修学旅行2007〜見ようよ、北の動物達!


<オープニング>


 銀誓館学園の修学旅行は、毎年6月に行われます。
 今年の修学旅行は、6月20日から23日までの3泊4日。
 この日程で、小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達が、一斉に旅立つのです。

 今年の行き先は、北海道!
 自然豊かな北の大地で、札幌や旭川、富良野や洞爺湖を巡りながら、各地での観光や体験学習などを堪能するスケジュールとなっています。
 さあ、あなたも、修学旅行で楽しい思い出を作りましょう!

●見ようよ、北の動物達!
 修学旅行の2日目に訪れるのは、旭川市の市街地より車で30分程のところにある、動物達の自然な生態を見学出来るように施設に工夫を凝らして全国的にも有名になった『旭山動物園』だ。
 今や年間300万を超える人々が訪れているこの動物園では、色々な動物をユニークな角度から見学することが出来る。
 その中でも、こちらは『ペンギン、アザラシ、ほっきょくぐま』という寒冷地に住む動物達を見て回るコースだ。

 ぺんぎん館にはキングペンギン、フンボルトペンギン、ジェンツーペンギン、イワトビペンギンの4種類のペンギン達がいる。
 また、ペンギン達が泳ぐ姿を見られるトンネルでは、頭上をスイスイと泳いでいくペンギンの姿も見られる。
 あざらし館には、大きな水槽の他に『マリンウェイ』と呼ばれる円柱型の水槽があり、上下から泳いでくるアザラシの愛嬌ある姿を見ることも出来るのだ。
 そしてほっきょくぐま館では、クマ達が生活している場所にひょっこり頭を出して間近に観察することが出来るドームがある。
 お昼頃に見に行けば、『もぐもぐタイム』という係員がエサをあげながら各動物達について説明をしてくれる時間があるので、タイミングを見計らって見に行くのもいいかも知れない。

「旭山動物園って、テレビとかでも凄く有名ですよねっ! 私も、ずっと行ってみたいな〜って思ってたんですよ」
 癒月・マヒロ(うっかりくノ一・bn0015)は、動物園のガイドブックを抱き締めながらちょっと興奮気味な様子。
「ほっきょくぐまは、水槽目掛けて飛び込んでくるところが大迫力だそうですよ! トンネルから見るペンギンさんは、きっと空を飛んでるように見えるんでしょうねぇ……」
 うっとりとした目は、生徒達を通り越して遠くを見ている。
 既に北の大地に心を馳せているようだ。
「はっ、いけないいけない。早く帰って、旅行の準備をしないといけませんね。皆さんも、忘れ物をしないようにご注意下さい!」
 自分の様子に気が付いたマヒロは、拳を強く握り締めると改めて生徒達に向き直り、にっこりと満面の笑みを浮かべた。
「ここでは動物さん達の意外な姿も見られちゃうみたいですから、みんなで楽しく見学しましょうね!」

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参加者
NPC:癒月・マヒロ(うっかりくノ一・bn0015)




<リプレイ>

●見ようよ、北の動物達!
 2日目、銀誓館学園の生徒達を乗せたバスが旭山動物園に着くと、そこからは自由行動だ。
 話題の場所だけあって、平日でも観光客は結構いるようで園内は楽しそうな人々で賑わっている。
「色んな動物が見たいなぁ……♪」
 パンフレットや園内マップを眺め、彩は初めて訪れた動物園への期待に胸を膨らませた。
「動物園なんて久し振り……目いっぱい楽しまないとなの」
 マップでお目当てのぺんぎん館の場所を確認しながら、えみるはふわふわと嬉しそうに笑みを浮かべる。
「往々にして予定というのは崩れるものですから、あまりカッチリ決めない方がいいですね」
 籐眞は冷静な様子でパンフレットを確認し、コースを決めた。
 グループの仲間とどの動物の館から回ろうか話し合ったり、『もぐもぐタイム』の時間を確認している生徒達の傍ら。
「アーイラブ、ノースアニマル!!」
 終は突然、周囲を吃驚させるような声を上げながら真っ先にお土産屋さんに一直線に駆け出した。
 旅先ではお土産を選ぶのも大事、とばかりに先に買い物を済ませてしまおうという生徒たちもそぞろに続く。
 大多数の生徒達は各動物達の館へと向かったけれど、思わず流れに乗せられ、行き先を間違ってしまった生徒もいるようで……。
「ここはペンギン館。猛獣なんかがいるのは、向こうの方だよ」
「えっ……」
 ユキヒョウを見たかったらしい桃恵は、教えてくれた生徒が指した方向に少し慌てたように走って行った。
 対して、北極狐は今の季節には会えないと残念がっている生徒もいる。
「白梟さんも、別のところなんだって」
 ティアリスがちょっと項垂れていると、
「じゃあ、そっちに行こうよ。あ、お土産屋さんもー!」
 気を取り直したエルは彼女の手を引いて、うきうきと歩き出した。

