祭りの後で〜赤熱円舞


<オープニング>


 楽しかった、銀誓館学園の学園祭も無事に終了を迎える事ができた。
 総参加者が1000人を超えたため、候補者を確認するだけで大仕事になった、銀誓館水着コンテスト。
 更に、当日まで謎のベールに包まれていたバトルロワイアルで繰り広げられた激闘に次ぐ激闘は、その殊勲者とともに語り継がれるかもしれない。
 そして何よりの思い出は、結社の仲間達とともに作った結社企画だったろう。

 心地良い疲れと達成感を得た学生達だったが、若い彼らにはまだまだやるべき事があった。
 そう、学園祭の打ち上げが残っていたのだ。

 学園祭終了後のお楽しみ、結社ごとに行なわれる打ち上げパーティーを、存分に楽しみましょう。

●打ち上げ会場、江ノ島海岸
 学園を出てしばらく歩けば辿りつける夜の浜辺。
 ピクニックのように連なって歩いてきた学生達は、海岸に幾つかの灯りを発見します。
 それは、燃え盛るキャンプファイアーの炎でした。
 今日は、特別に許可を得て、学園祭の打ち上げの為にキャンプファイアーが設置されているのです。
 踊るのもよし、歌うものよし。
 結社の仲間達と、キャンプファイアーの炎に照らされながら、夜の浜辺で楽しい一時を過ごしましょう。
 なお、キャンプファイアーにゴミを投げ込むのは禁止です。
 また、ゴミは各自で必ず持ち帰るようにしてください(キャンプファイアーの後片付けは、翌日までに業者の方がしてくれます)。


マスターからのコメントを見る



<リプレイ>

 キャンプファイアーが燃える。赤々と燃える炎は、軽快なギターの音に合わせるかのように、揺らめき、身をよじる。
「音楽に合わせて歌ったり踊ったり。リズムカルな音楽がいいわね」
 そう独りごつは、ギターを抱えた風見・莱花(白薔薇の令嬢・b00523)。彼女はそのたおやかな指で弦をつま弾きながら、揺れる炎を見つめる。暗がりにゆらゆらと揺らめく炎は、ある種のヒーリング効果があるのだろう。楽しくも賑やかだった2日間に渡る学園祭。その疲れも消えるかのようだった。
「夜の炎って不思議な感じ。これでロマンチックな雰囲気で、隣にいい人がいると良いのだけど」
 年頃の女性らしい願望。それをそっと小声で唇乗せた彼女に、アキシロ・スチュワート(碧眼の従者・b01500)がどうかされましたか? と訪ねる。慌ててかぶりを振り、なんでもないと答える莱花。
「左様ですか。ところでお嬢様、何か冷たい物をお持ちいたしましょうか?」
 にっこりと微笑む風見家の忠実な執事見習いの様子に、莱花は実はしっかり聞いていたのではないだろうかと思いつつも、頂くわ、と答えた。
「炎と音楽が揃えばラテンの血が騒ぐ! ボクたちも踊ろう、浩司くん!!」
「ああ、だがお遊戯みてぇなのはごめんだぞ」
 篠並・蛍(牧羊犬・b03413)の誘いに、鞍馬・浩司(唐猫三毛・b11776)はそう答える。
「ここはやっぱり情熱のオクラホマミキサーだよねっ!」
 あれのどこが情熱的なんだ! という浩司のツッコミを意に介さず、蛍は浩司くんちっさいから女の子役よろしくね、と満面の笑みでそう返す。

「どないしたんや?」
 流れてくる軽快な音楽に合わせ、身体を動かし踊りながら、久遠・椎那(朱雀の風切り羽根・b15102)は封季・霧都(水に舞う風雅・b13982)にそう囁きかける。
「ん、いや……やっぱ椎那がかっこええなぁ、って」
 暗がりで良くわからないが、霧都は顔を赤らめさせていた。
「なに言うとんのや、霧都はんだって格好良いと思うんやけどなぁ」
 笑いながらそう返す椎那。
「それは錯覚や。間違ってはる。俺かっこええちゃうもん、かっこええのは椎那やもん!」
 慌てて否定し、きっぱりとそう言いきる霧都。
 そか、おおきにな、とやっぱり霧都にとって極上の笑みを浮かべ、椎那は答える。
 江ノ島海岸に、沢山の銀誓館の生徒達が集い、思い思いに学園祭の余韻に浸りながら、それぞれの時間を過ごしている。
 だが、ここは霧都と椎那の2人きりの空間であった。
 満天の星が瞬くその下で、2人は互いを見つめながら、踊り続けた。

