お疲れ様をみんなで


<オープニング>


 楽しかった、銀誓館学園の学園祭も無事に終了を迎える事ができた。
 総参加者が1000人を超えたため、候補者を確認するだけで大仕事になった、銀誓館水着コンテスト。
 更に、当日まで謎のベールに包まれていたバトルロワイアルで繰り広げられた激闘に次ぐ激闘は、その殊勲者とともに語り継がれるかもしれない。
 そして何よりの思い出は、結社の仲間達とともに作った結社企画だったろう。

 心地良い疲れと達成感を得た学生達だったが、若い彼らにはまだまだやるべき事があった。
 そう、学園祭の打ち上げが残っていたのだ。

 学園祭終了後のお楽しみ、結社ごとに行なわれる打ち上げパーティーを、存分に楽しみましょう。

●打ち上げ会場、江ノ島海岸
 学園を出てしばらく歩けば辿りつける夜の浜辺。
 ピクニックのように連なって歩いてきた学生達は、海岸に幾つかの灯りを発見します。
 それは、燃え盛るキャンプファイアーの炎でした。
 今日は、特別に許可を得て、学園祭の打ち上げの為にキャンプファイアーが設置されているのです。
 踊るのもよし、歌うものよし。
 結社の仲間達と、キャンプファイアーの炎に照らされながら、夜の浜辺で楽しい一時を過ごしましょう。
 なお、キャンプファイアーにゴミを投げ込むのは禁止です。
 また、ゴミは各自で必ず持ち帰るようにしてください(キャンプファイアーの後片付けは、翌日までに業者の方がしてくれます)。


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<リプレイ>

●赤い炎を見上げながら、乾杯
 パチパチ、炎のはぜる音がする。火の粉が巻き上がり、くみ上げられた木は静かに燃え続ける。

 夜の海岸からは、ねぎらいの声。
「まずは、お疲れ様〜」
「みんな2日間ほんとお疲れ様。かんぱーい♪」
 森林浴処【WINGreen】の森山・樹里(碧風の旋律・b10514)の音頭で四人の手に取ったコップが打ち合わされる。
「良かったら、こっちも食べてね」
 簡単なバーベキューセットも用意し、樹里は持ち込んだ野菜を焼いていく。じゅうじゅうといい音をたてて野菜も焼けていく。
「今日はお疲れ様。楽しい企画を有難う。今日はゆっくり休んでね」
 友好旅団から顔を出している風見・玲樹(スーパー痛快ぼっちゃま・b00256)も、手作りのおにぎりを差し出す。服装はTシャツに短パン姿だ。木々に囲まれたのんびりした喫茶店を思い出しながら。
「お腹が空いたらおにぎりがあるよ。僕が作って来たんだ♪」
「こうしてのんびりするのもいいですね」
 鳥山・つぐみ(沈黙のアマゾネス・b21644)はキャンプファイアーの炎を見やりながら、ジュース片手に、のんびりする。学園祭は楽しかったけれど、回る所が沢山あったから。こうしてのんびりと過ごす時間も、それはそれで貴重に思える。
「はじめての、学園祭は、とっても、楽しかった、の」
 峰山・珠果(揺り篭の白兎・b25341)の手の中には、黄色い金平糖の小瓶。空を見上げると、同じ色の星たちが、控えめに輝いている。
  
「皆お疲れ様だよー!」
 文化祭本番では余り貢献できなかったからとも思いながら、杜山・初花(忍者ライダー・b21338)は差し上げたコップを喫茶部の仲間と合わせる。
「沢山用意したから、どんどん食べてな」
 大加美・稜牙(白銀の戦狼・b14619)は用意したジュースやお菓子を並べる。親睦を深める意味もあるし、とにかく騒ぎたい気がして。
 控えめな手つきで持ってきたお菓子を配るのは神代・紅葉(中学生魔弾術士・b27144)。ちょこん、と申し訳程度につけた犬耳は、結社企画で使ったもの。
「家に帰るまでが遠足って、よく言うもんね」
 箭弓・綴(スピリチュアルエイトビート・b25719)は心地良い疲労感を感じながら、そう呟いた。そう、家に帰るまでは、疲れたなんて言っていられない。
「残り物、他の結社の人にもおすそ分けしてくるね」
 壊れないように気をつけて持ってきた、ケーキの箱を手に。近くで打ち上げ中の結社の人に、配りに向かう。

