<運動会2012>最終競技・棒倒し(小中学生の部)


<オープニング>


 一時の平穏が訪れた銀誓館にも、この熱い日が再びやって来る。銀誓館が九つに別れ、熾烈な戦いを繰り広げる。
 それは運動会!

 棒倒しの巨大な棒がグラウンドに建てられる頃、運動会は最終局面を迎える。
 棒倒し。
 それはこれまで、運動会の一位を大きく左右してきた最終競技である。また、数々のドラマを生み出し生徒達を熱い戦いへと駆り出した競技でもあった。
 この競技に最も感心を抱いていたのが、競技の監視役である毒島・修二である。
 勝つか負けるか、それはこの棒一つにかかっている。
 毒島は、戦上に立つ鬼軍曹のような形相で仁王立ちをして待っていた。
「今回の棒倒しは、小中学生と高校生で分けて執り行う事となった!」
 いつもと違う小さな瞳にきらきらと見つめられて、毒島はやりづらそうに顔を赤くする。
 ……反応が高校生と違う……。
 めんどくせ。
 よっしゃーとりあえず毒島先輩は参加してくれるよね。
 そういった反応は、ひとまずこの若々しい生徒達からは聞こえてこない。
「せんせー、ルールはなんですか?」
 生徒が手を上げて聞くと、毒島は棒倒しのルールについて説明しはじめた。
 棒倒しは、自軍の棒を倒されたら負けである。

 1.倒されずに残った順から高ポイントを得る。
 2.同順の場合、同ポイントを得る。

「それと……倒す為のいかなる方法も認めるが、大規模な殴り合いになったら俺が鎮圧に入る。それと……何でもいいとは言ったが、やったら駄目な事くらいは分かるよな?」
 暗に本業能力は使うな、という毒島の無言の威圧であった。
 今回毒島は、どのチームにも加担しない。
 ちびっこといえど、そこにあるのは戦いである。
「この競技で負ける事、すなわち優勝はないという事だ。気合い入れてかかれ!」
 毒島は生徒達に号令をかけた。

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参加者
NPC:毒島・修二(紅龍拳士・bn0013)




<リプレイ>

 日が傾いてくる頃、運動会は終盤にさしかかっていた。この時点での一位は7G蘭、二位が1A梅で三位が5E蓮、更に6F梅、3C桜、4D椿、2B桃、9I薔薇、最下位が8H百合となっていた。
「おおー一位!」
 高橋・二二子(アナザージオタクシス・b83417)が目をきらきらと輝かせながら、仲間を振り返った。
 一位と聞いて、西野・御子(中学生真処刑人・b16555)と榛菜・織姫(勝利を照らす織女星・b57270)、そして二二子は手を取り合ってはしゃいだ。後はこの点数と棒を守り切れば、7G蘭の優勝は確実のものとなろう。
 だが、御子はここで護りに転じるような性格ではない。
「ここに居ても他のチームが攻めてくるんだから、ここは攻めるべし!」
 びしっと御子は他のチームを指して叫んだ。
 その先には二位の1A梅、三位の5E蓮のチームが居る。そういえば1A梅は毒島の元チームでもある。卒業生は基本的に最終学年のチームに依存するから、卒業生として参加するならば毒島も1A梅の味方という事になるだろうか。
 毒島は一体どこのチーム応援?
「俺は3組の担任だから3C桜の応援をする! ……お前等は俺の応援の、さらに上を行く気でやれよ?」
 みんなの味方だー!
 ……などという平等主義ではない男である。
「よーし、それじゃあ勝ったらご褒美ね!」
 お菓子とかジュースとか……。
 そんなモンはないと言いかけた毒島の話はすでに右から左、御子は勝負の為に御子とチームの元に走って向かった。
 そして一方はこちら、最下位。
 闘波・水夢(中学生青龍拳士・b44651)のやる気と裏腹に、8H百チームは最下位を走っていた。
 悔しいがこの点数差、ちょっとやそっとじゃ挽回出来そうにない。水夢はやる気を失いつつある仲間をもり立てるように、声を掛けて準備運動を始めた。
「最後までやってみなきゃ、分かんないだろ? この後は高校生の先輩達だって控えてるんだからな!」
 そうは言うが闘波……。
 言い返そうとするチームメイトの方をくるりと振り返ると、水夢は胸を張って言った。
「一位は狙わない! ……一杯人が集まると思うし、ここは三番手を狙おうぜ!」
 3番手というと、5E蓮である。