 結社神無月の面々は、キャンプファイアーから少し離れた砂浜で、花火に興じていた。
「……つゆだく?」
 レミリア・マンネルヘイム(ルナティックパラディン・b13738)の持ち込んだ、『花火詰め合わせセット特盛りデラックスつゆだく』なる面妖な名前の花火セットを前に、黒矢・剛(星宮三年一組宴会部長・b07495)は首をかしげる。
 特盛りとデラックスは解る。確かにこれでもかとばかりに沢山の花火が詰められているし、その種類もまた豊富だ。だがつゆだく、つゆだくである。つゆだくとは、汁を多めにした牛丼の盛りつけ方だ。花火でつゆだく、謎が深すぎる。つゆがだくだくな花火だろうか? だがそれはちょっとイヤンな感じの花火である。あるいは遊んでると汗がだくだく出るような花火なのであろうか? それはそれでイヤンな感じである、というか身の危険を感じる……。
 果てしない思考のループに陥った剛の様子に、レミリアは怪訝そうに首をかしげた。
「どうしたんです、黒矢先輩?」
 頭を抱える剛に、眞仲・洸也(光と闇・b24337)がそう問いかける。
 なんでもない、と答える剛に、そうですか、と答えつつ洸也は花火を物色し始める。
「まずは打ち上げ花火なんてどうだろう?」
 打ち上げ花火を手に取った洸也に、いいなと剛が同意し、レミリアもまた頷いた。

 香ばしい、食欲をそそる臭いが辺りに漂う。
 桃浜・朝成(高校生魔弾術士・b04686)はキャンプファイアーから離れた場所にかまどを作り、持参した肉や夏野菜、それに様々な貝と唐辛子味噌つけたおにぎりを焼き始めたのだ。
 水入ったタンクと氷や食材を入れたクーラーボックスは重かったものの、この楽しい時間が過ごせると思えば苦にならないと、朝成はそう思った。
「僕の特製おにぎりも食べてよ!食べたらいいコトあるよ」
 歌うように風見・玲樹(スーパー痛快ぼっちゃま・b00256)も、持参したおにぎりを皆へと振る舞う。
 だがそれはただのおにぎりではなかった。幸運にも、おかかや梅を引き当てた者は幸いであった。ワサビ入りおにぎりを引き当て、悶絶している御東間・益零(小学生白燐蟲使い・b14954)などを見ていれば、心底そう思うのである。
 益零の中に、玲樹への殺意が芽生えた……かはどうかは定かではない。もっとも、恐ろしい作戦が練り上げられていたわけではあるが。
「皆様、飲み物はなんになさいますか?」
 クーラーボックスから飲み物を取り出しながら、裏方に徹するアキシロが甲斐甲斐しく働く。
 涼やかな海風が吹く中、アミューズメント部とその友好旅団の面々は、玲樹の音頭で乾杯すると学園祭の労をねぎらう宴を始めるのだった。

