≪魔法使いのたぬ喫茶≫たぬ王と浴衣ネコ


<オープニング>


「お客さんも居なくなったね。そろそろ閉店準備を始めてもいいよ」
「よーし! 今日もお疲れ様でした!!」
「それはまだ早いですよー」
 閉店間際になった海の家では、店員たちが賑やかになっていた。
「資金を集めるために、いきなり海の家を始めようって話になったときはどうなるかと思いましたが、どうにかなるものですね」
 テーブルを拭きながら、智尋は忙しかった日々を思い返す。
「いつ倒れるかと気が気ではありませんでしたけどね……」
 苦笑いしながら、苺子がそっと厨房に目を向ければ、狸の着ぐるみを着た冬華の姿があった。
「きっとあの中には未知のテクノロジーが使われてるんだよ」
「さすがにそれはないと思いますが……」
 あながち、ひなたの言ったことも冗談に聞こえない。
 本当にどういう仕組みなんだろうと、幸樹も考えてみる……。

 ……謎だ。

「どうなってるんでしょうね?」
『狸だから当たり前なのにゃ』
「そういうもの……っ?!」
 振り返った、幸樹の目に不思議なものが映った。
『『狸さーん、焼きそば八つにゃ!』』
「あいよ……もふ!?」
 冬華も驚いて目を見張る。
 そこに居たのはなんとっ! 猫耳と猫グローブをつけた浴衣姿の少女達であった!!
 大小様々。
 下は幼稚園ぐらいから、上は高校生ぐらいまで。
「わっわっ、何あれ?」
「足に鎖が付いているところを見ると地縛霊なんだろうけど」
 譲には何であんな格好をしているの皆目見当もつかない。
「いやん、可愛いい!」
 対照的に、ちか子は目をキラキラとさせている。
 ぎゅっとしたらどんな感じだろう?
 ああ、試してみたい! ……と思ったところで、はっとなった。よく考えてみれば、『そんなこと』を真っ先にしそうな人が居なかったか……いや、居た!

「もふふ、皆纏めてお持ち帰りでござるよヒャッハーッ!」

「「ああっ!」」
 だがもう既に手遅れだ。
 大量の獣っ娘の登場に、冬華はたぬ王モードに切り替わり、思いっきり突っ込んでいった!
「駄目だわ、このたぬき早く何とかしないと……」
 仄夏は溜め息をつきつつ、ふと何か違和感を覚えた。
「あれ……何かおかしい気が」
 冬華に襲われ慌てふためく浴衣ネコ少女たち。
 けれど、微妙に何かが違うような……。
「……あの、あそこに居るのは初瀬部さんではないでしょうか?」
 了に指摘されて目を凝らせば、浴衣ネコ少女たちと同じような格好になったひなたがいた。
「ふっふふふ、イグニッションしたら同じような格好になる装備だったので混ざってみたんだよ」
 えっへんと、ひなたが胸を張る。

 ……ダメだ。何とかしなければいけないのは他にもいた。

『なら、お前も仲間になるにゃ!』
 浴衣ネコ少女がふよふよふよ(?)と思わず守りたくなるような視線をひなたに注いだ。
「………」
「……ひなたさん?」
「ふっふふふ、ボクは故あらば寝返るんだよ!!」
「「魅了された?!」
「ならば、ひなたも纏めてお持ち帰りでござるよヒャッハーッ!」
「「襲われた!!」」
「……もう訳がわかりません」
「でも、何とかしないと」
 色々とまずい。
 というか収拾つかないぞ、これ。
「何とかしましょう!」
「やるしかありませんね」
 頼んだぞ、すべては君たちにかかっている。
 まず、間違いなく。

マスター:てぃーつー 紹介ページ
 お待たせしました。お世話になっています、てぃーつーです。
 さあ、騒ぎましょう! 私も全力で楽しませて頂きます!


