≪白桜寮≫さらば我が愛しのトロッコ〜激走! 死のトロッコレースよ再び〜


<オープニング>



「皆様にお話がありますの」
 結社≪白桜寮≫の一室に集められた団員たちに、ひどく真剣な表情を向けたのは、エリュシオネス・アンフィスバエナ(白にして暁光・b74146)だ。せっせとお茶を運んでいるのは、彼女が溺愛する元淫魔。どうやらお手伝いに呼ばれたらしい。
「……すまん。何故、俺が招かれたのかが分からないんだが」
 部屋の入り口で、無愛想に突っ立っているカウボーイハット。時任・シオン(太陽のエアライダー・bn0302)だ。彼は≪白桜寮≫の団員ではないので、どうして声が掛けられたのか、理解できないらしい。
「実は、ヨーロッパのスプリーナお婆さんから勅命をお預かり致しましたの」
 処刑人の世話役であるスプリーナお婆さんは、ヨーロッパで多発している能力者による犯罪事件を、我が子同様の処刑人たちに処理させている。しかしながら、発生する事件が多くなりすぎてしまい、処刑人たちだけでは手に負えなくなってしまい、時折、銀誓館学園に「応援」を頼んでいた。
「わたくしたちでなければ対応できない事件だと、スプリーナお婆さんが判断されたようですわ」
「俺たちでなければ、対応できない事件?」
 山内・連夜(奏剣呪士・b02769)と雲乗・風斗(結びの傘・b51535)が顔を見合わせる。
 そして彼らは、意気揚々と日本を発つことになる。


