<リプレイ>
● 「宇宙へ旅立つ夢を応援するメガリスゴーストですか……とても微笑ましいです……融通が利かない所を除けばですが……」 バスを降りると、そこは閑静な住宅街。人気もまばらな景色を見回して呟くのは、時守・癒太(夢幻世界投影者・b52874)。 この日能力者達は、ある少年の家を目指していた。 「夢……良い言葉ですねぇ、ちなみに皆さんの夢はなんですかぁ?」 唐突なフリは志筑・涼子(残念な子とは呼ばせない・bn0055)。そう言う彼女の夢は、極力楽をして生きる事らしい。 「私には確かめたい事がある。この拳の先には何があるのか、私はこの世でどれだけ強いのか……だから私は強い奴に会いに行く。自分を試す為に!」 シンプルで明確な方向性を持っている方・瑞麗(魅惑の脚線美・b35580)。 腕試しを兼ねて銀誓館に入学したと言う彼女らしい目標だ。 「夢かー。ウチは……夢は……夢……おぉ、日々の生活にかまけて、考えたことなかったわ……」 一方、苦労人の斉藤・縁(多分浪花の風水少女・b81259)は、中学生らしからぬそんな発言。 こうしてみると、夢を持つ事が出来るのは、とても贅沢な事なのかも知れない。 「自分の限界も辿り着くための苦労も知らない、ただの憧れだけで抱くものでしかないけれど……でも、そんな中から芽生える未来だってあるかもしれない」 こくりと頷きつつ、椎名・悠(深緑のねぼすけ娘・b20132)。 古今、偉業を達成してきた人々は多くの場合、現実的とは思えない夢を本気で追い続けて来た人々と言えるのだから。 今回は、そうした子供の夢が鍵となって引き起こされるゴースト事件だ。 宇宙に行きたいと思う人間の元に現れ、それを応援すると言うメガリスゴースト、嫦娥の瓶。 しかし本人がその夢を諦めたとき、周囲の人間がその夢を諦めさせようとしたとき、嫦娥の瓶は牙を剥く。 「我ら銀誓館学園がメガリスを使った結果として現れた以上、我らの手で決着をつけねばなるまいよ」 一つの戦いに勝利する為、それは必然性のある決断。とはいえ、ゴースト事件で被害者が出ることは容認出来ない。国見・眞由螺(影武者・b32672)は強い責任感を胸に、任務へと従事する。 「僕達、銀誓館学園は最終局面の壮大な戦いを前にしてる。……しかし、否、ゆえに。こうした小規模な護衛もしないと」 同じく、世界の守り手としての責務を背負ってこの場に居る桃宮・紅綺(リリス狩りの赤い盾・b57806)。 能力者達の戦いは、幾つかの大規模な大戦はもちろん、こうした小さな任務の積み重ねでもあるのだから。 「ん、あれちゃうか?」 手元の地図と目の前の景色を照らし合わせ、指を指す菰野・蒼十郎(小者で弱くてヘタレな三拍子・b30005)。 どうやら、救うべき少年の家で間違いなさそうだ。 「かれらの明るい未来を守る為、邪魔なゴーストを私たちで倒しましょう!」 コロナ・サンライト(超光戦士・b77156)の言葉に頷いた一同は、作戦を開始する。
● 「宇宙船のパイロットになるんだ」 「……へぇ〜?」 その頃リビングでは、ケイタロウとカナエが将来の夢について語り合っていた。 「そっか、じゃあいーっぱい勉強しなきゃね? 宇宙飛行士になる人って凄い勉強した人だけだってテレビで言ってたもん」 「え……じゃあ……やめるよ」 「ちょっと、どういうことなの?」 勉強嫌いのケイタロウがあっさりと夢を諦めかけた瞬間、二人の前に姿を現すのは奇妙な出で立ちの少女――嫦娥の瓶のメガリスゴーストに他ならない。 「約束したでしょ、絶対宇宙に行くって! あれは嘘だったの!?」 「い、いや……だって」 「誰、この子……」 宇宙人を象った鎧を纏うそのメガリスゴーストが、ケイタロウに詰め寄った刹那―― ――バンッ! 勢いよく開かれるリビングの扉。 「宇宙船なんて狭苦しいのよ。何日も倉庫の中だけで過ごしているようなもの、仕事はあっても楽しみなんて何もない。そして事故が起こると死んじゃうわよ〜」 リビングへ先陣切って飛び込むと、開口一番そう告げるコロナ。 「きゃあっ!?」「だ、誰?」 「何なのよ、この子の夢を邪魔する奴は許さない!」 ――ブンッ! 