 あって無いようなものですが、敵データを。

●浴衣ネコ少女×8
 幼いのから成熟しているのまで皆様のご希望に添います。性格も含め、皆様がプレイングを掛けやすいように指定しておくといいですよ。個人的には言葉足らずの幼女とかお勧め……。
・肉球ぱんち:近接1体にパンチ。名前の割に結構痛いみたいですよ。
・顔洗い:自身のHPを回復させると同時に幸運度チェックが3回行えます。
・思わず守りたくなるような視線:20m1体を魅了します。

●初瀬部・ひなた
 9人目の浴衣ネコ少女(仮)。NPCですが、魅了されています。ネタ重傷させる気、満々なので容赦なくやっちゃうといいですよ。一応は魅了を回復させることも可能ですが戦力にはならないと思います。

 それでは皆様のプレイングをお待ちしています。

参加者
緋島・了(通りすがりのモラりすと・b26806)
真神・智尋(此花咲耶姫・b41226)
式銀・冬華(紅き片翼の絆・b43308)
上房・譲(モヤシっこ・b65255)
冬城・ちか子(疾風旋律空色娘・b76885)
瀬河・苺子(絆に導かれて・b77693)
織銀・仄夏(銀雨の観測者・b79938)
綾川・幸樹(青き薔薇のもふもふ王子・b81542)
NPC:初瀬部・ひなた(陽だまり仔猫・bn0153)




<リプレイ>


「何このカオス?」
 上房・譲(モヤシっこ・b65255)がつぶやきながら旋剣の構えを取った。
 視線の先には荒ぶって荒ぶって! 荒ぶっている! 式銀・冬華(紅き片翼の絆・b43308)がいて、
「拙者はついに至ったのだ! 遠きアヴァロンの地、約束された理想郷へと!!」
 もう完全に目が据わっている!
「みんな纏めてお持ち帰りでござーる!!」
 つまりは、絶賛暴走中だ!!
(「何だろう、このゾクっとした悪寒は……」)
 それを見た、綾川・幸樹(青き薔薇のもふもふ王子・b81542)は嫌なものを感じて、ケルベロスベビーのフィリップに目を遣った。
「うーん、夏風邪かな? ねえ、フィルどーなんだろうね?」
 返事はあったものの、何かを危惧しているような……もう手遅れのような……。
「え? 嵐の前の静けさ……?」
 確かめるべく、幸樹は周りを見渡す。だが、幼く経験も少ない彼に、それを判断しろといっても酷なもの。周りの空気はどんどん怪しくなっているのだが……。
「何が起こっているのか、何でこうなったのか。考えるのは後ですね。まずは冬華先輩を止めないと大惨事になりますし」
 瀬河・苺子(絆に導かれて・b77693)が幸樹に歩み寄って、そのまま前に立つ。
 さすがにあんな獰猛な獣たちの前に放置しておけない。
 特にあんなにも荒ぶっている冬華こと、たぬ王の前には!

「おっと、ボクたちを忘れてもらったら困るのにゃ!」
『『にゃ、にゃにゃ!』』

 今度は初瀬部・ひなた(陽だまり仔猫・bn0153)と、浴衣ネコたちが自己主張を始めた。
 ついでにミュージカル風にダンスまで踊っている。
「あああ……私の同志が一杯」
 で、本業ジョブ的に何か来るものがあるのか、真神・智尋(此花咲耶姫・b41226)は魅了もされてもいないのにちょっと魅了され気味だ……何を言っているか分からないと思うが、察しろ!
(「イヤイヤ、魅了される訳には参りません!! 頑張ってこの状況を何とかせねば……」)
 何とか振り切ろうと首を振って雑念を払う。
「ね、猫さん、か、かわいい」
 でも、横から聞こえてきた幸樹の声についつい視線は浴衣ネコの方へ。
 何かおいでおいでされている気もする……。
「あ、違うよ、フィル。おまえも可愛いって、な、な」
 だが、再び聞こえてきた幸樹の声で、はっ、となった。
 いつの間にか、魅了されていたらしい。
「おまえの可愛さは別格だって。あ、勿論エリザベス(飼い猫)もだって、だ、だから、エリザベスに密告するのはやめてくれー。遊んでくれなくなるからー」
 必死で言い訳をしている幸樹もそうだろうか。
 いずれにせよ、可愛いし、構いたくなるし、何よりしれっと魅了してくる――恐るべし浴衣ネコ!

