駆ける野


<オープニング>


 噎せ返るような土の香り。
 濃厚な雨の後の、葉がわき立つ気配がそこかしこでざわめいていた。
 そこそこ広いグラウンドは、その他にも奇妙な匂いが混じっている。
 匂いの元は、点在している犬小屋からか。グラウンドの隅からか。
 じわじわと侵食する腐臭を纏う『それ』は、暗がりから姿を現す。
 家屋の扉をかりかりと前足でかいて、
「……またお前か。しょうがないな、お入り」
 暖かな声を降らせる男性を濁った瞳で見つめ、するりと中へ体を滑り込ませた。

「あ、こんにちは。いらっさいませー」
 歓迎の言葉を集まった能力者におくりつつ、珍しく一番最後に教室へ入ってきた戌塚・相(高校生運命予報士・bn0033)は、若干慌てながらいつものポジションにつく。
 そして、教卓にどん!と乗せられた分厚い『犬の図鑑』。
「今回のお相手は犬のリビングデッド一匹と、援護として出現する猫のリビングデッド二匹になります」
 場所は、過疎化した村の一軒家。
 村の中央から外れた所に在るその家は、広い裏庭をぐるりと柵で囲っている。そこそこの広さのある庭には、幾つもの手作りな犬小屋が点在。
「このお宅には耕作さんというおじさんが一人住んでるんですが。山に捨てられた犬や飼育放棄された犬なんかを引き取って、育ててるんだよね」
 その数は、今や増えに増えて十六頭。
 小型犬や大型犬まで、珍しいという理由や流行だからといった理由で飼われ、その挙句に捨てられてしまった犬たち。
 耕作おじさんは、そんな犬たちを保護し、新しい家族を見つける為に日夜頑張っている。
「ですが、その犬の中から一頭リビングデッド化してしまった犬がいます」
 図鑑をぱらぱらとめくると、相は目的のページを探し出して提示した。
 雄雄しい立ち姿の写真が載っている犬種は、『グレート・デーン』と大きく名前が出ている。今となっては伴侶犬として扱われるが、過去には警備や大型動物の狩猟に使われることが多かったという。
「今のところは、耕作さんにちょっとだけ血をもらっているだけです」
 だが、このまま放置すればどうなるかは目に見えている。
 そうなる前に、退治してあげてください。
 寂しげに笑うと、相は眼鏡の奥の瞳をゆるゆると細めた。
 リビングデッドは昼間は隣接して在る林の中に潜み、夜は裏庭にある自分用の犬小屋か耕作さんの傍に居る。人目などを気にせずに接近し倒せるのは、昼のほうだろう。夜間を選んだ場合は、グラウンドに放されている犬たちのことも気にとめて動かねばならない。

「あ、……昼に行くなら、退治が終わった後に犬のお世話のお手伝いとか、どう?」
 耕作さんは、もう初老。
 頑張っているとはいえ、世話が行き届いているとは言いがたい。グラウンドの掃除に散歩など、出来ることはあるだろう。
 耕作さんのもとにはこういったボランティアの人間も訪れるので、申し出れば喜ばれるはずだ。
「チワワ、ワイマラナー、コーギーにノーフォークテリアに……あとどんな子がいるんだったかなぁ……?」
 図鑑をまた開きながら、相は首を傾げる。
 中には人間不信に陥って、少々攻撃的な犬もいるかもしれない。けれども、怖がっているだけなのだからお世話は優しくフレンドリーに。
 いってらっさーい!と見送りの相は、少しだけ羨ましそうに手を振った。

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参加者
蓮見・永治(独善の魔剣士・b01537)
九曜・沙夜(神韻・b01823)
水沢・晴(ショタっこ魔弾術士・b01917)
尾瀬・豹衛(青不動・b03524)
竹内・雫(琴平の輝夜姫・b03534)
煌・大悟朗(長身学生・b09496)
楸・楓(いくつになっても甘えん坊・b21863)
御子柴・綾香(紅の御使い・b27682)



