将は還りて死を求む


<オープニング>


 深夜。小さな街に、望まれぬ訪問者が現れていた。
 屈強なその肉体は人のようであり、しかし人から掛け離れた存在であるのは明らかだった。
 首の上に頭部を持たない存在を、人とは呼べまい。
 だが頭部が無いという事は、その存在になんらの不都合を与えるものではない。
 人間の顔が有する機能は、その腹部に宿っていた。
『我、求むるは……』
 腹部に現れた瞳が、何かを求めるようにせわしなく動く。
 手にした黄金の槍が、点滅する信号機からの赤い光を映し出した。
 その赤に魅せられたように、腹部についた口から声が漏れる。
『……我、何を求むるか……我、何処にて求むるか……』
 呟きはやがて、狂気の色を帯びていく。その後ろに、似た影が2つ現れる。
 そして影達は、声を等しくして叫んだ。
『我らが求むるは……新たなる主に命じられし、殺戮のみ!!』
 叫ぶや否や、3つの影は、走り出した。
 街へと散っていく。その目的はただ一つ、彼らの新たなる主の命令に従い、人々を蹂躙する事……。やがて街から悲鳴が響き始めるまで、時間はかからない。
 槍の穂先は、老若男女の差別なく死をもたらしていく。
『都怒我阿羅斯等、此処にあり。我、主に死と血を捧げん!』
 死に満ちた市街地で、槍の穂先に突き刺さった死体を高々と掲げ、神将・都怒我阿羅斯等はそう叫ぶのだった。

「来てくれてありがとうございます! 早速、事件について説明しますね」
 志穂は能力者達が席についたのを見計らうと、慌ただしげに事件の説明を始めた。
「来てくれてありがとうございます! 早速、事件について説明しますね」
 志穂は能力者達が席についたのを見計らうと、慌ただしげに事件の説明を始めた。
「一昨年秋の『敦賀市攻略戦』のことは、皆さんも御存知ですよね。妖狐とのメガリス『封神台』を巡る争いです。詳しいことは、その頃の資料に当たってみて下さい」
 図書館などにあるはずですので、志穂は言う。
「さて、本題です。問題のメガリス『封神台』が復活し、『敦賀市攻略戦』の際に出現した、人間とは異なる姿の神将達……それらが現れ人々を襲撃しようとしています」
 『封神台』に登録されていた『神将』は、破壊と同時に消滅したと思われていた。
 だが、にも関わらず、今再び『神将』達は出現し、人々を殺戮しようとしている……。
「今回の復活劇は、メガリス・アクティブの手に渡ったことが原因だと思われます」
 問題のメガリス・アクティブの正体や意図は定かではない。だが、神将が人々を蹂躙する意図で動いているのは確実だった。
「神将の目的は『人間を蹂躙する』事ですので、市街地から人を避難させると、その避難させた場所を襲撃してしまいます」
 つまり、この襲撃を阻止する為には、市街地に入る前に戦って勝つしかないのだ。
 幸い、神将達は『邪魔する者がいた場合、その相手を先に撃破しようとする』よう命じられているらしい。市街地の外で戦う限り、一般人への被害は避けられるだろう。
 だが、もしも敗北すれば……その先に起きる悲劇は、説明されるまでもなく能力者達には察せられた。

「皆さんに向かって欲しいのは、岐阜県西部のある街です。ここに出現するのは都怒我阿羅斯等、伊都比古、于斯岐阿利叱智干岐という3人の神将達です」
 黄金の豪槍を持つ都怒我阿羅斯等。爆発を巻き起こし、多数を巻き込む技を得手とする。
 伊都比古は身の丈を超える大鉄槌を巧みに操り、強烈な打撃で確実に1体1体を潰して来る。
 于斯岐阿利叱智干岐は弓の遣い手。広い範囲に同時に矢を放つ攻撃に加え、1体にまとめて大量の矢を放つこともできる。
「神将達は冷静な判断力には欠けるようですので、分断して戦うのが良いと思います。ですが、今の皆さんでも直撃を受ければ何度も耐えるのは難しいでしょう。くれぐれも、気を付けて下さい」
 志穂の言葉に、能力者達は頷く。彼女は続けて、神将が狙う街の地図を広げた。
「3体の神将達は深夜、線路を伝って街に侵入します。彼らが街に入る前に無人駅がありますので、ここで迎え撃つと良いと思います。ある程度遮蔽物がありますから、利用できるかも知れません」
 駅に被害は出るだろうが、大量殺戮が行われるよりはよっぽどマシというものだ。
 今のところ、メガリス・アクティブの目的は分かっていない。
 封神台が復活したとなれば、大陸妖狐も動き出す可能性があるだろう。だが、
「まずは被害を防ぐことを第一に考えて下さい。そして……」
 志穂は能力者達を改めて見ると、頭を下げた。
「皆さんも必ず、無事に帰って来て下さいね」

