Fiori del Cuore 〜想いの花とショコラ・ショー〜


       



<オープニング>


 純白の花は、まだ何も知らなかった頃の心のよう。
 あの日、あなたと出会ってから。
 綴った言葉たちが、紡いだ想い出たちが、色と香りとなって白い心をゆっくりと変えてきた。

 伝えたい気持ちは、溢れるばかり。
 けれど、上手く声にはならないかもしれないから。
 あなたと重ねてきた記憶の数だけ、彩られ、香り立つこの花を捧げたい。

 そうして、もし、叶うのなら。
 ほの甘く、ほろ苦いショコラ・ショーを──ふたりで。


 ソラフラワー。
 マメ科の植物の一種たるこの木から取れる茎実。それを職人が薄く剥き、花片に見立て幾重にも織って作られた純白の花は、吸水性に優れていた。
 その特性が、この花に『色』と『香り』を──命を、もたらす。
「名前が同じだからかな。僕は好きだよ、この花」
 滑らかな白い花弁をひとつ、手にとって。蓮見・双良(夏暁・bn0235)はふわりと笑う。
「本物の花、みたいです……これを、どうすれば……?」
「ふるりさんには、そのままの色でも似合いそうだけど……そうね。例えばこのオイルをかけると……」
 藤沢・灯姫(小学生運命予報士・bn0253)が、手にした小瓶を傾ければ、零れた雫が花に灯り──、
「あっ……ピンク色で、これは……桃の香り、ですか?」
「ね? 贈り物にはぴったりでしょ?」
 見る間に広がった『色』と『香り』に、櫛風・ふるり(中学生カースブレイド・bn0315)も瞳を瞬かせながらこくりと頷く。

 花の種類は多種多様。
 テーブルに広げられた花たちの中には、きっと望みの花があるだろう。
 花を選んだら、不織布で包んで花束にしたり、紐に括り付けてリースにしたり。サシェに入れてポプリにしても良さそうだ。
 オイルの含ませ方も、茎の付いたソラフラワーをオイルの入った瓶に挿したり、直接上からオイルをかけたり。
「どっちの方法も、色と香りが染みこむまでには時間がかかるから……ショコラ・ショーでも飲んで、ゆっくり待ってようか」

 ショコラ・ショー。
 別名、ホット・チョコレートと呼ばれるそれの作り方は、至って簡単。
 ホットミルクに、ほんの一欠片のチョコレートをそっと入れて、溶かすだけ。
「チョコレートの味によって、甘くもなるし苦くもなるから、そのあたりはお好みで」
「クリームとかマシュマロ、ハーブやフルーツグラッセとかを入れても美味しいのよ」
 爽やかな香りのシナモン。
 あたたかな温もりのジンジャー。
 そして、ちょっとした優しさを伝えたいのなら、ハート型の葉のレモンバームをそっと乗せて。
 森に囲まれたロッジの暖かな暖炉のそばで、ゆっくりと刻を待とう。

 想いを映した心の花は、最後にそっと、硝子の箱へ。
 箱底で眠りながら、溢れるほどの想いを抱いた花は、夢をみる。
 再びひかりに出逢えるそのときを、焦がれながら。

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参加者
NPC:藤沢・灯姫(小学生運命予報士・bn0253)




