<リプレイ>
●花火の夜 彬は可愛い桃饅を手に取り、水咲は馬拉羔を手に取った。 悠輝は肉饅を多めに買い、莉玖は骨付きフランクと中華菓子を買い込む。 それから移動だ。公園へ大桟橋へ。 「ほら、はぐれないように掴んどきなさいよ」 悠輝は莉玖の手を握って、莉玖は笑って握り返す。 「大丈夫? 私の手を離さないようにね」 買ったチャイナドレスに着替えた沙羅は、楼心の言葉に頷く。 「それ似合うわぁ♪ 沙羅ちゃんってスタイル良いわよねぇ」 沙羅は頬を染めながらも嬉しいですと答えて。 公園はもう人で一杯だ。 「先輩、これで最後ですか」 その少し高くなった所で、久遠は買ってきた栗を絶佳に渡した。 「量があると栗も重いわね」 先に買った分もあり、絶佳の周りには凄い量の栗がある。 「桜井さんこんなに持てないかも。困ってる姿、可愛いでしょうね」 陽が暮れる中、笑い合う。じき花火が始まる時刻だ。
「珍珠乃茶と愛玉子を」 色々迷って少し夏向けの中華デザートを頼んだ時、成章はどんという音を聞いた。始まったのだと音の方へ向くと、職人芸の華が見える。 「こっちこっち」 その前を友梨が一狼と通り過ぎた。目的地は点心と京劇ショー等を扱うビル。 案内しているのは中華街に慣れた友梨。手を引かれるのは流石に恥ずかしいと一狼は頑張って友梨を追う。 二人も音に惹かれ一瞬港の方を見、覗いた光華に短い感嘆の声を漏らした。でも二人はやっぱり目的地へ。 「ここの美味しいんだよね」 「小龍包が三種もあるのか」 花火の音と、点心を楽しむ夜を過ごす。
鮎隆は公園を走っていた。良い場所は場所取りされてて、ここぞと言う場所に出会えない。 「最後の大花火までには穴場スポットを!」 と諦めずに走っていく。 中学生もそうなのだから小学生が困ることは請け合いで。優希と忌子は肉饅、志乃は珍珠乃茶とマンゴー月餅を買って、おやつ持参で公園まで来たものの途方に暮れていた。 はぐれないよう手を繋いだ優希と忌子はぴょんぴょん飛んでみる。 「忌子ちゃん、見える?」 「ちょっとなの……優希の方が背が高くて羨ましいの」 でもちょっと見えると聞いて、身長が忌子と変わらない志乃は。 「お願いなんですけど」 優希に抱き上げて貰い、身長を上げ底する戦法に出てみた。 「み、見える?」 「見えます!」 「意外に力持ちですね」 そこで不意に声がした。声の主は優希を背中から抱き締める。 「お姉さんとデートしませんか♪」 「わ!」 久遠は落とされそうになった志乃を支え。 「場所取ってあるんですよ」 そう優希を覗き込んだ。
そして久遠は小学生を連れて絶佳の待つ場所へ。 「いらっしゃい♪ 栗どうぞ……余ったら桜井クンに全部あげる。沢山食べないと帰り大変よ?」 ええっ! と絶佳に差し出された大量の栗に優希が思った通り慌てたので、高校生二人は笑いを堪えられなかった。
「互いで買った物を半分こ。益々仲良くなれる気がしない、かな?」 公園で彬は桃饅を二つに割り、小首を傾げる。 「そうね、きっともっと仲良くなれると思うわ……誰かが見たら妬かれてしまいそうな程」 「え?」 水咲は微笑んで馬拉羔を割り、夜咲く華はいつも綺麗ねと話を変える。 彬も華を見上げ、土産に持ち帰りたい位だと呟いた。 また公園の一角では、楼心が夏の風物詩に目を細め、来年も来たいと想いを馳せている。 「今年の夏は始まったばかりですよ。色んな所に遊びに行きましょう」 微笑んで沙羅はそう答えた。
大地は大きくない体を逆に活かして、下を潜り大桟橋の前へ出た。 「わぁ!」 そこから海に上がる花火は大きく見えて。 声を上げ、買ってきた春巻を食べるのも忘れて見入る。 莉玖と悠輝は肉饅とフランクを奪い合いながら空の華を見上げる。 「あ、最後の1個が」 「まだ食べる気?」 そんなことをしながらも莉玖は誘われたことに感謝し、悠輝は誘って良かったと思っていた。