<リプレイ>


 山にくい込む形で細々と生活を営んでいる村。
 茂る葉が鮮やかな緑を主張する林を控え、辺りは夏場であってもひんやりとした空気をまとっている。
 濡れた土の匂い。湿った腐葉土に、木の芳香。不快にならない自然の清廉な大気を身のうちに取り込みながら、人気のない林に踏み込んでいく人影が在る。
 薄暗い中を、きょろきょろと視線を巡らせる楸・楓(いくつになっても甘えん坊・b21863)。目の前に班を組んだ蓮見・永治(独善の魔剣士・b01537)が臆すことなくざかざかと歩いて行くのを、必死に追いかける。
「(大丈夫……怖くない……怖くない……)」
 この林の中に隠れているのは、犬一頭・猫二頭のリビングデッド。どの木の陰、どの暗がりから出てくるとも知れない相手に、楓は震え気味だ。もしかしたら、この林の薄暗い雰囲気がダメなのかもしれないけれども。
「怖くない……。うぅ……やっぱり……ちょっと怖いかも」
 愛らしい茶色の大きな瞳を潤ませながら、ふえぇんと小さく声を上げる。すると、
「どうした?」
『楸さん』
 前を向いてゴーストの姿を探していた永治が振り返って、更に通話状態にある携帯電話から御子柴・綾香(紅の御使い・b27682)の声が届いた。ノイズの含まれていない明瞭な声。
『そちらには蓮見さんがいるし、一人じゃないのだから大丈夫よ』
 宥める優しい声にじっと目の前の年上な彼を見上げれば、切れ長の瞳が不思議そうに丸くなる。
「ちょっと歩くの早かったか? あ、俺の水飲んでもいいぜ?」
 ニッと浮かべられる永治の人懐っこい笑顔に、幾分か安堵しつつ差し出されたペットボトルを手に取った。

 柔らかい土と同化しつつある落ち葉の道を踏む。
 林の中央をルートとしてとった二班は、九曜・沙夜(神韻・b01823)を頼りにしてリビングデッドの捜索に当たっていた。彼女を先頭にして携帯電話で一班と通話状態にある御子柴・綾香(紅の御使い・b27682)、三班と通話中の水沢・晴(ショタっこ魔弾術士・b01917)が続く。
 そして、最後尾には煌・大悟朗(長身学生・b09496)。林の中は不得手な青年は、全体が見渡せるように後ろに控えていた。これは急襲を受けた場合、仲間の盾になる心積もりでいるため。
「犬……か……」
 ぽつりと大悟朗が呟くと、うりゅ?と晴が後ろを向く。彼としてはリビングデッドの犬を考えたのかもしれないが。
「わんちゃんたちと早く会いたいね〜」
「そうね。申し訳ないけれどリビングデッドは早々に片付けて、私は愛らしいわんこ達と戯れたいわ……」
 わくわくと晴が、うっとりと綾香が夢見がちな表情になる。探索に集中している沙夜も、この話題には少々気がそぞろになった。犬の世話をできることは嬉しいことだが、出来れば連れて帰れないだろうか。
 先程林に入る前にちらっと見かけた大きな犬を思い出す。でも今は、
「この森の中に居る子を探すのが先よね……」
 ひっそりと呟くと、彼女は頬にかかった夜空色の髪を後ろへ流した。

 林の右側は、少々障害の多いエリアだった。
 どういったわけか細い木々の倒木が多々あり、自然に作られた暗がりが点々と存在する。茂る葉も頭上を覆う程に鬱蒼としたのが多く、警戒しながら歩かなければすぐに足を取られてしまいそうだ。
 このルートをとりつつ、感覚を研ぎ澄まして風下から歩むのは尾瀬・豹衛(青不動・b03524)。切れ長の双眸が辺りを伺っては、油断なく進められる迷いのない足取り。
 彼の背後には竹内・雫(琴平の輝夜姫・b03534)が、白銀の髪をゆったりと遊ばせながらついていた。たおやかな手の中には連絡用の携帯電話が納まっている。賑やかな二班の声が小さく漏れているが、二人ともそれを気にするような素振りは見せない。
 視線を流しては思うのは、迷い出た犬のことだ。
「棄て犬、ね。むしろ棄てる阿呆の方が斬るに値するが……」
「誰が捨てたのかなんてわからないしね」
 文句を言ってやりたい相手は、見事なまでに不明。やるせない想いをどんよりと胸に抱え、二人は溜息混じりに言葉を交わした。どうしたってゴーストを逃がすわけには行かないのだから、迷い出た以上始末を付けてやるのもヒトの任め、か。
 難儀なものだと軽く首を振った際に、微かに視界に捉えたのは黒い残像。
 豹衛が愛用の仕込杖『深閃』に手をかけた瞬間、右前方の暗がりから大きな影が躍り出た。
 

