽんっと猫姿になってにゃにゃにゃにゃ〜と走り回って戻ってくる。
(悪の秘密結社に捕らわれたヘナ達が危ないのにゃ! ヘナ達を助けて、そして悪の野望を打ち砕くのにゃ!)
 仔猫はきっとそう言っているに違いない。
「がるるー」
 氷川・小雪(冬の残滓・b46013)はいっそ小気味よい唸りを上げてラナ猫に応えた。もふもふした可愛いものが好きな小雪だが、今は立派な狼姿だったから。
 フェリシア・ヴィトレイ(きまぐれな野良猫・b54696)は言葉少なだった。目の前で犬神・リューシャ(真クルイークヴォルク・b73419)が連れて行かれるのを黙って見ているしかなかった……あの光景が忘れられない。
(「少しだけ待っていてくれ、必ず助けるよ」)
 仲間の勇気ある行動を無にしない為に、今は行動すべき時だった。動物隊の最後、フェリシアもくるりと猫になる。
 救出隊は朝霞、空、パックの3名。陽動先発隊にフェリシア、ラナ、小雪の猫二匹狼一匹。
 残る渕埼・寅靖(人虎・b20320)と静島・茅(果敢な紡ぎ手・b45688)は陽動後発組だった。
 寅靖は照明をベルトに括り付ける。
(「ギリギリの年齢で学園に来た俺には、狂気は他人事じゃない。仮に――いや、それより今は」)
 顔を上げると、茅も禍々しい鬼面の奥から「助けに急ごう」と皆を見回した。
「がるるるるー」
 唸る小雪を先頭に猫たちが駆ける。騒々しいトップランナー達を寡黙な男二人が追った。茅は猫の伏兵が潜んでいそうな場所がないか、警戒しつつ前進する。
「がるるー」
「にゃ、にゃにゃ〜」
 仔猫のラナは小雪に追いすがろうと夢中でついてゆく。
 ぼっふーん。
 急ブレーキ玉突きで、前方不注意のラナが、トトトっと下がる。
 彼等は騒々しく出口扉の前までやってきたのだ。
 狼は小雪に戻り、イグニッションして扉を破壊し、また獣に戻る。小さな眼鏡のシャム猫がするすると外に躍り出た。
「なんだ、こいつ?」
 ロビンの時と同じく、見張りがいた。眼鏡の奥のフェリシアの瞳と目を合わせ、振り上げた箒が一瞬止まる。
「待て、どこの誰だ?! 勝手に通路を使うと厳罰だぞ!」
 猫に向かって誰何し、フェリシア猫が誘う様に逃げ出すと男も猫になって追いかけていく。小雪の遠吠えが響き渡り、慌てて塔と森から出てきた人影が、逃げてゆく狼を追った。
「ど、どうなってやがる?」
 驚くもう一人の目の前で仔猫がラナになる。
「おい! お前はどこの者だ?」
 箒も持たぬラナに油断したのか、見張りの男が目をむいて詰め寄ろうとしたが……音もなく背後から現れた茅が有無を言わさず紅蓮撃を食らわせた。
 その一撃でぼろぼろになった男が魔弾の射手を唱える。
「だ、誰だお前等!」
 虎紋を浮かべる寅靖が背後に近づいて、見張りは哀れなくらい震えた。そこを容赦なく茅がノックアウトする。
 塔の周囲が騒がしくなる。
 騒然とする中を、彼等は塔の正面目指して走った。その後ろを塔から出てきた村人達が追いかける。
 頃合いの地点に達すると、村人達の眼前で小雪は黒衣装の人の姿に戻った。
「何者だっ!」
「くせ者です」
「何だとっ」
 笑顔で追っ手を翻弄し、狐面をつけると小雪は動いた。フロストファングで男を叩き伏せる。積極的不殺を心がけ、なるべく相手の視界に塔を入れないように仕向けるつもりだった。
(「人相手に力を振るうのは気が進みませんが……せめて村の解放を成功させる事で傷付けてしまう人への償いといたしましょう。その為にもヘナ様達を絶対に助けなければ」)
 フェリシアも猫から人に戻り派手な立ち回りを見せる。
「お前、誰だ! この村の者じゃないな?」
「村の人間だけが力を持ってる訳じゃないよ、中には野良猫も居るって事さ」
「なに?!」
 寅靖と茅とさらなる手勢も到着する。銀誓館の誰一人として、誰何の声にまともに応える気はなかった。
「貴様等に語る口は無い――虎の餌食になりたい奴から来い」
 先行組と合流するや寅靖が嘯き、鬼面の面頬を下ろす。茅が鬼面で呵々と高笑いする。
「良い夜だ!」
「何者?」
「魔だ、魔が現れた」
 敵の呼び子が辺りに響き渡る中を、蜘蛛の糸がしゅるしゅると周囲に飛び、魔弾術士達を混乱に陥れる。
 銀誓館の能力者達は塔のガード達と戦い始めた。
「全員で来い」
 挑発しながら寅靖が確認する。
(「非殺徹底」)
 小雪や茅が動きに配慮する。
(「相手の視界に塔が入らぬ様に」)
「Vamos a bailar♪」
 そしてジプシードレスのラナがカスタネットを手に皆を踊りに誘った――。

