XX年後のわたしたち


     



<オープニング>


「これから先、皆はどうするのかしらね」
「えっ? 世界の事? それとも私たちが?」
「ええ、皆それぞれの道に進むだろうから……ある程度はバラバラになっちゃうだろうし、それからの関係とかね」
「うーん、意外と変わらなかったりして? それにほら、私同窓会をやってみたいと思ってたの」
「……良いわね、それ。速坂さんは10年後くらいには8頭身美女になってたりして」
「あはは。莉緒は……博徒?」
「いやいや」
 学食で未来の事に思いをはせているのは、柳瀬・莉緒(高校生運命予報士・bn0025)と速坂・めぐる(真烈風少女・bn0197)、そして――。
「やぁやぁ少女諸君、大いに夢を見ているか? ですぅ」
「誰かと思えば、涼子大先輩じゃないの。また自主休講?」
 志筑・涼子(残念な子とは呼ばせない・bn0055)の3人である。
「『夢と録画は見られるときに見ておけ』って言いますからねぇ」
「誰の言葉よ」
「日本の偉人、リョウコ・シヅキの言葉ですぅ」
「……涼子は偉人になれる見込みあるの?」
「不可能を可能にする、それが私ですぅ」
 と、胸を張る涼子。根拠の無い自信が彼女の最大の武器である。先行き不安だ。
「ねぇ、あなたはどう? 将来どんな事する予定なの?」
 貴方の方へ向き直る莉緒。
「何をするにしても、在校生の私たちは、まず卒業式があるわよね」
 と、めぐる。

 明確に先行きが見通せる訳では無いが、世界の事はきっと良い方に進むだろう。
 差し当っては、我々一人一人がどの様な未来を歩むのか。そして友情や絆はどの様に繋がって行くのだろうか。
 無限に広がる未来へ向け、新たなる一歩を踏み出すとしよう。

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参加者
世良・玲也(世界を変える風になれ・b00201)
真視・御鏡(夜色紳士・b00852)
武内・恵太(真処刑人・b02430)
御剣・光(傍若無人な牌の音初代皇帝・b02940)
リーテ・ハインツ(真コミックマスター・b05215)
鈴森・更紗(ドラの王女・b07540)
鳳雛寺・美空(お気楽極楽能天気の大馬鹿野郎・b07658)
関・銀麗(天華青龍・b08780)
紗片・ハルミ(あふれる才能の果てぬ追想・b09344)
黒木・摩那(深遠なる碧き鏡の剣士・b12406)
鬼一・法眼(電刃乱舞・b14040)
水無月・影斗(真処刑人・b14089)
藤堂・修也(宵闇のディアボロス・b18705)
高天崎・若菜(永遠と須臾の玄人・b19366)
アリス・マコーニー(キリジュツマスターの弟子・b21790)
凪原・乃依(紅蓮抱きし魔鏡の女王・b23136)
アノマーシェ・ミサキ(真赦乃覡・b23572)
山桜・麻里(花守くのいち・b35101)
柳瀬・和奈(てるてるむすめ・b39816)
久遠・翔(魔剣士・b47702)
プリス・ベルグランデ(吸血幼女・b47961)
鳶沢・成美(三角定規二刀流・b49234)
金澤・陽介(奮闘中の使役使い・b50948)
宮代・さつき(空色の風詠い・b52693)
三井寺・雅之(風炎の光彩・b60830)
鈴鹿・小春(万彩の剣・b62229)
雨御・静夢(謹猟区域・b77220)
エインセル・アンフィスバエナ(暁光に捧げる華・b82518)
NPC:柳瀬・莉緒(高校生運命予報士・bn0025)




<リプレイ>

●2013年の日常
 小春は、法学部進学を目指して受験勉強を始めていた。そんなある日……
「鈴鹿さんじゃないですかぁ。もう受験モードですかぁ?」
 家電量販店で声を掛けてきたのは、涼子。
「あ、涼子センパイ。えぇ、僕も高2ですから。センパイは今年卒業ですよね、進路どうされるんですか?」
「……どうしましょうかねぇ。ネットは広大ですぅ」
「むー、起動して手加減すればスポーツ選手なんかいいんじゃないかなーと。厳しい練習無くてもそれなりの成績は残せるでしょうし」
「いやいや、そんなずるいこと出来ないですぅ。努力なくして成功なしですぅ」
「えっ」
「真面目に勉強して立派な法曹になるですよぅ」
「は、はい」
 偉そうに言って去って行く涼子。
 小春の猛勉強の日々は続く。

「次の方、どうぞ」
「エントリーナンバー1109番、山桜麻里です!」
 麻里はくのいちアイドルを目指し、各種オーディションに参加していた。
「うぅむ……これはなかなか」
 その恵まれたスタイルとビジュアルを惜しげも無く披露する、ピンクの忍装束姿。
 しかし彼女の武器はそれだけではない。
「はっ! やっ……たぁっ!」
 ――ガシャン! ガシャンッ!
 軽業師の様にバク転、跳躍、そして詰まれた瓦を次々に破壊してゆく。
「……」
「ありがとうございました!」
 ぺこりとお辞儀する麻里。
「いいね。俺、気に入っちゃったよ!」
 くのいちアイドルがお茶の間を席巻するまでに、さほど時間は掛からないだろう。

「世界結界は決壊するけど、能力者だってまだまだ見たことのない世界はたくさんあるわ! レッツエクスプロール☆ てなわけで世界中を冒険中!」
 そんな事を言って日本を飛び出して行ったハルミだったが、世界中の兵器を破壊すると言う過激な活動を行っていた。
「ふふっ……大漁大漁」
 中央アフリカ。戦車の大群が整列する軍事基地に潜入したハルミは、爆弾を起爆。
 ――ドドーン!!
 轟音と共に燃え上がる戦車を見て、満足げな笑み。
「……ちょっと、ハルミ」
「あ、めぐるちゃん?」
「ゴースト事件かと思って来てみたら、何やってんのよ」
「見て見て! 戦車がゴミのようdあべし!」
 めぐるの鉄拳制裁を受けたハルミ。破壊活動はそれ以降ぱったりと起こらなくなったと言う。

「あたしの柄じゃないかもしれないけどね〜」
 その頃乃依は、訓練組織の創設に尽力していた。
 彼女自身、能力者育成組織の出身という経歴もあり、打って付けの人材でもあった。
「ほら皆、ついておいで」
「は、はい!」
 新米能力者達の教官としても人気が高く――特に男性に――彼女の教え子は皆優秀な能力者となっていた。
「アルトにもお土産買ってあげなきゃね。有希ちゃんには何が良いかな……」
 もっとも彼女自身はそんなことを意に介さず、相変わらずマイペースに真っ直ぐ歩んでゆくのだった。

「ロン、5200でラストだ」
「くっ……やるじゃねぇか、流れ者の兄ちゃんよ……」
(「成長してない腕晒すなんて出来ないからな……」)
 影斗は「麻雀修行に行ってくる、後は任せた」と言う置き手紙を残して牌の音を離れ、麻雀修行の旅を続けていた。
「しかし一年か……やっと腕に自信が出来た所だが……まだまだ戦いたい連中も居るしな……」
 恋人に宛て、「少しの間寂しい想いをさせるけど、必ず貴女の所に帰るからもう少し待ってて欲しい」そんな文をポストに投函すると、影斗は次の街へ向かうのだった。

