春待ち花の雪行灯祭り〜モーラットもいるよ〜


   



<オープニング>


 とあるスキー場で、集客のためのイベントとして開かれる小さな雪まつり。
 有名なもののように大きな雪像があったりするわけではないが、規模が小さいなりにがんばっていて、スキー客たちの夜の楽しみとして喜ばれている。
 雪原に点々と置かれた行灯(あんどん)には、赤や黄色、青や緑といった色とりどりのLEDが入っていて、きれいな虹色にグラデーションするよう配置されている。
 まるで雪の上に花が咲いたような彩り。
 そして行灯の丸い傘には、赤は椿、黄は福寿草や菜の花、青は忘れな草、緑はクローバーと言った具合に、春の草花のシルエットが描かれている。
 春待ち花の雪行灯祭り、という名前で開催されているのはこのためだ。
 行灯のともった雪原を通り抜けた先には様々なサイズのかまくらが作ってあって、中で甘酒や七輪で焼いたお餅などを楽しめるようになっている。
 家族連れにもカップルにも人気のイベントだ。
「きれいだね!」
「うん。あ、そうだ、かまくらで何食べる? お餅焼く以外にも、チーズフォンデュとかチョコフォンデュもできるんだって」
「おいおい、食い気優先かよ!」
 せっかくロマンチックに盛り上げようとしたのを彼女に台無しにされた彼氏が、微苦笑する。
「ごめーん。だって、かまくらって初めてなんだもん。楽しみすぎて!」
「まずは行灯を楽しもうぜ」
 キャッキャと楽しそうに腕を組む2人。
 と。
「……あれ?」
 彼女のほうが、首を傾げた。
「どうした?」
「壊れてるのかな。1つ行灯が消えちゃってるよ」
 指さす先には、光の消えた行灯。彼氏も首を傾げる。
「ほんとだ消えてる。さっきまで、ちゃんと光ってたと思うんだけどな……あ、点いた」
 首を傾げつつ、カップルはその場を通り過ぎてゆく。
 その後も、色んなところで、行灯が点いたり消えたり。
 モッキュ!
 雪原の白い色に紛れて、白い毛玉が、もふもふと暗躍している……。

「皆様、いらっしゃいませ」
 志之宮・吉花(高校生運命予報士・bn0227)が、能力者たちを教室に迎え入れた。
 小脇に挟んでいたメニューブックを開き、とりいだしたるは、とあるスキー場で開かれているという「春待ち花の雪行灯祭」のちらし。
「暗くなる夕方から雪原に行灯がともされるそうです。行灯を楽しんだ後は、かまくらで暖かい飲み物や、食べ物を楽しめるそうですよ」
 如何ですか、と吉花は勧めてくるわけだが、もちろんわざわざ運命予報士として能力者たちを呼び出したのだから、ただ遊びに行くわけではない。
「実は、その会場で野良のモーラットが1匹、行灯のスイッチに悪戯をしているようなのです」
 モーラットとて妖獣。
 放置すれば目撃者が出て、世界結界に悪影響だし、見つかった拍子にびっくりしてパチパチ火花でも出したら、死人は出なくてもケガくらいはしてしまう。
「どうか、事件が起こるまえに捕まえてくださいませ」
 にっこりわらって、吉花は雪祭りのちらしを能力者たちに手渡した。
 能力者を見かければよってくるので、モーラットを捕まえるのは簡単。
 今回なら、行灯が点いたり消えたりしているところに必ずモーラットがいるので、そちらに向かって能力者が「おいで」と呼びかければ、ある程度は近づいてきてくれるだろう。
 ちょっとした追いかけっこくらいにはなるかもしれないが、真面目に捕まえるつもりでさえあれば、すぐに捕まる。
 捕まえた後は、ゆっくり雪祭りを楽しめば良い。
「かまくらでは甘酒のほか、しょうが湯やココアや日本茶など、温かい飲み物が大抵は揃っています。
 七輪でお餅やあたりめを焼いて食べたり、チーズフォンデュやチョコフォンデュを楽しむこともできるそうですよ」
 かまくらはカップル向けの小さいものから、ファミリー向けの大きなものまであるので、2人きりになりたい人は別行動を取るのもよいだろう。
「では、夜の雪原を楽しんでいらして下さいませ」
 笑って、吉花は能力者たちを送り出した。