「……はぁ」

 この状況に、織銀・仄夏(銀雨の観測者・b79938)が深く溜め息を漏らす。
 敵も味方も酷いほどにカオスだ。
 ちらりと横を見れば、
「(ええっと……きっと地縛霊たちには辛い過去が……とか考えちゃいけないんだろうな……)」
 冬城・ちか子(疾風旋律空色娘・b76885)が浴衣ネコに何やら同情している。
 どうして、同じものを見てここまで反応が違うのか?
 何か妙な『磁場』でも働いているのかもしれない。
「……まずはこれで混乱を沈めてみましょう」
 どんな状況だろうと淡々と依頼をこなすのが、仄夏の役目でありスタイルだ。
 狐の耳と尻尾がひょこりと生えて、幻楼の七星光がカオスの中心で瞬く――。


『なんにゃ? これは!』
『………動け、にゃい』
「ぎゃあああ、ボクもだよっ」
 眩い光が消えると、石化を始めた浴衣ネコ+αの姿があった。
 だが、そこに流れ込む強き力!
「らぶあんどぴいーす! 拙者の愛を受けるでござるっ!」
 これぞ、バランス・オブ・ザ・ワールド!
 たぬ王の驚異のアビリティが浴衣ネコ+αを解き放った。
『おおっ、そこのタヌキさんも仲間だったのにゃ!』
「うむ、らぶあんどぴいすだ!」
 次いで、そのまま襲い掛かった!
『にゃんと?!』
 蹂躙につぐ蹂躙!
「もふふ、素晴らしいでござーる!」
『にゃほぅ! そこは弱いの♪』
『にゃにゃ!』
 完全にたぬ王の独壇場だ。
「えーと……ミナ、初瀬部さんは分かるね? あっちには攻撃しちゃ駄目だぞ」
 その間、能力者たちが何もしていないわけがなく。
 緋島・了(通りすがりのモラりすと・b26806)が相棒のモーラットヒーローに作戦を伝える。
(「式銀さんは……まあいいか、頑丈だし死ぬ事はないよね……多分」)
 とりあえず、作戦開始だ。
 何としてもこのカオスに終焉をもたらさなくてはならない。
(「仲間を攻撃するようでとっても心苦しいですが、容赦なく行きますよ」)
 智尋がたぬ王に蹂躙されている浴衣ネコの中心に隕石の魔弾を落とした。
 激突と同時に巻き起こる土煙。
 だが、そこからいくつもの影が飛び出してくる!
『にゃふふふ!』
 軽快な動きを見せる浴衣ネコたちだ。
 そして、ふみゅっと猫ぱんち! もしくはいきなり顔洗いを披露!
「ミナ?!」「神威?!」「フィル?!」
 で、あっという間にモーラットたちとケルベロスベビーが、浴衣ネコの群れにのみ込まれた!
「こんなのが出るって分かって、ここを海の家にした気がするのは気のせいでしょうか?」
 苺子の疑問に、誰かが答える間もなく、溢れた浴衣ネコたちが今度は能力者たちに迫ってくる。
『次はお前たちにゃ!』
 縦横無尽……いや、本能の赴くままに!
「そんな格好で彼を誘惑だなんて許さないんだからねーっ!」
『かく言うあなたは彼氏持ちですにゃ』
 迎撃するちか子を、浴衣ネコ・眼鏡がびしっと指さす。
「だったらどうだっていうのーっ!」
『リア充は袋叩きにして爆破の刑ですにゃ、やれヤンキー!』
『あちしに命令するんじゃにゃい!』
 気が付けば、いつの間にか背後に浴衣ネコ・ヤンキー。
「囲まれた?! 爆破される?!」
『もらったにゃ!』
「――そうはさせない」
 譲がさっと割り込んで、ちか子と背中合わせに。
 直後に浴衣ネコたちが飛び込んできて交錯――、

「ふぎゃああああ!」

「あ、ごめん」
 どうやら、譲が黒影剣でずんばらりんしたのは、ひなただった模様。
『大丈夫かにゃ?!』
「……うん、なんとか。こうなったらアレをやるよ!」
 でも、もう完全に浴衣ネコの仲間だ。
「……ひなた先輩恐るべし」
「完全に一員ですね」
 先ほどから、了の慈愛の舞を受けているが直ぐさま魅了されて敵に回っている辺り、どうしても確信犯のように見えてしまう。
「……はっ! また、魅了に」
 一方、必死で耐えている智尋も魅了されてばかりだ。
 というか狙われているぞ!
「どうして私ばかり……?」
『ああ、なんか猫っぽいし、幸薄そうだし、いわゆる格好のカモにゃ。というわけで仲間ににゃれ!』
「……う、なんかメタなことを言われました。でも嫌です!」
 ならば、激突。
「……わかりましたのにゃ!」
 そして、魅了された。