●ペンギンも、やっぱり鳥なんだ
 四種の可愛いペンギン達がいるぺんぎん館。
 ペンギン達は、自分達目当ての人だかりも何処吹く風で気侭に過ごしているが、陸の上をぺたぺたと歩く姿やちょっとした仕草も可愛い。
「あぅ☆ ぺんぎんだぺんぎんだ〜!! 本物でござる〜!」
 列の前に通して貰い、ねねねは寛ぐペンギンに目を輝かせた。
「わぁ〜ぺんぎんさん、かっわいいよね〜♪」
 隣にいる清美のはしゃぎようも、彼女に負けず劣らず。ふたりは逸れないようしっかり手を繋いで、館の中を進む。
「どうせテレビで見てんのと変わんねーだろけど」
 クールを気取りつつも、刀夜はちらちらとペンギン達を見遣る。うっかり表情が崩れそうになるのは、我慢我慢。
「うわぁ……やっぱり可愛い! ねぇ、り……あの、りおさん?」
 一方こちらは、同意を求めようと横にいる姉に声を掛けた里緒奈。だったのだが、お姉さんらしくと澄ました顔をしていた筈の璃御はというと、
「うわーっ!? すげー! ペンギンすげー! かわいーーっ!」
 すっかり素の状態に戻って興奮気味にペンギン達を見詰めていた。
「おぉ、スゲェ。ペンギン、だなぁ。スゲェぜ……! 北海道」
 ペンギンのおまけに北海道も凄く見えてしまった和真の後ろで、天華は嬉しそうにくるくるターンしている。
「ペンギン可愛いですね! 先輩達、楽しいですか?」
 楽しい反応を見せている仲間達にくすりと笑い、柳霞は尋ねてみた。
(「こんなことではいけませんわっ。仮にも微妙に最年長ですのに……」)
 はっとした天華は姿勢を正し、勿論と笑って見せる。
「やはりひとりで見るより、皆さんと一緒ですと楽しいですね」
 同じく頷き微笑みながらも、ペンギンの種類の区別は付かないけど、とぽつりと零す翠鈴だった。
「可愛いー、一緒に遊びたいな〜♪」
 ぽてぽてひょこひょこと複数で歩いているペンギン群を見付け、流羽はクラスメイト達とはしゃいでいる。
 修学旅行のひと時を、一緒に楽しく過ごせる相手がいることに、芝は喜びを感じた。
「あのよちよち歩く姿は、犯罪だと思う」
 彼の言葉に、水葵は嬉しそうに頷く。専門的な知識なんてなくても、ペンギン達の可愛い仕草だけで幾らでも話が続きそうだ。
 首と胸がオレンジなのが特徴の大型ペンギン、キングペンギンに、赤い目の上に生えている黄色の眉毛のような羽毛がキリッとした印象のイワトビペンギン、白と黒のラインが特徴的なフンボルトペンギンに、頭の上の白い模様がリボンのようなジェンツーペンギン。
「こんなに沢山の種類は初めて見ました、種類によって結構違うものですね」
 それぞれのペンギン達の仕草を眺めながら、てふ子は目を細める。
 舞はペンギンに気を取られて思わず硝子にぶつかりそうになったが、そのままぺったり張り付いて微動だにしなくなってしまった。どうやら、ペンギン達のいる風景が余程気に入ったようだ。
「ペンギンさん……とっても好きなの……」
 同じくペンギン達を食い入るように見詰めていた音々は、思い出のアルバムを作ろうと、いそいそカメラを取り出した。
「……なんて可愛いんだろうな」
 シャッターチャンスを狙いながら、征哉は目尻を下げて呟いた。ペンギン達の前では、ガラじゃないとか、そんなことは言っていられないのだ。
 その脇では、夜斗が気難しそうな顔をして強面なイワトビペンギンと睨めっこしていた。
 ケイもファインダーを覗き込み、イワトビペンギンがジャンプする瞬間を今か今かと待ち構える。
「なんだか動物達も楽しそうに見える……」
 伸び伸びとした様子のペンギンを眺めて呟いた十の視界にも、イワトビペンギンが飛び込んできた。小さいながらもきりりとした眼差しに、思わず可愛い、と呟いてしまう。
 千怜は他の種類のペンギンがいない、とブツブツ呟きつつも目尻を下げにやけた表情でカメラを構えていた。
 ポラロイドで映し出された風景と被写体を見比べ……ようとして、アリアは目を丸くする。
 秀一が撮った写真は、ペンギンよりもアリア自身を中心にしたものがメインだった。
「この写真は、秀一から見た世界なんですね」
「他人が見ている世界が、写真となる。興味深いね」
 青年の笑みに少し照れながらも、少女は彼からカメラの手解きを受けていた。
 岩場で寛ぐペンギンをのんびりと眺めていた竜兵は、憧れを抱いているジウに声を掛けられて驚き、思い掛けなく楽しい時を過ごした。
「えっと団長、よければ、明日のラベンダー畑も一緒にどうですか?」
「私でいいの?」
 緊張気味に誘う彼に、ジウは勿論と嬉しそうに微笑んだ。

