≪剣山刀樹≫桃の花の咲く頃に


<オープニング>


 柔らかな風が吹く庭園の中、戦いの舞台は広がっていた。
 白い石で造られた闘技場の上にいる自分達を、結社『剣山刀樹』の能力者達は自覚する。
「これは……?」
「なんだか突然綺麗な場所に出たねぇ……?」
 テオドール・フォルクナー(白ム廃園・b16818)と阿津沢・季瑠花(夢託されし者・b67844)にならい、つい先ほどまで、ばらばらの場所にいたはずの他の能力者達も周囲を見回した。
 標高は鎌倉よりも確実に高いのだろう、山間の花園に吹く風はいまだ冷たさを残していた。だが、石造りの闘技場の周囲に咲き誇る季節の花々は見事なものだ。
 日の光を浴びて風にそよぐ花々の様子は、心和むものであったかも知れないと、方來・天城(因幡のうさぎ・b82377)は思う。
「突然ワープされて来たという事実が無ければ、じゃが……」
 天城が一人ごちた時だ。
「まあ……。ここは、どこでしょう? 綺麗な花園ですわね」
 突然、声がした。
 能力者達がその声のする方を見れば、先程までいなかった一団が忽然と姿を現している。
 その一団の中華風の装飾を帯びた服装は、彼らが妖狐であると推測するに十分なものだ。
 闘技場の外に咲く花々に目を奪われている少女を守るように、怜悧な印象の青年が能力者達に警戒の視線を向ける。
「お嬢様、敵のようです」
 両手の武術短棍を構えた彼に続いて、3人の男が青龍刀を引き抜いた。後方では女官らしき姿の女性達が、長い服の袖から九尾扇を取り出している。
「ボク達とやる気かな?」
 白露・狭霧(幻想を宿す白き霧・b47505)がイグニッションカードを取り出した。他の能力者達もその手にカードを取り出し、臨戦態勢を取る。そのカードに視線を向けて、少女は目を丸くした。
「あら……栄駕、あちらは銀誓館学園ではないですか! 敵だなんて言ってはいけませんわ」
 青年に言い、少女は能力者達に笑顔を向ける。
「わたくし、柳・玲蘭と申しますの。よろしくお願い致しますわ」
「……よろしくお願いします」
 ぺこりと頭を下げる玲蘭に、霧宮・凪乃(銀夜の騎士・b15075)はどこかが毒気を抜かれたように応じる。玲蘭は、笑顔をそのままに小首を傾げて問い掛けた。
「ところで、こちらが何処なのか御存知ありませんか?」
「ああ、それは多分……」
 以前にも同様の経験をした事がある真神・綾瀬(蒼風の舞姫・b39277)が口を開こうとした時、どこからともなく声が響いた。
『戦士諸君、ようこそ』
「この声は?」
「司会進行役です」
 身も蓋もない説明を、綾瀬が告げる。
『闘神の独鈷杵は、それを所有するに相応しい主を捜し求めている。戦士達よ、戦え。100の戦いが繰り広げられた後、最も勝利を収めた組織の元へと闘神の独鈷杵は復活するであろう』
「……と、いうことです」
「闘神の独鈷杵のメガリスゴーストですね」
「まぁ!」
 能力者達の説明に、玲蘭は大きくひとつ手を叩いた。
「話には聞いていましたが、これがそうなのですわね! 皆さんとは休戦条約を結んでいる間柄ですが、メガリスが掛かっているとなれば、全力を尽くさないと廉貞様にも怒られてしまいます」
 玲蘭の手にした灯篭が、妖しく火を揺らめかせた。実力的にも決して侮るべきではないだろうと、テオドールは見て取る。
「まあ、ここで戦ってもお互い命を落とす心配はないわけだし、その点は安心だね」
「そうと決まれば話は早いぜ!」
「イグニッション!」
 団長の言葉に、柏村・健幹(ウォーキングビート・b80328)とファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・b82686)は即座にイグニッションを果たした。
 2人の手にギターが現れ、それに続いて他の能力者達も詠唱兵器を身に纏う。
 詠唱兵器を構えた能力者達に、玲蘭をはじめとした妖狐達も態勢を整える。前衛に玲蘭、それに栄駕と呼ばれた青年と青龍刀を持った男達。後衛に女官らしい3人組といった布陣だ。
「では、参りましょう! 銀誓館の実力、見せて頂きます!」
「勝っても負けても恨みっこなしって事で頼むよ! 行こう、みんな!」
 テオドールが闘技場の石畳を蹴る。
 戦いの起こす風に花々の舞い散る中、両者の激突は開始された。

