もう二度と死なない


<オープニング>


 真夜中のホスピス。看護師達が見回りをする足音が遠ざかったのを確かめると少女はクローゼットをあけた。かけてある白いワンピースの裾をそっと持ち上げると、そこにはかつて人だった「パーツ」がいくつかあった。
「うふふ。全部食べるからね」
 異様に細く白い腕を伸ばして少女はそれの髪をつかんで引きずりだす。さして長くもない爪を眼窩に立てるとずぶりと訳もなく指が沈んだ。ぷちぷちと聞こえるのは神経が切れる音。やがて少女の掌に眼球がころがる……。
「きれい……」
 丸ごと口に含む。思い切り噛み砕く。たまらない歯ごたえ……。味など全く意識に上らない。けれども恍惚として少女は喰らう。庭で偶然出会ったその人を。そしてつぶやく。
「大丈夫よ、ママ。もう二度と死なない……」
 だから、泣かないで……。
 真夜中の食事はまだ始まったばかり……。

「よお、集まってるな。そいじゃ、仕事だ」
 王子・団十郎(高校生・運命予報士)がのそりと教室に入ってきた。
「行ってもらいたいのはホスピスだな」
 ホスピスとは延命治療を望まない患者の最期を当人が望むように迎えられるよう設立された施設のことである。そこに先ごろ少女のリビングデッドが入院したとのことだ。
「ほんとは前にいた病院で死んでるんだけどな……」
 難病を患い子供のころから入退院を繰り返していた少女は、13歳でその人生の幕を下ろした。けれども少女はリビングデッドとして目覚めてしまった。母親に泣いてほしくなかったから。
「でまあ、リビングデッドだからな。人が多い大病院はイヤだってんで、ホスピスに移ったってわけ」
 そこは海に面した小さなホスピスで患者は全て個室を与えられる。もちろん少女にも。娘の望みなら何でもかなえる気になっている母親は、娘の言うなりだ。
「リビングデッドがいるのは4階だな。ちなみにこのフロアに入院してるのはほとんどいない」
 なるべく静かにしていたい。そう長いことではないからと母親が無理を通したようだ。そして少女は同じホスピスの人間を襲った。
「向うへ行くまでの手配はしておいた。だが……」
 問題がいくつかある。まずは母親がほとんどの場合娘の部屋にいること。彼女の前で戦闘を行うことは絶対に避けてもらいたい。何らかの方法を用いてリビングデッドだけを倒してほしいのだ。そしてホスピスにいても疑われないような振る舞いをすること。
「それから、真夜中に闘うのはちょっとやめてくれ」
 病人がいるところだし、このあたりは夜が早いし恐ろしく静かだ。昼間の忙しさにまぎれる方がましだろう。
「昼食の後見舞い客が来たり、昼寝したりという時間を狙ってほしい」
 それでも建物全体が全くの無人というわけではないし、ひょんなことから看護師が来ることもある。一般人にはくれぐれも気を配ってほしい。

「向うの攻撃手段は、つぶてだな。それも一度に複数」
 届く範囲も広いからくれぐれも注意してもらいたいものだ。しかしながら能力者の集団を相手にできるほどの強さはない。
「ああ、あとハトが3羽いるぞ」
 少女はハトのリビングデッドも従えているらしい。人間を餌にする前は窓辺のハトも襲っていたものだろうか。こちらは部屋の中だけとはいえ飛行する。攻撃手段はクチバシでつつくこと。
「勢いつけて飛んでこられたら痛いぞ。すごく」
 まあ、弱いけどな……。団十郎は苦笑いをする。
「リビングデッドを倒しちまえば、母親は娘を失うことになる……」
 先立たれる母親も、母を残していく娘もどちらもつらいに違いない。母一人子一人で過ごしてきた仲のいい親子だったから。けれど、偽りの生は間違った結果しか生まない。
「どうにか前を向いてほしいもんだが……」

