モストマスキュラー・オラクル!


<オープニング>


 男はダブルバイセップス・フロントのポーズで銀の雨を浴びていた。
「おお星よ! 銀の雨よ! 貴方は世界を救えとおっしゃるか!」
 自然に体を斜めにしサイドチェストにシフト。
「仲間を! 強き仲間を!」
 くるりと回転しラッドスプレッド・バック。
「そしてこの力をオオオオオオオオ!」
 再び向き直ってアドミナブル・アンド・サイ。
 男は滂沱の涙を流していた。
「天よ! 地よ! 筋肉よ! 見給え! 私は世界を救うぞ――!」
 金武・肉守(きん・にくもり)18歳。
 夜のトレーニングを行っている最中のことであった。

「しゃれに・ならない・四月マジでお疲れさん!」
 穂村・勇史(高校生運命予報士・bn0292)はぐっと能力者達に親指を立てて見せた。
「巡礼士総帥ランドルフ、そして一緒に姿を消した『シルバーレイン』という謎の存在。わからんことだらけだが、それに関連するかもしれない事件を突き止めた!」
「ところで勇史にい、なんでマッスルポーズでシェイカー振るだか……?」
 島牧・こたん(やんちゃ忍びっ子・bn0275)が、出来上がったカクテルから順に仲間達に回しながら思わず首を傾げた。
 ちなみにカクテルはサンセット。チェリーとオレンジのジュースをシェイクしたそれは、夕焼けの空の色によく似ている。
「んむ。まぁポージングとか筋トレとか殴り合いとか夕日に向かってダッシュを繰り返している熱い巡礼士達が、北海道札幌市の創成川河川敷で修行に明け暮れているんだ」
「巡礼士……?」
「それも欧州から来た巡礼士じゃなく、一般人の少年が一夜にして高い能力を持つ巡礼士となって、だな」
 急に真剣な顔になり、地図に丸をつける勇史。
 ちなみに殴り合い系の修行などは迷惑にならないよう橋の下とか目立たないところで修行しており、大人数の割には目立っていないそうである。
「お前らにはここに向かって、彼らの事情を確認し、必要であれば無力化して捕縛してもらいたい。彼らが、全神秘の撲滅に関わる存在だってことも否定はできんからな」
 なお、彼らはどうやら『天啓』により巡礼士の力を得ており、戦闘不能になると能力を失うらしいという情報が入っている。
「んーと、つまりインスタント巡礼士さん……?」
「ふむ、インスタントか。言い得て妙だな」
 こたんの言葉に勇史はふむと頷くと、トンと地図の丸を付けた場所を叩く。
「巡礼士の少年少女は11人。いずれも劣らぬ筋力……猛者で、その中でも金武・肉守(きん・にくもり)という少年が、一際高い実力を持つ。あとは男女五名ずつ、傾向としては男子が気魄、女子が神秘に優れているが、術式は総じて低め。基本戦術は得意分野でひたすら殴る!」
 つまり神霊剣とかメダリオンナックルとかどんどこ使ってくるわけである。
「ただし、彼らは相手が明らかに強敵だとみれば、しっかり弱点を突いて戦ってくる。もちろん減衛兵団を使用して実力の低い者から潰しに来るし、吹き飛ばしやアンチヒールを効率的に生かしてくる」
 その指揮を執るのは、もちろん金武・肉守だ。
「巡礼士さんは撹乱得意だからなー……」
 むー、とこたんが首をひねる。
「最近巡礼士になったばかりとはいえ、実力的には侮れないしな」
 そう言って勇史は、さらにもし逃走した場合は彼らは追ってこないが、それ以降彼らの足取りが掴めなくなる可能性があると告げる。
「ま、場馴れという意味ではこちらの方が遙かに上だ。それを生かして油断なく確実に……頼んだぜ!」
「ん! しゃれに・ならない・四月越えてきたもんな!」
 応、と能力者達は拳を突き上げ、教室を飛び出した。

