<リプレイ>
●ハゲて極めよ! 「何だかよく分からない理屈ですよね。俺達がハゲているから悪いんじゃない。あいつらがフサフサだから悪いんだ……って。それじゃ、ハゲてない方達は全部悪い人みたいになってしまいますよね。ハゲていた者達が集まっていた屋敷というのも、もっと同じ境遇同士で何か別の解決方法はなかったのでしょうか。健全にスポーツをしてみるとか、色々と解決方法があったのではないかと思ってしまうのですけど……、逆恨みや八つ当たりで髪を切られてしまっては困りますね」 ゴーストが確認された屋敷にむかいながら、ユリア・ガーランド(天上の蒼・b03877)が資料に目を通す。 彼らは髪の毛が生えている者を憎んでいたため、例え禿げていても少しでも髪が残っていると、半端者、裏切り者と呼んで蔑んでいたらしい。 「髪は長い友達って言葉がありましたですけど、これを言い始めた人、ボクは本当に上手いなって思いましたですよ。髪があろうと無かろうと、こんな事をしてはダメなのです」 寂しそうな表情を浮かべ、裏方・黒衣(デウスエクスマキナ・b57463)が意見を述べる。 例えスキンヘッドであっても、格好いい人間が沢山いるのだから、もう少し違った生き方も出来たはずだ。 「どうやら、本人達はハゲていたせいで、警察に捕まったと思っているようだけど、剃刀を振り回した上、人の髪を勝手に切ったんだから当然よね」 当時の新聞記事を読みながら、アリシア・クリストファ(天空の花嫁・b30952)が呟いた。 それでも、彼らは『ハゲていたせいで』、『ハゲていたから』と思い込んでいたのだろう。 「まあ、確かにハゲハゲ言われるのは辛いと思うけど……。私なら絶対になりたくないし……。なったらそうとう落ち込みそうだから。暴力で訴えるのも良くないけど、ハゲを馬鹿にするのは、さらに良くないわね。そうなったのは、別に彼等の所為じゃないもの」 ある程度の理解を示し、鬼灯・遙(彩雲のサーブルダンサー・b46409)がフォローを入れる。 「傷つけられ、痛みを知るからこそ、人は他者に対して優しくなれる生き物だというのに……。辛さを糧に痛みを蒔くとはな。屈折した想いに囚われさえしなければ……。哀れな事だ」 やれやれと首を横に振り、宿世・淡雪(春日の訪れ・b81824)が溜息を漏らす。 しかし、彼らはハゲである事を馬鹿にされていると思い込み、その事にこだわっていたせいで、まわりが見えなくなっていたようだ。 「年を取ったら誰でも髪が薄なって抜けてくモンやけど、ハゲたかて坊さんみたいに悟れる訳あらへんしなぁ。逆恨みの残留思念を残されてもーとる以上、退治して平穏にしといたらへんとな」 自分自身に言い聞かせながら、菰野・蒼十郎(小者で弱くてヘタレな三拍子・b30005)が廃墟と化した屋敷を睨む。 彼らが髪を嫌っていたせいか、庭には全く木が生えておらず、殺風景であった。 「……とは言え、地縛霊と化した女性は、とっても可哀そうだと思いますぅー。わたしぃもそんな事になったらと考えたらぁ……。涙が出てきちゃいましたぁー」 思わず想像してしまい、調・律子(高校生フリッカーダイヤ・b83668)が薄っすらと涙を浮かべる。 この屋敷に集まっていた者の中に女性もいたため、おそらく彼女が地縛霊と化してしまったのだろう。 「……女性のハゲか。それは……、確かにショックなのは分かるわ。髪は女性の命ですものね。ストレスが原因だったのか分からないけど、それに関しては同情するわ」 女性の気持ちになって考え、白嶺・幽花(イタコギャル・b35588)が答えを返す。 だが、世間はそう言った目で見ておらず、むしろ馬鹿にしていたようだ。 「しかし……、他人をハゲにしてなんの意味がある? なんの問題解決にもならない。まさに馬鹿げた事だ! 彼女にはその事を理解してもらわんとな!」 そう疑問を投げかけた後、妖・刀子(刀狩り・b83838)が気合を入れる。 「確かに、他の方の髪を切ったところで、失った髪が戻る事なんてありませんのに……」 悲しげな表情を浮かべ、紫上・結衣(皆鶴・b81724)が呟いた。 「どんな理由があろうとも、それを粗末にする人達は許せません! さあ、行きましょう。すべてを終わらせるために!」 仲間達に声をかけながら、波多野・のぞみ(真紅と漆黒の淑女・b16535)が廃墟と化した屋敷に入っていく。 室内にはリビングデッドと化した被害者達がおり、『なんで、俺がこんな目に……。畜生、お前達も同じ目に遭わせてやる!』と叫び声を響かせた。 「……で、何故ソレを他人に押し付けるのでしょうか、と説教をしたいですわね。こんな事を言うと年寄りっぽいので、やめておきますけどね。さて、お仕事お仕事ですわ」 リビングデッド達と対峙しながら、エリュシオネス・アンフィスバエナ(白にして暁光・b74146)がイグニッションをする。 次の瞬間、リビングデッド達がバリカンやハサミを構え、次々と襲い掛かってきた。
