<リプレイ>
●赤い炎を見上げながら、乾杯 パチパチ、炎のはぜる音がする。火の粉が巻き上がり、くみ上げられた木は静かに燃え続ける。
夜の海岸からは、ねぎらいの声。 「まずは、お疲れ様〜」 「みんな2日間ほんとお疲れ様。かんぱーい♪」 森林浴処【WINGreen】の森山・樹里(碧風の旋律・b10514)の音頭で四人の手に取ったコップが打ち合わされる。 「良かったら、こっちも食べてね」 簡単なバーベキューセットも用意し、樹里は持ち込んだ野菜を焼いていく。じゅうじゅうといい音をたてて野菜も焼けていく。 「今日はお疲れ様。楽しい企画を有難う。今日はゆっくり休んでね」 友好旅団から顔を出している風見・玲樹(スーパー痛快ぼっちゃま・b00256)も、手作りのおにぎりを差し出す。服装はTシャツに短パン姿だ。木々に囲まれたのんびりした喫茶店を思い出しながら。 「お腹が空いたらおにぎりがあるよ。僕が作って来たんだ♪」 「こうしてのんびりするのもいいですね」 鳥山・つぐみ(沈黙のアマゾネス・b21644)はキャンプファイアーの炎を見やりながら、ジュース片手に、のんびりする。学園祭は楽しかったけれど、回る所が沢山あったから。こうしてのんびりと過ごす時間も、それはそれで貴重に思える。 「はじめての、学園祭は、とっても、楽しかった、の」 峰山・珠果(揺り篭の白兎・b25341)の手の中には、黄色い金平糖の小瓶。空を見上げると、同じ色の星たちが、控えめに輝いている。 「皆お疲れ様だよー!」 文化祭本番では余り貢献できなかったからとも思いながら、杜山・初花(忍者ライダー・b21338)は差し上げたコップを喫茶部の仲間と合わせる。 「沢山用意したから、どんどん食べてな」 大加美・稜牙(白銀の戦狼・b14619)は用意したジュースやお菓子を並べる。親睦を深める意味もあるし、とにかく騒ぎたい気がして。 控えめな手つきで持ってきたお菓子を配るのは神代・紅葉(中学生魔弾術士・b27144)。ちょこん、と申し訳程度につけた犬耳は、結社企画で使ったもの。 「家に帰るまでが遠足って、よく言うもんね」 箭弓・綴(スピリチュアルエイトビート・b25719)は心地良い疲労感を感じながら、そう呟いた。そう、家に帰るまでは、疲れたなんて言っていられない。 「残り物、他の結社の人にもおすそ分けしてくるね」 壊れないように気をつけて持ってきた、ケーキの箱を手に。近くで打ち上げ中の結社の人に、配りに向かう。
●静かに、お話を 「ありがとうね」 差し出されたお菓子とケーキとジュースを受け取ったのは氷室・雪那(雪花の歌姫・b01253)。夜の海にちょっと、物悲しさも感じるのは、学園祭で特に何もできなかった、と思ってしまうからなのか。 「来年があれば、何かやりたいよね。華凛は……卒業してるかもしれないけど」 すぐ側に居る御巫・終凪(ご主人様の素敵な下僕・b00295)へと話しかける。終凪の方はといえば、密かに想っている雪那と二人で、ちょっとしたデート気分になっていたりも、する。 「何かやるなら、ライブ……かな?」 他愛ない話をして、学園祭の余韻に浸る。 「バトルロワイアルも凄かった」 「水着コンテストも、見て回るのも苦労したしね」 結社企画は出していないとはいえ、二人とも、学園祭の話で盛り上がっている。折角デートっぽい雰囲気なのだからと、終凪は思い切って言ってみる。 「星も綺麗だけど、雪那の瞳の方が綺麗だよ」 柄じゃないと思いつつのその言葉に。雪那は微笑んで見せた。……なんだか、可笑しくて。
●歌えや、おどれや 並べられた食べ物が半分ぐらい、減ったころ。 最初に歌い始めたのは、初花。 「ゆけゆけー喫茶部ー エプロン纏いトレイを投げてー 悪のスタバーン倒すのだー ワン! 犬耳ブルー! 僕らの団長ー♪ ツー! ネコミミレッド!」 三人目まで続いたところで、ネタが尽きたよ、と歌を止める。即席で歌うのは難しいなあ、などと思いながらだ。 (「箭弓ちゃんはピンクで、紅葉ちゃんはグリーンだと思うんだけど。アタシはイエローかなぁ」)