●海に咲く大輪の 出航の汽笛が鳴る。直貴は人を避けつつ走り、階段が上げられる寸前で船に転がりこんだ。 「どうしたー……?」 だきにとダイアナが覗き込むと、その鼻先に直貴は肉饅を差し出した。 「食べたかったんだろ?」 ダイアナは一瞬吃驚して、それから「バカね」と微笑った。 「でもありがとう」 夜の海に船は走り出し、じきに大輪の花火が港に上がり始める。 「やっぱり船はいいわね」 七つの海を渡った国の血が騒ぐのか、シアリーズは上機嫌でデッキを歩いていた。 その頭上に花火が咲く。惹かれるように見上げ。見続けて。 「……綺麗……あら?」 感動で涙すら溢れる。 ジュースを手に、蓮は上ではなく下を見ていた。 「何かいるの?」 隣に来たダイアナも、下を覗こうとして。 「あ、違うんだ。海にほら、花火が映って」 「あ!」 「足元にも空があるみたいでー……少し怖いー……」 そう思うと、どーんとかぱーんとか言う音が空なのか海なのかわからなくなりそうだと、だきには思う。 夜空に咲く華に、梅華はビデオカメラを向けていた。デッキのテーブルにはフレッシュジュースを置いて。 「深き闇夜の中色鮮やかに咲く花火……とっても綺麗ですね〜♪」 「本当ですの、もう夏ですのね」 浴衣姿のアウレリアは海風に髪を靡かせて、花火を見上げる。
デッキ後部には、結社Aquariumのメンバーが集まっていた。今日の乗船は、連雀の七夕船上誕生パーティーの下見だ。花火が上がっていない間は、ずっとその話をしていた。 「笹舟にケーキを乗せて流すってええやん」 紅茶を手に、粋に浴衣を着た遊弥が強くプッシュしているのも連雀の誕生パーティーの企画だ。 「だから普通でいいってのよ……!」 連雀は笑いながらも突っ込むが、皆ノリノリで止まらない。 「七夕パーティーはどんなケーキがいいでしょうか……」 紫陽花の浴衣に黒扇子を併せた花影は、リクエストがあったらと微笑む。 「皆、本気で笹舟にケーキを乗せて流すのかい?」 文悟も、そう言いながらも笑いを堪えられない。 「ケーキを発砲スチロールで作ったら沈まないし、食べ物も勿体なくないです!」 寧などはもう本当に、真剣に考えているようだ。 「そーだ。七夕のパーティは、皆で浴衣着てお祝いってのもいーんじゃねえ?」 遊弥と花影の浴衣を見て、リサが提案する。 話が盛り上がっている間に、どぅんと花火は上がり始めた。 「始まりましたね……!」 「わ、綺麗……」 夏の花火を愛する理駆は、少し早い夏の夜の芸術に目を細めて見上げた。寧は感動に言葉を詰まらせる。 「花火職人は、僕らのアビよりすごい魔法を持ってるっスね」 惑星、枝垂れ、文悟は火花の魔法に酔いしれて。連雀は夜空の華を、携帯電話の動画で切り取り。 「わぁ♪ またあがりました♪」 「陸で見るのとはまた違う迫力があって、面白いですね」 はしゃぐ花影の横に出て、シャロームも手すりに身を乗り出す。花火は陸よりも近くに見える気がして。 「ほら水面にも映ってっし、腹に響くこの音も……日本の夏って感じだな」 リサが水面を指差すと、夜の海は空の光をゆらゆら映していた。
