初詣兼ねて山登りという苦行に行くぞ野郎ども!


<オープニング>


 新年の冷たく厳しい一風が、登山服の男女の間を駆け抜ける。
 ロープウェーで六合目まで登り、そこからだいぶん上っただろうか。
 さわやかな汗!
 そして待ち受ける初日の出!
 側には愛する人!
「この滝壺にある大岩はね、建御名方神と建御雷神が力比べをした時落ちてきたと言われているんだよ」
 得意げに彼氏は言ったが、彼女はおとなしくて聞き分けの良い子であるから『えーその神話って一方的な勝ち相撲だったじゃん、どこに岩投げる程の激戦があったの。むしろ、見栄っ張りのみなっちが転がしてた岩じゃ……』とは言ったりしなかった。
 それよりも彼女が気にしたのは、その滝壺の側に転がっている小振りな岩の側で必死に二匹の白猫がせっせせっせと押し比べしている所であった。
「見て、キヨシさん。猫が居るわ」
「猫も力比べしてるのかな。ハハハ」
 キヨシさんとハルカさんは笑いながら登山道を上っていった。
 ……。
「もきゅ?」

 皆が一通り話しを聞き終わる頃には、既にそこは初詣日の出登山の打ち合わせ会場と化していた。
 扇・清四郎はパタンと日の丸の扇子を閉じると、パンフレットを見ている毒島・修二をちらりと見下ろした。
 登山道の距離、道なり、ポイント。まるで雪山行軍でも行うような、険しい視線で毒島はにらみつけている。
「……という訳で、日の出を見ようと登山している人に交じって出没しているモーラットを、回収して来てもらおうと思います。時間は2日の深夜から3日なので、君たちは新年早々山登りをしてもらおうと思います」
 残念ながら元旦の初日の出、とはいかないようだが。
 ルートは6合目までロープウェーで上り、そこからしばらく上ると滝壺がある。ほとんど凍ってしまっているが、闇に浮かぶ氷の滝は美しい事だろう。
 滝壺には大きな岩があり、一説には神の力比べで落ちてきた岩だと言われているが、この手の話はあまり深く追求しないが吉である。
「この滝壺で、神話を信じちゃったモーラット二匹が岩を押し合いへし合いしています。そっと力を貸してあげるなり、自分のモーラットを呼び出してチーム戦を仕掛けるなりして満足させてあげたら、素早く捕まえてください」
「……それって何か御利益あるのか?」
 毒島がぽつりとつぶやいた。
 モーラットの相撲なんか見たくないと言いたげだ。
「ちょっと今年は良いことがありそうな気持ちになれます」
 そこを越えるとすぐ鳥居が見える。
 ここは驚異の千本鳥居があり、延々と階段が上に向かって続けている。千本というと易いように感じるかもしれないが、山頂付近での千本鳥居は苦行に近い。
「この苦行のせいで、2日以降はほとんどこの早朝は誰もいません。この神社の参拝客が多いのは暖かいうちであって、雪が積もるこの冬は閑散としています。……なので、誰もいなければ使役を出してあげてもいいよ。それとここにもモーラットが一匹、くたばっている。登り疲れたようだから、連れて行ってあげてくれ。もしくはそっと勇気づけて一緒に上ってくれ」
 鳥居を登り切ると、そこは山頂。
 山頂の拝殿の中では、地元のおばあちゃんたちが甘酒を用意してくれています。お酒は入ってないので、安心だ。
 絵馬を書くのもよし、初日の出を見に行くもよし。
「……そういえばここは稲荷社なのか?」
「そうだね。この御山も、この山頂にある稲荷狐の修行の場と呼ばれている。元は霊山なんだろう……空気は澄んでいてとても綺麗な山だよ。まあ、狐を使役出来たり能力者が出たりする事はないから、戦闘の用意とかはしなくてもいい」
 そうそう。
 甘酒が欲しそうに、拝殿の端っこでモーラット一匹が様子をうかがっているそうだ。そしてもう一匹は、神社でガラガラ鈴を鳴らしたくてうろうろしているらしい。
 モーラットは全部で五匹。
「捕まえるのは難しくないと思うから、初詣兼山登り。頑張ってきてね」
 扇は気楽そうに手をひらひら振ると、皆を送り出した。