 一般人から覚醒した新たな結社員も増え、文化系武闘派集団として着々と勢力を拡大させつつある牌の音。
 今日はその黎明期を支えたメンバーによる同窓会が行われようとしていた。
「1年ぶりの部室だから、あまり懐かしい感じはしないな。いつも駄弁って麻雀してたっけ」
 陽介が感慨深げに部室を見回しているうち、次第に面子も集まってきた。
「へろー、みんなお久しぶりー♪ あらあら、さやかと結婚してデレデレのけーたが目障りねぇ〜包丁で全身突きまくってやるわっ!」
「奥さん可愛いよ奥さん」
 惨殺包丁を抜き放たんばかりの光。思わず身構えながらも、デレデレオーラを隠せない恵太。
 恵太は高1の頃から付き合っていた思い人と、ついに入籍を果たして幸せ真っ盛りだ。
「な〜んて、昔のあたしだったら殺ってたと思うけど、けーたの汚い血がこの子達にかかったら可哀想だから何もしないわよ♪」
 そう言うと、光はにっこり笑顔で席に着く。
「え? あたしが抱いてる2つの物体は何かって? 何って赤ちゃん以外の何に見えるってのよ!」
「「あ、赤ちゃん?!」」
 ――ざわ……ざわ……。
「あの御剣さんが、赤ちゃんを……」
「双子って育てるのが大変でね〜」
 いまだざわめき静まらない一同を余所に、抱きかかえた双子をとびきりの笑顔であやす光。
「しかしまぁ……いい女じゃの、あの三人は。嫁に欲しかった、とは未練か」
 食材を求め、世界中を駆け巡っていた法眼も、この日ばかりは日本へ帰国しこの部室にやってくる。
 銀麗、美空、光を眺めて目を細める。彼女らがこの1年で更に美しさを増したように感じるのは、法眼だけではないだろう。
「さて、すごく久しぶりな気がするのです。みんなと麻雀ですよー」
「やっぱり皆で集まったんだから、麻雀打たないとな」
 つもる話も一先ず置いて、早速卓を囲む一同。
「世良さんと打つのは本当に久しぶりよね。最近はどう? 元気だった?」
「僕はまじめに……裏メンやってるのです」
「それって真面目って言うんですかぁ?」
 茶々を入れる涼子。
「そう言う涼子はどーなん? 彼氏できた?」
 ――げしっ。
「いてっ。あ、何か今クリスマスの懺悔の味思い出した……」
 卓の下で恵太のすねを蹴飛ばしつつ、埋牌を始める涼子。
「進路についていろいろおもうことある時期だから、一足先に社会にでているひとのおはなしききたいなー」
 と、在学中の更紗も一同の近況に興味津々。
「銀誓館のコネを使いつつ、能力者訓練組織に就職したいと思っているのですが……設立はまだ先の話になるでしょうね」
 御鏡は就職活動を目前に控え、何かと悩み多い時期。せめて今くらいは麻雀で現実逃避……もとい、英気を養いたい所。
「皆さんはいかがですか?」
「最近は同人活動が上手くいってホクホクだよ。出版社にも持ち込みしてるんだけど、こっちも結構いい感じでね」
 リーテは自身の体験談を元にした作品で、注目を浴びている様子。上り調子だけあって、好調が牌姿にも表れている様だ。
「もしかしたら本格的に漫画家デビューなんてこともあるかも! 大学卒業までに決まるといいなー」
「わ、じゃあ今のうちにサイン貰っておかないとかな」
「いいよ、後でね。……修也君は?」
「俺は……ずっとあちこちでゴースト根絶作戦参加してたから、麻雀する機会もなくてなぁ。今回も明日にはまた出発だな……現地で火鉈と合流するし。で、志筑は? どうせ馬鹿やってるんだろうが」
「うごっ……わ、私は当然ほら……充実したキャンパスライフを送ってますともぉ」
 ずばずばと厳しい事を言いつつ牌を切る修也に、涼子は震え声でそう答える。
「それ、隣の牌つもってるぞ」
「こりゃペナルティだな」
「ごふっ……」
 精神攻撃を受けた涼子は、メンタルポイントと上がりの権利を失う。
「みんな元気そうで羨ましいぜぃ……あたし一応働いてるんだけどさ……あ、ちなみに仕事は自宅の警備員ね。三食昼寝付きでテレビ見放題、ネット、ゲームやり放題なんだけど給料無いんだよ……」
 はぁ、と溜息をつきながらノーテン罰符を払う美空。
「おぉ、同志よ」
 何故か復活する涼子。
「超ヤベーよ……誰か永久就職先を紹介しておくれよ……」
「うんうん。贅沢は言わないですぅ。仕事が楽で休みがちゃんとあって、給料がちょっと高ければそれで良いですぅ」
「私もこないだ進路調査の第一希望に専業主婦ってかいて職員室によびだされたのは秘密ー」
 と、若干先行き不安な数名も居るが、概ね元気にやっている様だ。
「俺は相変わらず能力者稼業を続けてますよ。はっはっはー、リーチ!」
 と、勢いよくリーチを掛ける翔。
「あ、ロン! えっと……12000かな?」
 指折り数えるめぐる。
「馬鹿なー!?」
 強打で点棒を荒稼ぎした翔だが、振る方もダイナミックだ。
「みんな無事なようで何よりかな。牌の音の知り合いは無茶する人間が少なからずいるからね」
 皆の話に頷きながら、古い牌を丁寧に磨いているのは銀麗。
「もっとも莉緒が普通に大学進学を選ぶとはね。今からでも良いからあたしのところで代打ちやらない? お給料は弾むけど」
「えっ……いや、わたしは無理無理……こうしてノーレートで打つのがやっとよ」
「気が変わったらいつでも言ってね」
 莉緒は笑って辞退するが、銀麗は本気らしい。
 ――。
 途中、法眼の料理で腹を満たしながら、半荘数回を終えた面々。
「えっと……」
 ローテーションでリーテと同じ卓になった玲也が、突然立ち上がる。
「リーテさん……僕が幸せにするので……結婚して欲しいのですっ!!」
 何と玲也が取り出したのは、一索を模したリングに一筒のダイヤをつけたエンゲージリング。
「一大イベント!?」
 さすがに驚いた様子のリーテだが、2人も付き合い始めて大分経つ。彼女もそれとなく、この時を待っていたのかも知れない。
「ドラ筋の三面張……リア充どもめ……お見せしよう、嫉妬の打ち筋を!」
 リー棒を放る涼子。
「あ、それロンです」「私もロン」
「えっ!?」
 牌を倒す玲也とリーテ。
「こりゃ飛んだな」
「ま、とりあえずこんな風に平和に麻雀打てる日々が続けばいいですね……」
 翔の言葉に頷く一同。
 2人の門出を祝しつつ、闘牌の宴はまだまだ続いてゆくのだった。
 
●2013年の卒業式
「ようやくここを巣立つ時が来たのですね。早6年間……長いようであっという間でした」
 今年、銀誓館を卒業する若菜。
 大学では考古学を専攻する予定だが、麻雀の普及や能力者としての役目も精力的にこなす予定である。
「モデルのバイトもあるし、牌の音のつてで雀荘の手伝いもしなくては……」
 とにかく多忙な彼女だが、最愛の人が待つマンションへと帰りを急ぐのだった。

