Hidden Dragon


<オープニング>


「ようお嬢ちゃん、こんな時間に何してんの? 塾帰り?」
 深夜。繁華街の路地裏をうろつく少女の姿を認め、声を掛ける数人の男達。高校生くらいだろうか、いずれもチャラい格好をしている。
 一方で声を掛けられた少女は黒髪で服装も大人しく、しかしよく見ればそれなりに整った顔立ちだ。
「……私に言っているのか?」
「うん、暇だったら俺たちと遊ばね? 良い店知ってるしさー」
「消えろ」
「え……なんだって?」
「命が惜しいなら消えろと言っている」
「あれじゃね? アニメの台詞とかじゃね?」
「マジかよ、いいよアニソンとか一緒に歌おうぜ」
 顔を見合わせるチャラ男達だが、めげずに少女の肩を掴む。
 ――トン!
 その手をかわし、男の眉間を軽く突く少女。
「経絡破点の一つ、葬火を突いた。お前は三秒後、自分に相応しい寝床を見つけるだろう」
「な、何すんだよてめ……て、てててぶわっ!?」
 キレかけた男は、数秒後に派手にきりもみ回転して吹き飛び――ゴミ袋の山に突っ込んだ。
「ひっ!?」
 怯えて縮み上がる男達を背に、少女は颯爽と去って行った。

「ヒャッハー……い、いえ、何でも無い。じゃあ説明するわね」
 何か言いかけながら、中断する柳瀬・莉緒(高校生運命予報士・bn0025)。
 照れて止めるくらいなら最初からやらないで欲しい所だ。
「今回の事件は『プラトン立体のメガリスゴースト』よ」
 このメガリスゴーストの所持者は、五十村・颯子。中二の女の子。美男子が戦うバトル物を特に好む、何の変哲も無いオタク女子。
 彼女は自分が特殊な武術の伝承者であるとし、またその奥義を書き連ねた「龍の書」を作りあげた。
 武侠小説よろしくアウトローのヒーローとなった彼女は、夜な夜な繁華街をうろついては、少し悪そうな人間や、強そうな人間、彼女に声を掛ける人間を手当たり次第叩きのめしているらしい。
 余談だが、最終的には自分を倒すくらい強くてカッコ良い男性と出会い、二人で世界を救う筋書きになっている様だ。
「幸い、中学生の女の子にボコボコにされた事を口外したがる者も居ないようで、大した騒ぎにもなっていないみたい。今のうちにあなた達の手で彼女を止めて欲しいの」

「龍の書」により一子相伝の武術を体得した彼女は、銀誓館の能力者達さえ凌駕する驚異的な戦闘力を発揮する。
 とはいえ、それはあくまで一対一の場合の話。人数差をもって掛かれば倒す事は出来るだろうと前置きした上で、莉緒は人差し指を立てる。
「実はね、その『龍の書』に書かれた奥義や技が、実際には大した物じゃないと相手に納得させる事が出来れば、彼女を弱体化させる事が出来るの」
 そもそも「龍の書」に書いてある事は全て彼女の出任せなので、科学や医学的根拠があるわけでもなく、ツッコミどころは幾らでもあるだろう。
 常識的に考えて否定しするのも良いが、何しろ相手は中二病患者。頭ごなしに嘘だと言っても聞かないだろう。
 どうせなら、多少は相手の世界観に乗りつつ否定する方が効き目は有るかも知れないと莉緒は言う。

「それじゃ、彼女の事くれぐれもよろしくね。無事メガリスゴーストを破壊し終わったら……彼女は自分の作った設定が崩れて気落ちしてるかも知れないわ。何か一言掛けてあげても良いかもね?」
 そういうと、莉緒は能力者達を送り出すのだった。

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参加者
秋風・なつき(雲の絶え間より漏れ出づる月・b03469)
嘉納・武道(柔道番長・b04863)
月島・眞子(トゥルームーン・b11471)
真田・涼子(高校生クルースニク・b17048)
豹童・凛(近寄り難き者・b33185)
月見里・明(兎のアリス・b43112)
真和・茂理(一閃華烈な蹴撃乙女・b44612)
雲乗・風斗(結びの傘・b51535)