「そこのア・ナ・タ。どうしてアタシと同じ格好をしているのか、教えてチョーダイ」
 身長は見たところ2メートル程。「超」が付くほどの筋肉質の体型に、全く不釣り合いな「オネエ」言葉を使う巨漢が、シオンを指差した。
 それもそのはず。そのオネエ・マッチョは、カウボーイハットを被っているのだ。
「うちのリーダーの真似すんな!」
「あっちいけ、筋肉ダルマ!」
「ばーか、ばーか」
 取り巻きの少年少女たちが、一斉に罵声を浴びせてきた。
「同情するぞ、時任」
 風斗がシオンを慰めるが、シオンは体育座りしていじけてしまっていた。
「罵られたくらいでいじけるなんて、なんて女々しいオ・ト・コ」
 意味も無くポージングするオネエ・マッチョに、やんやの喝采を送る少年少女たち。
「あの人たちって、本当に犯罪者なんですか?」
 セルシア・マレヴァール(深緑の茨纏う幼き魔女・b76661)が、不思議に思うのも無理はない。どう控え目に見たって、ただの馬鹿集団である。
「お嬢ちゃん。今、アタシたちのこと馬鹿集団だって思ったデショ!?」
 オネエ・マッチョ、勘は鋭い。
「……そのはずなんですけれど、自信が無くなってきましたわ」
 エリュシオネスが頭を抱えた。スプリーナお婆さんからの勅命で、この街に夜な夜な出没して悪事を働く犯罪組織撃滅の為に、わざわざブルガリアまで来たのだが、いざ来てみれば、出て来たのはこんな馬鹿集団。
「う〜ん。やっぱり、この街で作っているヨーグルトは、サイコーだわ」
 オネエ・マッチョは美味しそうに、ピッチャーに入ったヨーグルトをゴクゴクと飲む。体型のせいか、ピッチャーが大ジョッキにしか見えない。飲み干すと、「ぷはー」などと息を吐いている。
「あれは、あそこの倉庫から盗んだヨーグルトよ!」
 オリヴィエ・シンフォティア(魔法陣描く金鈴音の魔女・b77441)が指差した。
「盗んだなんて人聞きの悪い。拝借したの」
 ウインクするオネエ・マッチョ。
「気持ち悪っ」
 まともに見てしまった御神・深月(破天の戰・b63397)が、思わず顔をしかめた。
「お前! リーダーの『ふりてぃ・ういんく』を気持ち悪いって言ったな!」
「知らないわよ!? 死の制裁を受けても」
 少年少女が口々に怯えた声を発した。オネエ・マッチョが、なんか怒りで全身をぷるぷるさせている。
「むん!!」
 筋肉が膨張し、服が裂けた。あ、因みに言葉遣いがアレなだけで、性別的には男なので、取り敢えず変な心配はご無用です。
「くぅおろして、やるあぁ!!」
「ふん!!」
 がっし!
 襲い掛かってきたオネエ・マッチョを受け止めたのは、無理矢理前に押しやられたシオンだ。
 巨漢2人が、深夜のブルガリア某所で力比べ。
 だが、しかし、シオンがパワーで押されている。
「まずくない、あれ?」
 蒲生・灯雪(雪雅遊踏・b55309)は、庭井・よさみ(天を飛翔する大依羅の真龍帝・b03832)に視線を送る。
「まかせろ! 必殺、援護攻撃!!」
 よさみの問答無用の援護攻撃が炸裂する。
 ぶすっ。
「の゛!?」
 お尻を押さえて、悶絶するオネエ・マッチョ。
「ああ、ばっちぃ、ばっちぃ」
 ハンカチで指先を丁寧に拭くよさみさん。
「今のって、かんち……」
「しーっ、しーっ」
 見て見ぬ振りをする≪白桜寮≫の面々。
「ふっ……。今夜はこのくらいでカンベンしてあ・げ・る♪ 戦利品もあるし……ずらかるわよ!」
「あらほらさっさー!!」
 オネエ・マッチョは取り巻きの少年少女を引き連れて、さっさと逃亡に掛かった。
 用意してあった逃亡用のトロッコに分乗する。
「やーい、やーい。銀誓館の馬鹿ちんどもー。悔しかったら、ここまでオ・イ・デ♪」
 トロッコの上で、オネエ・マッチョがお尻ペンペンしている。
「ふっ……」
 不敵に笑む≪白桜寮≫の面々。どこに隠し持っていたのか、それぞれが「マイ・トロッコ」を準備する。そう、これが、スプリーナお婆さんが彼らを選んだ理由だったのだ。
 犯罪トロッコ集団に対抗できるのは、トロッコをこよなく愛している彼らしかいない。
「行きますわよ!」
「「「おう!!」」」
 エリュシオネスの号令で、≪白桜寮≫トロッコ部隊が発進する。
 夜な夜な街に出没し、美味しいヨーグルトを盗む犯罪集団を引っ捕らえる為に!

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参加者
山内・連夜(奏剣呪士・b02769)
庭井・よさみ(天を飛翔する大依羅の真龍帝・b03832)
雲乗・風斗(結びの傘・b51535)
蒲生・灯雪(雪雅遊踏・b55309)
御神・深月(破天の戰・b63397)
エリュシオネス・アンフィスバエナ(白にして暁光・b74146)
セルシア・マレヴァール(深緑の茨纏う幼き魔女・b76661)
オリヴィエ・シンフォティア(魔法陣描く金鈴音の魔女・b77441)
NPC:時任・シオン(太陽のエアライダー・bn0302)




<リプレイ>


「やーい、やーい。銀誓館の馬鹿ちんどもー。悔しかったら、ここまでオ・イ・デ♪ では、さらばだ諸君!」
 疾走するトロッコの上で、間抜け面でお尻ペンペンをしていたオネエ・マッチョが、急にニヒルな表情になって、洒落た手つきで別れを告げる。このまま、無事におさらばできると思っていたのだが――。
「リーダー!! あれ!」
 取り巻きの少年少女達が、血相を変えて後方を指し示す。
「げっ!?」
 オネエ・マッチョは思わずお下品な言葉を口にした。それほど、驚いたということだ。
 それもそのはず。追って来られるわけがないと思っていた銀誓館学園の能力者達が、様々な形のトロッコに分乗して、こちらに向かって爆走していたからだ。
「な、何なのよ、あいつら!? 何でトロッコなんて持って来てるのよ!?」
 これぞ、スプリーナお婆さんが彼らを指名した理由。結社≪白桜寮≫のトロッコ部隊である。1年半ほど前になるが、この≪白桜寮≫のトロッコ部隊は、洞窟に逃げ込んだ地縛霊をトロッコで追い詰めて撃退したという輝かしい功績を残しているのだ。
「追いつかれる前に、振り切るのヨ!!」
「あいあいさー!」
 少年少女達は、必死にトロッコを漕ぎ始めた。
 しかし、無情にも距離は次第に縮まってきた。