 ペンギンに似ていると言われ、マヒロは満更でもなさそうにえへへと笑う。
「可愛いところとか、わたわたして放って置けないところとか」
「えぇっ!?」
「あわ、転んだ! あはは、本当にそっくりだよ〜!」
「もう、和沙ちゃんてば、あたしはあのペンギンさんみたいなどぢっこじゃないですぅ」
 くすりと笑った御守にマヒロが驚いて何か言い掛けた時、少し離れた場所で同じような遣り取りが聞こえて一同は顔を見合わせる。
 見れば、真っ赤になった麻璃流と共にトンネルへ向かおうとしている和沙が盛大に転んだところだった。
「平気か? 人多いさかい、気ぃ付けなあかんで」
 そこへ丁度、お土産の袋を小脇に抱えたバルトロマイがやって来て、人混みの中からサルベージしていた。
 ほっとしたようなマヒロに、人混みの合間を縫って忍び寄る影……。
「マ・ヒ・ロちゃ〜ん♪」
「わわっ?」
 突然泉水が抱きつく。
 更に、
「わっ!!」
「「わぁっ!?」」
 後ろから洋紀に脅かされ、転がりそうになったふたりを周囲が押し留めた。
「お姉ちゃん、またなん! ……すんませんなぁ」
 ペンギンを眺めてのんびりしていたところに声を聞きつけ、慌てて寄って来た瑞菜に怒られる姉。今回はちょっとばかりとばっちり。
「うんうん、その動物も可愛いですネ」
 一緒に回っている少女達に、一際背の高いアリスはこくこくと頷く。
 細かいことは気にしない様子の洋紀は、明るく笑って彼女や柚有と楽しげな話に興じていた。
 その頃、凛花と幸奈はといえば。
「やっぱり、ペンギンは行進しているところが可愛いわよね」
「触れないのは残念ですの……沢山、写真を撮って置きましょう」
 少し離れたところで、大人のペンギンと殆ど同じくらいの姿や大きさになった子供のペンギン達が並んで歩いているのを眺めていた。平和だ。
 小さな雛が撮影出来なくて残念に思いながらも、雪智は親子らしきペンギンが仲良く歩いて行く姿をカメラに収めた。

「わ……ちょっと待ってはーちゃんっ」
 どんどん先に行ってしまい、人の波間に見失いそうになる初雪を、歌織は慌てて呼び止める。
「歌織お姉さん、早く早くなのです〜」
 振り返った初雪はといえば、そんな彼女の心配も気付かないくらい楽しげにはしゃいでいた。
 ペンギンにとっては海が空……少年の想像を形にしたような世界が、そこに広がっていた。
 陸の上ではほのぼのとした風景を醸していた彼らも、水槽の下を通るトンネルから見上げると打って変わって俊敏に泳ぐ姿を見せてくれる。
 スイスイと羽を動かして泳ぐ姿はまるで本当に空を飛んでいるよう、と見上げた生徒達は感嘆の声を漏らした。
 お気に入りの腕時計を見付けた仁美は、ご機嫌な様子でトンネルをゆったりと歩いて行く。
 初めて間近でペンギンを見た新月のペースに合わせ、琴代ものんびりと側を歩いて頭上を見上げた。
「ペンギンってやっぱり鳥なんだね……」
 もみくちゃにされそう、と心配したけれど、トンネル内も順番に並んでゆっくり進むから大丈夫。めばえが顔を上げて感心げにしていると、
「わ、あのイワトビペンギン、こっちに流し目よこしていったよ!」
 亜希は既に遠くまで行ってしまったペンギンを見送り、目を白黒させている。
 ここにペンギンを見に来られてよかったと、環奈は呟きながら微笑んだ。一度でいいから、ペンギンと一緒に暮らしてみたいと思いながら。
 緩やかにカーブを描く硝子の壁面に張り付き、苗穂も泳いで行くペンギン達に夢中だ。
 ペンギンのふかふかさを思い出したクリスも、思わず感嘆の声を上げながらペンギン達に見入って時折足が止まってしまう。
「一緒に泳ぐことが出来たら、きっと楽しいでしょうね」
 沙夜は目の前を綺麗な弧を描き旋回していくペンギンの姿を、いつかの夢を馳せながら見送った。