●静かに、お話を
「ありがとうね」
 差し出されたお菓子とケーキとジュースを受け取ったのは氷室・雪那(雪花の歌姫・b01253)。夜の海にちょっと、物悲しさも感じるのは、学園祭で特に何もできなかった、と思ってしまうからなのか。
「来年があれば、何かやりたいよね。華凛は……卒業してるかもしれないけど」
 すぐ側に居る御巫・終凪(ご主人様の素敵な下僕・b00295)へと話しかける。終凪の方はといえば、密かに想っている雪那と二人で、ちょっとしたデート気分になっていたりも、する。
「何かやるなら、ライブ……かな?」
 他愛ない話をして、学園祭の余韻に浸る。
「バトルロワイアルも凄かった」
「水着コンテストも、見て回るのも苦労したしね」
 結社企画は出していないとはいえ、二人とも、学園祭の話で盛り上がっている。折角デートっぽい雰囲気なのだからと、終凪は思い切って言ってみる。
「星も綺麗だけど、雪那の瞳の方が綺麗だよ」
 柄じゃないと思いつつのその言葉に。雪那は微笑んで見せた。……なんだか、可笑しくて。

●歌えや、おどれや
 並べられた食べ物が半分ぐらい、減ったころ。
 最初に歌い始めたのは、初花。
「ゆけゆけー喫茶部ー
 エプロン纏いトレイを投げてー 悪のスタバーン倒すのだー
 ワン! 犬耳ブルー! 僕らの団長ー♪
 ツー! ネコミミレッド!」
 三人目まで続いたところで、ネタが尽きたよ、と歌を止める。即席で歌うのは難しいなあ、などと思いながらだ。
(「箭弓ちゃんはピンクで、紅葉ちゃんはグリーンだと思うんだけど。アタシはイエローかなぁ」)

「そういえば、キャンプファイアーって言えば、マイムマイムだよね。良かったら他の結社の方もどうぞー」
 おすそ分けから戻ってきた綴が、楽器を手に取る。
「そういえば、喫茶部の皆の前で一度も曲演奏した事ないね。マイム弾くから皆踊れー!!」
 炎を囲んで、喫茶部のメンバーが踊り始める。
 稜牙は柄でないとも思いつつ、久々だから、楽しもうと。

「僕たちも一緒に踊ろうか? まじゅりん」
 恋人である樹里の手を軽く引くと、玲樹が踊りの輪に加わる。暖かい気持ちになりながら。
 つぐみも最初は見ていただけだが、途中で踊りの輪へ。見様見真似で踊っている彼女であったが、いつの間にやらちょっと真剣な表情で踊っている。そんなつぐみに手招きされ、珠果も踊りの輪へと加わった。

「音楽、替わろうか?」
 一曲終わったところで、樹里はサックスを手に綴に問いかける。
「じゃ、一曲お願い。それが終わったら、一緒にどう?」
 樹里は頷くと、ゆったりしたジャズ調の曲を奏でる。
 疲れを少しでも癒して楽しく踊ってもらえたら、という思いをこめて。

「私も歌ってもいいかしら?」
 小さなセッションに加わるのは、雪那。星空を題材にした、綺麗な歌に、終凪のギターと樹里のサックス、そして綴が加わって静かな曲を奏でる。少しでも、親友である桜神帝・華凛(隠者の小夜曲・b01875)にとって、いい想い出になるように、と。そんな思いを籠めて雪那は歌う。

 歌を、炎を眺めながら聴いていたのは華凛。と−−
「……華凛?」
 ふと背後から聞き覚えのある声がして、振り向いた。
 こんな所で会うとは思わなかった、と意外そうな声で彼女に呼びかけたのは、狩夜・稔(罪過に染まりし赫き靴・b21569)。なんとなく海風に当たりたくなってうろついていただけだ、無理は無い。
「珍しい所で会うわね。折角だから……一緒に聞きましょう?」
 小さく頷くと、側に来る稔。
「……こんな時間も久し振りね……どう、あれから……目指す物は見つかった?」
「さあ……どうだろうな」
 少し間をおいて、華凛は続ける。
「お互い、相変わらずね。……が亡くなってから、時が止まったままのよう」
「そうだな……俺は結局あの時から……動けないまま思い出すことさえおそれて、大切な者を遠ざけている」
 静かなギターをバックに歌う雪那の歌は続いている。歌い続けている彼女は、稔に気がついてはいないようだ。
「だが、お前は強いな……もう一度音楽を手に取ったのだから。それが例え、雪那の為だとしても、それが出来るのは間違いなく強さと優しさだと思う」
「何? 私が強いなんて訳、ないでしょう。情熱なんてもういらないと心に決めた筈だったのだから。私自身、再び音楽に携わるなんて思わなかったもの……」
 心を籠めて歌う黒髪の少女に稔が視線を向ける。それに気がついてか、彼女の保護者に近い立場の華凛。
「雪那の事、気になる? また……ゆっくり話してあげて。雪那も……機会、待ってるみたいだから」
「ああ……また店に寄らせてもらう……」
 幸せそうな彼女に安堵して。遠い昔のようにさえ感じるあの頃を思う。