●塔
 塔の裏手で始まった大騒ぎは正面あたりで大乱闘に移行する。
 空、朝霞、パックの3人は塔の裏手で敵の呼び子を聞いた。彼等は隠れて機をうかがっていたが、騒乱が別の場所に移動した今こそ好機だろう。
 だが三人が動こうとした時、塔から人の気配と声高な話し声が聞こえた。
「くせ者だと?」
「はい。本人がそう名乗ったそうです」
「……もういい。儀式の準備をしろ。真夜中までには戻る」
 足早に歩き去る男の黒ローブには魔方陣が描かれている。
 長老は取り巻き二人を連れて足早に去り、男が一人塔に戻っていく。
 三人は再び視線をかわして動き始めた。
 上り階段に駆け寄り、朝霞がねこじゃらしを握りしめる。
「誰……うわっ」
 邪魔な男を吹き飛ばし、救出班は三階へ続く階段を駆け上がった。

 さて、ここで時間は少しさかのぼる。
 塔の3階で、リューシャはヘナとロビンと一緒に助けを待つ身だったが、事が始まる前にと、二人と打ち合わせを始めていた。
 特に彼女が危惧したのはヘナの事だ。
(「能力者同士の戦いに巻き込まれた時、予備知識が無いと恐慌状態になるかもしれない」)
 そう考え、リューシャは能力者について噛み砕いて説明した。
「能力を間違った方向に使う者や、力無い者の為に戦う者。能力者では無く人として、人間関係を築こうとする者、色々」
(「彼女から見れば、どれも只の化け物に見えるかも知れないけれど……」)
 怯えて目をみはるヘナを、リューシャは咎めなかった。
「理解して欲しいとは思わない……知っておいて欲しいだけ」
 するとそこに、銀の狼が月光を浴びていた。ヘナは息をのみ、あとじさる。ロビンが黙ってヘナの背をさすり、嗚咽をもらす彼女をなだめようとした。
 世界結界の術者である一般人の、それは仕方のない感情なのだろう。そして全ての超常の記憶はいつしか忘却の夢と化してしまうのかもしれぬ。事の発端となった彼女の恋も、夢も……。
 とは言っても、銀誓館の能力者達には果たすべき使命があった。この村で行われている「何か」を暴き、村人を解放する事――。
「呼び子だ!」
 ロビンが鋭く言い、元の姿に戻ったリューシャが扉の脇に立って漆黒の長剣を抜く。
「仲間が来たわ。脱出よ」
 ヘナは泣くのをやめて言った。
「私を守ってくれようとしているリューシャは、ロビンの仲間で……パックの仲間?」
「そうなるわね」
「なら、今は信じる」
 ヘナの声が少し震え、リューシャは力強く頷いてそれに応えた。
 今はたったそれだけの事をする時間しかない。外で二人が声高に話し合う声が聞こえる。
「そろそろ生贄を縛って準備しよう」
「だがくせ者討伐の応援にいかなくていいのか?」
「俺達の仕事をやっとかないとまずいぞ」
 リューシャは長剣を握りしめて構えた。
(「見張りは今二人か?」)
 鍵が外からかちゃかちゃと回される。
「ロビン、部屋の隅でヘナを守っていて」
「わかった」
「行くわよ」
 二人に素早く声をかけ、返事を待たずにリューシャはグラインドアッパーで内側から扉を吹き飛ばした。
 ドアの破片がバラバラと散じる。
 長剣が箒と交差して鈍い音がした。リューシャは身体を張って戸口を塞ぎ、その身を炎の魔弾が焦がしても彼女は退かない。
 だが時を移さず、迫っていた朝霞が猛然と突撃して見張りの一人に襲いかかり、空が爆水掌をもう一人に撃ち込む。パックも入れてこれで4対2、彼等はあっという間に見張り二人を戦闘不能にした。
 息絶え絶えの男が驚いて声を上げる。
「お前、パック!」
「ご免、おっちゃん。でもこんなの間違ってるよ」
 パックは部屋に飛び込み、物も言わずに飛びついてきたヘナを抱きしめた。傍でロビンが「やっぱり来てくれたね」と破顔する。
「ああ、運良く助っ人に恵まれてな。お前も無事なんだな?」
「俺も助っ人に会ったんだよ」
「時間がない! 皆、行くぞ」
 空が追い立てる様に言った。見張りの二人は倒したものの、階下から声が迫ってくる。
「まずいのぅ。のぼってくるぞ」
 朝霞がハイパー巨大ネコじゃらしを握りしめて走り出す。
「5人くらいか? 階段は狭いから二人立てればいい方だが、相手は魔弾術士だからな」
 空が言い終わらぬうちに、炎の魔弾が飛来する。
 朝霞が炎弾をねこじゃらしで打ち返すが全てとはいかず、まとう羽布がぽっと炎に炙られた。
「飛んだ方がいいぞ」
 猫じゃらしを振り回しながら朝霞が合図する。
 リューシャが有無を言わさずヘナの身体を抱える。
「ヘナ、私とおいで」