●2014年の日常
「卒業おめでとうですぅ。そっかぁ、薬学部は6年でしたねぇ」
「有難う。涼子さんとは社会人として同期生ね」
 薬学部に通っていた摩那は、薬剤師として病院勤務が決まっていると言う。喫茶店で涼子とお茶を飲みつつ、社会人一年生への期待に胸を膨らませている。
「社会人かぁ……できれば大学8年くらいまで通いたかったですぅ」
「あはは……お互い頑張っていきましょう。食べ過ぎ飲み過ぎになったら尋ねて来てね。とびっきりの薬を調合するから。苦いかもしれないけどね!」
「うへぇ……苦いのは嫌ですねぇ。あと、ハッピーになれる薬とか、モテ薬が出来たら欲しいですぅ」
 多忙ながらも充実した摩那の社会人一年目がスタートしたのであった。

「もっと薄くだ」
「はい!」
 翔は能力者としての活動を続けながら大学を卒業、調理師免許と栄養士の免許も取得していた。
 今は和風料理屋で修行の日々。
 無論、いつ能力者としての任務が入っても良いように、鍛錬だけは欠かしていない。
「……久遠、ちょっと良いか」
「はい、店長」
「厄介ごとだ、手伝ってくれ」
「解りました」
 自身も能力者である店長と、ゴースト事件を解決する事もしばしばであった。

●2014年の同窓会
「この前、発売されたんです! どうぞ!」
「有り難う、凄い人気ね」
 売れっ子アイドルとなった麻里は、水着写真集を莉緒に手渡す。
「……こ、これは……相変わらず過激ね」
 若干赤面する莉緒に、にっこり笑顔の麻里。
「あ、能力に目覚めたら教えてくださいね! 護身術だと思えば便利ですよ!」
「えぇ、その時は先輩として色々教えてね」
 忙しいスケジュールの合間を縫って、懐かしい顔ぶれとの歓談を楽しむ麻里であった。

「やっぱり無益な爆破はダメ絶対」
 ハルミはあれ以来、すっかり変貌を遂げていた。
「聞いたわよ、油田開発してるんだって? 凄いじゃない」
「やっぱり火星テラフォした会社が勝者っていうかーやはりおまえがドミナント? みたいなー。あ! そっか、じゃあまず人型MT作らなきゃ(略)」
「……」
 宇宙からの大いなる意思を受信しているのか何なのか、ハルミは有り余る資産に物を言わせ、その後火星へと旅立つのだった。

●2014年の卒業式
「いよいよ卒業ね。長かったような短かったような……」
「莉緒さんと知り合ったのが中学生の修学旅行だったなんて、そんな遠くになってしまったネ」
 卒業式の後。アリスと莉緒は、涙ぐみつつ出会った頃のことを想起する。
 道後温泉を訪れた際、アリスと莉緒は初めてじっくり言葉を交わし、それ以来の付き合いだ。
「一緒の大学に行けて良かったネ。別の学部になったけど、これからも仲良しだネ」
「えぇ、改めてよろしく!」
 がっちりと手を握り合う2人。
 2人はこれからも、共に学舎への道を歩むのだった。

●2015年の日常
「うちは除霊建築士の家系でしかも土建屋ですからね。ゴーストの心配がいらない建物を……作れたら良いなぁ」
 大学を卒業した成美は、実家の建設会社に除霊建築部を設立し、アンチゴーストの建築物を目指していた。
 彼はその部署の長、つまり部長だ。
「部長、市の公園管理課から問い合わせが来てます」
「テレビから出演のオファーだそうです」
 除霊建築は今や注目矢継ぎ早に舞い込む仕事。盛況なのは良いことだが、彼一人ではとてもこなせそうに無い。
「もう少し除霊建築士を採用してくれるように人事に……」
 多忙ながらも充実した毎日を送る成美であった。

「おはよー、プリス」
「おう、おはよ」
 義姉の屋敷に居候しながら、中学へ進学したプリス。
 猫を被るのもやめ、自然体で居ることにした彼女だが、身体的には3年前と殆ど変りが無いようだ……。
「ねぇプリスってさ、なんでそんな口調なの? もっとぶりっこすれば、絶対モテるのに」
「めんどい。それに興味ねぇ」
「いやいや、世の中何がウケるか解らないからねぇ。こう言う所も含めてプリスのファンだって言う男子も結構居たりして」
「くだらねぇ事言ってねぇで、さっさと行くぞ」
 新しい友人や、ファンクラブの男子(?)達に囲まれつつ、賑やかな中学校生活を送るプリスであった。

「テストも終わったし思い切りいくから覚悟しろよ」
「は、はい!」
 能力者育成の訓練施設では、今日も厳しい訓練が行われていた。雅之やめぐるは銀誓館に通う傍ら、施設での訓練官を務めていた。
「はぁぁっ!!」
 新人能力者達は必死の様子で、雅之目掛け攻撃を仕掛ける。
 が、そこはキャリアの差。事も無げに剣撃と炎弾ををかわす雅之。
「師匠に会う前に俺も力を暴走させてたな……めぐる、ここから一気に攻めに出ようぜ」
「オッケー、行くわよ!」
 めぐるは黒燐蟲達を雅之の赤手に飛ばす。
 数多の戦場を共にした2人なのだから、声を掛け合うまでも無くお互いの意図は把握していたが、新米達に連携の手本を見せているのだ。
 ――。
「皆飲み込みが早いわね。これなら、割と早い内に実戦に出られるかも」
「そうだな……家まで送るよ」
「……うん、ありがと」
 訓練生達の成長や、訓練の内容についてあれこれ話し合いながら、2人はいつものように施設を後にするのだった。

「「マーリ! マーリ!」」
 ドームは熱気と歓声に包まれていた。
 くのいちアイドルとしてスターダムにのし上がった麻里は、新たにプロレスの世界にも進出していた。
 セクシーな忍装束と、華麗な空中殺法の数々はプロレスファン以外をも魅了したのだ。
「いけー! サキー!」
 しかし今回、彼女に挑戦するサキもまた、キュートなビジュアルと高い実力によってファンを獲得しつつある期待の新星である。
 ――カーン!
 ゴングが打ち鳴らされ、試合が始まる。
 麻里は適度に手加減し、相手にも見せ場を与えつつ試合を優位に進める。
「それじゃ、そろそろ……!」
 ――たんっ。
 ワンステップでトップロープに上がった麻里は、ムーンサルトプレス。そのままフォールに入る。
「ワン! ツー!」
 完璧に押さえ込み、勝利を確信したその瞬間――
「っ!」
 常人とは思えない、強い力で跳ね返される麻里。
「……この力!?」
 目を見開く麻里。どうやら対戦相手は、彼女と試合をする中で、能力者に覚醒した様だ。
「その力……人を助けるために使ってくださいね♪」
「?!」
 背後を取った麻里は、左右それぞれの手で相手の反対の手首を抑え、肩車の様に持ち上げる。
 ――ダンッ!!
「ワーン! ツー! スリー!」
 ――カンカンカーン!!
 くのいち式竜巻固めと名づけられたフィニッシュホールドは完璧に決まり、麻里はまたもベルトの防衛に成功した。
 この後も麻里はマルチタレントとして、有名人作戦の一翼を担いながら活躍の幅を広げてゆくのだった。