「飲物取ってくるなー」 別の一角では結社Streitenのメンバーが集っていた。彩矢が言うと、涼が自分のもと手を挙げる。陽早の分もと言ったら、持てるかと彩矢に切り返されて涼も立ち上がった。 「あ、俺も手伝うよ」 と、陽早も追う。 「朱璃は何がいい?」 「オレンジジュースを」 颯生にエスコートされてきた朱璃は、デッキチェアに腰を降ろし颯生に答える。 自分で見に行くと言う羽月について、龍臣もドリンクカウンターへ行き。 「あ、なんだろうこれ?」 羽月は流行りのホップ飲料を頼んだので、龍臣も主に倣って同じ物を頼んだ。 「苦……」 飲酒運転対策のビールを模した物は羽月には苦かったようだ。顔を顰めた様子に龍臣は笑みが零れそうになる。 飲物を手に戻ると花火が上がり始めていた。 「わ〜綺麗綺麗!」 冷めた反応をしていた羽月も美しい花火に素直にはしゃいで。今度こそ龍臣も微笑む。 「うさぎ、もっとこっち来いよ……寒くないか?」 涼の無理矢理の標準語には、恋人の陽早も胡散臭いと笑う。でも、くっついてるのは嫌じゃない。と思った所で。 「お前らなぁ、少しは俺らに気を遣え!」 世界を作っている二人に彩矢のデコピンが飛んだ。 その向こう隣には、颯生が朱璃の手を引いてきていた。 「朱璃、こっちだ。おいで」 「颯生兄さま、飲物は飲まれないのですね」 問うと、朱璃に何かあった時に手が塞がっていてはと颯生は答える。それで朱璃は、自分の分を差し出した。 朱璃が持っていれば良いのだろうと。 颯生はそれに少し口をつけ。 「彩矢も見てるかい」 世話役の団長を気遣う。 「ああ……綺麗だな。ありがとう」 綺麗な花火に照らされて、心まで綺麗になる、そんな夜。
●夜の華に想いを映して 「喉渇いちまったな」 「ナラカ、俺アイスティ」 「オレは自分のを取りに行くんだ」 と言いながらもナラカは「ついで」に取ってきて、ひむかは笑顔になる。 「そだ。誕生日イヤリングありがとね」 花火が耳の石にきらきらして。花火もきらきらで。これからもこんなの一緒に見ていけるかな……と呟けば。 「いつだって傍に居てやるさ。オレが死なねえ限りな」 ナラカは花火の様に潔い。けれどそれが気に入らないと、ひむかはその頬を抓った。
デッキのテーブルにクリームソーダと紅茶を並べて。 智成とアヤの話題は、お互いの髪型のイメチェンのことだった。 「髪、長くすると落ち着いて見えるよな。似合ってるけどよ」 「あ、ありがとうですの……その、笹木さんも黒く染められた髪が良く似合っておりますし、えと……」 恥ずかしさにかえって自爆していた話も、花火が始まると途絶え。 「おー!」 「わぁ……」 感嘆の声だけが漏れる。
知杞と歩生子は昼間は他を歩いてきて、ゴールがこの船。二人はオレンジジュースを貰って、乾杯とグラスを合わせる。 「って、何に乾杯?」 「歩生子ちゃん、明日お誕生日でしょ? だから、おめでとうの乾杯!」 「……そういえばそうだったわね。どうもありがとう♪」 誕生日のプレゼントは金色のピアスだ。 手を繋いだ二人は、花火と夜景に見入る。 「ね、また来よう! 来年も一緒に」 「来年も? ええ。また一緒に来ましょうね」 そんな優しい約束を重ねて。
「脩、お誕生日おめでとう!」 もう一つの誕生日のお祝いは、コーヒーと紅茶で。結梨は笑顔で脩にコーヒーを差し出した。 「……そうか。ありがとな」 脩はそこで自分の誕生日を思い出したような風情だったが、けれど本当に嬉しい笑顔でコーヒーを受け取って乾杯する。 花火を見上げ、脩は結梨の家に拾われてからを思い、結梨は脩が来てからを思う。 「花火、凄く綺麗……♪」 「ああ……」 けれど、答は一つだ。これからもきっと一緒にいる。それぞれに大切な人が出来ても、変わらぬ絆があるから。
「お待たせしました、夏輝お嬢様。サンドリオンでございます」 このクルーズ船は豪華で、ギャルソン服の恵は普通にスタッフのように見えた。受け取る夏輝のゴスロリ風のドレスも少しもおかしくはない。 「ありがとうございます」 お礼を言って綺麗なノンアルコールのカクテルを受け取り、これにミントを落としてみたらなんて夏輝は瞳を輝かせる。 それから恵に抱き上げて貰って――空に近くなったと、夏輝は無邪気にはしゃいだ。