<リプレイ>

●花、咲く日
 好きな花を手にとって、好きな色と香りを乗せる。
 これってきっと、自分だけの花を創るという事。
 不思議ね。
 少し前までは、誰かの為に花を贈るなんて思いもしなかったのに。
「ねぇねぇ、あそびちゃんはどれにしたのー?」
 傍らにいた透也の、近い、近い、声と顔。
 思わず息を飲む遊飛の掌には紅椿。それは冬に咲いたこの想いにも、似て。
 片や透也は、林檎の香の春色チューリップを不織布でくるみ、レースのリボンで飾りつけ。
「……あのね、これあそびちゃんにプレゼントしたいな」
 春の花はきみのよう。
 だから貰って? そう微笑まれたら断る事なんてできなくて。
 手にした瞬間、頬に零れたキスには、人前だと小さく咎めながらも唇綻び。
 瓶に注いだ苺の香りに仕舞った、愛おしい想いの花。白いリボンを結んだ心を、どうぞきみに。
「あそびちゃん、大好きだよ」
「わたしも、とうやくんが──」
 一番、だいすきよ。
 幾重もの花弁を重ねた白椿には、桃の香り。
「もっと似合いそうなのがあるなら……!」
「濃い色だと少し香りが薄いかもしれないけど、色も白だから桃でも大丈夫だと思うよ」
「じゃあ、桃でー!」
 ちょっと斑になるかもしれないけれど、と案じながらも。
 小春は豪快に香油を上から注ぎ、花を束ねて空色の硝子箱へとそっと仕舞う。
「これだと中の椿は藍色になるねー。うーん……どうかな?」
「うん、すごく綺麗だと思う」
 双良も一緒に覗き込み、ふたりでこくり。
「櫛風さんはどう作って……って僕よりも豪快!?」
「……えっ?」
 口の大きな硝子箱に直接香油を入れようとしていたふるりに、思わず小春も声を掛ける。
「花は決まってるの?」
「ま、まだ……」
「なら、自分の好きな花を思い浮かべて、それに近い形使えばいいんじゃないかな?」
「好きな、花…………さくら」
 白い花。桜の花を手に取るふるりに、小春もまた柔らかに微笑んだ。
「こうしていると、あの日が嘘のようですわね」
「本当……まだ、1ヶ月も経ってないのにね」
 挨拶を交わした後、芽亜の言葉に、あの日──1月15日を思い、灯姫も小さく笑う。
「ソラフラワー。まるであつらえたような名前ですこと」
「いえいえ、完全に名前負けですよ」
 苦笑混じりにそう笑うと、双良は芽亜から希望のあった、薄い春色の油とベリーの香の小瓶を手際よく揃えて並べた。
「プレゼントにするつもりですが、あまり凝ったものにする気はありませんのよ」
 時間と想いをかければ、十分気持ちは伝わるものだから。
 芽亜は凛とした微笑みを浮かべながら、細い指先で花を紡いでゆく。
 倖と悟は、雑貨屋【Ananda】に飾るリース作り。
 色とりどりの花は賑やかに。カモミールの香りは優しさを。
「Anandaもほんま賑やかなったな」
「そうだね……」
 ぽつりと悟が零せば、手元の花たちのように鮮やかな想い出が倖の胸に過ぎる。
「これもお前の頑張りの成果や」
「俺だけじゃないよ。相澤とか、みんなのおかげだね。蓮見ともご縁をもらえたしね」
「うん。僕も、倖さんや悟さんたちと……Anandaと出逢えた」
 懐かしい、あのあたたかな場所。
 今もまだ、きっと変わってはいない。それはふたりを見ればすぐに解る。
 だからこそAnandaは、また巡り会い、集うための場所として、変わらずあの場所にあり続ける。
「花の香は空に溶ける様いつか消える。そやけど倖が生み出した光は消えず、か」
「みんなで生み出した光、だよ。ありがとう」
 倖のその微笑みに、悟は手にしたリースをその頭に乗せて大きく笑う。
「双良見てみ! 天使やで! 似合うやろ!」
「あはは、本当だ。すごく似合ってるよ倖さん……!」
 いつでも帰っておいで。
 笑顔の花咲く、Anandaへ。
 指で触れる、滑らかな木肌の感触。
 向かいで花へ色移す弥琴と手伝う双良の姿に、一昨年の今日の景色が蘇る。
 ──蓮歌さんの白い花、お揃いみたい?
 そう陽だまり色の瞳を瞬かせた彼女。
 もう、埋まる事のない空席。
 けれど、新たに埋めてくれるひとのある席も、確かにあって──不思議。
「蓮見と、落ち着いて……話せるのは、初めてだな」
 甘く優しく漂い始める香に誘われて。色づき綻ぶ花のように、ふたりのやり取りに蓮歌も微笑む。
「いつも、お会いするのは事件の時ばかりでしたからね」
 それでも。どんな形でも。
 ご縁があって僕は嬉しいです、そう双良も笑う。
「……ね、これからも、遊ぼうね」
 学生気分が……抜けないんだけど、ね。
 浮かべるのは照れ笑い。
 もっとたくさん、刻を重ねたい。
 そうして、全部。この両の掌で。
 残らず掬い上げて、抱きしめて、大きな花を、咲かせて。
 ――それを護れるだけ、強くなれると思うの。