「やっほー」
「お邪魔します」
「いらっしゃい皆さん!」
 ついに自分の店「絆」をオープンした翔。この日は、牌の音の集会の後で、二次会の会場となっていた。
 味、値段とも高評価のこの店は、普段から学生達の強い味方だ。
「聞いたわよ、結婚したんだって?」
「まぁ、書類上で……今はまだ結婚式は上げてませんけどね」
 照れ笑いの翔。
 やがて彼の店は、鎌倉で知らない人は居ないと言う名店へと成長してゆくのだった。
 
●2016年の日常
「え? モデル?」
「街を歩いてきてスカウトされてネ。自分の可能性が広がったみたいで嬉しいネ」
 大学の学食では、いつもの様にアリスと莉緒が昼食を取っていた。突然切り出された話題に、思わずパスタを巻いたフォークを止める莉緒。
「そっか……でも、アリスさんなら不思議はないわね」
 豪奢な金髪に抜群のスタイル。改めて見れば、スカウトが放っておかない逸材だ。
「それに演劇部でも、重要な役をもらったんでしょ?」
「ミュージカルを頑張っているネ。難しいのは、英語の歌を歌わないといけないんだけど、英語は苦手ネ」
 生まれも育ちも横須賀のアリスにとって、母国語は日本語だ。
(「その割には、何となく外国人ぽい日本語だけどネ……あ、うつった」)
「これを言うとみんな大笑いだヨ。どうしてかナ?」
 学業、サークル活動、バイトと大忙しのアリス。充実した大学生活を送るのだった。

●2017年の日常
「みんな久しぶりね、元気そうで何よりだわ。この人誰だっけ? なんて顔しないでちょうだい。私よ、御剣光よ」
 5年前、双子を抱きかかえて登場した光だったが、なんと今では6児の母。
「不思議な事に3回の出産全て双子なのよ。あと4回双子を産んだたらまさしく七対子ね」
 つくづく牌の音の初代団長らしく、麻雀に愛された人生である。
「え、父親は誰で、そもそも何をしているのかですって? それは秘密♪ まだ死にたくないでしょ?」
「よ、よーし始めようか!」
「そ、そうですね!」
 慌ただしく準備を始める面々。
「今度は脱衣麻雀でもやってみる〜?」
 と、冗談とも本気ともつかない口調で言うのは乃依。相変わらず色気の塊だ。
「うん、やっぱりこの騒がしさと落ち着く空気が牌の音だよなぁ。何も変わってなくて安心したぜ」
 ついに麻雀修行の旅から帰ってきた影斗。あの頃と変わらない面々の様子に、表情を緩ませる。
 さすがに長い修行のせいか、醸し出す雰囲気から違っている。
「うむうむ……やはり懐かしい顔ぶれが揃うとなると、ワシは食事を用意せねばな。腕の振るい甲斐が桁違いというものよ」
 法眼はラーメン屋の屋台を引いて各地を駆け巡っているが、注文すれば何でも出てくる屋台として都市伝説にもなっていた。
「前回集まったのが4年前か、まぁ相変わらず元気そうで何よりだなっと」
 ちょんちょんと牌をつもる修也。
「ってことは……あれからもう5年か、世界結界の崩壊や能力者とゴースト問題やそのための準備であんまり永く感じなかったな。で、藤堂はどうしてるんだ?」
 賽を振る陽介。
「ん、俺? ああ、俺傭兵やめたぜ、今はフランスで訓練施設の教官やりながら暮らしてる……ん、何があったかって? ……そういや言ってなかったな、俺結婚したんだわ、2年前に。子供もいるぞ?」
 事も無げに言う修也。
 終わり無く続くかと思われた彼の血塗られた道も、ついに終止符が打たれたのだ。
「そりゃめでたいな。実は俺も……ほら春樹、皆に挨拶」
 恵太は、二歳になる長男を連れている。探偵稼業もすっかり順風満帆の様だ。
「皆さんお父さんですか……私はようやく、訓練施設の目処が立ってきたので、その手伝いをしながらゴースト事件を解決して……と言う感じですね」
 御鏡は父親になった同輩達を、少しまぶしそうに見つつ言う。
「子供と言えば、見て、これアニメ化も決まったあたしの漫画なんだよ。といっても1クール放送なんだけどね……」
 大事そうに漫画をだっこしているのは、リーテ。
「いやいや、凄いって。友達にリーテのサイン持ってるっていうと羨ましがられるもん」
 謙遜するリーテに、笑顔で言うめぐる。
「ドラマ化の話もあったんだけど、イメージに全く合ってない上に、演技力も無いゴリ押しタレントを押し付けられたから断ってやったよ! 作品は自分の子供だからね。この子と同じように大事にするのは親として当然だよ!」
 胸を張って言い切るリーテ。
「凄いわね、リーテさん。玲也さんはどう? 見た目は余り……変わってないけど」
「え? 変わって無いですかっ?」
「相変わらず裏メン稼業なの? せっかくだし、光の当たる場所で活躍してみたらいいのに」
「仰る通りなのです……表プロの試験受けようか悩んでるのです」
 それぞれ状況は違えど、どのカップルも上手く行っている様子。
「学生組はどうだ?」
「私は今、大学生だよー。銀誓館にきたときはまだ年齢一桁のちびっこだったのにね」
「進路はもう決めた?」
「結局、私は学校の先生になることにしたよ。教育実習はすっごい大変だったけど楽しかったー」
 一人称も「私」に変り、ちょっと大人っぽくなった更紗。見た目は……ともかくとして。
「みんな元気そうで何よりだぜぃ! 実は親に自宅警備員解雇されちゃって、のたれ死ぬしかないと思ってたんだけど……養鶏業を始めたら上手く行きすぎちゃってさー」
 5年前は自宅警備員だった美空も、今では鳳雛寺養鶏株式会社の社長だと言う。
「ところで涼子ちゃん。楽してハッピーな人生を歩みたいんだったら、うちの株買わない?」
「買う! 買うですぅ! ……でもお金が無いですぅ。出世払いで」
「出世しないじゃん」
 降って湧いた儲け話に飛びつきかける涼子だが、そもそも元手が無い。
「あたしが融資しようかしら?」
「おぉっ!?」
 と、一枚噛んできたのは銀麗。
「……で、この勝負に涼子が勝てばあたしが援助できる限り資金を出す。負けたら何でも言うことを聞く……で良いのね?」
「か、構わんですぅ……向こう1年……向こう3年しっかりしなくても良いから……今……! ここ……! この半荘だけ……! しっかり……目覚めろですぅ!」
 突如として始まった真剣勝負。涼子も眠っていたポテンシャルを目覚めさせる。
「そんな勝負やって……負けても知らないぞ」
「脱衣くらいにしておけば良いのにね」
 あきれ顔の恵太と乃依。
「言い忘れていたけどこの関銀麗、何かを賭けた勝負に負けたことは今までに一度もないからね」
 にっこり微笑む銀麗。
「ふっ、私とて小三の頃から豆一つ出来たこと無いですぅ。にわかは相手にならんですぅ!」
 不敵に応える涼子。
「あ、涼子を止めたい人は協力するように」
「ちょ」
 群がる鬼達を相手に抗う術もなく、南入を待たずにハコられる涼子であった。
 ――。
「さて……楽しかったが、そろそろ帰らせて貰うぜ。待たせてる人が居るもんでな、一年も待たせた分なるべく一緒に居たいんだ。じゃあ、またな」
 恋人の元へと帰る影斗。
「じゃあまたね。みんな、達者で打ちましょう」
 詳しくは語らないが、何やら多忙な様子の乃依もひらりと手を振って部室を後にする。
「うちも子供達が待ってるから、またそのうちに」
 1人、また1人と家路につくメンバー達。
「それじゃ涼子、頑張ってね」
「ひぃぃぃぃ……地下で強制労働は嫌ですぅぅ」
 その後、涼子の姿を見た者は居ない……とかなんとか。