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参加者
武内・恵太(真処刑人・b02430)
岩崎・燦然世界(大音聲・b11368)
日生・結希(晴れときどき雪女・b45294)
桐原・真夏(太陽のリズムで踊ろう・b50014)
小鳥遊・陽太(おひさまといっしょ・b66965)
四紀・更紗(番犬命の真狐・b74691)
ヒルデガルド・ケッセルリング(オルキヌスオルカ・b80010)
八幡・鋼鉄(心地よい住環境を貴方に・b80128)



<リプレイ>

 線路上を進んで来た神将・都怒我阿羅斯等は、町はずれの無人駅に差し掛かっていた。
 簡単な構造の無人駅には、ホームと無人の改札、それにベンチなどが佇むばかりだ。
 先へと進もうとした神将の怪物的な姿が、深い夜の闇に沈む駅に待ち受ける者達の気配を感じ、ぴたりと止まった。
「かつて大陸から聖王に仕えに来たアンタが今は雑魚の手先か。王子が聞いて飽きれるね」
「そんな金ピカ槍なんて、格好つけすぎで趣味わるぅいっ」
 灯りを点し、挑発の言葉を神将に向けたのは、武内・恵太(真処刑人・b02430)と桐原・真夏(太陽のリズムで踊ろう・b50014)だった。
 神将から見えぬ位置に潜んだ他の6人の能力者達も、対峙する神将の反応に注意を払う。
(「頭がないですけど、脳みそとかもお腹にあるんですかねぇ」)
 小鳥遊・陽太(おひさまといっしょ・b66965)の視線の先、神将の腹に浮かんだ顔が挑発の言葉をかけた2人を睨む。
 ほとんど知性を失っているとはいえど、2人の敵意は感じたのだろう。
 瞬間、神将は槍の穂先を前方に向け、一直線に跳躍した。
『主命によりて、人間を……蹂躙せしめん』
「速ッ!」
「急いで、下がって!」
 ゴ、という風切り音と共に迫って来る都怒我阿羅斯等。その槍の穂先から逃れるように、恵太と真夏が線路の上を走って行く。
 だが、隠れた能力者達の注目は、新たに来る影の方に向けられていた。
「来た……!」
 都怒我阿羅斯等がいた場所に着地するのは新たな2つの影。
 残る2体の神将、伊都比古と于斯岐阿利叱智干岐だった。

(「やっぱり、運命予報で示された通り!」)
 後退しながら、恵太は悟る。都怒我阿羅斯等は他の2体よりも僅かに先行していた。
 だからこそ、恵太と真夏による挑発を差し挟む隙があろうというものだ。
 後着の2体は、離れていく都怒我阿羅斯等と、その先を進む能力者達に気付いたのか、そちらへ視線を向ける。だが、
『敵性、有』
 ホームの影で息を殺していたヒルデガルド・ケッセルリング(オルキヌスオルカ・b80010)の発動させたミストファインダーに、于斯岐阿利叱智干岐は即座に反応した。
 気付かれた。
 ヒルデガルドがそう思った時には既に、于斯岐阿利叱智干岐の巨躯は横っ飛びに跳ねていた。
 首を持たずとも、常人の背丈を上回る巨躯が、大弓を振り抜きながらに構え、腹部の目が能力者達を捉える。だが、その瞬間、四紀・更紗(番犬命の真狐・b74691)が命令を放つ。
「行きなさい、ケルベロスッ!!」
 更紗の相棒たるケルベロスは、主の声にこたえ神将へと真っ赤な炎を撃ち放った。
 弓を盾にし、その炎を食い止めた于斯岐阿利叱智干岐、しかし獣の影に隠れて迫った岩崎・燦然世界(大音聲・b11368)は、神将の隙を突き、拳をねじ入れた。
「はぁッ……!!」
 拳打と共に炎が弾け、神将の体を照らす。魔炎に包まれながら、神将は声を上げた。
『蹂躙を!』
『諾』
 于斯岐阿利叱智干岐に続こうとする伊都比古。だが、その背中に向けて、魔氷をまとった二つの結晶輪が飛んでいく。
「あなたの相手は、こちらですよ!」
 巨大な槌を振るい、それを弾いた伊都比古は、声の主へとゆっくりと振り返った。
 更紗たちの隠れていたのとは反対側のホームから結晶輪を投げつけたのは、日生・結希(晴れときどき雪女・b45294)だった。
 その隣にいるのは八幡・鋼鉄(心地よい住環境を貴方に・b80128)だ。鋼鉄の直定規が伊都比古を指し示すやいなや、赤い十字架が現れ、神将の生気を吸い取らんとする。
「ほらほら、つったっとったらただの的やね!」
『潰す』
 挑発的な言葉を向けられた怒りなのかどうか、巨槌を構えた神将の姿はすぐさま、鋼鉄へとロケットのように突き進んだ。
「こんな大きな槌で殴られたらひとたまりもないのぅ!」
 詠唱定規を交差させ、槌の一撃を受け止めた鋼鉄の体が軋み、攻撃の余波だけでジャージが機能を停止するほど。だが続けての一撃が来る前に立ちあがった彼は、吸血鬼の高貴なる血を滾らせながら立ち上がった。
「大丈夫ですか?」
 結希の投げつけたギンギンパワーZを受け、彼の傷はようやく完治する。
「ああ。仲間の手が空くまでは、しっかりと足止めさせてもらわんとな」
「神将さんたちには安らかにいて欲しかったのですけど……止めないと、ですね」