<リプレイ>


 夜。
 繁華街はネオンに覆われ、昼とはまた異質な賑わいを見せる時間帯。
 銀誓館学園の能力者一行は、そんな夜の街を歩いていた。
「あんな厨二を具現化するとは、とんでもないメガゴが現れたものだ」
 周囲を見回しつつ、やれやれと肩をすくめる豹童・凛(近寄り難き者・b33185)。
 中二病(厨二病とも)――その語感の良さや使い勝手の良さから、ネットスラングとして一気に広まった病名……否、正確にはそれは病気ではない。
 例えば美味しいとも思っていないのにコーヒー(ブラック)を嗜んで見せるとか、少年誌の愛読をやめて青年誌を買い始めるとか言った可愛らしい症例。
 有名人やメジャーなゲーム、更には政府と言った権威・権力を批判、批評してみたりする物から「大統領はやる気らしいな、あぁ……それが世界の決断か……」等と言い放つに至るまで、個人によって症状は様々だ。
 しかしいずれにしても、中二病患者に共通して言える事がある。
 彼らは、自分――或いは自分を取り巻く環境に満足していない。
 それ故、今の自分、自分が居る世界とは違う世界を求め、夢想するのだ。
 しかしそれはきっと、人間が正しく成長してゆく過程で、必ず通らなければならない道なのかもしれない。
 今回メガリスゴーストに魅入られた少女、五十村・颯子もまた中二病に冒された患者と言えるだろう。彼女は自分が特殊な格闘術の伝承者となり、それにより世界を救う妄想を抱いている。
 それだけならいずれ時が経つにつれて現実と妄想の折り合いを付ける術を覚え、治癒に向かうはずだったのだが、その妄想を妄想で済ませておかなかったのが今回のメガリスゴースト「プラトン立体」と言うわけだ。
「うん、書き連ねた空想を現実に身につける力か。信じ込まないとダメっぽいけど、なかなか面白いメガリスゴーストだな」
 不謹慎と自覚しつつも、自分なら何を書こう、そんな事を考えつつ頷く雲乗・風斗(結びの傘・b51535)。
「け、けいらく……はてん……? うむぅ、趣味は人それぞれであるか……つ、ついていけるかなぁ……」
 こちらは、颯子の展開する世界観についていけるか心配そうな月見里・明(兎のアリス・b43112)。
「色々と厄介そうな相手だけど、きっちり倒してメガリスゲットを……あ、もしかしてあの子じゃない?」
 月島・眞子(トゥルームーン・b11471)の指さす先、長い黒髪の少女が一種異様な雰囲気をたたえつつ、こちらへ歩いてくる。

 一方こちらはいくつか路地を奥に入った人気の無い空き地。
「黒歴史っていうんだっけ、こういうの。ボクはあんまりピンとこないんだけど、やっぱり中学2年生くらいってそういうのにハマッたりするのかな?」
 真田・涼子(高校生クルースニク・b17048)達は、一般人が来ないこの場所を確保し、颯子がやって来るのを待っていた。
「まぁその。一度は何かの影響を受けて誰でもやるものよね、うん」
 身に覚えでもあるのだろうか。誰に同意を求めるでもなく、言葉を濁す秋風・なつき(雲の絶え間より漏れ出づる月・b03469)。
「相手はプラトン立体のメガリスゴーストと言っても、ボクの煩悩を挫く事は出来ないよ。ふふふ、良い感じに漲ってきたね!」
 颯子に対し多少のシンパシーを覚えているのだろうか。真和・茂理(一閃華烈な蹴撃乙女・b44612)は不敵に笑みつつ、標的の到着を今や遅しと言った様子で待つのだった。