「竹内先輩」
「犬のリビングデッド確認!」
 異音の混じりだす携帯電話に呼びかけ、三班の二人は速やかに戦闘態勢に入った。
 未だ確認できたのは、犬のリビングデッドのみ。
 周囲に気を配りながらも、雫は素早く空中に魔方陣を生成。豹衛も鮮やかな手際にて得物をくるりと回転させ、雫を庇うように前に出た。
「ほう、良い眼だ。人間を恨み切ったかね? だが、それでも人間に縋ろうってのは頂けないな」
 耕作の血液の件を揶揄する発言を行う青年に、体格の大きな犬は体勢を低く低くとる。腐敗を押し留めようという行動はどういった感情からか。黒々とした伸びやかな肢体を晒すグレート・デーンは、豹衛に飛び掛った。
 獰猛な牙が顕になって生ける者を襲う。
「そうはいかないんだから」
 青年の腕に犬の口元が掛かりかけた刹那、雫の編み上げた陣が完成し、火の球を生み出した。直線距離を走ったそれは、俊敏に下がった犬の耳を掠める。次いで側面へと走りこんだ豹衛が龍尾脚にて飛び掛り、犬の体が傾いだ。
 其処へ無数の足音が立ち入る。
「お待たせっ!」
 元気のいい晴の声が戦場に響いた。仲間が参入したこと増す勢いに、犬へと攻撃を畳み掛けた際。頭上を翳るものが出現して沙夜は息を呑む。
「猫のリビングデッドが上に、」
 最後まで言い切れないうちに大悟朗が動き、綾香を庇った。飛び降りてきた猫の鋭い爪が、青年の腕を切り裂いたのだ。
「……っ、」
 少なくない痛みに眉根を寄せると、沙夜が急ぎ近づき白燐奏甲で癒していく。
 木々の上からは、まだがさがさと何かが動き回る音が落ちてきていた。もう一匹隠れ潜んでいるのに警戒を強めながら、まずは二頭を包囲する。
 逃がさないようにと、明るい声を眠りへと誘うものに変化させて、晴のヒュプノヴォイスが周囲を取り巻いて。
「もう、眠りなさい」
 ぐったりと横たわった猫に綾香の放った雷が直撃した。焦げあがる毛皮に向けて大悟朗のバス停が振り下ろされる。
 ほぼ同時に、豹衛が闇色に染まった愛刀を犬の首元に滑らせていた。ずるりと皮の一部を断ち切る感触。不浄を蹴散らすように雫の炎が巨体を包み込んだ。そうしているうちに、残り一匹の猫が地上へと降り立ち、たっと軽やかな動作で身を翻した。
 だが、その行く先を遅まきながら駆けつけてきたもう一班が阻む。
「待たせたな!」
「みなさん、大丈夫ですか〜?」
 立ちはだかった永治と楓は、しっかりと愛用の武器を構えて動く屍と対峙する。楓の操る闇色の念動剣が閃き、猫の体を切り裂く。抵抗し跳躍する白い爪が、永治の頬に赤い線を走らせた。すれ違いそのまま逃げ去ろうというつもりなのだろう。それを容認するわけにはいかない。
「安らかに眠ってくれよ!」
 高らかな宣言と共に、狙いを違うことなく青年の日本刀が振り下ろされた。