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参加者
柏木・カナデ(真魔弾術士・b08389)
立湧・治秋(寡黙な剣士・b14010)
古谷・唯(鳳仙花・b19041)
高崎・優一(真モーラットの花嫁・b24417)
エイミー・シルバーファング(マジェラーノ・b30593)
鳶沢・成美(三角定規二刀流・b49234)
ヴィラン・アークソード(昇竜魂絆・b70542)
掛葉木・稚都世(にぎほのひなぎつね・b82044)
NPC:毒島・修二(紅龍拳士・bn0013)




<リプレイ>

 ロープウェイを降りると、そこは一面の雪景色であった。ひとつ深呼吸をして冷たい空気を吸い込むと、柏木・カナデ(真魔弾術士・b08389)は次々と降りてくる仲間を振り返る。
 一人でふらりと山や森に来る事はあっても、こうして新年という境目に学園の仲間と登山をするのは、まるで冒険のように新鮮で心躍る事であった。
 毒島・修二(紅龍拳士・bn0013)や立湧・治秋(寡黙な剣士・b14010)などは雪山登山の準備をしっかりとしているようだし、他の下級生の装備も気にしてくれているようである。
 鳶沢・成美(三角定規二刀流・b49234)と掛葉木・稚都世(にぎほのひなぎつね・b82044)は中にしっかりと服を着込んでおり、寒さ対策も万全。
「…それじゃあ俺が先頭、毒島先輩が最後尾で行こう。まだ暗いから、前を歩く人を見失わないように…聞いているか、アークソード」
「ああ、分かって居る。俺はイグニッションをしないが、迷惑になるようなら言ってくれ」
 治秋がヴィラン・アークソード(昇竜魂絆・b70542)に声を掛けると、彼は何事もないように返事を返した。
 山登りよりもモーラットを愛でる事を楽しみにしているとは一言も口にしなかったのは、彼の理性のなせる技であったかもしれない。
 これからの一年は激しい戦いになるだろうから、心の安らぎを……もふもふ。
「しかしその格好でか?」
 修二が呆れたようにヴィランに言った。ヴィランは空色の着流しに雪駄という出で立ちだったのである。
「いつもこの格好だから、寒くはないぞ」
「問題点が違ぇだろ!」
 思わず叫ぶ修二であった。
「…登山の速度は同じだから、イグニッションをしていなくてもかまわない。お前が疲れないなら、それでかまわないが」
 治秋はつとめて冷静に、ヴィランに言う。
 修二や自分達に合わせていては、他の登山慣れしていない仲間は景色を眺める余裕もあるまい。のんびり行けばいい。
 しゅっぱーつ、と高崎・優一(真モーラットの花嫁・b24417)が元気よく声をあげて歩き出すと、ひょいと優一と共にモーラットのカント君も跳ね上がった。
 足取り軽く、時折景色や雪だまりではしゃぐ優一の様子を見てハラハラするのはカナデや修二であった。
「山登りはリズムですよ、リズムよく歩けば余り疲れず昇れますよ」
 と成美は言ったものの、そのリズムを掴む前に疲れてしまっては意味がない訳で。慣れればガムをかみながらも登れるんですがね、と笑いながら優一の後ろを歩く。
 案の定、優一が途中で息を切らせてきたが、まだまだカント君は元気そう。それを見て、稚都世のモラさんバッグに入っていた花雹がウズウズとしはじめる。
 同じモラのカント君が楽しそうにしてるのに、自分は何故鞄に入っていなければならないのだ、とそう言いたげである。
「高崎様、もう少しで滝壺ですよ。手をお貸ししましょう……あっ、花雹様!」
 優一に手を差し出した所、わずかにあいた隙間から鞄を開けて花雹が飛び出した。追いかける稚都世の視界に、真っ白の雪林と……そして純白の滝が目に映る。
 一面の氷雪と美しい氷の滝、この冬の光景だけは昔と変わらず野のまま山のまま……稚都世の足は止まり、視線は釘付けとなった。
「綺麗な所ですね」
「そうだな。…ああ、居た」
 治秋はそっと指さした。
 氷の間を流れる滝壺の側、小振りな岩の側でせっせとまっしろモーラットが押し比べをしている。まっしろ過ぎて、周囲の雪だまりと見分けがつかない程。
 後ろに治秋がしゃがみ込んでも、彼らは押し比べを続けていた。
 エイミー・シルバーファング(マジェラーノ・b30593)に手を引かれてやってきた古谷・唯(鳳仙花・b19041)が、邪魔しないようにその様子を後ろから伺う。出来れば、この様子を写真に残しておきたい程にモフモフである。
 そして更にモフモフなのは、稚都世の花雹も割って入ったところであった。
「ちょっと待って、花雹様! どうして第三勢力と化しているんですかー!!」
 三方向からの押し合いは、完全に岩を停止させた。
 最初は応援していた治秋達であったが、いっこうにらちがあかない。さて、これは一体どうすればいいんでしょう?
 助けを求めるように稚都世が治秋の方を見やると、治秋が指を伸ばした。
 ころん…。
 勝負はあっけなくついた。治秋の座っていた位置関係上、勝ったのは花雹である。その瞬間、あまりの出来事に3匹のモーラット達は『がーんんんん!!!』とショックを受けたまま凍り付いた。
「…行くか」
 文句を言われる前に治秋はさっさとモーラットを確保すると、稚都世のカバンと分けて2匹をしまい込んだ。
 それから、氷の滝を何枚かカメラに収める。
 気がつくと、稚都世の花雹は居なくなっていた。
「花雹様ですか? 邪魔した花雹様はカードに戻って頂いて、甘酒お預けの刑なのです」
 くすりと笑って、稚都世は悪戯っぽく言った。
 しかし治秋とて鬼ではない。カバンからチョコレートを取り出すと、それを稚都世に手渡してやった。
「…モーラットにやれ」
 花雹の分と、先ほどのモーラットの分と。
 疲れたモーラットに、甘いご褒美だ。