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参加者
琴月・ほのり(鳳翼の詠媛・b12735)
御剣・風月(星空の新月・b39244)
御剣・海星(月夜の六等星・b39245)
シグマ・グローシュタット(銀狼探偵・b39722)
南郷・蒼羽(あおいそらのはね・b51577)
那智・りおん(イルカの夢・b53173)
九条・勇(メメントモリ・b59732)
海月・水母(悲しみのジェリーフィッシュ・b60460)
風霧・來那(石段の先の護り人・b71827)
夜刀・神也(谷津乃守也・b73718)
龍神・結奈(幼き月の遠征女帝・b82423)
シャルロット・ノースバルト(終焉を刻むトラヴィアータ・b83655)



<リプレイ>

●雪白行灯冬の夜
 夜。
 能力者たちは雪行灯祭りへと繰り出した。
「モラ狩り、レッツラゴーと行こうじゃねーかい!」
 夜刀・神也(谷津乃守也・b73718)の声は威勢が良いが、足元が疲れのせいで頼りない。どうせならと昼間のうちからスキー場でたっぷり滑った結果だ。転びまくって幾つかの生傷も負っている。
「ここのところ殺伐としていましたから、たまには息抜きしないと、ですね」
 九条・勇(メメントモリ・b59732)はLEDライトのきらめきをふんわりとぼかす和紙の行灯の優しい光に、目元をゆるめた。
「こういう小さなあったかいお祭りいいですね」
 那智・りおん(イルカの夢・b53173)はきゅっきゅと雪を鳴らして歩きながら微笑む。
「地方の祭と思ってたけど、悪くないわ。……志之宮・吉花も、良い祭を紹介してくれたわね」
 つい先日月から降りてきたばかりの龍神・結奈(幼き月の遠征女帝・b82423)は、周囲の光景を見回して言う。
 あたりを包むのは、ふわふわの白い雪。
「……本当に、良い感じのモフモフなのかしら?」
 何気なく、ぼそ、と結奈は呟いた。
 一緒に来た結社メンバーたちが何やら相談しているので、風霧・來那(石段の先の護り人・b71827)が近づくと海月・水母(悲しみのジェリーフィッシュ・b60460)が振り向いて説明してくれた。
「えっと、モラちゃん初めてみたいだから、龍神さんに捕まえさせてあげようかなって……」
「うん、そうだね。じゃあそんな方向で」
 水母に、來那は微笑んで頷いた。
 椿、福寿草、忘れな草、クローバー。春を彩る花々が、行灯の傘に描かれて一足早く咲いている。
 虹色に照らされた雪景色を楽しみながら、ゆっくりと進んでゆくと――。
 あった。
 急に光の消えた行灯が、1つ。
「おいで、一緒に遊ぼ!」
 琴月・ほのり(鳳翼の詠媛・b12735)が、その行灯に向かって声をかける。振って見せるのは、手袋で作った人形だ。
 もっきゅ?
 白い毛玉が、行灯の影から顔を出した。
「いた! 真っ白で雪うさぎみたいですよねぇ〜♪」
「わぁーい、可愛いモラさんー」
 ほのりと一緒に、御剣・風月(星空の新月・b39244)が相好を崩す。
 モーラットは行灯を点け直すと、能力者たちの下へと近づいてきた。
 きゅ?
 風月の近くに寄ってきた野良が、隣に立っている御剣・海星(月夜の六等星・b39245)を見上げる。海星がこれ見よがしに食べているどら焼きが気になるらしい。
 追いかけるにしても、あと一歩近づいて欲しいところ。
「食べるか?」
 シグマ・グローシュタット(銀狼探偵・b39722)が、ひょいと豆大福を差し出した。悪戯モラは捨て置けないけれど、楽しいおでかけのきっかけになってくれているという意味では感謝している。その気持ちを篭めて。
 きゅ!
 飛びついて、両手に持ってもくもくし始める野良。でもまだ、警戒は解いてない。