「そういえば、キャンプファイアーって言えば、マイムマイムだよね。良かったら他の結社の方もどうぞー」 おすそ分けから戻ってきた綴が、楽器を手に取る。 「そういえば、喫茶部の皆の前で一度も曲演奏した事ないね。マイム弾くから皆踊れー!!」 炎を囲んで、喫茶部のメンバーが踊り始める。 稜牙は柄でないとも思いつつ、久々だから、楽しもうと。
「僕たちも一緒に踊ろうか? まじゅりん」 恋人である樹里の手を軽く引くと、玲樹が踊りの輪に加わる。暖かい気持ちになりながら。 つぐみも最初は見ていただけだが、途中で踊りの輪へ。見様見真似で踊っている彼女であったが、いつの間にやらちょっと真剣な表情で踊っている。そんなつぐみに手招きされ、珠果も踊りの輪へと加わった。
「音楽、替わろうか?」 一曲終わったところで、樹里はサックスを手に綴に問いかける。 「じゃ、一曲お願い。それが終わったら、一緒にどう?」 樹里は頷くと、ゆったりしたジャズ調の曲を奏でる。 疲れを少しでも癒して楽しく踊ってもらえたら、という思いをこめて。
「私も歌ってもいいかしら?」 小さなセッションに加わるのは、雪那。星空を題材にした、綺麗な歌に、終凪のギターと樹里のサックス、そして綴が加わって静かな曲を奏でる。少しでも、親友である桜神帝・華凛(隠者の小夜曲・b01875)にとって、いい想い出になるように、と。そんな思いを籠めて雪那は歌う。
歌を、炎を眺めながら聴いていたのは華凛。と−− 「……華凛?」 ふと背後から聞き覚えのある声がして、振り向いた。 こんな所で会うとは思わなかった、と意外そうな声で彼女に呼びかけたのは、狩夜・稔(罪過に染まりし赫き靴・b21569)。なんとなく海風に当たりたくなってうろついていただけだ、無理は無い。 「珍しい所で会うわね。折角だから……一緒に聞きましょう?」 小さく頷くと、側に来る稔。 「……こんな時間も久し振りね……どう、あれから……目指す物は見つかった?」 「さあ……どうだろうな」 少し間をおいて、華凛は続ける。 「お互い、相変わらずね。……が亡くなってから、時が止まったままのよう」 「そうだな……俺は結局あの時から……動けないまま思い出すことさえおそれて、大切な者を遠ざけている」 静かなギターをバックに歌う雪那の歌は続いている。歌い続けている彼女は、稔に気がついてはいないようだ。 「だが、お前は強いな……もう一度音楽を手に取ったのだから。それが例え、雪那の為だとしても、それが出来るのは間違いなく強さと優しさだと思う」 「何? 私が強いなんて訳、ないでしょう。情熱なんてもういらないと心に決めた筈だったのだから。私自身、再び音楽に携わるなんて思わなかったもの……」 心を籠めて歌う黒髪の少女に稔が視線を向ける。それに気がついてか、彼女の保護者に近い立場の華凛。 「雪那の事、気になる? また……ゆっくり話してあげて。雪那も……機会、待ってるみたいだから」 「ああ……また店に寄らせてもらう……」 幸せそうな彼女に安堵して。遠い昔のようにさえ感じるあの頃を思う。
●夜のちいさな花火大会 巫女服姿で花火を楽しんでいるのは、黒巫・霊花(闇巫女・b24594)ら銀誓館学園昼寝部の面々だ。服装に突込みを入れる人がいなかったのは幸いか。服装に突っ込む相手には、容赦なく肘打ちを入れるつもりだったから。 「花火なんて、久しぶりね……」 リセル・クライスト(絶望の死神・b25991)は多目に用意した花火のうち、手持ち花火に火をつける。表情は無表情なまま。 周りの結社の迷惑にならないようにと、少し離れた場所で。 「え? 花火? やろうやろう」 大勢で騒ぐのははじめてだからと少し緊張しつつ、朝霧・屡瑠(私はここにいます・b26855)がロケット花火を手に取る。 「扱いには気をつけて」 やっぱり無表情なまま、ロケット花火を持った屡瑠へとリセルが呼びかける。 「勿論。ほら、こうやって手で持って火を……」 ……手に持ったまま点火。 「って、あっちぃ〜!!」 ……事もあろうに、もう片方の手に掠めて飛んでった。向けている方向が悪かったのか。パン、と大きな音。 「リセルちゃん助けて〜」 「お水で冷やして」 かすっただけで、尚且つすぐに水で冷やしたから事なきを得たが。