 景気づけの打ち上げ花火が終わり、次ぎに神無月の面々は手持ち花火へと移行する。
「はなび……するの」
 ようやく選び出した1本の手に、レミリアが火を点けようとするがなかなか花火に点火されない。
「う〜……わかんない」
 初めての日本の花火に悪戦苦闘するレミリアに、洸也が優しく、それは火を点ける方が逆ですよ、と教える。
「本当にまるで母親のようだな。腹黒とは思えん」
 甲斐甲斐しく世話を焼く洸也の姿に、剛は思わずそう漏らす。
「優しいけど、腹黒ですよね」
 剛の言葉に、本眞・かいな(自分探しの旅の途中・b15714)はうんうんと頷く。
「……ほら! 僕は腹黒くなんかないよ、優しいだろう? ヘリオンなんだから当然さ!」
 そう洸也は言い張るが、それは関係ないと剛に否定され、更にかいなからは、光り輝くヘリオンな分、逆に黒さが際立つのかも? と追い打ちが入った。
 そんな3人を余所に、煙の臭いがつくのを嫌がり、ちゃっかり風上をキープしている鈴海・飛白(紅弧月華・b08027)は、華やかに燃える花火を見つめながら物思いに耽っていた。
(「花火をするなんて久々ね…昔、家族でやったのを思い出すわ」)
 目頭に熱い物がこみ上げてくるのを感じる。
「……飛白お姉さん、泣いてるの?」
「な、泣いてなんてないわよ」
「でも涙……」
 レミリアの指摘に、飛白は目頭に熱い物がこみ上げていたのを感じる。
「これは煙が目に入っただけで……見るんじゃないわよ」
 2人のやりとりに気付いた剛、かいな、洸也に向かいそう怒鳴りつけながら、飛白はそっと目元を拭った。

「ロケット花火の正式な作法に則って、こう……導火線を束ねまして……」
 浅香・凛(ちび高校生青龍拳士・b18933)は数本のロケット花火を束ね、なにやら危険な香りのする細工を始める。
「ぼ……僕ですか?」
 手持ち花火を物色していた陰条路・朔之助(白房藤空木・b21798)が、いきなり凜に点火係を任命され思わず敬語が答える。
「主砲、撃てーーーッ!」
 生き生きとした様子で凛印の真っ黒扇を軍配よろしく振るう凛に後押しされるように、朔之助がおそるおそるロケット花火に点火する。だが、人間とは哀しい生き物なのだ。例え恐怖を感じていても、それとは裏腹にその状況に興奮してしまうことがあるのだ。今の朔之助がそうであった。おどおどとしたその手つきとは違い、その内心では彼女はものすごく乗り気であったのだ。自身でも浮かれすぎかと思うほどに。
 導火線に火が燃え移り、瞬く間にそれはロケット花火本体へと達する。ひゅんひゅんという甲高い音を立て、いくつものロケット花火がめちゃくちゃな軌道を描き発射される。
 幸いなことに、向けられたのが誰も居ない海であり、何人にも被害をもたらさずにロケット花火は海上で炸裂する。
 余談ではあるが、複数のロケット花火に一度に火を点けることは、暴発の危険性やロケット花火の弾道が安定しないため大変危険だ。ロケット花火は1本ずつ火を点けよう。これはボクとキミとの約束だよ!
 閑話休題。