 それぞれの思いを抱え、最後の競技が幕を開ける。

 まず飛び出したのは、3C桜であった。
 一条・冴(夏色テンペスタ・b82096)は仲間を鼓舞しつつ、上位のチームに攻め込む。
「下ばっかり見てたって仕方ないもん!」
 下克上だぁ!
 と冴は叫ぶと6F菊の陣へと突っ込んだ。6組は自分達の順位よりもひとつ上、ここを倒せば自分達が上がる可能性が高まる。
 6F菊の 蕪菜・鈴菜(三尺聖域・b81577)はパッと振り返ったが、護りを仲間に任せて攻める事とした。相手が攻めるなら、自分も攻めて相手より上を行く!
「運動は……苦手ですけど…でも」
 鈴菜が突っ込んだのは、8H百合の水夢が指したのと同じ5E蓮であった。三位の彼らは、二陣からの攻撃を受ける事となる。
 壮絶な押し合いの中、突っ込んでくる水夢の姿を見て狼狽する鈴菜。しかし仲間の為にもここは引けない……。
 鈴菜は意を決して、水夢の前に立ちはだかった。
「行かせません!」
「たぁぁぁぁぁっ!」
 水夢は前を走っていた仲間の背に飛び乗ると、強引にジャンプした。巻き込まれて転がった鈴菜の向こうに着地し、水夢がちらりと振り返る。
「お先にっ!」
「い……いかせません!」
 追いかけようとした鈴菜に、自陣の危機が伝えられたのはその時であった。攻撃に出て手薄になった6F菊の陣に、冴の3C桜が切り込む。
「勝ったら四位、負けたら六位……」
 どうも勝っても負けても中間管理職的な、いまいちこうやる気に影響する順位ではある。冴は自分を奮い立たせ、大声をあげた。
 ええ、為せば成る!
「人が居ない今がチャンス!」
 攻撃に備えて構える6組チームに、冴は突っ込んだ。相手は中学生だけど、力押しで駄目ならフェイントだ!
 するりと脇を抜け、足をかける冴。
 視線は棒の方へと向けたまま、指を指して誘導をする。
「後ろ、誰か回り込んで!」
 よく響く冴の声は、仲間の耳にも届いている。そこで鈴菜はようやく方針を変え、3C桜の陣へと攻撃を指示した。
 こっちが倒すのが先か、それとも相手が先か。
「今更引き返しても遅いよーだ!」
 人の間をくぐり抜けるようにして、冴が棒にしがみついた。渾身の力を込めて、棒を押し倒す。ぐらりと傾いだ木が、人を押しのけてグラウンドへと地響きを立てる。
 呆然と鈴菜は見つめ、ぺたりと座り込んだ。
 頑張って……勝とうって決めたのに。
 鈴菜の目に、涙が浮かんでいた。気がつくと彼女に人影が落ち、誰かがじっと見下ろしていた。すうっと顔を上げると、埃だらけの顔をした冴が立っていた。
 頬について土をごしごしと擦り落とし、冴が手を差し出す。ぎゅっと冴に手を握られ、鈴菜はゆっくりと体を起こした。
「お疲れ様。……あたしの方が先だったね」
「……」
 鈴菜が冴のチーム、3C桜を見ると棒が倒されているのが見えた。どうやら、あのすぐ後に倒されてしまったようだ。
 点数を確認し、冴が溜息をつく。
 最初に倒されたのが6F菊、その次が3C桜。しかし、今までの所では順位に変動はなさそうである。
「まだまだ先輩達の競技があるから、しっかり応援しなきゃ」
「次は……負けません!」
 ぐっと拳を握りしめ、鈴菜が言い返した。
 そして、その様子を見ていた1A梅。攻撃待ちをしていた幻戸・美夢(ませっ娘剣士・b46293)は、恋人である真神・瑞貴(氷の貴公子・b45562)の声を待つようにして、ちらりと見上げる。
「中位のチームが先に倒れてくれて、楽になったわね」
 くすくすと笑い、美夢は他のチームを見た。
 瑞貴が行くなら行く。
 瑞貴が守るなら守る、と。
 美夢の言葉に、瑞貴は少し思案をした。この様子からすると、最初は防衛に徹した方が良さそうである。
 攻め込んでしまって、自陣の護りが薄くなっては不利だ。
「今は様子を見る方がいい。美夢さん、ボクの後ろにいて」
「瑞貴さんの背中は、わたしが守る!」
 仁王立ちした瑞貴を頼もしげに見つめ、美夢は彼の後ろで敵を見つめる。

