神の左手争奪戦:掴め! 銀河の果てで大勝利!!


<オープニング>


 2012年6月17日。
 熾烈を極めた概念世界の戦いは、「生と死を分かつもの」の消滅により決着した。
 等活地獄から無間地獄まで到る強固な防御陣も、銀誓館学園、妖狐、悪路王軍の共同軍の前に脆くも崩れ去り、生と死の境界線は、ここに失われたのだ。

 境界線の先に広がっていたのは『死の領域』。
 この宇宙の中枢に連なる、今だ生命の息吹に侵されていない、『清浄』なる世界。
 これが、宇宙の本来の姿だったのだ。
 しかし、今。この清浄に、さざなみの如き何かが広がりつつあった。

 それは、生命の息吹。
 科学的に信じられるあらゆる手順を無視しながら、しかし誰もが確実に感じられる、生きとし生けるものの世界特有の息吹が、死の領域を侵食してゆく。
 無間の空間が歪み、脈動するかのように蠢く。それは美しくもあり、醜くもあった。
 能力者達の中には、天空の島で知識を秘蔵せし書庫が言った『宇宙を生命で満たせばよい』という言葉を思いだした者もいた。

「このまま、生命の無かった世界に生命が満ちれば、それが、異形を滅ぼす事になるのだろうか?」
 その呟きは、答えを求めるものでは無かっただろう。
 だが、しかし。
『その通りだ、銀誓館学園の諸君』
 その問いに答える者が、存在したのである。

「ラ、ランドルフ?」
 驚き見開く眼。だが、見間違いでは無い。
 それは幻影……「生と死を分かつもの」によって創造され、その死と共に消えゆく運命にあった幻影のランドルフ……聖骸布をたなびかせ、聖杯剣ランドルフを携えた彼が、そこに立っていたのだ。

『私は幻だが、どうやら誰かが、生命を分け与えてくれたらしい』
「ランドルフ……!」
『この結果が、そしてこの私が今ある事こそが、お前達の強さなのだ、銀誓館。
 お前達に【選択】など必要なかったのだ。
 ……悩みながら、もがきながら、全てを手に入れんとする。
 それこそがまさに≪生命賛歌≫。それでこそ、銀誓館学園だったのだ。
 お前達に選択を迫ったのは、私の間違いだった』

 そして、静かにランドルフを見つめる能力者達を前に、言葉を続ける。
『生と死を分かつものが失われた以上、もはやこの宇宙のどこにも、異形の安住できる場所は無い。ならば、≪奴≫の目的はひとつだ。ディアボロスランサーを破壊する為に、まずは神の左手を手中に収めんとするだろう』

「ですが、神の左手は宇宙にあるのですよね? 私達には、そこに行く手段が無い」
 能力者は、ランドルフの言葉が嘘とは断じなかったが、対応可能とも思えず、訝しげに答えを返す。

『ふふ、だから言っただろう? この私が今ある事こそが、お前達の強さだと。
 これは聖杯剣ランドルフ。斬った者の力を奪う、私の切り札だ。
 本当は、万一の時に≪伯爵≫を斬るために作ったのだが、分からないものだな』

 そしてランドルフが聖杯剣を振るったのは、
 自我を失いただの転移門と化していた、無間域を漂う巨大ルルモードであった。

 一撃! ルルモードは聖杯剣に斬られ、完全に消滅した。
 同時に、聖杯剣がその姿を変え、刀身が渦のように蠢き始める。

『これで、この剣は≪転移剣ランドルフ≫となった。この剣による転移は、ルルモードの意志によって転移先を歪められることはない。
 だが、使用できるのは今、ただ1度だけだ。この剣は一度に200有余人を斬ることで、その者達を神の左手の場所まで転送し、事を終えたら銀誓館学園に帰還させる。
 これを振り終えたら、今度こそ俺は完全に消えることになるが……。
 さあ、志願者は居るか?』

