【魔法少女村】魔法少女 VS 魔法少女!?

<オープニング>


●そして歴史は幕を開ける
「失礼ですが……もしかしてあなたは、男の娘ではありませんか?」
 笑弥が囁いたその時、世界そのものが停止した。
 そうとしか思えなかったのだ。
 周囲にいた魔法少女達が一斉に硬直し、黒スーツの隣で握手をしていたバンビまでもが脂汗を流して後ずさりした。
 一歩、二歩、三歩。そしてターン。
「た、たいきゃくううううううう!」
 バンビはトランペットガンをベルトで斜め掛けすると、その場から一目散に逃げ出そうとする。
 が、それを阻む者がいた。
 暴風を纏って跳躍したカリュプソーである!
「逃がさないッス――転校初日ドキドキ遅刻寸前曲がり角激突チラリズムまでの一連の青春プロローグ『抱きしめて……夏』アナタとワタシの初恋センセイション足払いっ!」
「はうんっ!」
 名前の割に凄まじく地味な下段足払いを受けて転倒。顔から地面に突っ込んだ。
 あの派手な跳躍は何だったのか。
 ミリタリー魔法少女やゲーマー魔法少女がRPGだのスーパースコープだのをバンビの額にぐりぐり押し付ける。
「観念するッスよ、魔法少女村は三年前から男子禁制ッス……やっとこで引き抜いて女の子にしてやるッスよ、フゥーハハハー!」
「やめんか」
 カリュプソーの後頭部にボウガンを撃ちこむステュクス。
 笑弥達へと向きなおる。
「そいつが男だって、何故言えたんだ」
「ん、ええと……」
 首をかしげる笑弥。銀誓館ではこういう人がゴロゴロいるのでちょっと気を付けていれば大体の見分けがつくんですよ、とはちょっと言い辛かった。
 分かって貰える気がしないからである。
「と言うか、男子禁制だったんですね……」
 頬に手を当てる氷室まどか。
 メンバーに男性が混じっていたら死ぬ気で隠さなければならなかったところだ。
 まあ、それはそれで面白そうなのだが。
 さておき。
「男子禁制というのは、どういうことなんです?」
「それは、わたくしたちが勝手に説明してよい問題ではありませんわね」
 胸の前でやんわりと腕組みするパンドラ。
 観客席の三魔女へと目をやる。
 アトロポスが穏やかな笑みを失くし、困った顔をして立ち上がった。
「仕方ないわね。皆に教えるしか……なさそうだわ」

 昔話である。
 街とその周辺に次々と現れるようになったゴーストや悪の能力者組織を壊滅させるべく、かつて『魔法村』だったこの里の住人達は力を合わせて戦った。
 戦いは苛烈を極め、最後には大部分の大人たちの命や能力を犠牲に戦いを終えたのだった。
 訪れたひと時の平和。
 しかし残された者達は村の今後を考えなくてはならなくなっていた。
「そうして考えられたのが、魔法少女制度よ」
 村の少女達が『街を守る謎の存在』となり、悪の能力者や犯罪を根底から防止する。組織を壊滅させるだけの暴力を失った彼等にもできる、唯一の戦い方だったのだ。
「そう。私達は戦ったわ。決して強力ではなかったけれど、街から恐ろしい犯罪や企みを消すことはできた。充実していたわ。そんなある日の事よ……あの事件が起きたのは……」
「あの事件……」
 一応イグニッション状態のままで灯雪が呟いた。
 アトロポス達の目には悲しみが浮かんでいる。
 よほど辛いことがあったのだろう。
 察しはつくのだ。
 魔法少女の中途採用。
 三人にまで減った魔女。
 男子禁制。
 導き出される答えは……。

「ワタシのヒゲが濃過ぎる。貴女はそう言ったわワネ、アトロポス」
 闇を切り裂くように、土を割るように、身の丈2mの大男が現れた。
 カールのかかった金髪。
 長い睫毛。
 青い瞳。
 ケツ顎。
 青髭。
 フリルドレス。
「魔法少女ビューティー・ヘラクレス……三年の時を経て、参上したワ」
 済んだ瞳でそう呟いたオッサンに、フェリシアは心の底から絶叫した。
「オカマだああああああああああああああああああああああ!!」