「いい加減にしてください!」

 苺子の怒声が響き渡るのと同時に、ファンガスプリズンが広がった。
 上手いぐあいに効果を発揮して、じたばたと網の中でもがく浴衣ネコ+α。
「……私まで」
 とうとう、智尋も一緒に捕まっている。
「ごめんなさい。でも、これでしばらくは大丈夫だと思います」
 だが、ほっとしたのも束の間、
「もふるでござーるっ!」
 今度はたぬ王の襲来だ。
 狙いは一直線に狼の着ぐるみを着用した幸樹へと。
「冬華さん、しっかりしてくださいー」
 幸樹は無謀にも駆け寄って止めようとするが、
「……なんでしょうか、目つきが危険な気がするんですけど、って、ぎゃああああーーー」
 止められるはずもなかった!
 で、着ぐるみ同士で、ぎゅぎゅもふもふ、ぎゅぎゅもふもふ。
「愛いのう愛いのーう!」 
 大喜びのたぬ王に対し、幸樹はもうされるがまま。
「なんかいい匂いが……でも痛い」
 さらば、ショタっ子。
 僕たちはキミの犠牲を忘れない。
「まだ生きてますよー!」

「……って、何してるんですかぁぁぁぁ!!」

 そこに苺子が怒声と共に、たぬ王へロケットスマッシュを打ち込んだ!
 直撃だ。されど、たぬ王は平然と言う。
「もちろん拙者の愛を与えているでござるっ!」
「そうじゃありませんーーーー!」
 もう話が通じる状態ではない。
「……まったく、コレさえ無ければ立派な団長なのに……早く何とかしないと」
 仄夏が念動剣で幸樹を逃がすために援護射撃を飛ばそうとしたところに、
「ボクたち復活!」
『『にゃにゃにゃ!』』
 浴衣ネコ+αまで網から逃れてきた。
「というわけで突撃にゃ!」
『『にゃー!』』
「いやん来ないでそんな瞳で見ないで、可愛い姿のままお空に行って〜っ!」
『………うっ……う、ごめん……にゃさい』
『あーーん、お姉ちゃんがいじめるにゃ〜』
 必死に振り払う、ちか子に近寄ってきたのは、浴衣ネコ・舌ったらずと、浴衣ネコ・泣き虫だ。
 何というか、あざとい!
「これぞ、弱点を突いた見事な攻撃なのにゃ!」
「うわああんっ、ひなた先輩のばかっ」
 どうやら情報をリークしているヤツまでいる。
「……おそらくですが僕では冬華さんの愛は2回くらい受け止めるのが限界です。……そして、これが2回目です。……あと、ひなさんまで僕に手を伸ばしてきて」
「「ああっ!」」
 いつの間にか、幸樹がグロッキーに。
「にゃふふふっ、ボクたちの勝利にゃ!」

 こうして、残った能力者たちも浴衣ネコとたぬ王の軍門に下ったのにゃ。
 かわいいは正義にゃ。
 そして、今日もボクたちは新たな侵略を――。

「変なナレーションを入れないでください!」
「というか、真面目に戦闘していたところを全部ナレーションで塗りつぶされました!」
『にゃふふふ、真面目に戦えると思うにゃ!』
「ええい、ケモノっ娘に興味は無い!」
 譲が突出してきた浴衣ネコに切りかかる。
『こっちだって興味ないのにゃ。というかお断りなのにゃ。誤解しないで欲しいのにゃ』
「あっ、ツンデレ」
『違うのにゃーーー!』
「何てふざけたゴーストなんでしょう……」
「皆さん正気を保ってください」
 了が再び慈愛の舞を踊る。
 このままペースを崩されるわけには行かない。
(「というか、一気に変な方向に持っていかれそうで困るよ」)
 そんな危惧が脳裏を掠めたところで異変が起こった。
 遂に均衡が崩れ、ちか子の放った一撃が浴衣ネコ・眼鏡を倒したのである!

『……みんな、眼鏡を大事にするにゃ』

「わけが分からないよっ!」
 が、本当の異変はここから。
「もふるぅあああああっ!?」
 たぬ王が奮い立った。
「おのれ人間めぇぇぇ! 拙者の理想郷を破壊するつもりでござるかぁぁぁ!!」
 怒りのままに込み上がってきた力は混沌へと変貌し、周囲を巻き込んでいく。
「やらせん、やらせんでござる!」