 氷の滝で一息ついた後、山道は更に上へ上へと続いていった。
 どこまでも続く千本鳥居、最初は目を奪われて楽しそうにしていた唯も疲れ気味。どこまでいっても赤と赤く、目に焼き付く深紅のトンネルが続く。
「はぁ、はぁ…エイミーちゃんはここ昇るの初めてなの?」
 初めてにしては元気そうである。
 唯が聞くと、エイミーは振り返りながら頷いた。エイミーが普段上っているのは、獣道といった感じの山道であった。
「こうして、足の裏全体をおろして歩くのが良いんだよ。あまり歩幅大きくしないで、体重移動に気をつけて……」
「うん、こう……かな」
 唯はエイミーに教えて貰いながら、山道を登っていく。
 赤い鳥居の道は、まるで別世界への道のようで不思議だ。薄闇の中の鳥居は、ぼんやりと輝いて見えて不気味で……それでいて神々しい。
「ボク、この色好きだな」
「ん、神社の朱色か」
 カナデが思案していると、後ろから稚都世が答えてくれた。
 稲荷社は農耕の神、そして赤は生命と血を表す色であると稚都世は話す。
「農耕は地(ち)、地は血、命の血(いのちのち)、ちは力のち……脈動する力の象徴である言葉です」
 稚都世の言葉に付け足すように、成美が話しを続ける。
「赤はエネルギーの色とされていますし、日本でも災いを払う色であると古来から言い伝えられている事もあます。鳥居が朱色であるのは、そういった意味合いがあるそうですね」
 カナデは深く言葉を飲み込みながら、その意味について考え込むのであった。気付けば、千本鳥居ももう半ばである。
 唯を振り返り、カナデは笑顔を浮かべる。
「ほら、俺達もモラを連れて早く山頂に行こう」
「あ…居た!」
 唯は前方にモラを発見すると、しゃんと体を起こして階段を上りだした。あんまり急いで足をくじくな、という修二の声を遙か後方に聞きながら、唯は階段に倒れ込んでいるモラに近づいた。
「……」
 全く動かない。
 カナデが手を伸ばし、その背に優しく触れた。もふもふした毛は疲れか汗か、ぺったりとしている気がする。
「おはよう。……頑張ってるね」
 カナデが声を掛けると、ぴくりとモラが動いた。
 一応聞いては居るらしい。
 くすりと唯は笑って、顔をのぞき込む。
「んー、長いから疲れちゃったかな。でも、せっかくここまで来たんだもん、ボク達と一緒に行こうよ」
 あとちょっとだよ、と唯はモラを励ます。
 カナデがアーモンドチョコを差し出すと、モラはひょいと取って丸呑みした。甘いチョコで元気が出たのだろうか。
 よろりとモラは立ち上がった。
「よしっ、男の子だね!」
 歩き出したモラについて、カナデも歩き出す。終わりがないんじゃないかと錯覚しそうな鳥居のトンネルを、独り自分と向き合って進むのは苦行と呼ぶに相応しい。
 カナデは前と後ろと振り返り、赤い道を眺めた。
「上へ行きたいと思ったんでしょう? だったら行こう」
 カナデが手を差し出すと、きりっとモラの眉が上がった。ゆっくりゆっくり、モラのペースは慣れない唯にとってもちょうど良いスピードであった。
 応援していると、自然と自分も力が湧いてくる。
「もう少しだよ、神社まで行けば甘酒がもらえるから頑張って!」
 赤の鳥居の先には、微かに明るく染まってきた山脈が見えた。ご来光まで、あともう少しである。掛けだしたモラに続いて、唯が続き優一も顔を明るくしてカント君とともに駆け出す。