●夜のちいさな花火大会
 巫女服姿で花火を楽しんでいるのは、黒巫・霊花(闇巫女・b24594)ら銀誓館学園昼寝部の面々だ。服装に突込みを入れる人がいなかったのは幸いか。服装に突っ込む相手には、容赦なく肘打ちを入れるつもりだったから。
「花火なんて、久しぶりね……」
 リセル・クライスト(絶望の死神・b25991)は多目に用意した花火のうち、手持ち花火に火をつける。表情は無表情なまま。
 周りの結社の迷惑にならないようにと、少し離れた場所で。
「え? 花火? やろうやろう」
 大勢で騒ぐのははじめてだからと少し緊張しつつ、朝霧・屡瑠(私はここにいます・b26855)がロケット花火を手に取る。
「扱いには気をつけて」
 やっぱり無表情なまま、ロケット花火を持った屡瑠へとリセルが呼びかける。
「勿論。ほら、こうやって手で持って火を……」
 ……手に持ったまま点火。
「って、あっちぃ〜!!」
 ……事もあろうに、もう片方の手に掠めて飛んでった。向けている方向が悪かったのか。パン、と大きな音。
「リセルちゃん助けて〜」
「お水で冷やして」
 かすっただけで、尚且つすぐに水で冷やしたから事なきを得たが。

(「こーゆー時に心から楽しめねぇ……ってのは、やっぱり歪んでんだろーなぁ……」)
 そこから更に離れて、村神・悠貴(宵闇の狩人・b26839)が花火を楽しむ三人を眺めていたり、する。
「……まァ、たまには悪くねぇ、か。楽しまなきゃ損ってな〜♪」
 等といいながら、花火に加わる悠貴。
「はい、花火」
 屡瑠はやっぱりロケット花火を悠貴に渡す。
 少し動いて火をつけようとした彼の近くに、不意にリセルが鼠花火を投げる。
 花火はくるくる走り回って、パン、と音を立てる。
 霊花は霊花で、手持ち花火を悠貴の方へ向けていたり、するし……
 足元で動きを止めた鼠花火を見ながら。
「ちょ、そいつぁないでしょお嬢さん方!?」
 当たりはしなかったが、当たるかと思った。ちょっと胸を撫で下ろす。
「花火を人に向けるのは危ない? 知らないわね」
「両手で持つと、綺麗」
 悠貴、暫くなすがままに弄られ続けていたが、最後には拗ねちゃった。
「ふーんだ、俺様なんて……俺様なんて……」
「アンタを弄れとリセルが言ったのよ……乗った意思は私だけど」
 ……注意。花火は危険ですので、取り扱いには気をつけてくださいね。

 炎からは少しはなれて。こちらも波打ち際に近いところで、森林浴処【WINGreen】のメンバーらも花火をやっている。手持ち花火をやったり、打ち上げ花火を上げたり。
「綺麗、です、ね」
 空に打ちあがる花火を見て、珠果が歓声を上げる。
 ちょっとしんみりとした気持ちのつぐみも、花火を見上げた。
「パラシュート花火からパラシュートが出るよ!落ちてきたら取ってね」
 玲樹が火をつけると、打ちあがった花火から、幾つものパラシュートが落ちてくる。
「わあ……」
 つぐみの手の中に一つ。樹里が一つ、珠果も二つ、パラシュートを受け止める。受け止めなかったパラシュートは、波打ち際へと落ちた。

 ひとしきり騒ぎ終わったら、最後は線香花火。
 火をつけると、火の玉になり、やがて小さな火花が飛び散る。
 屡瑠は今度は静かに、小さな花火を眺めている。
「今日は……久しぶりに楽しかった。……誘ってくれて……ありがとう」
 珍しく、感情を表情にあらわにして、リセルが僅かに微笑み、霊花へと礼を言う。
「気にしなくて良いわ……私も、楽しかったからね……」
 本当に楽しかった、久しぶりに。
「私からも、ありがとう」
 手に持った線香花火は、柳のような火花を最後に見せて。
 ぽとりと落ちる。

「まぁた言えなかったな〜、つくづく腰抜けな自分がイヤになるぜ……はぁ」
 花火の終わった後の海岸に、海を眺めて呟く悠貴の姿。

●きっとまた、みんなで
「また、みんなで、何か、できたら、いい、です……」
 幸せそうに珠果が呟くと。
「学園祭はこれで終わりだけど、明日からまた楽しいことがありますように」
 片づけを終えたつぐみもそう続けた。
 パチパチと、少し小さくなった炎を見て。

「いつも本当にサンキュな」
 部の面々を見比べて。改めて、稜牙がそう言った。
「楽しかった、ですよね」
 紅葉の持ってきた数々の食べ物も、全部なくなってしまったけれど。ネコミミ姿の彼女は微笑む。
「これからもよろしく頼むぜ」
 稜牙の思いは、きっと他の三人とも同じだ。

 笑い声と海の音。
 聞こえてくるのは、そんな音。


マスター:永瀬晶 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:16人
作成日:2007/08/01
得票数:楽しい5  ハートフル5  ロマンティック1 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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