「素手で戦う人間なんかに負ける気はしないね」
「剣道三倍段という奴か。しかし世には数多の秘伝書があり、その技を体得した者は想像を絶する力を手にすると言うぞ」
 聞こえよがしにそんな会話をしてみせる眞子と嘉納・武道(柔道番長・b04863)。
「(見てる?)」「(あぁ、立ち止まって聞き耳を立ててる)」
 颯子と思しき少女は、足を止めると二人の会話に聞き耳を立てている様子。
「へぇ、でも殆どが偽物なんだろうね」
「『虎の書』の伝承者としては、そういう連中を見過ごせないな」
 息をのむ気配。一瞬の間を置いて、颯子はこちらへ近づいてくる。
「今、何と言った?」
 ただ者では無いと見抜いたのだろう、一定の間合いを保ちながら、鋭く問いかけてくる。
「お前は何者だ?」
「……『龍の書』を継ぐ者……」
 武道の問いかけに対し、そう答える颯子。
「ほ、ほぅ……てめぇが最近シマを荒らし回ってるっていう『龍の書』の継承者か……ちょっとツラ貸せや」
 サングラスを掛け、軽く悪役感を演出する明。内心は恥ずかしさでいっぱいだ。
「あんなつき指しそうな武術、誰が継ぐかと思っていたが……こんな娘っ子か」
 ふんと鼻先で笑いつつ言う風斗。
「闘うに相応しい場所がある。臆さぬならば付いて来い」
 何か言いたげな颯子にそう告げると、一行は路地裏へと向かう。
「丁度一汗かきたいと思ってた所なのよね」
「……」
 多勢に無勢であるし、こちらの用意した戦場だと言うのに、颯子は躊躇無くついてくる。余程自信があるか、そうした逆境こそバトル物の醍醐味だと知っているからだろうか。

 やがて一行は、路地裏へと到着する。街中とは思えない程に、おあつらえ向きの場所だ。
 ――ひゅっ。
 そこへ、どこからとも無く現れた黒猫。
「力を求める者よ、始めましょう。この『闘い』を」
 それは瞬時に人へと姿を変える。なつきの演出だ。
「待っていたぞ『龍の書』の伝承者よ。私は土蜘蛛流・阿修羅真拳の豹童・凛だ。覇権を賭けて我々と勝負しろ!」
 大きな黒い馬が無いのが残念に思える様な、堂々たる佇まいの凛。
 颯子を囲むように陣取る能力者達。
「ふっ……数を揃えれば私の天破龍神拳を破れると思ったのか? 良いだろう、まずはそのふざけた幻想を打ち砕いてやる。この拳でな」
「(て、天破龍神拳……っていうんだ)」
 台詞の痛々しさもさる事ながら、鏡の前で何時間も練習して完成させたと思しき構えを取る颯子。見てる方まで恥ずかしくなる。
 とにもかくにも、戦いの幕は切って落とされた。


 ――ババッ!!
 颯子目掛け、一斉に距離を詰める能力者達。
「龍の娘。お前の力、確かめさせてもらうぞ」
 ――ゴォッ!
 風斗が放つ弧状の蹴りは颯子の顔を掠め、続けざまに茂理の蹴りが死角から襲い懸かる。
 だがこれも紙一重でかわす颯子、数本の髪が舞い散る。
「……ぺっ。そんな物か?」
 頬を伝う血を親指で拭うと、ぺろりと一舐めして吐き出す。
「ならば今度はこちらの番だ。アタタタタタタァッ!」
 ――ドドドドッ!
 恐るべき速度で凛の身体を突く颯子。
「経絡破点の一つ、止水を突いた。お前の命はあと三秒」
「……その三秒、私が数えてやろうか?」
 三本指を立てる颯子に対し、自信に満ちた笑みを浮かべる凛。
「ひとーつ、ふたーつ、みーっつ……土蜘蛛である私の肉体は人間の体とは違う。即ち君の経絡破点は私には効かないのだ!」
 三秒を数え終わっても異変は無く、不敵に笑む凛。
「その証拠を見せてやろう! これが阿修羅真拳だっ!!」
 ――バババッ!!
「ぐあぁぁーっ!」
 八本の脚から繰り出される無数の突きを受け、吹き飛ぶ颯子。
 しかしさすがにと言うべきか、よろめきながらもすぐに立ち上がる。
「……なるほど、ならばこちらも教えてやろう……貴様の身体の謎は、鼓動と血の流れから既に見切った! 天破龍神拳は無敵だ!」
 負けじと大見得を切る颯子。
「こうして見ると、少年向けのバトル物って後出しジャンケンの応酬みたいだ……」
 ぼそりと呟く明。
「ふん! あんたが龍(Hidden Dragon)なら こちらは虎(Crouching Tiger)さあ狩りの時間だよ!!」
 肉体強度を最大限に発揮できる「狩猟体勢」へと移行する眞子。

