<リプレイ>
●自らの正義を貫くため 「……恨みをかわりに晴らしてくれる所ですか。こういうのも商売として成り立つものなんですね。恨みは自分で晴らすべきもの、人任せにしちゃ迷惑が飛び火するだけでしょう……。こういうのを依頼する人は、自分の個人的な問題を自分で処理できない愚か者揃いなのでしょう。そして、その恨みはらしの仕事をしていた人も愚か者です。自分勝手な正義など、暴力と同じですからね」 嫌悪感をあらわにしながら、真神・智尋(此花咲耶姫・b41226)がゴーストの確認された倉庫にむかう。 ゴーストが確認された倉庫は、正義を自称する復讐代行人が借りており、ここを拠点にして数多くの拷問道具を使って依頼を遂行していたようだ。 「武器や、器具に罪はありません。あるとしたら、それを使った人。……そして、それを作り出してしまった人。……復讐に、手を貸してはいけないんです。復讐は、もはや正義ではないのですから……」 当時の新聞記事を眺めながら、舞月・詠仁(舞葬新月・b43103)が悲しげな表情を浮かべる。 犠牲者達の大半は酷い死に方をしており、いくら自らの正義で行った事とはいえ、決して許される事ではなかった。 「悪は罰すべきだ、それは分かる。でも、だからって、他人に自分の正義を押しつけたらダメだ! そんなの『正義』じゃない」 険しい表情を浮かべ、アートゥロ・ルーポネーロ(狼騎士・b80823)が断言する。 「正義を目指して失敗はいいですけど……、自身の正義の押し付けは、ただのエゴですよ」 小さく首を横に振り、天果埜・暁(星詠の緋眼・b07058)が口を開く。 (「そもそも、正義などと言うものは絶対者ではなく、立場の数だけ存在する。また、恣意的で独善的なのは大抵の人間がそうなのであって、今更驚き論うような事ではない。理想論は兎も角、理不尽な暴力と戦えるのは理不尽な暴力しか無いということは一面の真理であって、それは戦いの中に身を置く僕らがいちばん良く知っている筈のことじゃないか。復讐心から闇に身を投じた僕もまた、半ば以上彼等と同類なのかも知れないよ?」) あえて口には出さず、東郷・悠紀(雲耀の大太刀・b33078)が伏し目がちになる。 「……信じる正義、ですか。はじめは自分達が経験した何かから、法だけでは全ての罪人は裁けないと判断し、それで自分達でそういった人達を裁いていこう、と本当の正義感からの行動だったのでしょうね。けれど、それを悪意に利用されてしまい。結局は、自分達を陥れたものへの恨みが発生し、結果、自らの集団も恨みに飲まれてしまった、という事でしょうか……。だとしたら、悲しいものですね……。道さえ違えなければ、彼らは立派な正義の集団にもなれたかもしれませんが、惜しいです」 どこか遠くを見つめながら、北舞・鳴子(よさこいダンシングガール・b78830)が呟いた。 だが、彼らがやっていた事は、正義からは程遠い。 「正義の名を借りただけの暴力集団……、許せませんね」 激しい怒りに襲われながら、波多野・のぞみ(真紅と漆黒の淑女・b16535)が拳を震わせる。 彼らは寄っていたのかも知れない。 正義と言う名の酒に……。 「殺られる前に殺れ。……え? 何か聞こえましたか? それは気のせいですよ。イヤだなー。ハハハハハ。ともかく偏った正義感は危険よね。自分が正しいと思うから、とにかく熱心だし、しかも自分のした事を世間に広く知らせようとするし……。さらに他人を巻き込もうとするし……。宗教的情熱、熱狂とも言えるわね」 軽く笑い飛ばした後、黒木・摩那(深遠なる碧き鏡の剣士・b12406)が自分の意見を述べる。 「まあ、法の限界、と言うものが問題となる事は確かにある。様々な人権問題や、多様化する犯罪に対処が追いつかぬ問題、簡単には答えの出ぬ難しいものじゃ。しかし、件の連中は、そこまで高尚な頭を持っているほどではないようじゃな。この世に絶対的な正義なぞ存在せぬ。全ては相対的なものであり、視点が変われば正義も変わる。ゆえに、正義とは数多あるものじゃ。誰かが悪く、誰かが正しい。そんな勧善懲悪な世があれば、誰も何も苦労なぞせぬよ」 険しい表情を浮かべながら、神楽・美沙(妖雪の黒瑪瑙・b76178)が答えを返す。 「法というのも難しい問題ではありますが、かといって自分の正義を押し付ける事を是としてしまったら、それは無法もいいところです。こうした人達は、おそらく『押し付ける側』である事に慣れきっていて、『押し付けられる側』になる事など、考えてすらいないのでしょう。そもそも、そうした主張を展開した先に、どんな展望をもって行動していたのでしょうね。自分達の正義をただ示したいだけだったとしたら、自己満足もいいところです」 ゴーストが確認された倉庫に辿り着き、アルファリア・ラングリス(蒼光の槍・b77160)がジロリと睨む。 