 昼を過ぎて僅かに日の傾き始めた頃。
 二度目の死を迎えた三頭を葬った一行は、村はずれの森から戻ってきていた。
 むっとした残暑の空気が八人を包み、しっとりと汗ばむ肌。だがお楽しみはこれからだ。近くの一軒家に向かうと代表して沙夜が戸を叩く。
 すぐに開いた扉の向こうには、優しげな初老のおじさん。
「はい、どちらさまかな?」
「こんにちは、初めまして。犬達の世話のボランティアで伺いました」
 にこりと微笑を浮かべてお辞儀をすれば、おお!と嬉しそうに耕作は頬をほころばせる。
 一軒家の裏庭。おじさんに案内されて訪れたところは、元々は普通の庭だったのだろうが、適度な広さを持つグラウンドに加工されていた。
 剥き出しの土に、幾つも設置してある個体のサイズに合わせての犬小屋、周囲をぐるりと囲む柵。中には犬が放されていた。
「結構沢山のわんちゃんがいるんだね〜。見たことのないわんちゃんもいる!」
 晴が興奮気味に目をきらきらと輝かせると、耕平おじさんは目尻の皺をくしゃくしゃにしながら目を細めた。
「みんな、大変な想いをしてきた子達だよ。吠えたりするかもしれないが、いい子達だから」
 どうか優しくしてやっておくれ。
 そう言われた先では、犬が訪れた見慣れぬ多数の人間に警戒しているようだった。だが群れを外れた一匹が、ちょこちょこと雫に近づいて足元の匂いを嗅ぐ。
「ええと、この種類は……?」
 犬種に詳しくない雫が困ったように茶色の瞳を瞬かせると、白くてもこもこの小型犬は元気よくキャンッと訴えるように鳴く。
「そのこはマルチーズね! やーん、やっぱ犬かわいいっ」
「マルチーズ……」
 名前を呼ばれたわけでもないのに、小さな犬はもう一回キャンと鳴いた。慣れない手つきで雫が抱き上げる。よく見れば白い毛は毛玉や出来、ところどころ薄汚れていて。
「これは、洗ったほうがいいのだろうな」
 じっとグラウンド内の犬と睨めっこをしていた大悟朗が戻って来て呟く。
 此処は犬たちが足を痛めないようにと土のままの地面。自由に怪我をすることなく居られるが、反面どの犬もそれはもう汚かった。特に腹部などはどろどろのべちょべちょといった塩梅。
「じゃ、二手にわかれっか」
 犬たちの気分転換の散歩にも人手は必要だろう。永治の一声で自然と八人は二組に分かれたのだった。
 シャンプーやブラッシングなどのトリミングは女性陣。
 グラウンドの隅に設置された水場で、目に付いた友好的な犬から順に洗っていく。
「愛らしいわんこ……いいこね」
 丁寧な手つきで、綾香がそっとブラシで毛を梳いて洗う前にゴミを取り除く。最初は嫌がる素振りを見せていた犬も、彼女の屈託ない笑顔に警戒を和らげたよう。長く逞しい尻尾が忙しなく嬉しそうに揺れる。
「大人しくして、ね? 綺麗になって、新しい素敵な飼い主さん見つけましょ」
 次に沙夜が犬が怯えないように、足元からお湯を掛けはじめた。ゆっくり水を体毛に含ませていってからいい香りのシャンプーを手に取る。だが彼女が犬に向き直るまでに、ぶるるるっと犬が思いっきり体を振るってしまって。
「きゃ、」
「!」
「、っ」
 びちゃっと飛び散る水に慌てて顔は背けるけれども、三人とももろに被る。
 相手はベルジアン・グローネンダールという、主にベルジアン・シェパードの名で親しまれるふさふさの大型犬。あまりの水飛沫に驚いて固まってしまった雫が手にした犬用のタオルで拭くことも出来ずにそのままでいると、傍に控えていたフレンチ・ブルドッグがふがっと笑い声に似た鼻息をたてた。