 ――ババッ!
「その程度の龍気で伝承者を名乗るか、それで経絡破点を突いても効果はない」
「何だと!?」
「俺は、長い年月を同じ姿のまま生きてきた戦士。ありとあらゆる武術の達人たちと手合わせをしてきた……当然『龍の書』伝承者もな」
 風斗は颯子の世界観を踏襲しながらも、常に優位に立ち続ける言い回し。
 ――ビュッ!
「うわぁっ!」
 動揺が響いてか、クレセントファングの直撃を受ける颯子。
「……例え、勝てる可能性が1%であろうとも……私は戦う! それが天破龍神拳伝承者の宿命だからだ!」
 しかし、さすがにバトル物の影響を受けているだけあって、満身創痍の割にタフだ。すぐさま体勢を立て直す。
「天破烈風陣!」
 涼子の肩口目掛け、突きを繰り出す。
「経絡破点の一つ、死断を――」
「このツボ知ってる! 昔お爺ちゃんが肩こりに良く効くって言ってたよ!」
「なっ、何を言っている! その破点は……!」
 痛さを我慢しつつ、破点を封じる涼子。凄い封じ方だ。
「貴女の武術には弱点がある。それは一つの力に頼りすぎていること。だから、他の力に弱い」
「な、何だと……?」
 ここぞとばかり、追い打ちを掛けるなつき。
「魔術と武術を組み合わせ、かの名探偵が『教授』相手に用いた全く新しい武術。その名も『バリツ』!」
 ――ゴォッ!
 時空を歪める程の魔力を凝縮し放たれる蒼き魔弾。
「なっ、うわぁぁぁーっ!!」
 その直撃を受け、倒れる颯子。
「やった……?!」
 ――ガラガラッ……。
「まだだ……この程度でやられはしない!」
 瓦礫の中から立ち上がる颯子。


「108個の経絡破点……そうそう、彼等は薄い本でも突き合っているよ、快楽破点を!」
「何の話だ!」
「本編よりも素敵で魅力的な二次創作の世界を見てみないか?」
「戯れ言を言うな!」
 茂理の二次創作への誘惑をはね除ける颯子だが、その蹴りまでを回避する事は出来ない。ジワジワと体力を削られてゆく。
「遅い遅い!」
「これがボクの奥の手だよ! かわせるか、勝負だよ!」
 ――ババッ!!
 これに呼応し、膨大なエネルギーの風を纏った風斗と涼子は、目にもとまらぬ速度で連続攻撃を仕掛ける。
「ぐっ……まだだ……負けるわけにはっ! 龍威烈光掌!!」
 ――カッ!
「!?」
 颯子の手から迸る眩いオーラ。それは瞬間的に能力者達の動きを封じる。
「そうはいかないな!」
 だが、清らかな浄化の竜巻を巻き起こす明。
「なんだと!?」
「このヨーヨーには生命の根源たる聖母マリアの肋骨が埋め込まれているから、そのエネルギーでわたしの体は、あのあれ」
「烈光掌を無効化したと言うのか!?」
「そ、それだ」
 よほど恥ずかしいのだろうか、涙目で頷く明。
「面白い、ならば私も奥義を出さねばなるまいな……怒りは肉体を鋼と化す。もはや二度同じ技は効かぬぞ!」
 新たな構えを取る颯子。もう言った者勝ちの世界だ。