倉庫は廃墟と化してから暫く経っており、粗大ゴミなどが捨てられて、酷い状況になっていた。 「どれだけ正義の為とかいっても、拉致監禁やら拷問やらするような連中が、まともなわけありませんよね。しかも、理解されないとなると、あからさまに暴走するとか、思いっきりテロリストとか危険思想集団と同じですし……。こういう自己中心的な連中は好きじゃないです。世の為人の為にもほどほどに叩いてきっちり潰しておきましょう。あんまりやりすぎると同類になっちゃいそうですしね」 仲間達に声を掛けながら、美堂・白髏(白一輪・b51491)が廃墟と化した倉庫に入っていく。 その途端、リビングデッド達が現れ、白髏達に突き刺すような殺気を放つ。 「貴方達は、自分の正義を貫いたんだね……。ならばボクも、僕の正義で応じるよ。負けないけれどね。Mr.田吾作、今回は何か考えがあるのですか?」 すぐさまイグニッションし、ルカ・ルインズヤード(荒寥たる氷鏡世界・b83195)が、鬼頭・田吾作(真ファイアフォックス・bn0034)に視線を送る。 だが、田吾作は無言。 何故か依頼書らしき紙を握り締め、だんまりを決めている。
●偽りの正義 「流石はヒーローの田吾作さんですね。自ら進んで前に行くなんて。私は援護しますから、頑張って下さい」 リビングデッド達に突っ込んでいった田吾作を応援し、暁がパラノイアペーパーを発動させる。 次の瞬間、田吾作がハッとした表情を浮かべ、『おい、こら、ちょっと待て!』と叫んで汗を流す。 ……何か策がある用には思えない。 だが、リビングデッド達にペコペコと謝り、依頼書らしき紙を渡していた。 「田吾作さーん、早まるなー! リビングデッドに依頼するなど、血迷ったとしか思えません。ここは田吾作さんを止めなければ! 何を言い出すか、わからないし。色々貫かれてるしね……」 途中で色々と心当たりが浮かんできたため、摩那が同情した様子で田吾作に視線を送る。 その事を思い出すくらい田吾作は必死! まさに命懸け! もう後がない!! 「……田吾作。曲がりなりにも正義のヒーローを自称するなら、それらしいところ見せてみるがよい」 田吾作に声を掛けながら、美沙が氷雪地獄を発動させる。 それと同時にリビングデッド達の悲鳴が響き、『あ、あれ……? こいつら、弱ぇ! やっぱ、依頼をするのはナシ! なんか悪い夢を見ていたわ!』と叫ぶ。 「……責めはしない。田吾作先輩なりの理があるのだろう」 クールな表情を浮かべながら、悠紀が旋剣の構えを発動させる。 その言葉を聞いて田吾作がニコッと笑い、『そりゃあ、俺だって色々と考えているさ』と言って、あれこれと言い訳をした。 しかし、リビングデッド達が田吾作の肩を掴み、『騙されるな! あれは罠だ。ピュアなお前の心を乱す姑息な罠!』と説得をし始める。 「だったら、正義ってのが何なのか、とくと語ってやるぜ!」 一気に間合いを詰めながら、アートゥロがリビングデッドに黒影剣を放つ。 その一撃を食らってリビングデッドが悲鳴をあげ、『む、無念……』と言って崩れ落ちる。 「正義の反対って、何だと思う? 僕は、正義だと思ってるよ。だから貴方達の正義の相手は、僕たちの正義だ。そう思う。互いの正義に恥じないよう、全力でいくよ!」 リビングデッド達を迎えうち、ルカが吹雪の竜巻を使う。 それと同時にリビングデッド達が『何を血迷った事を……。ここで悪に屈するわけにはいかん! いますぐ裁きの鉄槌を!』と叫んで、次々と襲い掛かってきた。 「正義って、悪を裁くだけかよ!? 俺は違うと思う、大事な仲間を守ること! それだって正義だと思うんだ! それに、自分の信じる正義を他人に押しつけるのって、絶対に正義じゃないじゃん!」 納得がいかない様子で、アートゥロがリビングデッド達にツッコミを入れる。 その途端、リビングデッド達が激怒し、『我らを愚弄する気か! 許さん! 許さんぞおおおお!』と叫んで、アートゥロ達に斬りかかっていく。 「やっぱり、同類は無い……かな?」 リビングデッドの振り回すだけのお粗末な剣をかわし、悠紀が暴走黒燐弾を撃ち込んだ。 そのため、リビングデッド達は攻撃する事が出来ず、黒燐蟲の餌食になった。 「こうなったら、悪滅スピナーで一緒に薙ぎ払っちゃいましょう」 リビングデッド達を射程内に捉え、摩那が悪滅スピナーを発動させる。 次の瞬間、摩那の両肘から悪を断罪する処刑の刃を生え、あっという間にリビングデッド達を切り裂いていく。 リビングデッド達もそれに抵抗しようとしたが、成す術もなく肉塊と化した。 「己の主張がある、というのは、よい事なのじゃがな。