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参加者
アラストール・セブンセントラル(高貴なる義務・b05350)
椎名・悠(深緑のねぼすけ娘・b20132)
出雲・那美(慎ましき巫女・b24518)
緋島・了(通りすがりのモラりすと・b26806)
霧島・芽衣(銀誓のバンド娘・b28397)
カイト・クレイドル(真イケメン人狼騎士・b37048)
エリアラ・エリオル(機械のこころを識りたくて・b50062)
八重咲・凛々花(月夜に咲く桜花・b51904)
伊東・尚人(理の探求者・b52741)
太田・千枝(七重八重花は咲けども山吹の・b59223)
NPC:島牧・こたん(やんちゃ忍びっ子・bn0275)




<リプレイ>

 十一人の少年少女による超ハイスピード腕立て伏せ。
「……しかし、暑苦しい人やなぁ」
 八重咲・凛々花(月夜に咲く桜花・b51904)がひょいと肩を竦める。
「やれやれ……こんな脳筋バカじゃ天啓なんて受けたら簡単に騙されちまうだろうなぁ……」
 そこからそっと目を逸らし、銀の雨が降るという空を、霧島・芽衣(銀誓のバンド娘・b28397)は仰いだ。
 ランドルフがそこにいるかどうかはともかく、言わずにはいられなかった。
「世界を救うなんて言いながら一般人を犠牲にすることも厭わないランドルフ、あんたは間違ってるぜ!」
「ここしばらくの天気は晴れのち曇りで、所によっては銀の雨が天啓と共に降ってきます?」
 嫌な天気だね〜、と椎名・悠(深緑のねぼすけ娘・b20132)が呟けば、島牧・こたん(やんちゃ忍びっ子・bn0275)が思わず一緒に空を見上げた。
「しゃれにならない四月をのりこえたらもっとしゃれにならない五月ってとこかな?」
 言葉の割にはけろりとした声でカイト・クレイドル(真イケメン人狼騎士・b37048)が応え、にやりと笑みを浮かべてみせる。
「しかも、今回の相手はマッチョな電波さん……嫌な巡り合わせだね〜……」
 確かにしゃれにならない、と悠はため息。
「最近現れた巡礼士、か」
 太田・千枝(七重八重花は咲けども山吹の・b59223)がゆらりと首を傾げ、さりげなく話を真剣な方へと向ける。
「一夜で巡礼士……即席超人?」
 エリアラ・エリオル(機械のこころを識りたくて・b50062)がふむ、と首を傾げる。
「何もないなら良いけど……真のシルバーレインと無関係じゃ……ないね、きっと……」
「この天啓と巡礼士の力もどう考えてもランドルフの仕業としか思えませんし、彼らから何か情報が得られると良いのですが……」
 プロテイン系飲料のボトルの入ったバッグを手に、出雲・那美(慎ましき巫女・b24518)がエリアラの言葉に深く頷く。
「神秘根絶とか洒落にならん事止めんとなぁ」
「うん……神秘根絶を推し進める人達なら……止めなきゃ……」
 凛々花とエリアラが視線を交わし合い、そう口を開く。
「……神秘根絶、それに関わるかもしれない彼等」
 力持つ者には力持つ者の義務がある、とアラストール・セブンセントラル(高貴なる義務・b05350)は考える。突如巡礼士の力に目覚めた彼らには、それを背負う矜持があるだろうか。
「さて、僕等の仕事も大きな節目かもしれないな」
 その言葉に、仲間達も大きく頷いて。
「今の状況を正確に把握できるかが鍵です。何かしらの情報を持ち帰れれば良いのですが」
 伊東・尚人(理の探求者・b52741)がさりげなく皆を守るような位置に立つ。
「何を目的に動いているのか確かめて……必要なら、止めないとね」
 千枝の言葉に緋島・了(通りすがりのモラりすと・b26806)が頷き、真モーラットヒーローのミナに作戦を言い含めてから、カードに戻す。
「……それにしても強烈なキャラクターだね」
 思わず呟く千枝。
「んじゃまインスタント能力者のマッチョ君たちを何とかしないとね」
 そう言ってひらりと、カイトは階段をすっ飛ばして河川敷へと飛び降りた。