「そういうわけだ。寝覚めのいい仕事じゃないかもしれないが、よろしく頼む」
 一同に頭を下げかけて、団十郎は思い出したように付け加えた。
「あ、クラスメートって設定はやばいぞ」
 生前の少女はほとんど学校に通えていなかったのだそうだ。化けるとしても注意が必要なようだった。

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参加者
草剪・ひかり(中学生青龍拳士・b00540)
皇塚・霧芽(高校生青龍拳士・b00566)
瀬能・白菊(小学生ゾンビハンター・b00717)
麻生・時雨(高校生ファイアフォックス・b00863)
霧生・颯(小学生魔弾術士・b01352)
初谷・嘉(高校生ゾンビハンター・b05407)
継夜・裕一(高校生魔剣士・b06839)
愛時・魔王(高校生魔弾術士・b07773)



<リプレイ>

●終の棲家へ
 そのホスピスは、どの部屋からも海を臨むことができた。静かなそのたたずまいの中に空と海の青がある。遠く、指先で摘めそうなほどに小さく、一羽のカモメが空を切って飛ぶ……。穏やかな光の中に空の蒼も海の藍も照り輝いている。自らの死を静かに見つめ、来し方をふりかえるにはこんな美しい場所が相応しいのかもしれなかった。
「海原も蒼穹も拝めるのか。随分と趣味のいい死人だ」
 瀬能・白菊(小学生ゾンビハンター・b00717)が年に似合わぬ大人びた口調で言った。
「リビングデッドになってまで戻ってくるなんて……健気ですが、悲しいです……」
 麻生・時雨(高校生ファイアフォックス・b00863)も応える。そう。かつて人間だった少女には今も母親の庇護がある。いずれ崩壊してしまうはずの危うい平和の中に。
「母が涙を流さなくとも、食した人の親は流すもの……」
 皇塚・霧芽(高校生青龍拳士・b00566)がぽつりとつぶやく。娘を失わなかった母親は嬉し涙を流しても、食われた者の親は知れば哀哭の涙を流すだろう。ゴーストは他の命を奪わなければこの世にあり続けることができない。そしてまた新たな哀しみを生む……。
「悲しい連鎖なのですよ。それを断ち切ってあげるのも、思いやりの形ということで…」
 二度と死なないと願う気持ちは痛いほどわかる。だがどんなに心苦しくとも断ち切らねばならぬ絆があることを草剪・ひかり(中学生青龍拳士・b00540)は知っていた。
 どんなことにも「終わり」がある。たとえ人としての死をゴーストとなって乗り越えたとしても、ゴーストにも「終わり」は必ずやってくる。いや、自分達が終わらせる。

 建物への潜入自体はそれほど難しいことではない。適当な時間に適当な人数で訪れるならば。集団でいれば人目を引きやすくなる、そこで彼らは見ず知らずのグループを装うことにしていた。
 まず、継夜・裕一(高校生魔剣士・b06839)が闇纏いを用いて潜入した。これならばホスピス内をくまなく歩き回っても不審を抱かれることはない。問題の部屋までの最短ルート、回り道、撤退する時に使う非常口、ナースセンターの位置と看護師の数……、調べなければならないことは山のようにある。裕一が細かく完璧な情報をもたらすことになればなるほど、仲間の仕事がスムーズになる。裕一は注意深く丹念に調べていく……。
 裕一が建物に入るのを見送って、ひかりと霧芽は建物の入り口に立った。2人ともごく当たり前の服装をしている。霧芽は大きな花束まで用意していた。訪問する者は一応病棟の入り口に名前を記すことになってはいるのだが、見舞い客なら細かいチェックがあるわけでもない。特に変わった服装でもなく持っているものが花束であれば、見咎める者などいようはずがなかった。
 残る4名はボランティア活動を行うという名目で入り込む手筈になっていた。
「じゃあ颯ちゃん、『お願い』してもらえるかな」
 霧生・颯(小学生魔弾術士・b01352)がボランティアとして一日活動させてほしいと切り出した。彼は「お願い」上手らしく頼めば簡単なものなら大抵聞き入れてもらえるという。
 ボランティアの申し出も取り立てて珍しいことではないらしい。職員は簡単に名前と学校名を聞いただけで、疑うようなそぶりは全くなかった。
「私達が育てた花を飾りたいんです」
「学校の皆で鶴を折ってくれたので……」
 職員は白菊の持つ花や愛時・魔王(高校生魔弾術士・b07773)が差し出して見せた箱いっぱいの折鶴を見るとやわらかく微笑んだ。時雨、颯、魔王、白菊の4人は、幾つかの注意事項を守ると約束させられた上でボランティアの者であることを示す腕章を渡された。
 彼らは時間が来るまで、車椅子を押したり、話し相手になったりともっともらしくボランティア活動をしている予定だ。ホスピスの中は普通の病院とは異なり、パステル調の明るい雰囲気だった。人生の終わりを自分らしく迎えたいと願う人々は愛着ある物に囲まれて穏やかに過ごしている。
「こういう人達はゴーストにならないんだろうな……」
 リビングデッドになってしまった少女がとても哀しく思えた。