●魔女の大窯
 草凪まどかと小夜が広場へ駆けつけた時には、既に凄まじいカオスが展開されていた。
「おお、遅かったのう」
 携帯でバシバシとシャメりながら振り向く静香。
 その冷静さに驚きつつも、周囲の状況を再確認する。
 険悪な表情で睨み合う三魔女と『大窯』。
「大釜……そう、ビューティーヘラクレスの別名にして、三年前にこの村を追放された男性魔法少女達の総称」
 聞かれても居ないのにドヤ顔で説明してくれるカリュプソー。
 何故か事前に話を聞いていたらみかが同じようなドヤ顔でスライドインしてくる。
「村の治安を守っていた魔法少女達だったのですが、無理して女装していた肉体派魔弾術士達がついて行けなくなったのです。というか、治安を守ろうとしてるのに逆に恐怖の対象になっていたのです」
「それは、そうですよね……」
 暗い夜道で出会ったら通報されかねないフォルムである。
 黒スーツの魔法少女(?)は特に女顔で線も細く、わざとスーツを着込むことで少年さを誤魔化していたようだが。
「男性達の魔法少女活動をやめるように言ったが、彼らは聞く耳を持ってくれなかった」
「それがこの村にあった『見えざる狂気』なのです」
「確かに、狂気を感じます……」
 ごくりと唾を飲む小夜。
 アトロポスはどこか寂しげに微笑んだ。
「フフ……いつか来ると思っていたわ。こうして魔法少女を一同に集めて見せれば……そして、彼女達の技を競い合わせていれば、きっとあなたは挑戦しにくる筈」
「何でもお見通しというわけネ」
 ヘラクレスはパチンと指を鳴らした。
 闇が動く。と、表現して構わないだろう。
 猫変身して大量に紛れ込んでいた男性魔法少女達が一斉に変身を解いたのだ。
 いずれ劣らぬ屈強な男達(魔法少女コスチューム)である。
 魔法少女達はあらゆる意味で戦慄し、本能的に身構えた。
 ヘラクレスは軍配を掲げるかのように手を天に伸ばすと、年季を重ねた目をぐっと細めた。
「ワタシの育てた美少年たちヨ。並の女の子以上の可憐さと、男性ならではの計算されたセクシーさを兼ね備えた最強の魔法少女軍団……『魔法男娘組(まほうおとこぐみ)』ヨ!」

 風が舞い、嵐が訪れる。
 魔女大祭の夜を締めくくるこの時。
 村の歴史が、動くことになった。
「魔法少女村を、制圧するのヨ!」

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参加者
神谷・小夜(真土蜘蛛の巫女・b27152)
氷室・まどか(中学生真雪女・b51391)
フェリシア・ヴィトレイ(きまぐれな野良猫・b54696)
蒲生・灯雪(日常の護り手ホワイトスノー・b55309)
舞城・笑弥(魔法少女カレイドエミヤ・b59830)
片折・らみか(ナイトメア適合者ランページ改・b80677)
志方・静香(小学生土蜘蛛・b81318)
草凪・まどか(籠人・b82655)



<リプレイ>

●魔法少女戦争
 200発もの魔弾が飛び交う光景というのを、草凪・まどか(籠人・b82655)は初めて見た。
 それも俯瞰で。
「とにかく、これが最後のチャンス……!」
 胸の前で両手を握り、まどかは『30mクレーンの先端』から飛び降りた。