●于斯岐阿利叱智干岐
「敵、3体とも別々の方向行きましたよっ!!」
 陽太は生み出した栄養ドリンクを飲み干しながら皆に伝えた。
 陽太に燦然世界、ヒルデガルド、更紗、それにケルベロスを加えて1対5の状況。
 だが、決して安心することは出来ないと、能力者達は理解している。
「速いところ、決着をつけるぞ!!」
 燦然世界が吼え猛り、続けざまに神将へと拳を撃ちつけていく。作戦の成否は、自分達がどれだけ早く眼前の敵……神将・于斯岐阿利叱智干岐を撃破できるかで決まると言っても過言では無い。
「超削ってくよ!! ゴーゴーゴー!!」
 気合の声と共に、更紗の呼び出した九本の尾が続けざまに神将へと襲い掛かり、その意志に応えるように、ケルベロスオメガも低く唸ると炎を放つ。
 放たれる炎に負けじと、燦然世界の拳が不死鳥の如く燃え盛る。
 だがその攻撃を回避して、射手たる神将は矢を放つ。
『射シャシャャァッ!!』
 発狂同然の叫び声と共に、大量の矢が神将の元に現れ、それらは一気に射出された。でたらめに撃ちまくられた矢は次々と辺りを矢ぶすまにし、生み出された出鱈目な威力が、近くにあった電柱を根本から食いちぎり、崩落へと導く。
 激しい火花が飛び散る中、ホーム上に立ち、その角度差を利用して攻撃をかわしたヒルデガルドは立ち上がると同時に眼前に霧のレンズを出現させる。
 霧のレンズに向けて両手の剣が振るわれ、神将の傷と、怒りの声が生まれた。

●都怒我阿羅斯等
「ディアボロスラ……って献上した神宝の槍か剣? それともオロチ退治の? まさかオロチの体内にあった方?」
 都怒我阿羅斯等に、てんでに言葉をぶつける恵太。返答として返って来るのは槍の穂先だ。
『生命たる具現など我に興味無し、今求めしは汝らが死!』
(「何のことだかサッパリ分からないな」)
 防具が損傷し、そのたびに旋剣の構えで態勢を立て直しながら、彼は都怒我阿羅斯等を引き付けていた。
 真夏の前に浮かんだ魔法陣を通して放たれる蒼き魔弾を神将は槍を回転させて弾いた。電撃の飛沫が、神将の体に焦げ跡を生む。
「しかしまぁ、妖狐ですら手を焼いた神将を完全に操るなんて何とも強烈だな」
 封神台のことを考えるたびに、恵太は胸の奥がざわつくのを感じていた。
 新たな封神台の主は単なる下種なのか何らかの儀式に必要なのか。それは分からないが、
「難しいことはよくわかんないけど……でも偉い人だか神様だか知らないけど、何も悪いことしてない一般人に手を出すなんて絶対許さないもんっ!」
 真夏の言葉に頷いて、導かれる結論はシンプルなもの。
「いずれにせよ潰すだけだ」
 一瞬の隙をついて神将の攻撃をかわした恵太の双剣が振るわれた。剣が帯びた影は神将の黄金の槍と噛み合い火花を散らす。