「若菜、おめでとう!」「おめでとう、高天崎さん」
 この日、若菜はウェディングドレスを纏っていた。
 牌の音の面々や銀誓館時代の友人らに祝福され、ついにゴールインとなった。
「それにしても身長差がぁ……げふんげふん」
 若菜が高すぎるせいもあるのだが、やや小柄な彼との差は自然とツッコミ所。
「これからはプロ雀士と主婦業の両立?」
「えぇ、もちろん能力者としてのお勤めも健在ですよ?」
 發音の問いに、胸を張って答える若菜。元々家事の得意な彼女の事だから、きっと良いお嫁さんになる事だろう。
 チャペルでは、祝福の鐘が高らかに鳴り響くのだった。

「エインセルはあそこから、ここに降りてきたんだよね」
「はい、月からこちらへ来るのは。骨が折れました」
 東京湾に浮かぶ海ほたる。そのテラスで月を愛でるのは、静夢とエインセルの2人。
「わたしすごくびっくりして、エインセルが帰ってこれるか不安で――でも、だから、ちゃんと帰ってきてくれた時、すごい嬉しかった」
「……私は主のことを考えておりましたが、静夢さまがそう考えていらっしゃったことは、知りませんでした」
 リボンを解いた静夢の、美しく長い髪を見ながら目を細めるエインセル。
「あれから6年も経ったけど、今でもエインセルと一緒に居られて嬉しいよ」
 口元を綻ばせる静夢。
「結ばれた縁は、長く結ばれたままであってほしいと思います。あの時結びなおしたように」
 エインセルは静かに、しかし明確な口調でそう答える。
 月の美しい、夏の夜である。

●2017年の卒業式
「めぐるちゃんも今年卒業だっけ、おめでとう」
 掛けられた声にめぐるが振り向くと、そこには小春の姿。試験勉強の傍ら、卒業式に顔を出した様だ。
「あら、小春。卒業式に来るなんて先輩の鏡ね。そっちはどう?」
「僕はまだまだ頑張って勉強しないとなんだよねー……莉緒センパイや涼子センパイは元気そう?」
「えぇ、莉緒も受験勉強みたいよ。涼子は……スポーツ選手になるって言ってたけど、早起きが無理だから別のにするって」
「そ、そっか……めぐるちゃんもこれから先、頑張ってね!」
「有り難う、小春もドラマに出てくるようなカッコイイ弁護士になってね」
「あはは……検察官になるつもりなんだけどね」
 小春は手を振ってめぐるを見送ると、再び勉強再開の為に図書館へと足を向けるのだった。

「楽しかったこと、嬉しかったこと、悔しかったこと、悲しかったこと。本当に色々あったな……」
 校門から銀誓館の校舎を眺め、感慨深げな雅之。
「なに? 柄にも無く感傷に浸っちゃって」
 そんな雅之の脇腹を肘で小突くのは、こちらも卒業生のめぐる。
「……めぐるか」
「第二ボタンをねだる可愛い後輩は居なかったの?」
 雅之の制服を一瞥してから、悪戯っぽく笑う。初めて目にした時の面影は色濃いが、めぐるもすっかり成長した。
「めぐる、卒業おめでとう」
「ありがとう。あなたもね」
 互いに祝辞を贈り合うと、どちらが提案するでもなく、桜並木の道を歩き出す2人。
「俺はめぐるが好きだ」
「……え、えっ?」
 沈黙を破ったのは雅之。思わず目を見開いて、足を止めるめぐる。
「これまでも、これからも」
 そんなめぐるに向き直り、雅之はそう告げる。
「……あ、ありがと……嬉しい」
 やや俯きがちに答えるめぐるに、手をさしのべる雅之。
 2人は手を結ぶと、再び桜並木を歩み出すのだった。

●2018年の日常
「お久しぶりです、速坂さん。ご卒業おめでとうございます」
「アノマーシェ、久しぶりね! 元気だった?」
「えぇ。大学に通いながら、IMS構築のお手伝いをしています。基礎の部分は大分安定してきたのですが、まだ安定性が……」
「む、難しそうね……」
 アノマーシェは、囚われの身であっためぐるを救出した能力者の1人だ。卒業式の手伝いを兼ねて、めぐると久しぶりに再会した。
 イグニッションカードの量産システムについても尽力中だと言う。
「将来どうされるかは決めましたか?」
「そうねぇ……楽しくてスリリングな毎日が送りたいわね」
「……速坂さんらしいかも知れませんね」
 思い出話やこれからの事をあれこれと話した2人。気づけば良い時間になっていた。
「それじゃ、お元気で……めぐるさん」
「またお話しましょ、そっちも頑張ってね」
 手を振って再会を約束し、別れる2人であった。

「形にはなってきましたが、まだまだ……住む人が使い難い形状ですね、要研究です」
 あれから3年。成美の除霊建築部は着々と成果を上げ、ついには会社として独立する目処が立っていた。
 研究の結果、ゴーストを寄せ付けない建築物も試作型の家が完成していたが、住居としての改善点はまだまだ多いようだ。
「ぶっちゃけ風水による都市計画や建築を突き進めたものだから、もう少し簡単にいくと思ったのですが、甘くありませんね」
 やれやれと頭をかきながらも、成美の表情は明るい。除霊建築の分野はまだまだ伸びしろがあると言う事でもあるのだから。
「そういえば会社化するのに名前決めてませんでしたね、株式会社……何が良いかなあ」
 後に世界的企業となるその会社は、この時まさに誕生しようとしていたのである。

●2018年の同窓会
「ボクは、今度パリコレに出ることになったんだけど、できればハリウッドでミュージカルしたいヨ」
「活躍の噂はかねがね。ねぇ、今度見に行きたいわ」
 大学を卒業した後、アリスはすっかり国際的なスーパーモデルとなっていた。歌や演技も高く評価され、彼女の舞台はなかなかチケットが取れないと言う。
「莉緒も自分の夢を追っているみたいで、ボクは嬉しいネ。
「有り難う。夢っていうと大げさだけど、まぁぼちぼちね」
 莉緒もまた、地元の企業に就職して多忙な日々を送っている。
「お互いがんばろうネ。大切な人ができたら教え合おう」
「あはは、それは良いわね。頑張らなきゃ」
 久々の再開に話は尽きず、ガールズトークに花を咲かせる二人であった。