 ボランティア組が精一杯いそしんでいる頃、裕一の棟内探索も佳境を迎えようとしていた。
「通路よし、巡回のチェックもOK。後は制服……」
 看護師の制服を手に入れて嘉に渡すことになっていたのだが、まさか看護師達のロッカーをぶち壊すような真似はできない。制服はまとめてクリーニングに出すだろうから、きっとその手の部屋がある……。裕一はさらに探索を続ける。

●花、二輪……
 初谷・嘉(高校生ゾンビハンター・b05407)は看護師の制服に着替えながら、鏡の前で念入りに化粧をし、年齢を誤魔化す。強いインパクトを与えるような化粧ではなく、さりとて素顔をなるべく変えて……。その調整が難しい。
「化けたな……。今は2人だけみたいだ」
 看護師に化けた嘉が階段の入り口に来ると闇を纏ったままの裕一が報告する。彼は何度も部屋の前まで足を運んでいるが、外から気配を探っても何を話しているわけでもないようだ。ただただ静寂の中に2人はいるらしい。
「なんとか……。制服、ありがとうございます」
 制服はクリーニングする前のものを借りてきたから、洗いたてというわけにはいかないが少々の間ごまかすには充分である。
「出てこないな……」
 あの部屋を見張り始めてからずいぶん時間が経っている。ドアが開いたのは昼食が運ばれた時だけ。やがてその昼食の時間も終わろうとしている。
「どうですか?」
 やがて霧芽がやってきた。
「だめですわ」
 院内はそろそろ見舞い客が多くなる時間らしい。食器を運ぶワゴンの音にまざって、階下のざわめきがなんとなく大きくなったように感じられる。だが、ここだけは相変わらずひんやりとする程に静かだった。
「誘い出しにいくしかありませんわね」
 1人、2人と集まってきた仲間達を見て嘉は決めた。

「すみません。ちょっと……」
 ドアを細く開けると、母親が腰を浮かしかけた。それまで無表情に近かった少女が侵入者をギロリと睨み、頭から布団をすっぽりとかぶってしまった。困惑したように初谷と娘を見比べた母親が立ち上がる。
「なんでしょう。ここへはあまり……」
 来ないでくれと言ったのに、母親には明らかに拒絶の意志が感じられる。娘がはっきりと部外者を排除する姿勢を見せたからだろう。
「娘さんのご病状についてちょっと……」
 当人には話したくありませんといったニュアンスをにじませるに非常な努力を要した。
「なるべく手短かに願いますね」
 母親半ば命令するように告げた。嘉は頭の中でどんな話をしようか素早く練り上げる。後ろ髪を引かれているように病室から離れたがらない母親をなるべく遠くまで、できるだけ長く引き付けておかなければならない。
 ドアが閉まった直後、むくりと起き上がった少女の目に暗い光が宿っていた……。