「ふ…こんな事もあろうかと準備しておいたマイトロッコ『銀星号』が、役に立つ日が来たか」
 御神・深月(破天の戰・b63397)のトロッコが、未明のブルガリアの某郊外を疾駆する。名前的に、夜明けがとても似合いそうな気がする。
「寝台特急だな」 
 この日の為に用意したマイ・トロッコ「ジョゼフィーヌ」の上で、時任・シオン(太陽のエアライダー・bn0302)がうんうんと肯く。何故、トロッコの名前が「ジョゼフィーヌ」なのかは、深くは追及しないでいただきたい。
「何というか、恐ろしい相手だな。しかし確かに似て…いる?」
 シオンの顔をチラ見する山内・連夜(奏剣呪士・b02769)。シオンが迷惑そうに鼻を鳴らしている。
「ま、世の中には似てる人が三人いるというし、気にすることは無い。漢ならエアライダーとしての実力で己を証明すれば良いだけの事だろ?」
 シオンの肩をぽむと叩いて、連夜は慰める。ちっとも嬉しくないといった風に、シオンは無愛想な表情を返した。
「トロッコ犯罪…けしからん! 痴漢やキセルとかと同様、自分らに軌道を走る資格はない! 私とて『鉄』の端くれ…この軌道敷こそ私の本領!鉄の何たるかを叩き込んでくれる!」
 先頭を爆走するトロッコには、オネエ・マッチョのあそこにぶっ刺した指をアルコール消毒しながら、大声で捲し立てる庭井・よさみ(天を飛翔する大依羅の真龍帝・b03832)がいた。ちょっと顔が怖いです。
「いくぞ、『キングジョー』。激しいバトルの予感だぜ」
 メタリックな塗装のマイ・トロッコに乗る雲乗・風斗(結びの傘・b51535)は、「死」を覚悟していた。本当に死ぬことはないと思いたいが、恐らく色んな意味で死ぬような目に遭うかもしれない。覚悟はしていて損はない…はずである。
「白桜寮といえばトロッコ! あのマッチョ達を倒せるのは私達だけね! さあセルシア行くわよ!」
 オリヴィエ・シンフォティア(魔法陣描く金鈴音の魔女・b77441)は、とっても嬉しそうだ。後方を振り返り、妹分のセルシア・マレヴァール(深緑の茨纏う幼き魔女・b76661)に声を掛ける。
「はい、お姉さま。どうしてあの変わったリーダーさんを彼らが慕う理由が気になりますが…犯罪者さんなら放ってはおけませんね」
 セルシアがこくりと肯く。
「前のトロッコレースに抽選漏れして参加できなかった分、きっと私のトロッコ…『茨姫号』はがんばってくれます…いきます!」
 どうやら、前回の地縛霊退治の際は、不運にも参加できなかったらしい。
「ああ、故郷の風を近くに感じますわ。できることならゆっくり観光したいです」
 爽やかな風を頬に受け、エリュシオネス・アンフィスバエナ(白にして暁光・b74146)はうっとりした表情で、朝日に照らし出される街並みを眺めている。可愛いゴスロリ服が、風に靡く。どこからか、パンの焼ける香ばしい匂いが漂ってきた。パンのお供はスクランブルエッグが良いだろうか。
「……」
「……」
「…こほん。現実逃避ではありませんわよ?」
 仲間達の無言の視線を浴び、エリュシオネスは小さく咳払いをした。
「トロッコは楽しい。全速力で色々したい」
 蒲生・灯雪(雪雅遊踏・b55309)がぼそりと言った、でも、ヨーグルトも楽しみらしい。
「全員連結OK? では、出発侵攻!」
 ガシーン、ガシーン、ガシーンと物凄い音を響かせて、9人のトロッコが疾走しながら連結していく。さながら、巨大ロボットの合体シーンのようだ。
 よさみは、マイトロッコ「433系特急たいが」に跨ると、
「私の運転は荒いで!つり革手すりにしっかり捕まっとり!」
 仲間達に号令を掛けた。
「みんな、ノリにノッていこーぜ!」
 風斗が天秤の加護を展開し、仲間達を鼓舞する。
「うおっ!? 何か移動力が倍に!?」
 気のせいかもしれないが、トロッコのスピードが加速したように感じられる。
 よさみの荒々しい運転によって、右へ振られ左へ振られ、上へ下へのシェイク状態。
「吊革も手すりもない。だがトロッコと魂が合一してるんで問題ない」
 みんながあわあわしている状態の中にあって、風斗は只一人仁王立ち。
「進撃!!」
 連結トロッコ≪白桜寮≫号が、オネエ・マッチョの乗るトロッコに向かって爆走を開始した。