 宇宙に浮かぶ浮島に足を踏み入れた、概ね三種類の姿を持つ宇宙ゴーストたち。
 相対するは、白銀の武装を持つ真のシルバーレインただ一人。神の左手を守る形で無数に散らばった浮島を護るものとして、ただただ宇宙ゴーストたちを迎え撃つ。
 二足歩行の鳥のようなゴーストには素早い動きで翻弄された後に大きな槍で突付かれて、蝙蝠に似たゴーストには朧気な動きに騙された後に刃が如き羽で切り裂かれる。朧に揺蕩う影のようなゴーストには力強い呪詛の言葉を囁かれた。
 されど銀の輝きは鈍らない。槍に似た巨大な得物を振り回し、近づく宇宙ゴーストたちを一掃する。数に押され、いずれ倒れてしまうかもしれない予兆を感じていたとしても……。
「――?」
 不意に怪しい輝きが広がった。
 真のシルバーレインも、宇宙ゴーストも光の在り処を注視した。
 飛び出してくるは銀誓館の戦士たち。
 神の左手を求めてやって来た!
「それじゃ、始めましょうか」
 戦力分析もそこそこに、春宮・静音(バトルマニアレディ・bn0097)が手を打ち合わせる。
 乾いた音が響くと共に、三勢力による戦いの開幕が告げられた!

マスター:飛翔優 紹介ページ
 さあ、始めましょう。
 勝利によって導かれた、遥かな宇宙での決戦を!


 戦場となる浮島には真のシルバーレイン。そして、多数の宇宙ゴーストが存在します。
 真のシルバーレインは一体のみ。
 対する宇宙ゴーストの構成は、二足歩行の鳥型、コウモリ型、影のような個体、がそれぞれ七体ずつの計二十一体。
 それぞれ二種の能力値に特化した能力を持っており、力量も高めです。また、単純な攻撃しか持ちあわせていません。その代わり、純粋な威力が高めです。


 戦場となるのは小さな浮島の一つですが、戦場としての広さは申し分ありません。


 真のシルバーレインは強敵です。しかし、宇宙ゴーストは数が多いため、放っておけば撃破されてしまうでしょう。
 また、真のシルバーレインと宇宙ゴーストは、能力者が仲間、あるいは本人を攻撃しない限り、能力者を攻撃することはありません。

 能力者が真のシルバーレインに味方して全力で宇宙ゴーストと戦った場合、宇宙ゴーストを撃破することができます。しかし、その後に真のシルバーレインと戦闘を行わなければなりません。
 一方、戦闘を放置した場合、真のシルバーレインは三割程度の宇宙ゴーストを倒した後に敗北します。その後は残存宇宙ゴーストとの戦闘になりますが、個体数や力量の関係上苦戦を強いられるでしょう。
 もちろん、真のシルバーレインの力を利用しつつ、宇宙ゴーストを撃破、かつ真のシルバーレインが宇宙ゴーストと相打ちになるような展開も可能です。


 すべての敵を掃討すると、神の左手を獲得し、転移門ルルモードを利用して持ち帰ることができます。

 戦闘が不利になった場合は、同様に転移門ルルモードを利用して撤退することが可能です。しかし、その場合残された敵は他の戦場の援軍となります。素早く戦闘に勝利して余力がある場合は、敗北した戦場の敵を引き受けて戦うことになるかもしれません。


 春宮静音が参加しております。
 気合十分、死闘を楽しむ所存。
 基本的にクレセントファング奥義を仕掛けていくかと思います。

 それでは皆様、ご武運を!

参加者
小笠原・宏道(野球侍・b08417)
堂真・久狼(混沌の羽・b12981)
不利動・明(大一大万大吉・b14416)
ホーリィ・ランプフィールド(インビジブルスマイル・b18301)
文月・風華(暁天の巫女・b50869)
レンフィート・ディアレスト(ノブリスエゴイズム・b69074)
遠野・玉藻(金色の天井送り・b76358)
雨御・静夢(謹猟区域・b77220)
NPC:春宮・静音(バトルマニアレディ・bn0097)