●愛しさの花
「あの……いつも誘っていただいてどうもありがとう」
「僕の方こそ、いつもありがとうございます」
 スプーンでゆるりチョコレートを溶かしながら、こうして過ごす刻が増えていた事に気づく。
「もうすぐ卒業だから──」
 言いながら、ほんの一瞬曇らせた顔を、蒼流はすぐに笑顔で隠した。
「色々と忙しいんじゃないですか、エルデさん」
「なんだか勉強ばかりしていたので……少し寂しかったりもします……」
「寂しい……?」
 らしからぬ様子に聞き返せば、
「蒼流くんと一緒にいるの、とても楽しいのですよ」
「えっ……あっ、ありがとう、ございます」
 返る言葉に、胸が静かに跳ねて。
 少しでもリラックスして貰えたら嬉しいと添えながら、マグを手渡す。
「少し甘めにしておきました、どうぞ」
「お気遣いありがとうなのです。蒼流くんにも、まだまだ寒いので風邪とかひきませんように! です!」
 返るマグは、彼女から貰った誕生日プレゼント。
 みんなにとっても、良い日でありますように。
 そう祈りながら、ほろ苦いショコラへと、蒼流はひとつ口を付けた。
 選んで頂けませんか。
 耳元で囁かれた声には、きょとんとしながらコレットは頷く。
「華やかな……スターチスとかでも……素敵だと……思います」
 花の意味は、秘密にして。
 春がいっぱいのお花になりますねと、ほわり笑う。
「色と香りは、この薄いピンクの……桜にしようかな」
「薄いピンクの桜……和の香りと色……ですね」
 銀の瞳を綻ばせるコレットに、アルトも青の双眸をふわりと緩める。
「わたしは……やっぱり薔薇の花に……薔薇の香り」
 白がゆっくりと青に染む、その最後はきっと──奇跡の、瞬間。
 大好きな花。
 大好きな香り。
 そして、大好きな人。
 色づく想いの花が咲くのを、ふたり並んで待つ、愛おしい時間。
 春の贈り先はもう、決まっているけれど。
 今はまだ寒くても、暖かな花の匂いに包まれて、届けた先が春満ち咲きますように。
 ささやかな願いをそっと笑顔に変えれば、コレットもまた、花咲く。
 交換しようと頷き合って。
 テーブルに花溢れ、窓辺の小春日に煌めく彩と香の小瓶に、火憐は一層楽しげに迷う。
「隆之先輩はもう決まりました?」
「俺はこれを」
 選んだのは小さなピオニーの花。数輪を手にとって、淡いピンクとオレンジに染めてゆく。
「火憐さんは?」
「私のはですねー。できてからのお楽しみです♪」
 悪戯めいて瞳を綻ばせれば、思い出すのはワイヤークラフトを作ったクリスマス。あの時の少しだけ立派すぎる角のトナカイは、今でも隆之の部屋にある。
 ゆっくりと、穏やかに過ぎてゆく時間。
 優しい隆之の指先が紡ぐ花と香りが気になって、火憐の視線は、ちらり、ちらり。
 紅色のリボンと杏色の不織布で包まれたブーケは、澄んだ薄香に染まる硝子箱へ、そっと。
「……もうじっくりとこっちを見ても大丈夫ですよ」
「えっ、あっ……はい」
 掛けられた声。仄かに残るカモミールの香りに、火憐はふわりと微笑む。
 私が貰って嬉しかったものを、あなたと一緒に作れるという、幸せ。
 色も、香りも思いのままに。
 迷うのもまた、楽しみのひとつ。
「結梨はどんなの?」
「ふふ、私はもう決めてるの」
 掌には、小さな小さな、星の花。
 想いを映す花ならば、この心満たす想いを彩にして、あなたへと。
 喜び、楽しく唄う橙。共に過ごす穏やかな刻の緑。青は寂しさ、黄色は──やきもち。
 あなたを想う切なさには、紫を。独り占めしたい、その欲には、藍を。
 そうして、深く、深く染めるのは、赤のいろ。
 恋い焦がれ、燃ゆる、心のいろ。
 積み重ねる想いのように、花へと染む。
 あなたへ、優しい眠りを。自分と同じ理由でラベンダーの香を選んだ愛しい人へは、淡い紫の花を。
「俺の夢を見てとの願いもこもっているんだよ」
 耳元で囁く声は、くすぐったくて。
 微笑みながら囁く唇へと。火照る頬を隠すように、結梨はマシュマロでキスをした。
 一緒に何かを創るのは、初めてでもないけれど。
 未来を誓ったあのクリスマスの夜の薔薇を想いながら、ふたり。溢れるほどの薔薇を桜色のリボンで束ねる。
 どこかで聞いた、12輪の薔薇の伝説。
 男が愛しい人への12の誓いを込めた花束を渡し、女がそのうち1本を選び返すという、プロポーズの言い伝え。
「どうぞ。俺のお姫様」
 恭しく頭を垂れる紀更の姿に、何だか少し照れてしまって。
「紀更……ありがとう」
 はにかみながら美桜が受け取り、そっと1輪、その掌へと返せばまるで、2度目の愛の誓いのよう。
「……私からも……誓いを」
 薔薇のように頬染めながら、背伸びをして。想いを込めた口付けをその頬へ。
「さんきゅ」
 熱を帯びる顔を隠すように、紀更は美桜を強く抱きしめる。
 心に、喜びの花が満ちてゆく。