「総員、戦闘配置! ワンダバダッ、ワンダバダッ♪ ワンダバダッ、ワンダバダッ♪」
 自らワンダバソングを口ずさみながら、オネエ・マッチョは手下を戦闘配置に就かせる。
「砲撃開始ぃぃぃ!!」
 オネエ・マッチョの号令を受けて、少年少女達が射撃攻撃を開始する。

「怯むなぁ!!」
 トロッコに跨ったよさみが、拳を突き上げる。応戦しろという合図だ。
「ふむ、厄介な者から対処するとしようぞ」
 専用トロッコのスノーフェアリーが滑走する中、灯雪は髪を抑えて立ち上る。連夜がその動きに同調した。
「蒲生、行くぞ!」
「承知。童らよ。少々重くなってもらうぞ」
 灯雪の幻楼七星光と、連夜の森羅摩天陣が少年少女達に襲い掛かる。
「か、体が…体が石になりゅぅ〜〜」
 ヤドリギ使いの少年が、変な声を上げる。
「俺のキノコを食え!」
 クルースニクの少年が、自分の頭に生やしたキノコをヤドリギ使いの少年の口に突っ込んだ。んが、しかし、体力が回復し、意思疎通もしやすくなるが、悲しいかなキノコでは石化に効果がない。
 徐々に石になっていく体。重さでトロッコが傾いた。
「おや、石になったら流石に速度が落ちた…気が?」
 連夜が顎に手を当て、相手のトロッコを観察する。気のせいか、何となくだがスピードが遅くなったような気がする。
 スピードが遅くなったような気がしたのは、どうやら連夜だけではないらしい。
「捨てちゃいなさい」
「はい、リーダー」
 オネエ・マッチョは非情だった。哀れヤドリギ使いの少年は、その辺にポイと捨てられてしまった。
「何てやつだ…」
 深月が呆れている。「神依りの翼」を構え、相手のトロッコの車輪に狙いを定めると、クロストリガーをぶっ放った。
「止まれ。止まらんと撃つぞ」
「その台詞は、撃つ前に言いなさいよ!」
 顔を真っ赤にしてオネエ・マッチョが講義してくるが、深月はどこ吹く風。
「そんな昔の事はどうでもいい」
 物憂げな表情で、フッと小さく息を吐いた。
「同じヤドリギとして許せません…! あれ?」
 犯罪に手を染めるなど、同じヤドリギ使いとしては見過ごすわけにはいかない。セルシアは懲らしめてやろうかと狙いを定めたのだが、肝心のヤドリギ使いの少年はトロッコの外に捨てられてしまっていた。
「お姉さまぁ」
「まあ、そういう時もある」
 よしよしと、オリヴィエはセルシアを宥める。
「さあて、トロッコフル回転で行くわよ!」
 ラグン号のスロットルを全開にして、オリヴィエは身構えた。
「シオンさん、行けーー!」
「おうさ!!」
 風斗に後押しされ、「ジョゼフィーヌ」に馬乗りになったシオンが、頭上でぶんぶんを投げ縄を振り回す。灯雪が妙にわくわくした視線を、向けてくる。
 正にカウボーイよろしく、シオンが投げ縄を投じる。
 スカッ。
 外した。
 シオンは投げ縄が、神秘的なまでに下手くそだった。


