Epilogue of SilverRain〜そう遠くない未来の話〜


     



<オープニング>


 紅葉も散り始めた冬の頃、特に何もない日の放課後。学食にて、今は特にすることもない三人が駄弁っていた。
 最初は他愛のない話から。徐々に積み重ねてきた思い出へと。それが現在へと至った時、話題は未来の事へと羽ばたいた。
「流石に、始めた時期が遅かったからね。運動してきたから十分巻き返せるとは言われてるけど、まだまだ夢の実現には時間がかかりそうだわ」
 春宮・静音(バトルマニアレディ・bn0097)の語る夢、人々を楽しませるトップダンサー。開始時期の遅れはいかんともし難いが、そこは体力と根性で何とかする。
 演技などの知識も身につける必要が有るため、大学へも通おうか。通う中でも練習を重ね、在学中でも許可が出ればデビューしよう。
 デビューした後も変わらない。日々技術と体力を、経験を、在学中に限らず知識を積み、トップランク目指して邁進しよう。
「諦めたりなんてする気はない。全力で、最後まで駆け抜けるわ。……その為に、高校卒業後は留学するわね」
「……寂しくなるな」
 瞳を伏せ、語るは鳳・武曲(日本妖狐・bn0283)。
 もちろん止めることはしない。
 ただただ寂しげな微笑みを秋月・善治(運命予報士・bn0042)と共に送った後、己の夢を語りだす。
「前にも話したと思うが、私の夢は里の復興だな。幸いというか、里の幾人かも賛同してくれた」
 大陸妖狐によって大きな被害を受けた武曲の故郷。無事な家などは保全し、無理なものは破壊する、などといった整理を行ったものの、復旧には程遠い。
 否。復旧するだけではいけない。やるなら外との交流も。子孫が不自由しないよう、電気や水道、ガスなども引く必要があるだろう。
 そのためのノウハウやコネ、資金などを作るために新興企業を設立し、大学を卒業した者から入社する。資金を溜め里を復興したならば、今度は維持と発展のために企業経営を頑張っていく。
 それが、武曲の夢、その道筋。
「苦労も多いと思う、困難な道筋だとも思う。だが、生涯をかけてでも達成したい」
「……頑張れ、数年で勉強も追いついたお前のことだ。きっと、仲間と一緒なら成し遂げられる」
 静音と共に頷いて、善治は武曲の夢を肯定する。
 言葉が止まった事に気づき、静かな息を吐いた後に語り出した。
「既に知っていると思うが、俺の夢は自分の店を持つことだ。……この、鎌倉の地にな」
 現在、大学で経営学や栄養学を学びながら、知り合いの店でノウハウや料理を学んでいる。この調子なら、大学卒業と同時に必要な資格は習得できる。
 後は資金。目測では三十代に差し掛かる頃には開店資金は溜まると思われた。その後は……自分の腕との勝負である。
「お前たちより道筋は平易かもしれないが……手を抜くつもりはない」
「そうね、全力で頑張らなきゃ。みんな、夢に向かって全力で頑張っているはずだもの……あ、そうだ」
 夢を語り尽くした後、静音がぽんと手を叩いた。
「ねえ、同窓会とかやらない? 毎年、なんとか時間作ってさ。結構楽しいことになると思うんだけど」
「ああ、いいな。場所は……善治の働いている場所、でいいか」
「了解した。店を持つ前は、叔父に許可を取っておこう」
 瞬く間に、将来の交流が決まっていく。未来が形作られていく。
 過去、学業と青春と戦いと死を紡いだ場所で。
 今、なお死と隣り合わせの青春を送っている場所で。
 未来は、ここから始まった――!

マスター:飛翔優 紹介ページ
 皆様、今までありがとうございました。
 ついに来てしまいました、エピローグシナリオです。
 色々と語りたいこともありますが、ひとまずそれはこちらを紡ぎ終えてからにするとして……皆様、最後までよろしくお願いします。


 このシナリオは『2013年〜24年』の12年間を記します。
 一年ごとに、『日常パート』『同窓会パート』『卒業式パート』、の三つの章を繰り返していく形になります。
 『日常パート』では、その年にどんな生活をしたか、と言った内容になります。
 日常といっても、平穏なものとは限りません。
 ゴーストと戦っている方もいるでしょう、結婚してる方もいるでしょう、アイドルや国会議員、首相などの職について日々を送っている方もいるでしょう。
 この年にはどんな生活を送っていた、どんな事件があった。そんな事を教えて下さいな。
 そのシーンが描かれます

 『同窓会パート』では、オープニングでも記した同窓会。
 善治の働いている場所(2020年までは善治の働いている和洋中なんでもありなレストラン、2021年からは小料理屋・秋月亭)で、同じ時を過ごすことになります。
 みんなと交流を深めたり、久しい再開を喜んだり、何かサプライズで発表したり、学生時代の時のようにバカをやったり……そんな事を記してくださいな。
 年ごとに、皆様が楽しんでいる様子が描写されます。

 『卒業式パート』は、その年に卒業する方のみが選択する事ができます
 卒業式は『小学校・中学校・高校のどの卒業式』でも構いません。自分の年齢にあったものを選んで下さい。
 また、静音は2013年、武曲は2014年に高校を卒業しますので、その年のものに参加します。


 もちろん善治、静音、武曲の三人が参加しております。
 三人の概ねの来歴は以下の通り。何かありましたらお声を掛け、新たな歴史を刻んであげて下さいな。

 秋月善治。
 2014年。大学卒業、バイト先の和洋中レストランに就職。修行。
 2020年。青龍拳士に覚醒。以後、ちょくちょくゴースト退治を手伝うことに。
 2021年。独立。小料理屋・秋月亭開店。

 春宮静音。
 2013年。銀誓館学園卒業、アメリカの有名大学に入学。
 2015年。ダンサーとしてデビュー。
 2016年。大学卒業。
 2020年。トップダンサーの仲間入り。
※どの年代においても、能力者としてのゴースト退治などを兼任。
 
 鳳武曲。
 2014年。銀誓館学園卒業、大学入学
 2018年。大学卒業。日本妖狐の企業に入学。
 2021年。里復興の目処が立ち、その為の作業に移行。
※どの年代においても、能力者としてのゴースト退治などを兼任。

 それでは皆様、良い未来を!

参加者
草剪・ひかり(七色の虹を描く少女・b00540)
関・銀麗(天華青龍・b08780)
稲垣・晴香(発展途上の仔猫レスラー・b10327)
草凪・緋央(おひさまの申し娘・b24940)
赤護・侑(紅い護葬士・b26012)
仙風・彰人(爆風激震・b28844)
足利・灯萌(奪ってもいいのよというか奪え・b32352)
儀水・芽亜(夢何有郷・b36191)
暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・b42300)
レアーナ・ローズベルグ(心にいたみを刻む者・b44015)
琴吹・つかさ(祓魔の守護拳士・b44491)
風嶺・涼介(高校生ヤドリギ使い・b46356)
鬼灯・遙(彩雲のサーブルダンサー・b46409)
中寮・琴乃(風花の舞う静謐の乙女・b47782)
七瀬・鏡華(古流武術継承候補者・b49180)
八枷・捺希(エグゼクター・b51967)
比奈守・亜璃亜(青き薔薇に護られし白き吸血姫・b54215)
比奈守・双臥(蒼き吸血竜の右目・b56071)
真月・沙梨花(死門封殺の呪を操る者・b56331)
塔間・里奈(恋する乙女な風紀委員・b61045)
鈴鹿・小春(万彩の剣・b62229)
小川・紅葉(美少女眼鏡っ娘デイドリーマー・b62900)
折原・みかん(高校生みかん委員長・b68570)
妹出・織泉羅(傾国の陽麗姫・b70426)
天川・そら(ダンスウィズミルキーウェイ・b71485)
風霧・來那(石段の先の護り人・b71827)
マオ・イェンフー(その漢トゥーハンド・b73520)
寺見・嘉月(星詠みの金月・b74452)
瀬河・苺子(絆に導かれて・b77693)
龍・月華(月華公主・b81443)
灰澤・コウ(高校生ルナエンプレス・b83205)
高橋・伍実(アナザーイビルコンセクエンス・b83761)
穂村・耶子(橙色の金平糖・b84998)

NPC:秋月・善治(運命予報士・bn0042)




<リプレイ>

●2013年の日常
 来るべき未来の為に、小川・紅葉(美少女眼鏡っ娘デイドリーマー・b62900)はパソコンのキーボードを叩いていた。
 紡ぎだされしは英記号。全て、情報公開と有名人作戦への協力として新たなサイトを作るため。世界の真実を交えた漫画から銀誓館学園のタレントとのコラボ漫画など、様々なコンテンツを乗せる予定である。
「……はぁ。やっぱりぃ、こういう時ほど捗りますねー」
 概ねページが形作られた時、出来栄えとは裏腹に紅葉はため息を吐き出した。
 キーボードを横に退け、腕を枕に突っ伏していく。
「……あぅー、行き詰まりましたー」
 机の横には、未だ真っ白な原稿用紙。本来、この時間を使って描くはずだった品々だ。
 だが、アイデアが浮かんでこない。アイデアさえ浮かんでいれば、後はゴーストライティングに任せることもできるというのに。
「……頑張ると決めたのは自分なんですよねー」
 五分ほどの時が経った後、紅葉は勢い良く起き上がる。拳を握って気合を入れ、改めて原稿用紙と向き合った。
 紡ぐべき物語を、純白の中に見出すため……。

 嫁を食わすため、護衛家業を精力的に。
 マオ・イェンフー(その漢トゥーハンド・b73520)は様々な絆で結ばれたコネを使って世界中を飛び回り、人々を守って回っていた。時には能力者やゴーストとも対峙し、様々な命を救ってきた。
 犯罪者……特に能力を悪用するような輩は容赦しない。今日もまた、二丁拳銃が火を吹いていく。
「ひっ」
 銃声に驚いたのだろう。護衛対象たる青年が、建物の影で身を縮こませる。
「こっちなら安全だ。急いで移動するぜ! セシリア、援護しろ!」
 手を引き、敵の監視網を突っ切って、小屋の中へと飛び込んだ。
 即座に敵も動き出したのか、小屋へと近づく沢山の足音が聞こえてくる。
「ちっ、流石に数が多いな」
「だ、大丈夫なんでしょうね!」
「勿論!」
 小気味の良い言葉とともに包囲網の中へと飛び出して、弾丸の嵐をくぐり抜ける。二つの快音を響かせて、一人、また一人と、確実に敵を削っていく。
 程なくして戦意を刈り取ることに成功する。それ即ち、依頼の完遂も指し示し……。

 中学三年生になってからは、積極的に世界結界など研究を行い、今後の対策を取るために活動していた瀬河・苺子(絆に導かれて・b77693)。新しく見つかったゴーストタウンへ赴くつもりだったのだが、折り悪く運命の糸が繋がった。
 仕方ない、と、苺子は今日もまたゴースト退治へと赴いていく……。
(「明後日には黙示録の登録もあるのですよね……ちょっと大変です」)
「どうした、苺子?」
 移動のさなか、鳳・武曲(日本妖狐・bn0283)に声をかけられた。
 考えこんでしまっていたらしいと気づき、苺子は首を横に振る。
「なんでもありません。それよりも、武曲先輩、今日もよろしくお願いしますね」
「ああ、よろしく頼む」
 何を行うにしても、目前の事をこなさなければ始まらない。成功させなければ、被害が出ることもまた確実なのだ。
 故に、気合を入れて飛び出した。
 今日の相手は高速道路下の地縛霊。
「それでは、参りましょう」
「ああ」
 被害なき勝利をおさめるため、彼女たちは得物を握り締める。