●伊都比古
 ヒルデガルド達4人と1匹が于斯岐阿利叱智干岐を倒すまでの間、伊都比古を引き付ける役割を負った結希と鋼鉄。
 伊都比古の一撃一撃は極めて重く、巨大な槌が振るわれるたび、間近でその攻撃を受け止める結希の雪だるまアーマーは一瞬にして崩れ落ちる。
「つ、強過ぎ、痛過ぎ……!!」
 神将は確実に結希の回避を見切り、攻撃を与えて来る。
 雪だるまアーマーを連発して攻撃を凌ぎながらも、続けざまに攻撃を受ければ確実に落とされるだろうことを結希は勿論、先程出会いがしらに伊都比古の一撃を受けていた鋼鉄もまた、その事実を理解していた。
「さすがに手強いのぅ。だが、これでどうじゃ!!」
 鋼鉄の指先が素早く印を結び、八卦迷宮陣を組み上げる。
『我が動き……止……』
「空気を乱すのは好かんけど、止まっちゃりい!」
 神将が見えない迷宮に囚われた隙に、結希はすかさず距離を取ると雪だるまアーマーを発動、防具を修復した。
「ありがとうございます!」
「なんの。じゃが、一時凌ぎにしかならんのう」
 再びヴァンパイアクロスを放ちながらも、見えざる迷宮を巨槌の一振りで撃ち破った伊都比古は、再び結希へと撃ちかかる。雪だるまアーマーの崩れ去る音が、再び響いた。
「でも、まだ時間、かかりそうですよね……」
 ならば耐えるまで。苦痛を堪えた少女の瞳が、神将をひたりと見据える。

●夜陰に消ゆ
 于斯岐阿利叱智干岐はその武器の性質上、戦闘開始時点からほとんど移動していなかった。
 そのお陰で駅舎全体が攻撃範囲とならなかったのは、ある意味で幸いであっただろう。
 だが、その攻撃範囲の中は、まさしく矢襖といった状況であった。
 苛烈な神将の攻撃は駅ホーム周辺を貫き、崩壊に導いていく。
「いい加減、倒れれば良いものを……」
 拳を握り、歯を食いしばり、燦然世界は体に突き刺さった矢を引き抜き、僅かによろめいた。
「だ、だいじょーぶですか?」
 陽太の投げた栄養ドリンクをキャッチし、燦然世界は一呼吸でそれを飲み干す。
「……」
 ヒルデガルドもまた、呪力をまとい態勢を立て直そうとしていた。
 だが、この局面において最もダメージを大きく受けており、そして最も神将にダメージを与えていたのは更紗は、ある事実を悟っていた。
「こいつ相手じゃ、回復したぐらいじゃ話になんない……!!」
 使役ゴーストと共に戦う以上避けられぬ防御面の低下は、于斯岐阿利叱智干岐のような遠距離戦を得意とする者との戦いにおいて、露呈するのを避けられない。
 だからこそ、大量に束ねられられた矢が自分へと集中して飛来した時、来るべき時が来た事を彼女は理解した。
『射ァッ!!』
 神将の絶叫と共に放たれた最初の矢が細い体を貫き、倒れた体を、連射された矢がさらに貫いていった。血に塗れた矢が彼女を地面に縫い付ける。
(「使役使いは、凌駕が命!!」)
 だが更紗は、倒れたままに一声を発した。
「勝つの、絶対!!」
 総身に矢を受け、うつ伏せに倒れ込んだ更紗の腰から、金色の九尾が血に塗れながら迸った。
 一本、また一本と、逃れんとする神将を追い、更紗の執念を乗せた尾が神将へと追いすがり、そして次々と突き刺さり、穿ち抜いた。ケルベロスの放つ炎が、神将の体を焼く。
 金色の尾によって体に大穴を開けられた神将の瞳が窄まり、しかし、矢を放つ動きは止まらなかった。驟雨の如き矢が、今度こそ更紗を沈黙させる。
 だが、その矢の雨を縫うようにして燦然世界は弾丸のように疾走していた。
「倒れろ!!」
 燦然世界の拳が腹部の顔を殴り飛ばし、レンズを通して現れたヒルデガルドの一閃が、人間ならば首があるべき場所へと突き立つ。
 その一撃と共に、神将の体は消し飛んでいった。

