卒業旅行2012〜温泉でバカ騒ぎと真面目な話をしてみませんか


<オープニング>


「卒業旅行で温泉に行きませんか?」
 ついさっき式を終えたばかりとは思えない程いつも通り、五條・梅之介(高校生真魔弾術士・bn0233)はのんびりとした口調で言う。
 卒業旅行。遠くの観光地巡りや海外へ行くのも魅力的だが、近場の温泉旅館でゆっくりするのも悪くないかもしれない。
「俺達は、能力者としての使命の他に、これからそれぞれの道を歩みます。銀誓館の生徒として集まれるのは、これで最後だと思いますし……」
 観光を楽しむよりも、皆で楽しく騒いだり、これからのことをゆっくりと話したりする機会がほしい、と梅之介はここでようやく少しだけ寂しそうに笑ってみせた。

 銀誓館の生徒として、高校生活最後の思い出作りに向かうのは、箱根の温泉宿。
 評判の露天風呂で羽を伸ばした後は、大部屋で枕投げやプロレスごっこで大騒ぎ。
 積もる話は、宿の前にある日本庭園風の散策路で。温泉浴衣で下駄をカラコロと鳴らし歩きながらゆっくりと。

 露天風呂は贅沢に貸し切り。
 宿泊する大部屋は、宿の離れにあるので気軽に大騒ぎできる。
 散策路付きの庭園は夜のライトアップがとっても綺麗で、静かに語り合うにはぴったりなんだとか。

 温泉宿での卒業旅行。残念ながら使役ゴースト達はお留守番。
 イグニッションや本業能力の使用も禁止だが、ゴースト事件も起こらない場ではその必要もないだろう。

 なお、貸し切りの露天風呂は混浴なので水着着用必須とのこと。

「これから進学する人もいれば、社会に出る人もいるでしょう。もう、式は終わってしまいましたが、高校生活最後の思い出作り……めいっぱい楽しみましょうね」
 言いながら、梅之介は温泉宿のパンフレットを君に手渡す。
「この日くらいは、皆でバカみたいに騒いで……そして、これからの、ちょっと真面目な話なんかもしてみませんか?」

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参加者
NPC:五條・梅之介(高校生真魔弾術士・bn0233)




<リプレイ>

●露天温泉で遊んで語って
 せっかくの卒業旅行。近場の温泉ではあるが今日は贅沢に貸切の露天風呂。
「くはーっ、極楽極楽ー……」
「あー、やっぱり大きいお風呂はいいねぇ」
 終は湯船の中で思う存分手足を伸ばし、望はぐぐーっと背伸びをしながら空を見上げて感嘆の息を漏らした。
 そしてぽつりと。
「……銀誓館での学生生活最後、か」
 その一言に、皆ちょっとしんみり。
「あっという間に卒業ですね」
「そうですね。まぁ、これからも能力者である限り、銀誓館にはちょくちょく顔出しに行く事になるとは思いますが……」
 美桜と梅之介も、何だか少し寂しそうに笑い合った。
 仲間と共に歩んだ、学園生活。楽しかった事や、嬉しかった事。時には緊迫した戦いや、辛く、悲しい出来事も……。
「とにかく色々な事があった。そしてこれからもあるのだろう」
 ふと遠くを見つめて、クオンが呟いた。
 高校卒業という大きな節目を迎えた自分達ではあるが、先の事を考えればまだスタートラインに立っているようなものだ。これからそれぞれが歩む、それぞれの道に向かうための。
「これからどうしよう……大学? 就職? 長期旅行? それともお嫁さん……か」
 言いかけて、クオンは自嘲気味に笑って短く息をつく。
「まぁ、いいか。今日くらいは手放しで楽しもう」
「だよね〜♪ あ、そうだ。ねぇねぇ五條」
「はい、何でしょ……」
「ていていっ!」
 振り返った梅之介の顔に、望の水鉄砲攻撃が炸裂した!
「わっ、と……そういう勝負なら、受けて立ちます!」
 お返しにと、梅之介も同じように手で作った水鉄砲で応戦する!
 貸切風呂ならではの大はしゃぎ。
「混浴! と言うことはつまり……眼ぷ、ぶっ!?」
 広まった銃撃戦に、女子の水着姿を存分に拝もうとしていたアキも被弾する。
「ふふっ、私達、卒業はしたけど、こうしてまた楽しい時間を一緒に過ごしたいですね」
 幸せそうな笑みを浮かべる美桜。
 今日のこの楽しかった時間はきっと、良い思い出となるだろう。