 本当なら、もっと多くの仲間とともに開けるはずだったタイムカプセル。一年後の今日、開けると約束していた想い出の箱。
 今は、灰澤・コウ(高校生ルナエンプレス・b83205)と高橋・伍実(アナザーイビルコンセクエンス・b83761)の二人だけ。他の仲間は次の宇宙へと旅立っていったから……。
「出てきた」
 土の中から顔を覗かせた箱の群れを覗き込み、伍実が静かな笑みを浮かべていく。素早く周囲の土を取り払い、コウと協力して取り出した。
 中身は写真。それから手紙。
 幾つかは、もう本人へへ届かない……。
 ――君が幸せであることを願う。
「……」
 自分へと宛てた手紙を眺め、コウは静かに瞳を伏せる。静かな息を吐いた後、他の物品へと視線を移す。
 写真の中に満ちる笑顔。
 もう、一緒に笑い合う事のできない仲間たち。
 願わくば……。
「……黒猫団長と宙クンも、幸せになってくれてるといいナ」
「……クロネコも、ソラもまだ駆け抜けてるんじゃないかな」
 空を見上げ、伍実がそう返答した。
 それきり言葉も紡がぬまま写真も手紙も仕舞い直し、そっと蓋を閉ざしていく。
 また、いつか。いつになるかはわからないけれど、いつか。もしかしたら必要になる時が来るかもしれないから。
 コウの手紙を含め全てを仕舞い、埋め直し、伍実がお腹を軽く抑えながら立ち上がる。
「お腹空いた、甘いの」
「そうだネ、甘いの食べにいこっか」
 未練なく、想い出だけを胸に抱き、二人は約束の場所に背を向けた。
 日常へと、未来へと歩き出した二人を見送るかのように、タイムカプセルの傍に咲くたんぽぽの綿毛が風に乗って羽ばたいた、
 想いよ宇宙の傍へと届け。いつまでも、二人は覚えているから。だから……。

●2013年の卒業式
 式も、最後のHRも終わり、在校生に見送られながら学園を旅立っていく卒業生。様々な想いを胸に新たな道を歩みだしていく人々の中、比奈守・亜璃亜(青き薔薇に護られし白き吸血姫・b54215)と比奈守・双臥(蒼き吸血竜の右目・b56071)は立ち止まる。
 桜吹雪に促され、銀誓館学園へと振り向いた。
 威風堂々と立つ校舎を眺め、小さく瞳を細めていく。
 多くの時を過ごして来たはずなのに、どこか違って見えるのは何故だろう?
 問いを口にすることもないままに、亜璃亜は瞳を閉ざしていく。瞼の裏に嘗ての光景を思い浮かべ、静かな息を吐いていく。
「……何だか、とても寂しいね。でも……」
 表情に、悲しみはない。ただ、寂しげな笑みを浮かべたまま、朗らかな声を響かせる。
「でも、ここからが始まり……。私、宗教の勉強がしたいの……墓守として生きていくって、決めたから……」
 言葉の終わりに、傍らへと視線を向けた。
 双臥はそっと頷き返し、同様に校舎へと言葉を投げかける。
「俺は、亜璃亜の守護者として生きると決めた。何処へでも付き合うさ。一緒に勉強して、卒業したら亜璃亜の故郷の墓を一緒に守っていこう」
 決意を示し、誓い合う。
 墓守として、道を違えず二人一緒に進んでいくと。
 故に、未来にもまた憂いはない。幸いなものとなるだろう。
 幸いなものとするために、二人は再び銀誓館学園に向き直る。肩を寄せあい、校舎を仰ぎ、ただただ優しい表情を浮かべていく。
 二人一緒なら、どんな事が起きてもなんとかなる。片方が倒れそうになっても、片方が引き上げる。絶対に止まったりなどしない。
 だから、これからも……。

「ついに僕たちも卒業かぁ……」
「長いようで、短かった……かな?」
 肩を並べ、手を繋ぐ風霧・來那(石段の先の護り人・b71827)と天川・そら(ダンスウィズミルキーウェイ・b71485)。二人は桜吹雪が舞う大樹の袂、蒼空を抱く銀誓館学園を見つめている。
 それなりの年月を超えてきた学び舎は、銀誓館にやって来た時よりもどこか影があるように思われた。けれど、真新しい部分のない建物はいっそ味わい深く、貫禄が出てきたとも言えるだろう。
 だからだろうか? 校舎は別れを寂しがるのではなく、力強く見送ってくれている。
 こらえきれぬ涙の代わりに桜の花を散らしている。そんな気がして……。
「……」
「……」
 卒業後の未来、二人は別々の道を歩み出す。これからは、二人一緒に同じ障害を乗り越える事はないのかもしれない。
 否。
 支えあおう。こうして二人寄り添っているように。パートナーが苦難を前に倒れてしまう事がないように……。
「行きつく道の先はきっと交わっている……よね」
「帰るところは同じだもの、ね?」
 來那がそらへと視線を移せば、そらも來那を見つめ返す。
 微笑み合いながら頷き合い、ポケットからカメラを取り出した。
 何かが終わって、何かが始まる。
 狭間の時に抱いた想い、その記憶を永遠に。
 写真の中で、二人は笑う。いつまでも、いつまでも、二人が幸いな道を進んでいけるよう……。

 卒業後は大学へ。これからの未来、多くの知識を学ぶ機会に向けて、寺見・嘉月(星詠みの金月・b74452)は歩き出した。
 多くの経験をさせてくれた銀誓館学園に別れを告げて。けれど、能力者としての自分は忘れずに。これからもゴースト退治は続くのだから。
 道すがら、嘉月は桜の大樹を背に一休み。小さな息を吐くと共に銀誓館を仰ぎ見て、やがて静かに瞳を閉ざす。そっと口の端を持ち上げて、小さく頭を垂れていく。
「……」
 暫しの後、人の気配を感じて身を起こす。
 目の前の道を、春宮・静音(バトルマニアレディ・bn0097)が歩いていた。
「こんにちは春宮さん」
「ん? あ、こんにちは寺見くん」
 静音の手には、黒い筒。嘉月と同様、彼女もこれから新たな道へと進むのだ。
「卒業おめでとうございます」
「寺見くんこそ、卒業おめでとう」
 二人の進む道は別。けれど、どちらも輝いていると確信できる。
「あちらは日本とは色々と勝手が違うでしょうから、どうぞお気をつけて」
「寺見くんもね。大学も、高校とはまた違うと思うわよ?」
 だから笑い合い、労い合う。未来がよりよい物であるように、幸いなる物であるように。
 一陣の風が吹く。
 二人を桜吹雪が包み込む。
 薄桃色の奔流は、新たな一歩を踏み出す二人を応援してくれているかのようで……。

 友の旅立ちに祝福を。
 草凪・緋央(おひさまの申し娘・b24940)は静音を呼び止めて、元気な笑顔を輝かせた。
「静音、卒業おめでとうっ!」
「ありがとう、緋央。みんなと中々会えなくなっちゃうのは少し寂しいけど……」
 卒業式後、程なくして静音はアメリカに旅立つ。入学が秋頃とはいえ、それまでに向こうの生活に慣れておかなくてはならないから。
「これから夢を叶えに行くんだよね……絶対笑顔で戻ってきてよっ」
「もちろんっ!」
 力強い言葉が示すよう、表情には一点の曇もない。
 だから、緋央はぽんぽんを取り出した。
 一人でできる精一杯のチアリーディングを披露して、旅立つ静音を応援した。
 送るはエール、先へ進むファイトが湧き出るよう。
「ボクはいつでも静音を応援してるからっ」
「うんっ」
 祝福の言葉とともに拳を突き出せば、静音も笑顔で応じてくれた。
「チア部で過ごしたこと忘れないでねーっ」
「うんっ……あれ?」
 小さな音が響いた時、笑顔が自然と曇っていく。想いが溢れ流れだし、いつしか静音は泣きじゃくる。
「……」
 無言のまま、緋央はそっと抱きしめた。
 ぽん、ぽん、と背中を軽く叩いていく。
 今日くらいは泣いてもいい。明日から笑顔であるならば。
 未来が、笑顔に満ち溢れているのなら。

●2014年の日常
 若く、鍛えあげてきた肉体を駆使し、草剪・ひかり(七色の虹を描く少女・b00540)は世界を股にかける所属団体の女子プロレスチャンピオンとして君臨していた。そんな彼女にとって、今日は生涯忘れることのできない日になるだろう。
 今日は、男子プロレスとの統一王座戦。勝つにせよ、負けるにせよ、新たな歴史が刻まれる。
 控え室で靴紐を締める中、ひかりは静かに瞳を閉ざした。
 瞼の裏に浮かんでくる、かつての仲間たち。競い合ったライバルたち。
 沢山の逆風もあったけど、彼らを始めとする各界の後押しが、何よりも彼女の実力がこの世紀の決戦を実現させてくれた。
 故に、彼女はここにいる。
 最も多くの歴史を刻んできたアメリカのスタジアムで、様々な喧騒を聞いている。
「……よし!」
 最後のヒモを締めると共に立ち上がり、彼女は向かう、晴れ舞台へと。
 敗北の予感など微塵もない。
 勝利への油断も有り得ない。
 学園の、プロのライバルたちの歓声を受けながら、彼女は今リングに上がる。
 始まりを告げるゴングが響き、肉体と肉体を震わせて……新たな歴史が刻まれた。

 風に吹かれなびく花。優しい音を響かせる草木たち。
 かつて故郷があった集落に、亜璃亜は双臥と共に足を運んでいた。
 目の前には、二つの名が刻まれている石碑。亜璃亜の両親が眠る場所。
 亜璃亜が静かに佇む中、双臥は軽く頭を下げた。
 中々来られなくて、済まなかったとの想いを込めて。
 もう少しかかってしまうけど、必ず……と、心のなかで呟いて……。
「……大学を卒業したら、私達が守ります。墓守として、この場所を」
「もちろん亜璃亜も、な」
 決意を告げた亜璃亜に誘われ、双臥も力強く頷いた。
 改めて周囲に視線を送り、情景を心のなかに納めていく。
 この場所に眠るのは、彼女の両親だけではない。故郷に住んでいた人々が、この場所には眠っている。草花に埋もれてしまっているものもあるけれど、風が吹けば、その無事な姿を見せてくれた。
「安心して眠ってね……お父様、お母様……集落のみんなも、ね……」
 亜璃亜の声音が風に乗る。
 双臥へと向き直り、そっと微笑みかけて踵を返す。
 涙を見せない横顔は、二十歳を迎えたばかりとは思えないほどに大人びていた。
 颯爽と歩く彼女に付き従い、双臥もまた後を追う。
 彼女と共に、ここを護る。
 彼女の心も守っていく。
 それが、守護者としての生き方。彼の使命なのだから……。

●2014年の卒業式
 優秀な成績で銀誓館学園を卒業。教師からは大学を勧められたけど、稲垣・晴香(発展途上の仔猫レスラー・b10327)はプロレス界に進むことを決めた。
 憧れの先輩が夢を追うために世界へ羽ばたいたように、自分も、子供の頃から追い続けていた背中と同じ舞台に立つのだ。
「……ふぅ」
 十二年間を過ごした銀誓館学園。普通の学校では得られなかったであろう経験をたくさん積んだ。生死の境を彷徨ったこともあった。
 その、大変な日々を思えば、どんな困難にも耐えられるだろう。
「……ひかりねーちゃん、静音先輩、見ててね。私も、世界に――」
 大変なことだけではない。楽しい想い出もいっぱいある。
 今まで……これからも優しく見守ってくれるだろう慣れ親しんだ校舎に、折り目正しく一礼を。
 風の訪れとともに踵を返し、力強く歩き出す。
 もう、振り返らない。前だけを向いて歩いて行く。新たな世界へと進むため、今――。