「ムーンライト・イグニッション!」
 顔の前に飛び出したカードが発行し、まどかは一人で腕輪を作った。
 高所よりふわふわと降臨するまどかを誰もが見上げ、口をぽかんと開けていた。カリュプソーだけがガッツポーズ。
「マジカルムーン――可憐に華麗に、いざ参らん!」
 薙刀を背に回し、突き出した手をピストル型にして相手へ突き出した。
 対して。
「なんの、魔法男娘マジカルアース――出でよ!」
「応ッッ!」
 力強い大太鼓の音。竹笛にソイヤソイヤと合いの手が入り、もっこりと膨れ上がった地面からスキンヘッドの大男が現れた。あとミニスカ。
「ヒィッ、青髭、蟹股……!? ドン引きさますって! 守りたい人から怖がられたら正義の味方じゃいられませんよ!」
「問答無用。『魔法少女』でありさえすれば認められる……世はそういうものではないか!」
「それじゅあ目的と手段が入れ替わってるじゃないですかー!」
 『茨音頭』というダンサブルな技に対抗して赦しの舞を繰り出すまどか。
 ある意味純正の魔法男娘軍はともかく、中途採用の多い魔法少女村はそれなりに沢山のバイトを持っているらしく、異常状態の回復も意外とお手の物だった。カリュプソー辺りが『乙女の恥じらいミニスカちらり翻し渡り廊下駆け抜け隊ハリケーン・テヘペロスペシャル!』とか言いながら浄化サイクロンしていた。
「魔法の雪姫マジカルまどか、優雅に参上!」
 そんな中、氷室・まどか(中学生真雪女・b51391)が魔法男娘たちに月煌絶零を発射。軽く黙らせてから結晶輪を突きつけた。
「皆さん、好きでやっているならいいです……でも無理強いされているなら!」
「馬鹿にするなよ! ボク達だって先代の背中を見て育ってきたんだ。ムダ毛処理だって欠かさずに……!」
「す、すみません……」
 意外と似合っている魔法男娘たちは放って置いて、ヘラクレスへびしり。
「魔法少女は可愛らしさと恥じらいが萌えるんです、貴方様に魔法少女の資格はありません!」
「何ですってェ!? 構わないワ、やっちゃいなさい!」
「「イエス・マム!!」」
 チャイナドレスを着た十八羅漢(魔法男娘)が飛び出してくる。
「魔法少女は……魔法少女は……」
 キッと顔をあげる神谷・小夜(真土蜘蛛の巫女・b27152)。
「夢や希望を叶える存在です! だから戦うなんて無意味じゃ」
「問答無用ォ!」
 飛翔蹴りを繰り出してくる羅漢(魔法男娘)。目をぎゅっとつぶった小夜だったが、きたるべき衝撃は起きなかった。
 目を開ける。
「友達に無粋なことしてくれるじゃないスか。女子高生舐めんなッスよ!」
 二丁拳銃をクロスして蹴りを受け止めるカリュプソー。
「小夜っち!」
「はいカリュプソーさん、平和の為に戦いましょう!」
「うわ規模デカっ! でも分かった!」
 弓を引き、魔弾の射手を展開。小夜は蒼の魔弾を持てる限り全弾ぶっ放した。
「シャイニングアロー、乱れ打ちです!」
「『さよなら初恋ただいま乙女海風に揺れる女心とセーラー服だきしめて……夏・特攻マイハート』!」
 クロスした銃で乱れ内するカリュプソーと合わさり、羅漢たちが次々に倒れていく。
 だがこうして勇ましく戦っているのは一部の魔法少女たちだけで、特に中途採用組は事態についていけずにおろおろしていた。
 そんな彼女達にも容赦なく襲い掛かる魔法男娘たち。
 そして、彼女達を護らんと立ち塞がる片折・らみか(ナイトメア適合者ランページ改・b80677)!
「どんなカオスな物語でもハッピーエンドに変えちゃいますよ! 『始まりはいつも突然に』でおなじみ、魔法少女ミラクル☆らみか――」
 専用の仕込み杖を鋭く抜く。するとどうか、周囲をサイコフィールドが覆い、魔法少女達をゆるやかに守り始めるではないか。
「全力全開です!」
「き、貴君は……」
 ミリタリー風の魔法少女がライフル片手に目を泳がせる。
「怖くないんですか? あんな人達を相手に」
「彼……いや彼女らも同じ志を持つ仲間だったのですよ」
 らみかの呟きに魔法少女ははっとする。
「路を違えてしまったのなら、我々がなんとかしないでどうします!」
「その通りです!」
 ヤツフサの背に乙女座りして無駄に親指を噛んで見せる舞城・笑弥(魔法少女カレイドエミヤ・b59830)。肉食系アピールである。
「魔法少女カレイドエミヤ推参! 殺しはしません、しかし……全力でお相手します!」
 完全強化したヤツフサ(ケルベロス)をけしかけ、連爪撃で叩き伏せる。
 そして。
「……なるほど、強敵ですね」
 びっくりするぐらいミニスカの似合う魔法男娘と遭遇して、膝から崩れ落ちた。
「本当、強敵で……」
「笑弥さんしっかりして!?」
「隙ありィ!」
 暗殺者みたいな目をした鍵爪の男がケケーッとか言いながら飛び掛ってくる。あとミニスカ。
 だが彼の攻撃が笑弥に届くより早く、空中で魔弾に当たって墜落した。
「魔法少女リリカルキャット、只今推参!」
 フェリシア・ヴィトレイ(きまぐれな野良猫・b54696)がポージングしながら登場。
 コスチュームはなんと第二期用強化バージョンである。後ろの方で『フ、こりゃ玩具が売れるぜ……』とかゲーマー風の魔法少女が呟いていた。どうでもいいが彼女の武器はSF版ガンコンである。
「少しだけキミの時間を止めるよ!」
 とか言いつつ容赦なく幻楼七星光をぶっ放した。
 石化したまま倒れたりしたら(少なくとも現状は)元に戻す手段が無いと言うのに、無自覚な鬼畜さである。
「正義の想いは大切だ。だが方向性を間違えてはいけない……」
 そこへ加勢にかかる蒲生・灯雪(日常の護り手ホワイトスノー・b55309)。
「マジカル☆スノー、只今参上! キミ達は魔法少女を分かってないよ☆ そんな悪い子にはお仕置きだー!」
「くっ、なんたるギャップ……ならばこちらも! であえぃ!」
「フ、いいぜ。お前がそのテンションで来るんなら……」
 早着替えでフリルファッションに身を包む魔法男娘。
 ウィンクで星を飛ばしてきた。
「あたまコツンでオ・シ・オ・キ――ヨッ☆」
 色物である。だが、戦闘力はすさまじかった。
 気づいた時には背後に回り込み、短剣で灯雪の肩をばっさりと切り裂く。
「ドレスチェンジ・バトルモード!」
 灯雪は軽く距離をとりながら雪だるまアーマーを展開。
 白いスリット入りのロングドレスを身に纏うと、舞うような回転動作で相手へ接近。
 魔弾を連射してくるが、灯雪はそれを紙一重に回避していた。
 すれ違いざまに指を突き出す。
「スノー☆ライン――凍って」
 パチンとウィンクすると、相手の肩がばきりと氷に覆われた。
「くっ、強い……!」
「ならばワタシが引導を渡してあげるワッ!」
 声がしたと思ったら、遥か頭上から巨漢が振ってきた。
 大地激震。
 舞い上がる砂煙。
 筋骨隆々の魔法男娘ヘラクレスが降臨したのだ。
「ローズ・アンド・ビューティー!」
 くねっとシナを作ったかと思うと、周囲に大量の茨を顕現。灯雪たちを拘束する。
 だがそんな中を駆け抜けてくる二つの影。
「魔法少女ピンキーサイレント、悪質ながちむちは運営に代わっておちおきじゃ!」
 金棒をバットのように構えた志方・静香(小学生土蜘蛛・b81318)。
 そして。
「魔闘戦姫マジカルまどか、過激に降臨! 真雪の力見せてあげる!」
「やれるものならやってみなサァイ!」
 厳ついグローブを嵌めた両腕を突出し、強力な魔弾を打ち出してくる。
 二人は素早く跳躍して回避。
「武論屠慙!」
 静香は俺の怒りが有頂天的な目(据わった目)をして棍棒をスイング。ヘラクレスはあまりの衝撃にびくりと固まった。
 最大の隙、そしてチャンスである。
「私のこの手が凍って唸る、全てを砕けと以下略――氷結グッドバイフィンガー!」
 どっかで見たようなアレとアレの氷バージョンのようなエフェクト(魔法少女さん達の協力です)の後、まどかはさよならの指先をヘラクレスへ叩き込む。
「コールドエンド!」
「アンッ!?」
 大きく仰け反るヘラクレス。
 静香は棍棒を天高くつきだし、そして振りかぶり。
「真・蒼炎破魔斬!」
 バット的にフルスイングした。
 炎と氷が合わさって最強になる的な。
「魔法少女はあざとい程可愛く、そしてちやほやされてなんぼじゃ!」
 そこまで言うと、静香は(これまで散々だらけてきたにも関わらず)ちゃっかりとカメラ目線でウィンク決めたのだった。