●リビングデッドは二度死ぬ
 母親と嘉が視界から消えると、一同はすぐに武装を整えた。初めからすべてを出し惜しみすることなく短期決戦。それが作戦だ。
「行くぜ」
 魔王はドアが開くや否や飛び込み、ベッドに座っていた少女の前をすり抜けると窓を閉めカーテンを引いた。ほぼ同時に飛び込んだひかりは素早く室内を一瞥する。誰もいない。
「確認終了です!」
 クローゼットやバスルームもすべて見てまわり、ひかりは告げた。後は一秒でも早くリビングデッドの命脈を絶つのみ……。わずかの間睨み合うだけだった者が武器を構える。リビングデッドの少女は目の前の者達がただ者でないことをはっきりと悟っていた。
 少女が仕掛けてくる前に時雨の魔弾が襲った。少女を紅蓮の炎で包み込む。続いて颯が同じく炎の魔弾を打ち込むべく、箒を構える。が、放つのと同時に颯の視界を白いものがよぎる。腕に赤い筋が走り、血がにじんでいた。ハトだった。
 その一瞬の隙に少女は攻撃を避け、音もなく立ち上がる。細すぎる手足、ぬけるように白い顔、艶のない肩までの髪……。すでに死人であるから当たり前なのだが生気のかけらも見当たらない。
「ハトは任せろ、この子を、早く救ってやってくれ」
 魔王がすかさず飛び回るハトに炎を放つ。
「……死なない」
 それは生にしがみついた者の言葉。これ以上しがみつき執着すれば、結末は悲劇以外の何物でもない。救う方法はただひとつ。彼女がもう一度死ぬことだけ……。
「アタシがお前の死神だ」
 白菊は無慈悲とも思えるほど冷静に大鎌を構える。倒すべき相手は他者の命を奪わねばならぬ者……。その時点で彼女がリビングデッドと語る言葉を持つはずもない……。能力者とゴーストは永久に相容れることがない。寸分のためらいもなく黒い闇を纏った鎌が死神のそれのごとく彼女を狙う。
 少女を狙う者、ハトを撃ち落す者それぞれの役割にしたがって攻撃は続けられる。
「ガンちゃん、頼みます」
 ひかりがシャーマンゴーストに命令を与える、すなわちハトへの炎の攻撃を。ひかり自身は母親や一般人に見つからないようドア付近にいる。彼女の龍顎拳は少女にもハトにも届かない。
 部屋中を飛び回るハトは確かに厄介だった。ところ構わずつついてくるのはうっとうしいことこの上ない。
「余所見してると、殺すよ?」
 裕一が雑霊を呼び集め、攻撃する。戦いになれば彼は普段の彼とは全く違う。冷酷なまでに容赦がなかった。
 部屋に少女の悲鳴が満ちる。高くけれど決して大声ではなく……。彼女はおそらく大声で叫ぶことすら滅多になかったのだろう。生前も、そして死後も……。悲しく細い声がその場にいた者の心をえぐる。
「あなたが食した人の親が涙を流すこと、お解かりでございましょうか?」
 霧芽の白燐拡散弾、白く輝く蟲達が敵の全てに解き放たれる。ハトが一羽ぼとりと落ちた。
「ちょこまかと動くな!」
 時雨が斧を構える。室内であるから振りかぶるのは簡単ではない。が、生み出された炎の弾丸を少女は紙一重で避けた。だが、それが命取りになることを彼女は知らない。颯の炎の魔弾が再び彼女を炎で包む。もはや抵抗する力も残されていないかのように膝をつく。
「さらばだ……アタシは白菊、オマエの葬送花だ……」
 白菊が黒影剣を放つ。白刃の閃きはさながら白菊の花びらのごとく、少女の命を削りきった。

 少女が倒されてしまえば、残るハトが地に落ちるまでそれほどの時間は必要なかった。霧芽が龍顎拳に切り替える前に勝敗は決していたと見てよい。魔王と颯の炎の魔弾が残るハトをそれぞれ襲い、時雨のフレイムキャノンが最後のハトに吸い込まれるように決まると、病室は元の静けさを取り戻した。
 が、それも一瞬のこと。彼らはすぐさま後始末に取り掛かる。