<リプレイ>

●託された思い
 沈黙が、不利動・明(大一大万大吉・b14416)らを出迎えた。
 立ち上る砂煙を戦いの残滓として漂わせる静寂が、銀の左腕へと至るための浮島に訪れた。
「……」
 敵か味方かを見極めようとしているのだろう。宇宙ゴーストの群れも真のシルバーレインも静止して、彼らの観察を開始した。
 問題ないと、明は無骨な長ドスを抜いていく。残された希望を、託された思いを無駄にしないため、必ず神の左手を手に入れるとの誓いを立て、己の力を高めていく。
 他の者たちも同様に、己の強化に終始した。
 故に今は害意がないと判断したか、宇宙ゴーストの群れが真のシルバーレインへの攻撃を再開する。
 二足歩行の鳥が突き出す槍撃を、槍とも剣とも思しき武器が打ち払う。蝙蝠がフェイントを交えながら放つ翼による一撃は銀色の鎧が容易く弾いた。影に歪な怨念を吹きこまれた際にすら、真のシルバーレインの動きは淀まない。
 武器を縦に振り下ろし、ゴーストの群れを二つに割る。主に蝙蝠たちの体の一部を奪っていく。
「……あいつらは神秘的な力に弱いみたいね。影も、力強い攻撃に対する耐性あり、か」
 頬に虎の紋様を浮かべつつ、遠野・玉藻(金色の天井送り・b76358)は観察した。
 宇宙ゴーストたちが何を得意としているのかを。
 何を弱点としているのかを。
 更に、影の呪詛は麻痺や毒などそういった被害をもたらすものではないのだとも、続く猛攻によって示された。
 ならば純粋な破壊力のみに注意していれば良いと、彼女は小さな息を吐く。
 戦場に、新たな音が生まれていく。
「……さて」
 それから十秒ほどの時を経て、陣の形成が完了した。
 彼らの選んだ本陣は、真のシルバーレインの後方。宇宙ゴーストたちと己らとで挟み撃ちをする形になる場所だ……。
「それでは、参りましょう」
 それは戦闘開始から三十秒ほど。真のシルバーレインが影を一体屠った時、小笠原・宏道(野球侍・b08417)が影を赤く染め上げる。
 狙いは二足歩行の鳥。
 現存する宇宙ゴースト、二足歩行の鳥七体、蝙蝠七体、影六体の計二十体の中でも、もっとも手近にいる相手だったから……。
 ……討伐の決意を胸に刻んだまま放てし影の腕が、二足歩行の鳥の背後へと到達。驚きながらも素早く反応した二足歩行の鳥操る槍に散らされてしまったけれど、敵意を示すのには十二分。
 件の鳥を含めた個体が三体、蝙蝠が三体、影が二体、彼らへと意識を切り替える。
 虚空を走りはじめたけれど、距離を開けていたことが幸いしすぐに到達されることはない。
「……誇りにかけて、絶対に成功してみせる」
 故に焦らず、慌てず、力だけを雷に込めて、レンフィート・ディアレスト(ノブリスエゴイズム・b69074)は狙いを定めていく。
 向かい来る二足歩行の鳥を撃ち抜くため。
 託された想いを果たすため……!