 水夢達8H百合は、防衛に徹した5E蓮への攻略に手こずっていた。一気に倒しきる事も出来ず、また攻撃に加わっていた他のチームも次々倒れて減っていく。
 4D椿に攻撃されている事を知った水夢は、仲間の支援要請に応じて引き返す。4D椿のリュート・レグナ(微睡みの音・b41973)は、防衛の為に内田・ゆりな(ブルースターオーシャン・b79935)を戦力として残したまま、手薄なチームの攻撃を続けていた。
 全員が引き返すより先に、一気に倒してしまおう!
 リュートは仲間に指示を出した。
「誰か背を貸して、わたしが行く!」
「見くびるなよ!」
 突っ込んできたリュートに組み付き、押し返す水夢。
 次々チームは倒れていくが、水夢は最後まで諦める事はなかった。だって、どこかで大切な人が見ていてくれるんだと思うから。
 ここではない何処かで。
「絶対……全力で……頑張る!」
 リュートに弾き飛ばされながらも、水夢は立ち上がった。
 しかし水夢の抵抗もここまで……仲間の背を借りて跳躍したリュートが一気に棒の近くに飛び降りる。手を伸ばした生徒達に小さくセクハラっ、と呟くと怯んだ隙に棒を押した。
 更に2B桃、続いて5E蓮が倒れる。試合中盤での三位チーム脱落であったが、ここまでの点数差は如何ともしがたい。
 5E蓮の順位が変動する気配はなかった。こうとなっては、あとは一位と二位のチームによる順位争いである。
 しかし台風の目となっていたチームが二つ、ここにある。
「やったあ、あとは4チームだけだよ!」
 5E蓮の棒を倒した静島・深夜(虹の手のひら・b84654)が、飛び上がるようにして声をあげた。真っ直ぐ上に伸ばした拳は、お父さん達にも見えただろうか?
 幾度もの攻撃に晒された5E蓮は、ついに最後の時を迎えた。残るは四つ。ここまで勝ち残った7G蘭は、攻撃目標を9I薔薇へと向けた。
「ええっ、守らないの御子ちゃん?!」
 織姫がびくりと肩をふるわせ、御子に問い返す。
 元気よく御子は、きっぱりはっきりと返す。
 そりゃあもう、決まってるじゃないですか。
「言ったでしょ、攻撃は最大の防御なの! ……二二子ちゃんも行こっ!」
 ぐっと手を差し出し、御子は二二子を呼び寄せる。最後まで攻めて攻めて、それでも負けたら潔く現実を受け入れる。
 スポーツって、そうなんだから!
 御子の言葉に、織姫と二二子も笑顔を浮かべた。ふわりと髪を揺らし、織姫が駆け出す。待ち受けるは9I薔薇。
 深夜はぐっと相手の攻撃を待ち受ける。飛び出した織姫の速さと、そして深夜のタックルを躱すしなやかな動き。
「こっちこっち!」
「みんな突っ込めー!」
 深夜が下級生に声を掛け、織姫の前方に立ちはだかる。小さい深夜は、更に小さい下級生達を守るようにして戦っていた。
 自分の背に護り、自分の背を押してもらう。
 小さい子達より、深夜は大きくて力が強いのだから。
「順位は8ばんめだって、力勝負なら負けたりしないんだ!」
 深夜が織姫に組み付いて弾き返すと、彼女の横をすり抜けて二二子が前に飛び出した。びしっと指指し、深夜を指名。
「今日は攻め攻めで行くかんね! 勝負だ静島深夜!」
「おー!」
 年齢差はあるが、深夜と二二子は丁度慎重も同じくらい。
 ふたり力もあまり差がなく、深夜と組み合って押し返しながら二二子は足を踏ん張る。ちらりと深夜が彼女の足を見ると、裸足であるのが分かった。