●夜の庭園、これからの自分達
 温泉旅館の外。ライトアップされた日本庭園。幻想的な美しさの中を通る散策路はとても静かで、外履きの下駄がカラコロと乾いた良い音を月の夜空へ響かせている。
「4月からは、都内の学校で料理の勉強をするんです……」
「都内ですか」
「はい。大切な人が都内にいるから……」
 そして少し照れたように顔を伏せる美桜に、梅之介は、応援してます、と優しく笑った。
「梅之介君は、どうするんですか?」
「俺は、洋裁の専門学校へ進みます。鎌倉から通えるところに決めました」
「そうですか。頑張りましょうね。お互いの進む道が、先多い事を……」
 そう小さく言って振り返った美桜の表情は、希望に満ちていた。

「やあ、梅之介くんこんばんは」
「あ、お久しぶりです」
 向かいから歩いてきて軽く手を上げたリーヴァ。それに黎楊と皓紀の姿も見つけて、梅之介はぺこりと頭を下げた。
「じつはね、友人たちから寄せ書きを預かってきているんだ」
「え、俺にですか……? あ……」
 手渡された色紙には、梅之介へあてた応援のメッセージや贈る言葉がいろいろな文字で書き込まれていた。
 梅之介にとっても大切な友人達からの贈り物。目を細めて、一つ一つを大事そうに読む梅之介に、リーヴァは薄く笑ってみせた。
「お互いにだけど、卒業おめでとう。これから進む道が実りの多いものになるよう祈ってるよ」
「はい。ありがとうございます」
「なんか、すげえあっという間で、卒業とか実感わかないな……」
「本当に、あっという間でしたね。皆様と共に卒業できましたこと、嬉しく思います」
 下駄を鳴らしながら歩いて、ぼんやり空を見上げる皓紀。黎楊は用意していた温かいお茶を皆に手渡しながら穏やかに笑った。
 ありがとう、とお茶を受け取りながら、リーヴァは興味深げに仲間達を振り返る。
「うん。お互いに卒業おめでとう。みんなは、進路に進むの?」
「俺はギターやりたいから音楽の学校……専門学校な。理論と技術磨きたい」
「やはり皓紀様はギターの道に行かれるのですね」
「そっか、いいね。俺も、進学はするけど音楽は続けていくよ。片手間にならないよう、今まで以上しっかり、ね」
 空を見上げたままぽつりと呟く皓紀。釣られて黎楊とリーヴァもゆっくりと夜空を見上げた。
 庭園のライトアップの色彩が僅かに溶け込む空に、ぼんやりと浮かぶ月が輝いている。
「……そうだ。黎楊さん。これからもフルラージュさん……じゃない、姉さん、のことをよろしくお願いします」
「はい、勿論フルラージュの事はお任せ下さい。絶対に、幸せにしてみせます」
 向き直って、小さく頭を下げた皓紀に、黎楊は大きくしっかりと頷いてみせた。
 綻び始めた庭の花々と春の月が見守っていたものは、若者たちの確かな決意……。

 月の浮かぶ空をしばらく見つめていた終が、ふと隣を歩く梅之介を振り返った。
「うん。結局な。卒業後は世界を回ることに決めたぞ」
「そうですか……最初はどこへ?」
「んー、まずはアメリカかな? まあ、てきとーにぶらぶらするつもりさ」
 にまりと笑って言う終に、梅之介は少し寂しそうな笑顔を向ける。
「気をつけて、行ってきて下さいね」
「ああ。ま、別に今生の別れってわけでもないさ。能力者なんてことを続けてればすぐに会えるさね」
「……そうですね」
 そこから、なんとなくお互い目を合わせられないまましばらく歩く。
 下駄の乾いた音が、カラン、コロン、と緩やかに響いた。
 ふと、立ち止まった終が、梅之介の耳元へそっと顔を近づける。
「あの月が私だ。空を見上げたときに月があったら、私もきっとどこかでそれを見ている。だから、忘れてくれるなよ。忘れられると、少し寂しい……」
 そのまま俯いて、終は梅之介の浴衣の袖をぎゅっと握る。
「忘れるわけないじゃないですか……辛くなったら、いつでも頼って下さいね。俺は、終さんにとってそういう存在でありたいと、そう思ってますから……遅くなってすみません。これが、俺なりのあの時の答えです」
 そっと言い聞かせながら、少し震えているような終の頭の上に、梅之介は、ぽんぽんと何度か軽く手を置いた。