●未来への戦いは銀河の果てで
 本格的な交戦は、宇宙ゴーストたちとの接敵を果たしてから。
 琥珀色の穂先を最初に攻撃を行った二足歩行の鳥へと向け、堂真・久狼(混沌の羽・b12981)は口を開く。
「それでは戦闘を開始しましょう。ただし、調子に乗って攻撃し過ぎないように」
 軽く笑うと共に得物を氷点下まで凍てつかせ、真っ直ぐに二足歩行の鳥へと突き出した。
 得手とする分野は同質か。柄に弾かれ、その矛先は肉体までは届かない。
 他方、扇状の陣の左側に位置する宏道も一歩前へと踏み出した。
 独楽のように体を回転させ、二足歩行の鳥を二体蝙蝠を一体巻き込んだ。
 されど、振り回す六尺超の野太刀は届かない。穂先に受け流され、あるいは軽妙に舞われて空間のみを切り裂くに留まった。
 後に待つのは反撃のみと知っていたから、回転を止めて野太刀を横に構え直す。
 最初に突き出された槍撃は野太刀で受け止めながら軽く後ろへ飛ぶことで、勢いを完全に相殺した。
 石突きを軸に跳躍してからの落下突撃は振り上げることで打ち払った。
 蝙蝠まではいなせない。左肩を大きく切り裂かれ、仄かに血が滲んでいく。幸い、今はまだ追撃が来ることはなかったけれど。
「はっ」
 春宮・静音(バトルマニアレディ・bn0097)のサマーソルトが影を一体撃ち上げてくれたから。
 同様にというべきか。傍らに立つ文月・風華(暁天の巫女・b50869)が宙舞う蝙蝠へと殴りかかる。
 されど静音以外と同様に回避され、反撃の刃を受けてしまう。
「っ……」
 視界が赤く染まったのは、額に傷を受けたから。
 拭っても、抑えても、止まることのない深手を受けてしまったから。
 だからだろう。覚醒グレートモーラットのぐーちゃんが大急ぎで駆けてきた。傷口を優しく舐めとって、血が流れるほどには塞いでくれた。
 さなかに周囲へと目をやれば、概ね次手への準備を始めていく仲間たち。
 各々が多少の傷を負っているのに対し、ほぼ無傷な様を見せているゴーストたち。
 風華は上手くないと思いながらも、頑張るとの決意を新たにしハイキックを放っていく。
 しかし蝙蝠を捉えられずに空を切り、バランスを大きく崩してしまう。
 先ほどの再現であるかのように、肩へと蝙蝠の翼が食い込んだ。
 宏道も当たらなかった回転突撃を中断し、再び迎え撃つ構えを取っていく。反撃をいなし始めていく。
 その頃にはもう、真のシルバーレインが一体の蝙蝠を砕いていた。
 同じ敵を相手にした上での状況の違いを鑑みて、ホーリィ・ランプフィールド(インビジブルスマイル・b18301)が声を響かせる。
「……少々作戦を切り替えましょう。おそらく、影型の宇宙ゴーストには通じるはず……」
 傍らに浮かぶは蒼く明滅する雷奥義。
 精密なコントロールのもと発射して、影の姿を誤る事なく貫いた。
 ――それは、宇宙ゴーストたちは各々二種の力に優れている。真のシルバーレインレベルの圧倒的な力量差がない限り、弱点をつかぬ限りそうそう有効な打撃が与えられない事を示していて……。

 横を薙ぐように振るわれた槍を長ドスの鞘で受け流し、勢いのまま柄の部分で二足歩行の鳥の背中を明は叩く。
 僅かにバランスを崩していく様を横目に向きを変え、飛び交う蝙蝠を見据えていく。
「確か、お前の弱点はこいつだったな」
 伸ばすは影、黒く禍々しくも穢れはない。
 裂くは腕、裂かれるは翼。蝙蝠は若干バランスを崩しつつ、明へと意識を向け直した。
「蝙蝠ですね、かしこまりました」
 背を向けた蝙蝠を鷲掴み、雨御・静夢(謹猟区域・b77220)が手元へと引き寄せる。
 僅かな肉体に牙を立て、仮初の命を吸っていく。
 影に嫌われていたのが嘘のように、力を容易く取り込めた。動かなくなった蝙蝠が散るころにはもう、傷は一つ残らず消えていた。
 周囲に目をやれば、ホーリィ操る隕石が影を押し潰している。
 玉藻操る九尾は二足歩行の鳥を大地へと縫い止めていた。
 だから自身は蝙蝠の殲滅だけを目指し、再び獲物を見据えていく。
 誰がためというのなら、親友のため。
 大事な人を失いし、大事な人が守ろうとした親友のため。
「……玉藻と一緒ならできるのです!」
 狙う相手は違えど呼吸を重ね、玉藻に合わせて大地を蹴る。蝙蝠だけを滅ぼすため、仮初の命を吸っていく。
 すぐ近く、影の集う場所めがけて再び隕石が落下した。
 操り手たるホーリィが命ずるまま砕け散り、周囲の影を貫いていく。
「これで一体、向こうも……一体、倒したみたいですね」
 真のシルバーレインの側も、二足歩行の鳥を撃破していた。
 宇宙ゴーストの合計数が減っていた。
 どちらを脅威と感じたのか、意思の伺えぬ瞳から読み取ることなどできはしない。
 ただ、蝙蝠と影が一体ずつ彼女たちへと矛先を変えていく。
「……鳥でないのなら、上々です」
 前者が力に、後者が細やかな動きに弱い個体。双方、彼女たちの多くが得意とする分野。
 撃ち抜けると、ホーリィは戦場を見渡した。
 影が各所に散っているから雷の精製を開始して、半ば自由に動きている個体だけに狙いを定めていく。
「……」
 雷に込めるは沢山の思い。多くを乗り越え、連れてきた、これからを目指すための強い想い。
 トリガーを引けば誤ることなく影の下へと向かっていく。回避など許さずえぐり込む。
 ――大丈夫、ちゃんとやっていけるから。その想いを、見守ってくれているはずの人々に伝えるために。

