【魔法少女村】はじめてのまほうしょうじょ

<オープニング>


●魔女へつづく道
 アトロポス達三魔女を見送って、氷室まどかと草凪まどかは手を振った。
 名前表記での書き分けが難しい二人である。ご容赦頂きたい。
「で……ええと、ここからどうしたらいいのでしょう?」
「村の魔法少女に任せるって言ってたみたい、ですけど」
 顔を見合わせるまどかとまどか。
 そんな二人を横から、それも至近距離でじぃっと観察する者がいた。
「あら、思ったより普通の方々ですのね」
「「……!?」」
 ビクッとして振り返るダブルまどか。
 反応の大きさに満足したのか、『彼女』は腰に手を当てて背筋を反らした。
 いわゆる『よきにはからえ』のポーズである。
「皆さんのご案内を仰せつかっております、パンドラですわ。以後お見知りおきを。ええと今回は……八人? 随分多いのね」
「一応、もともと知り合いで」
 両手を顔の前で翳すようにして立つ小夜。
 まどかとフェリシアが小夜の後ろに回ってぐいぐい背中を押していた。
「あの、何で押すんです?」
「だって初対面だし」
「きっと話づらい人だし」
「だからって盾にしなくても……あううっ」
 パンドラと名乗った少女の前に、強制的に突き出される小夜。
 なんとも豪奢なドレスを着た少女である。
 所々に宝石やガラス細工が仕込んであり、日の当たる場所に出ればそれはもう光り輝くことだろう。
 今回集まった銀誓館魔法少女(即席含む)も随分個性的だったが、彼女も個性と言う意味では負けていない。
 パンドラは小夜と鼻がくっつく程に顔を近づけると、目をきゅうっと細めた。
 背中を押されている分これ以上下がれないのか、小夜は目いっぱいにのけ反った。
「あの、村に案内して欲しいんですけど……」
「あらそうでしたわね。わたくしったら」
 目を閉じるパンドラ。
 そしてブーツ(これも随分煌びやかだ)を脱いで見せた。
 白い素足を出してくる。
「ほら、舐めなさいな」
「……え」
「そして『お願いしますフロイライン』と言いなさいな」
「えええっ!?」
 個性が天元突破していた。
 どこに需要があるんだろう、この人は。
 だが、舐めろと言われたからには舐めなければならないのだろうか。
 なんだか奇妙な背徳感を得つつ、小夜はゆっくりと腰を屈める。
 でもやってしまったら何かが終わる気がする。
 でもやってしまわないと話が終わる気もする。
 でもでもでも。
 でもー!
「それ、別にやる必要ないぞ」
 誰かがそう言い、小夜の頭を鷲掴みにして引き上げた。
 パンクロックなエプロンドレスに身を包んだ、やけに奇抜な少女である。
「パンドラの悪癖だ。こいつはこうやって他人を驚かせてイニシアチブを取りたがるんだ」
「まあ酷いわ、ステゥクスさんたら……わたくしは純粋に皆さんとお近づきに」
「尚悪いわ」
 クロスボウでパンドラの頭をひっぱたくステゥクス。危ない。
 彼女は皆に身体ごと振り返ると、首をこきりと鳴らして言った。
「アタシはステゥクス。村の魔法少女だ。身内が迷惑かけたな」
「いや、大丈夫だ……多分」
 やけに冷静に対応する灯雪。
 もしかして第一話リプレイとのギャップに首をかしげる人がいるかもしれないので解説しておくが、灯雪は今回の為に装備から紹介文からキャラ付から、フルチューンしてきたのである。おかげでオンオフ時のギャップが途轍もないことになっていた。
 その脇では、らみかが何やら水筒を取り出して、師匠からですとか言ってパンドラに差し出していた。
「あら何かしらこれ、緑……?」
「師匠が健康にいいので是非広めろと」
「分かったわ、グリーンティーね。是非頂――ぷひゃん!?」
 空に向けて青汁を吹き出すパンドラ。
 降りかかりそうになった笑弥がぽやーっとした表情のまま高速で回避した。
 ちなみに水筒の中身についてはこれ以上触れない。らみかのキャラが食われるので。
「握られてるな、イニシアチブ」
「握られてますね」
 灯雪とステゥクスは一連の流れを見なかったことにして、背の高い草がうっそうと生えた森へと身体を向けた。
 ステゥクスが手を翳すと、草がひとりでに倒れ、小道を作り出す。ヤドリギ使いの本業能力である。実際に使われる機会が稀なので、灯雪はちょっと物珍しい気持ちになった。
「とりあえずは村に案内するよ、説明も道すがら聞いてくれ。ほらパンドラ、悶絶してないで行くぞ」
「ちょっと待って下さいまし、これ毒じゃなくて!? すっごく苦くて……ぺっ、ぺっ!」
 などと。
 皆ぞろぞろと草の小道へと入って行く。
 自分も続こうとして、ふと振り向く笑弥。
「もう行くみたいですよ、静香さん」
「……お?」
 棍棒を空に向けてうねうねしながら携帯をいじっていた静香が、今更のように顔を上げた。