「とうとう卒業かぁー」
 式が、最後のHRが終わり、折原・みかん(高校生みかん委員長・b68570)は校庭の片隅にて一息つく。
 長かったような、短かったような、そんな青春の日々を胸に抱き、満開の桜を仰ぎ見た。
 皆の旅立ちを祝福するために、色鮮やかに染まった薄桃色。
 心を見通しているかのような、雲ひとつない青空。
 こんな晴れやかな気持で桜と空の鮮やかさを感じられるのなら、今まで頑張って来たかいがある。頑張ってこなければ、この景色もなかったのだろうから……。
「世界を守る事、学校の勉強……いろんな事がいっぱいあったけど、どれもこれも楽しかったなぁ……」
 球技大会、学園祭、運動会。能力者だけの秘密の時間。楽しいこと、辛いこと、どれもこれも大切な想い出だ。
「……これからも楽しいことを見つけていけるように、未来を考えて行かないとねっ」
 思い出を胸に、決意とともに身を起こし、彼女もまた歩き出す。
 ――また、どこかで。
 銀誓館に、友人たちに別れを、再会の契を交わしながら。

「さあ武曲、卒業記念に自分撮りだ」
「あ、ちょ、ちょっと待て」
 強引に武曲の肩に手を回し、妹出・織泉羅(傾国の陽麗姫・b70426)は自分たちへとカメラを向ける。
 折角模範的に着用した高校女子冬服、想い出に残さなければ勿体無い。……身長差はいかんともしがたく、織泉羅が背伸びする事となったのだが。
「……うん、大丈夫」
 それでも埋められず、武曲が身をかがめることで解決する。その状態で二度、三度ほど位置を調整し、無事シャッター恩が鳴り響いた。
 無事、綺麗にとれている。
 データを確認した織泉羅は体を伸ばしている武曲の下に歩み寄り、一枚の名刺を差し出した。
「? これは……」
「遠野にいる。名物ができたら持ってこい」
「……ああ、きっと行くよ」
 土産物、土ノコ帝国。二十四時間営業。
 織泉羅が抱く夢の形。
 里の復興、それが武曲の抱く夢の形。
 二人の夢を重ねるための、未来の約束。
 さあ! 意気揚々と新たな世界に羽ばたこう!

 目元に残る、涙の跡。拭うことも忘れて桜を眺めていた塔間・里奈(恋する乙女な風紀委員・b61045)の前に、大きな花束が差し出された。
「よっ、里奈。卒業おめっとさん!」
 花束の主は仙風・彰人(爆風激震・b28844)。
 ためらうことなく受け取って、里奈は静かに瞳を閉ざす。静かな息を吐くと共に、新たな音を紡いでいく。
「いよいよ、私も卒業なのね……」
「里奈は大学進学だったよな」
 静かな問いに、里奈はコクリと頷いた。
「俺は高校卒業してすぐ仕事始めたからなぁ。学生生活が懐かしいぜ」
「……」
 追憶の言葉を聞きながら、里奈も瞼の裏に浮かべていく。
 感じてきた想いを。
 刻んできた思い出の数々を。
 自然と、溢れ出す。閉じ込めておくことなどできないから。
「ん、泣いているのか、里奈?」
「あら……。私ったら……。勝手に涙が……」
 卒業式で散々泣いたはずなのに、涙がとめどなく溢れてくる。
 思わず手で拭おうとしたけれど、柔らかな感触を頬に感じて動きを止めた。
「何だかんだで色々あったしなぁ、銀誓館では」
「彰人……ありがとう……!」
 優しく差し出されたハンカチを受け取って、里奈は涙を拭っていく。それでも彰人の顔はぼやけて見えない。
 笑顔でいることだけはわかっていた。
 だから、里奈は校舎を向き、涙混じりの声を響かせる。
「……忘れないわ、銀誓館学園。いろいろな想い出をありがとう!」
「改めてありがとう、そしていつか又な、銀誓館学園!」
 誓いは、いつか共に歩んでいく大切な人と共に。
 返事の代わりに風が吹く。風が桜吹雪を運んでくる。二人を優しく包み込み、幸で世界を満たしていく。……きっと、永遠に。

●2015年の同窓会
 同窓会会場にて。
 日本へと久しぶりに帰ってきた静音に、関・銀麗(天華青龍・b08780)が話しかけた。
「こんにちは、久し振りだね」
「あ、こんにちは。銀麗先輩も変わりないようで……」
 直接会うのは久方ぶり。
 友人同士の会話にも華が咲く。
 近況へと移ったなら銀麗が、今は裏世界を混乱させないようまとめるために奮闘中と、交渉、麻雀、たまに武力と語っていく。
 「ダンサーデビューおめでとう。大変かもしれないけど、努力を続ければ結果はおのずと付いてくるわよ」
 流れるままに、夢を叶えつつ在る静音を祝福した。
「ええ。基本的に先輩方しかいなかった業界だけど、負けてなんかいられないんだから」
「あ、そういえば向こうで自炊はしているの? 良ければ簡単な料理のレシピは教えるけど……」
「……えーと。経済的に必要ないっていうか、ええと……」
 できないのが良いとは思っていないのだろう。目をそらす静音に、銀麗は笑顔のまま更に問い詰めた。
 そんなやり取りも含めつつ、楽しい時間は過ぎていく。
 騒がしい時間を過ごせることが、かつての仲間の証である。

 大学に進学はせず、仕事場兼用マンションの部屋を貰って様々な漫画を追い立てられるように描き続けている。武曲と対面した足利・灯萌(奪ってもいいのよというか奪え・b32352)は、一部の事は省きつつもそう伝えた。
「許可を得た……武曲さんモデルのキャラも……ちょくちょく、出してる……」
「そ、そうか。なんか少し恥ずかしいが……うん、光栄だな」
 頬を染めながらも、武曲は微笑む。頬を書きながらも視線をそらすことはない。
 灯萌の調子も自然と弾み、どことなく頬が緩んでいく気がした。
 もっとも、あまり無理はできない体。それでも、同窓会は貴重な機会、楽しまなければ勿体無い。
「……武曲さんは、どう?」
「私は、大学の勉強に追いつこうと必死だな。幸い、銀誓館の経験を下に何とかなっているが……」
 静かに、けれど暖かく、楽しい時は過ぎていく。美味しい料理に舌鼓を打ちながら、お腹も徐々に満ちていく。
 いつまでも、いつまでも。別れの時間が訪れるまで。その時まで、全身全力で楽しもうか。

●2016年の日常
 狼の顔を持つ牛妖獣を静音が蹴りあげて、銀麗が即座に凍らせる。
 ゴースト退治の戦場での、久方ぶりの二人の連携。砕け散る妖獣含め、学生時代と比べてもほぼ遜色はない出来栄えだ。
「……でも、疲れてるのかな。ちょっと動きにキレがないわねぇ。ま、さ、か、たった一年で自信をなくしたなんて言わないよね」
「寝不足だからじゃない? アメリカの大学って、行きはよいよい帰りは怖い、だもの!」
 数日まともに寝ていないと切り替えしつつ、静音は近づいてきた豚妖獣を蹴り飛ばした。
 即座に銀麗も反応し、豚妖獣を氷柱の中に閉じ込めていく。
「それならいいけど、油断する暇はないわよ? 戦いも、人生も!」
「もちろん!」
 砕いた後、背を合わせて周囲を探る。
 二人を取り囲む妖獣たちに視線を送り、阿吽の呼吸で飛び出した。
 日々と言う名の戦場に再び回帰するために、彼女たちは戦っていく。かつて、銀誓館でもそうしていたように……。

「……ふぅ」
 壁に背を預け、瞳を閉ざす。
 フリーランスの護葬士として人を守る仕事をしている赤護・侑(紅い護葬士・b26012)は、仕事中の僅かな時間を一時の休息に当てていた。
 世界結界が壊れ行く今、ゴースト絡みの仕事も増加した。
 今の余計な土産は迫る数体のゴースト。護衛対象は危急の青年。報酬は期待薄。
「……はぁ」
 漏れでたのは嘆息か、疲れから来る吐息か。いずれにせよ……と、彼は口の端を持ち上げて、壁から背を離して身を起こした。
 瞼の裏に浮かんできた情景は、銀誓館で過ごした日々。死と隣り合わせの青春だ。
「さて……」
 みなぎる活力と共にゴーストの飛び出して、ガトリングガンを掃射する。近づくゴーストを撃ち抜いて、消滅の時を迎えさせていく。
 燻る硝煙と共に青年を見送るのは、暫く経ってからの事だった。

●2016年の卒業式
 銀誓館学園で過ごした十年間。生と死の間を駆け抜けた、青春と戦いの時。
 思い出を一つ、また一つと思い浮かべていく度に、儀水・芽亜(夢何有郷・b36191)の瞳にも涙が自然と滲んできた。拭っても、拭ってもこぼれ落ち、いつしか頬を伝うほどになっていた。
 校舎を訪問する機会がないわけではない。まだ、運命予報を聞きに来ることもある。
 しかし立場は変わっている。先代から引き継いだ結社ももう閉店だ。
「……それでも」
 能力者としての戦いは続けていくと、芽亜は空を仰ぎ見る。
 桜舞い散る景色に決意を固め、拳を力強く握りしめた。
 人々を護るのが、力あるものの義務。
 一般人だけではない、今ここに、あるいは何処かに存在する能力者もが世界結界崩壊後に確実に生き延びられるよう、外部講師などを担い尽力して行こう。
 その為に、芽亜は踵を返して歩き出す。
 銀誓館に別れを告げる。それが、未来への第一歩なのだから……。

●2017年の日常
 王座を守るのでは楽ではない。体をぶつけあう競技でならばなおさらだ。
 体はボロボロ、第一線に立つのも難しい状態へと陥って、ひかりは引退試合を……統一王者のベルトを賭けた防衛戦を行うことを決断した。
 最期を看取れる相手は一人しかいない。
「……よく来たわね」
「私しかいないもの。ひかりねーちゃんの……草剪ひかりの死に水を取れるのは」
 かつてひかりが王者を獲得したリングの上。沢山の観衆に見守られながら、晴香は臆する事なく立っている。
 王者直々の指名。何度も何度もぶつかっては跳ね返されてきた高く厚い壁。全盛期より衰えたとはいえ、まだその実力は世界一。
 だから、勝つ。勝てるかではなく、勝つ。
 決意を胸に拳を握り、合図もなく構えを取る。
 二十年近く追いかけてきた大きな存在を追い抜き、飛び越えると睨みつける。
 受け止め、ひかりも悠然と構え直す。勝って花道を飾る、それしか無いと、晴香だけを見据えて行く。
 高らかにゴングが鳴り響いた。
 二人のレスラーが動き出す。
 どうしても体力で劣るひかりが速攻を仕掛け、晴香も真正面から応対する。
 経験と技術で劣る分をフィジカル面でカバーして、全力全開で叩き潰す。
 腰を捕まれ、得意のスープレックスに持ち込まれても諦めず、晴香は勢いをつけて抜けだした。そして……。
 新たな歴史は、若き挑戦者によって刻まれた!

 緋央が保母さんになって数ヶ月、静音もアメリカの大学卒業を迎えた秋の頃。二人は、久方ぶりに日本の喫茶店で再会した。
「ボクは保母さんになって、小さな子供達に元気をあげてみんなの未来を応援中なんだっ。静音は大学も卒業したんだよね? 何か変わって見えてきたものとかある?」
 質問を受け、静音は瞳を閉ざす。紅茶を口にした後に、静かな吐息とともに語りだす。
「……そうね。勉強がなくなった分、自分から学ばなきゃならない事が増えたかな?」
「じゃあ、不安なこととかは?」
「んー、今は特にないかも。駆け抜けることに精一杯で……」
 他愛なく、概ね順調。今日も会話の花が咲いていく。もっとも……恋人に関する話を除いては、であるのだが……。
 二十代前半の二人、絶賛恋人募集中。あるいは未だに夢見る女の子?