「……似てるな」
 ペンギンと目の前の少女を見比べなんとなく呟いた恭平に、言われた忍本人は頬を染めてもじもじ照れた様子。
「ひょっとしたら、おしの前世はペンギンさんだったのかもしれませんね……」
 うっとりと視界を横切るペンギンを眺めた。
「……可愛いな、もちもちしてて」
 凄い凄いとはしゃぐ瑠姫の危なっかしさに冷や冷やしつつ、トキは携帯片手にペンギンの姿を追う。
「海の中の風景って、こんなカンジなのかな……」
 皆と並んで見る風景に喜びを噛み締め、ジングルは呟いた。
 何かと仲間達の世話を焼く真魚が、
「……こうやって上ばかり眺めていると、人にぶつかりそうだ」
 と呟いた直後。
「わわっ!?」
 ペンギンに夢中で反り返り過ぎた瑠姫がひっくり返ってしまった。
 後ろに立つトキをも巻き込んで……。
 微笑ましく彼らを眺めていた神無や、ペンギンの名前を間違えていたと呟いていたウィルソンも、思わず吃驚。
「っとと……ったく、仕方ねーな」
 更にトキの後ろにいた直人もあわやというところだったが、直前に気付いてしっかりふたりを支え、事無きを得た。
 悪態をつきながら、実は彼もペンギンに夢中だったのだけれど。
「お、お騒がせを……」
 周囲の人々にぺこぺこと頭を下げつつも、一緒にいると何が起きるかわからない仲間達が大好きだと改めて思うジングルだった。

 賑やかなトンネル中に、少女のはしゃぐ声が一際響く。
「今こっち見たやんな? めっちゃ可愛かったー!」
 過ぎって行ったペンギンのお尻を指しながら、愛音が目尻を下げると、
「わたしも海の中にいるみたいです。一緒に泳ぎたいなー♪」
 久遠は思わずペンギンを追って走り出しそうになった。
「あ、ほら久遠、混んでるから走っちゃ危ないよ」
 彼女を止める時雨は、双子で同い年でもしっかり者のお兄ちゃんのようだ。
「時速何キロだったかな……んー、まぁいいか」
 パンフレットを開き掛け、義忠は本物がいるのにそんな場合じゃない、と気を取り直して笑った。
 傍ら、雛姫は時雨と料理の話や、ペンギンが好きなのかなどと話をしながら、のんびりと見学を楽しんでいる。