「ちっす!インスタント巡礼士のご歴々、いい筋肉だね。世界のために鍛えてるの?」
 いきなりのインスタント呼ばわりだった。
 上着を脱ぎ捨て己の肉体を誇示するカイト。
「ふむ、インスタントは技術立国日本の誇るべき食品加工術! しかし三分でできるモノと我が筋肉を比べられては困るな!」
 いきなり話が通じていた。
 負けじとランニングシャツを破り捨て筋肉を盛り上げる男――肉守。
「通じて……るべか?」
 こたんが思わず首を傾げる。悠がアルカイックスマイルで首を振る。
「すっごい筋肉だねぇー。相当鍛錬を積んで来たんじゃないですか?」
「私、マッチョな方に憧れを抱いておりまして……」
 ささっと笑顔で芽衣と那美がその筋肉を褒めちぎる。
(「さて、相手はどう出るかな……?」)
 了が見た感じ、第一印象は良く印象付けられたようである。
「さすが肉守さん、リーダーだけあって他の方よりも更に輝いて見えますねー。写真を撮りたいんでポーズを取ってもらえますか?」
「あ、どうぞ! こんな感じで?」
 芽衣のカメラのフラッシュに合わせて歯を輝かせる肉守。
「世界救済とか叫んどったけど、詳しい話聞かせてくれへん?」
「む? 詳しい話?」
 凛々花に続けて、芽衣がさっとメモを手にする。
「世界を救うヒーローにインタビューってね。それで、天啓を受けた時はどう思いました?」
「世界をより良くする為にこの筋肉を使えると、歓喜に震えました!」
「なるほどなるほど。みなさん同じ天啓を受けられたのですか? それともリーダーの肉守さんは特別な天啓を受けられたとか!?」
 どうなんです? と肉守の脇腹をうりうりすれば、「世界を救う目的は同じです」と胸を張る肉守。
「ねえ、君達は、世界を救う為に天啓をうけたんだよね? これからどうして、どうやって世界を救う予定なの?」
「まず今は力を高めます。次の目標は、天啓が教えてくれるでしょう」
 カイトの問いには長身の少女が微笑んで答える。
「誰からこの力をもらってどこにいくのかとかそういう予定はあるのかな?」
「天啓が教えてくれるぜ!」
 まだ幼げな少年が、ガッツポーズ。
「その天啓って、どんな感じやろか?」
「こう、銀の雨が降ってきて、世界を救えって言ってくれる感じかな!」
 ポニーテールの少女が凛々花に笑顔で頷いた。
「どうやって能力に覚醒したのかな?」
「天啓を受けた瞬間力がみなぎり、使い方を理解した」
 少年めいた女性が、けれど可愛らしい声で答える。
「筋トレは障害排除するには役立つだろうけど……それだけじゃ『救う』ことにはならないよね?」
 そう懐疑的に尋ねた悠には、「まずは身体を鍛え、力を高める様にと天啓がおっしゃるのです」と眼鏡の少年が柔らかに言った。
「皆さんのような美しい筋肉を持った方こそ彼に選ばれるのですね。私のようにひ弱な者でも神は救ってくれるのでしょうか?」
 瞳を潤ませる那美に、純朴そうな青年が「て、天啓を下さった方が考えることですが、僕はあなたを救いたいです」と顔を赤くする。
「世界の危機とやらはいつ頃、どの辺りで起きるのでしょうか? 私たち一般人はどうしたらいいのでしょうか?」
 さらに問いを重ねる那美に、「時が来れば天啓が教えてくれる」と肉守は大きな胸筋を張った。
「その力について、どう思っているんだい?」
 アラストールが少し方向を変えて尋ねてみる。天啓についてどう感じているのか、彼等はどうしたいのか。
「世界を救い、筋肉を生かす素晴らしい力だ。今は天啓に従う事こそ我らが望み」
 とりあえず筋肉の部分は華麗にスルーするアラストール。
 どこか和やかな雰囲気は――けれど唐突に、途切れた。
「僕達も世界を救う為に戦っているんだ。目的は同じだし、いろいろ話を聞かせてくれないかな?」
「私達は世界を救う為に、これ以上の悲しみを起こさない為に戦っている。お互いの意見や考えを共用すればより良い方法が生まれるかもしれない」
 そうカイトと尚人が言った瞬間。