 梶原沙紀と結ばれ、梶原芽亜に。
 ゴースト退治に向かう夫を見送り、芽亜は自分の勉強に勤しんだ。
 心配で勉強に手がつかないことも多いけど、それはこれまでもあったこと。何を今更、という気もするけれど、昔と今では色々違う。
 恐らく、戦争級の事件でもない限り肩を並べて戦うことはもうないのだろう。夫を護ることはできないのだろう。
 そんな思いが、ペンを握る腕を重くする。思考を纏める力を乱していく。
「……大丈夫、今、戦うべき相手は違う」
 祈るように言い聞かせ、無理やり先に進んでいく。一度歩み始めたなら、後は勢いに乗っていけるから。
 梶原芽亜にとって、今の戦場はこの大学。それを違えず、乗り越えよう。
 いつか夢見た未来の為に……。

 大学を卒業した直後の三月。桜がほころびはじめた春の先。
 暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・b42300)と中寮・琴乃(風花の舞う静謐の乙女・b47782)は結婚した。
 場所は鎌倉近辺のチャペルにて。結社員やお世話になった人を呼び集めて……。
 ……式の前の待機時間。武曲が二人を前に晴れやかな笑顔を綻ばせた。
「おめでとう、二人共」
「結婚おめでとう、魎夜……琴乃」
 続く織泉羅が少し言いよどんでしまったのは、今まで琴乃の事は苗字で読んでいたから。
 今日から、名前で読むと決めたから。
「お二人とも、ありがとうございます」
「ありがとう、武曲、織泉羅」
 祝福を受けた二人の礼は優雅に、今日だけは恭しく。
 清廉に輝くウェディングドレスと白いタキシードを前にして、龍・月華(月華公主・b81443)もまた元気な声を響かせる。
「今も結社には残っておるが、お主らといた頃が一番楽しかったの。それがいなくなってしまうとは、残念じゃ」
「確かにな。ずいぶん賑やかだったと思うよ」
 目を閉ざせば思い浮かぶ、かつての情景。静けさが訪れようとした空気は、マオが遮り打ち破る。
「ま、あんまり湿っぽくなってもいけねぇ。お前等二人なら必要ないだろうがな、一応役に立つ話をしてやるぜ」
 夫婦生活のアドバイスを、自分の息子の柳の写真を見せながら。
 経験者からの知恵を正面から受け取って、魎夜も琴乃も笑い出す。今日は全てが愛おしい。
「おめでとうございます。琴乃先輩、お幸せに。それと、魎夜先輩は可愛い女の子を見るとちょっかいかける癖がありますから、ちゃんと捕まえちゃって下さいね」
 苺子が琴乃を祝福し、魎夜に釘を刺す。
「ええ、勿論……いいえ、大丈夫です」
「ちょ、それはないぜ……」
 力強く頷く琴乃とは裏腹に、大げさに肩を落とす魎夜。そんな彼にも向き直り、苺子は更に言葉を重ねていく。
「魎夜先輩からは色んな事を学びました。今のわたしがあるのは、先輩のおかげです。本当にありがとうございました……師匠」
「お、おう……なんだ、改めて言われると」
「恥ずかしい、か?」
 頬を掻く魎夜に、切り込んだのは真月・沙梨花(死門封殺の呪を操る者・b56331)。
「いや、まあ」
「……苺子だけじゃない。恐らく、これからも多くの人間と触れ合い、変えて行くのだろうな。お前は」
「そうですね。魎夜様なら、きっと……」
 琴乃と交わす視線が、魎夜に向ける信頼の証。どうにもこうにも言葉の出ない彼への助け舟は、会場の方からやって来た琴吹・つかさ(祓魔の守護拳士・b44491)がもたらした。
「お、おう! つかさ!」
「魎夜君、琴乃ちゃん、結婚おめでとう。五年前、ボク達の結婚式も出てくれたし、今日は腕によりをかけて作ったよ」
 現在、拳士しつつもパティシエを務めているつかさ。披露宴会場では、二人の重ねてきた月日のように積み重ねた巨大ウェディングケーキが待っている。
「……うん、本当に懐かしい顔ばかり、来たかいがあったね」
 作成者たるつかさは周囲をキョロキョロ見回して、嬉しそうに頬を緩めた。
「そう集まる機会もなかったしなー」
「ええ、本当に……」
 折よく話題を切り替えられてホッとした魎夜の傍らで、琴乃は皆に向き直る。
 礼儀正しく一礼し、静かな言葉を紡いでいく。
「本当に、皆様方、この度は過分なるご好意、夫魎夜と共に改めて感謝申し上げます」
「……」
 言葉の終わりには、返事の代わりに優しい笑み。
 同時に荘厳なる鐘の音。
 祝辞の時間が終わり、結婚式の時間が開幕した。
 かつての仲間はチャペルの中へと移動して、二人は少し遅れてバージンロードへと歩き出す。
 儀式の中、いつもは騒がしい結社員も、この時ばかりは二人の誓いを静かな眼差しで見守っていく。
 祝詞を上げた神父に促され、魎夜が歩み出た。
「昔、言ったけど改めて。これからもずっと一緒だぜ、琴乃」
「……勿論。貴方の隣が、私の居場所です。私は貴方と共に在りましょう、魎夜様」
 近いとともに、口付けを。
 永久に続く絆の証を。
 祝福とともに彩られ、魎夜と琴乃は結ばれた。
 そして……披露宴会場にて。笑顔で過ごす二人に、月華が今一度言葉を送る。
「旅に出る……とのことじゃったな。もし有事の際には遠慮なく呼ぶが良い。少なくとも、お主らへの恩はその程度で返せぬほどにもらったのじゃからな」
 頷くと共にいたずらっぽく微笑んで、さらなる誓いを立てていく。
「この後にもし妾の世界征服が成ったのなら、お主らの幸せに全力で協力させて貰う予定じゃ。じゃから、幸せになるのじゃぞ」
「……もちろん」
「……ええ」
「表情が固いで魎夜ー」
 厳粛に受け止める二人には、マオが気楽に野次を飛ばした。
「うるせー」
「おめでとうなお二人さん!」
「ええ、ありがとうございます」
 一つ歯車が変われば、いつもの空気が訪れる。
 しんみりした空気など、彼らには似合わない。
「……だから、あまり寂しくないと思うのだな。魎夜は琴乃と違って」
 変化に、織泉羅がため息一つ。
 されど、呆れた気配はあまりない。
 ただ、憧れていた琴乃とそうそう会えなくなる事にそっと胸を抑え、けれどおくびにも出さずに微笑んでいく。きっと、また会えたなら昔のように話ができる。それが、彼女にとっての魎夜なのだから……。
「……改めて思う。私も、銀誓館に来て色々と変わったものだと思うが……暗都魎夜やその周囲に集まった仲間たちの影響力は特に大きかったように思う」
 変わらぬ仲間たちを眺め、沙梨花も自然と呟いた。その事に気づいても、恥ずかしさなど微塵もない。
 ただ、嬉しい。うまく伝えることはできないけど、ただ、そう感じていた。
 きっと、いつまでも続いていく。この時間が過ぎ、別れの時がやって来ても、きっと……。
「二人とも体に気をつけて、元気で! っと、宿儺も、魎夜君と琴乃ちゃんを宜しくね?」
 閉会を迎えた時、つかさがここにはまだ出れない大切な仲間に呼びかけた。
 呼応し琴乃がイグニッションカードを取り出して、待機する宿儺を示していく。
 何処かから、宿儺の鳴き声が聞こえた。そんな気がして……。
 ……様々な想いを胸に、二人は旅立つ。
 世界へと。様々な事件を解決しつつ、様々な場所を巡るため。
 危険は多く、安全な場所は少ない。
 けれど大丈夫だろうとの確信を、苺子は抱いている。
 否、誰もがそう確信し、笑顔で二人を見送った。
 次、再会するのはいつになる? いつであろうとも、きっと皆で騒ぎ逢える。
 それが、彼らにとっての日常だから。
 さあ、自分たちの道へと帰ろうか。
 ……道を進み続けた先、どこかで交差しているはずだから……。

 卒業してからは、学生寮の管理人として來那は生活していた。時の流れは否応なしに様々な情勢を変化させるのか、仲が良かった友人や仲間と連絡を取り合うことはしても、学生の頃ほど顔を合わせたりはできなくなっていた。
 しかし……。
「あ、メル……ありがと」
 隣には、そらがいる。数ヶ月前に一緒になった、愛しい妻が隣にいる。
「ん……どういたしまして、來那」
 卒業してからも、そらはずっと寮に住んでいた。それが大学に通うのに便利だったこともあるけれど、おそらくはそれ以上に、來那を支えていきたかったから。
 ずっと付き合っていたのはみんな承知の上。結婚式の際には待たせすぎ、なんて言われたこともあった。
 けれど……。
「……これからの二人の道はきっと一緒……だよね」
「ううん、ずっと一緒、だよ?」
 そう決意したのはずっと昔。だから、笑って言い返せる。
 これからずっと同じ場所。二人で協力して寮を守っていくのだから。
 さあ、寮生たちがお腹を空かせて帰ってくる。育ち盛りの寮生に、空腹は何事にも代えがたい拷問だ。
 二人顔をあわせて微笑み合い、食事作りに精を出す。多くの言葉は必要ない。頷くだけで相手の欲しい物が伝わってくる。そんな、強い絆で結ばれたから……。

●2017年の同窓会
 統一王者決定戦から数ヶ月。同窓会の場に姿を表したひかりは、どこか吹っ切れたような笑顔を浮かべていた。
 事実上の引退後、歩み始めたのはプロレスと能力者双方の後進育成。勿論、若き女王を見守りながらである。
 件の若き女王、晴香。彼女は現在の統一王者。背丈こそあまり伸びていないけど……少しはオーラが出てきたかな? とは彼女の言。
 統一王者になった後に得たものは、決して栄光だけではない。茶番で護られた世襲女王と言われたこともあったけど、全て実力で跳ね返した。
 だからこそ、自信が胸に溢れている。王者の風格を纏い始めている。多くの、昔を知る者たちが集う場所でも、それだけは変わることがなく……。
「……今度は長期政権になるかもねー。私と違って無理はしない子だし」
「そうかもね。地道に努力も重ねてるし……」
 本人には聞こえぬよう、ひかりと静音が賞賛した。視線に気づいたか振り向いてきた際には微笑んで、かつてダンス勝負を行ったこともあった……などといった思い出話へと移っていく。
 驕ることはないだろう、油断することもないだろう。身内びいきがあることは否定しないけれど、晴香の実力は本物なのだから。
 だからこそ、直接賞賛を与えたい。その際には仮定ではなく断定したい。
 別の事を話しながら視線でも語り合っている内に、晴香も会話の輪に入ってきた。二人は快く受け入れて、これからのことを語り合う。
 世界は概ね平和なまま。しかし、心も体も、準備は整えて置かなければならない。
 地道な努力と誠実な態度、それが全てを解決するわけではないけれど、それなしで物事を解決することなどできないのだから。
 だから、これからもそれを肝に銘じてあり続けよう。少しでも良い未来を、明日を迎えるため。
 戦いはまだ終わらない。王者と元王者が語る文言に、静音も、皆も、力強く頷いた。。

●2018年の日常
 鎌倉市内の、とある安マンションの一室。私立探偵の看板を掲げる個人事務所の持ち主は、その実ゴーストや超常事件の仕事人、掃除屋を担う彰人。
 基本的には美人の依頼を優先し、依頼人をナンパすることも多い。もっとも、今年の春先からは少々趣きが異なってきたみたいだが……。
「……しかし、本当に良かったのか? 里奈なら、もっと大企業にも就職できたろうに……」
「いいのよ、私はこの時のために大学に行ったのよ? これからは一緒に頑張りましょう」
 あっけらかんと答えながら、里奈は椅子の背もたれに体重を乗せていた彰人の肩に手を載せて、さり気なく姿勢を正させる。彼が振り向く間もなく通り過ぎ、抱えていたファイルを棚へとしまった。
「ま、俺も嬉しいけどな」
「はいはい。雑談もいいけど、もうすぐ依頼人が来るんだから、きちんと格好を整えて起きなさい」
「うぃーす」
 気のない彰人の声に仕方ないなぁ、とため息を吐きながら、里奈は新たなファイルを取り出していく。本日の依頼が大学時代に広げたコネからのものであることを思い浮かべつつ、経理の資料に目を通していく。
 今のところ、問題はない。少なくとも、去年までの分を勘案しないのならば。
「……もう少し整理する必要がありそうね……あら?」
 質の違うため息を吐いた時、インターホンが鳴り響く。マイク越しに了承の旨を伝えたなら、しばらくして依頼人が入ってきた。
「お、美女の依頼人が!」
 やって来たのは和服美人。彰人が慌てて居住まいを正していく。
 もてなすために移動を始めた里奈が、冷たい笑顔と共に近づいてくるのも露知らず……。