●魔法少女の村
「村と言っても居住スペースはあんまりないんだ。言ってみればアタシらの練習場兼倉庫兼集会場ってイメージが強くてさ、大体の魔法少女は街で暮らしてるパターンが殆どなんだよ。その方が危険にも対応しやすいし、情報も入りやすいからな」
「では、村には皆さんが揃っているわけではないのですか?」
「大きな集会やお祭りでもないと全員は揃わないかな。ま、会うことがあったら紹介するよ」
「……」
「アタシらの活動は街に蔓延る超常的な悪を退治したり、おまわりさんレベルに達しない悪事を事前に防いだりってのが主だ。でも一番重要なのは、街に『正体不明の魔法少女』として認知されることだな。アタシ達はそうやって街の平和をモラルレベルで維持してきた」
「モラルレベルと言うと?」
「謎の魔法少女が悪人を退治するって噂が広まれば、それだけ犯罪が抑制されるだろ」
「なるほど」
「そのためには、私等は日々訓練を……っと、ついた」
 などと言っていると、草の小道が終わった。
 花飾りのついた門を潜ればそこは魔法少女の……。
「いっけなーい、遅刻遅刻ぅーう!」
 日本の女子高生セーラー服(ぽいもの)を着た少女が、食パンを咥えて全力疾走していた。
 進路上にはサンドバック。
「きゃー!」
 彼女はサンドバックに肩から衝突……というかタックルをキメた。心なしか神風が吹いており、一見した所ゴッドウィンドアタックだった。
 無論サンドバックは粉々に砕け、少女はというとヒロイン座り(へなっとした感じの太ももを強調する弱々しい座り方)でフィニッシュしている。何故かこちらにドヤ顔を向けていた。
「テヘペロ!」
「あいつはカリュプソーな」
 心から嫌そうな顔でステュクスは言った。
「あの、いつもああいう……」
「アタシはやってないぞあんなの。まあ何だ、アタシらは強さと同じく個性を求められてるからな。ここでこうやって鍛えてるんだよ。実力があっても個性が弱いってヤツは特にここで鍛える必要がある。ま、好きな時にやってみてくれ」
 そこまで話してから、ステュクスは皆へと向き直った。
「と言うことで中途採用の新入り諸君! まずは何をしろとは言わん、訓練なり、交流なり、いきなり実戦なり……好きなことをしてみてくれ。今後の活躍、期待してるぞ」

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参加者
神谷・小夜(真土蜘蛛の巫女・b27152)
氷室・まどか(ひなたぼっこする雪女・b51391)
フェリシア・ヴィトレイ(きまぐれな野良猫・b54696)
蒲生・灯雪(日常の守護者ホワイトスノー・b55309)
舞城・笑弥(糸紡ぎ・b59830)
片折・らみか(ナイトメア適合者ランページ改・b80677)
志方・静香(小学生土蜘蛛・b81318)
草凪・まどか(籠人・b82655)