「ジェンツーペンギンさんの学名は、『尻についた足』なんだって」
 逸れないよう兄にしっかり手を握られながら、嘉月はそんな名が付いたのは足が短いからなのか、と首を傾げる。
 望月の方はというと、早くほっきょくぐまを見に行きたいらしくそわそわしている。
「あ? なんでって……でっかくてかっけーじゃん」
 にっと笑う彼の後ろを、足は短くとも素早い動きでペンギンが泳いで行った。
 仲良しのふたりと手を繋ぎ、ユエは恐る恐るトンネルに足を踏み入れる。
 明るく開けた水の中の世界に歓声を上げた友達に少し遅れて、頭上を見上げた。悠々と泳ぐペンギン達の姿に、自然と笑みが浮かぶ。
「あのこさっき、お土産屋さんにいたよ。しほちゃんっ、連れて帰らなきゃ」
 そう百花が指差したのは、颯爽と泳いでいくイワトビペンギン。
 ペンギンを連れて帰れないと知ってしょんぼりしていた熾火も、彼女の言葉にこくりと頷く。
 周囲から『ペンギン』と聞こえる度、ちょっと微妙な気分になった片銀が頭を掻いていると、比鶴がどうしたのかと不思議そうに尋ねてきた。
「そーいや、ペンギン好きなのか?」
「……ん! やはりこの悠々とした姿は、どれだけ眺めてても飽きませぬ!」
 目をキラキラさせて嬉しそうな彼女に、片銀も気を取り直す。
「あのギャップがたまらなく可愛いんですよね」
 陸とは全く違った様子のペンギン達を眺める蒼瑛の傍ら、裕護はペンギンよりも彼女ばかり見ていた。
(「む。というか……もしかして初デートではっ!?」)
 更に、改めて意識してしまって真っ赤になり、わたわたと慌ててしまう。
「自分も海の中にいるみたいだね……」
 手を伸ばしても、背の高い人には敵わない。
 のばらはじっと傍らの理駆に意味ありげな視線を送る。
 何処か面白がっているのか、軽く笑って持ち上げてくれた理駆に、少女は照れ隠しのようにペンギン可愛いね、と笑って見せた。
 可愛い、と声を上げながら、牡丹はさり気なく征四郎の腕に自分のそれを絡めた。
 居心地悪いようなくすぐったいような、不思議な気分になってしまう。
「さぁ、ホッキョクグマも見に行くんよ〜!」
「も、もういいのか?」
 ぎこちなくも腕を組んだまま、ふたりはトンネルを進んだ。
「うわっ、は、はやー」
 カメラを向ける前にひゅんと滑空するように泳いで行ったペンギンに、火蓮は目丸くする。
 陸の上ではマヒロの後ろにいるところを撮るのも簡単だったが、水中ではちょっとコツが要りそうだ。
 顔を上向け、泳ぐペンギン達を目で追う菊乃も、普段よりもはしゃいでいる様子だ。
「次は、あざらし館ですね」
 段取りを確認しつつ、茜はペンギンとはまた違う泳ぎを見せてくれるだろうアザラシに想いを馳せる。同時に、マヒロなら海に潜れば見放題と羨ましげな眼差しを送れば、彼女は瞬きして「で、でもアザラシさんのいる海は寒そうですよー」と頬を掻いた。
「じゃあ、最後はしろくまだよね」
 一緒に写真を撮りたいなと言う神璽に、マヒロもにっこり頷いた。

●アザラシは水中を悠々と
 あざらし館のアザラシ達は、愛嬌たっぷりの仕草と何処か優雅な泳ぐ姿で人々を楽しませている。
「ここでマリモっていうと、キリンの名前なのかぁ……」
 後で見に行こうかなどと呟きつつ、三祇郎は癒しを求めて目の前にあるあざらし館の扉を潜った。
「陸ではヒレを使わないで這って進むのが、アシカとの違いだそうだよ〜♪」
 丁度潜ってきたアザラシを見遣りながら、憐は周囲の生徒にそう説明する。
「へぇ……結構、見れるんじゃねぇか」
 秀真はたいして興味のない素振りを見せつつも、視線はアザラシに釘付け。
「なんとなくアザラシを見ていると和みますね」
 大きさが自分達に似て、泳ぎ姿も生き生きしているからだろうかと、新は水槽の隅に陣取りじっと眺めていた。
「俺も水中の心地よさは身に染みているから、なんとなくはわかる」
 アザラシ可愛い、と興奮気味な姫希を脇に、水を得た魚、もといアザラシを眺める零壱。
 ふと、何故姫希がアザラシを見たがったのかと零壱は疑問の目を向けるも、彼のはしゃぎっぷりを考えれば、これもまたなんとなくわかったような気がした。
「あ、あのアザラシさん、立ってますね」
 まるで水槽の底で立ち上がったかのようなポーズを取っているアザラシに、弥生は嬉しそうに声を上げた。
「腹を突きたい……無理だけど」
 緩いカーブを描く柔らかそうなフォルムに、夜色は思わず呟いてしまう。
 仁が手や足を動かしてみると、ゆったり泳いでいたアザラシもヒレを動かして反応している。
(「くそっ、負けてたまるかぁぁぁぁ!」)
 躍起になって続けていたら、周囲からくすくす笑う声が聞こえた。