驚くより早く、宇宙への夢を妨げようとする新手に対し、光剣を抜くメガリスゴースト。 「そっちの少女の言う通りだ。宇宙船のクルーなど宝くじの当選確率よりも更に低いぐらいの難関。どれだけ勉強しても夢が可能性は限りなく低い。そんなものを目指すぐらいなら、普通に働いた方がよっぽど遊べるぞ」 「全くやな。宇宙に行くには頭よくないとあかんで、すごい体力も必要や。毎日毎日訓練とか、大変やで。そない根性あるかー?」 更に続いて、ゴーストと二人の間に割って入る眞由螺と縁。 息つく間もなくネガティブキャンペーンを展開する。 「な、な、何?」「わ、解んないよ」 何が起っているか解らず、思わず抱き合って怯えるケイタロウとカナエ。 「ち、ちょっと! あなた達、今すぐ警察呼ぶんだから――」 「♪よいこはおねんねのじかんだよ〜♪」 音無き歌声と、穏やかな旋律のデュエット。 紅綺と悠の歌声が、騒ぐ少年少女を眠りへ誘う。 「……よし!」 「時守さん、お願いします」「はい」 癒太は眠りに落ちた二人を庇うように抱き、悠と共に部屋の外へ連れ出しに掛かる。 「邪魔しないで、その子は私と宇宙に行くの!」 メインのメガリスゴーストに加え、数体の援護ゴーストが出現する。いずれもリトルグレイの様な出で立ちだ。 「いーや、邪魔させてもらうで」 「敵の邪魔をしてやるのは愉快痛快ですぅ」 ペンを走らせる蒼十郎。ゴーストらをデフォルメしたイラストが実体化し、襲い懸かる。 これに呼応し、涼子もゴーストとの間合いを詰める。
● 「邪魔者をやっつけろ!」 ――ピシュン! ピシュン! 「そうはさせません、椎名先輩!」 「ええ」 ゴースト達の銃から数条の光線が放たれるが、身を挺して子供達を庇う癒太と悠。 ジリジリと距離を取りながらも、スピードスケッチとサイレントヴォイスで応戦する。 「二人を援護や!」 こちらもスピードスケッチを続けつつ、蒼十郎。 「宇宙なんて、ただの真っ暗闇……。デブリや隕石などゴミばかりよ」 「そうそう、凶悪な宇宙人に改造されちゃうかも?」 ――ドッ! ガシュッ! 「ギャオゥッ!」 援護ゴーストの顔面に、闘気を纏わせた拳をたたき込みながら尚も続ける瑞麗。コロナも陽光の如く鮮烈な光を放つ頭突きを見舞ってこれに合わせる。 「うぅ……ん……?」 戦闘の騒音のせいか、目を覚ましかけるケイタロウ。 「ケイタロウ、私と宇宙へ行くわよね!?」 「え? えぇと……宇宙へは……」 覚醒しきるより早く問いかけられるメガリスゴーストの質問に、即答しかねて口ごもる。 「はっきりしなさい!」 「行き……たいけど……Zzz……」 答えかけ、再び眠りに落ちる少年。 「応援してくれるのは素敵だけど、うまくいかないからって危害を加えてしまうのは残念だ!」 ヒュプノヴォイスで彼を眠らせた紅綺は、ゴーストへ向けてそう告げる。 「うるさい! 私を裏切るならそうするしかないのよ!」 光線銃を乱射しつつ、金切り声を張るゴースト。 なまじ無邪気な分、たちが悪い。 「人が宇宙をロケットで飛ぶなど、馬鹿馬鹿しいわ! 斉藤殿、同時に仕掛けるぞ!」 眞由螺はしきりにゴーストを挑発しながら、黒炎に包まれたAZOTHを振り下ろす。 「よっしゃ、ほないくで! 八卦! 浄銭剣!」 ――ザンッ! 「ギャウッ!!」 清められた古銭を解理尺に纏わせ、死角を突く縁。 二人の連携の前に、援護ゴーストは寸断される。
● 「二人をお願いします」 光線をかいくぐり、どうにか隣室へ子供を連れてくる事に成功した二人。 癒太は子供達を悠に預け、再び戦場であるリビングへと引き返す。 「任せて」 悠は頷きつつ答えると、戦いが終わるまで二人に付きっきりでこれを眠らせておく手筈だ。