●2019年の日常
「思った以上に広大ね、このゴーストタウンは」
「トラップに注意だ。ゴーストと違って話せる相手じゃないからな」
 大人になり、また能力者としても成熟した雅之とめぐるは、ゴーストタウンを探し世界を飛び回っていた。
 調査や敵の討伐、そしてゴーストタウン復興の可能性を探る為だ。
 ――ゴゴゴゴ……。
「なに、この音?」
「やばい! 崩れるぞ」
 パラパラと砂利が振って来たかと思うと、震動と共に天井が崩落し始める。
「外へ出よう。しっかり掴まってろよ」
「うん!」
 雅之はめぐるの手を掴むと、走り出す。
 たった今渡っていた吊り橋が奈落の底へ落ち、コンマ数秒前に居た場所に巨大な岩が落ちてくる。
 そんな状況にありながらも、2人は顔を見合わせて笑う。
 これが2人の日常であった。

「ねぇ、静夢とエインセルじゃない? やっぱりそうだ!」
「めぐる先輩?」
 黒海に面した東欧の国。旅行中の静夢とエインセルは、思いがけずめぐると遭遇した。
「古典文学研究部では長らくお世話になりました、お久しぶりです」
 お辞儀をしながら言うエインセル。
「ほんとね、まさかこんな所で会うなんて。2人は旅行? それとも仕事? っていうか、エインセルが喋ってる!?」
「薔薇の産地としても有名なここで香水や石鹸をお買いものするんです――めぐる先輩もいかがです?」
「ええ、是非」
 静夢の誘いにめぐるは即答し、しばし道連れとなる3人。
「実は、大学卒業の後大事なお仕事がありますので、その準備も兼ねてですけど」
「そうなんだ、2人は一緒に仕事してるのね」
「はい、お仕事で静夢さまとは、長いお付き合いになるかと」
「そっかぁ、良いわね……わ、この香水良い香り」
「あちらこちらを旅しておられるのですね、めぐる様」
「うん。忙しないったらありゃしないわ、こんな風にお店巡りするのは久しぶりかも」
 エインセルの言葉に、苦笑しながら応えるめぐる。
 ひとしきり買い物を済ませた3人は、カフェでティータイムを過ごす事に。
「……そう、そっちも色々大変そうね」
「大変な仕事ですが、大好きな人と一緒なんです」
 エインセルを見遣って微笑む静夢。
「はい、静夢さまも大きくなられ、安心です」
 エインセルもまた、微かに笑んでこれに応える。
 3人は暫しの間、ゆったりと旧交を温めるのだった。

「仕事が忙しすぎて彼氏作る暇がないの」
「解るわ、わたしも凄く忙しいもの」
「解りますぅ」
 30歳になった摩那は、薬剤師として活躍していたが色恋とは無縁だと言う。同席している莉緒も、うんうんと頷く。涼子も何故か頷く。
 この日3人は、ランチタイムを利用し女子会を開いていた。
「リア充なんか爆発しろー!」
「そうだそうだ、爆発しろですぅ!」
「……ま、まぁ……でも……黒木さんは病院勤務なんだし、上手くすればお医者さんと結婚して玉の輿に乗っちゃったりするんじゃない?」
 盛り上がり掛ける2人に、慌ててフォローを入れる莉緒。
「もう誰でもいいから……莉緒さん結婚してー!」
「誰でもいいからって……そんな事言ったら莉緒さんが怒りますよぅ」
「ふつつか者ですが」
「通った?!」
「でもまぁ、お互い恋に仕事に頑張りましょ」
「そうね!」
「あ、これ美味しい」
「どれどれ?」
 自分が一番先に幸せになってやると言う想いを胸に(?)、3人は料理に舌鼓を打つのだった。

「ねぇ……これって誕生日祝い、だよね?」
 道無き道を歩みながら、問うのは二十歳になったばかりのめぐる。
「そうだよ」
 にっこり笑って答える和奈とさつき。
「確かに温泉は嬉しいけど……ちょっと遠すぎない?」
「温泉は汗をかいて、少し疲れてから入るのが最高だよ」
 めぐるを祝し、秘境温泉巡りを企画した2人。しかし彼女達の言う秘湯は、並の秘湯とは次元が違う。
 そう易々とはたどり着けないような――真の秘湯巡りだった。
 ――グルルゥゥ。
「……これもお祝いの一貫?」
 と、いつしか周囲を取り囲む妖獣の群れ。
「こういうのと会っちゃうのも銀誓館の宿命なのかなぁ……でも、一緒に戦うのもなんか久しぶりだよね」
「それじゃ、行こうか」
「やれやれ」
 どことなく楽しそうに言う和奈と、詠唱銃を構えるさつき。めぐるも肩を竦めて笑うと、妖獣へと向かってゆく。
 ――。
「あぁ、やっぱり最高だね」
「極楽極楽♪」
 苦難を乗り越え、ようやく秘湯にたどり着いた3人。誰かに邪魔をされる心配もなく、温泉のみならず景色も3人の貸し切り状態だ。
「んー、日々の疲れが吹き飛ぶわ」
 大きく伸びをして、疲れを癒やすめぐる。
 ――むにゅ。
「って、うわぁっ!? ちょ、何すんのよ!」
「昔はあんなに小さかったのに……」
「こらぁぁぁ!」
「あはは」
 ――バシャッ! バシャッ!
 3人は童心に返って、秘湯を満喫するのだった。

●2020年の同窓会
(……きこえますか……きこえますか……今……あなたの……心に……直接……呼びかけています……)
 同窓会の会場に――正確には、その場所に居る人々の心に何者かの声が響く。
「こ、この声は……ハルミ!?」
 火星に要塞を建造すると言って宇宙に発ったハルミだったが、爆発事故が起きて以降連絡が取れないでいた。
「生きていたとはぁ……」
「生きていたよ」
「うわぁっ!? な、なんで居るのよ……っていうかここに居るならなんでテレパシー使ったのよ」
 結局彼女は地球に戻っていた。それどころか、小さな喫茶店を営んでいると言う。
「近くに来たら寄ってね! 御代はタダにしとくわ♪」
 岬にたたずむこじんまりとした店だが、コーヒーの味は確かだと言う。どんなに間が空いても常連になれる店だ。

「そっかぁ、アノマーシェはその……I……M? 何とかで働くのね」
「えぇ、そのつもりで。今年最後の大学生活を楽しんでいます」
 あれから2年、アノマーシェは順調に学業を修め、IMS構築の関連機関への内定を取っていた。
「皆さんも色々な道を歩まれるみたいで、とても楽しみですね」
「そうね……って、なんかふらふらしてない?」
「そんな事は無い……ですよ……?」
「あらら……寝ちゃった」
 学業で疲れが溜まっていたせいか、ドリンクのせいか、うとうとと船をこぎ始めるアノマーシェ。
 宴の夜は更けてゆくのだった。

●2021年の日常
「30代おめでとう。これで同じステージね」
「……え、永遠の17歳ですからぁ」
 カチンとグラスを鳴らす摩那と涼子。心なしか声と手が震える涼子。
「大丈夫よ、私も涼子さんと同じ年の頃は焦ってたけど……何とかなったし」
 終始笑顔の摩那は新婚ほやほや、しかも妊娠中でもある。
「はぁぁぁ……医者と結婚して子供も出来て……リア充爆発しろですぅ!」
「はいはい。それでね、主人が今日の朝出かける前に――」
「聞きたくないですぅぅぅぅ!!」
 かくして摩那は一児の母として、更に充実した人生を歩んでゆくのであった。涼子とは対照的に。