 卒業後、風嶺・涼介(高校生ヤドリギ使い・b46356)はドイツのヤドリギ村に移住していた。植物の研究をしながら、楽隠居を決め込むつもりである。
 今日もまた、妖狐会社から頼まれた花の件でビデオチャット。相手は無論、武曲である。
「では予定通りマヨイガ経由で送りますね。あ、復興の件も植物関係でなら協力しますよ」
「ああ、よろしく頼む。それじゃ、また」
「こんにちはー。涼介さん、今日も来ましたですよー」
 話が終わり、ビデオチャットも切った時、折よく七瀬・鏡華(古流武術継承候補者・b49180)がやって来た。銀誓館で高校生活を送っている彼女が気軽に彼のもとを訪れることができるのも、ひとえにマヨイガのおかげである。
「いらっしゃい鏡華」
 幸せ満面の笑みを浮かべ、涼介は挨拶とキスでお出迎え。くすぐったそうに受け入れて、鏡華もキスで返していく。
 顔が離れると共に周囲を眺め、未だぼんやりとした光を放っている画面を発見した。
「もしかして、お仕事してました?」
「ああ。けど、もう終わったから大丈夫。鏡華こそ、今週はどうだった?」
「文武両道! ボクも水泳部で、能力者としても頑張ってるよ。最近はまた、新米能力者も増えたし……あ」
 語り終えた所で、鏡華は口をふさいでいく。照れくさそうに涼介を見つめつつ、口元を隠しながら話しだす。
「私も、かな」
「ふふっ、気にしてないよ。だって、今も可愛いもの」
「……もうっ」
 直そうかな? と思っても、中々直らないのが癖。恋人が気にしていないのならばなおさらだ。
 そんな、休日毎の甘い時間。楽しく、甘く過ぎていく。最初の会話が終わった後……さあ、今日はどう過ごそうか。

「現在、ミカンのキャンペーン中でーすっ。どうぞ、ご試食一口いかがですかー?」
 みかんの野望、ミカン王国設立。
 全人類がミカンの素晴らしさを知り、ミカンが愛される世界。そんな場所を作るため、計画の第一歩として彼女は故郷のミカンをアピールするキャンペーンガールに名乗りを上げた。
 ご当地プリンセス、農家の期待の星(みかん調べ)として活動する彼女の熱意にたてられてか、企画当初よりも多くの人々が試食し、買っていってくれている。後々数字を見てみれば、それが事実だったと判明するだろう。
「現在、ミカンのキャンペーン中でーすっ。どうぞ、ご試食一口いかがですかー?」
 結果を受けてなお、彼女は止まらない。
 まだまだ、伝えるべきミカンは沢山あるのだから
「現在、ミカンのキャンペーン中でーすっ。どうぞ、ご試食一口いかがですかー?」
 ミカン王国設立を夢見て、彼女は全身全霊で駆け続ける!

 他愛のない、デートの時間。
 場所はコウの家。別に特別な事は何もない、ただ甘いモノを食べて駄弁り合う、ただただ優しい一時だ。
 もっとも、食べるのはもっぱら伍実の側。持ち込んできたクッキーを頬張りながら、ふとした調子で口を開く。
「最近は何してるの? 私は人の家でもっぱら転がってる」
「夢に向かってアルバイト中」
 答えるコウは苦笑い。着実に進んでいることはわかるけど、その進歩が芳しくないからだろうか?
「アルバイトは大変だね、……ん、応援はしてる」
 少しだけ瞳を伏せた時、チョコケーキが差し出された。
 スプーンを差し、口へと運べば、仄かな苦さと沢山の甘さのコラボレーションが心地良い。
「あまい」
「あまいの好きだもんね、伍実チャン」
 そろそろ必要だろう、とコウがホットミルクを差し出せば、伍実は慣れた調子で受け取り口をつける。
「美味しいね」
 美味しいお菓子と仲良しの友達、ゆるゆる近況を語り合う日。良い物だ、と自然と頬が緩んでいく。
「ふふ、ありがとう」
 コウもまた目を細め、美味しそうに食べていく横顔を見つめていく。
 実は、手作りのものを本人に食べてもらうのは初めて。頬が少し熱いのは、ちょっとだけ照れくさいからだろう。
 そんな、休日の一幕。特に波乱も起きぬまま、それが良いのだと語らずともわかりつつ、優しい時間が過ぎていく……。

●2018年の同窓会
 同窓会で、紅葉は武曲の入社を祝福した。
「おめでとうございますぅー。どんな企業なんですかー?」
「建築に関することが主な企業……だな。紅葉こそ、仕事はどんな感じだ」
 問い返され、紅葉はにっこり笑顔で切り返す。
「漫画サイト支援を続けていましてー。今は有名人作戦が順調な女性アイドルさんとのコラボ漫画が人気なんですよー」
 世界の真実を交えた漫画も、沢山の人が読んでくれている。概ね、作戦も仕事も順調なようだ。
「それは良かった。もし私に手伝えることがあれば、手伝わせてくれ」
「はいー。私の方こそ、お手伝いできることがあったら言ってくださいねー」
 互いに夢に向かって快進中。未来に笑顔で語れるよう、これからも、支えあいな頑張ろう!

●2019年の日常
 初めて大舞台での主役に抜擢され、邁進し続けてきた静音もプレッシャーを感じていた。そんな彼女の下へと足を運び、緋央は優しく微笑んだ。
 昔とは違った苦しみがあるはず。だから……。
「大丈夫だよ、静音」
「……」
「ボクはずっとみんなを応援してるからね。何かあったらいつでも一休みしに戻って来てよ。そして、元気を貰ってまた一歩を……」
 語りかけていく内、不意に強く抱きしめられた。
「ありがとう、緋央」
 優しく抱き返し、囁きかける。
「卒業式の時以来だね。ほんと、甘えん坊さんだね」
「……ごめん。でも……」
 謝罪を紡ごうとした静音の唇を、緋央は抱きしめる力を少しだけ強くして塞いでいく。
「ボクで良かったらいつでも一緒に踊りに行くから、トップダンサーと昔一緒にチアしたって自慢するから、頑張ってね」
「……うん」
 安心するまで、心が落ち着くまで、彼女に鼓動を聞かせよう。大切な温もりに包まれたなら、きっと大丈夫。
 今日、この大舞台で、静音の夢が叶う。それを、緋央は真剣な眼差しで見守った。

 大学院を卒業し、嘉月は宇宙事業関係の民間企業に研究員として就職していた。
 学生時代に培った経験と能力者としてのキャリアを活かし、これまでとは全く異なる観測方法の天体望遠鏡の研究に取り組んでいる。
 ゴーストが蔓延る中でも、ちゃんと機能する天体望遠鏡を作りたい。それが、彼の夢だ。しかし……。
「そこっ!」
 能力者として、ゴースト討伐などの活動も継続中。今もまた、廃ビルの地縛霊と戦っている最中だ。
 呼び出したアヤカシたちが一旦嘉月へと収束し、改めて地縛霊へと向かっていく。それは、どこか統率がとれているようにも思われた。
「いつか、必ず……」
 それは、実験と実践。
 かつて英霊と交わした契を果たすための。
 決意を胸に、彼は戦場でも研究室でも全力で実験し続ける。それが、未来の為になると信じて……!

●2020年の日常
 二年間資金を溜め、到達した里奈と彰人の一つのゴール、結婚式。
 綺麗だ……とおでこにキスを受けた時は照れくさく、バージンロードを歩く時は何処か物悲しく。神父の言葉に従いキスを交わしたなら、彼の温もりが心地よい。里奈は心からの笑顔を浮かべたまま、彰人と共に結婚式場を後にした。
 続いてやって来た披露宴。友人のスピーチに里奈が涙して、様々な祝辞を受け取って……そんな時を過ごした後、彰人は少々上の空。いつもよりおめかしした女性陣を、いつもの様に褒めていた。
 今日ばかりは笑顔で許す。そんな言葉を聞いていたか否かは分からない。だが、いずれにせよ変わらぬのだろう。それがきっと、彰人なのだから……。
 ……そして披露宴も終わり、新婚旅行。此方も楽しい時が過ぎ去った。
 楽しい時は瞬く間に流れ行き、事務所近くに構えた新居へと帰ってきた。
 めくるめくイベントに、疲労した様子で寝室へとやってきた二人。ベッドに腰掛けた時、彰人がぼんやりとした様子で呟いた。
「しかし、銀誓館学園での出会いから十一年か」
「ええ」
「そういや、武曲と戦った戦争の後から付き合い始めたんだよな、俺たち」
「……」
 目を細め、追憶に沈む彰人。
 里奈は小さく頷き、横から優しく抱きついた。
「もう、一生離さないから……。寂しくさせたら、減点よ?」
 耳元に囁きかけたなら、彰人からの言葉を待ちわびる。
「ナンパはライフワークなんで変えられんが、里奈を寂しくはさせんさ!」
 言葉だけの男じゃない。
 態度で示すが男の矜持。
 彰人は里奈を押し倒し、優しく唇を奪い去る。
「……もう、彰人ったら……」
「はは……」
 甘く微笑み、今一度口づけを。互いの心を紐解いて、重ね、溶かし混ぜ合わせる。熱と熱を伝え合い、確かな絆を刻み合う。
 二人だけの秘密の場所で、二人きりの蜜月の時の中で。
 ずっと、いつまでも……。

 結婚後、魎夜は琴乃と共に、世界中を旅していた。
 旅すがら悪の能力者と戦ったり、来訪者や転移門、メガリスの探索を行なっていた。
 今もそう。南米にて、強大なゴーストを蘇らせようとしている悪の能力者組織と戦闘中である。
「魎夜様、背中は私とこの仔にお任せを……では各々方、参りましょうか」
 前へ前へと進んでいく、未だに続いていくはねむーん。ただただ魎夜を支えるため、琴乃は今日も真ケルベロスオメガの宿儺と共に魎夜の背中を守る。
「ああ……それじゃ、行くぜ!」
 後方に憂いなく扉を蹴り飛ばし、魎夜は部屋の中へと侵入する。中にいた者たちが、慌てて武器を手にとった。
「だ、誰だ!」
「通りすがりのもんだが、てめぇらの悪事もそこまでだ」
 数の上では圧倒的に不利。
 されど、練度が違う。経験が違う、力量が違う。仲間との絆の深さも桁違い。
 部屋の中心へと飛び込んで、魎夜は暴れまわる。逃げようとした者はいたけれど、全て宿儺が先回り。入り口を塞ぐ琴乃の名の下、一人、一人確実に打ち倒した。
 殲滅が完了したならば、儀式の陣を破壊する。後は集まっている残留思念に詠唱銀をかけて不完全なまま討ち倒せば、無事任務は終了だ。
「不味い飯屋と悪が栄えたためしはないってな!」
 ためらうことなく詠唱銀を投げ込んで、魎夜は身構える。勝利だけを確信し、不完全なゴーストへと向かっていく。
 琴乃と宿儺の援護の元。見事、炎の拳が突き刺さり……。
「……これでよし、と」
 場所は変わって南米の宿の中。事の顛末をしたためて、琴乃は日記を閉ざしていく。
 中には、今までの旅路が詰まっている。概ね楽しいことが多く、悲しい別れは少しだけ。全て、大事な思い出だ。
「後は……」
 旧友に手紙を送るのだと、便箋を取り出していく。文章をしたためながら傍らに視線を写し、魎夜の寝顔を見て微笑んだ。
 今日も、魎夜と共に。明日はどんな冒険が待っているのだろうか?