●〆の枕戦争!
 夜。眠ってしまうにはまだ早い。
 ならばどうするか。ここは旅館の離れにある大部屋。みっしりと敷き詰められた布団。そして、枕。この状況下でやる事といえばただひとつ。
「障子とか壊れそうなもんは先に撤去した方がいいぞ〜♪」
 漂う雰囲気を察して、望が障子を取り外しにかかる。
 貴重品は隅へ一纏め。床の間の掛け軸や花瓶は絶対安全地帯の部屋の外へと追いやって。
 これですべての準備は整った。枕を掲げ、いよいよアゲハが告げる。
「お約束の枕投げたいーむ! どんどんぱふー!」
 湧き上がる歓声! 今この瞬間、この場所は戦場と化した!
「手加減は無しだ! こっちが勝ったらお前達から身長毟り取ってやる!」
「そうですぅ! 勝ったら身長よこすですぅ!」
 利害の一致とはこの事か。早々にタッグを組み、何だかよくわからない宣戦布告をしてくる凪流と悠女を、灯凪はフフンと鼻で笑って見下ろす。
「物理的にムリな事言わんといてやー」
「ねー。別にそのままでも可愛いじゃんかー」
 おまけにアゲハがぽむぽむと頭を撫でてくる。
「……っ、ふざけんなばかああああ!!」
 ドムリと鈍い音を立ててアゲハの顔面にヒットした蕎麦殻の重たい枕。
「あう……鼻痛い」
 思わず布団に突っ伏して唸るアゲハに凪流はビシッと指を差す。
「ちっちゃくて可愛いのが許されるのは女子だけだ!!」
「凪流! 生意気やぞ、弟のくせに!」
「はぁ!? 弟は灯凪だろ!」
 そしてなぜか双子の兄弟喧嘩に発展。
「俺が兄やていい加減認めや!」
「今日という今日はどっちが兄か決着を着ける!」
 勝負はもちろん枕投げで!
「悠女! パス!!」
「はい! やっちゃって下さいー!」
 新しい枕をパスしようと振り被る悠女。だが、その時事件が。
「う?」
 踏み込んだ足が、自分の浴衣の裾を踏んづけて、大きく着崩れる……!
「はぅ! 胸元があぁ! 見ちゃだめですぅ!!」
 一転、恐ろしい反射神経で枕を横へとブン投げた悠女。鋭く伸びたそれは、灯凪の顔面に埋まる勢いでヒットする。
「眼福……です……」
 満更でもないような表情を浮かべつつ、灯凪は布団へと撃沈した。
 そう、ここは何が起こるかわからない無法地帯。
「さあ、仁義なき戦いの始まりなのだよ……!」
 ズオォ、と枕を持ち上げた緋空。ローゼはそんな緋空を不思議そうに見つめて首を傾げた。
「枕投げですか……確か、皆様で輪になって、その中の誰か一人の後ろに枕を落としていくという……」
「いやいやいや! それハンカチ落としだから!!」
 凪の全力突っ込み。危なかった。枕戦争の戦場で何かおかしなサバトみたいな陣形が組まれるところだった。
「すみません、枕投げを実際に行うのは初めてでして……」
「お、そっか。なら俺が教えてやるよ! 枕投げっていうのは、こう……隙ありっ!」
「うわっ!!」
 説明しながら、凪は予告なしに梅之介へ向かって手に持っていた枕を全力で投げつけた。突然の事に梅之介は目を白黒させていたが、そのうち気を取り直したように眼鏡を押し上げ、そして不敵に笑ってみせた。
「今のは、宣戦布告ということでいいですね?」
「そうこなくっちゃ! 皆で楽しもうぜ〜♪ 同じ結社の仲間な……」
「いきます!」
「ごふっ!」
 今度は喋っている最中の凪に向かって梅之介が全力投球。凪は見事な顔面キャッチを披露する羽目に。
「いいねぇ、楽しくなってきた!」
 白熱する戦場に蛹も気合十分。手近なところに転がっていた枕を確保して思いっきり投げ飛ばし。
「なんのー! さー、紫王・緋空、第一球投げました!」
 緋空も掲げていた枕を大きく振り被って投げつけた。
「っと、やったなコノヤロ!」
 すかさず反撃に出る蛹。
 とにかく皆、枕を引っ掴んで投げる投げる。
「従者たるもの、何事も全力で挑みます……!」
 皆の様子から何となく枕投げを理解したローゼは、フリスビーのような華麗な横投げを披露する。
 無差別に狙われる抗争地帯と化した一角。
「余所見すんな! うらぁっ!!」
「ぐふっ! く、口惜しや……」
 戦死者も出始めたようです。