「天破虎撃龍!」
 ――バッ!!
「ぐっ……!」
 颯子の拳を受け、がくりと膝を突く武道。
「凄い威力だ……だが、貴様はその技の本質を理解しているか?」
「……何?」
「『龍虎の書』とは力なき民を病魔から救う為に書かれし医学書。その技の威力に酔い、心が技に囚われ使われているだけだ!」
 武道は流血を物ともせずに立ち上がり、そう言い放つ。
「その指先に宿りしは暴力。貴様の正義が泣いているぞ……」
「だ、黙れっ! そんな話は出任せだ!」
「ならば見せてやろう、真の伝承者の力を……」
 ――ゴォォォッ!
 激しい構えと共に、闘気を拳へ集中する武道。
「白虎絶命拳!」
「ぐっ……がはっ!」
 武道の拳を受け、再び崩れ落ちる颯子。
「これが……真の伝承者の力だと言うのか……だが、私は……っ!」
 ――ドンッ!
 自ら内腿の破点を突くと、再び立ち上がる颯子。
「はっ、あれは!」
「知っているの? 豹童さん」
「うむ、一瞬の剛力と引き換えにおのれの命さえ奪うと言われる破点……」
 満身創痍の出で立ちで、尚も立ち上がる颯子。
「憐れね……ならばこちらも奥義で葬りましょう。月島さん」
「解った」
 再び魔力を集中させるなつきと、剣を構える眞子。
「私は天破龍神拳の伝承者……退かぬ! 媚びぬ顧みぬ! 私に逃走は無いのだ――!」
 ――バッ!
 跳躍し襲い懸かる颯子。
「取られた!」
 言おうと思っていた台詞を取られ若干のダメージを受ける凛。
「これが本命よ。魔術と武術、そして科学を組み合わせた……【バリツ】!」
 ――カッ!!
 先ほどの『バリツ』を上回る魔力で放たれた波動は、颯子を飲み込む。
「くっ……だが……剣如きで私の身体を通すことはっ……!」
「この剣は碧名剣って言ってね、貴女の身体が例え鋼鉄であっても斬ることが出来るの」
 ――シャッ!
 噴射されるロケットの勢いもろとも、剣を振り切る眞子。
「……ごふっ……蔵龍の……救世主の夢は潰えたか……」
 ドサリと倒れる颯子。
 さすがにもう良いだろう感も漂って来たところで、ようやく颯子を倒せたようだ。


「これで一件落着……か」
 メガリスゴースト「プラトン立体」の破壊に成功した能力者達。もうこれ以上恥ずかしい想いをせずに済むと、安堵の明。
「穴だらけだけど、武術のアイデアはよかったよ。発想力を生かして美少女作家とか目指せるんじゃないか?」
「いや……私もいつか真の力を体得して、皆と一緒に戦う!」
 風斗は現実的な説得を試みるが、颯子はまだ中二病から抜け出せそうに無い。涼子の差し出した枕を頭に、倒れたままそんな事を言っている。
「借り物が壊れただけです。今度は君の本物を探しなさい」
「うん。どんな武芸を身につけたって肝心なのはその使い方。力は愛する者、信じれる仲間の為に使ってこそ意味がある。あなたはまだ若いんだから、きっと本当の強さを見つけられるはず。頑張ってね」
「それに、例え『龍の書』が妄想だったとしても、君が強敵(とも)だったことは事実だ。今日の戦いは永遠に忘れぬだろう」
「眞子……武道……それに凛……有り難う……」
 三人の言葉に涙を流す颯子。
「勝ち負けより友情を築いてから後が本番じゃないか。BL上等でしょう! 折角の世紀末だし!」
「B……L?」
「そうそう、美しく鍛え上げた非実在美形同士、組んづほぐれつしなくてどうするよ!」
「な、何の話だ……」
「これを読むが良い。ボクらが信じていればこの世界に需要は必ずある」
 茂理の言っている事を理解しかねる様子の颯子だったが、差し出された薄い本をパラパラと捲り読む。
「……こ、これは……何て耽美な世界なの……」
「大丈夫、これはこれで一片の悔いも無い道だから。あるいは心機一転で百合に転ぶのなら、このボクが自ら慰めてあげても構わない」
 茂理は颯子の顎を持ち上げてそう問いかける。
「……お、お姉様と呼んでも良いですか……」
「こほん。世界を救いたい気持ちは解ったわ。後は、私達に任せて。……今日のことは、いつか良い思い出になるから」
 咳払いと共にそう告げると、再び黒猫に姿を変えるなつき。

 紆余曲折を経たものの、ともかくメガリスゴーストの破壊に成功した能力者達。
 彼らはこうして、新たなる闘いの荒野へと旅立つのだった。


マスター:小茄 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2012/01/31
得票数:楽しい4  笑える4  カッコいい8  ハートフル1 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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