 追いかけっこは、ここからだ。
「♪ ……モラは喜び道駆け回り!」
 楽しげに歌うシャルロット・ノースバルト(終焉を刻むトラヴィアータ・b83655)に引き付けられて近づいた野良は、歌いながらばっと追い込むように走って来られて、びくっと体毛を逆立てる。
 もきゅ!
 一目散に逃げ始めたけれど、それこそが作戦。次々に追いかけてくる能力者たちに、思いのままの方向に走らされていることに気付くことなく、野良は腕を広げて待ち構える結奈の前へ。
 もふ!!
「……っ、もふもふ、なのね、あなた……」
 青いダッフルコートの胸に抱き取って、結奈は小さく瞠目した。
「さわり心地はどうですか?」
「結構、柔らかいわ」
 南郷・蒼羽(あおいそらのはね・b51577)に覗き込まれて、結奈は表面上は冷静を装いつつも、その柔らかさ、毛の密度に驚きを隠しきれない。野良は呑気に、結奈の白いマフラーをカツラのように頭の上に乗せて遊んでいる。
「あ、ちゃんとバスケットも持ってきたよ」
 と風月が開いたバスケットの中にモラは詰められて、野良モラの悪戯はこれにて一件落着。
「ぱおにーちゃんも一緒に入る?」
 バスケットには余裕があったので、寂しくないようにほのりのモーラットも一緒に入って。
 後はお祭りを楽しむ……その前に。
「触ってみる?」
 風月が、バスケットの蓋を少し開いて誘うのは、石花海・舞矢(菊日和・b82589)。
「いいん……ですか?」
 おずおずと手を伸ばし、ふわふわに触れた瞬間にほんわりと微笑んだ舞矢を見て、一緒に来て良かった、と風月は思う。
「舞矢さん、こういうお祭参加するの初めてでしょう? いっぱい楽しもう! 海星も!」
 バスケットを右手に下げ、左手は弟の手を引いて。
 海星は、まあ2人だけにするよりはマシかと、大人しく引きずられてゆく。
「……よくできてるなーこの行灯。あ、これ、蓮華だ」
「綺麗だねぇ……あ、桜だー……菜の花もー……。タンポポないかなぁ……」
 色々な花のシルエットの中から、好きな花を探すのも楽しみの一つだろう。うろうろとタンポポを探す、風月の背中がどんどん遠くなる。
「舞矢さーん……はぐれちゃダメだよー……」
「……ってこら風、あんまりウロウロすんな、そっちがはぐれてるだろが」
 言われて初めて自分1人だけ離れてしまっていたことに気付いた風月が戻って来たので、海星がデコピンを入れた。
「……ったく……人誘ったんだから誘った自分が率先して行方不明になるなよ……。お前居なくなったら舞矢が困るだろーが」
「ごめんごめん」
 そんな3人を、行灯の光が優しく照らす。
「改めてみると壮観ですね、そして綺麗です」
 蒼羽は雪原を見渡してしみじみと呟いた。
(「やっぱり、光って大事なんだな」)
 白い雪をもつき通すような、暖かな色の光を見ていると、冷たい風の中に立っているというのに気持ちが暖かくなってくる。
「……こら、他の人の迷惑になるから雪合戦はやめろって」
「ふーふふふー! 雪のあるところ雪合戦なりなんだよー」
 雪の原の隅っこの、吹き溜まりが出来ているところで海星と風月の小競り合いが始まっている。舞矢を庇った海星が、十倍返しで風月に雪玉を投げ返す。楽しそうな悲鳴。
 蒼羽は幻想的な光の中でそれぞれに楽しんでいる皆を眺めながら、雪の多い故郷のことを思い出していた。こんな風な温かみが故郷にもあればいいな、と。
 一方その頃、雪合戦するならとモラ×2入りバスケットを一時預った結奈は、小さなかまくらの中で休憩するとみせかけて、誰もいないのを確認してから。
「……こ、これが、モーラットのもふもふ……」
 もきゅー?
 ツンがデレたその姿を見ているのは、モラの円らな瞳だけ……。
 