そんな様子も視界に納め、アーバインは同じカクテルを傾ける……シンデレラを意味する名前に、魔法の解けた姫君を想いながら。 「今度はスマートに終わらせたいものです」 呟きは未だ見えぬ先を見て。
気持ちも未来も思い通りにはならぬもので。 「もし今、誰とも付き合っていなかったら、良かったら私と付き合って下さい」 赤いワンピースの麗奈は正面から、遼二に言った。花火のような潔さで。 「ありがとう。僕も麗奈さんのことは好きだよ」 それは答えねばならないと遼二に思わせた。 「でもそれは仲間として、友達としての感情なんだ」 好きだから正直に。 「……そっか」 麗奈は笑顔で、また花火を見上げる――涙が零れないように。
「雪那ったら」 華凛は雪那と終凪、そして紅羽の四人で花火を楽しむつもりだったのだが、デッキに出たら雪那と終凪は姿を消してしまった。 紅羽は自分に気を遣ってくれたのだろうと察するが、だからと言って華凛に何か言えるわけでもない。 華凛はどこか悲しげに見える。死んだという恋人との思い出が、その胸には浮かんでいるのか。 「花火見てたら戻って来るよ。きっと」 「……そうね」 二人はただ静かに……夜空の華を見る。 安らぎが想いになるまでは、このままで。
雪那と終凪は二人の目に入らない所で、風に吹かれて花火を見上げていた。靡く雪那の髪に見蕩れ、終凪は思わず呟く。 「雪那は可愛いよな」 口にしてから終凪は自分が雪那に惹かれていることを悟った。 だが雪那には通じてはいなくて。 「こうしてると私達もカップルに見えるのかな? なんてね☆」 笑顔を向けてくる雪那に、今はこのままでと……終凪も自覚した気持ちを仕舞い込んだ。
「大丈夫か?」 章人は靴擦れでデッキチェアに腰を降ろした是空を気遣った。お洒落に身を包んだ是空だが、しゅんとしていると幼さが戻って見える。 チェアを寄せ、章人も腰を降ろして。手を繋げば思い出す―― 「年越しにも来たよな」 「ええ。あの時、まだ私子供っぽくて」 今日は大人でと思っていたのにと、是空は呟く。 「いや、俺にとっては花火より――」 綺麗だよ愛してると、章人は囁いて是空を抱きしめる。
舞兎は花火が始まる前は話に夢中だった。だが花火が始まると舞兎の反応がなくなって。花火とは言え恋人の心を奪うものは許せなくて。 一際大きな花火が上がる一瞬に、フォーカスは接吻で舞兎の視界を塞ぐ。 「花火にだって、まとの心が奪われるのはやだな」 「フォーカス君みたいだなって……思って見てたんだよ……?」 花火にさえ妬く恋人に舞兎は微笑んだ。 「……大好きだよ」 「わたしも……」 照れ隠しの言葉に、照れ隠しのキスを再び。
「わぁ! すっごい綺麗な花火〜!」 和沙は空を指して、英二を振り返る。もう片方の手は英二と繋ぎたくて、そちらに伸ばして。でも、言うのは恥ずかしくて。 「ああ、花火綺麗やね〜」 そんな手を、掴まえるように英二は握った。 「……ずっと一緒にいれたらいいね」 以心伝心に嬉しくなって、和沙が囁けば。 「うん、ずっと一緒にいようね……」 答と共に、頬にキスが舞い降りる。 和沙は真っ赤になって、それが見えないように英二の腕に顔を埋めた。
いくつかの見られたくない想いも恥じらいも、きっと花火が隠していた。 それは優しい夜の華に溶けて……海に散りばめられていったのだろう。
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参加者:65人
作成日:2007/06/09
得票数:楽しい8
ハートフル16
ロマンティック5
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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