 深夜。枕戦争は終息を迎え、消灯した部屋の中、布団の中へ潜り込んでもなかなか寝つけないのは、きっとこの日という時間がもったいないと思うほど楽しかったから。
「ね、みんなは将来のこととか、考えてる?」
「うん……悠女は旅館で、仲居さんの見習いに……アゲハちゃんは?」
「大学に行くよ。俺ね、教師になりたいんだー」
 しっかりと目標を持っている、アゲハと悠女。関心したように、灯凪は、へぇ、と呟く。
「二人とも、すごいな」
「灯凪君は、将来何になりたいんですぅ?」
「俺? 大学通いながら決めるかな?」
「……双子だからって、こういう所は似なくていいんだ……ぞ……」
 ふわふわ答える灯凪と同じ考えだった凪流。
「大丈夫。先は長いし、きっとやりたい事見つかるよ」
 笑って、アゲハは目を閉じた。
「みんな大学生かぁ……ちょっと寂しいですねぇ」
 悠女の言葉に、改めて自分達は高校を卒業したのだと実感する。
 きっと、これからはお互い会う機会も少なくなるだろう。
「大丈夫……これからもまた皆で遊ぼう? 何とか暇見つけてさ」
 そっと暗闇に優しく響いたアゲハの声。
 卒業しても、それはきっと、できるはず。会えなくなるわけじゃない。けど、この時ちょっとだけ、しんみりした。

 珍しくまだ眠らないで起きている梅之介が、ふと思い立ったようにそういえば、と口を開く。
「望さんは、銀誓館に来るきっかけになった事とか、何かあったりしました?」
「う〜ん……俺、学園には妹を探して流れて来たんだよ。おかげ様で、妹は見つかった。でも、妹の隣には大事な人ってのが居てさ」
「複雑ですね」
「そうなんだよ〜」
 喜ばしいことのはずなのだけれど、何だかちょっぴり寂しい。困ったように笑いながら、望は誤魔化すように頭を掻く。
「お兄ちゃん複雑だけど、卒業をきっかけに旅を再開しようと思うんだ」
「旅?」
「うん。世界の色んな音楽を学ぶ、自分のための旅行ってやつね♪」
 これからは、自分のために。そう言って、望は笑顔で声を弾ませた。
「素敵な音楽に、出会えるといいですね……アキさんは?」
「ん、僕……?」
 続いて梅之介に問われて、アキは何かを思い返すように目を細める。
「……僕はさ、ガキの頃、色々あって……義母に助けられたんだ。けど、結局、彼女にも先立たれてしまったけど……」
「……辛い、ですか?」
「その時はね……けど、今は、料理って趣味も見つけて、それを天職にしたいなって思ってる自分がいる。春から調理の専門学校に行くよ。ゆくゆくは、自分の店を持ちたいんだ」
「……よかった。きっと、お店開いて下さいね。俺も応援してます」
 己の道の先をしっかりと見据えているアキに、梅之介は力強く頷いてそんなエールを送った。

 そろそろ寝息を立て始める人も出てきた中、何となく続いていた会話は自分達の成長の話に。
「皆はどのくらい身長伸びたのかな? 僕は中1の頃から比べたら、なんと20センチ以上伸びているのだよ! ちなみに勝因は魚を食していた事だね」
「緋空は随分伸びたよなあ。会った時子供っぽかったのが嘘みたいだぜ」
 得意げに言う緋空の頭をポンポンしながら、蛹は感慨深く頷いた。
「在学中に背が伸びた方も多いのでしょうね……そういえば梅之介様とわたくしは身長が丁度同じでございますね。凄い偶然なのです」
「ですね。まだ、微妙に変わるかもしれませんけど……あ、でも俺はもう伸びなくていいかなって思います」
 細身ながらも身長のある、ローゼと梅之介。
「良いよな、皆高くて。俺だって……あと10センチは欲しかった……彼女より身長低いとかどんだけなの!?」
 著しい成長を遂げた仲間達の間で、凪は一人枕に顔を押し付け嘆いた。緋空は、まあまあ、と宥めるように言って笑う。
「凪君まだ諦めちゃいけないよ。ここはやっぱり魚をおススメ……ってあれ、寝ちゃってる?」
「……ん、皆でこういう話するのも悪くない、よな……」
 途端に寝息を立て始める凪。それに釣られて、緋空も小さく欠伸を漏らす。
「皆バラバラの進路だけど……これからも宜しくね」
 そうして、仲間たちに囁きながら自身もゆっくりと目を閉じた。
「……今日は楽しかった。こんな俺と一緒にいてくれて有り難う」
 最後まで起きていた蛹は、眠る仲間達にそっと感謝の言葉を呟く。

 これからそれぞれが歩む道は険しいかもしれない。
 けれども、一人じゃない。
 自分達には、こんなにも強い絆で結ばれた仲間がいる……。


マスター:海あゆめ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:16人
作成日:2012/03/16
得票数:楽しい6  ハートフル10 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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