「む!?」
「もしやあなた方も天啓を受けた戦士!?」
 少年少女の瞳に、狂信的な輝きが宿ったのを能力者達は感じた。
「いや、僕等は銀誓館学園に所属する世界結界の守り手、君達と目的は同じ――!」
 突如訪れた危機の気配に、口を挟んだアラストールの体は咄嗟に反応する。
 二振りの剣が素早く交差し、丸盾の衝撃を食い止める。
「――我々と違う力を振るう者、つまりは反逆者か!」
「危ない!」
 了が咄嗟に叫んだ一瞬。
 その一瞬で能力者達はイグニッションと叫んだ。
 その一瞬で巡礼士達は近くの相手に体当たりを、非物質化させた武器を叩きつけた。
「ウチ等は、アンタ達とも仲良くしたいんよぉ。それでも、やるん?」
「黙れ、反逆者め!」
 凛々花はそっと溜息を吐く。恐らくは、全ての神秘を根絶しようとする意志が、彼らにも受け継がれているのだろう。
「やむをえないか。ならば」
 駆け出した尚人は、竪琴使いの少年に咄嗟に鋭い蹴りを放っていた。後方からエリアラが、素早くアルファリスと己の小指を赤い糸でつなぐ。
「これが私達の絆の力……能動型斥力力場、展開……」
 極細い赤の軌跡を残しながらアルファリスが地を蹴った。同じように離れた位置から千枝が素早く、雑霊の塊を少年へと叩きつける。真ケットシー・ワンダラーのヤマブキが杖を回して踊って見せた。
「何だ、この化け物達は!」
 己が心から愛し、信頼を寄せるミナを『化け物』と呼ばれ、了が掌に食い込むほどに弓を握る。その怒りは、同じ使役使いであるエリアラと千枝も同じであった。
 けれどそれを表情に出すまいと、了は冷静に舞を始める。
「ミナ、行くぞ!」
「も……きゅい、もきゅー!」
 ミナが現れたのは、カイトのすぐそば。一瞬ぽかんとしたミナだったが、了の指示を思い出したのか慌てて頷きスパークを散らす。
「荒事はおこしたくないんだけどね!」
 カイトが手を上げれば、現れるのは無数の殺戮の猟犬。敵全てを食い荒らすその勢いに、巡礼士達が浮足立つ。
 さらに、凛々花が呼んだのは血を喰らい尽くす逆十字。那美が虎の紋をまとい、やや横に離れつつ全員を舞の範囲に収める。
 芽衣の指が武器に現れた弦を勢いよく弾き、少年少女の体を音によって縛り上げる。
「……刃や拳での交渉は最後の手段なんだがな」
「仕方ないね〜。黙ってやられるわけにはいかないからね?」
 前線を押し上げるようにアラストールと悠が前に出る。白燐蟲を剣に宿すアラストールと、構えを取る悠に、ポニーテールの少女が戦旗を咄嗟に振るおうとした。
 それを、肉守が「待て」と呼び止める。
「サヨ、まず幻影兵団を!」
「え、は、はい!」
 慌てて呼び出された幻影兵は、巡礼士達全員の体に纏わりつく。
 悠が若干悔しげに眉をひそめた。反戦歌を用意していれば効果的だったろうが、ないものは仕方ない。
「怒りに身を任せず、天啓の導きを受け止めるため確実な勝利を! 後方にいる者から狙え! 集中攻撃!」
「「「了解!」」」
 口火を切った肉守の体当たりが虚空を駆け、千枝の体にぶつかる。次々に集まる攻撃の合間に、ヤマブキが必死に魔力を送り傷を癒す。
 目に入った血を拭い、大丈夫と微笑んでから、千枝は巡礼士達に向き直る。
「急に巡礼士の力や知識を手に入れて、世界の見え方変わっちゃった……?」
 自分も三、四年前は一般人だったから、少しはわかる気がすると必死に声を張り上げる千枝に、「つまり反逆者に堕落したか!」と竪琴の、戦旗の攻撃が集まる。
「こたんちゃん、回復頼むわ!」
「おー!」
 凛々花に促され、こたんが情熱ビームを千枝に送る。さらに二撃を必死に耐え、那美が降ろした土蜘蛛の祖霊を身に受けて一撃ガードし、最後にゴーストイグニッション。
「でも気づいて? 今のあなた達に見えてる事だけが全てじゃない。世界はもっと多くの可能性を秘めてる筈だよ」
 天啓に突き動かされ、狂信者と化した彼らに何とか届けと、千枝は必死に呼びかける。