 真月家は、人間社会を維持し、それを乱すゴーストや能力者を狩ることを生業としてきた一族。しかし、銀誓館での経験を受け、沙梨花の在学中から、世界結界崩壊過程や崩壊後に力弱き者達を守り脅威を排除する組織へと方向転換を試みてきた。
 新世界の光当たらぬ場所にこそ、自分たちの為すべき事がある。
 真月家当主として、沙梨花は今日も戦場に立っていた。
「九時方向! 妖獣共が向かった! 決して通すな!」
「おうっ!」
 山の中、背後には小さな幼稚園。目の前には妖獣の群れ。
 闇を闇のまま葬るため、沙梨花は冷静に指揮を取る。一匹たりとも通さぬと、逃げ道を塞ぐように呪言を放つ。
 程なくして殲滅は完了するだろう。
 誰も知らぬまま、それがより幸いと確信し……。

 銀誓館学園ドイツ校、設立間近。校長及び講師を務めることになるレアーナ・ローズベルグ(心にいたみを刻む者・b44015)は、完成そして開校の時を今か今かと待ち侘びていた。
 そんな折、一本の電話が彼女に届く。親友の鬼灯・遙(彩雲のサーブルダンサー・b46409)からのものだ。
「あー、もしもしレアーナ? 久しぶりー」
「久しぶり。連絡かけてくるなんて、何かあったの」
「いやさ、私今ドイツにいてさー。ちょっと手を貸して欲しいのよね」
 ……それが、レアーナが遙と、そして堂々していた八枷・捺希(エグゼクター・b51967)と再会した顛末である。
「……厄介事に巻き込まれる気がする……」
 そんな不安を抱きながらも、レアーナは指定されたホテルへと向かった。
「久しい顔に出会ったな、レアーナ」
 ロビーにてレアーナと再会した捺希もまた、喜ぶ様子を見せながらも浮かない顔。
 いわく、遙とレアーナが揃うと碌な事がない。……もっとも、今回のメガリス情報自体彼が持ってきたものであるのだが……。
「それじゃ、行きましょうか!」
「行くって何処に?」
「メガリスを探しに、だな」
 遙がやるべきことを指し示し、レアーナが確認。捺希が目的を語り、方向を違えないように調整する。
 そんな行動を繰り返し、やって来たのは洞窟の中。
 出迎えたのは怪しいローブを被った男たち……。
「ったく、やれやれだな」
 予感は的中した。ほら見たことかと、捺希が得物を構えていく。
「そんな事言って、情報持ってきたのは捺希じゃない」
「俺は知らん、全て遙が悪い」
 口喧嘩を行いながらも、戦う準備は忘れない。
 ローブの男たちがアビリティを発動する兆しも見せた。もはや、手加減する必要もなくなった。
「でも、こうやって一緒するのは久しぶりね。腕落ちてないかしら?」
「そんな事言って……二人共イッコ貸しですからね。今度うちのガッコに特別講師で来て下さいよっ!」
 何処か嬉しそうな遙に対し、レアーナもまた笑いながら不満を叩きつける。
「気が向いたらな」
「気が向いたらね!」
 ハモりながらの返事には思わず苦笑も漏れたけど、連携精度に問題はない。
 レアーナの後方支援を受けながら、遙、捺希の両名が突撃する。最初の攻防で高い力量は持っていないと判断し、遠慮なく暴れ始めていく。
 息のあった連携を重ねれば、付け入る隙など存在しない。
 程なくして敵対組織の殲滅は完了し、悪しき儀式もぶっ潰した。惜しくも、メガリス情報は敵対儀式が生贄を集めるための偽情報だとも判明したのだけれども……。

 夫と街を歩いていた時に見つけた、笑顔。
 変わっているはずなのに、変わっていないと思えた優しい笑み。
 伝えたいことがあったから、そらは夫と共に歩み寄る。呼び止めて、微笑み口を開いていく。
「いつかのクリスマスのお返し、です。いつも、皆と……お帰りなさい」
 思い出は、永久になる。そう心に決めたなら……。

●2020年の同窓会
 トップダンサー入りの祝賀会も兼ね、両手いっぱいの花束で祝福を。
 静音の為のサプライズ。首謀者たる銀麗は、見事驚きと喜びの涙を獲得し、笑顔で花束を贈呈した。
「……本当に、ありがとう。銀麗先輩……みんな……」
 祝辞と花束を贈られた静音が落ち着いた時、いつもの同窓会が開幕した。
 会話を交わす静音と銀麗。話題は近況へと移りゆく。
「現在のあたし? んー、自分で選んだとはいえ表舞台には色々な事情で立てないからね。表舞台で活躍している春宮を見るのは嬉しいわ」
「それじゃあよりいっそう頑張らなきゃね。銀麗先輩が頑張れるように」
「ふふっ、ありがとう」
 交わすは約束、暖かな笑顔。これからも在るべき自分になれるよう、全力を尽くすことができるように……。

 同窓会に合わせ、帰国していた侑。彼も又、静音のトップダンサー仲間入りを祝福した。
「改まりますが、おめでとうございます。こうみんなで集まると、誕生日で色々悩んでお祝いしたことが懐かしいですね」
 語るついでにお祝いの品をプレゼント。巡った国の香料の詰め合わせを手渡した。
「ふふっ、ありがとう。ほんと祝福された分だけ、頑張らないとね」
「その意気です。でも、多忙な日々でも休息は必要ですから、時々使ってみて下さい。あ、そうだ。もしよければ、デビューからの話を……」
 そして、話題は移り変わる。
 会話の花は咲き続ける。
 一年に一度の同窓会。解散するその時まで、熱気が尽きることはない。
 熱気が尽き、解散と相成ったのならば、別れの代わりに、互いの活躍を祈り応援し合おうか。

●2020年の卒業式
「はぁ……。ボクも、とうとう高校卒業かぁ……」
 春先の青天を仰ぎ見て、穂村・耶子(橙色の金平糖・b84998)は静かなため息を。今までの想い出を空に浮かべ、静かに目を細めていく。
 銀誓館学園に入学してからの長い時間、様々な事を経験してきた。肝心の胸元は……と寂しい想いをすることもあるけれど、そこは気にしたら負け、問題ない。
 これから先は、秘伝の稲荷寿司を再現するという夢を追いつつ、生き別れになった両親を探す旅に出る。
「本当の旅は、これから始まる……なーんてね! よぉし、頑張るぞぉ!!」
 満開の桜に決意を示し、拳で点を突き上げた。
 行き先は、輝く希望で溢れている。夢を忘れぬ限り、永遠に……。

 卒業式後の、空白の時間。鏡華は教室の窓に体を預け、ぼんやりと空を眺めていた。
 今日で、銀誓館学園ともお別れ。様々な想い出を、胸に……。
「男子は外で見張って! カーテン閉めて!」
「えっ」
 静かな世界に響く、委員長の声。
 戸惑っている内に女性陣に囲まれて、剥ぎ取れー、だの着替えだー、だのともみくちゃにされていく。
 ドレス姿になっても自体を把握できない鏡華の手を握り、友人たちに拉致られた。
 卒業生や在校生、果ては保護者の皆様の視線を浴びながら校庭を走り、校門を出て、近くの森へ。あれよあれよと向かう先、教会の前には白いタキシード姿の涼介が。
「あ……」
 それだけで全てを理解した。
 十分過ぎる程だった。
「七瀬鏡華さん、僕と結婚して下さい」
「……はい」
 言葉とともに流れ出す、暖かくて優しい欠片。
 涼介は彼女に歩み寄り、指で静かに拭っていく。ここまで連れてきてくれた者、着替えを手伝ってくれた者に一礼し、二人一緒に感謝した。
 そのまま教会の扉を押し開ければ、準備は既に整っている。
 ためらうことなくバージンロードへと歩みだし、神の御下で永久の誓を。キスを交わして、微笑み合い、確かな絆を結んでいく。
「これからもよろしくね鏡華」
「はいっ!」
 涙を浮かべながらも晴れやかな笑顔に染まる鏡華を見逃さず、写真を一枚。
 勝手に取られたことも、今、この瞬間は気にしない。
 微笑み合いながら二人は寄り添い、バルコニーへと進んでいく。
 鏡華がブーケを投げれば、後を追うように青い小鳥たちが飛び出した。
 新たな幸せを届けに行くかのように、二人に幸せを残して飛び立った。
 故に、このブーケを受け取った者の、二人を祝福した全ての人々の、勿論二人の未来も明るく――。

●2021年の同窓会
 秋月・善治(運命予報士・bn0042)の店がオープンし、本年から同窓会はそこで行われる事になる。
 毎度の通り同窓会の為に帰国した侑は、礼服と花束で持って祝福した。
「遅くなりましたが、独立、開店おめでとうございます」
「ありがとう。様々な人々の力あってのことだ。これからも、この夢を続けて行けるよう尽力するよ」
「ええ。ではまず……料理をいただけますか?」
「ああ、喜んで」
 かつての成人式で、善治の料理を味わってみたいと思った。その願いが叶えられるのだから、自然と頬も緩んでいく。
 無事料理を口にすることができたなら、改めて善治に訪ねてみよう。
 料理の拘りや、能力者になってゴースト退治を経験した時のこと。
 恐らくは、どれも楽しい話題になる事柄を……。

 双臥は亜璃亜に連れられて、同窓会へとやって来た。
 目的は勿論、昔の仲間。綺麗な店に美味しい料理。
 料理に舌鼓を打ちながら、ゆっくりと懐かしい仲間との時を過ごしていく。すると、亜璃亜が静かに立ち上がった。
「お茶配りのお手伝いしてくるね」
「ん、わかった」
 双臥は料理の手伝いなどはできないから、その分会話に耳を傾ける。双臥は少しだけ黒いスーツの襟を緩め、椅子に深く腰掛けた。
 手伝いを申し出た亜璃亜は赤いドレスの裾を翻し、軽快に品物を運んでいく。
「善治さんも、料理が一段落ついたら少し休んできたら?」
 同窓会が始まってから今まで……否、おそらくは始まる前から、善治は一度足りとも休んでいない。
 故に行われた申し出に、善治は考える素振りを見せていく。
「ん……そうだな。追加の品もすぐに来るだろうが、話す時間はあるだろう」
「ええ、せっかくの同窓会だもの。皆で楽しまなくちゃ!」
 その間は、自分がキッチンを守る。飲み物くらいは出せるからと意気込んだ。
 今日だけ赤いドレスの美人のウェイトレスに、同窓会は更に盛り上がる……!