 大きな水槽と併設された円柱形のマリンウェイに、1頭が下からひょっこり頭を出し、スイスイ上へ昇っていくと生徒達も歓声を上げた。
 目を合わせたくて姿勢を傾けると、アザラシも応えるように顔を下向けながらゆっくりと天井に吸い込まれていく。
「ああっ、かわいいなぁ!」
 きさらは傾いたまま、頬を緩ませた。
「は〜……」
 アザラシ達はマリンウェイを行ったり来たり、時に2頭がすれ違ったりする。
「わ〜……♪」
 彼らが上下に通り過ぎる度に、スバルは溜息にも似た声を上げた。
 可愛いアザラシに見蕩れている間に、紅鈴はクラスメイト達と逸れてしまった。
 そんな彼女の目に飛び込んできたのは、同じようにぽつんと取り残され、泣きそうな顔をしたレイだった。
「にゃかないで……ぼくかなしい」
 アザラシのぬいぐるみを手にそう話し掛け、笑顔を向けるとレイの泣き顔も笑みに変わった。
 手を繋ぎ歩くふたりが通り過ぎた水槽の一角では、張り付いていた今日介と蹴一は、何に驚いたのか悲鳴じみた声を上げていた。

●ホッキョクグマは、間近で見るとやっぱり猛獣?
 ほっきょくぐま館には、迫力のダイブやドームからの景色を楽しもうという人々が集まる。
 熊達は慣れているのかのんびりした様子で過ごしているが、この賑わいでは流石に昼寝どころではなさそうだ。
 地面からぽつぽつと膨らみを見せているドームは、アザラシの視点で熊を間近で見られるよう作られたものだ。
「わぁ……」
 気紛れなのかカメラを持った緋央に興味があるのか、熊の1頭が彼女のドームに寄って来た。
 意外と人懐っこそうな様子に、景伍は「へぇ」とか「ふぅん」とか呟きながら熊達の様子を眺める。
「うわー! 熊めっちゃカワエエ! 触りたいなぁ……!」
 間近で歩き回る熊を眺める誡矛は、体躯に似合わず子供のように無邪気な表情を浮かべ、ドームに張り付いていた。

 所変わって、こちらは水槽側。
「おっきい……もふもふしてそう」
 陸の上をうろうろしている熊を見上げ、三樹はその大きさと毛並みに驚く。
「ぼくくまさん好きー♪ わあ、おっきくて白いねー!」
 感嘆の声を上げたミシェルは、撫でることが出来たらいいのにと食い入るように熊を見詰めた。
「手、繋げば、逸れない……し」
 志狼の手をぎゅっと握り、ミヤコは満足そうに笑む。
 人だかりで見えないかも知れない少女を気遣って、志狼は肩車を申し出た。
「俺も背、低いんですけどねぃ……」
 触れた温もりも、動物を眺める喜びも、共に感じることが出来れば尚楽しい。
「シロクマさんも、こうしてみていると、とても雄大で……」
 のしのし歩く熊を眺めながら、奈月は隣にいる先輩に話し掛けた。
 筈だったのだが、肝心のその姿が見えない。
「……大きいなぁ」
 当の遊司はいつの間にか、野性味溢れる熊に怯え彼女の後ろに隠れていたのだった。
「やっぱあれかな、魚とか獲れんのかな? こうバシっとさー」
 熊の勇ましい姿を想像し、俊樹はもぐもぐタイムを待つことにした。
「よーよー兄ちゃんかっこいいね! こっち来て!」
 リサは近くにいる熊に声を掛けてみるが、聞こえないのか気紛れなのか違う方へ行ってしまった。
 動物達を見て無邪気に喜んでいた杏奈も、通りすがりの観光客にカメラを託して衛と並べば緊張で固まってしまう。
 手を繋ぐのもやっとの仲なのだから、仕方ないのかも知れない。
 そこへやって来たのは、アザラシのぬいぐるみを持った涼。
 彼が水際でひょいひょいとぬいぐるみを動かすと……。

 ばしゃーん!