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参加者
霧宮・凪乃(銀夜の騎士・b15075)
テオドール・フォルクナー(白ム廃園・b16818)
真神・綾瀬(蒼風の舞姫・b39277)
白露・狭霧(幻想を宿す白き霧・b47505)
阿津沢・季瑠花(夢託されし者・b67844)
柏村・健幹(ウォーキングビート・b80328)
方來・天城(因幡のうさぎ・b82377)
ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・b82686)



<リプレイ>


 戦闘は前進と共に開始された。
 妖狐側が一斉に前進してこちらを射程に捉えんとするのに呼応するように、前衛達も前進、互いの距離を詰めていく。
 前衛たちの背を見送るファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・b82686)の指先が、ギターをかき鳴らす。
「銀誓館の最強歌手、ファルケ・リフライヤ参上っ! 戦いよりも俺の歌を聴けぇええっ!!」
「やれやれ、集団戦じゃ妖狐とはやり合いたくないんだが……ま、少しは役に立たないとな」
 熱唱を始める後輩の音痴な歌声を誤魔化すように、柏村・健幹(ウォーキングビート・b80328)のベースギターが前奏を響かせていく。

 霧宮・凪乃(銀夜の騎士・b15075)と白露・狭霧(幻想を宿す白き霧・b47505)、来訪者ジョブを本業とする2人は、敵前衛である青龍刀を持つ3人の妖狐達を阻まんとしていた。
「休戦条約を結んでいる妖狐との独鈷杵を賭けた戦い……お手柔らかに、というのは非礼でしょうね……」
「こうして正々堂々相見えるのは光栄に思う。手加減はしないよ」
「おう、かかって来るがいい!」
 2人の言葉に、相手方の妖狐たちから応諾の言葉が返る。
 とはいえ三方に散り、玲蘭たちの先触れとして味方側の陣中へと浸透を図る拳士達3人に対し、こちらは2人。止めるための手管を持ち合わせていない2人としては、3人ともを阻むのは困難だ。
 だが、2人を援護するべく、健幹のギターに生まれた幻の弦が唸りをあげる。
「聞いたことあるか? こんなビート!」
 響き渡る強烈な重低音。クライシスビートによって、3人のうち闘技場中央付近を突っ走ろうとした一人がその場で立ちすくみ、動きを止める。
「一人は止めたぜ!」
「ありがとうございます! 」
「分かってる」
 アビリティで自身の強化を図りながら、凪乃と狭霧はそれぞれ左右に飛び、青龍刀の妖狐の前に出る。2人の動きに呼応するかのように、拳士達の体が虎の如きオーラを纏い始める。