<リプレイ>

●あなたも魔法少女
「シャイニング――」
 神谷・小夜(真土蜘蛛の巫女・b27152)は弓を引く。
 強く強く引き絞られると同時に、眼前の魔方陣が回転を始めた。
 収束。
「アローゥ!」
 満を持して発射。放たれた蒼の魔弾は螺旋状の弾道を描き練習用の丸太を粉砕した。
 小夜ウィンク。
「ちょっとお話、しませんか?」
 反応をちょっとだけ待ってから、小夜は蒼の魔弾を連射した。
「お友達になりたいんです!」
「やめてください!」
「戦いたくないんです!」
「今です!」
 脳内で何かのコンボが決まった。
 後ろで拍手をするカリュプソー。
「おおー、やるっすねぇ。何すかそれ、ネゴシエーターっすか?」
「はあ、なんちゃら交渉術だとか」
「版権に触れないギリギリレベルの発言っすねー」
 ここは魔法少女村、練習場。
 村に所属する魔法少女達が実力と言うより個性を磨くべく思い切り色々やる場である。存外沢山の魔法少女が所属していたらしく、度々練習場に来ては技を見せ合ったりアイデアを出し合ったりして切磋琢磨している。
 そんな光景を横目に、舞城・笑弥(糸紡ぎ・b59830)はヤツフサさんをもふもふしていた。
「前回気づいたんですが……どうもキャラが薄い気がするのです」
「花嫁キャラって割とイイと思うっすけどね。昔日本のアニメでありましたし……あ、でもそう考えたらドレスオンリーって弱いかも」
「ですよねえ」
 笑弥、もふもふ継続。
「せめて相方の個性を活かせたらいいんすけど」
「それです!」
 はっとして顔を上げる笑弥。
 とりあえずドレスを装着すると、獣(メヒョウだと思っていい)のポーズで親指を咥えた。
「肉食系花嫁魔法少女!」
「SO・RE・DA!」
「あなたのハートに食いついちゃうぞ☆」
「SO・RE・DAー!」
 カリュプソーが女子高生ジャンプをした。両膝を曲げつつグーにした両腕を掲げるジャンプの事である。
「美女と野獣イメージっすね。見た目のインパクトがあってグーっすよ」
「インパクトと言えば……」
 それまで魔弾をばかすか撃っていた小夜が振り返る。
「カリュプソーさんは、そのイメージをどこで?」
「エヴァかな」
「版権に触れないギリギリの発現ですね……」
「なんつっても見た目キャッチーっすからね。動きや何かを現実にやって見せると、大抵の人は驚くっすよ」
「例のダイレクトアタックもですか?」
 笑弥のヤツフサをもふもふさせてもらいつつ、草凪・まどか(籠人・b82655)が顔を上げた。
「人が襲われてる時に『遅刻遅刻ー』で割りこんだら大抵注目引くっすから」
「注目……」
 どうやらカリュプソー、見た目のインパクトに拘りがあるらしい。
 まどかは自分の薙刀を見つめてうんうんと唸った。
「ボクが個性出すとしたら……あえての物理系とか?」
「中途採用前の人達は魔弾かヤドリギさんでしたけど、最近はウチみたく外来種の魔法少女も増えてるッスからねえ。もういっそ薙刀を魔女の箒に見立てて飛ぶくらいじゃないと」
「ええ、いくらなんでも飛ぶのは……あ」
 まどかの頭上に豆電球が浮かんだ。
 視線の先にはクレーン車。
「カリュプソーさん、あれ」
「ああ重機。高い所から登場したらカッコイイからって購入したんスけど、落ちたら痛いってんで活用されてないんスよ」
「落ちたら痛い……薙刀で箒……んー」
 まどかはじっと考え込み始めた。