 集中攻撃を取る敵に対し、能力者達が取るのも同じ戦術。
「例え強い信念を持っていようとも、力を持っていようとも、負けてあげるわけにはいかない。何故なら……」
 悠が素早く黒影剣で斬りかかれば、同じ相手に尚人が龍顎拳を叩きつける。
「角度が甘い。あと、体の作り込み。表情が所々で硬くなったりするのも減点材料だね」
「悠さんなんでそんなに詳しいん……?」
 悠は意味深に口の端を吊り上げてみせた。
 そこにさらに芽衣がダークハンドを重ね、カイトが零下に染めた大鎌を振り下ろし、エリアラから黄金の鎧を受けたアルファリスが拳を固め殴り飛ばす。
「何をしようとしてるのか……わからないけど……世界の当座の危機は……一旦去って……」
 エリアラの脳裏に、本気で世界を滅ぼそうとする敵に本気で立ち向かい、勝利した戦いが浮かぶ。
「脅威への対策……考える時間はあるんだから……勝手に限界決めたりとかだったら……止める、から……」
 心から、声を振り絞り――漆黒の弾丸を、放つ。
「大切な人達が……居なくなるのは、嫌……!」
「っ!」
 その語調に息を呑んだ少年が、漆黒の弾丸に呑まれ倒れる。
「違う者から狙え! 紅い瞳の女性を!」
 咄嗟に声を張り上げた肉守の言葉に、凛々花は挑戦的に視線を返す。
 攻撃回避攻撃ガード回避攻撃ノーブルブラッド。
「……! ミナ、回復を!」
「きゅいっ!」
 了に指示を受けミナが駆ける。了の慈愛の舞で禁癒を祓われ、ミナに癒しを受け、ありがとなぁ、と微笑み、凛々花は再び集中攻撃を受け流しながら身を躍らせた。
 そのまま那美の後ろに回り、そこから逆十字を呼び血を吸い上げる。
「戦うの自分の意志なん?」
「天啓に従うのが我らの意志だ!」
 問いかけに、即座に肉守が答え、巡礼士達が頷く。
「世界を救うのは人々を守る為だ。世界を救う為に人々の犠牲も厭わないというのは目的と手段を履き違えてやがるぜ!」
 芽衣が勢いよく闇の手を伸ばす。天啓に導かれ真っ直ぐになりすぎた彼らを、一度撃ち砕く為に。
 さ、と少女の後ろに回り、尚人が指を滑らせた。
「切り札を切らせてもらった」
 破邪顕正、と強く言い放てば、少女の体が倒れる。
「私達一人一人は微力だけど無力なんかじゃない。今までにも何度も力を合わせて無理な状況を覆してきたんだから!」
 未来は勝手に決めつけて限界線を引き、切り捨てるものじゃない。
 きっぱりと千代は言い、最大限に強化した雑霊の力を解き放つ。
 巡礼士達が一人、また一人減る度に、能力者達は戦力を減らすことなく趨勢を己の側に傾けて行く。
 そしてやがて――肉守が、地響きを立てて地に伏せた。

「ごめんな、悪いようにはしないから、事情を聴きたいんだ」
 カイトがそう言って、既に力を失った彼らから話を聞く。けれどやはり、彼らの目的地などを知る事はできなかった。
「特殊な力を失ってもあなた方の正義の心は健在なハズ。これからも世界の為に出来ることを頑張って下さいね」
 那美がそっと微笑めば、再び純朴そうな青年が顔を赤くする。
「君達には力はなくなったけど、僕達に託してみることはできないかな?」
「……いや、その方がいいのかもしれない」
 少し考え、肉守は了にそう応える。
「本当に世界の事考えるなら、銀誓館で色々知って欲しい……」
 今は既に一般人に戻った彼らに、教えることができるかはわからないけれど。
「まあ、あれだ。天から超常の力を与えられても、これまでの積み重ねが足りなかったら、勝つことはできない……ということで♪」
 大丈夫。それまでの世界は、わたし達が守るから。
 そう言って、伸ばした悠の手に。
 肉守は、託すように手を重ね、銀誓館への護送を受け入れた。


マスター:旅望かなた 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2012/05/12
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