 逃げるオネエ・マッチョ。追う≪白桜寮≫トロッコ部隊。
 熾烈なまでのデットヒート。
 いつしか、連結していた≪白桜寮≫トロッコは分裂し、それぞれがあっちへ行ったり、こっちへ行ったり、はたまた交錯したりと、カオスな状態になってきていた。
「どーけーよーどーけーよーこーろーすーぞー♪」
 猛スピードで突っ込んでいったよさみが、フランケンシュタインの花嫁な少女にフェニックスブロウを叩き込んだ。
「やったわネ!!」
 オネエ・マッチョが反撃してくるが、
「これが伝家の宝刀、複線ドリフトや!」
 ぐごごごご…!!
 騒々しい軋み音を響かせて、無茶苦茶なドリフトでそれを回避。
 がこーん!
 脱線。
「よさみさん!!」
 輝ける朝日に向かって消えていくよさみ。
「無茶しやがって…」
 朝日に向かって、敬礼する≪白桜寮≫の面々。
 そうこうしているうちにトンネルに突入。
「ふむ、視界が悪くて見えづらいのぅ」
 生憎とトロッコにライトが取り付けられていない。灯雪は嘆息したが、
「ただ、これなら大丈夫じゃ」
 扇を翳して、周囲を氷雪地獄に陥れる。
「車輪が凍結したら、音も変わるよな」
 すかーっ。
 鋭敏感覚で音を聞き分ける灯雪の耳に、何かが滑りゆく音が。
「ぎゃーっ。車輪が凍ってーっ。誰かブレーキ、ブレーキ!!」
「リーダー、無理ですー!!」
「とーまーれー!」
 魂も凍るような絶叫が前方から響いてきたかと思うと、急速に遠ざかってゆく。
「ふむ。どうやら下り坂になっていたようだな」
 淡々と分析する灯雪さん。ようは車輪が凍ってしまった影響で、スピード倍増しで滑走していったらしい。
 暗かったので、下り坂になってきたことに気付かなかったから仕方が無い。
「私の茨で止まってもらいますからね…!」
 トンネルを抜けたところで、さながらジェットコースターの勢いそのままで疾走しているオネエ・マッチョのトロッコを発見すると、セルシアは茨の世界を展開する。
「あああ〜ん♪ 痛いのぉ〜。苦しいのぉ〜」
「リーダー、気を確かに」
 セルシアの茨は、見事にオネエ・マッチョを捉えた。ぎりぎりと締め付けられる度に、オネエ・マッチョは妙な悶え声を上げる。声も気持ち悪いが、見た目的にもかなり不気味だ。
「成る程。そういう趣味があったのか」
「わっ…私は敵さんのトロッコを止めようとしただけです!」
 必死に弁解するセルシア。決してそんな変な趣味があるわけじゃない。
「あーっ。あたしの体が締め付けられるのぉ〜。嫌ぁ〜〜。でも何だか、だんだんと、か・い・か・ん♪」
 いかん、こいつの方が変な趣味を持ってたらしい。
「うわ…あの耳、塞いで良いですか…?」
 自分でやっておいて何だが、ちょっと耳を塞ぎたい気分になってきた。
「ええい! これが本気の黒歴史っ!」
 オリヴィエが漫画原稿を飛ばす。凄まじきかな妄想世界。オネエ・マッチョの取り巻きは大受けである。続いて描くはスピードスケッチ。メイド服、ロリータ服、女王様風、止めは水着。モデルはもちろん、オネエ・マッチョである。因みに、水着はマイクロ・ビキニだ。
「成る程。そういう趣味があったのか」
「…描いてるこっちが気持ち悪いわっ!」
 とっても嫌そうに、オリヴィエが反論する。
 愛すべきリーダーの薄い本まがいのイラストの応酬に、クルースニクの少年と従属種ヴァンパイアの少女が昇天して脱落する。一人残ったナイトメア適合者の少年も、最早まともに戦えそうに無い。笑いすぎで。