血気盛んなばかりに、知った気になったのは残念な事じゃ」 リビングデッド達を全滅させ、美沙がさっと踵を返す。 「……やはり、ヒーローともなれば誰かに何かを頼んで仕返しなんてのは考えないんですね。なんどお尻の危機を迎えても、挑戦し続けている田吾作さんも、またヒーロー。常人ならとっくに心砕けてますしね。ところで、何を依頼しようとしていたんですか?」 田吾作の持っていた依頼書に気づき、暁がそれを見ようとする。 その事に気づいた田吾作が慌てた様子で、『あ、これはリビングデッド達を油断させる作戦だよっ!』と答え、依頼書を口の中に詰め込んだ。 「Mr.田吾作は無事ね。これ、よければ。次は上手くいくといいね」 田吾作の無事を確認した後、ルカが持参した絆創膏を渡す。 それを受け取った田吾作は『これ、ありがとうな!』と言った後、傷ついていた頬にペタッと貼った。
●処刑人 「うわっ、凄い姿ですね。……犠牲者でしょうか。間違った正義感の犠牲者……」 特殊空間に留まる地縛霊を見つけ、智尋が複雑な顔をしながら、魔弾の射手を発動させる。 地縛霊は拷問器具を鎧のように纏っており、背中から生えた腕には剣や斧や槍が握られていた。 「ひょっとして、見た目からして物騒な相手ですね」 警戒した様子で地縛霊に視線を送り、白髏が戦文字「縛」を発動させる。 それと同時に地縛霊が動きだし、白髏に斬りかかっていく。 「どうやら、拷問器具の魅力に取り憑かれてしまったようですね。貴方の相手はこちらですよ」 地縛霊を挑発しながら、詠仁が雪だるまアーマーを発動させた。 その挑発に乗って地縛霊が唸り声を響かせ、狂ったように持っている武器を振り回す。 「今まで、それほどの数の拷問を行ってきたという事ですか。それも、一方的な正義の名の下に……。「人が人を裁く。随分と簡単に考えていらっしゃるご様子ですが、それが如何に重く、責任のある大変な事なのか。分からないというなら、あなたに裁く権利などありません」 地縛霊に語り掛けながら、アルファリアが黒燐奏甲を使う。 その間に地縛霊が距離を縮め、アルファリアの身体を切り裂いた。 「どんなに多くの腕があろうとも、使えなくすれば!」 地縛霊の懐に潜り込み、のぞみがデモンストランダムを叩き込む。 だが、地縛霊の勢いは収まらず、反撃を食らってのぞみが悲鳴を上げた。 「彷徨える魂を祓うのも、真神の者の役目です。……その永遠の苦しみから、解き放ってさしあげます!!」 攻撃を仕掛けるタイミングを見計らい、智尋が少しずつ間合いを詰めていく。 それでも、地縛霊は剣や斧を握り締め、怯む事なく智尋達を攻撃していった。 「……まさに殺戮マシーンですね」 妙に納得した様子で、鳴子がよさこいソーランを踊り、ダンシングワールドを発動させる。 しかし、地縛霊は決して怯まない! 「ならば、これでどうですか?」 地縛霊に問いかけながら、白髏が戦文字「縛」を使う。 次の瞬間、地縛霊の動きが封じられ、そのままマヒ状態に陥った。 「これで終わり、全てを切り裂きます!」 地縛霊をジロリと睨みつけ、のぞみがスラッシュロンドを叩き込む。 その一撃を食らって地縛霊が断末魔を響かせ、特殊空間もろとも消滅した。 「おやすみなさいませ。もう苦しまないでいいのですよ。あるべき所にお帰りなさい」 消えゆく地縛霊を眺め、智尋がそっと別れを告げる。 おそらく、地縛霊は納得していない事だろう。 自分が『悪』として認識した存在が目の前に居ながら、倒す事が出来なかったのだから……。 「来世では、本当の正義の味方になれるといいですね」 地縛霊に対して別れを告げ、鳴子がその場に線香と花を供える。 ……彼らが信じていた正義は間違っていた。 それが最初からだったのか、途中から変わってしまったのか分からないが……。 「世の理不尽を正すとしながら、自ら進んで理不尽を行う。その矛盾に気付いていなかったとしたら、何とも残念な事です」 この地で亡くなった全ての魂に黙祷を捧げ、アルファリアがさっと踵を返す。 「そう言えば……、田吾作さんは大丈夫でしょうか」 ふいに田吾作が心配になり、詠仁が空に向かって呟いた。 いつものパターンを考えと、大丈夫ではない気がする。 だが、いつもと違って田吾作を構う相手もいないため、重傷にはならない気がした。
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参加者:12人
作成日:2011/11/21
得票数:楽しい6
カッコいい2
ハートフル2
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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