――ブンッ! 「受け流すのもクンフーの極意よ」 一方リビングでは、依然として熾烈な戦いが続いていた。 ――ババッ! 瑞麗は光剣の一閃を紙一重にかわし、その流れのままに数発の蹴りを見舞う。 「さっさと倒れてよ! あの女を殺してから、ケイタロウに確かめるんだから!」 次第に追い込まれていくゴーストだが、いまだその戦意は旺盛らしく、激しく抵抗を続ける。 「正義のヒーローに、負けは許されないの!」 「この程度で、我が意思はくじけぬぞ!」 二振りの長剣を回転させ、体力を回復するコロナと眞由螺。当然のことながら、戦意においては能力者も後れを取らない。 「夢の押し売りは良くないですぅ!」 「……でも、これまで彼を支えてきてくれた事には、本当に感謝する」 ――ドォッ! 紅綺は光り輝く闘気を纏うと、涼子と共に手負いのゴーストを強撃。 これを葬り去る。 「うぅぅぅぅ!」 援護ゴーストは全滅し、地団駄を踏むゴーストの少女。 「お待たせしました、皆さん! 行きましょう!」 「よっしゃ、これでトドメや!」 隣室より戻った癒太のスピードスケッチに合わせ、一気に波状攻撃を仕掛ける能力者達。 「どいてぇーっ!!」 ゴーストもまた、光剣を振り上げ突っ込んでくる。 ――バシュッ!! コンマ何秒かの交錯。フローリングに落ちる光剣。 「っ……」 数秒遅れて膝から崩れ落ちたゴーストは、やがて青白い燐光と共に霧散してゆく。
● 「夢はね、奇跡じゃ無いから求めればいつかきっと叶う。求めなければ夜見る夢と同じ。あなたはどちらの未来を選ぶのかしら?」 「う、うーん……」 目を覚ましたケイタロウに、優しく言い聞かせるコロナ。 幸い、表を通りかかった学生の一団と言う事で納得してもらえた様だ。眠りに落ちていた事と世界結界の影響で、武器を持った強盗から二人を助けたと言う認識でいるらしい。 「きっと宇宙には困難も多いでしょうけど、私達のしらないスゴイこともいっぱいあると思うわよ」 「そっかぁ……でも勉強なぁ……」 「ケイタロウ君……残念だけど生きて行くには勉強を避ける事はできないよ。でもね、好きな事を知るのは楽しくないかな? 好きな漫画のキャラクターの事を簡単に覚えられるのと同じだよ。どうせ勉強するなら君が興味を持っている物を勉強したらどうかな?」 「うん……なるほど」 相変わらず勉強について難色を示すケイタロウへ、癒太が諭す。 「少年。宇宙飛行士になるには、勉強よりも身体を鍛える方が先だぞ♪ 縄跳びとか、ジョギングとかね」 「そっちは得意だよ!」 紅綺の言葉には、自信満々の様子で胸を張って答える。 「えぇ、夢はね……叶うか、叶わないかじゃないの。夢に向かってやるか、やらないかなのよ」 「そっか……解った、やってみるよ!」 瑞麗の言葉に後押しされ、再び夢を追いかける気になったらしいケイタロウ。 「ケイ君には無理だと思うけどねー」 と、隣でこまっしゃくれた口を利くカナエ。 「カナエちゃん、ケイタロウ君と離れたく無いのよね。だから宇宙に行って欲しく無くて夢を諦めさせるような事を言うんでしょう」 「は、はぁ? 全然違うし!」 「好きじゃ無いなら宇宙に行ってもいいわよね?」 「良いに決まってるじゃない! 宇宙でもどこでも行けば!」 「そそ、友達やったら夢は応援してあげてや」 「するわよ、すればいいんでしょ!」 と、上手いこと瑞麗や縁の口車に乗せられた形だが、カナエもケイタロウの夢を後押しする立場になったようだ。 「うん。夢は叶えるよりも叶える途中が楽しいとも言う。少年よ、簡単に夢を諦めるなよ……」 「解った! お姉ちゃん、お兄ちゃん、有り難う」 眞由螺の言葉に元気よく頷くケイタロウ。 一行は二人に別れを告げ、ケイタロウの家を後にする。
「一件落着ですかねぇ。それにしても、敵ながら余り憎めない奴でしたぁ」 「うん。夢を応援してくれた存在のこと、ちょっとでも憶えていてくれるとうれしいな」 涼子の言葉に頷きつつ、呟く悠。 かくて、能力者達の活躍により罪なき二人の子供は救われたのだ。 一行は夕暮れに染まる町並みを後に、帰途へついたのだった。
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参加者:8人
作成日:2012/01/31
得票数:楽しい1
カッコいい8
ハートフル4
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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