●あったか、かまくら
「大きいかまくらですぅ!」
 思ったよりも高い天井を見上げて、ほのりが歓声を上げた。
 定員15人のビッグかまくらを、全員で使えることになったのだ。出入り口に目隠し用のすだれを下げるので、この中なら使役と一緒に楽しんでも大丈夫だろう。
 大人数なので、七輪を何個か持ち込んで、それぞれで好きな七輪を囲むこととなる。
「で、フォンデュって何?」
「えっと、溶かしたチョコやチーズに、お菓子や果物の食材を浸けて食べる料理……かな」
「ん、そうそうそんな感じで大丈夫だよ」
 あまりにも基本的な神也の問いに、自信なさそうに答える水母を、來那がフォローする。
「えっと……こう?」
 水母も実際するのは始めてなのでちょっと困ったようにしつつも、スティックで果物を刺しチョコに浸けてみる。來那が同じようにしたので、水母はほっと表情を緩めた。
「因みにチーズではパンを、チョコではマシュマロを鍋の中に落とすと罰ゲーム、です」
「へえー!」
 にこりと笑ったシャルロットに、神也は目を丸くしながら、自分も水母たちに習ってスティックにバナナを刺してチョコへ。
「美味い! 甘いモンは皆で食べると格別に甘いねェーウン」
 口に入れた途端、神也は歓声をあげる。
「チョコバナナは基本ですね。……チョコ蜜柑、チーズ林檎、チーズマシュマロ……不可はなし、と……」
 シャルロットは熱心にメモしながら次々と試している。
「……何か七輪と言い、甘酒と言い、一歩間違えると正月気分な気が……」
 湯気の出る湯飲みに口をつけながら、勇が呟く。
「えっと、ちょうど旧正月だから間違ってもないかなって……」
「うん、旧正月でちょうど中国じゃ新年のお祝いをしてるんじゃないかなぁ?」
 苺チョコをちびちび食べながらの水母に、來那が頷いた。
「じゃあ大陸の妖狐達は今頃酒池肉林、ド派手に祝ってンのかねェ」
 果物に次々とチョコを絡めてもぐもぐしながら、神也がぽつりと呟く。
「妖狐といえば七星将……」
 勇の脳裏には、かつての強敵(と書いて『とも』と読む)たちが爆竹を鳴らしまくっている姿が思い浮かんでいた。
「フォンデュフォンデュー」
 風月は舞矢に希望を取った後、チョコフォンデュの小鍋をくるくるとかき混ぜている。雪遊びで冷えた体に、七輪の日の暖かさと一緒に溶けたチョコの甘い香りが沁み渡った。
 フォンデュ鍋を置いて余ったスペースでは、するめとお餅も焼けている。
「……そういや去年の今頃だっけか。店でチョコフォンデュやってたの。……変な具材出すなよー?」
「ぶー……それじゃまるで私がいつも危険物入れてるみたいじゃない。時々だよ、と・き・ど・き! 」
 胡乱げに見てくる海星に、唇を尖らせて反論する風月。舞矢はそんな2人のやりとりを楽しそうに眺めている。
「こういうところで食べる食べ物や飲み物は美味しいですよね」
 蒼羽も一緒にフォンデュを楽しみながら、いそいそと七輪に小鍋を乗せて、ミルクを温めている。
「これなら、野菜も好き嫌いなく食べられそうなのだ!」
 シグマはとろとろに溶けたチーズに、色々な具財を次々に絡めて口に運んでいる。
「トマトもチーズと合うな、気に入った!  ……も、元より嫌いなものなどあろう筈がないがな! この銀狼探偵たる僕が!」
 えへん、と威張りつつも、アスパラをそっと回避しているように見えるのは……?
「とろけるチーズフォンデュ、美味しいですね。アスパラは特に美味しいな。……あれ?」
 りおんが、自分ばかり食べていないかと気になってシグマをちら見する。
「そっちのもやってみようか!」
 シグマはさりげなく、りおん持参の菓子へと話題を逸らした。
「お、塩煎餅もまた美味♪」
「あ、するめも意外に。でも、苺はチョコフォンデュの方が好きかな……」
 色々、チーズとの相性を試していると、興味深げに覗きこんでくる円らな野良モラの瞳。
「何が好きですか?」
 りおんに、きゅ!とモラが視線を向けたのはチーズつきのするめ。好奇心いっぱいのモーラットらしいといえばらしい。
 モキュー♪
 もらったするめをはむはむする野良を眺めながら、りおんとシグマは乾杯する。
「うむ……良い甘酒だ……☆」
 シグマはワインテイストのごとく回し飲みしているが、湯飲みだし、中身はノンアルコールの甘酒だ。