 同年には、武曲の故郷の復興も始まっていた。
「ついに里復興ですかー」
「ああ、ついにここまでこれたよ……うん、感慨深いな。紅葉の調子はどうだ?」
「私の漫画サイトも、かなりの規模になっているのですよー。そろそろ連載が終わる漫画もありますしー。……あ、里復興のドキュメンタリー漫画もありかもですねー」
 話す内に、アイデアが湧いてくる。湧いてくれば、後はゴーストライティングが何とかしてくれる……はずだ。
「武曲さんー、手伝わせてくれませんかー? ドキュメンタリーで有名になればー、観光目的で足を運ぶ人も増えると思うのですよー」
「……そうだな、よさそうだ。是非、私からもお願いする」
 だから手伝いを申し出て、武曲が了承する。
 復興、そして漫画サイトの提携が、同窓会にて固まった。それを実現するために、近いうちに紅葉も里へと足を運ぼうか。

 徐々に衰えていく肉体。見るものが見れば分かる内実を隠すため、今までは武曲と電話口以外で会うのは渋っていた灯萌。
 来ないのか? と問われ一念発起。武曲にだけ、と決意して、同窓会にやって来た。
 再会した武曲に動揺の色はない。バレているのか、知っていて覚悟を決めていたのかは知らぬけど。
 故に、会話に乱れはない。近況や、想い出を語り合う。
「水道、ガス、電気、電話……これらが引ければ、後はすぐ。完成したら、約束通り……」
「うん……でも、無理はしないで……」
「安心しろ、無理はしないさ」
「ん……」
 優しく微笑まれ、灯萌は小さく頷き返す。約束を、夢を叶えるため、互いに支えあう事ができたなら……きっと……。

●2022年の日常
 ようやく、銀誓館学園ドイツ校が完成した。
 レアーナは校長兼講師として、今日も授業を行なっていた。本家銀誓館であったことなどを織り交ぜて、これから経験するだろうことを教えていた。
 そんな彼女の背後に近づく影。気づく者は、レアーナを含め一人もいない。
「やってるー? この前言ってた借りを返しに来たよん」
「わわっ!?」
 突如肩を叩かれて、レアーナはびっくり跳ね上がる。
 素早く横に移動した気配に向き直り、遙と知って胸をなでおろした。
「い、いきなり来ましたね……! えと……皆、日本の本校では学園最速の能力者として活躍した、鬼灯遙さんですっ!」
 親友を生徒に紹介、少しくすぐったくて照れくさい。そんな彼女の内実などいざしらず、生徒たちの間からは驚きと羨望の声が上がっていく。
 そんな反応に気を良くしたか、遙が壇上へと躍り出た。
「よしっ、そんなら一つ私が教えてやる! 皆まとめてかかってこーい!」
 かと思えば窓の外(三階)へと飛び出して、怪我なく着地し手招きする。一瞬だけ呆然とした生徒たちも次々教室を飛び出して、校庭へと向かっていった。
 見送るレアーナは静かな息を吐いたあと、優しく目を細めて微笑んだ。
「ほんと、学生時代と変わっていませんね……」
 瞳の中、次々と生徒を張り倒していく。張り倒す度にアドバイスを与えていく遙の姿。
 最初はバラバラだった生徒たちが、徐々に連携を取り始めている。
 戦いは辛いけど、隣立つ仲間がいてくれれば強く在れる。その片鱗を感じているのだろう。
 それが、生徒たちに伝わればいい。嬉しそうに暴れ回りながら周囲の景色を、レアーナの作り上げた光景を眺めていく遙を見つめ、レアーナは静かな祈りを捧げていた。
 今、遙に立ち向かい、前へ、前へと進んでいる生徒たちが、次の時代を作るのだから……。

●2022年の卒業式
 封印から目覚めた後、共に戦った銀誓館。今日でお別れだと、月華は静かに独りごちる。
 想い出に浸る場所を間違えたか、周囲には仲良く卒業を迎えたカップルたち。……自分の傍らにいたかもしれなかった少年は、もういない。次の宇宙へと旅立っていってしまったから……。
「……」
 今一度カップルを眺め、首を振る。有り得ない仮定に意味はない。
 否。
 時代さえ昔なら、月華は江湖に悪名高き月華公主。手に入れたいと思ったものは必ず手に入れて見せようぞ。
「……たとえ、幾星霜の月日が流れようともな……!」
 満開の桜の前で瞳を閉じ、誓いを胸に踵を返す。
 もう、振り返ることはない。ただ、前だけを見つめ進んでいこう。
 進んだ先に、望んだものが眠っている。今はただ、そう信じて……。

●2024年の日常
 まだ世界結界があって、つかさが幼かった頃。最終奥義の伝承者の資格は命のやり取りを以って。見えざる狂気に侵された父と祖父が戦い、祖父は死んだ。
 父への怨みや憎悪はない。
 父も狂気に囚われてはいない。
 親子だからなのか、殺し合いってわけではないからか、こうして退治していても躊躇いなどは微塵もない。
 ただ、真剣に父と向かい合う。避けられない勝負だと思うから……。
「やろうか、父さん」
 草原にて、構えを取る。始まりの時を見定める。
 かつての二人がそうであったように、殺気を全身から迸らせ、父の隙を探っていく。勝てないと感じてはいるけれど、それでも、勝つことができるよう……。
 勝負は一瞬か。葉が地面に落ちると共に、両者同時に土を蹴り――。

 結婚後は、ドイツのヤドリギ村で新婚モード。年数を重ねても変わらない初々しい夫婦として、鏡華と涼介は幸せな日々を過ごしていた。
 もっとも、本来鏡華はまだ大学生。マヨイガを用いての登校をしなければいけない立場。しかし……。
「久々の日本だね」
「うん、涼介さん、いってらっしゃい」
 仕事のためマヨイガを使いアメリカへと向かう涼介に、鏡華は行ってらっしゃいの口付けを。
 お返しのキスをされたなら、傍らに立つ幼い娘に玄関を明け渡した。
 そう、彼女が休学したのは子育てのため。愛を全力で注ぐためである。
「はい、お父さんに行ってらっしゃいのキスね」
「うん、それじゃいってきます。お父さんが帰るまでいい子で待っていてね」
 しゃがみ込み、娘からも心よりの愛を受け取りこちらからもプレゼント。愛を確かめ合った後、涼介はアメリカへ旅立っていく。
 旅だった先、花の届け先は公演を終えたばかりの静音のもと。
「……って感じでもう可愛いんですよ」
「へー、そうなんだ。そういえば、前も……」
 惚気話も、知ってる顔なら楽しいもの。だらしない……もとい父親らしい笑みを浮かべる涼介に、静音の表情もほころんだ。
 旧友との会話は、自然と疲れを溶かしてくれる。
 優しい香りもまた、心を癒してくれている。
 そんな空気が満ちるまで、楽しい時間は続いていく。愛する者の話題なら、決して尽きることはないのだけれど……。

「大分復興してきたみたいだね」
 無事家族(総勢十五名ほど)と再会した耶子は、少しずつ嘗ての姿を取り戻しつつ在る武曲の故郷を訪問した。
 家族と共に見守るは、地面に電線などが埋められていく光景。これらが終われば、本格的に建物などが立てられ始めて行くのだと武曲が言った。
 故に……。
「ねえ、もし良かったら、復興と繁栄に協力する代わりに、ここに住まわせて貰えないかな?」
「ああ、構わないぞ」
「ほんとっ!」
 武曲は言う。元より来る者拒まず去る者追わずの精神で運営するつもりだったのだと。
「それじゃ、お食事処、稲荷家へようこそ……なんてね! 里の名物になれるよう、頑張らないと!!」
 弾んだ調子で、耶子は拳を握る。
 未来への誓いを立てていく。
「ああ、こちらも協力は惜しまない。共に、ここを発展させていこう」
 笑顔が、互いに頑張りあうと決意した証。そう遠くない未来を見据え、今から努力を重ねていこう!

●2024年の同窓会
 卒業してからちょうど十年。
 すっかり変わった人がいる、全然変わってない人もいる。
 でも、元気であることに違いはない。
 再会し、会話してそれを確かめて、みかんは静かに微笑んだ。
 世界結界が崩壊し、日常も色々と変わってきた。でも、十年経っても集まれる仲間がいるのなら、何とかできそうな気がしてくる。
「……今日の再会に、乾杯!」
「乾杯!」
 改めて、乾杯を。銀誓館は永遠に不滅なり。
 皆が追憶に浸っていく。
 いち早く戻ってきたみかんは小さな息を吐いた後、荷物からミカンを取り出した。
「それはそれとして、ミカン食べる?」
「……そうね、頂きます」
 食事に花を添えるため、まずは静音に手渡して……。

 ミカンを受け取り、料理の合間に食しつつ、芽亜は周囲に微笑み返す。自分へと会話の水が向けられたなら、少しは女らしくなりましたかしら? との問いかけを。沙紀以外になびくことはありませんが、との惚気混じりの冗談を。
 それから本題。産休が開けたので、保育士の毎日が戻って来た。
 能力者の基礎は幼児期にあり、これはもう常識だから、仕事量が沢山。こうして懐かしい顔を見るのが、せめてもの癒しなのだ。
「……時に、武曲様、結婚はどうなさいますの?」
「ん……そういえば考えたこともなかった」
「それはそれは……」
 人にはそれぞれ道がある。少し違えば違う未来が訪れる。
 違うからこそ価値がある。互いに違う幸せで、明るい未来を歩いているのだから……。

 鈴鹿・小春(万彩の剣・b62229)は語る。
 検察官としての仕事にも慣れ、結婚も果たした。長女に、長男にと子宝にも恵まれ、今は大好きな家族のために日々頑張っていると。
 近況とともに元気よく挨拶し、どこか昔の面影も浮かんでくる。だからだろう。昔の勢いのまま善治を呼び止め、提案した。
「今度一緒に、ゴースト退治行かない?」
「そうだな、鍛錬は欠かしていないし、いいだろう。店の休みと小春の休みがかち合えばいいのだが……」
 そんな短いやり取りでも、約束を交わすことはできる。
 交わしたのなら、再び会話を。娘とともに、近況に耳を傾ける。
 最後には記念撮影を。
 この時、この瞬間を、永遠の形として残すため……。

 変わるもの、変わらぬもの。変わっていても、変わっていないと分かるもの。
 毎度のお約束になった武曲の、変わらないな、との言葉を聞き、灯萌は小さく頷き返す。料理に手を付けることはできないから、代わりに饒舌に語っていく。
 去年から連載していた銀誓館の解雇目録的な漫画は好評。映画化が決定した。
「武曲役……やらない?」
「私が、私のを、か?」
「うん……」
 しばし考えた後、武曲は小さく首を振る。
「すまないが、それは断らせてもらう。役者というのがどれだけ大変かも知ってるつもりだし……恐らく、相応しいものがいるだろうから」
「……そう、わかった……」
 小さく肩を落としながらも、さほど落ち込んではいない。灯萌は瞳を細め、話題を切り替える。
「ボクの三十の誕生日……武曲さんの里で、デート……いいかな……?」
「……もちろん!」
 ――契は交わされた。
 二人の、違えることのない約束となった。
 それは、きっと叶う、叶えよう。叶えた先に何があろうとも……想い出は、永久に残るのだから。

 ウェディングプランナーとして名がそこそこ売れて、仕事優先の日々が続いているコウ。
 未だに人の家で、人のお仕事を手伝う日々。悪い能力者を追いかけたり、ゴーストを倒したり……と言った日常を過ごす伍実。
 そんな二人が、揃って同窓会に参加した。
「素敵な結婚を演出したいなら、いつでも相談に来てネ!」
 コウは絶賛営業中。適度に料理に箸を伸ばしつつ、名刺を交換して回っている。
「あ、善治サンこの魚何?」
「ん、そいつは……」
 時には気になる料理を発見し、善治を呼び止める一面も。
 一方、伍実は周囲の話に耳を傾けつつ、まったりとした時を過ごしていた。美味しい料理も多く、概ね満足ではあった……が。
「あまいの食べたい」
 同窓会終了まではまだ遠く、未だデザートは出てきていない。飲み物で補う事はできるけど、それだけでは物足りない。
 が、それでも答えるのが料理人。善治は料理のじゃまにならない程度の羊羹を素早く切り分け、伍実に提供した。
「……おかわり、ご飯大盛りで」
 代わりに伍実は茶碗を差し出し、まだまだ食べるつもりだと示していく。
 そんなことをしている内に、いつの間にかコウがやって来た。
「営業、終わったの?」
「うん。伍実チャンは何してる?」
「ごろごろしたり……まあ、色々」
 特に話すような事はしていないと、伍実は羊羹に口をつける。
 対するコウは新たな言葉を紡ぎだした。
「何ならお嫁に来る?」
 ポトリ、と、口に運ばれるはずだった羊羹が皿に落ちた。気づく様子もないままに、伍実は目をつむっていく。
「……ん、んーんー……。んー」
 コウの頭に手を伸ばし、ぽんぽんと優しく撫でた。
「……コウは十二年前にそれを言うべきだったね」
「なら次は、キミの式を企画しないとネ」
 変わらぬ笑顔での提案に、伍実は再び動きを止める。
「……式。……考えたこともなかった」
 けれど浮かべるのは納得顔、輝き出すのは小さな笑顔。
 劇的なものなど何もない。けれど、安らぐ空気がここにはある。
 静かな祝福を受けながら、コウと伍実は結ばれた。