●街を守る魔法少女
 ある裏路地でのことである。
 少女を追い詰め、ナイフを突きつける男が居るとすれば、それは悪党に違いない。
 男はナイフをちらつかせ、何やら悪い要求をしていた。
 そこへ飛来する結晶輪。弾き飛ばされるナイフ。
 男が誰だと振りかえれば、逆光を浴びる背中合わせの影があった。
「ホワイト☆スノー」
「ブラック☆ステュクス」
「「只今参上!!」」
 蒲生・灯雪(日常の守護者ホワイトスノー・b55309)とステュクスが、アシンメトリーなポーズを決めていた。背後のライトは事前に用意したものである。
 するとそこかしこからガラの悪い男達が湧き出てきた。どうやら治安の悪い場所のようだ。
「ニャッ!」
 二人の間にいた猫が跳躍。男の顔を引っ掻くと、そのまま女性の元に着地した。たちまち姿を変えフェリシア・ヴィトレイ(きまぐれな野良猫・b54696)が姿を現す。
「魔法少女にお供の小動物は付き物……だろう?」
「だろうと言われても」
 きょとんとする女性をよそに、男達は魔法少女に詰め寄って行く。
「キャット、こっちは任せて……ステュクス!」
「あいよ、っと!」
 手元に戻ってきた結晶輪を再び投擲。と同時に、ステュクスは自分たちを中心に茨の領域を展開した。
 連鎖的ばたばたと倒れていく男達。
 ラスト。再び猫変身したフェリシアを片に乗せて、灯雪は男達にウィンクしたのだった。
「悪いことは駄目だよ、わかった?」

 ――と、いうわけで。
「お疲れ様、街のパトロールも大変だな」
「アンタのキャラ作りも大変そうだね……」
 紙カップのコーヒーを受け取って、ステュクスは肩をすくめた。
 街のどこかにある塔の上。
 ここから見ると、街に広がる赤屋根の景色が良く見えた。
 フェリシアは足をぶらつかせながら、コーヒーの熱さに舌を焼いている。
 一見して平和な街だった。犯罪もあるが、小規模に留まっている。
 これを、魔法少女達は密かに守っているのだ。
「ステュクスは、何故魔法少女に?」
「うん……?」
 コーヒーカップを両手で包むステュクス。
「生まれつきさ。魔法少女の親から産まれて、魔法少女になった。だから広い世界は知らないんだ。でもこの街の事はよく知ってる」
 子を慈しむ母のような目で、ステュクスは家々を見下ろした。
「みんなが安心して暮らせる世の中にしていたい。その程度のものだよ」
「そうか、私も似たようなものだ。日常を護りたくて、その為に強くなりたかった。フェリシアは?」
「えぇっ、ボクはそこまで言えないよ。強いんだもんなあ、二人は。ボクの場合は……そうだなあ」
 脚をぶらぶらとさせて、フェリシアは空を見上げる。
「守りたい人達がいて、逃げたらきっと後悔すると思ってて……それで強くなりたかった、かなあ」
「強く、か」
 俯くステュクス。
 顔を覗き込む灯雪たちに気づいて手を振った。微笑む灯雪。
「頼みがあるんだ、ステュクス、フェリシア」
「うん?」
 首をかしげる二人に、灯雪は小さくなりながら言った。
「友達になって下さい」
 目を合わせない灯雪に、二人は照れ笑いをした。

 一方その頃、街の商店街にて。
「食い逃げだー!」
「ただの食い逃げではない、フルコースをフルに食い尽くしての食い逃げだ! そしてこの芸術的ダッシュからの闇纏いで俺は完全に逃げ切ってみせ――」
「そこまでですわ!」
 高い所から声がした。
 見上げればそこに、片折・らみか(ナイトメア適合者ランページ改・b80677)とパンドラが立っている。
「魔法少女ミラクル☆らみか参上! ちっちゃいと思ってバカにしてると悪夢見せるぞ!」
「同じくパンドラ参上。今日は御譲りしますわ、らみかさん」
「はい先輩!」
 とうっ、と言って跳躍するらみか。
 空中で三回転し、華麗に地上へ着地した。
 顔から。
「ぺぎゅん!」
「らみかさぁん!?」

 ――と、すったもんだで。
「なんとか片付きましたわね」
 パンドラは両手をぱたぱたとはたいた。背後にはロープでぐるぐる巻きにされた男が転がっている。
「それにしても便利ですのね、悪夢爆弾? 相手を眠らせてしまうだなんて」
「それほどでも。あ、喉かわきましたよね。はい飲み物」
「あら気が利きますこ――ぺぎゅん!」
 黄緑色の液体を思いっきり吹き出すパンドラ。
「ま、また毒を盛りましたの!?」
「違いますよ、バナナはちみつ牛乳青汁ですよ」
「甘くすればいってものじゃありません!」
 全くもうと言って水筒を返すパンドラ。
「ところで先輩? 私達魔法少女って言ってますけど……アトロポスさんたちは魔女なんですよね?」
「それはまあ、あの年になって少女を名乗るのは抵抗がありますでしょう」
「ははあ、先輩もいずれは?」
「いずれは、ですわね。まあわたくしの場合? 名家に生まれたサラブレットですから、どっかのロリパンクには負けませんけれど?」
「ライバル心剥き出しですね。はい飲み物」
「あらありが――ぺぎゅん!」
 再び黄緑色の液体を吹き出すパンドラであった。