 素足を泥だらけにして、二二子はがんばっている。
 なんだかとっても……負けたくない。
「絶対負けない……ん……だから!」
「んぎぎ……い、今のうちに行ってっ」
 二二子が織姫と御子を促す。
 そんな、二二子ちゃんを置いていけないと織姫が手を伸ばす。その手を掴み、御子がぐいっと引いた。
 二二子の犠牲を無駄にしてはならない!
 するりと織姫は駆け出すと、前に立ちはだかる生徒達をひねり倒した。
「行って、御子ちゃん! わたしと二二子ちゃんの分まで!」
「分かってる! たああああああ!」
 御子は大きくジャンプすると、棒につかみかかった仲間の背を蹴るようにして棒の更に上の方へとしがみついた。
 足下に踏みつけられてる仲間の事は、もはや気にしない。
 体を揺さぶって、棒を倒しに掛かる御子。
「これでおしまい……だぁぁぁぁっ!」
 ぐらりと棒が傾き、御子は棒ごと地面に倒れ込んだ。
 そしてここで、4D椿が攻撃に転じた。すっくと背筋を伸ばし、ゆりながリュートの方へと駆けつける。
 他チームが争いを繰り広げている間も、元々下位であった4D椿の彼らは護りと攻撃を巧みに使い分けて耐えてきた。
 遠目にリュートの活躍を見つつ、ゆりなは最後の時を待つ。
 仲間の数は、残る攻撃に耐えられる程にはなかった。引き返してきたリュートを笑顔で迎えたゆりなは、1A梅の攻撃を迎え撃つ。
 飛び込んできた瑞貴をリュートが押しとどめると、ゆりなはその背後に立った美夢の前方を阻止した。
 ぴたりと足を止め、美夢はゆりなの動きを見定めようとする。
「来るなら来なさい」
「運動神経なら自信はあるんですから!」
 さらりとそう言った美夢に、ゆりなは負けじと言い返した。しかし美夢は、そんなゆりなを笑い飛ばした。
 運動神経、ね。
 ちらりと瑞貴を見ると、瑞貴はリュートを押し飛ばしていた。悲鳴を上げるリュートであったが、瑞貴にセクハラ攻撃は通用しない。
「生憎とボクは恋人しか興味がなくてね」
「まさか恋人同士!」
 強引にぶちかました瑞貴に続き、美夢もゆりなに迫った。躱そうとしたゆりなの動きを見切り、突き飛ばした美夢。
 最後の砦を崩された4D椿の棒は、倒れ去った。
 よろりと立ち上がったゆりなが、肩を落として自陣の倒れた棒を見つめる。リュートがちらりとゆりなを見ると、彼女は思ったよりすっきりとした表情であった。
「見てください」
 ゆりなが点数表を指すと、現時点での点数が表示されていた。
 競技順位三位。
 そう、4D椿は六位から一気に四位へとのし上がったのである。
「まだまだこれからですよ♪」
 ゆりなの言う通り、快進撃成るか。

 7G蘭が倒され、そして1A梅が棒倒しを制した。
 これにより、1A梅は一位に躍り出る事となった。競技の結果を振り返り、瑞貴はほっと息をついて美夢を振り返った。
「怪我はない?」
「はい」
 返った美夢の声は、軽やかで元気よく。
 勝負は、棒倒し高校生の部へと引き継がれた。


マスター:立川司郎 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:11人
作成日:2012/10/22
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