「えっ」
「ロビン、自力で飛び降りるのよ」
「わかった」
 二人は軽々と身を躍らせ、続こうとしたパックに空が手をさしのべる。
「一緒に行こう」
「仲間だから?」
 月光が蒼く猫村に降り注ぐ。
 ルナエンプレスの月光の使いが発動して、空とパックはふわりとリューシャ達の隣に着地した。
(「ヘナも一緒に飛べればよかったが」)
 空が見守る中、パックがヘナに駆け寄る。
 間を置かずに朝霞がねこじゃらしを軽々と頭上で回旋させながら飛び降りてきて、逃走に加わった。
 隙をつかれたガード達も一生懸命飛び降りたり、階段を下りて追ってくる。
「どこに逃げる?」
「納屋へかのぅ」
「抜け道経由ね」
「ヘナは大丈夫……のようだな」
 空はヘナを気遣ったが、彼女は既にパックに背負われていた。
「どこか茂みに身を隠せればな」
「任せておくのじゃ」
 朝霞が再びハイパー巨大ねこじゃらしを手に追っ手に立ち向かった。
 何とか全員で協力し、抜け道まで撤退したところでリューシャが遠吠えの合図を送った。

●永い夜を往く
 さて一方で陽動組は、塔の守備役のほとんどを引きつけ、混乱に陥れていた。
 妖狐の耳と尻尾をはやし、フェリシアが幻楼七星光を呼ぶ。小雪が放った針金細工の猟犬が食いつこうと駆け回り、ラナに誘われて踊り出す者もいた。
(「にゃー、カスタネットで踊っているだけなんて言わないでにゃー」)
 長老は塔裏手を離れ、この騒ぎを鎮めるべく難しい顔で現場に歩いていった。
 つかつかと遠慮もなく、奇襲を仕掛けるでもなく、眉根にしわを寄せながらローブのポケットに手を突っ込む。
「せっかくの祭の夜に手間かけさせおって」
 年老いて、なおかつ力のある声が響く。
「炎組の長老様だぞ」
 ガード達はボスの到来に気づいて元気を取り戻し、銀誓館側も厄介な爺さんの到着に気づいた。
 黒ローブがシンプルなマジカルロッドをポケットから取り出し、衣装と同じ魔方陣を中空に描く。
「来たね」
 いかにも大げさな身振りで茅が長老に向かって暴走黒燐弾を放つ。
「何だそのふざけた仕草は」
 茅を指したロッドの先から容赦なく紅蓮の炎弾が飛ぶが、寅靖が駆け寄って蜘蛛の脚で老人を抱擁する。
 この老人をここにおびき寄せた事で、陽動班の役割はほぼ果たせたといって良いだろう。それほど、長老とその他の実力の差は激しかった。
 ラナが急いで魔炎に包まれた茅にヘブンズパッションを送る。
 フェリシアも長老を狙って天妖九尾穿を発動する。
 長老は誰一人として簡単に倒せないのを知ると、再び魔方陣を浮かべ、後退しながら問う。
「お前達は何者で、何をしに来たのか?」
「…………」
「私を無視するのか。お前達は祭を邪魔した罪を生贄として償え。もう謝っても遅い」
 脅しに応じる声はなく、長老は一人では分が悪いと判断したのか踵を返す。そして、間もなく響いたリューシャの遠吠えが銀誓館側の作戦に一旦終止符を打つことになる。
 傷ついた村人達も撤退を始める中、小雪がいきなりクロストリガーを塔に撃ち込んだ。
「塔の真実を貴方達は知っていたのですか?」
「長老達はこの塔で村人やよそ者を生贄にしている、判っているのかっ!」
 フェリシアが憤りの声をあげるが、大人達の反応は鈍かった。
 近くに倒れていた男が、別の一人に支えられて立ち上がり、フェリシアの方を振り向く。
「儀式のことは領主様と長老様方に任せておけば良いのだ。長老様方のなさる事を信じて従うのが幸せなのだ」
 そう言い残し男は去って行く。負傷者のことなど気にもかけず、元気な取り巻きに守られた長老は逃げ足も早かった。
 銀誓館の5名は闇に紛れて納屋へと向かう。
(「狂気か……」)
 寅靖は撤退する皆の殿で周囲を警戒する。もし追っ手があれば震脚と禁縛陣で即刻排除するつもりだった。
 そして、もう生贄は逃げたはずの塔には灯りが点り始めていた。
(「あの塔には、かつて本当によるべなき者が身を寄せ合って暮らしていたのかもしれない」)
 茅の心にはいつの頃からかそんな思いが去来していた。


マスター:水上ケイ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/12/01
得票数:カッコいい15  ロマンティック4 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
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