●幸せの花
 今日という幸いの日に、溢れるばかりの花の中から探すのは幸せの花。
「レモン哀歌、ッテご存じですか」
 2輪の花には檸檬の香。微笑むアリスへ、八重桜を手に千乃が顔を上げた。
 それは愛する妻の今際の詩。
「山巓でした呼吸ひとつまでが大切な、そんな愛情をわたしも連ねたくて」
 男女、家族、そして他人。
 誰かが贈った愛を誰かが受ける幸せ。そんな愛の切欠を与える今日が、愛おしい。
「『あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ』」
 応えるように、千乃はアリスの青い瞳へと微笑みを返す。
 友達になってくれてありがとう。
 キミがくれるこの幸せは、抱きしめても溢れるほど。
「この日を与えてくれる方々に感謝を」
「ん、乾杯……」
 掲げたカップを鳴らし、甘いショコラを一口飲めば、
「熱っ!」
「わわぁ!?」
 熱さに悶えるアリスに慌てて水を差し出しながら、そっと千乃は心で言紡ぐ。
 時々うっかりさんなキミも、大好きだよ、と。
「……去年、また今度、と言って……結局、渡さなかった、から」
 そう手渡されたキャラメルワッフルに、ラシェは律儀だね、と双良も苦笑。
「えぇと……ソラは、ソラで、同じ名前の、花で……ソラ?」
「ぷっ、あははははっ」
 混乱するラシェリアに、珍しく声を立てて笑いながら、双良は簡単に説明を添える。
「無色透明の、オイルで……ローズがあれば、いいんだ、が……」
「白い薔薇か。僕は好きだよ」
「……なんとなく、色が無い方が、良いと……思って……あ……」
「──あ」
 瓶に挿そうとした薔薇の花。少し強く触れられた花弁は、くしゃりとなって。
「……どう……しよう、直るだろう、か……」
 いつも大きく見える親友の背中が、しょんぼりとしているのがどこかおかしくて。くすくすと笑いながら、
「大丈夫だよ、ラシェ。僕のも添えれば──ほら」
 支えるように添えた、もう一輪。
 こんな風に、僕もあなたを支えられていれば良いんだけれど。
 大好きなカント君へ、目一杯の心を込めた想いの花を。
 食べ物より無難だなと呟けば、親友の優一にむぅと睨まれながらも、どう見ても場違いな自分に政吾郎は眉根を寄せる。
「ゆーいっちゃん、なんでオレまで……」
「どれにするか迷っちゃうな〜」
「……聞いちゃいねえ」
 相棒モーラットにめろめろな親友に、溜息ひとつ。折角だからと作り始めた陽色の小花には、カモミールの香を。
「マサっち、誰かにあげるの!? ねえねえどんな人?」
 テーブルから身を乗り出す優一は、どこか楽しそう。
「知り合いだよ。知り合い。危なっかしいというか、ほっとけねえっていうか……」
「何にしても、こーゆーのは気持ちが大事〜♪」
 喜ぶその顔が見られる事。
 それが一番幸せだと言う優一もまた、幸せそうだから。
「喜ぶかどうかはわかんねえけど……あげてみるか」
「喜んでくれるといいね〜♪」