 一方その頃の男性陣は、グラウンドの掃除の真っ最中。
 その中でも一番の働き者は、体の小さい晴だった。近寄ってくる犬などを大きな目をキラキラさせながら見つめ、しかしながら手は休まずに動いている。手際のよさに耕作が目を丸くすれば、
「小さい弟と妹が居るからお掃除片付けは得意だよ!」
 少年の元気な姿に、すごいなぁえらいねぇと耕作おじさんは何度も頷く。
 林に程近いグラウンド端では、豹衛が箒片手にとある一頭と対峙していた。群れに混じることなく落ち着いた佇まいで控えている、ドーベルマン・ピンシャー。家庭で飼われていたのか、断耳・断尾はしていないが凛々しいことに変わりはない。
「お前は、堕ちるなよ。誇りと恩……それだけ忘れるな」
 黒々とした色彩の中の、柔らかい犬の焦げ茶色の瞳。豹衛の漆黒の双眸との交わりが確かに其処に透ける。その見つめ合いから目をそらしたのは青年のほうだった。
「………にしても、俺はさっきから犬相手に何を喋っているのやら」
 頬を掻いて恥ずかしげに呟くのに、音も静かに好奇心の刺激されたらしいドーベルマンが傍へと近づきつつあった。
 散歩へ行くという話をすると、耕平おじさんから丈夫なリードが手渡された。小型犬用は流石に刺繍が入ったものなど可愛らしいものも多いが、大型犬用はそうはいかない。ごつい紐を合わせたものや、太い皮製のものからチェーン等など。
「世話する犬は、でかい犬にしようと思うぜ。思いっきり散歩させてやりたいな」
「俺も、そうするか」
 永治と大悟朗は一本ずつリードを手に取ると、それぞれシベリアン・ハスキーとボルゾイに近づいた。途端にあがる威嚇の唸り声。だが臆することなく接近すると、永治は不意をついて硬い毛を撫でた。
 触るたびにびくっと震える体は、人間を怖がっているからなのだろう。
「人間にイヤな思いさせられたんだよな。でも、俺は味方のつもりだぜ」
 穏やかに言い募って撫で続けていると、唸り声は小さくなっていく。挙句には上目遣いの様子を伺う表情になって。
「うっし、散歩に行くか!」
「おっきいわんこさんとお散歩……♪」
 張り切って首輪にリードを繋いだ永治が犬を引く。と、同じようにシェパードを連れた楓がやって来た。後足で立てば自分より身長の高くなるような大型犬だが、気性が穏やかならしく大人しく楓に寄り添う。恐る恐る荒れた毛を撫でると、小さな手を嬉しそうに鼻面でぐいぐいと押した。
「うりゅ、是非家族になりたいな♪」
 晴が細い腕に抱き上げたのは、クリーム色のミニチュア・ダックスフンド。毛足の長い耳には、晴からのプレゼントの小さなリボンが可憐に主張中だ。とりわけこの子が気に入った少年が、このまま家に連れて行きたそうに犬を見つめる。
 耕作おじさんは彼のオレンジの髪を撫でながら、腕の中の犬に微笑んだ。
「そうだねぇ、それじゃあ今度家族みんなで来ておくれ」
 新しい『家族』は、家族全員で相性を確認してから迎えに来るのが一番。楽しみに待っているからね、と促す声に犬もぱたぱたと尻尾を振る。そんな和やかな二人と一匹の背後を、一陣の風が通り過ぎた。
「えっ?」
 慌てて振り返れば、声なき声をあげて大悟朗がボルゾイに引き摺られ走っているのが目に入る。埃を巻き上げ砂を蹴散らす後姿を、興奮してしまったコーギーとビーグルが吠えながら追跡中。
「おやおや、大変だな」
「わぁ……」
 呆然と見送り、残りの男性陣は呟く。
「こら、遊んでないで散歩行って来てよ!」
 シャンプーの済んだ犬にドライヤーを向けながら沙夜が叫ぶ。早くね!と後押しの声を発するのは綾香。無言で真っ白になったマルチーズを抱える雫も、物言いたげな視線。
「えーと……じゃ、行きましょう、か?」
 大悟朗の心配をしながらも、楓はジャーマン・シェパードと一緒に歩き出す。それにみんな続いて。
 いってらっしゃいというように、背に向かってマルチーズが吠えた。


マスター:高遠 紹介ページ
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いまいち
参加者:8人
作成日:2007/09/09
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