●髪は友達 「ううっ、可哀そうですぅ……。こういう時はぁ……、確か死んだ方がましって言うんでしたっけぇ〜? だったらわたしぃが、引導を渡してあげますぅ〜」 仲間達と足並みを合わせ、律子が虎紋覚醒を使う。 次の瞬間、リビングデッド達がハサミやバリカンを構え、次々と攻撃を仕掛けていく。 「ふふっ……。私の髪、綺麗でしょう? ちゃんと手入れしていますから、自信はありますのよ?」 リビングデッド達を挑発しながら、エリュシオネスがノーブルブラッドを発動させる。 その間にリビングデッド達が髪の毛を狙って攻撃を仕掛けてきたが……、当たらない! それでも、リビングデッド達がハサミやバリカンを構えて、諦める事無く攻撃を繰り出した。 「いや〜ん、来ないで来ないで、ですぅ〜」 激しく首を横に振り、律子がレゾナンスナックルを叩き込む。 その一撃を食らっても、リビングデッド達は……、怯まない! 「自分がそないな目に遭うといて、そないな目に遭わせようて、何を考えとんねん! 被害者やからて加害者なってエエ理由あらへんわ!」 リビングデッド達を叱りつけ、蒼十郎がブラックヒストリーを放つ。 それと同時にリビングデッド達が『お前達に何が分かる! 我々が受けた仕打ち……。その身を持って思い知るがよい!』と叫び声を響かせる。 「確かに、その身に受けた仕打ちは……、失ったものが髪でも、日常を壊された点においては、突然命を奪われた事と大差ない。その辺りは私も同情を禁じ得ないが……、同じ穴の貉となってどうする。いつまでそんな真似をするつもりだ。死者は安らかに……さっさと行け」 リビングデッド達に語り掛け、淡雪がハサミの一撃をかわす。 その途端、数本の髪が宙を舞ったが……、それだけだった。 「髪は乙女の命ですわよ? さすがにそのような暴挙を許すほど、私は甘くありませんわよ」 リビングデッド達の攻撃を避け、エリュシオネスがグラインドスピンを仕掛ける。 それでも、リビングデッド達がハサミを振り回してきたため、すかさず足払い。 哀れリビングデッドは自らが振り回していたハサミの餌食に……。 「髪がないようですし、今更火が燃え移っても大丈夫ですよね、きっと」 魔弾の射手を発動させ、ユリアがニッコリと笑って、隕石の魔弾を仕掛けるタイミングを窺った。 だが、リビングデッド達は血まみれの状態のまま、『我らが恨み。この程度では、まだ晴らせぬ。晴らせぬのだ!』と叫ぶ。 「同じ苦しみを、関係のない誰かにぶつける。この世はそんな人間ばかりでは、ないのだがな」 リビングデッド達に視線を送り、淡雪が極月煌光・散華を使う。 次の瞬間、リビングデッド達が『みんな、禿げろ。禿げてしまええええ!!』と叫び、捨て身の覚悟で突っ込んできた。 「……という事で隕石に当たって、大いに反省して下さいね」 リビングデッド達を迎えうち、ユリアが隕石の魔弾を発動させる。 それと同時にリビングデッド達が爆発に巻き込まれ、辺りに肉片が飛び散った。 「髪を無くしても、理性を無くしたら、人として終わってまうわな。まあ……、終わってもーたから、リビングデッドになってもーたんやろうけど……」 リビングデッド達を全滅させ、蒼十郎が深い溜息をもらす。 それだけ、世の中に対して不満があったのかも知れないが、ゴーストと化した後もそれを解消する事は出来なかった。
●失ったもの 「……あら。地縛霊って女性の方だったのね、それは辛いでしょう……」 特殊空間に留まる地縛霊を見つけ、遙が同情した視線を送る。 それまで地縛霊は泣き続けていたが、その気配に気づいてハサミや、バリカンを飛ばしてきた。 「……何の意味もない。馬鹿げた行為を繰り返すのはやめるんだ! そんな事をした所で貴女の髪は戻らない。それよりも髪をなんとかする方法を、みんなで考えるべきだろう? 貴女に問題があるとすれば、問題から目を背け、他人に八つ当たりする道を選んだ事……。そんな事では女性として、魅力が大減点だぞ!」 すぐさまカースインベジョンを発動させ、刀子がハサミやバリカンを避けていく。 だが、あまりにもその数が多過ぎるため、避けきれる事が出来ず、辺りに鮮血が飛び散った。 「あなたには同情すると言ったけど、同じようになりたいと言った覚えはないわよ。人の髪を刈る事よりも、自分のハゲを誤魔化す方法を探さないと、いつまで立っても馬鹿にされるだけだと、なぜ気がつかないの?」 仲間達の後方で身を守りながら、幽花がモーラットヒーローのイヅナと、ゴーストイグニッションをする。 