 天体望遠鏡についての研究が反響を呼び、勤務している会社がそれなりに有名になった。スポンサーも付いて、いよいよ製造に取り掛かる目処が立ったと、嘉月は嬉しそうに語っていた。
 彼に誘われて馳せ参じた耶子もまた、家族を探す傍ら武者修行の時。家族を無事発見し、別の宇宙に旅立った先輩の稲荷寿司秘伝帳のメニューを完全再現するための努力も実を結ぼうとしていた。
「究極の稲荷寿司、もう少しで完成するんだよね」
 語りながら、喉を湿らせるのはカスピスの現役。甘党なのは昔と変わっていない。
 否。
「皆、変わんないよね。まあ、ボクも同じだけど」
 変わらぬのは、昔の仲間と一緒だからか。はたまた、変わらぬ人々が多いのか。
「いいえ、そうでもないかも知れませんよ?」
 首を振り、嘉月が立ち上がる。善治に許可をとった上で、洗面所へと引っ込んだ。
「……あ」
 再び出てきた彼の姿に、武曲と耶子が小さな声を上げていく。
 それは、嘗て見た英霊に似ていた。
「感覚は掴みました。これを言語化し、一般化できるよう努力しなければなりませんね」
「……そうだね。寺見先輩、がんば!」
 ……変わっていないようで、変わっていく。人は前へと進んでいく。
 いつか、努力が実を結ぶ日を信じているから。
 耶子が努力を実らせ、次のステップへと進もうとしていたように。
 嘉月が努力を重ね、一つずつ夢を果たしていくように。
 皆が自分の目的のため、日々邁進していくように!

 しつこく誘われて渋々といった様子での参加であった捺希は、積極的に関わることはない様子。二人に挨拶するなり奥へと引っ込み、早々に一人よろしく始めていた。
 一方、遙は本格的な店内にキラキラお目目。周囲を眺めている内に、善治が出迎えにやって来た。
「先輩もお久しぶりです、美味しいの期待してますねっ」
「ああ、期待に添えるようがんばろう!」
 挨拶を交わし、改めて周囲を観察する。
 奥の方に、手招く影。
「遙さんこっちこっちー」
「あ、レアーナ居たいたー。やっほー学校の方は順調かい?」
 会話を切りだしながら着席し、おしぼりで手を拭きながら言葉を待つ。
「ドイツ校の方は順調です。遙さんが教えた子たち、優秀ですよ」
「それは良かった。将来有望ですなー……」
 お冷で喉を潤しながら天井を見上げ、盛大なため息を吐いていく。
「いやー、しかし。うちらもう三十路だよ、ついに来ちゃったねー……おばさんってやつ?」
「おばちゃん言わない。お互いまだまだいけますって。……若返りのメガリスとか見つかってません?」
 口ではいけると言いながらも、年齢が気になるのは女の性か。
「若返りのメガリスかー……」
 レアーナの問いかけに、遙はしばし思考を巡らせた。巡らせながら、後方で食べている捺希に問いかけた。
「あったようななかったような。うへへ! ねー捺希さん」
「俺は知らん。それよりここの店はお前の奢りと聞いたが?」
「何それ知らない。……レアーナ?」
「……えーっと」
 喧々囂々楽しく会話。とりあえず矛先を反らせたことに満足し、捺希は改めて料理に手を付ける。
 まともな日本食は久しぶり。だからこそ、より美味しく感じるのだろうか。
「ま、たまにはこういうのもいいだろう」
 絶えず箸を動かしながら、彼は二人の会話に意識を向ける。適当に話に付き合いながら、静かな時を過ごしていく。
 それで十全、各々が各々の形で楽しんでいるのだから。
 嘗てと同じような関係で、変わらぬ会話、尽きぬ話題。舌鼓を打ちながら、緩やかな時が流れていく。
 いつまでも、いつまでも。皆が笑顔を絶やさぬのなら、永劫変わることはなく……。

 久しぶりに日本へと帰ってきた魎夜・琴乃夫婦を中心に、同窓会に集ったCOLの面々。食事の箸もそこそこに、まずは近況報告と相成った。
 トップバッターは、微笑むつかさだ。
「四年前に独立して、小さな洋菓子店を始めたんだ。デザートに運ばれて来ると思うけど、今日もケーキ類を色々と納めさせてもらったから、お楽しみに」
「おお、それはナイスなのじゃ! つかさのケーキかぁ、はよう賞味したいのぅ」
 飲み物で喉を湿らせつつ、女性らしく美人に成長した月華の顔が綻んだ。他の女性陣も、無論男性陣も、概ね好意的な反応を示している。
 されど、和洋中構わず運ばれてくる料理も旨いもの。食べる余裕が残るだろうか? との心配が、男性陣からは上がるほどに。
 女性陣は別腹なので問題ないのだが。
 閑話休題。
 続いて、苺子が語り始めた。
「わたしは大学から大学院に進んで、世界結界の研究及びゴーストの被害を減らすための研究を行なっています。既に世界結界もほとんどが崩壊してしまいましたし……ね」
 ラストバトルから十数年。既に、世界結界の影響も点在する極地程度になってしまっていた。無論ゴーストの発生が増加し、新たな能力者による被害も増えている。
「でも、このメンバーを見ていると、どうにかできる気がします」
「無論だな。月華のように、見違えるほど成長したものもいる。あの時と変わらず力を保ち、更に高めた者もいる。世界の危機には、十全の備えだろう」
 瞳を閉ざし会話に耳を傾けていた織泉羅が確信を持った口調で返答すれば、皆一様に頷いていく。
「……次は俺だな」
 頷いた後、会話の主はマオへと移った。
「俺は相変わらずでな、危険と隣り合わせの生活だ。ま、本当に良く生き残ったもんだと思う閻魔野郎のヤサに殴りこむ時ほどじゃねぇがな」
「要するに、元気という事か?」
「ああ」
 魎夜の問いかけに、マオは力強く頷いた。
 ついでにサングラスを光らせて、魎夜に問い返す。
「魎夜こそどうだ? 俺とあんま変わらねぇと思ってたが」
「来訪者、転移門、メガリス……琴乃と一緒にいろんなとこ巡ったが、そっち方面の成果はない。あるとすれば悪しき能力者組織の殲滅と……こいつくらいだ」
 魎夜が笑うと共に、琴乃が荷物から幾つもの包みを取り出していく。
「世界中を回っている内に集まった、色々な国のおみやげです。もし良ければ……」
 エジプトや中国、ヨーロッパ。様々な国のお土産が、二人で歩んできた軌跡。
 思わずつかさが声を上げた。
「……ほんと、随分いろんな国を巡ってきたんだね」
「ええ。魎夜様にお伴して、様々な国をめぐって来ました。私自身の成果としては、日常会話程度の外国語が堪能になった程度でしょうか。……いえ」
 琴乃は小さく首を振り、仲間たちを見回していく。
「こうして、立派になられた皆様と再会することができたのも、また旅の成果でしょう。毎日のようにお会いしては、あるいは変化に気づかなかったかも知れませんから」
「そうかもしれないな。もっとも、月華だけは別かも知れないが」
 頷き、沙梨花は月華に視線を移す。
 月華は笑い、口を開く。
「妾も成長したからのぅ。どうじゃ? 魎夜。随分と有名になったそうだし、妾と付き合わぬか?」
「悪いが琴乃がいるからな。そいつは断らせてもらうよ」
 ノータイムでのお断り。彼の隣では、琴乃が静かに微笑んでいる。それは牽制と言うよりは、自信。自分が傍らに居続けると決意した証。
「あぁ、入る余地はなさそうじゃのぅ。時に織泉羅はどうじゃ? ほとんど姿が変わっておらなんだが」
 月華自身も軽く流し、織泉羅へと話題の矛先を差し向けた。
 件の織泉羅、小首を傾げ、口を開く。
「良くは分からぬが……そうだな、世界結界が崩壊し生活には随分変化が出た。そのなかでも、二十四時間店主が居ても不思議ではなくなったのが、一番だ」
 もっとも、崩壊する前から二十四時間営業の土ノコ帝国(武曲の里の土産物、木彫り細工なども陳列中)。故に、今年になるまで同窓会に参加することもできなかった。
 見る顔見る顔が懐かしい、そんな時間。
 楽しい時を引く継ぐまま、沙梨花が語り部となった。
「ほんと、皆元気そうで何よりだ。何分多忙な身故、普段ろくに会えもせずに済まない」
「それは言わないお約束ですよ。世界を旅している私達も、皆さんも、それぞれの理由で忙しいのですから」
 琴乃の冗談交じりのツッコミに、沙梨花はほのかに微笑みながら頷き返す。
「ああ、そうだな。。そう、誰にでも果たすべき役割はある。職人や医者等、それぞれその中身は違うがな。私の場合、それが真月の当主であっただけだ」
 そう。誰もが皆、自分が果たすべき役目を持っている。歳を重ねるごとに、その役目は変わっていく。
「後は……そうだな。周囲に婿取りを急かされて辟易している。私より弱い男では駄目だと言っているのだがな」
「沙梨花より強い男か……いっそ銀誓館で探したほうがいいんじゃないか?」
「私もそう思う」
 マオの冗談交じりのツッコミを、沙梨花は肯定した。ラストバトルをくぐり抜けてきた銀誓館の生徒以上に強いものなど、世界を探してもそうはいない。
 肉体面だけではなく、精神面でも同様だ。ハードルは高く、いつか飛び越えるものが訪れるのだろうか。
 そんな会話を肴にして、COLの面々は久方ぶりの絆を深めていく。
 苺子は一人瞳を閉ざし、ここにはいない……既に消滅したフランケンシュタインに思いを馳せる。
 彼が望んだ世界ではないけれど、ここに平和はある。笑い合える未来がある。
 だから、どうか安らかに。立派に歩いていけるから……。。
 ……苺子がそんな祈りを捧げている内に、つかさが善治を巻き込んで、店舗経営のノウハウなどを訪ねていく。
 否、善治だけではない。同窓会に参加した皆を巻き込んで、一世一代の大宴会が開幕する。
 料理がなくなるその時まで、なくなってもケーキに舌鼓。
 参加した全員が満足し、宴もたけなわになる、その時まで。
 後は別れの合図だけという時に、魎夜はあえてグラスを持ち上げた。
「それじゃ、また会おうぜ。未来に、どこかで!」
「また会おう、親愛なるダチ公達」
 マオがいち早く乗っかったなら、次々とグラスが掲げられていく。
 全てのグラスが持ち上げられた時、合図とともに乾杯を。
 軽やかなる再会の契を!
 これからも苦難はやって来るだろう。悪もまた滅ぼす尽くすことはできないだろう。
 だが、仲間がいる。
 乗り越えられる。
 皆と一緒ならば切り抜けられる。
 過去の自分達が交わした約束。人も、ゴーストも、意志ある全ての者が共存し、平和に暮らしていける世界。いつか叶えることができるよう、これからも努力し続けよう。
 過去を胸に、今を生き、彼らは歩み続けていく。
 いつまでも、いつまでも。意志が消えぬ限り。意志を継ぐものがいる限り。意志を継ぐものを絶やさぬ限り。
 そう遠くない未来、きっと人魔共存は世界平和は成し遂げられる。彼らの集う場所、故郷たる国、学び舎もまた護られたまま。
 さあ、再び未来に向かって歩き出そう。己等の道を進んでいこう。
 その先に、全てが集うと確信して。
 未来はまた、今、この時から始まるのだから!


マスター:飛翔優 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:33人
作成日:2012/12/19
得票数:楽しい1  ハートフル10  ロマンティック4 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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