●魔法少女の村
 志方・静香(小学生土蜘蛛・b81318)は電波状況が悪くなると棍棒を空に向かってぐりぐりし出す。一昔前のOLみたいに『とりあえず振ってみる』等と言う原始的なことはしない。ちゃんと電波受信の理屈に乗っ取ってアンテナを外付けしているのだ。何故それが棍棒なのかは、聞かないで頂きたい。
「はい、静香さんもどうぞ」
「さんきゅーなのじゃー……はうっ!?」
 氷室・まどか(ひなたぼっこする雪女・b51391)からラスクを貰い、咥えながらスマホをぐりぐりする静香。
 まどかがお行儀悪いですよと言おうとした途端、静香の顔色が悪くなった。
 横から覗き込むまどか。
 ディスプレイに大きく、『間もなく電池切れ』のマークが出ていたのだった。

 がらがらとシャッターが開く。驚くべきことに鍵はついていない。
 見たまんまの倉庫である。ガレージとも言う。
「コンセントコンセント……お、あったのじゃ」
 充電器をさくっと刺して、世にも安堵した表情を見せる静香。今時の女子中学生かと思った。
「とにかく、ここが倉庫ですね?」
「ふむ、あやしいものとかあるかのぅ」
 まどかは部屋の明かりをつけて、倉庫内を見回した。
 竹箒、薬瓶、野球バット、バレーボール、三角コーン、スクーター、猫の置物、根性棒、ぴゅう太、バーチャルボーイ、金色ヤカン、タライ、各種コスプレ衣装、提灯、行燈、ランプ、無地のコイン、簪、三味線、ギター、学生鞄、マネキン……などが倉庫には並んでいた。
「強いて言うなら、全部?」
「お、バーチャがおる!?」
 思った以上にカオスな倉庫に、二人はちょっと動揺した。
 そこへ近づいてくる足音。
 同様しないようにさりげなく振り返る、と。
「おんやまぁ、新しく入った子じゃないの。何か探しものかい、おばあちゃんが探してあげようか?」
「クロートーさん……」
 試験管でもあった三魔女の一人、クロートーである。
 三人の中でもとにかくおっとりしており、アトロポスが貴婦人、ラケシスが近所のおばさんだとすれば、クロートーは田舎のおばあちゃんである。しわくちゃで、妙に迫力のある顔もそのイメージに拍車をかけていた。
「ええと、私は……」
 きょろきょろとするまどか。そうして、大きな鍋に目を向けた。
 寸胴鍋をぷっくりと太らせたようなフォルムである。
 なんか、沢山トン汁とか作れそうだった。
 とてとてと近寄って行く静香。
「これ何かのぅ、占いとかで使うんじゃろか。触ってもいいかのう、この大――」
「大鍋かい? 今度のお祭りでトン汁作るから、洗おうと思って取りに来たんじゃよ」
「トン……」
 本当にトン汁作る鍋だった。
 そう言えば、運命予報でのヴィジョンでもおかゆを作っていた気がする。
「う、うむ……」
 まどかと静香は、ここに来るまで村の色々な場所を探索していた。
 その結果、とりあえず村には不穏なものは無いな、と結論付けてみる。
 クロートーがよっこいしょと言って大鍋を担ぎ上げるのを見て、まどかが手伝いますよと手を貸している。
 その背中を見つめつつ(携帯充電したいから離れられず)、静香はふと気が付いた。
「じゃあ……『大窯』って何じゃ? 物じゃないのかのぅ。でもこれ、ぶっちゃけ裏ルート情報じゃし、直接は聞きづらいのぅ」

 こうして、八者八様、僅かながらも確かな進歩を見せつつ、『魔女大祭』の日が近づいていた。


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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2012/04/19
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