 気づけば、残る敵の数は九体ほど。数に押されてか劣勢に立たされている真のシルバーレインと相対しているのは、二足歩行と影が二体、蝙蝠が一体。
 彼らが相対しているのは、二足歩行二体と蝙蝠一体、影一体。
 蝙蝠の弱点は力、影の弱点は細やかな一撃。双方得意としているはずなのに、技の精度が足らぬか久狼は上手く当てることができないでいた。
 だから二足歩行の鳥を抑えると宣言し、今は守護精霊の加護を用いたサポートに回っている。
 元より噛み合わぬ打撃を受け止め細かなダメージを積み重ね持久戦をもぎ取る……といったタイプなのか、宇宙ゴーストたちの攻撃力は取り立てて高いというものではない。受け止めることができたならかすり傷程度に済ませることができる程度である。
 強いていうならば、序盤戦を劣勢で過ごしたからか傷は多い。他所への救援は諦めなければならないかもしれないと、かれは槍を受け止めた勢いのまま後ろに下がり守護精霊を召喚する。
 距離を埋めるためか、影が一目散に駆けてきた。
 追撃は許さぬと、風華が龍の咆哮が如き力を解放した。
「これで……!」
 衝撃波にさらされ揺らいだ影を、静音の回し蹴りが宇宙の彼方へとかっ飛ばす。
 己等と相対する影の殲滅は完了したけれど、レンフィートは血塗られた逆さ十字を召喚した。
 それ以外、操る力を持たないから。
 削ることさえできれば、後は仲間が滅ぼしてくれるはずだから。
 見えない魔手が蝙蝠を、二足歩行の鳥を撫で上げて、血の召集を駆けていく。抗うか、無視するか、蝙蝠と一体の二足歩行の鳥が動きを変える事は無かったけれど、もう片方の二足歩行の鳥が守りを誤ったか静止した。
 すかさず見えない綱を引き、彼は仮初の命を吸収する。
 吸血鬼の瘴気もまた、従者たる性質も持つ静夢にとっては心地よいものなのか。逆さ十字に触れることも厭わずに、静夢は戦場を駆け抜けた。
「これで……」
 ついでとばかりに蝙蝠を引っ掴み、再び牙を突き立てる。
 消滅の未来を辿らせる。
「さて……」
 喜ぶことも気を緩めることもせず、久狼が正面から二足歩行の鳥と相対した。
 受け止めた後に鍔迫り合い、後方へと押し返した。
 されど追撃は行わず、守護精霊を召喚して仲間たちを癒していく。
「後はサポートを……ですね」
 痛みの消えた腕を持ち上げて、レンフォートは狙うべき対象を指し示した。
 駆ける静音の道標として、放つは蒼き雷の技。
 撃ち抜くは朧な肉体を持つ黒き影。
 眉間を撃ちぬけば、流石に影も形を保てない。前線を埋めようと別の個体が駆ける中、彼は新たな力を練り始める……。