それでも、地縛霊は攻撃する事を止めず、『あなた達だって、私と同じ目に遭えばわかるわ』と反論した。 「そんな事をしたら、頭皮と言う戦場から散っていった先駆者に失礼なのです。去ってゆく髪々を見送るのは辛かったと思いますですが、それを他人に共用するなんてダメダメなのですよ」 地縛霊に対して言い放ち、黒衣がスピードスケッチを放つ。 その一撃を食らって地縛霊が『戦場から逃げた兵士に価値なんてない! 彼らは戦うべきだったのよ。真っ白に燃え尽きるまで!』と、妙な方向から言い返す。 おそらく、脳内で毛根を擬人化しているのかも知れないが、あまりにもシュール過ぎて、思わず吹き出してしまうほどであった。 「それに、髪くらい放っておけば伸びるわよ。被害にあったのは同情するけど、当たるべき相手が違うでしょ!」 仲間やリューイの後方で身を守りつつ、アリシアが間合いを取って、死がふたりを分かつまでを使う。 それに合わせて、リューイがモラスパークを放ち、地縛霊を牽制する。 「貴女の髪は戻りません。負の連鎖を止めて、髪を伸ばす方法が探しませんか? 育毛なり、カツラなり、植毛なり、今の技術はかなり高いと聞いていますわ。それでも、貴女が後ろ向きな行為に走るというのなら、正しい方向へ正してあげるのが、同じ女性としての務め。もう、こんな事はやめなさい!」 地縛霊に対して語りかけ、結衣がクルセイドモードを発動させた。 だが、地縛霊は『すべてやったわ。出来る限りの事は……。でも、駄目なの。駄目だったのよ!』と叫ぶ。 そのバックに浮かぶのは、今までの出来事。 どうやら、毛根的な何かがお亡くなりになっている上、色々とやってアレルギーっぽいものが出た事らしい。 「……可哀想ですが、諦めて成仏してくださいね。……っていうか、髪を失う悲しみが分かってるんですから、他人に同じ悲しみを味あわせようとしないでください!」 地縛霊と対峙しながら、のぞみがノーブルブラッドを使う。 それでも、地縛霊は殺気に満ちた表情を浮かべて、ハサミやバリカンを飛ばしてきた。 「かすってたまるもんですか。まったく、女の命に手を出すなんて最低! あなたも女性ならわかるでしょ!!」 攻撃を避けて地縛霊の懐に潜り込み、遙がクレセントファングを放つ。 その一撃を食らっても、地縛霊の戦意は変わらぬまま。 ただ、目の前にある髪の毛を滅するため、動く殺戮マシーン! 「私は、仲間と共にオマエを倒す! 裂けよ大気、飛べよカマイタチ……。唸れ、村正ッ!」 地縛霊に対して宣言した後、刀子がイーティングブロウを仕掛ける。 しかし、地縛霊は鬼のような形相を浮かべ、『すべて刈り取ってあげるわ。今が収穫の時……!』と叫ぶ。 「過剰なサービスは、ノーサンキューよ! リューイ、同時に仕掛けるわよ」 リューイと連携を取りながら、アリシアが地縛霊に穢れの弾丸を撃ち込んだ。 それに合わせてリューイが再びモラスパークを放ち、ジリジリと地縛霊を追い詰めていく。 「……これで成仏してください。次の世では大切に育ててくださいね」 一気に間合いを詰めながら、のぞみがジグザグスラッシュを叩き込む。 その一撃を食らって地縛霊が断末魔をあげ、特殊空間もろとも消滅した。 「……強敵でした。ボクも髪を失えば、理性を失ってしまうのでしょーか? そーしたら、出家して尼さんになるのも悪くないかもですね。モノは考えようなのですよ。無いものに囚われない様に、ですね」 特殊空間が消滅した事を確認し、黒衣がしみじみとした表情を浮かべる。 おそらく、地縛霊にはそう言った考えをする事が出来ず、また失ったものも多かったのだろう。 「髪の抜ける原因は、病気による薬の副作用やストレス性のものなど、原因は多種多様……。私の田舎には、お年寄り以外でハゲの人は少なかったように思えましたけど、都会には随分と多いみたいですね」 田舎に住んでいた時の事を思い出し、結衣がボソリと呟いた。 それだけ、ストレスが溜まりやすいのかも知れない。 頭が禿げてしまうほどに……。 「一説によれば、あの世での姿は自分が思った姿だとか。あの世でなら、ふさふさの髪だった頃に戻れるんじゃない?」 地縛霊に語り掛けるようにして、幽花が特殊空間のあった場所を眺める。 その言葉が地縛霊に届いているのか分からないが、もしも届いていればフサフサな自分自身を思い描いているかも知れない。
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参加者:12人
作成日:2012/01/22
得票数:せつない8
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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