 するめを食べ終えたモーラットは、匂いに惹かれて、次はほのりの前の七輪へと。
「ひっくり返して両面焼くまで待っていてくださいねぇ」
 網の上でぷわぷわと焼けているのは、おせんべい。原料は同じお餅だけれど、匂いの香ばしさが一段と強い。
「我慢できなくなっちゃいますねぇ」
 涎を垂らしそうな顔で見守る野良とぱおにーに言い聞かせながら、ほのりは自分も我慢する。
 じっくり待って、ぱりぱりに焼けたところを、頂きます。
「あつつ……っ、でも美味しいですぅ〜!」
 ぱりん!とかまくらの中にお煎餅の砕ける音が響いたのがちょっぴり恥ずかしいけれど、それ以上に焼きたてのお煎餅は美味しい。モラたちも一緒にぱりぽりしながら、きゅうきゅう跳ねている。
「寒い時はやっぱりホットココア! これが一番です」
 温まったミルクで蒼羽が練って作ったココアは、フォンデュのチョコとはまた違った甘くて良い匂い。
「しらはも飲みますか?」
 もふもふと押し寄せてくる使役に、蒼羽は小さな湯飲みを渡した。
 飲食が進み、まったりしてくると、会話も弾む。
 昼間スキーをした者たちは、その話題で盛り上がっていた。
「まったく、ひとつ間違えば骨折モノなんだから気をつけないとダメだよ?」
「いや、こんなん屁でもねーから」
 來那に、神也は強がる。顔に張られた絆創膏に周囲からの視線が集まるが、無意味なくらい強がる。
「無茶な滑り方しすぎですよ……夜刀さんらしいけど」
 勇は苦笑しつつ、転びまくる神也の横で、上手に滑りながら水母への指導までこなしていたシャルロットのことを思い出した。
「そういえばシャルロットさんはスキー上手いんですね。ちょっと予想外でした」
「……ぁぅ、ごめんなさい……。その、シャルロットさんは助けてくれてありがとう……」
 リフトを降りた途端に、高い木に登って降りられなくなった子猫状態だった水母は、申し訳なさそうに肩を縮めていた。シャルロットはそっと頭を振った。
「これでも雪国出身ですので。ソリとか滑り下りる遊びは慣れているんですよ。と言っても私は基本的なことしか教えれませんでしたから。初めてで上手く降りれたのはきっと才能ですよ」
 ゆっくりだったとしても、がんばったのは水母自身。だから胸を張っても良いのだと、シャルロットは優しく微笑む。
(「……や、上手い以上にシスター服で滑ってたことに驚きなんですけどね」)
 勇は思ったが、どうやらいつもの服で滑るのがシャルロットにとっての普通のようなので、追求するのはやめにした。
「あの、夜刀先輩は大丈夫でしたか?」
「フッ、スキーってなァよ、転んで上手くなるモンだ。つまりこの負傷は成長の証……名誉の負傷ってヤツよ」
 水母に気遣われ、神也は一応一理あることを言いながら強がって見せる。
(「僕らも明日はスキーを楽しみたいな」)
 りおんは暖かい緑茶を飲みながら思った。
 膝の上には、狼になったシグマ。お腹いっぱいで良い夢を見ているのか、幸せそうだ。
 雪の中でこんなに暖かいのは不思議だと、思いながらりおんはシグマの背を撫でる。
(「……良い夜です」)
 湯飲みを置いて、ついうとうとしてしまうくらい、いい気持ち。
「これで心も身体も温かくなって、寒くなるこれからもがんばって過ごせそうですね!」
 蒼羽の言葉に、こくんとりおんは頷いた。
「思い出すなあ。故郷が北の方なので、寒いし雪も積もるんです」
(「僕の故郷も、雪がよく降ったのだ」)
 蒼羽の声を夢うつつに聞きながら、ピクンと動く、シグマの耳。
 狼の耳には、さらさらと 静かな雪の音色が聞こえている。
「……やっぱり地球はいい場所ね」
 甘酒を片手に、結奈は出入り口の簾越しに見える、行灯の光を眺めて。
 これからますます激しくなってゆくであろう戦いの日々の中の、つかの間の休息。
 能力者たちは、寒い冬だけの楽しみをたっぷり味わった――。


マスター:階アトリ 紹介ページ
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参加者:12人
作成日:2012/02/02
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