 釣られた熊が勢いよく水へと飛び込んだ。
「きゃあっ」
 派手な音と飛沫に驚き、杏奈はその拍子に衛に抱きついた。
「み、蜜月さん……」
 そこここでシャッターの音が聞こえる中、衛は真っ赤になってうろたえる。
「うわーうわー!! すっごくかっこいいです!」
 そんな空気も露知らず、漣は自分が迷子になっているのも忘れて周囲に同意を求めていた。
「お、おい……三葉?」
 タイミングよく熊のダイブを見られて大喜びの三葉に抱きつかれ、うろたえる榛那。
「あんまり嬉しかったから、フフ」
 そんな榛那に、少女は少し悪戯っぽく笑った。
 けれど、そこまで喜ぶ彼女を見られるのも、熊のお陰と思うと彼は嬉しさを隠せなかった。
「なるほど、ああすりゃいいのか」
 皓は感心げに頷き、陸に戻った熊に工夫を凝らした動作を見せてみる。
「おい、鶫。いい写真が撮れたかい?」
 小さな弟分がよく見えるよう肩車していた銀冶郎が上向きに尋ねると、鶫はデジカメのモニターを眺めて大きく頷いた。
「すげぇ、こんなアングルから撮れるなんて……ありがとう、おぎん兄ちゃん」
 持ちつ持たれつ、いいお土産が出来たようだ。
「しろくまさんー!」
 玲樹は存外に幼い表情で熊目掛けて駆け寄った。
 親切な観光客達がスペースを空けてくれる中、友人達と撮影し合う。
「おっきい……それに、素早く泳ぐんですね!」
 カメラを向けられながら、水の中を堂々とした風情で泳ぐ熊に、雪羽は目を輝かせる。
「この場合、犬掻きじゃなくて……熊掻き?」
 四足で水を掻く姿を感心げに眺めていたひなたも、ぽつりと呟いた。
(「あの動き、拳法や戦いに応用出来ないだろうか……」)
 食い入るように見詰めていると思ったら、結局武道に結び付けてしまっている陽。
 淳は場慣れしていない彼が楽しんでいるのかよくわからなかったが、とりあえず夢中になって熊を眺めているようなのでよしとした。

 熊がダイブする瞬間を撮影出来たことを、樹がマヒロを見付けて報告すると、「よかったですね!」と彼女も喜んだ。
 一番印象に残った動物を聞かれ、彼女は似ていると言われたペンギンを挙げる。
 が、マヒロの視線が自分が抱えている大きなぬいぐるみに向けられているのに気付き、砌は「後輩に頼まれただけだっ」と慌てた。
「確かここって、お土産にも力入れてるのよね。ここでしか売ってないのもあるんだって」
 お土産屋の話題に、それを聞きつけたエレンも身を乗り出した。
 そう、旅行といえば、お土産だって大切なのだ。

●お土産選びも旅の醍醐味!
「動物達もいいけど……お土産買わなきゃ……」
 衛は結社の友人の為にと、動物見学もそこそこに園内に点在しているお土産屋さんを覗く。
 店内では、他の生徒達も観光客に混じって熱心にぬいぐるみや旭山動物園ならではのグッズを熱心に物色し、品定めしている姿があった。
「さて、何がいいのかね……」
 従兄妹へのお土産を選ぶ蒼一郎は、動物達のぬいぐるみがディスプレイされた一角で腕組みをしている。
「なんやねんこいつ……なんか腹立つ目つきやな」
 志郎は学園で待つ大切な人の為にお土産を選んでいた筈なのに、何故か妙に鋭い目つきをしたペンギンのぬいぐるみと睨めっこしていた。
「……これらの条件を満たす土産物を探し、このマグカップに辿り着いたのです」
 お土産のお菓子などと一緒に手にしたマグカップを見せ話す漣弥に、売り子の女性はそうなんですか、と眉を下げながら笑った。
「さて、どんな反応返してくれるかねー、あの人はー」
 抱きかかえるのに丁度いいペンギンのぬいぐるみを手に、流刃はニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべた。
「ツンツン頭のイワトビペンギンのぬいぐるみでも買ってやろうか?」
 美輝がぬいぐるみを手ににっと笑うと、魁斗も熊を見た時の様子を思い出し、徐に白熊のぬいぐるみを手に取る。
「……美輝、お返しにコレなんてどうだ? 気に入ったんだろう?」
 見学時になにやら見抜いていたらしい彼の言葉に、美輝もうっと声を詰まらせたが、結局ふたりでレジに並ぶことと相成った。