『ボク達の、二人のアトリエが出来たら。軌跡を辿る絵を描こう』
 約束を果たす為、和奈とさつきは地中海――コルシカ島に居た。
「だいぶ掛かったけど、やっと夢叶ったねー」
 感慨深げな和奈。トレードマークのポニーテールはあの頃と同じだ。
「もう、12年も前になるんだなぁ……」
 さつきは風に揺れる長い髪を抑えながら、澄み切った空を見上げる。
「……」
「ん?」
「いや、もうそんなかぁ……、あっという間だね。意外と。ボロボロで戦ってたのはちょっと懐かしいけど」
 暫し、さつきの緑髪に見とれていた和奈も、懐かしげに昔を思い出す。
「あの頃は最後に夜空をやっと楽しめた、だけだったけど」
「……ね、またあの時みたいに膝枕して貰って良い?」
「勿論、だって和奈さんの専用なんだから」
 和奈はさつきの答えに微笑むと、膝の上に頭を乗せる。
「ねぇ、和奈さん。こうして温かな陽の中で、沢山の温かさを感じられるのって良いよね」
「うん、こういう温かい時間は、あの時に頑張って良かった、って思うし」
 さっきよりも近い距離で、微笑み合う2人。
「私ね、和奈さんの好きな物、沢山作ってきたんだよ?」
「やった、さつきちゃんのお弁当♪ えへへ、そんなこと言うと期待しちゃうからね!!」
 描きかけの絵とお弁当も今は後回しにして、2人はもう暫く、互いの温もりを確かめ合うのだった。

「ヘイ、そこのお嬢ちゃん。パパとママはどこにいるんだ? 見たところ金持ちのお嬢ちゃんじゃねぇのか?」
「一人じゃ危ねぇぞ、俺たちがエスコートしてやろう。ヘッヘッヘ」
 東南アジア某国。スラムの路地裏で、プリスを取り囲むガラの悪い男達。
 その手がプリスの腕に伸びた、その瞬間――
 ――どかっ! ばきっ!
「ぐはぁっ!」「ごふぁっ!」
 瞬く間に、地面に伸される男達。
「お前ら、もう一度言ってみろ。なんだって?」
「……い、いや……」
「あぁ?」
「ひっ……か、勘弁してくだせぇ!」
 男達は恐喝だか盗みだかで得たのであろう小銭をプリスに献上すると、這々の体で逃げていった。
「さぁて、ゴーストはどこかな」
 風の向くまま気の向くまま、プリスは今日も一人旅を続ける。

●2022年の日常
「静夢さん、部屋掃除への時間がかかりすぎです」
 懐中時計を手に、やや厳しい口調で言うエインセル。
「はい。すぐ片付けます」
 長い髪を三つ編みにし、エプロンドレス姿の静夢。美しく成長した彼女だが、まだメイド姿が板に付いたとは言いがたい様子。メイドの大先輩であるエインセルに返事しながら、バケツに浸けた雑巾を絞る。
「絞り方はこうです」
 エインセルは、冷えた静夢の手に自らの手を重ね、雑巾に残った水を絞り出す。
「辛いですか?」
 手を重ねたまま、問いかけるエインセル。
「辛くないわけではないですが。でもエインセルと一緒にいるから大丈夫なんです」
 そんなエインセルを見つめ返すと、はっきり答える静夢。
「エインセルと一緒ならどこでも楽しいですよ」
 にっこりと、無邪気に笑う。
「部屋の掃除が一通り終わりましたら休憩にしましょう。その後、主のお部屋の掃除の仕方をお教えします」
 そんな静夢に頷きながら、少しだけ優しい声色でエインセルは告げる。
 静かな屋敷の昼下がりである。