 周囲で起こり始める戦闘を楽しむように、ゆっくりと進み出て来る玲蘭。
 その前方に伴うのは護衛役の栄駕だ。前進する2人の前に素早く走り込んだ真神・綾瀬(蒼風の舞姫・b39277)の拳の振りと共に、両手首のブレスレットが振動を発する。
「お目にかかれて光栄です。私は退魔の一族真神一族宗家の娘、綾瀬。正々堂々全力で戦いましょう。推して参ります!」
 正拳突きの要領で繰り出された拳から見えざる衝撃波が放たれ、拳を受けようとした栄駕が顔をしかめる。
「音使いか……!」
「あなたも青龍の技を修めるようですね。相手に不足はありません!」
 斬り付けるような勢いで繰り出された栄駕の龍尾脚が叩き込まれるのを、綾瀬が舞うような動きで巡らせた掌で受け止めた。乾いた音が響き、互いに飛びのいた2人の拳士は機を窺うようにじりじりと間合いを詰め始める。
「もう、栄駕ったら、わたくしの護衛ってことを忘れてるんじゃありませんこと?」
「殺し合わなくて済む戦いは、思いきり力が振るえて爽快なものだからね」
 頬を膨らませる玲蘭に、テオドール・フォルクナー(白ム廃園・b16818)は、油断なく大鎌を構えると、改めて名乗る。
「玲蘭ちゃん、だっけ? ボクはテオドール・フォルクナー。この一戦、よろしく」
「こちらこそ。短い間ですが、よろしくお願いしますわね」
 笑顔と共に為された挨拶。瞬間、玲蘭の掌はテオドールの胸に触れていた。
 その掌から流れ込んだ気が、彼の詠唱兵器の働きを狂わせる。
(「武器封じ!」)
 一瞬で回転動力炉の勢いが落ちるのを感じながら、その機能を失った大鎌を振るい、テオドールは玲蘭を押しやり言葉を紡ぐ。
「ねえ、玲蘭ちゃん。よければ銀誓館学園へ来てみない? 同年代の色んな能力者がいてすごく楽しいよ」
「まぁ、それはそれは……聞くだけなら楽しそうですわね」
 玲蘭が応じる声を聴きながら、テオドールは殺戮ハウンドを解き放った。
 武器封じを受けていようが、このアビリティには関係が無い。針金で出来た獣達が、テオドールの足元から現れ、妖狐達へと飛び掛かっていく。
 三人官女をよそに、玲蘭は僅かに体を逸らし、手にした灯篭で針金の猟犬を受け止める。
 先程の一瞬で、技を繰り出すと同時に守りを固めていたのだろう。彼女の技に、三人官女の射程から逃るべく後退しながら方來・天城(因幡のうさぎ・b82377)が唸る。
「見たことがない技ですね……むむむ、地球は僕の知らないことばかりです!」
 綾瀬に白燐奏甲をかけていた阿津沢・季瑠花(夢託されし者・b67844)は、その見覚えのない技が『玄武拳士』のものであると見抜いていた。
「玄武拳士さん、一度会ってみたかったんだ。四神の伝説から朱雀も居るはずなんだけど、大陸には存在してるの?
「あら? ……既に面識があるかと思いましたが……」
 季瑠花の問いに、軽く首を傾げる玲蘭。テオドールはその言葉に笑みを一つ、
「じゃぁさ、玄武拳士や朱雀拳士が本業の人達にも、さっきの話を伝えてくれるとありがたいな」
「むむっ……それは承諾致しかねますわ」
「あ、やっぱり?」
 実質銀誓館を利する行為なだけに当然か、と思う能力者達。
 だが、玲蘭の反応は少し違っているようだった。
 灯篭を持っていない方の手指をこちらに突きつけ、彼女は言う。
「あなた達の魂胆は分かっていますわ。朱雀拳士の方や玄武拳士の方達まで、文曲様や武曲様のように洗脳するおつもりですわね!」
「してねぇよ!?」
 後方の健幹が演奏しながら思わず叫んだ。
「あ、あら? 曰く学園に足を踏み入れたら七星将候補すら洗脳されて二度と帰って来ないだとか、曰く共同作戦の折には妖狐を平気で捨て駒に使うだとか……」
「お嬢様、それは相当誇張されているのでは」
 綾瀬と拳を交わしながら栄駕が言う。
 三人官女が顔を逸らしたところを見ると、噂の出所は彼女達辺りだろうか。
「あら、まぁ」
「前者は兎も角、後者は……?」
「沖縄での共同作戦の折に、囮役を務めた貪狼様の配下の方達が一部隊丸々全滅したとか、一時期話題でしたわよ?」
 玲蘭も伝聞のようだが、能力者達にとっても直接関わった者が8人の中にいないだけに、寝耳に水の話ではあった。
「悪事千里を走るとか、人の噂も七十五日っていうけど……」
「長い七十五日ですね」
 狭霧と凪乃が呟くのに、玲蘭はわざとらしく咳払いを一つ。
「コホン……。まあ、所詮は小娘の戯言に過ぎませんから、お気になさらず。直接朱雀拳士の方と相見えた際には、よりよい御話が出来るかも知れませんわよ」
 などと言いつつ、玲蘭は近接戦を中断、。
「どの道、この戦いには関係の無いことだからね。……それじゃ玲蘭ちゃん。玄武拳士の本気を見せてもらおうかな」
「では、玄武拳士らしく」
 テオドールに応じて一息、玲蘭は言った。
「守りを固めさせて頂きます」
 次の瞬間、妖狐たちに狐耳と狐尻尾が生じる。制御された妖力は、周囲のチリを巻き上げ、そこに小妖怪の幻影を一斉に映し出した。