●お待ちかねのもぐもぐタイム!
 もぐもぐタイムの時間を見計らった人々が各館に集まる中、スタッフが動物達の生態を楽しく説明しながら、餌をあげている。
 次々と人が集まってくる中、丁度いい場所に陣取っていた御鏡はのんびりとその光景を眺めた。
「へぇー、結構可愛いもんだな」
 紫苑が迷子にならないようにと彼女の腕を握ったまま、朔は俄かに笑みを浮かべる。
「動物がご飯食べてるのって、可愛いね」
 そう笑みを向けた紫苑は、次はホッキョクグマを見に行こうと朔の腕を引いた。
(「解説もお土産話にしたいし、よく聞いとかな!」)
 祈一郎はカメラ片手に、スタッフが披露する様々なペンギンに纏わる話を気合を入れて聞いている。
「ペンギンの腹って凄い弾力ありそうだよなっ」
 並んで餌を待つペンギン達に興奮した瑛二に、打って変わって物静かに観察している和司。
 テストそっちのけで動物園の予習をしてきたというガイド役のまりあーじゅも、
「なんだか無性にもふもふしたい衝動に駆られますよねぇ……」
 と思わずペンギンのお腹を凝視してしまった。
「あれが『おねだり道』を志す者の目標だな!」
 ペンギンを指差し、瞳を輝かせる空。
「けどよ、流石に生魚の丸呑みは腹壊すと思うぜ!」
 そう応えつつも、友史は空腹を知らせる腹時計に切ない目をした。
 日明は恋人と肩を並べて魚を食べるペンギン達を嬉しそうに眺める。付き合わせっ放しで悪いなぁ、と隣をちらりと見遣りつつ。
「ペンギン可愛い〜、飼ってみたいよねぇ」
 魚を飲み込むペンギンを見詰め、蕩けそうな表情で光歩が言うと、
「いや、ペンギン飼うならプールが要るぜ」
 海燕の返答はちょっとすげない。けれど、続けてペンギンって癒されると小さく呟く。
「可愛いなぁ……って、た、食べ終わっちゃう……!」
 あまりの可愛さに気を取られ、うっかりカメラを構えるのを忘れていた弥琴は、あわあわとファインダーを覗き込んだ。

 親離れしたとはいえ、まだ少し小さい子供のアザラシはより人懐っこいようで、スタッフにちょっと甘えているようだ。
「うわぁー、可愛い!」
 希兎はそんな子アザラシの様子を見て触りたいなぁ、とはしゃぐ。
「ふふ、円らな瞳と表情が少しモーラットに似ているかも知れません」
 アザラシの顔をうっとり眺めながら、カードの中のモーラットを思い起こすいつか。
 クラスメイト達と手を繋いだ瞳亜は、大きなアザラシに餌を取られないかとハラハラしながら見守っている。
(「ま、丸い」)
 ナイアーラトテップは、目を見開いたままごくりと喉を鳴らした。
「に、にく(のかたまり)だ……」
 彼の声に、一緒に見学していた仲間達の目も、まん丸。
「にくじゃないよ……っ!」
 希兎があわあわと否定した直後、ぬいぐるみみたい、と喜んで写真を撮っていた朱里が彼の脇腹に攻撃を仕掛けた。
「なっ……だってあれ、どう見てもにくじゃんよぉ」
「アザラシさんが食べているのはお魚さん、ですよね……?」
 いつかは彼の言葉の意図がわからず、不思議そうに首を傾げた。
 餌を食べるアザラシ達のついでに、未都は仲間達に突っ込み捲くられている少年も写真に収めた。

「あんまりはしゃいで迷子になるなよ?」
 もぐもぐタイムと見物に来た人々でごった返すホッキョクグマの水槽前で、統悟はシルヴァーナの手を握り、そっと引き寄せた。
「こういう機会はあまりありませんもの、勉強になります」
 スタッフの説明に耳を傾ける彩華。その言葉に頷いていた志津乃は、水中に投げられた魚を獲りに飛び込む熊に、思わず「まぁ」と声を上げる。
 餌を食べる姿は意外と怖い、と弓弦は首を竦める。くまさんだけに、くまった……?
 ひとりで見学していることを気に掛けていた桂だが、実は周囲は銀誓館の生徒だらけなのだった。
 上手く撮れたらクラスメイト達にもあげよう。水槽前の丁度いい位置に陣取ったウィルは、タイミングを見計らってシャッターを押した。
「食べてるところって和むでっすよー。なんかかわいいでっすよね」
 ちょっと不思議な口調の壱也に、隣で見学していた時計も小さく頷いた。

 皆動物達に夢中なせいか、少し穴場の休憩所。
「アザラシもペンギンも可愛かったね、熊はちょっと怖かったけど」
「すげー迫力だった! 今度は親友達とも来たいな」
 動物園の景色を眺めながら、奈緒と刹那はそれぞれお土産を手に、動物達を見学した感想を楽しげに語り合っていた。

 時刻はもうすぐ15時。
 皆で楽しく動物達の可愛らしい姿や意外な表情を見ているうちに、あっというまに見学時間は過ぎてしまった。
 慌てて集合場所の東門に走って来た最後の生徒を確認したら、いよいよ旭山動物園ともお別れ。
 沢山の思い出とお土産をのせて、来た時より少しばかり重くなったバスは、次の目的地を目指して出発した。


マスター:雪月花 紹介ページ
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参加者:172人
作成日:2007/06/21
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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