 そう朗らかに笑う親友へ、政吾郎も眦を緩めた。
 刻遅いような気もするけれど。
 いつかの誘いの礼に、想い出を形にしに。
「ヘルガはいいのが出来そうか?」
「ええ」
 白菫を手に尋ねるトウマへ、ヘルガはそうふわりと笑う。
 迷いなく手に取った薔薇一輪。ゆっくりと空色に染まる花弁に触れながら、ぽつり零す。
「これはわたくしがずっと焦がれてきた色」
 森統べる『王』の一族として、果てなき森から見上げた、空の青。
 ほの暗い冬が長いからだろうか。穏やかな夏空は、自由や永遠を思い幸せになれる。
 だからこそ。
 己が知る一番美しいものを、あなたへ。
「きっと諸々が終わったら森に帰ります」
 いずれこの花の香も彩も、褪せてしまうけれど。
 時々でいい。花を見て思い出してくれれば、とても、とても幸せだから。
「記憶の色も香りも、褪せる事はないさ」
 さあ、花の香咲くまでショコラ・ショーでも頂こうか。
 言葉少なくとも、静かに応えるトウマへ、ヘルガも心からの微笑みを。
 ──キッティ。ありがとう。
 真白に咲く沈丁花。
 春を彩り香るそれに、灯すのは心。
 貴方の色にしようか。少し、悩んだけれど。
 これまでも紡ぎ、そしてこれからも綴ってゆくこの気持ちは、重ねるほどに澄んだ白でありますように。
 そして、春運ぶ香りのように、確かでありますようにと、花を連ねて凛は想う。
 つと顔を上げれば、浅葱の手には八重の梔子。
 仄かに届く香りは花相応のものだけれど、彩移る先は、明け空を思わせる鮮やかな朱色。
 澄んだ願いは、凛が灯してくれたから。この染まりゆく梔子の花弁は、いつしか色づいた己の日々として。
 思いは伝えてこそ、と。
 教えてくれたひかりへと、満ちる思いを伝えよう。
「――夏目と紡ぐこの日々が、どうしようもなく幸せなのだ」
 想いはとうに知りながら、その呼び名を探し探して。
 漸く気づいたそれは、なんと今更なのだろう。
 向けられた梔子の花言葉には、そっと笑って。
 けれど、幸せだと。そんな微笑みで告げられたら、気持ちが溢れてしまいそうで、識っているはずの応えにも詰まってしまう。
 幸せだと、紡ぐ声。
 向けられるその笑顔は、他ならぬ己がもたらしたものだと解るから。
 凛は、ささやかに、心を音にする。
「どうしようもなく幸せなのは、俺の方ですよ」
 ゆらり揺れる沈丁花。
 紡ぎ綴られるこの幸せは、きっと──永遠に。


マスター:西宮チヒロ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:37人
作成日:2012/02/13
得票数:ハートフル13  ロマンティック6 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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