「ランボルくんGO!」
 エリュシオネスが突っ込む。連結状態を保っていた深月のトロッコも引っ張られる。ナイトメア適合者の少年の意識がこちらに向く。
 ここだ! ここで決めるんだ!
 月光によって生み出された黄金の糸で、深月とエリュシオネスが結ばれる。
「相変わらずエリスは綺麗だ。うん、幸せ」
 きらきらと目映いエリュシオネスの姿を見詰め、深月は目を細めた。
「月に代わって粛清ですわ!」
 蝙蝠のような羽を生やし、まるでリリスのように体に蛇を巻き付けたエリュシオネスが妖艶に笑む。はち切れんばかりのバストを覆う申し訳程度の布きれに、超ミニのスカートが、風に煽られる。だが、不可思議な魔力が働いているのか、どうしてもスカートの中身が見えない。
「おねーさーん♪」
 我慢できなかったらしい。ナイトメア適合者の少年が、エリュシオネスに向かってダイブ。
「死ね」
 ドゴッ。
 深月が蹴り落とす。その場に味方の姿もあったような気もするが、見なかったことにする。
 で、オネエ・マッチョはいうと、未だに茨で藻掻いていた。暴れるものだから、余計に体に巻き付いてしまっていて、とても言葉では表現しきれないほど物凄いことになっている。
「ああーん。締め付けられて、キモチいいのぉ」
 駄目だこいつ。
「シオンさん! オカマリーダーに負けるな! 決着の一騎討ち!」
「茨で締め付けられるのはカンベンして欲しい」
 いや、そっちの勝負ではない。見てみたい気もするが、きっと見苦しいので、それだけは止めておきたい。
 風斗に嗾けられたシオンが、「ジョゼフィーヌ」と共にライジングヘッドバットで突っ込んでいった。
 激突。
 砕け散る「ジョゼフィーヌ」。
「お、俺のジョゼフィーヌがぁ」
 シオン涙目。
「私を殺したかったら…E6系でも持って来いや!」
 よさみさんは生きていた。
 ピキーン。
 だがその前に、オネエ・マッチョは連夜の石兵気脈砕きによって彫像と化していた。
 恍惚とした表情で、悶えたままの姿で。
 回収に来た処刑人の皆さんは、とっても嫌そうにその像を運んでいった。


 盗まれたヨーグルトも無事に取り戻せたので、工場のオーナーは大層喜んだ。お礼にと、トロッコが描かれた紙パックに入ったヨーグルトをくれたそうな。
「折角だからボヤナ教会にでも寄っていくとしよう」
 連夜はそういうと、教会へと足を向けた。ヨーグルトをゴクゴクと飲みながら、風斗も付いていく。
「蟹鍋の広めっぞ」
 突如として、よさみが道端で蟹鍋を始めた。通行人にシオンがお裾分け。
「ブルガリアといえばヨーグルトよね」
 エリュシオネスの案内で、深月、灯雪、そしてオリヴィエとセルシアが観光中。
 やたらと地理に詳しいエリュシオネスに、灯雪が不思議そうに問い掛けるが、彼女はやんわりと笑んで誤魔化してしまった。
 時間はまだまだある。
 ≪白桜寮≫の面々は、のんびりと残りの時間を過ごすのだった。


マスター:日向環 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2012/12/01
得票数:楽しい6  笑える4 
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