 到着、と最初の一歩を踏み出したのは、優一の頭の上からひょいと飛び降りたカント君であった。むろん、目指すは甘酒である。
「カント君、ちゃんと貰ってくるから待ってて」
 優一が拝殿の扉に手を掛けると、中から暖かい空気が流れ出てきた。ほかほかに暖まったストーブの熱が、優しく肌を撫でる。
 全部で九人と……二匹?
「9人とモラ2匹、プラス野良モラ5だな」
 修二が言うと、全部で16個と呟いてヴィランが拝殿に足を踏み入れた。見回した所、モラはまだ居ない。
 優一は甘酒をストーブの側で談笑中のおばあさん達から甘酒を注いで貰いながら、一息ついていた。それにしても、ヴィランはあまり疲れた様子が見られない。
「ヴィラン君は俺より年下なのにほんと全然疲れてないんだね。すごいよ」
「いや、俺はスタミナ回復が早いだけだ。俺だって疲れているが、早く上ってモラを確保せねばな」
 むしろモラが楽しみであった。
 甘酒を受けとると、優一達と一緒に外へと移動する。ヴィランが言うには、拝殿の横のあたりの渡り廊下に影が見えたらしい。
 丁度崖側の手すりがある所で、ここからは向かい側の山がよく見えた。渡り廊下に腰掛け、優一がカント君に甘酒を手渡す。
 暖かい甘酒は、優一の体の疲れを癒してくれた。紙コップから伝わる暖かいぬくもりは、冷えた体に染み渡る。
 山頂まで上がってしまえば、カナデもイグニッションを解いて紋付き袴。修二もイグニッションを解けば袴であった。
 しかし男三人が着物で他は誰も着物ではない、というのも少し寂しい話である。
「そもそも山登りに来たのだろう。だったら……居た!」
 ヴィランが話の途中、急に腰を上げた。びくりとモラがこちらに反応して顔をひっこめるが、優一はのんびりと甘酒を飲み続ける。
 カント君の甘酒は、もう少しで無くなりそうである。
「美味しかったね。そういえばおみくじが引きたいって古谷さんが言ってたけど、カント君はどうする?」
 返事を聞きながら、優一はにっこりと笑ってみせた。片方に持った、三つめの甘酒。隠れたモラの方に差し出して、促す。
「早くしろ、温くなってしまったら旨くはないぞ」
 ヴィランがぴしゃりと言うと、ぴゅうとモラは飛び出して来た。よっぽどほしかったのだろう、自分に似た姿のカント君が飲んでいるのを見て側にやって来ると、甘酒を受け取った。
 モラにとっても甘酒は甘くて美味しいのであろうか?
 しみじみとヴィランはその様子を眺める。
 優一がカント君の方に気を取られた隙に、ヴィランはそっと手を伸ばした。甘酒を必死で飲んでいるモラの毛は、ふわふわでもふもふであった。
 モラときゃっきゃうふふ……。
「あ、甘酒だけでなくて、向こうでガラガラして見るといいぞ」
「お前もたいがい毛玉に弱いタイプだな……」
 一部始終を見ていた修二は、溜息まじりにヴィランに言うのであった。

