<リプレイ>
●赤い色持つ四つ星 太陽が燦々と煌く夏の日に。無人島へと訪れた銀誓関学園生徒達。 臨海学校の一貫で、能力者たちに課せられた課題は妖獣退治。 波の音を聞きながら。涼しげな浜風を受けながら。 いざ、示された妖獣の元へ!
(「何の目的があって、ゴーストたちは無人島に集結しているのでしょうか」) 「でも、何でこんな所にゴーストが集結してるんだろうねぇ……。ちょっと気になるな」 濡れた岩が多数存在するベースキャンプの反対側。足元に注意しながら進む舞志野・美咲(傀儡操花・b04977)の心を代弁するように、雲林院・楓季(高校生フリッカースペード・b27756)は呟いた。 七月から最近まで頻発していた、海の近くのゴースト事件。 彼らが居る、多数のゴーストが生息するという無人島。 関連付けるなという方が無理な話だろう。もっとも、考えて答えの出る問題でもなし。考える材料を探そうにも、手がかりすらない状況。 「あ、雲林院さん。足元危ないです」 「っと、ありがとう」 故に二人とも、疑問を一度打ち消した。代わり、海を楽しむため全力で倒そうと、決意を固める。 「臨海学校……まぁ、楽しもうかしらね……」 神谷崎・刹那(漆黒の教誨師・b01301)の言葉が示すとおり、臨海学校は海を楽しむ、という側面の方が強いのだから。 「早く倒して一杯遊んじゃおうね!」 「さくっとお仕事終わらせちゃうデス!」 「さっさと退治して、海を満喫しよう」 皆の気持ちを代弁したのが刹那なら、声を重ねた御門・日月(風招きの娘・b25260)、アルテア・マッコイ(看板娘・b25367)、新庄・直輝(不屈の男・b26032)は、その為の方法を示すもの。 重なったのがなんだかおかしくて、皆顔を見合わせ微笑み合った。 空は青く、日は高い。 時間はたっぷり、残されている。
楽しげに歩く内に、一行は発見する。 大きさは座布団くらい。流動的な星型に、赤く煌く物質が五つ。 ヒトデ型の妖獣。数は四体。 気づかれないうちにイグニッション。それぞれが思い思いの姿を見せる中、浜に似合う……戦いには不釣合いな……水着姿の女性が幾人か。 そのうちの一人アルテアは、予め着て戦うと宣言していた春宮・静音(バトルマニアガール・bn0097)に対抗したらしい。その大胆な出で立ちとプロポーションは、凹凸つくない静音を軽く落ち込ませるに十分で……。 「……いいのよ、私はその分背が高いから。それにまだ成長期だし……」 俯き独り呟く静音。おかしそうに眺めるアルテア。 何はともあれさておいて、戦いの準備は整った。 一瞬だけ視線を交わし、岩から飛び出し奇襲とする。 さっさと倒し、少しでも長く遊ぶ時間を確保するために。
●赤く煌く星屑の 「さて……はじめるか」 陽射しに赤が煌く時。涼しげな浜風が岩場を撫でた時。 熱い砂を踏みしめながら、日下部・颯那(高校生魔剣士・b15226)が魔法陣を描き出す。 完全に自己再生するという敵の性質。即ち、長期戦を余儀なくされるか無理やり短期決戦に持ち込まざる終えないやっかいな性質に、薄っすらと口の端を持ち上げ微笑み喜びながら。 炎の蔦が生み出され、ヒトデを一体拘束する。続くアルテアが奏でる眠りの歌で、計二体のヒトデの動きを止めた。 これ以上、範囲限界を気にする必要はない。刹那は走り出し、起きているヒトデの射程ギリギリ……そして自身が放つ光の射程ギリギリの場所で、星屑夢想を構えながら待機する。 横を、美咲が突貫を命じたスカルサムライの迦将が走り抜けていった。 「抑え役は任せろ」 麻痺してたり眠った個体は無視していい。 迦将とは別の個体へ、水樹・丁(銀鮫・b18671)は走り寄る。今はまだ攻撃せず、代わりに残像のような分身を生み出した。 直後、向かった先のヒトデが跳び上がる。丁はステップを踏んで身体をずらし、飾り気の無い小太刀で受け流した。 様子を確認しながら反対側へ回り、直輝は蟲の力で自らを高めてく。 「撃ち切る前に麻痺にしてみせます」 迦将が対峙している一体に、風見・迅(蒼月光・b02762)は魔法陣から雷放ち直撃させ、動きを見事止めさせた。 様子を横目で確認していた颯那は目標変更。残る無事な一体に、同様に雷の弾丸を叩き込んだ。 「クレセントファーング!」 雷により砂煙が舞った直後、日月が鋭い蹴りを叩き込む。 随時麻痺や眠りを追加してゆけば、制するのは容易い。 四体の内三体を、不確定要素が絡むとは言え無視できる状況。 一体に攻撃を集中できる状況。 連続した攻撃にたまらなくなったのか、ヒトデが身につける赤い物質の一つが、強く煌き始めた。 「赤い輝きは綺麗だけど、それに見惚れるわけにはいかないね」 陽射しだけではない。自ら発光している赤い物質。 心引かれる輝きに目を細めつつ、楓季は自らの力を高めてく。 刹那、ヒトデは光に包まれた。 光が消える頃には、傷も焦げもへこみも無く、無事な姿のヒトデが一体。……煌きを失った、赤い物質を除けば。 「あー……ヒトデも大きいと結構グロテスク……?」 元気に動き回っているように見える軟体生物に対し、刹那は呟く。 呟きは槍の姿を象った光と共に、再生したばかりのヒトデを貫いた。 「こらっ! 