 混沌の嵐が能力者たちを痛めつける。
 更に今がチャンスと一斉に襲い掛かってくる浴衣ネコたち。
「……いい加減にして」
 再び戦場に、仄夏が起こした七星光の瞬きが広がっていき、
「本気で怒りますよ……?」
 傍らでは同じように怒りの限界を超えた、苺子がハンティングモードを取って狙いを絞っている。
 もちろん相手は、諸悪の権化たぬ王(?)。
「……そろそろ収拾をつけないと」
「だが、容易く拙者を倒せると思うなぁぁぁ!」
「いいえ、式銀さん終わりの時間ですよ」
 にこっと笑って、了の放った破魔矢がたぬ王を射抜く。
「ぐああっ」
「……矢ダヌキ?」

「おのれぇぇぇ! まだでござる!!」

「頭、冷やしましょうか?」
「もう終わりにしましょう」
 そこに苺子が蔑む様な目でロケットスマッシュを、智尋が止むを得ないと霧影爆水掌を。
「ぐふっ」
 で、吹っ飛んできたところには、ちか子が。
「あっ、蹴るのは影分身の方だから!」
 妙な言い訳も加えて、グラインドスピンで一気に巻き込む!

「ぐおおぉぉ、もふもふが………むっ!」

 その時、たぬ王の視界に入ったのは神威。
「もきゅ!」
 このまま、たぬ王を野放しにはできないとチャンスをうかがっていたのだ。
 そして、今がその時!
 飛び上がって必殺の火花を!
「もきゅ!」
 更にはミナも続いた!
 スパークやら火花やら夏に相応しい光が一気に夜を染め上げる。
 ついでに言うと、たぬ王も染め上げられ、
「せ、拙者の理想郷が……ガク」
 ようやく轟沈。
「もきゅ〜」
「大丈夫だったかい、神威」
「もきゅー!」
 で、今回のフィニッシャーはたぬ王の相手がよほど怖かったのか、半泣き状態になってご主人様にしがみ付いていた。


 たぬ王が倒れた後は、さしたる手間も無くあっさりと片がついた。
「……結局のところ一番邪魔になっていたわけですね」
「まあ、そう言わずに。治療はしておきましょう」
 了が歩み寄って、冬華と、ひなたに応急手当を施した。
「……とはいえ、少し頭を冷やした方が良さそうですね?」
 仄夏の言葉に仲間から苦笑が浮かぶ。
 そして、誰も止めぬまま仄夏によって、冬華と、ひなたはそのまま海にドボーンと落とされ、
「ぬああっ?! ここどこ? 傷口にしみる!」
「理想郷に至った気がするが、あれは夢だったのか……残念だ」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ! 間違いなくボクたち重傷負ってるよ!」
 二人がすったもんだの末に陸に上がってくると今度は、苺子が出迎える。
「さあ、二人ともそこに正座です」
「「は、はい!」」
 蔑む様な目に二人は心底、震え上がった。
「どれだけ迷惑をかけたと思ってるんですか!」
「一体何のことを言っているんだ?」
「忘れたとは言わせませんよ! 忘れたと言うなら思い出せてあげます!!」
「いや、苺子ちゃん。あれもいいサプライズかなと……思わない? 思わないよね、あっはははは」
「思うわけないでしょう!」
「……たぬ王様はともかく……ひなた先輩恐るべし……」
 ちか子がそっと溜め息を。
 そして萎縮する二人を尻目に、苺子は更にヒートアップしている。
「……ああ」
 まあ仕方ないよね、と了も軽く溜め息を漏らした。
 これも自業自得。
 成るようになるだろうと思いながら夜空を見上げれば、そこには雲ひとつない星空が。
「……ミナ、明日も良い天気になりそうだな」
「もきゅー」
 喧騒を忘れて、のんびり海でも見ようかと視線を向けたところに、疲弊した二つの影を見つけた。
「(……女性の愛の形って痛いですね)」
「(………ああ、とんでもないことを)」
 肉体的にも精神的にもぼろぼろになった幸樹と、失態に落ち込む智尋の姿だった。
「閉店作業を済ませたら神威にケーキを買いに行く予定だったけど、みんなで行こうか?」
 譲が提案すると、了と、ちか子、仄夏も同意。
 ぼろぼろになったり、落ち込んだりしている二人を拾って掃除を再開する。
「今日は徹底的にやります!」
「どうかお許しを〜。神様、仏様、苺子様」
「ダメですーーーー!!」
 後ろから聞こえてく、お説教をBGMに。


マスター:てぃーつー 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2012/09/07
得票数:楽しい10  笑える4 
冒険結果:成功!
重傷者:式銀・冬華(紅き片翼の絆・b43308)  初瀬部・ひなた(陽だまり仔猫・bn0153)(NPC) 
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。