 花火を始めたグループを横目に、アミューズメント部の面々も持参した花火を広げる。
 どれが良いだろう? と花火を物色する面々。
「打ち上げ花火がいいな。海に向かって派手に連発やってみっか」
 花火を選びながら、鞍馬・浩司(唐猫三毛・b11776)はそう提案する。
 その間にアキシロは、燃え尽きた花火を入れるための水入りバケツと、点火のための蝋燭の準備を済ませている。
「これが本当のファイアフォックスだよー!」
 全身に花火を括り付け、点火しようとした玲樹。だが彼の行動はアキシロに制止される。
「いけません、玲樹様。花火はきちんと手に持ち、安全に遊ばなければ」
 その言葉に、花火を両手に持ち、さらにもう1本を口にくわえ火を点けようとした蛍の動きもびくり、と止まる。
 花火で遊ぶときは安全にね。お兄さんとの約束だ。……閑話休題。
 それぞれ思い思いに花火を手に取ると、それに火を点ける。
 煌びやかな火花が散り、暗い海岸に花を咲かせる。
「こう流すと綺麗なんだよ」
 両手に持った花火を、円を描くようにくるくると回す蛍。残像と大きく散る火花が、えもいえぬ美しさを醸し出す。
 興奮が最高潮に達した玲樹が、突然下着一枚になると海へじゃぶじゃぶと入っていく。
「夜の海なんて初めて入るよ。とても冷たくて気持ちがいいけど、真暗で何て言うか怖い」
 はしゃぐ玲樹をにやりと笑みながら見ていた益零は、浩司に目配せをする。
 作戦の発動である。2人は持参したスコップで波打ち際へ穴を掘ると、玲樹が海から上がる時を待ち構える。
 何も知らずに海から上がってくる玲樹。
「リアクションが試されるぞ、玲樹!」
 益零の言葉を皮切りに、2人は玲樹をむんずと捕まえると掘った穴へと押し込め、埋め始める。こっそりそれを手伝う蛍の姿もあったりする。
「取れたて玲樹大根ー!」
 本能か性か、思わずリアクションを取る玲樹。だが、場所が場所だけに鼻先まで波が来る状況に気付くと助けを求める。
 そんな玲樹の周りで謎な踊りを踊る蛍が居たことは、余談である。
 そんな騒ぎを余所に、莱花は海を眺めていた。
「夜の海って不気味ね。何も見えないわ。何だか吸い込まれそうで怖い」
 夜の空は星が瞬く。だが夜の海は漆黒の水面がうねるばかり。
「莱花様、線香花火はいかがですか?」
 最後の2本だという線香花火をアキシロがそう勧める。
 パチパチと、小さいながらも威勢良く火花。
 それを見つめ、莱花は、来年もこうして皆で楽しめたらいいのに、と少し淋しい気持ちになった。
 彼女にとって高校最後の夏なのだ。
「学生生活最後の文化祭でしたね。来年はどんな夏になるのでしょうか……」
 はしゃぎ戯れる玲樹達を見やり、アキシロはそう呟く。
 ぽとり、と2人の線香花火から、火の玉が落ちた。

 神無月の面々が持ち込んだあれほど大量にあった花火も、楽しい時間と共に消費され、残すは線香花火だけとなっていた。
 ちりちりと儚げでいて、可憐な火花を散らす線香花火。その様は眺めていれば、自然としんみりとした気分となる。
 だが、そんな空気とは裏腹に、静かに熱い戦いが繰り広げられていた。
「負けん……っ!」
 ちらりと洸也を見やり、剛はそう呟く。
 線香花火の玉をいかにして落とさないか。線香花火を始めたなら、当たり前のように始まる勝負だ。
「極力長く、玉の部分を落とさずに楽しむのがポイントですよね! ……これは期待大かな?」
 余裕のかいなと違い、洸也はプレッシャーに苛まれていた。
(「黒矢先輩が皆の花火の様子をちらちら見てるんだが、対抗か? くっ、負けるか……絶対先輩より先には落とさないぞ」)
 だがその均衡は意外な形で破られる。
 線香花火に興じる面々の背後で、暗躍する影1つ。
(「後は野となれ山となれ」)
 隠し持っていた鼠花火に点火する凛。
 火の点けられた鼠花火は、しゅるしゅる勢いよく回転し、最後に盛大な音を立てた。
 その音に動揺した剛、かいな、洸也の線香花火から、玉がぽとりと落ちた。
「人生は太く短く、ですか……」
 落胆するかいな。
「誰だこのネズミ花火! 朔か! 浅香か!」
 疑われた朔之助が、僕じゃないぞ! と慌てて否定する。
「いやこんな事をするのは恐らく……」
 ゆらりと立ち上がった剛は、こそこそと逃げだそうとする凛へと向き直る。
「凛!」
 途端に始まる捕り物絵巻。
 そんな様子を見ながら、寂しくなんてないわよ……そう飛白は内心そう呟く。
(「こうして愉快な仲間も出来た事だし」)
 じゃれ合う仲間達を見やり、飛白はそう思った。
 その思いはレミリアにも共通する思いであった。
「みんなで、こうしてると楽しいの」
 神無月の面々という大家族にめぐり合えた事に心から感謝し、彼女は夜空に願う。
「また来年も……こうしたいな」
「そうね、来年もこうして花火を見れればいいわね」
 そう言って、レミリアと飛白は顔を見合わせ、微笑んだ。


マスター:久地尚也 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:16人
作成日:2007/08/01
得票数:楽しい7  ハートフル8 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。