「久しぶりね、みんな。見て、1ヶ月前に産んだあたしの可愛い双子ちゃん! ついに7回双子出産で七対子が完成したのよ! 日本の少子化歯止めに貢献しすぎだわ」
 驚き半分、光ならやるだろうと言う想い半分で、双子を愛でる牌の音面々。
「いい女ぶりに磨きがかかっておるなぁ……うん、攫っていけば良かったかもなぁ」
 苦笑しつつそんな言葉を呟くのは、店も鍛冶屋も弟子に任せ、屋台と身一つになった法眼。
「今年は飴細工を用意したぞ? 指輪デザインな事に他意は無い。無論、いつもの如くなんでもござれ。注文あらば用意する構えじゃ」
 何でも出てくるのはいつも通り。一同は法眼の料理で空腹を満たしながら、全員が揃うのを待つ。
 毎年顔を合わせている者、数年ぶりに来た者、部室には数多くの懐かしい顔が次第に増えてゆく。
「高天崎さん!」「久しぶりね、若菜ちゃん」
「お久しぶりです」
 久方ぶりに姿を現した若菜。そして彼女にぴったり寄り添う女の子と男の子。
「あ、この子達、私の子なんです」
 見たところ、目立って背が高いと言う事は無いようだ。
「感慨深いというか変わってないというか……元気そうで何より」
 小学校に進んだ長男の春樹に加え、4歳の長女結愛を連れた恵太。
 今なお夫婦仲もラブラブな彼だが、事務所もすっかり大きくなった。所長でありながら第一線で活躍し続ける、相変わらずの多忙ぶりだ。
「流石にまぁ、これだけ経つと変わるな……俺も人の事言えないけどな、30越えたし」
 室内を見回して呟く修也。
「あぁ、でも……やっぱり中身は昔のままなんだな、安心するわ。子供が居る奴もいるし、随分と忙しそうにしてる奴も居るし……」
 頷きながらも、すっかり感慨深げな影斗。
 彼自身もまた、一緒に居てくれる者の存在を大きく実感していた。
「もうあの青春の日々から10年か、能力者として活動して来たがあっという間だったな」
 陽介もまた、銀誓館の学生としてこの部室を利用していた頃に思いをはせる。
「ん、家はどうしたって? まぁ、普通にどうにか上手くやってるぜ? 子育ては火鉈メインだが……俺親とか知らんからそこら辺苦手なんだよな」
 子煩悩な親から、放任主義の親まで多種多様。子供達がどう成長するかも楽しみな所だ。
「子供とは違いますが……せっかくの機会ですし、生徒達に皆さんを紹介したいですね。久々にあの頃の武勇伝を語るのも悪くないでしょう」
 一方訓練組織の教官となった御鏡は、何人かの生徒と共にやってきた。彼も今や、多くの能力者を育て上げたベテラン教官だ。
「……ところで涼子を誰か知らない? うちの売り上げ持ち逃げして部下に落とし前の件で騒がれているのよ」
 麻雀によって裏世界を征服した銀麗。平和維持の為に多忙な日々を送っている様だが、今回は涼子の消息を探る為にも、久しぶりにやってきた。
「持ち逃げって、涼子……何やってんのよ」
 あきれ顔のめぐる。
「タイトルおめでとう、世良さん」
「ありがとうなのです……」
 表のプロとなった玲也は、初のタイトルを獲得していた。
「ちなみに、賞金の使い道は?」
「生活の為に取っておくのです」
「なるほど、堅実ね。夫婦仲もむつまじい様だし……子供もそのうち?」
 言いつつ、リーテへ視線を向ける莉緒。
「みんな相変わらず元気そうだね。あたしも漫画家生活も結婚生活も上手くいってて言うこと無しだけど、学園で過ごしていた頃に比べるとなんか物足りないなぁ〜。あの頃は毎日が血沸き肉躍る生活だったねぇ……」
 売れっ子漫画家となったリーテだが、何か物足りない様子。
 死と隣り合わせの青春を送ってきた者達にとって、一般的な成功はやや物足りない物なのかも知れない。
「お金は使いきれないくらいあるしで、超セレブキャラに変貌しちまったぜぃ! ……ザマス!」
 こちらも毛皮のコートに身を包み、大粒ダイヤの指輪が光る。美空はその後も事業を拡大し続け、すっかり長者番付の常連となっていた。
「でもなんか物足りないぜぃ……そう、刺激が足りないんだよ! となると、久しぶりにやっちゃうかい? あれを! 136枚の牌を使った卓上の格闘技麻雀を!」
「そうだね。久しぶりにそんな時間を過ごそうか、これで」
 あの頃の気持ちに戻って、面々は席へ着く。
「一菜、次成。お母さんが打っている間は静かにして、打ち方をしっかり見ているのですよ?」
 子供達に言う若菜。彼女もまたプロの雀士だ。
「うちも結愛が育ったら家族で打てるかな」
 恵太も、興味津々の子供達を見て呟く。
「賞金は玲也の出資で良いんだよな」
「ああ、勝手に高レートの場セッティングしないでほしいのです」
「玲也が勝てば問題ないって」
 そうこう言いながら、対局は開始された。
「大分腕落ちてっかもしれないが……」
「点数計算も大体覚えたし……頑張るわよ」
「言っておくけど、今のあたしは強いよ!」
「やっぱこれでこそ牌の音! 生きてるって実感がするよね。おっと……昔を思い出してつい涙が……」
 懐かしい日々がフラッシュバックし、思わず涙ぐむ美空。
「ツモ……安めで……親の3倍満なのです」
「「えぇぇっ!!?」」
 感傷に浸る間もなく、凄まじい手を上がる玲也。賞金はきっちり、生活費に回せそうだ。
 ――ガチャッ。
「私も混ぜろよ、ですぅ」
 と、そんなタイミングで姿を現したのは涼子。
「あ、涼子……」
「関さんに返すお金を用意するのにちょっと手間取ったですぅ。ちゃちゃっと2倍にするつもりが、気づいたらほとんど無くなってたりしてぇ。まぁ、ともかくちゃんとお返しするですよぅ」
「その様子だと、ハッピーな人生を送ってたみたいだな」
「ふっふっふ、何てこと無いですぅ」
 陽介の言葉に、高笑いの涼子。なけなしの悪運で荒稼ぎしたらしい。
「利子と落とし前の分を考えると……後10年はうちでパシリやって貰うわ」
「ひぎぃっ!?」
 涼子から受け取った金を確認しつつ、あっさりと言い放つ銀麗。
「度胸があって信頼できる、腕の立つメンバーが必要でね」
「……おぉぅ……そこまで言われちゃ、一肌脱がないわけにもいかないですねぇ」
 あっさりとおだてに乗る涼子。10年経っても全く成長していない。
「さ、始めよっか。最近いそがしくてあんまし麻雀うってなかったから牌の感触がきもちいー」
 銀誓館学園で、中学教諭になった更紗。大の苦手だった彼女だからこそ、出来ない子に上手く教えられるのかも知れない。
「……え、結婚? そいうはなしはでてないわけじゃないけど、お仕事のことかんがえるとも少し先かなあ。あー、でも世の中混乱するまえに出産しといたほーがいっかな、悩む……」
 手牌を眺めながら、思案の更紗。人生も麻雀も、取捨選択の連続だ。
「……今回は集まってくれたみんなに真面目な話があるのよ。今の日本ってすごく疲弊しきってるじゃない。この状況を打破する為には物凄い力が必要だと思わない?」
 宴もたけなわの頃、ふと、真顔で切り出す光。
「何が言いたいかと言うと、あたし達で世界征服するわよって事よ!」
 不敵に笑う光。ここ暫くは、見られなかった彼女らしい表情だ。
 顔を見合わせる一同。
「さあまたみんなではしゃぐわよ!」
 牌の音は鳴り止まず、彼らの活躍はまだまだ、これからである。

●2024年の日常
「素晴らしい成果ですよ、室長」
「現状でも高水準ではありますが、量産時の安定性をより高めたいですね……」
「これ以上、ですか……」
 アノマーシェは、妥協する事無くIMSの構築に向けて改良を続けていた。
「……と、済みませんが我は少し出てきます。後をお願いします」
 そして後のことを部下に任せると、彼は薙刀を手に戦地へと赴く。
「我は銀誓館の……いえ、良き未来の為に、戦います!」
 元銀誓館の生徒としての矜持を示すべく、彼の果てしない戦いは続いてゆくのだった。

●2024年の同窓会
「あら、鈴鹿検事じゃない。久しぶりね」
「莉緒センパイ、それにお二人も久しぶり!」
 会場で、すっかり立派になった小春を呼び止める莉緒。隣には、めぐると涼子も居る。
「奥さんやお子さんは元気? 仕事大変でしょ? 敏腕検事さんだもんね」
「えへへ、お陰様で。激務だけど頑張ってるよ。莉緒センパイはどんなジョブに覚醒したのかな? 後衛っぽいけど」
「ご名答、魔弾術士よ。もう一個のジョブはOLだけどね」
「新人いびりに余念の無いお局さんですぅ。アラサーOLオソロシアですぅ」
「違うっての!」
 涼子の軽口に、びしっと突っ込む莉緒。 
「涼子センパイは夢叶いました?」
「夢なかばですねぇ」
「この年まで自宅警備一本だもんね」
 遠い目の涼子の肩を、ぽんぽんと叩くめぐる。
「いやいや、実業家と呼んで欲しいですぅ。それに近々玉の輿に乗る予定なんで花嫁修行中ですぅ」
「……夢、叶うと良いですね……」
 検事になる夢を叶えた小春だったが、彼の活躍はまだまだこれからが本番である。

「……」
「とまぁ、あの時はちょっと危なかったな。もう少しで市街地にジャンボジェットが落ちるところだったからよ」
 会場の一角では、プリスが世界各地で巻き起こし――もとい、解決した武勇伝を披露していた。
 莉緒は、ピラミッドの頂上にベルグランデ家の旗を立てた写真や、某国大統領にドロップキックをかます少女の新聞記事、そして今まさに語られているハイジャック事件解決の記事を眺め、言葉を失っていた。
「偶然乗り合わせたコックがなかなかのタフガイで、2人だったから何とかなったけどな」
「……プリスさん、見た目は余り変わらないけど、絡む事件は段々大きくなってる気がするわ……」
 呆れたような感服したような、複雑な表情の莉緒。
 プリスが地球に飛来する隕石の直撃を阻止する、その数ヶ月前の話である。


マスター:小茄 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:28人
作成日:2012/12/19
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