(「こーゆー時に心から楽しめねぇ……ってのは、やっぱり歪んでんだろーなぁ……」) そこから更に離れて、村神・悠貴(宵闇の狩人・b26839)が花火を楽しむ三人を眺めていたり、する。 「……まァ、たまには悪くねぇ、か。楽しまなきゃ損ってな〜♪」 等といいながら、花火に加わる悠貴。 「はい、花火」 屡瑠はやっぱりロケット花火を悠貴に渡す。 少し動いて火をつけようとした彼の近くに、不意にリセルが鼠花火を投げる。 花火はくるくる走り回って、パン、と音を立てる。 霊花は霊花で、手持ち花火を悠貴の方へ向けていたり、するし…… 足元で動きを止めた鼠花火を見ながら。 「ちょ、そいつぁないでしょお嬢さん方!?」 当たりはしなかったが、当たるかと思った。ちょっと胸を撫で下ろす。 「花火を人に向けるのは危ない? 知らないわね」 「両手で持つと、綺麗」 悠貴、暫くなすがままに弄られ続けていたが、最後には拗ねちゃった。 「ふーんだ、俺様なんて……俺様なんて……」 「アンタを弄れとリセルが言ったのよ……乗った意思は私だけど」 ……注意。花火は危険ですので、取り扱いには気をつけてくださいね。
炎からは少しはなれて。こちらも波打ち際に近いところで、森林浴処【WINGreen】のメンバーらも花火をやっている。手持ち花火をやったり、打ち上げ花火を上げたり。 「綺麗、です、ね」 空に打ちあがる花火を見て、珠果が歓声を上げる。 ちょっとしんみりとした気持ちのつぐみも、花火を見上げた。 「パラシュート花火からパラシュートが出るよ!落ちてきたら取ってね」 玲樹が火をつけると、打ちあがった花火から、幾つものパラシュートが落ちてくる。 「わあ……」 つぐみの手の中に一つ。樹里が一つ、珠果も二つ、パラシュートを受け止める。受け止めなかったパラシュートは、波打ち際へと落ちた。
ひとしきり騒ぎ終わったら、最後は線香花火。 火をつけると、火の玉になり、やがて小さな火花が飛び散る。 屡瑠は今度は静かに、小さな花火を眺めている。 「今日は……久しぶりに楽しかった。……誘ってくれて……ありがとう」 珍しく、感情を表情にあらわにして、リセルが僅かに微笑み、霊花へと礼を言う。 「気にしなくて良いわ……私も、楽しかったからね……」 本当に楽しかった、久しぶりに。 「私からも、ありがとう」 手に持った線香花火は、柳のような火花を最後に見せて。 ぽとりと落ちる。
「まぁた言えなかったな〜、つくづく腰抜けな自分がイヤになるぜ……はぁ」 花火の終わった後の海岸に、海を眺めて呟く悠貴の姿。
●きっとまた、みんなで 「また、みんなで、何か、できたら、いい、です……」 幸せそうに珠果が呟くと。 「学園祭はこれで終わりだけど、明日からまた楽しいことがありますように」 片づけを終えたつぐみもそう続けた。 パチパチと、少し小さくなった炎を見て。
「いつも本当にサンキュな」 部の面々を見比べて。改めて、稜牙がそう言った。 「楽しかった、ですよね」 紅葉の持ってきた数々の食べ物も、全部なくなってしまったけれど。ネコミミ姿の彼女は微笑む。 「これからもよろしく頼むぜ」 稜牙の思いは、きっと他の三人とも同じだ。
笑い声と海の音。 聞こえてくるのは、そんな音。
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参加者:16人
作成日:2007/08/01
得票数:楽しい5
ハートフル5
ロマンティック1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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