再生しちゃうなんてズルイわよ! ……まあ、あたしたちも回復するんだけど」 時折放たれる周囲からの水鉄砲。及び今対峙しているヒトデからの攻撃に、やや蓄積していたダメージを、日月の舞が完全に癒してく。 「遅いな。そんなんじゃ俺に追いつけないぜ!」 癒された事実に活力を得た直輝。ヒトデが体当たりをした直後を狙い、鋭い蹴りを叩き込めば。 続く美咲は雑霊集わせ、放つ。偶然狙えるタイミングだったため、煌く赤い物質へ向かい。 「破壊は……できないみたいですね」 当った箇所がへこみはしたが、物質に変化無し。あるいはゲル状の物質なのかもしれないと、結論付ける。 「みたいだね」 同じく赤い物質を砕ける機会をうかがっていた迅。意味を完全に失ったと判断し、思考を完全に振り払った。 「あのヒトデはもう、再生できないはずデス!」 起きたヒトデを確認し、眠りの唄を奏でながら、言葉で再生終えたヒトデを示すアルテア。 赤い物質の数は五つ。ただし、煌き失い黒ずんだ。 「もう一息だよ!」 白燐奏甲で迦将を癒しながら楓季が叫べば。 「行くぞ!」 丁が鋭い蹴りを叩き込み、多大なダメージを与えてく。 予想通り、再生する気配は無い。 代わりに儚い抵抗か、震える身体で放たれた水鉄砲。容易く避けた静音の後ろで、宙に解けて消えていく。 「わかりやすいんだよ。それが自己再生の元なんだろう」 颯那が放つ雷は、傷つき寝そべるヒトデを包み込み、小気味良い音を立てながら焦がしてく。 雷か消え音が止むころには……そのすべてを消し去っていた。 一体倒せば。あるいは再生のカラクリが確定した今、すべきは同じ事の繰り返し。そしてアビリティの弾数を別にすれば、難易度は著しく下がっている。 チャンスと見たアルテアは静音と呼吸を合わせ、果て無き大気を身に纏う。 「静音ちゃん、かっこよく決めようデス!」 「……了解。行くわよ、アルテアさん!」 風と共に放たれた二つの軌跡。天駆ける翼と静寂の軌跡はヒトデを切り裂き、粉砕した。 残るは二匹。 一体を炎の蔦で縛りつつ、片方を度重なる攻撃で瀕死へと追い込んだ。 「其処で朽ち逝け!」 三日月の軌跡を描きつつ、丁の蹴りがヒトデの身体を打ち抜けば、残る敵は一体だけ。 すでに弾数を気にする必要なし。 拘束したり眠らせる必要もなし。 ただ全力で物質の輝きを減らして行き……。 「これで、終わりです!」 迅は魔法陣の力を借りて、雷の力を生み出す。 一つに集った雷は放たれ、ヒトデの身体を貫いて……。 砂煙が止むころにはもう、消えていて――。
●海と西瓜と夕焼けと 「きっちり、日焼け止めは塗らないとね」 妖獣倒し、平穏を取り戻した砂浜で。 夏の日差しを一杯浴びて、青い海が煌き返す中。 楓季が日焼け止めを塗ったり、他の者達が自由に泳いだりした後。 丁度三時あたりの刻限に、日月は皆を呼ぶ。 「さて、スイカ割りしちゃいましょ!」 丁の用意した美味しいスイカ。拒む必要など、何も無い。 「まずはお前からだ」 丁はというと、スイカの設置を迅に任せ、先陣を切る颯那に目隠しを渡す。 「声を出しますから、頑張って下さいね」 目隠し受け取った颯那は美咲のエールを受けながら、棒を構え歩き出した。 「右……違った左!」 「右じゃないのか?」 「前なのデス!」 左右の感覚がつかめずに、日月が混乱しながら誘導する中。迅アルテアの二名が悪戯っぽく微笑みながら、嘘の情報を囁いてく。 三つの情報に惑わされた颯那は、結局スイカを割ること叶わず……。 「なかなか難しいな」 直輝の一言により、次なる人物へとバトンが渡る。 すったもんだを繰り返し、スイカを割ることに成功したのは楓季。 割ってくれたことに感謝しながら。ある者は悔しがりながら。 ともあれスイカは美味しく食す。 暑い日差しの下。浜風に吹かれながらの、和やかな時間。 冗談っぽく微笑みながら、日月が呟いた。 「スイカの種食べちゃって、芽がおヘソから出てこないといいわね〜」 無論、今回のメンバーの平均年齢が低いわけではないから、信ずるものがいるなど期待していない。ただの戯言。 ……だったのだが。 「……えっと、それっと本当なの?」 ビクッと肩を震わせて、戸惑いの色を浮かべながら、静音が日月に問いかける。 小学生でも中々信じないような戯言。信じかけている静音。 そんな様子がなんだかおかしくて、次々と堰を切ったように笑い出す。 皆仲良く喧嘩せず。スイカの大きさとか、そういう事では少しだけ争って。 海で泳いで楽しんで、やがて空が赤く染まってく。 楽しき時間に後ろ髪を引かれ、寂しげに微笑みつつ。 誰にとも無く、真っ赤に染まる海を見つめ……。 「皆、お疲れ様でした」 やがて紡がれた刹那の言葉を契機に、ベースキャンプへと舞い戻る。 夏の思い出を、胸に抱いて――。
|
|
参加者:9人
作成日:2007/08/08
得票数:楽しい12
笑える1
|
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
|
|
あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
|
|
|
シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|
|
 |
| |