 リーダーを抑えた後、戦いの流れは一方的だった。
 戦意を失うもの、体力を尽くしたもの、羞恥心に堪えられなくなったもの、形は様々なれど、一様に降伏する姿勢をみせた。
 ミリタリー風の魔法少女が(頭のネジ外れたのか)虐殺じゃコノヤローと宙に向かってマシンガン乱射していたが、とりあえず殴って黙らせた。
 キッと振り返るフェリシア。
 まだ戦いを続けようとする古参魔法男娘(いわゆるオッサン達)が武器を構えている。
「キミたちは何故魔法少女になりたかったのか、忘れてしまったようだね」
「……何」
「あったはずだ、守りたいと願ったものが。思い出せるはずだ、魔法少女の意味が」
「……意味」
 金棒を肩に担ぎ、もう仕事は終わりましたよとばかりに携帯取り出し始める静香。
「ま、街を護りたいって意思は間違ってないのじゃ。しかし姿かたちにこそ魔法少女の意味があるからのう……華やかな姿で勇気を与えるとか、そんな感じで」
「ワタシの姿が華やかじゃないっていうノ!?」
 踏んづけてやるっとか言いながら四十代後半の魔法男娘がハンカチを噛んだ。パーティードレス姿だった。もう場末のバーみたいだった。
「そもそも怖がらせちゃいけないでしょ?」
「…………」
 ぴたりと黙る魔法男娘たち。
 後で知ったことだが、彼等古参メンバーのことを大釜と呼ぶらしい。
 隠語っていうかダジャレだった。
「新しい道具を与えたり、助言したりする人も大拙だよ? マスコットとか」
「あとおいらんとか」
 割と適当な感じで代案を進めてみるが、大釜達は頑として首を縦には振らない。
 やけにデカい大釜『アポロ・デラックス』が一歩前へ出る。
「その提案は昔にも受けたわ。でもアタシ達がキグルミを着てマスコットをした時……子供達は泣いたものよ。曰く『兎の化物が出た』と」
「そりゃアンタはな……」
 漸く戦闘を終えたステュクスがボウガンの矢を詰め直しながら寄って来た。
 小夜とカリュプソーも集まってくる。
「魔法少女を影から助けるヒーロー的ポジションも例が無いわけじゃないですし……あ、外見が難しくなってきたら、いっそ『少女』を卒業して新ステップに進めばいいんじゃないでしょうか!?」
「新ステップ……? 何言ってんのよアンタ! ぶっころすわよ!?」
「いや、一理あるワ……」
 アポロを遮って前に出てくるヘラクレス。
「でも、簡単に頷くわけにはいかない。ちゃんとした代案を出せるんでしょうネ?」
「……出せます」
 ヤツフサの背から降りた笑弥が、真剣な眼差しでヘラクレスを見た。
「魔法男娘を育てられるくらいなら、新米の女の子達にも色々教えられる筈です」
 目を細めるアポロたち。
「…………続けて」
「女性的なダンスを男性振付師が得意とするように、ガーリーファッションを男性デザイナーが得意とするように――『魔法少女教官』に、向くのではないでしょうか!?」
「「…………!」」
 笑弥の言葉を聞いた大釜達は、目に見えて動揺していた。
 氷室まどかは目を細め、彼女(?)達の気持ちを察した。
 何せこれまで認められたなかった者達だ。誰かに認めて貰うどころか、自らの技を教え、育てる立場につくことなど考えもしなかったのだ。
「良い考えね……」
 ぽつりと、群衆の中から声が聞こえる。
 魔法少女達を割って、アトロポス達三魔女が姿を現した。
「これまで私達は沢山の女の子たちを中途採用してきた。けれど、訓練に付き合ってあげる余裕は無かったわ。彼女達は皆手探りで、先人の知恵を誰もが欲していた」
「けれど独学で掴むしかなかった。百人の魔法少女へ平等に知恵を授けるすべを、アタシらは持ってなかったんだよ」
「勿体ないことだとは、持ってたけどねえ……」
 ゆっくりと歩み出る三魔女。
 ヘラクレスの前に立つと、アトロポスは手を差し伸べた。
「新しい魔法少女たちの言うとおり。一緒に、平和を守っていきましょう」