●死すべき者へ
 部屋で戦闘が展開されている頃、嘉は話の接ぎ穂に四苦八苦していた。娘の病気について知識が深いわけでもなく、具体的な嘘を用意していたわけでもない。まして母親は世間話よりも娘のそばにいることを強く望んでいる。
「ごめんなさい。お話はまた改めて……」
 一向に進まない話に業を煮やしたのか、母親は切り口上で告げてくる。嘉はちらりと時計を見た。部屋を出てから数分だが、これ以上引き伸ばすのは難しかった。
「すみません……」
 母親はくるりときびすを返す。それでも嘉は歩みを緩めようとした。しかし母親はさっさと部屋へと向かってしまう。戦闘はどうなっているだろうか……嘉は気にかかっていたが確かめようもない。 

「戻ってきます」
 ひかりが告げた。階段のところに嘉が姿を現したのだ。母親より数秒早くあがってきたものらしい。
「時間がありませんね」
 時雨が断定した。窓から落として自殺に見せかけるという案もあったが、時間的にそれは難しい。ベッドに寝かせておくしかない。
 既に魔王がハトのリビングデッドをゴミ袋に収容している、裕一は散らばった羽をざっとベッドの下に押し込んだ。とても掃除までは手が回らない。
「では予定通りに……」
 霧芽はひかりとともに非常口へ向かう。颯も猫に変化して一緒に出て行く。別の所でボランティア活動をしていたと装うためだ。病室に残る3人はイグニッションを解いて戦闘のあとも生々しい服装を改めた。ただ1人継夜裕一は闇纏いを用いて不測の事態に備えている。
「すみませんでした」
 ドアのすぐ外で嘉の声が聞こえる。魔王は最後に少女の手にクレヨンを握らせると、ハートマークを描いただけの紙をはらりと床に落とした。

 母親が目にしたものは花束を抱えている少女と高校生らしい2人の少年。誰もがボランティアの腕章をつけている。
「どちら様?」
「あの……ボランティアの……」
 時雨が言いにくそうに言葉を継ぐ前に、母親は事態に気がついた。嘉を押しのけてベッドに近づくと、じっと娘の顔を見つめた。
「私がいない時に……どうして……!」
 大粒の涙だけがぼろぼろと落ちてくる。
「…………あなたに、見せたくなかったのかもしれません……」
 やっとのことで時雨はそれだけを言えた。母親の喉の奥で小さな悲鳴が作られる。それはやがて号泣へと変わっていった……。
 今はただかける言葉もない。白菊は持っていた花束をそっとベッドに泣き伏す母親の脇へ置いた。彼女の選んだ花はネリネ。『幸せな思い出』という花言葉を持つという。込められた思いをいつか受け止めてもらえる日も来るかもしれない……。
 泣き伏す母親をそっと悔やみの言葉をかけて、非常口へ向かう。ひかりと霧芽が人目のないことを確認してくれている。非常口の扉をそっと閉めた霧芽の目に、医者らしい白衣の人間が彼女の部屋へ入っていくのがちらりと映った。

 建物の外は明るかった。午後のやわらかい陽射し、輝く海……。車椅子に乗った老人が孫らしい若者とにこやかに話をしている。
「穏やかに過ごすはずの場所で二度目の死、か……」
 裕一が思わず声をもらした。彼らは今日もう二度と死なないと誓った者をこの世ならぬ所へと送った。それを後悔することはない。
 だが、どんな結末でもやりきれない思いというものはある。魔王は今そのことをひしひしと感じていた。同時にそれを背負っていく覚悟も決めているのだけれども。
 秋にしては暖かい午後だった。風だけが一足早く冷たい空気を運んでくきた。もうすぐ総てが眠る冬が来る……。
「いつか墓参りをしたいものですね」
 嘉はつぶやいた。
(「悲しみと苦痛の所為で迷うことが無いように……」)
 裕一はそう願いを込めて、秋の陽射しが斜めにさし込むホスピスの建物を見上げた。


マスター:矢野梓 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2006/10/16
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