「アヤカシの群れ……?」
 連携からの大技を予想していた季瑠花は、一瞬言葉を失った。
 敵が用いたアビリティが、完全に能力者達の想定の外にあったためだ。 
「……って、こりゃ呆けてる場合じゃなさそうだぜ」
 小妖怪の幻影をギターを振り回して追い払うと、ファルケはヒーリングヴォイスを歌い始める。
 アヤカシの群れの一発一発の被害はさして大きくない。
 とはいえ、妖狐全員で連続使用された時の総ダメージは到底看過しうるものではなかった。事実、ファルケはもちろん、敵後衛の射程から離れていた天城の防具もまた、一瞬で損傷している。
 加えてより大きな問題は、妖狐側のダメージがたちまち回復しつつある事だ。
「幻楼火、来ます!」
 凪乃が後ろへと声を飛ばす。
 仲間の回復は十分と見なしたのだろう、三人官女のうち2人は幻楼火を能力者達に向けて放っていた。動きを止められた凪乃、テオドールの姿に、健幹が声をあげる。
「まずいぞ、天城ッ!!」
「うん!」
 健幹と天城がすかさず動きを止められた2人ごと仲間達を癒す。自らに白燐奏甲をかけながら、季瑠花は敵の狙いを悟っていた。
「後衛の人達まで間合いを詰めたのは、なるべく多くを射程に捉えるため……?」
「強化アビリティは、守りを固めるため、か」
 眼前にいる青龍刀の妖狐に向けて、狭霧は踏込ざま薙ぎ払うようにして紅蓮撃を叩き込む。だが、その痛烈なダメージを、続けざまに使われるアヤカシの群れは癒していく。
「こちらの守り、突破できるか見せて貰います」
「やらせてもらいます。突破しなければ、勝てませんから……!!」
 玲蘭の言葉に栄駕との間合いの奪い合いを一瞬止めた綾瀬がブレスレットを撃ち鳴らした。
 瞬間、轟音の弾丸がブレスレットから放たれる。
「まずは後ろから落とさせてもらいます!」
 響音弾が妖狐側の隊列後方、三人官女の一人を撃ち、凪乃もまた十字型の紋様を放ち、彼女達を狙い始める。

 先程までのような移動を止めた妖狐勢と能力者達は、誰一人として戦闘不能に陥らないまま、お互いに狙いの相手にアビリティをぶつけ合う段階に入っていた。とはいえ、
「……泥仕合というのじゃろうな、こういう状況は」
「だろうな」
 という感想が、後方で回復につとめる天城やファルケの口から零れるのも無理はなかった。
 互いの戦術が噛み合い過ぎているのが、無闇な長期戦に陥っている原因だ。
 火力の集中を図り切れていない能力者達は勿論だが、こちらも回復アビリティを活性化した能力者が多かったためか、妖狐側も今のところは攻めきれずにいる。
 時折、妖狐側は能力者達の攻撃の手が緩んだ隙を狙って健幹の動きを止めようとするが、今度はテオドールが浄化サイクロンを使用し、動きを止められた者達を癒していた。
「……その便利なアビリティ、こちらにも下さいませんか?」
「いやー、それはちょっと……」
 などと団長と敵のリーダーが互いに間合いを測りながら話しているのを聞きながら、季瑠花は狭霧の元に駆け寄り、白燐奏甲を施す。
(「でも、こうして耐えられるのは今だけだね」)
 彼女は心中でそう思案した。
(「こちらで回復アビリティを大量に活性化しているのはわたしと天城くんの2人……」)
 だが、対する妖狐側は、おそらく8人全員がアヤカシの舞を複数活性化しているのだろう。
「24回か、36回か……参ったね」
 既に殺戮ハウンドを使い切ったテオドールは、敵に悟られぬよう舌打ちする。
 彼もまた本来ならば玲蘭相手に使うはずの聖葬メイデンで、想定通りなら倒している筈の三人官女を狙わざるをえない状態だ。
「逆に1人……いや2人も倒せれば、回復突破して押し切れるんだろうが」
 ファルケもアンチウォーヴォイスの切り時を考え始めていた。このまま味方の攻撃アビリティが切れてしまえば、敵側の勝利は揺るぎないものとなる。
(「どっちにそろリベリオンビートがもうじき品切れだ。動かないとヤバいぞ!」)
 健幹のベースギターが奏でる音色が僅かに変化したのを受け、凪乃と狭霧が彼の方を見て微かに頷いた。2人の攻撃力は季瑠花からの支援も加え、現状望みうる最大限まで高まっている。
「もうしばらく、耐え切らせていただきますわね」
 能力者達の前で、再びのアヤカシの群れが、妖狐側のダメージを回復させていく。
 だが、
(「凪乃ちゃん!」)
 一瞬の呼吸と共に、テオドールの聖葬メイデンが官女の一人を挟み込む。
 瞬間、凪乃は動いた。