●銀に誓いし戦士たち
 二足歩行の鳥が弱点とする神秘的な力を操れるのは玉藻のみ。関係なく攻めることができるのは静音だけ。
 それでも攻撃を受け止めることはできるから、宏道が野太刀を振り回しながら二足歩行の鳥に吶喊する。大仰な一撃を防がせて、己の存在を刻み付ける。
「九尾展開――掃射!」
 彼への反撃が放たれていくタイミングに合わせ、玉藻が九尾を解き放つ。縦横無尽に暴れさせながら、二足歩行の鳥だけを目指していく。
 平和な学園生活のため、静夢と友に在る未来のため。一分一秒でも早く滅ぼして、この浮島を制圧するために。
 一本目は明後日の方角を貫いた。
 二本目は大地を抉り、三本目は石突きに弾かれ彼方へ向う。
 四本目こそ肩を貫けど、以降はかすめるのみに留まった。
「そこっ!」
 予期せぬ十本目の尾っぽとして、静音が二足歩行の鳥へと飛び込んだ。回し蹴りで頬を張り、首をあらぬ方角へとへし折った。
 残るは一体。明が抑えている個体。
 無理せず、長ドスの先端を滑らせ受け流し、魔法陣を描いていく。攻撃は二人に任せると、正面から対峙し――。
「……向こうは終わった、か」
 ――重々しい金属音とともに、真のシルバーレインが崩れ落ちた。
 二足歩行の鳥が二体、彼らの方へと向かってくる。
 傷の状態は遠目からではわからない。だが、真のシルバーレインと相対していた以上、決して浅くはないダメージを負っているはずだ。
「僕たちが抑えます。まずは、明さんが抑えてるのを倒してください!」
「分かった……」
 レンフィートが、そして久狼が抑えに向かってくれたから、明は改めて目の前の個体に向き直る。
 走り寄ってくる静音を、そして開放された九尾を導くため、槍による刺突を敢えて肉体で受け止めた。
「……これで満足に動けまい」
「っ……」
 救助の為のもっとも適切な方法は、その個体を滅ぼすこと。
 静音が高く飛び上がる。
 玉藻は慎重に狙いを定め、静音が踵を落とすと共に九本の尾を解放した。
 宇宙に煌めくきつね色。大地を叩き、抉りつつ、風の集う場所へと向かっていく。
 満足に動けぬ二足歩行の鳥が避けるすべなど存在しない。脳天をしたたかに打ち据えられた所に土手っ腹を貫かれ、槍を手放し崩れ落ちる。
「……後は」
「ラストスパート。みんな、行くよ!」
 明が己の身を癒すため、魔法陣を描いていく。
 軽く頭を下げた玉藻は向きを変え、レンフィートが抑えている個体だけを見据えていく。
 此度浮かべるは杭のような念動剣。対価を支払い終えるまで、これにて二足歩行の鳥を攻撃しよう。
 大丈夫。数の優位も、策の精度もこちらが上。けが人も、ぐーちゃんたちが癒してくれるはず。
 やがて新たな九尾が二足歩行の鳥を貫いて、宇宙の彼方へと運び去る。
 浮島に訪れし静寂が、彼らの勝利を伝えてくれた。

「無事、倒せたね」
 敵の姿が見えなくなるとともに疲労が一気に訪れたのか、大きな息を吐く。ぐーちゃんが労ってくれているものの、早々癒える疲労ではないのか足がひどく震えていた。
 何よりも序盤で手こずったのが響いてか、各々あまり余裕がない。傷こそ癒しきれるだろうけど、攻撃の術が足りていない。
「一足先に帰りましょう。大丈夫、他の皆さんもきっと倒していてくれているはずです」
「……そうですね。仕方ありません」
 久狼の判断に、静夢は同意しながらも肩を落とす。彼方に広がる浮島へと目を向けて、静かな祈りを捧げていく。
 他所で戦う仲間たちが、無事に帰還できるよう。仲間の誰かが神の左手を入手することができるよう。
 未来のため、銀誓館の勝利で全てが終わるように……。


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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2012/06/29
得票数:カッコいい5 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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