 誰もいないと思って、油断しているモラが一匹。
 成美は後ろに立つと、脅かさないように声をかけた。
「鈴緒だったかな。あれを鳴らしたいという訳ですか…ほほう」
 はっとモラが振り返ったが、既に包囲されている。成美とエイミー、そして後ろに唯や治秋達が待っている。
 早くしろと言いたげな視線を受け、モラはおろおろ。
「まずは手水舎で手と口を清めるのです」
 成美が当然のようにモラに言って歩き出すと、モラも後について飛んでいく。とにかく鈴を鳴らしたくて、仕方ないのであろう。
 成美に水を汲んで貰いモラが手を洗うと、エイミーも同じように手を洗った。言われてみれば、エイミーも正しい参拝の仕方は気にしていなかったかもしれない。
「すすぐのはいいけど飲まないで……飲まないでって言ったでしょー!」
「飲んでないよ!」
 と言った後で、エイミーはモラを見下ろした。
 ほっ、モラの事か。
 くすりと笑って、エイミーはブランケットを出した。ガラガラをしたら、寒いからブランケットでくるんであげよう。
 成美とともにお賽銭箱の所に戻ると、エイミーはぱっと両手を広げて見せた。
「いくよ!」
 ぴょい、とモラが飛び込むと、二人一緒に鈴を掴んだ。エイミーは右手でモラを掴み、左手で鈴を持つ。
 モラに合わせて、大きな鈴の紐をゆっくりと揺らす。
 ガラン、と低い音が鳴り響いた。冷たい風を切り裂くような、低くてしっかりとした鈴の音色であった。
 カランと成美が投げたお賽銭の音を聞くと、エイミーもお賽銭を入れて二礼二拍手一礼を行う。
「こうするとお願い事が叶うんだよ」
 小声でエイミーがモラに言うと、モラもエイミーや成美に合わせて頭をさげた。なんだかその様子がおかしくて、たまらない。
 仲良しモラを眺めながらエイミーと唯、稚都世はおみくじを引く。
 唯は『何気なきものに目を向けよ、感動多く幸せにする』とあり、エイミーは『苦難を乗り越え信神堅固にすれば少しずつかなう』とあった。
「機が熟せば開運の時、目先の小利に囚われてはならぬとありました。お告げとあらば、心しておきましょう」
 おみくじの内容を良く読みながら、稚都世は笑顔を浮かべる。
「去年よりも、今年はもっといい年になりますように」
 カナデが目を閉じてお願いすると、治秋は捕まえたモラに甘酒をやっていた。治秋の願いは無病息災……堅実で治秋らしい願いだ。
「……毒島先輩も似たような願いだろう」
 治秋が聞くと、修二は黙っていた。
 ふと顔を上げると、丁度朝日が昇ろうとしている所であった。朝日に手をやってまぶしそうに目を細め、成美が息をつく。
 …なるほど、確かにモラが惹かれるのも分かります。
 そうつぶやき、成美がモラを振り返る。5匹のモラと稚都世と優一のモラも、何時の間にか朝日を並んで眺めて居た。
 端っこに座ったカント君の側には、優一が腰をおろす。いつまでもカント君と居られますように、神様にお願いをしたのだから。
 朝日を見ているカント君と神様に、優一は誓う。
「…飛び込んでもいいか」
「いけません」
 ヴィランにぴしゃりと成美は笑顔で答えた。
 差し込む光は、更に来年に向けた目標と願望でもある。再び明るい一年を迎えられますように……と。
「あけましておめでとうございます!」
 エイミーの声が、ご来光に響いた。


マスター:立川司郎 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2012/01/07
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