 凪乃の前に生まれるクロストリガーの紋様。長槍で突き飛ばされた紋様は、狙い通りにアヤカシの群れを使い終えたばかりの官女の一人を捉える。瞬間、凪乃は連打で弾丸を撃ち放っていく。
「六連……耐えられますか!!」
 官女が闘技場の床を転がり避けようとするよりも早く、弾丸が立て続けにその体を貫いた。
(「どうやら防具で最大限に耐久力を伸ばしているようですが……これなら!」)
 戦いが始まってより最高の威力が行使された。
 官女が膝から闘技場に倒れ、すぐさま消滅する。
「まずは、1人!」
「次は土蜘蛛の末裔の力、見せてあげるよ……!」
 狭霧の赤手が妖気の炎を帯びる。
 極限まで練り上げられた妖気を宿し、最後の紅蓮撃が護衛役の1人を貫く。
 同時、官女が倒れた事に一瞬気を取られた栄駕へと、綾瀬の拳がめり込んだ。だが、
「……!」
「倒れないか!」
「優れた戦士だ、お前達は。一点突破で来られていたら、あるいは危うかったかも知れない」
 口の端から血を垂らしながら、栄駕がそう告げる。
 だが、狭霧と綾瀬の眼前で生じる光景は、皮一枚残して耐え切った護衛役達の受けた手傷が再び回復していくというもの。狭霧は苦々しい思いを抱きながらも、再び赤手を構えた。
「紅蓮撃が使えなくても、僕の炎は弱まりはしない……!」

 一人を欠いた妖狐達を相手に、能力者達は果敢に攻撃を繰り返していく。
 だが、程なくして攻撃アビリティが順を追って尽き始めると、勝負の行方は完全に決した。
「くっそ!」
 魂を滾らせ、崩れ落ちる体を無理やりに支えんとしたファルケが続けざまの攻撃に屈すると、後は櫛の歯が折れるように能力者達は倒れ、闘技場から消えていった。
「負ける、わけには……!」
 ヘブンズパッションを使い立ち上がる綾瀬の周囲に、おぼろげな炎が揺らめき、動きを止めて来る。それを癒すべき天城テオドールや健幹は既に消えている。
 季瑠花は白燐蟲によって残された仲間達を癒さんとするが、回復の手が空いた妖狐達の集中攻撃を受けると、耐え切れる限界はすぐに訪れた。
「勝負は水物。また戦えば、また異なる結果となるでしょうね
「そうかも知れません。……いい経験になりました」
 最後に残った凪乃が呟くと同時に、玲蘭の突進が彼女を弾き飛ばす。

『勝者、妖狐……!』

 消え去る直前、どこからとも知れぬ声が、戦いの結果を告げていた。


 戻された場所は、能力者達のよく知る静かな神社だった。
 境内に戻って来た凪乃の姿に、先に戻されていた能力者達は自分達の敗北を知る。「あんな形でなければ、是非に一度、お茶でもしたかったかな」
「またどこかで会えるといいですね。もしかすると案外すぐ再会できたりして」
「ま、お互いの名前を知ってれば、いつかは会うこともあるさ」
 天城とファルケのやり取りを聞きながら、
「今度花とメッセージでも送るとしましょうか」
「……連絡先、分かるの?」
「……そういえば。裏サイト経由での情報収集とか、まだやってるんでしたっけ、確か」
 季瑠花の問いに綾瀬は呟き、一つ溜息をつくのだった。


マスター:真壁真人 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2012/03/04
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冒険結果:失敗…
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