 于斯岐阿利叱智干岐の姿が音もなく消滅する。
 だが、その瞬間、陽太は歓声をあげる暇もなく身を翻していた。伊都比古と戦う二人に注意を払っていた陽太は、結希が重い一撃を食らったのを目にしていた。
「すぐに援護しますよっ!!」
「助かる!!」
 返事を返したのは鋼鉄のみ、結希の方は到底それどころではない。
 彼女の纏う氷を思わせる戦装束は既に朱に染まり、凄絶な有様を示していた。
「封神台を取り返し、あなた達を安らかに眠らせてあげたいです……だから、こんなところで、負けるわけには、いかないんです……!!」
 ここまで耐え切ることが出来たことこそが、彼女の奮戦ぶりと優秀さを示していただろう。彼女の回復が間に合わない時に敵の攻撃を受けていた鋼鉄も、似たような有様だ。
『砕ッ!!』
 そして陽太がこちらに来るよりも早く、伊都比古の大槌が結希の体を真正面から打ち据える。
「あと……お願いしますね」
 ぐらつき、倒れる結希の体を受け止めた鋼鉄が、彼女を抱えて神将から距離を取る。そして、陽太たちの攻撃を受け、そちらへと向かう伊都比古の背を見た。ヒルデガルドの刃や陽太の描くデフォルメを退け、重戦車のように前進していく姿に対し、鋼鉄の手にした詠唱定規が計るのは、敵を捕らえる陣の型。
「八卦迷宮陣じゃ……!」
 再び陣に捉えられた神将が、突進の姿勢のまま不意に動きを止められる。
「今ですっ!!」
「ああ!!」
 伊都比古最大の弱点は、遠距離攻撃手段に欠けること。
 他の能力者達が、この隙を見逃すはずもない。
 陽太のスピードスケッチが、燦然世界のガトリングガンが、そしてヒルデガルドの瞬断撃が……神将の傷を増やしていく。
 やがて伊都比古が鋼鉄の放った血の十字架にとどめを刺されるまで、長い時間は要さなかった。

 都怒我阿羅斯等と戦う恵太と真夏からも、仲間達が2体の神将を倒す姿は見えていた。
『滅せよ!』
「そうはいかないな!」
「行けるよ、あと少しだもん!」
 都怒我阿羅斯等の振るう黄金の槍を、恵太は剣をかざして受け止める。
 勢いを殺し切れず、槍の穂先が恵太の肩を貫いた。
 後ろに転がり身を低くした彼の頭を貫こうと神将は槍を振りかざす。だが、その瞬間、線路上を突っ走ってきた仲間達の攻撃が、神将の背中に突き刺さっていた。
「あいつで最後です。出し惜しみ無しでいきましょう!!」
「分かっとる!」
 合流した能力者達の攻撃は凄まじく、瞬く間に都怒我阿羅斯等の防御を抜き、神将の体に傷が増えていく。
「……」
 ヒルデガルドの手が一閃し、都怒我阿羅斯等の背をガラスの刀身が深々と切り裂く。
 神将の足首を刈るように低い姿勢から繰り出された恵太の黒影剣は、腹部の顔から苦悶の声を溢れ出させる。
『ヌゥゥ……!!』
 怒りの唸りと共に、能力者達を巻き込んで、都怒我阿羅斯等が爆発を引き起こす。
 線路周りに敷かれた小石が巻き上がって、真夏の頬をかすめて過ぎた。爆発を耐え抜き、その衝撃に長い髪を揺らしながら、真夏は詠唱眼鏡越しの視線で神将を貫く。
「悪い神様、ここは貴方達のいるべき世界じゃないよっ!」
 叫びと共に放たれた蒼き魔弾が、戦いの終わりを告げる。
『我……何を……求め……?』
 その言葉を最後に神将の姿は煙のように消え去り、後には何も残らない。
「……」
 ヒルデガルドの呟きに、燦然世界は困ったように問うた。
「……済まん、もう一度頼む」
「……重傷者を回収し、早く避難を」
 その言葉に否を言う理由は能力者達には無かった。

「神将達、どこに行ったんですかね?」
 陽太が空を見上げて首を傾げる。元の封神台と機能が同じならば、倒された神将達は再び現れるはずだった。メガリス・アクティブによる機能の変化は、どこまで影響しているのか……。
「何度復活するとしても倒すよ、絶対」
 ケルベロスの入ったイグニッションカードを手に、更紗はそう決意を告げるのだった。


マスター:真壁真人 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2012/03/14
得票数:カッコいい35 
冒険結果:成功!
重傷者:日生・結希(晴れときどき雪女・b45294)  四紀・更紗(番犬命の真狐・b74691) 
死亡者:なし
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