 後の事をとやかく語るべきではない。
 だがあの後ヘラクレスは男泣き(本人いわく乙女泣き)に泣いて、アトロポスたちと抱き合い、十年越しの友情を結んだのだった。
 実際彼等の『乙女らしさ』は大したもので、女だらけでガサツになりがちな魔法少女たちにとってかなり良い刺激を齎してくれた。
 新人に見られる『とりあえずコレやっとけばいいんだろ感』から『男心をグッと抑えたダイレクトつぼ押し感』に変わったのだ。カリュプソーのスカートを赤黒チェックにしたりとか。スパッツを剥いだりとか。
「それにしても、意外とまとまるものですね……」
 お祭りもなんやかんやで再開。
 草凪まどかは集まってくる魔法少女や魔法男娘にカレーを配っていた。前回から寝かせたとびっきりの味である。ウケが良くない筈がない。
「さ、一緒に食べて遊びましょう!」
「あ……うん。前回すごく微妙に出てた私でもイイ?」
「え? 全然いいですよ!」
 バンビ(覚えてるかどうかすら怪しい人)と手を取り合って屋台回りに出かけていくまどか。
 それを見送って、らみかは深く目を瞑った。
「これで、私達の役目も終わりですね」
「ええ……おば様方から聞きましたわ。銀誓館という組織から遣わされたと」
 パンドラが薄目を開ける。
「魔法少女村と友好を結んだ以上、ここにいる必要はない。だから……」
「生きていればまた会える、ですよ」
「……ええ」
 らみかから渡された紙コップ。パンドラは何気なく口に含んだ。
「いちごシロップマスタード青汁です」
「ぺぎゅん!?」
 お祭りの夜に、パンドラの怒声がそれはよく響いた。


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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2012/05/11
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